1次不等式

同義語:一次不等式linear inequality

概要

1次不等式(linear inequality)とは、定数 $a\ne0$、$b$ について $ax+b>0$、$ax+b\ge0$、$ax+b< 0$、$ax+b\le0$ の形に整理できる、文字 $x$ についての不等式である。両辺に同じ数を足すこと、正の数を掛けることは向きを保ち、負の数を掛けると向きが逆になるので、$ax+b>0$ の解は $a>0$ なら $x>-\frac{b}{a}$、$a< 0$ なら $x< -\frac{b}{a}$ という半直線になる。係数が $0$ になる場合や、符号のわからない文字で割る場合、2 乗する場合には、この形の解き方がそのままでは使えない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数直線(高校数学), 不等式

高校での出発点:1 次方程式のように解き、向きに気をつける

$3x-5>7$ のように、文字 $x$ について 1 次の式どうしを不等号で結んだ不等式を 1 次不等式 という。1 次方程式と同じように移項して $x$ について解くが、両辺に負の数を掛けたり、負の数で割ったりすると、不等号の向きが逆になる(教科書での扱いの例は Abr21 の §2.7)。まず計算の型を見る。

正の数で割る場合

$3x-5>7$ を解く。

  1. 両辺に $5$ を足すと $3x>12$ である。
  2. 両辺を正の数 $3$ で割ると $x>4$ である。向きはそのままである。
  3. 確かめ:$x=5$ では $3\cdot5-5=10>7$ で成り立ち、$x=4$ では $3\cdot4-5=7$ で、$7>7$ は成り立たない。$x=3$ では $4>7$ で成り立たない。解は $4$ より大きい実数全体で、数直線では $4$ を白抜きの丸にした右向きの半直線である(図 1 の上)。
負の数で割る場合

$-2x+1\le7$ を解く。

  1. 両辺から $1$ を引くと $-2x\le6$ である。
  2. 両辺を負の数 $-2$ で割ると、向きが逆になって $x\ge-3$ である。
  3. 確かめ:$x=0$ では $1\le7$ で成り立ち、$x=-3$ では $7\le7$ で等号が成り立ち、$x=-4$ では $9\le7$ で成り立たない。もし向きを変えずに $x\le-3$ としていたら、成り立つはずの $x=0$ が解から外れてしまう(図 1 の下)。

上は 3x − 5 > 7 の解 x > 4(4 は白抜きの丸)、下は −2x + 1 ≦ 7 の解 x ≧ −3(−3 は塗りつぶした丸)を数直線に示した図 上は 3x − 5 > 7 の解 x > 4(4 は白抜きの丸)、下は −2x + 1 ≦ 7 の解 x ≧ −3(−3 は塗りつぶした丸)を数直線に示した図

両辺に x がある場合

$5x+2< 2x-7$ を解く。$x$ を左辺に、数を右辺に集めると $5x-2x< -7-2$、つまり $3x< -9$ で、$3$ で割って $x< -3$ である。確かめ:$x=-4$ では左辺 $-18$、右辺 $-15$ で $-18< -15$ が成り立つ。

計算は短いが、次のことを確かめておく必要がある。

  1. 移項や、正の数で割ることで、解はなぜ変わらないのか。→ thm-lin-properties、cor-lin-equivalent
  2. 負の数を掛けると向きが逆になるのはなぜか。→ thm-lin-properties
  3. 1 次不等式の解は、いつも半直線になるのか。$x$ の係数が文字のときはどうするか。→ thm-lin-main、ex-lin-parameter
  4. 2 乗するなど、ほかの変形をしてもよいのか。→ ex-lin-square
    計算の手順使う性質この記事のボックス
    移項する両辺に同じ数を足しても向きは変わらないthm-lin-properties の 1
    正の数で割る正の数を掛けても向きは変わらないthm-lin-properties の 2
    負の数で割る負の数を掛けると向きが逆になるthm-lin-properties の 3
    答えを書く解は $x>-\dfrac ba$ などの半直線thm-lin-main

1 次不等式とその解

1 次不等式と解

$a$、$b$ を実数の定数とし、$a\ne0$ とする。
$$ ax+b>0,\qquad ax+b\ge0,\qquad ax+b< 0,\qquad ax+b\le0 $$
の形の不等式を、$x$ についての 1 次不等式 という。不等式を満たす実数 $x$ を 解 といい、解全体の集まりを求めることを不等式を 解く という。両辺が $x$ の 1 次以下の式で、移項して整理するとこの形になる不等式も 1 次不等式という。

「解く」とは、解を 1 つ見つけることではなく、解を すべて 求め、解でない数を含めないことである。たとえば $3x-5>7$ の解として $x=5$ だけを答えるのは、解くことにならない。

1 次不等式とそうでない不等式
  1. $2x-3\ge x+1$ は、移項すると $x-4\ge0$ で、1 次不等式である。
  2. $x^2-1>0$ は 2 次の項があるので 1 次不等式ではない(2次不等式 で扱う)。
  3. $3x+1>3x-2$ は、移項すると $0\cdot x+3>0$ になり、$x$ の係数が $0$ なので定義の形にならない。この不等式はすべての実数 $x$ で成り立つ(ex-lin-zero-coefficient)。

不等式の性質

不等式を解く手順の根拠は、実数の大小についての次の性質である。

実数の大小の基本

この記事では、実数の大小について次を前提にする(不等式 の「実数の順序の公理」、Leb の Definition 1.1.7(p. 25))。

  1. 実数 $a$、$b$ について、$a< b$、$a=b$、$a>b$ のうちちょうど 1 つが成り立つ。
  2. $a< b$ と $b-a>0$ は同値である。
  3. $a>0$ かつ $b>0$ なら $a+b>0$、$ab>0$ である。
不等式の基本性質

実数 $a$、$b$、$c$ について、$a< b$ とする。

  1. $a+c< b+c$、$a-c< b-c$。
  2. $c>0$ なら $ac< bc$、$\dfrac ac< \dfrac bc$。
  3. $c< 0$ なら $ac>bc$、$\dfrac ac>\dfrac bc$。
    $< $ を $\le$ に替えても、同じことが成り立つ(3 では $\le$ が $\ge$ になる)。
差の符号で比べる

方針:「$p< q$ は $q-p>0$ のこと」(rem-lin-order の 2)を使い、それぞれの差が正であることを示す。$a< b$ なので $b-a>0$ である。
段 1(1 の証明)。$(b+c)-(a+c)=b-a>0$ なので $a+c< b+c$ である。$c$ の代わりに $-c$ を足せば $a-c< b-c$ である。
段 2(2 の、掛け算の証明)。$c>0$ とする。$b-a>0$ と $c>0$ から、rem-lin-order の 3 により $(b-a)c>0$、つまり $bc-ac>0$ で、$ac< bc$ である。
段 3($1>0$ であること)。$1\ne0$ である。$1< 0$ だったとすると、段 1 で両辺から $1$ を引いて $0< -1$ となり、rem-lin-order の 3 から $(-1)(-1)>0$、つまり $1>0$ となって、$1< 0$ と両立しない(rem-lin-order の 1)。よって $1>0$ であり、段 1 で両辺から $1$ を引くと $-1< 0$ である。
段 4($c>0$ なら $\dfrac1c>0$)。$c\cdot\dfrac1c=1\ne0$ なので $\dfrac1c\ne0$ である。$\dfrac1c< 0$ だったとすると、段 3 と同じく $-\dfrac1c>0$ で、rem-lin-order の 3 から $c\cdot\left(-\dfrac1c\right)=-1>0$ となり、段 3 の $-1< 0$ と両立しない。よって $\dfrac1c>0$ である。
段 5(2 の、割り算の証明)。段 4 から $\dfrac1c>0$ なので、段 2 を $\dfrac1c$ に使って $\dfrac ac< \dfrac bc$ である。
段 6(3 の証明)。$c< 0$ とする。段 1 で両辺から $c$ を引くと $0< -c$ である。段 2 を $-c>0$ に使うと $a(-c)< b(-c)$、つまり $-ac< -bc$ で、両辺に $ac+bc$ を足すと $bc< ac$ である。割り算については、段 4 を $-c>0$ に使うと $\dfrac1{-c}=-\dfrac1c>0$ なので $\dfrac1c< 0$ であり、いま示した掛け算の場合を $\dfrac1c$ に使えば $\dfrac ac>\dfrac bc$ である。
段 7($\le$ の場合)。$a\le b$ で $a=b$ のときは、両辺が等しいので 1・2・3 の両辺も等しい。$a< b$ のときは段 1〜6 による。$\square$

性質 3 の掛け算は Leb の Proposition 1.1.8(p. 26)の (iii) と同じ主張である。「負の数を掛けると向きが逆になる」のは、「負の数を掛けることは、$-1$ 倍して数直線を原点について折り返すことを含む」ためで、折り返すと左右が入れかわる(数直線(高校数学) の「距離を保つ対応」の $s=-1$ の場合)。

性質を数で確かめる

$2< 5$ について、

  1. $3$ を足すと $5< 8$、$-7$ を足すと $-5< -2$ で、どちらも向きは変わらない。
  2. $4$ を掛けると $8< 20$ で、向きは変わらない。
  3. $-3$ を掛けると $-6$ と $-15$ になり、$-6>-15$ で向きが逆になる。数直線では $2$ が $5$ の左にあるが、$-6$ は $-15$ の右にある。
同値な変形

$p$、$q$ を $x$ の式、$c$ を実数とする。

  1. $p< q$ と $p+c< q+c$ は同値である。
  2. $c>0$ なら、$p< q$ と $cp< cq$ は同値である。
  3. $c< 0$ なら、$p< q$ と $cp>cq$ は同値である。
    したがって、これらの変形をくり返して得た不等式は、もとの不等式と同じ解をもつ。$\le$ についても同じである。
逆向きの変形で元に戻す

方針:どの変形にも、元に戻す逆の変形があり、それも thm-lin-properties の変形であることを使う。
1:$p< q$ なら thm-lin-properties の 1 で $p+c< q+c$。逆に $p+c< q+c$ なら、両辺に $-c$ を足して $p< q$ である。
2:$c>0$ で $p< q$ なら、性質 2 で $cp< cq$。逆に $cp< cq$ なら、両辺を正の数 $c$ で割って(性質 2 の割り算)$p< q$ である。
3:$c< 0$ で $p< q$ なら、性質 3 で $cp>cq$、つまり $cq< cp$。逆に $cq< cp$ なら、両辺を負の数 $c$ で割って(性質 3 の割り算)$q>p$、つまり $p< q$ である。
$x$ にどの実数を代入しても上の同値が成り立つので、変形の前後で解は同じである。$\square$

主定理:1 次不等式の解は半直線

1 次不等式の解

$a\ne0$ とし、$\alpha:=-\dfrac ba$ とおく。

  1. $a>0$ なら、$ax+b>0$ の解は $x>\alpha$、$ax+b\ge0$ の解は $x\ge\alpha$ である。
  2. $a< 0$ なら、$ax+b>0$ の解は $x< \alpha$、$ax+b\ge0$ の解は $x\le\alpha$ である。
    $ax+b< 0$、$ax+b\le0$ の解は、1・2 の不等号をすべて逆向きにしたものである。どの場合も、解全体は端が $\alpha$ の半直線(区間 $(\alpha,\infty)$、$[\alpha,\infty)$、$(-\infty,\alpha)$、$(-\infty,\alpha]$ のどれか)である。
移項してから $a$ で割る

方針:cor-lin-equivalent の同値な変形だけを使って $x$ について解く。$a$ で割るところで、$a$ の符号によって向きが決まる。
段 1(移項)。cor-lin-equivalent の 1(両辺に $-b$ を足す)により、$ax+b>0$ は $ax>-b$ と同値である。
段 2($a>0$ のとき)。cor-lin-equivalent の 2 で両辺に正の数 $\dfrac1a$ を掛けると(prf-thm-lin-properties の段 4 から $\dfrac1a>0$)、$ax>-b$ は $x>-\dfrac ba=\alpha$ と同値である。
段 3($a< 0$ のとき)。$\dfrac1a< 0$ なので(prf-thm-lin-properties の段 6)、cor-lin-equivalent の 3 で両辺に $\dfrac1a$ を掛けると、$ax>-b$ は $x< \alpha$ と同値である。
段 4(ほかの不等号)。$\ge$ のときは段 1〜3 を $\le$・$\ge$ の版で行えばよい。$ax+b< 0$ は $(-a)x+(-b)>0$ と同値で(両辺に $-1$ を掛けて向きを変える)、$-a$ の符号は $a$ と逆、$-\dfrac{-b}{-a}=\alpha$ なので、1・2 の不等号を逆にしたものになる。$ax+b\le0$ も同じである。
段 5(半直線であること)。解は「$x>\alpha$」などの形の条件なので、その全体は 数直線(高校数学) の「区間の記号」の半直線である。$\square$

定理を当てはめる
  1. $4x-6\ge0$:$a=4>0$、$\alpha=\dfrac64=\dfrac32$ で、解は $x\ge\dfrac32$。
  2. $-3x+12>0$:$a=-3< 0$、$\alpha=-\dfrac{12}{-3}=4$ で、解は $x< 4$。確かめ:$x=0$ で $12>0$。
  3. $\dfrac{x}{2}-\dfrac{x-1}{3}< 1$:両辺に正の数 $6$ を掛けて $3x-2(x-1)< 6$、つまり $x+2< 6$ で、解は $x< 4$。分母を払うときは、掛ける数が正であることを確かめる。
文章題:買える個数

1 個 $120$ 円のりんごを何個かと、$200$ 円のかごを 1 つ買い、代金を $1000$ 円以下にしたい。りんごを $x$ 個とすると $120x+200\le1000$ で、$120x\le800$、$x\le\dfrac{800}{120}=\dfrac{20}3=6.66\cdots$ である。$x$ は $0$ 以上の整数なので、買える個数は $0$ 個から $6$ 個までで、最も多くて $6$ 個である。不等式の解(実数の半直線)と、問題の答え(整数)を区別する。

係数が $0$ になる場合と、係数が文字の場合

$x$ の係数が $0$ になると、thm-lin-main の形にならない。

係数が $0$ の不等式

定数 $b$ について、不等式 $0\cdot x+b>0$ の解は、$b>0$ ならすべての実数、$b\le0$ なら解なしである。$0\cdot x+b\ge0$ の解は、$b\ge0$ ならすべての実数、$b< 0$ なら解なしである。

$x$ に何を入れても値が $b$

方針:左辺が $x$ によらないことを使う。
どの実数 $x$ を代入しても、$0\cdot x+b=b$ である。したがって、不等式 $0\cdot x+b>0$ が成り立つかどうかは $x$ によらず、$b>0$ かどうかだけで決まる。$b>0$ ならすべての $x$ で成り立ち、$b\le0$ ならどの $x$ でも成り立たない。$\ge$ のときも同じである。$\square$

係数が $0$ になる不等式
  1. $3x+1>3x-2$ は移項すると $0\cdot x+3>0$ で、$3>0$ なので解はすべての実数である。
  2. $2(x+1)\le2x-5$ は移項すると $0\cdot x+7\le0$ で、$7\le0$ は偽なので解はない。
$x$ の係数が文字の不等式

$a$ を定数として $ax>2$ を解く。$a$ の符号で 3 つに分ける。

  1. $a>0$ なら、両辺を $a$ で割って $x>\dfrac2a$。
  2. $a< 0$ なら、向きが逆になって $x< \dfrac2a$。
  3. $a=0$ なら $0\cdot x>2$ で、prop-lin-zero により解なし($0>2$ は偽)。
    たとえば $a=-1$ なら解は $x< -2$ で、$x=-3$ では $(-1)(-3)=3>2$ が成り立つ。場合を分けずに「$x>\dfrac2a$」と答えると、$a< 0$ と $a=0$ の場合に誤りになる(ex-lin-divide)。

2 つの文字の 1 次不等式

文字が $x$、$y$ の 2 つあるときも、$ax+by+c>0$($a$、$b$ の少なくとも一方は $0$ でない)の形の不等式を 1 次不等式という。この不等式を満たす点 $(x,y)$ 全体は、座標平面で直線 $ax+by+c=0$ の片側(半平面)になる。そのことは 不等式の表す領域と線形計画法 の「1 次不等式は直線の片側を表す」で示されている。

2 つの文字の 1 次不等式を点で確かめる

$x+2y-4>0$ を考える。$b=2>0$ なので、cor-lin-equivalent で $y$ について解くと $y>-\dfrac12x+2$ で、直線 $y=-\dfrac12x+2$ の上側の点全体である。

  1. 原点 $(0,0)$ は $0+0-4=-4< 0$ で満たさない。直線の下側にある。
  2. $(2,3)$ は $2+6-4=4>0$ で満たす。$x=2$ のとき直線の高さは $1$ で、$3>1$ なので上側にある。
  3. 直線の上の点 $(4,0)$ では値が $0$ で、$>$ の不等式は満たさない。

例と反例

解く途中の変形で、仮定を外したり、同値でない変形をしたりすると、解が変わる。

外した仮定・誤った変形崩れる主張ボックス
負の数を掛けたら向きを逆にする変形の前後で解が同じ(cor-lin-equivalent)ex-lin-keep-direction
割る数の符号がわかっている変形の前後で解が同じ(cor-lin-equivalent)ex-lin-divide
$x$ の係数 $a\ne0$解は半直線(thm-lin-main)ex-lin-zero-coefficient
使う変形は cor-lin-equivalent のもの変形の前後で解が同じex-lin-square
反例:負の数で割って向きを変えない

$-2x< 6$ の両辺を $-2$ で割り、向きを変えずに $x< -3$ とすると誤りである。$x=0$ は $0< 6$ で元の不等式を満たすが、$0< -3$ は成り立たない。正しくは $x>-3$ である。thm-lin-properties の 3 の仮定($c< 0$ なら向きが逆)を守らなかったためである。

反例:符号のわからない文字で割る

$ax>a$ の両辺を $a$ で割って「$x>1$」とすると、$a>0$ のときしか正しくない。$a=-1$ のとき不等式は $-x>-1$ で、解は $x< 1$ である。たとえば $x=0$ は $0>-1$ を満たすが、$0>1$ は満たさない。$a=0$ のときは $0>0$ で解がない。割る数が正か負か $0$ かがわからないときは、場合を分ける。

反例:両辺を 2 乗する

$x>-3$ の両辺を 2 乗して $x^2>9$ とすると、解が変わる。$x=0$ は $0>-3$ を満たすが、$0>9$ は満たさない。逆に $x=-4$ は $16>9$ を満たすが、$-4>-3$ は満たさない。2 乗は cor-lin-equivalent のどの変形でもなく、両辺の符号によって大小を保ったり逆にしたりするので、同値な変形にならない。両辺が $0$ 以上とわかっているときは、$p< q$ と $p^2< q^2$ が同値になる。

大学数学で見る:単調な関数と順序体

増加する関数と不等式

関数 $f$ が 狭義増加($s< t$ なら $f(s)< f(t)$)であるとき、実数 $x$、$c$ について、$f(x)>f(c)$ と $x>c$ は同値である。$f$ が 狭義減少($s< t$ なら $f(s)>f(t)$)なら、$f(x)>f(c)$ と $x< c$ は同値である。

3 つの場合に分ける

方針:$x$ と $c$ の大小の 3 つの場合(rem-lin-order の 1)を調べる。
狭義増加のとき。$x>c$ なら定義から $f(x)>f(c)$ である。逆に $x>c$ でないなら、$x=c$ か $x< c$ で、$x=c$ なら $f(x)=f(c)$、$x< c$ なら $f(x)< f(c)$ なので、どちらでも $f(x)>f(c)$ は成り立たない。したがって 2 つは同値である。狭義減少のときも同じように確かめられる。$\square$

$f(x)=ax+b$ は、$a>0$ なら狭義増加($s< t$ なら $f(t)-f(s)=a(t-s)>0$)、$a< 0$ なら狭義減少である。$f(\alpha)=0$($\alpha=-\dfrac ba$)なので、$ax+b>0$ は $f(x)>f(\alpha)$ と書け、prop-lin-monotone から thm-lin-main がもう一度得られる。1 次不等式が簡単に解けるのは、1 次関数が単調だからである。
また、thm-lin-properties の証明は rem-lin-order の 3 つの性質と四則計算の規則しか使っていない。このような性質をもつ数の体系を 順序体 といい、有理数全体も順序体である。したがって $3x>1$ を有理数の範囲で考えても、解は「$\dfrac13$ より大きい有理数全体」と同じ形になる。

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関連項目

参考文献

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