Lubin–Tate理論

同義語:Lubin-Tate理論Lubin–Tate形式群Lubin–Tate拡大Lubin–Tate theoryLubin–Tate formal group

概要

Lubin–Tate理論(Lubin–Tate theory)とは、局所体 $K$ の素元 $\pi$ ごとに、$\pi X$ で始まり $\pi$ を法として $X^q$ に合同な冪級数 $f$ を自己準同型にもつ形式群(Lubin–Tate 形式群)を作り、その $\pi^n$ 等分点を添加して $K$ の拡大(Lubin–Tate 拡大)を構成する理論である。これは Galois 群が $(\mathcal{O}_K/\pi^n)^\times$ の完全分岐アーベル拡大で、ノルム群は $\pi^{\mathbb{Z}}\times(1+\pi^n\mathcal{O}_K)$ である。不分岐拡大と合わせて最大アーベル拡大が得られ、局所相互写像が等分点への作用として書ける。$\mathbb{Q}_p$、$\pi=p$ では円分体になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 局所体, 形式群, 不分岐拡大と完全分岐拡大, 局所類体論

Lubin–Tate理論(Lubin–Tate theory)は、局所体 $K$ の素元 $\pi$ ごとに、$\mathcal{O}_K$ の元を自己準同型として持つ 1 次元の形式群(Lubin–Tate 形式群)を作り、その $\pi^n$ 等分点を $K$ に添加して完全分岐アーベル拡大(Lubin–Tate 拡大)を構成する理論である。$\mathbb{Q}_p$ と $\pi=p$ では、形式群は乗法群 $(1+X)(1+Y)-1$、等分点は $\zeta-1$($\zeta$ は $1$ の $p^n$ 乗根)になり、Lubin–Tate 拡大は円分体 $\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n})$ になる。一般の $K$ でも、Lubin–Tate 拡大と不分岐拡大とで $K$ の最大アーベル拡大が尽くされ、局所相互写像が等分点への作用として明示的に書ける。
この記事では、形式群の存在と一意性を与える Lubin–Tate の補題、形式群と $\mathcal{O}_K$ の作用の構成、等分点の加群の構造、Lubin–Tate 拡大が次数 $(q-1)q^{n-1}$ の完全分岐アーベル拡大であることを証明する。局所相互写像との一致は、局所類体論 の記事の相互写像の存在を前提に、所在を示して述べる。

設定と記号

$K$ を 局所体 の記事の定義「局所体」の意味の局所体とし、整数環を $\mathcal{O}=\mathcal{O}_K$、素元を $\pi$、剰余体を $k=\mathcal{O}/\pi\mathcal{O}$、その元の個数を $q$、$k$ の標数を $p$ とする。単数群を $U_K=\mathcal{O}^\times$、$U_K^{(n)}=1+\pi^n\mathcal{O}$ と書く。$K$ の分離閉包 $K^{\mathrm{sep}}$ を固定し、$K$ の絶対値の $K^{\mathrm{sep}}$ への延長を $|\cdot|$ とする(各有限次拡大の上では一意に延びる。局所類体論 の記事の注意「使う基本事実」の (F1))。$\bar{\mathfrak{m}}:=\{x\in K^{\mathrm{sep}}\mid |x|<1\}$ とおく。
形式的冪級数環 $\mathcal{O}[\![X_1,\dots,X_m]\!]$(形式的冪級数)の 2 つの元が $\deg r$ を法として合同($\Phi\equiv\Psi\bmod\deg r$)であるとは、全次数が $r$ 未満の項がすべて一致することをいう。$\pi$ を法として合同とは、差のすべての係数が $\pi\mathcal{O}$ に属することをいう。定数項が $0$ の冪級数どうしの代入 $\Phi(\Psi_1,\dots,\Psi_m)$ は、各次数の係数が有限和で決まるので定義できる。
形式群則とその準同型は 形式群 の記事の定義「一次元可換形式群則」「形式群則の準同型」に従う。すなわち $F(X,Y)\in\mathcal{O}[\![X,Y]\!]$ が形式群則であるとは、$F(X,0)=X$、$F(0,Y)=Y$、結合律、可換律を満たすことであり、$F$ から $G$ への準同型とは $h(X)\in X\mathcal{O}[\![X]\!]$ で $h(F(X,Y))=G(h(X),h(Y))$ となるものである。$F$ の自己準同型の全体 $\operatorname{End}(F)$ は、加法 $(h_1+_Fh_2)(X)=F(h_1(X),h_2(X))$ と合成を積とする環である(同じ記事の命題「自己準同型環」)。

Lubin–Tate 形式群

Lubin–Tate級数

$K$ の素元 $\pi$ について、冪級数 $f(X)\in\mathcal{O}[\![X]\!]$ で
$$ f(X)\equiv\pi X\bmod\deg2,\qquad f(X)\equiv X^q\bmod\pi $$
を満たすものを、$\pi$ についての Lubin–Tate 級数という。その全体を $\mathcal{F}_\pi$ と書く。

最も簡単な例は多項式 $f(X)=\pi X+X^q$ である。$K=\mathbb{Q}_p$、$\pi=p$ なら $f(X)=(1+X)^p-1=pX+\binom p2X^2+\dots+X^p$ も $\mathcal{F}_p$ に属する($\binom pj$ は $0< j< p$ で $p$ の倍数)。

Lubin–Tate の補題

Lubin–Tateの補題

$f,g\in\mathcal{F}_\pi$ とし、$a_1,\dots,a_m\in\mathcal{O}$ について 1 次式 $\ell(X_1,\dots,X_m)=\sum_ia_iX_i$ をとる。このとき
$$ \Phi\equiv\ell\bmod\deg2,\qquad f\bigl(\Phi(X_1,\dots,X_m)\bigr)=\Phi\bigl(g(X_1),\dots,g(X_m)\bigr) $$
を満たす $\Phi\in\mathcal{O}[\![X_1,\dots,X_m]\!]$ がただ 1 つ存在する。

次数ごとに係数を決める

$X=(X_1,\dots,X_m)$、$g(X):=(g(X_1),\dots,g(X_m))$ と書く。$r\ge1$ についての帰納法で、次の条件を満たす次数 $r$ 以下の多項式 $\Phi_r\in\mathcal{O}[X]$ があり、しかも $\Phi_r$ はこの条件でただ 1 つに決まることを示す:
$$ \Phi_r\equiv\ell\bmod\deg2,\qquad f(\Phi_r(X))\equiv\Phi_r(g(X))\bmod\deg(r+1). $$
$r=1$ では $\Phi_1=\ell$ に限る(1 次の部分は $\ell$ と決められ、$f(\ell)\equiv\pi\ell\equiv\ell(g(X))\bmod\deg2$)。
$\Phi_r$ が得られたとし、$\Phi_{r+1}=\Phi_r+\Delta$($\Delta$ は $r+1$ 次の斉次多項式)の形で探す。
$\Delta$ の効き方。 $f(Y)=\pi Y+\sum_{j\ge2}c_jY^j$ と書く。$\Phi_r$ は定数項をもたないので、$j\ge2$ では $(\Phi_r+\Delta)^j-\Phi_r^j$ の項は全次数 $r+2$ 以上であり、
$$ f(\Phi_r+\Delta)\equiv f(\Phi_r)+\pi\Delta\bmod\deg(r+2) $$
である。一方 $g(X_i)\equiv\pi X_i\bmod\deg2$ で $\Delta$ は $r+1$ 次斉次なので、$\Delta(g(X))\equiv\pi^{r+1}\Delta(X)\bmod\deg(r+2)$ である。したがって、$E$ を $\Phi_r(g(X))-f(\Phi_r(X))$ の $r+1$ 次の部分とすると(帰納法の仮定によりそれより低い次数の部分は $0$)、
$$ \Phi_{r+1}(g(X))-f(\Phi_{r+1}(X))\equiv E-(\pi-\pi^{r+1})\Delta\bmod\deg(r+2) $$
となる。よって条件を満たす $\Delta$ は $\Delta=E/(\pi-\pi^{r+1})$ に限る。
係数が $\mathcal{O}$ に入ること。 $\pi-\pi^{r+1}=\pi(1-\pi^r)$ で $1-\pi^r$ は単数なので、$E$ の係数が $\pi\mathcal{O}$ に属することを示せばよい。剰余体 $k$ の元 $c$ は $c^q=c$ を満たし、$k$ の標数は $p$ で $q$ は $p$ の冪なので、$k$ 係数の冪級数 $P$ について $P(X)^q=P(X_1^q,\dots,X_m^q)$ である。$f\equiv Y^q$、$g(X_i)\equiv X_i^q\bmod\pi$ なので、$\pi$ を法として
$$ f(\Phi_r(X))\equiv\Phi_r(X)^q\equiv\Phi_r(X_1^q,\dots,X_m^q)\equiv\Phi_r(g(X)) $$
であり、$E$ の係数は $\pi\mathcal{O}$ に属する。
極限。 こうして得た $\Phi_r$ は $r$ 次以下の部分が $\Phi_{r+1}$ と一致するので、$\Phi:=\lim_r\Phi_r\in\mathcal{O}[\![X]\!]$($r$ 次の係数は $\Phi_r$ のもの)が定まり、各 $r$ で $f(\Phi)\equiv\Phi(g)\bmod\deg(r+1)$ なので $f(\Phi)=\Phi(g)$ である。一意性:別の解 $\Psi$ の $r$ 次以下の部分は、上の条件を満たすので $\Phi_r$ に等しい。$r$ は任意なので $\Psi=\Phi$ である。$\square$

一意性の議論は係数が $\mathcal{O}$ に入ることを使っていないので、$K$ 係数の冪級数の中でも解はただ 1 つである。以下の構成はすべて「両辺が同じ補題の解だから等しい」という形で進む。

形式群と $\mathcal{O}$ の作用

Lubin–Tate形式群

$\pi$ を $K$ の素元とする。
(i) $f\in\mathcal{F}_\pi$ について、$F_f\equiv X+Y\bmod\deg2$ かつ $f(F_f(X,Y))=F_f(f(X),f(Y))$ を満たす $F_f\in\mathcal{O}[\![X,Y]\!]$ がただ 1 つあり、$F_f$ は $\mathcal{O}$ 上の一次元可換形式群則で、$f$ はその自己準同型である。
(ii) $f,g\in\mathcal{F}_\pi$、$a\in\mathcal{O}$ について、$[a]_{f,g}\equiv aX\bmod\deg2$ かつ $f\circ[a]_{f,g}=[a]_{f,g}\circ g$ を満たす $[a]_{f,g}\in\mathcal{O}[\![X]\!]$ がただ 1 つあり、$F_g$ から $F_f$ への準同型である。$[a]_f:=[a]_{f,f}$ と書く。
(iii) $f,g,h\in\mathcal{F}_\pi$、$a,b\in\mathcal{O}$ について
$$ [a]_{f,g}\circ[b]_{g,h}=[ab]_{f,h},\qquad F_f\bigl([a]_{f,g}(X),[b]_{f,g}(X)\bigr)=[a+b]_{f,g}(X),\qquad [\pi]_f=f,\quad [1]_f=X $$
である。とくに $a\mapsto[a]_f$ は単射な環準同型 $\mathcal{O}\to\operatorname{End}(F_f)$ であり、$[1]_{f,g}\colon F_g\to F_f$ は $\mathcal{O}$ の作用と両立する同型で、逆は $[1]_{g,f}$ である。

両辺が同じ補題の解であることを確かめる

要点:(i)〜(iii) の各等式は、両辺がともに lem-lt-lemma の同じ条件(1 次の部分と、$f$・$g$ との可換性)を満たすことを確かめ、補題の一意性から等しいと結論する。たとえば結合律では、$F_f(F_f(X,Y),Z)$ と $F_f(X,F_f(Y,Z))$ がともに $X+Y+Z$ で始まり $f$ と可換であることを見る。

詳しい証明を開く

(i):$F_f$ の存在と一意性は lem-lt-lemma($m=2$、$\ell=X+Y$、$g=f$)である。

  • 単位律:$G(X):=F_f(X,0)$ は $G\equiv X\bmod\deg2$ で、$f(0)=0$ から $f(G(X))=F_f(f(X),f(0))=G(f(X))$ を満たす。$X$ 自身も同じ条件を満たすので、補題($m=1$、$\ell=X$)の一意性により $G=X$ である。$F_f(0,Y)=Y$ も同様である。
  • 可換律:$F_f(Y,X)$ も $\equiv X+Y$ で $f(F_f(Y,X))=F_f(f(Y),f(X))$ を満たすので、一意性により $F_f(X,Y)$ に等しい。
  • 結合律:$\Phi_1:=F_f(F_f(X,Y),Z)$ と $\Phi_2:=F_f(X,F_f(Y,Z))$ はともに $\equiv X+Y+Z\bmod\deg2$ で、$f(\Phi_1)=F_f(f(F_f(X,Y)),f(Z))=F_f(F_f(f(X),f(Y)),f(Z))=\Phi_1(f(X),f(Y),f(Z))$、$\Phi_2$ も同様である。補題($m=3$)の一意性により $\Phi_1=\Phi_2$ である。
  • $f$ が自己準同型であることは $F_f$ の定義式そのものである。

(ii):存在と一意性は補題($m=1$、$\ell=aX$)である。準同型であること:$\Psi_1:=[a]_{f,g}(F_g(X,Y))$、$\Psi_2:=F_f([a]_{f,g}(X),[a]_{f,g}(Y))$ はともに $\equiv aX+aY\bmod\deg2$ で、 $$f(\Psi_1)=[a]_{f,g}\bigl(g(F_g(X,Y))\bigr)=[a]_{f,g}\bigl(F_g(g(X),g(Y))\bigr)=\Psi_1(g(X),g(Y)),$$ $$ f(\Psi_2)=F_f\bigl(f([a]_{f,g}(X)),f([a]_{f,g}(Y))\bigr)=F_f\bigl([a]_{f,g}(g(X)),[a]_{f,g}(g(Y))\bigr)=\Psi_2(g(X),g(Y)) $$ である。補題($m=2$、$\ell=aX+aY$、左に $f$、右に $g$)の一意性により $\Psi_1=\Psi_2$ である。

(iii):左の式の両辺は $\equiv abX$ で、$f\circ[a]_{f,g}\circ[b]_{g,h}=[a]_{f,g}\circ g\circ[b]_{g,h}=[a]_{f,g}\circ[b]_{g,h}\circ h$ なので、$[ab]_{f,h}$ と同じ補題の解である。中央の式の左辺は $\equiv(a+b)X$ で、(i) の定義式から $f(F_f([a]_{f,g},[b]_{f,g}))=F_f(f\circ[a]_{f,g},f\circ[b]_{f,g})=F_f([a]_{f,g}\circ g,[b]_{f,g}\circ g)$ を満たす。$f$ 自身は $\equiv\pi X$ で $f\circ f=f\circ f$ なので $[\pi]_f=f$、$X$ は $\equiv1\cdot X$ で $f\circ X=X\circ f$ なので $[1]_f=X$ である。

$f=g=h$ とすると、$a\mapsto[a]_f$ は和と積を $\operatorname{End}(F_f)$ の和と合成に写し、$1$ を $X$ に写す環準同型で、$[a]_f$ の 1 次の係数が $a$ なので単射である。$[1]_{f,g}\circ[1]_{g,f}=[1]_{f,f}=X$ と対称性から $[1]_{f,g}$ は同型で、$[1]_{f,g}\circ[a]_g=[a]_{f,g}=[a]_f\circ[1]_{f,g}$ なので $\mathcal{O}$ の作用と両立する。$\square$

Lubin–Tate形式群

thm-lt-formal-group の $F_f$ を、$\mathcal{O}$ の作用 $a\mapsto[a]_f$ とあわせて、$\pi$ についての Lubin–Tate 形式群(Lubin–Tate 形式 $\mathcal{O}$ 加群)という。(iii) により、同じ $\pi$ についての Lubin–Tate 形式群は $f$ によらず互いに同型である。

$n\in\mathbb{Z}$ について、形式群 の記事の定義「$n$ 倍写像」の $[n]_{F_f}$ は、$F_f$ の自己準同型なので $f$ と可換で、1 次の係数が $n$ である。一意性により $[n]_{F_f}=[n]_f$ であり、$\mathcal{O}$ の作用は整数倍写像を延長したものになっている。

乗法形式群

$K=\mathbb{Q}_p$、$\pi=p$、$f(X)=(1+X)^p-1$ とすると、$F_f(X,Y)=X+Y+XY$(乗法形式群)で、$u\in\mathbb{Z}_p$ について $[u]_f(X)=(1+X)^u-1=\sum_{j\ge1}\binom ujX^j$ である。

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$1+F$ を $(1+X)(1+Y)$ とすると $f(F)=(1+X)^p(1+Y)^p-1=(1+f(X))(1+f(Y))-1=F(f(X),f(Y))$ で、$F\equiv X+Y\bmod\deg2$ なので、一意性により $F_f=X+Y+XY$ である。$\binom uj=u(u-1)\cdots(u-j+1)/j!$ は $u$ の多項式で、整数 $u$ で整数値をとり、$\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}_p$ で稠密、$\mathbb{Z}_p$ は閉なので、$u\in\mathbb{Z}_p$ でも $\mathbb{Z}_p$ に属する。$((1+X)^u)^p=((1+X)^p)^u$ の各係数は $u$ の多項式の等式で、$0$ 以上の整数 $u$ で成り立つので、すべての $u\in\mathbb{Z}_p$ で成り立つ。よって $(1+X)^u-1$ は $\equiv uX$ で $f$ と可換であり、$[u]_f$ に等しい。

等分点

$\bar{\mathfrak{m}}$ 上の $\mathcal{O}$ 加群の構造

$x,y\in\bar{\mathfrak{m}}$ はある有限次拡大 $L\subset K^{\mathrm{sep}}$ に属し、$L$ は完備(局所体 の記事の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1)なので、定数項が $0$ で係数が $\mathcal{O}$ の冪級数 $\Phi$ について $\Phi(x,y)$ は $L$ で収束して $\bar{\mathfrak{m}}\cap L$ に属する。冪級数の等式は代入しても保たれる(部分和が多項式の等式を満たし、極限をとればよい)。したがって $f\in\mathcal{F}_\pi$ について
$$ x+_fy:=F_f(x,y),\qquad a\cdot_fx:=[a]_f(x)\qquad(x,y\in\bar{\mathfrak{m}},\ a\in\mathcal{O}) $$
により $\bar{\mathfrak{m}}$ は $\mathcal{O}$ 加群になる(加群の公理は thm-lt-formal-group の恒等式から従い、$x$ の逆元は $[-1]_f(x)$ である)。これを $\bar{\mathfrak{m}}_f$ と書く。$\tau\in\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{sep}}/K)$ は各有限次 Galois 拡大の上で距離を保ち((F1))、冪級数の係数を固定するので、$\tau(x+_fy)=\tau(x)+_f\tau(y)$、$\tau(a\cdot_fx)=a\cdot_f\tau(x)$ である。すなわち Galois 群は $\bar{\mathfrak{m}}_f$ に $\mathcal{O}$ 線形に作用する。

等分点とLubin–Tate拡大

$f\in\mathcal{F}_\pi$ と $n\ge1$ について、$\bar{\mathfrak{m}}_f$ の $\pi^n$ 等分点の加群を
$$ F_f[\pi^n]:=\{x\in\bar{\mathfrak{m}}\mid [\pi^n]_f(x)=0\} $$
とし、$K_{\pi,n}:=K(F_f[\pi^n])$ を Lubin–Tate 拡大という。$K_\pi:=\bigcup_{n\ge1}K_{\pi,n}$ とおく。

$[\pi^n]_f=f\circ\dots\circ f$($n$ 回の合成)なので、$F_f[\pi^n]$ は $f$ の $n$ 回合成 $f^{(n)}$ の $\bar{\mathfrak{m}}$ の中の零点の集合である。

等分点の加群

$f\in\mathcal{F}_\pi$、$n\ge1$ とする。
(i) $F_f[\pi^n]$ はちょうど $q^n$ 個の元からなり、$\mathcal{O}$ 加群として $\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O}$ に同型である。とくに $a\mapsto[a]_f$ は同型 $(\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O})^\times\cong\operatorname{Aut}_{\mathcal{O}}(F_f[\pi^n])$ を与える。
(ii) $g\in\mathcal{F}_\pi$ なら $[1]_{g,f}$ は $\mathcal{O}$ 加群の同型 $F_f[\pi^n]\to F_g[\pi^n]$ を与え、$K(F_f[\pi^n])=K(F_g[\pi^n])$ である。したがって $K_{\pi,n}$ は $\pi$ だけで決まり、$f$ によらない。

$f=\pi X+X^q$ の場合に帰着する

要点:(ii) は同型 $[1]_{g,f}$ が等分点を等分点に写すことから従う。(i) は $f=\pi X+X^q$ の場合に、方程式 $f(t)=y$ が $\bar{\mathfrak{m}}$ にちょうど $q$ 個の相異なる根をもつことを確かめ、$q^n$ 個の等分点の中に位数がちょうど $\pi^n$ の元 $\lambda_n$ を作って $a\mapsto[a]_f(\lambda_n)$ が同型であることを示す。

詳しい証明を開く

(ii):thm-lt-formal-group の (iii) により $[1]_{g,f}\circ[\pi^n]_f=[\pi^n]_{g,f}=[\pi^n]_g\circ[1]_{g,f}$ であり、$[1]_{g,f}$ は逆 $[1]_{f,g}$ をもつ $\mathcal{O}$ 線形な写像 $\bar{\mathfrak{m}}_f\to\bar{\mathfrak{m}}_g$ なので、$F_f[\pi^n]$ を $F_g[\pi^n]$ の上へ同型に写す。$x\in F_f[\pi^n]$ について $[1]_{g,f}(x)$ は $K(x)$ の元の極限なので $K(x)$ に属する($K(x)$ は完備)。よって $K(F_g[\pi^n])\subset K(F_f[\pi^n])$ で、対称性から等号が成り立つ。

(i):(ii) により $f_0(X):=\pi X+X^q$ の場合に示せばよい。

段 1:$y\in\bar{\mathfrak{m}}$ について、$f_0(t)=y$ の根はちょうど $q$ 個で、すべて $\bar{\mathfrak{m}}$ に属する。 $|t|\ge1$ なら $|\pi t|<|t|\le|t|^q$、$|y|<1\le|t|^q$ なので $|f_0(t)-y|=|t|^q\ne0$ である。よって $q$ 次多項式 $f_0(T)-y$ の根はすべて $|t|<1$ を満たす。根 $t$ で $f_0'(t)=qt^{q-1}+\pi$ は $0$ でない:$K$ の標数が $p$ なら $q=0$ で $f_0'=\pi$、標数 $0$ なら $|q|\le|p|\le|\pi|$ と $|t^{q-1}|<1$ から $|qt^{q-1}|<|\pi|$ である。よって根は相異なり、$f_0(T)-y$ は $K(y)$ 上の分離多項式なので、根は $K^{\mathrm{sep}}$ に属する。

段 2:個数。 $x\in\bar{\mathfrak{m}}$ なら $f_0(x)\in\bar{\mathfrak{m}}$ なので、$F[\pi^n]:=F_{f_0}[\pi^n]$ は $F[\pi^{n-1}]$ の各元 $y$ についての $f_0(t)=y$ の根の集合の、交わらない和である。段 1 と帰納法($F[\pi^0]=\{0\}$)により $|F[\pi^n]|=q^n$ である。

段 3:加群の構造。 $F[\pi^n]$ は $\mathcal{O}$ 線形写像 $[\pi^n]_{f_0}$ の核なので部分加群である。$\lambda_1\in F[\pi]\setminus\{0\}$($q\ge2$ 個の元がある)をとり、段 1 により $f_0(\lambda_j)=\lambda_{j-1}$ となる $\lambda_j\in\bar{\mathfrak{m}}$ を順にとる。$\lambda_n\in F[\pi^n]$ で、$j< n$ なら $[\pi^j]_{f_0}(\lambda_n)=\lambda_{n-j}\ne0$ である。$\mathcal{O}$ 線形写像 $\mathcal{O}\to F[\pi^n]$、$a\mapsto[a]_{f_0}(\lambda_n)$ の核は $\pi^n\mathcal{O}$ を含む。$a\notin\pi^n\mathcal{O}$ なら $a=\pi^ju$($j< n$、$u\in U_K$)で、$[u]_{f_0}$ は逆 $[u^{-1}]_{f_0}$ をもつので $[a]_{f_0}(\lambda_n)=[u]_{f_0}(\lambda_{n-j})\ne0$ である。よって単射 $\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O}\to F[\pi^n]$ が得られ、両辺の元の個数はともに $q^n$ なので同型である。

最後の主張は、$\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O}$ の $\mathcal{O}$ 線形な自己同型が $1$ の行き先 $u\bmod\pi^n$(単数)で決まり、$x\mapsto ux$ の形をしていることから従う。$\square$

Lubin–Tate 拡大

Lubin–Tate拡大は完全分岐アーベル拡大

$\pi$ を $K$ の素元、$f\in\mathcal{F}_\pi$、$n\ge1$ とする。
(i) $K_{\pi,n}/K$ は次数 $(q-1)q^{n-1}$ の完全分岐な Galois 拡大である。
(ii) 各 $\tau\in\operatorname{Gal}(K_{\pi,n}/K)$ について、$\tau(\lambda)=[u]_f(\lambda)$ がすべての $\lambda\in F_f[\pi^n]$ で成り立つ $u\in U_K$ が、$U_K^{(n)}$ を法としてただ 1 つあり、$\tau\mapsto u$ は群の同型
$$ \operatorname{Gal}(K_{\pi,n}/K)\xrightarrow{\ \sim\ }(\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O})^\times\cong U_K/U_K^{(n)} $$
である。とくに $K_{\pi,n}/K$ はアーベル拡大である。
(iii) $\lambda\in F_f[\pi^n]\setminus F_f[\pi^{n-1}]$ なら、$K_{\pi,n}=K(\lambda)$ で、$\lambda$ は $K_{\pi,n}$ の素元である。$f=\pi X+X^q$ のとき $\lambda$ の最小多項式は
$$ \varphi_n(X)=\pi+\bigl(f^{(n-1)}(X)\bigr)^{q-1} $$
($f^{(0)}=X$)で、$N_{K_{\pi,n}/K}(-\lambda)=\pi$ である。

Galois群の埋め込みとEisenstein多項式

prop-lt-torsion の (ii) により $K_{\pi,n}$ は $f$ によらず、Galois 群の作用も $[1]_{g,f}$ を通して対応するので、$f=\pi X+X^q$ としてよい。(iii) の前半も一般の $f$ に移る:$f_0:=\pi X+X^q$ とすると $[1]_{f,f_0}(X)=X\varepsilon(X)$($\varepsilon\in\mathcal{O}[\![X]\!]$、$\varepsilon(0)=1$)なので、$\lambda_0\in F_{f_0}[\pi^n]\setminus F_{f_0}[\pi^{n-1}]$ の像 $\lambda=[1]_{f,f_0}(\lambda_0)$ は $|\lambda|=|\lambda_0|$ を満たし、prop-lt-torsion の (ii) の証明と同じく $K(\lambda)=K(\lambda_0)$ である。$[1]_{f,f_0}$ は $F_{f_0}[\pi^n]\setminus F_{f_0}[\pi^{n-1}]$ を $F_f[\pi^n]\setminus F_f[\pi^{n-1}]$ の上へ写す。
上からの評価。 $f^{(n)}$ は次数 $q^n$ のモニック多項式で、$F_f[\pi^n]$ はその $q^n$ 個の相異なる根であり(prop-lt-torsion の証明の段 2)、根はこれで尽きる。よって $f^{(n)}$ は分離多項式で、$K_{\pi,n}$ はその最小分解体なので $K$ の Galois 拡大である。Galois 群は $F_f[\pi^n]$ に $\mathcal{O}$ 線形に作用するので(上の節の冒頭)、準同型
$$ \rho\colon\operatorname{Gal}(K_{\pi,n}/K)\to\operatorname{Aut}_{\mathcal{O}}(F_f[\pi^n])\cong(\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O})^\times $$
が得られる(右の同型は prop-lt-torsion の (i))。$K_{\pi,n}$ は $F_f[\pi^n]$ で生成されるので $\rho$ は単射であり、$[K_{\pi,n}:K]\le|(\mathcal{O}/\pi^n\mathcal{O})^\times|=(q-1)q^{n-1}$ である。
下からの評価。 $f^{(m)}$ はモニックで、$f\equiv X^q\bmod\pi$ から帰納的に $f^{(m)}\equiv X^{q^m}\bmod\pi$、また $f^{(m)}(0)=0$ である。$f^{(n)}=f\circ f^{(n-1)}=f^{(n-1)}\cdot\bigl(\pi+(f^{(n-1)})^{q-1}\bigr)=f^{(n-1)}\varphi_n$ である。$\varphi_n$ は次数 $(q-1)q^{n-1}$ のモニック多項式で、$\varphi_n\equiv X^{(q-1)q^{n-1}}\bmod\pi$(最高次以外の係数は $\pi\mathcal{O}$ に属する)、定数項は $\pi+f^{(n-1)}(0)^{q-1}=\pi$ なので、不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定義「Eisenstein多項式」の意味の Eisenstein 多項式である。$\lambda\in F_f[\pi^n]\setminus F_f[\pi^{n-1}]$ なら $f^{(n)}(\lambda)=0$、$f^{(n-1)}(\lambda)\ne0$ なので $\varphi_n(\lambda)=0$ である。同じ記事の定理「Eisenstein多項式が定める拡大」により、$\varphi_n$ は既約で、$K(\lambda)/K$ は次数 $(q-1)q^{n-1}$ の完全分岐拡大であり、$\lambda$ はその素元である。
結論。 $K(\lambda)\subset K_{\pi,n}$ と 2 つの評価から $K(\lambda)=K_{\pi,n}$、$[K_{\pi,n}:K]=(q-1)q^{n-1}$ で、$\rho$ は位数の等しい群の間の単射なので同型である。これで (i)(ii)(iii) の前半が示された。ノルムは最小多項式の定数項の $(-1)^{d}$ 倍($d=\deg\varphi_n$)なので $N(\lambda)=(-1)^d\pi$、$N(-\lambda)=(-1)^dN(\lambda)=\pi$ である。$\square$

$F_f[\pi^n]\subset F_f[\pi^{n+1}]$ なので $K_{\pi,n}\subset K_{\pi,n+1}$ であり、同型 $\rho$ は制限と $U_K/U_K^{(n+1)}\to U_K/U_K^{(n)}$ に両立する。Galois群 の記事の定理「副有限群としてのGalois群」により
$$ \operatorname{Gal}(K_\pi/K)\cong\varprojlim_n U_K/U_K^{(n)}\cong U_K $$
である(最後の同型は $U_K$ の完備性とコンパクト性による)。$K_\pi/K$ は完全分岐な無限次アーベル拡大である。

局所相互写像との一致

局所類体論 の記事の定理「局所相互法則」の相互写像 $\operatorname{rec}_K\colon K^\times\to\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K)$(素元を不分岐拡大の算術的 Frobenius に写す正規化)について、Lubin–Tate 拡大は次のように相互写像を明示的に与える。$K^{\mathrm{ur}}$ を $K$ の最大不分岐拡大とする。

Lubin–Tate拡大と局所相互写像

$\pi$ を $K$ の素元、$f\in\mathcal{F}_\pi$ とする。
(i) $K^{\mathrm{ab}}=K_\pi K^{\mathrm{ur}}$ である。
(ii) $\operatorname{rec}_K(\pi)$ は $K_\pi$ の上で恒等写像である。
(iii) $u\in U_K$、$n\ge1$、$\lambda\in F_f[\pi^n]$ について $\operatorname{rec}_K(u)(\lambda)=[u^{-1}]_f(\lambda)$ である。

局所相互写像との一致の所在

この記事では thm-lt-reciprocity を証明しない。(iii) は LT65 の冒頭の式 (2)(p. 380)、(i)(ii) は同論文 §2 の Theorem 3 とその Corollary(pp. 385–386)にある。Neu99 第 V 章では (iii) が Theorem (5.5)(p. 349)、(i) が Corollary (5.7)(p. 350)である。証明の骨格は、(ii)(iii) で $K^\times$ から $\operatorname{Gal}(K_\pi K^{\mathrm{ur}}/K)$ への準同型 $r_\pi$ を定義し、それが $\pi$ の取り替えによらないことを、Lubin–Tate 形式群が $K^{\mathrm{ur}}$ の完備化の整数環の上で互いに同型になることから示すものである。相互写像との一致には、thm-lt-extension の (iii) の「$\pi$ は $K_{\pi,n}$ からのノルム」が使われる。

Lubin–Tate拡大のノルム群

$N_{K_{\pi,n}/K}(K_{\pi,n}^\times)=\pi^{\mathbb{Z}}\times U_K^{(n)}$ である。

相互写像の核を読む

$a=\pi^mu$($u\in U_K$)とする。thm-lt-reciprocity の (ii)(iii) により、$\operatorname{rec}_K(a)$ は $F_f[\pi^n]$ に $[u^{-1}]_f$ として作用する。prop-lt-torsion の (i) により、これが恒等写像であることは $u^{-1}\equiv1\pmod{\pi^n}$、すなわち $u\in U_K^{(n)}$ と同値である。局所類体論 の記事の定理「局所相互法則」の (ii) により、ノルム群は $a\mapsto\operatorname{rec}_K(a)|_{K_{\pi,n}}$ の核なので、主張が従う。$\square$

指数は $(K^\times:\pi^{\mathbb{Z}}\times U_K^{(n)})=(U_K:U_K^{(n)})=(q-1)q^{n-1}=[K_{\pi,n}:K]$ で、局所相互法則の指数の等式と合っている。

例

円分体

$\mathbb{Q}_p$ の円分拡大

$K=\mathbb{Q}_p$、$\pi=p$、$f(X)=(1+X)^p-1$ とする。ex-lt-multiplicative により $[p^n]_f(x)=(1+x)^{p^n}-1$ なので、$F_f[\pi^n]=\{\zeta-1\mid\zeta^{p^n}=1\}$ であり、
$$ K_{p,n}=\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n}),\qquad [\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n}):\mathbb{Q}_p]=(p-1)p^{n-1} $$
である。thm-lt-extension の (ii) の同型は $\tau(\zeta)=\zeta^u$($u\in(\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z})^\times$)という通常の同型 $\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n})/\mathbb{Q}_p)\cong(\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z})^\times$ である($1+[u]_f(\zeta-1)=\zeta^u$)。thm-lt-reciprocity の (iii) は $\operatorname{rec}_{\mathbb{Q}_p}(u)(\zeta)=\zeta^{u^{-1}}$($u\in\mathbb{Z}_p^\times$)となり、cor-lt-norm-group は $\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n})$ のノルム群が $p^{\mathbb{Z}}\times(1+p^n\mathbb{Z}_p)$ であることを言う($n=1$ は 局所類体論 の記事の例「$\mathbb{Q}_p(\zeta_p)$ のノルム群」)。
$\mathbb{Q}_p$ の不分岐拡大は $1$ の冪根(位数が $p$ と素)で生成される(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「不分岐拡大の存在と一意性」)ので、thm-lt-reciprocity の (i) から、$\mathbb{Q}_p$ の最大アーベル拡大は $1$ の冪根をすべて添加した体である。これは局所版の Kronecker–Weberの定理 にあたる(Neu99 第 V 章 Corollary (5.7), p. 350 の直前の文)。

1 段目の拡大と素元の取り替え

1段目のLubin–Tate拡大

$f(X)=\pi X+X^q$ とする。$F_f[\pi]$ は $0$ と $X^{q-1}=-\pi$ の $q-1$ 個の根からなり、$K_{\pi,1}=K(\lambda)$、$\lambda^{q-1}=-\pi$ である。$K$ は $1$ の $(q-1)$ 乗根の群 $\mu_{q-1}(K)$ を含み(局所体 の記事の命題「Teichmüller代表元」)、$\zeta\in\mu_{q-1}(K)$ について $f(\zeta X)=\zeta\pi X+\zeta^qX^q=\zeta f(X)$ なので、一意性により $[\zeta]_f(X)=\zeta X$ である。$u\in U_K$ の作用は $u\bmod\pi$ だけで決まるので、$u\equiv\zeta\pmod\pi$ となる $\zeta$(Teichmüller 代表元)について $[u]_f(\lambda)=\zeta\lambda$ である。よって $\operatorname{Gal}(K_{\pi,1}/K)\cong k^\times$ は根 $\lambda$ に $1$ の $(q-1)$ 乗根を掛ける作用であり、$K_{\pi,1}/K$ は Kummer 拡大 $K(\sqrt[q-1]{-\pi})$ である。

素元の取り替え

$K=\mathbb{Q}_3$($q=3$)で ex-lt-level-one を使うと、$\pi=3$ では $K_{3,1}=\mathbb{Q}_3(\sqrt{-3})$、$\pi=-3$ では $K_{-3,1}=\mathbb{Q}_3(\sqrt3)$ である。この 2 つの体は異なる。

確認を開く

$\mathbb{Q}_3(\sqrt a)=\mathbb{Q}_3(\sqrt b)$($a,b$ は平方でない)なら $\sqrt b=c+d\sqrt a$($c,d\in\mathbb{Q}_3$)と書け、2 乗して比べると $cd=0$ で、$d=0$ なら $b=c^2$ となり矛盾するので $c=0$、$ab=(ad)^2$ は平方である。$(-3)\cdot3=-9$ が $\mathbb{Q}_3$ で平方なら $-1$ が平方になるが、$\mathbb{Q}_3$ は $x^2=-1$ の解をもたない(局所体 の記事の例「虚数単位を含む $p$ 進数体」)。

したがって $K_\pi$ そのものは素元 $\pi$ の取り方によるが、thm-lt-reciprocity の (i) により、不分岐拡大との合成 $K_\pi K^{\mathrm{ur}}=K^{\mathrm{ab}}$ は $\pi$ によらない。実際 $\mathbb{Q}_3(\sqrt{-3})$ と $\mathbb{Q}_3(\sqrt3)$ の合成は $\mathbb{Q}_3(\sqrt3,\sqrt{-1})$ で、$\mathbb{Q}_3(\sqrt{-1})$ は 2 次の不分岐拡大である。ノルム群も $3^{\mathbb{Z}}\times U^{(1)}$ と $(-3)^{\mathbb{Z}}\times U^{(1)}$ で異なる。

反例

Lubin–Tate 級数の 2 つの条件と、$X^q$ の指数が剰余体の元の個数 $q$ であることは、どれも外せない。

外す条件反例成り立たなくなること
$f\equiv X^q\bmod\pi$$f(X)=\pi X$ と形式群 $X+Y$等分点 $F_f[\pi]$ が $q$ 個あること($0$ だけになる)
1 次の係数が素元$K=\mathbb{Q}_3$、$f(X)=9X+X^3$$\mathcal{O}$ 係数の形式群則 $F_f$ があること、$f$ の $\bar{\mathfrak{m}}$ の中の零点が生成する拡大が完全分岐であること
$X^q$ の指数が $q$$K=\mathbb{Q}_2$($q=2$)、$f(X)=2X+X^4$等分点の生成する拡大がアーベル拡大であること
反例の確認

表の 3 つの反例では、外した条件以外の条件(1 次の係数、$\pi$ を法とする合同)は満たされ、右の列の結論が破れる。

各反例の確認を開く
  1. $f(X)=\pi X$ は $f\equiv\pi X\bmod\deg2$ を満たすが、$\pi$ を法として $X^q$ と合同でない。$F(X,Y)=X+Y$ は $f(F)=F(f(X),f(Y))$ を満たす形式群則で、$[\pi^n]$ にあたる写像 $x\mapsto\pi^nx$ の $\bar{\mathfrak{m}}$ の中の零点は $0$ だけである。したがって等分点は拡大を生まない。
  2. $f(X)=9X+X^3$ は $f\equiv X^3\bmod3$ を満たすが、1 次の係数 $9$ は素元でない。$f(x)=0$ の $0$ 以外の根は $x^2=-9$、すなわち $x=\pm3\sqrt{-1}$ で、$|x|=1/3<1$ である。$\mathbb{Q}_3(\sqrt{-1})$ は $X^2+1$ が $\mathbb{F}_3$ 上既約なので 2 次の不分岐拡大であり(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「不分岐拡大の存在と一意性」)、完全分岐でない。また lem-lt-lemma の結論も崩れる:$F\equiv X+Y\bmod\deg2$、$f(F)=F(f(X),f(Y))$ を満たす冪級数は $\mathbb{Q}_3$ 係数でただ 1 つ決まるが、その 3 次の部分は $\bigl(X^3+Y^3-(X+Y)^3\bigr)/(9-9^3)=(X^2Y+XY^2)/240$ で、係数 $1/240$ は $\mathbb{Z}_3$ に属さない。
  3. $f(X)=2X+X^4$ は $f\equiv2X\bmod\deg2$ を満たすが、$q=2$ に対して $X^4$ である。$f(x)=0$ の $0$ 以外の根は $x^3=-2$ の根で、$X^3+2$ は Eisenstein 多項式なので $\mathbb{Q}_2$ 上既約である。根 $x_0$ の生成する体は $\mathbb{Q}_2(\sqrt[3]{2})$($-1=(-1)^3$ なので $x_0=-\sqrt[3]{2}\,\omega^j$ の形)に共役であり、これは Galois でない(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の「反例の確認」の 5)。3 次の既約多項式の最小分解体で、根の生成する体が Galois でないので、最小分解体の次数は $6$、Galois 群は $S_3$ であり、アーベル群でない。

補足

形式群としての位置

Lubin–Tate 形式群は $\mathcal{O}$ の元を自己準同型としてもつので、形式群 の記事の意味の形式群より強い構造(形式 $\mathcal{O}$ 加群)をもつ。$[\pi]_f=f$ を剰余体 $k$ に還元すると $X^q$ になる。逆に、$\mathcal{O}$ 上の形式群のうち、1 次の係数が $\pi$ で $\pi$ を法として $X^q$ に合同な自己準同型をもつものは、$F_f$ と同型なものに限る(LT65 p. 383 の冒頭の注意)。$\mathbb{Q}_p$ と $\pi=p$ では乗法形式群がこれにあたり、Lubin–Tate 理論は「乗法群の等分点($1$ の冪根)による円分体の理論」を一般の局所体と素元に広げたものとみなせる。

局所類体論の中での位置

thm-lt-extension と cor-lt-norm-group により、$K^\times$ の開部分群 $\pi^{\mathbb{Z}}\times U_K^{(n)}$ に対応する拡大が具体的に書ける。$K^\times$ の指数有限の開部分群は、ある $n,m$ について $\pi^{m\mathbb{Z}}\times U_K^{(n)}$ を含むので、これに対応する拡大は $K_{\pi,n}$ と $m$ 次不分岐拡大の合成に含まれる。こうして Lubin–Tate 理論は局所存在定理(局所類体論 の記事の定理「局所存在定理」)の明示的な形を与える。一方、ノルム群の指数を計算する側の議論は ノルム写像と局所体のノルム群 で扱う。

関連項目

参考文献

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