球面に自由に作用する有限群(finite groups acting freely on spheres)とは、単位元以外の元が固定点をもたないように球面 $S^n$ に同相写像で作用する有限群のことで、このとき $S^n\to S^n/G$ は被覆写像になる。$n$ が偶数なら群の位数は $2$ 以下であり、どの $n$ でも位数 $2$ の元は高々一つである。後者は、二つの自由な対合が一致点をもつことを、二点の組を実射影空間上のベクトル束の点とみて mod $2$ の交叉で比べることで示される。直交行列による作用は固有値で判定でき、二つの自由な作用の結は再び自由な作用になる。
前提知識: 被覆空間作用, 写像度, Poincaré双対, Stiefel–Whitney類, 群の表現, ジョイン
有限群 $G$ が球面 $S^n$ に同相写像で作用し、単位元以外のどの元も固定点をもたないとき、作用は自由であるという。このとき商写像 $S^n\to S^n/G$ は被覆写像になり、$n\ge2$ なら $S^n/G$ は基本群が $G$ の閉多様体である。どの有限群がどの次元の球面に自由に作用するか、という問いが球面に自由に作用する有限群(finite groups acting freely on spheres)の問題である。偶数次元では群の位数は $2$ 以下に限られ(写像度)、奇数次元では巡回群や四元数群などが現れる。自由に作用する有限群には、可換な部分群がすべて巡回群であること(この記事では証明しない)と、位数 $2$ の元が高々一つであること(Milnor による)という二つの制約がある。
この記事では、後者を任意の連続な自由作用について、二点の組を実射影空間上のベクトル束の点とみて mod $2$ の交叉で比べることにより証明する(ffs-thm-coincidence)。次に二つの制約を群論の条件に言い換え(ffs-prop-group-conditions)、直交行列による自由作用を固有値で判定して巡回群の場合を分類する(ffs-thm-linear、ffs-thm-cyclic)。最後に、二つの自由作用の結が再び自由作用になることを示す(ffs-thm-join)。逆向きの存在定理は引用にとどめる。
$S^n:=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\|x\|=1\}$($n\ge0$)とし、$S^0$ は 2 点である。群の作用は 群作用 の意味(群準同型 $G\to\mathrm{Homeo}(S^n)$)とし、$g$ の作用する同相写像も $x\mapsto gx$ と書く。
有限群 $G$ の $S^n$ への作用が自由であるとは、$g\in G$、$x\in S^n$ について $gx=x$ ならば $g=1$ であることをいう。直交表現 $\rho\colon G\to\mathrm{O}(n+1)$ を使って $gx:=\rho(g)x$ と定まる作用を線形な作用という。$G$ が自由に作用する球面の次元の集合を
$$
\mathcal{D}(G):=\{n\ge0\mid G\text{ は }S^n\text{ に自由に作用する}\}
$$
と書く。
自由な作用 $G\to\mathrm{Homeo}(S^n)$ は単射である。自由な対合とは、同相写像 $T$ で $T\circ T=\mathrm{id}$ かつ固定点をもたないもの、すなわち位数 $2$ の群の自由な作用である。
有限群 $G$ が $S^n$ に自由に作用するとする。
要点:有限群の Hausdorff 空間への自由な作用は被覆空間作用である(被覆空間作用)。
被覆空間作用 の命題「有限性による判定」により作用は被覆空間作用であり、同じ記事の定理「商写像は被覆写像」により $q$ は被覆写像である。同じ記事の命題「有限群の商は Hausdorff」により $S^n/G$ は Hausdorff で、コンパクト空間の連続像なのでコンパクトである。被覆写像は局所同相写像なので、$S^n/G$ は $n$ 次元位相多様体である。$n\ge1$ では $S^n$ が連結なので像も連結である。2 は、$n\ge2$ で $S^n$ が単連結なので、同じ記事の定理「商空間の基本群」の 3 による。$\square$
$S^3$ の有限部分群は、巡回群、一般四元数群と、正四面体・正八面体・正二十面体の回転群の $S^3\to\mathrm{SO}(3)$ による逆像(位数 $24,48,120$)に限る(Hat02 §1.3, p. 75。この記事では証明しない)。
$n$ が偶数なら、$S^n$ に自由に作用する有限群は自明群か位数 $2$ の群である($n\ge2$ では 写像度 の命題「偶数次元の球面に自由に作用する群」、Hat02 Proposition 2.29, p. 135。$n=0$ では $S^0$ が 2 点だから)。したがって、問題になるのは奇数次元の球面である。
この節では係数をすべて $\mathbb{F}_2=\mathbb{Z}/2$ とし、記号から省く。$n\ge1$ とする。
$\mathbb{RP}^n$ を $\mathbb{R}^{n+1}$ の原点を通る直線 $L$ の全体とし、
$$
E:=\{(L,w)\in\mathbb{RP}^n\times\mathbb{R}^{n+1}\mid w\perp L\},\qquad\pi(L,w):=L
$$
とおく。これは Stiefel–Whitney類 の補題「実射影空間の接束」の階数 $n$ のベクトル束 $\gamma_n^\perp$ で、$E$ は $2n$ 次元の位相多様体である。零切断を $s_0(L):=(L,0)$、その像を $Z:=s_0(\mathbb{RP}^n)$ と書く。$(L,w)\mapsto(L,tw)$ で $s_0\circ\pi\simeq\mathrm{id}_E$ なので、
$$
H_n(E)\cong H_n(\mathbb{RP}^n)\cong\mathbb{F}_2,\qquad z:=(s_0)_*[\mathbb{RP}^n]\ \text{がその生成元}
$$
である($[\mathbb{RP}^n]$ は mod $2$ の基本類)。
自由な対合 $T$ について、$M_T:=S^n/T$ は連結な $n$ 次元閉多様体で(ffs-prop-quotient)、mod $2$ の基本類 $[M_T]$ をもつ(Poincaré双対 の定理「基本類の存在と一意性」)。$T$ の軌道 $\{x,Tx\}$ について
$$
c_T\colon M_T\to E,\qquad c_T(\{x,Tx\}):=\Bigl(\mathbb{R}(x-Tx),\ \tfrac12(x+Tx)\Bigr)
$$
と定める($x$ と $Tx$ の入れ替えで右辺は変わらず、$\langle x+Tx,x-Tx\rangle=\|x\|^2-\|Tx\|^2=0$)。像を $C_T:=c_T(M_T)$ と書く。
$T,S$ を $S^n$ の自由な対合とする。
要点:$(L,w)=c_T(\{x,Tx\})$ から $\{x,Tx\}=\{w\pm\sqrt{1-\|w\|^2}\,v\}$($v$ は $L$ の単位ベクトル)と組が復元できる。3 は、$\pi\circ c_T$ が奇写像 $x\mapsto(x-Tx)/\|x-Tx\|$ の誘導する写像で、これが恒等写像とホモトピックなことを、2 重被覆の移送で基本類に移して示す。
1:$c_T$ を商写像 $S^n\to M_T$ と合成した $x\mapsto(\mathbb{R}(x-Tx),\frac12(x+Tx))$ は連続なので、商位相により $c_T$ は連続である。$w:=\frac12(x+Tx)$、$d:=\frac12(x-Tx)$ とおくと $x=w+d$、$Tx=w-d$、$w\perp d$、$\|w\|^2+\|d\|^2=\frac12(\|x\|^2+\|Tx\|^2)=1$ である。$v$ を $L=\mathbb{R}(x-Tx)$ の単位ベクトルとすると $d=\pm\sqrt{1-\|w\|^2}\,v$ なので、$\{x,Tx\}=\{w+\sqrt{1-\|w\|^2}\,v,\ w-\sqrt{1-\|w\|^2}\,v\}$ は $(L,w)$ だけで決まり($v$ の符号を変えても組は同じ)、$c_T$ は単射である。$M_T$ はコンパクトなので $C_T$ もコンパクトである。
2:$c_T(\{x,Tx\})=c_S(\{y,Sy\})$ なら、1 の復元により $\{x,Tx\}=\{y,Sy\}$ である。$y=x$ なら $Tx=Sx$ である。$y=Tx$ なら $Sy=x$、すなわち $S(Tx)=x$ で、両辺に $S$ を施すと $Tx=Sx$ である。逆に $Tx=Sx$ なら $c_T(\{x,Tx\})=c_S(\{x,Sx\})$ である。
3:$h_T(x):=(x-Tx)/\|x-Tx\|$ とおくと $h_T\colon S^n\to S^n$ は連続で $h_T(Tx)=-h_T(x)$ を満たし、$\pi\circ c_T=\bar h_T$ は $h_T$ が誘導する写像 $M_T\to\mathbb{RP}^n$ である。$H(x,t):=(x-tTx)/\|x-tTx\|$($0\le t\le1$)の分母は $0$ にならない($x=tTx$ なら長さを比べて $t=1$、$x=Tx$ となり矛盾)ので、$h_T$ は恒等写像とホモトピックであり、$(h_T)_*[S^n]=[S^n]$ である。2 重被覆 $p_T\colon S^n\to M_T$、$p_0\colon S^n\to\mathbb{RP}^n$ の移送 $\tau$ を考える。移送準同型(被覆空間) の命題「移送完全列」により $H_{n+1}(M_T)\to H_n(M_T)\xrightarrow{\tau}H_n(S^n)$ は完全で、$H_{n+1}(M_T)=0$(Poincaré双対 の定理「基本類の存在と一意性」の 3)なので $\tau$ は単射である。両辺とも $\mathbb{F}_2$ なので $\tau[M_T]=[S^n]$ であり、同様に $\tau[\mathbb{RP}^n]=[S^n]$ である。$h_T$ は各ファイバー $\{x,Tx\}$ を $\{h_T(x),-h_T(x)\}$ へ全単射に写すので、同じ命題の自然性により $\tau\circ(\bar h_T)_*=(h_T)_*\circ\tau$ である。よって $\tau(\bar h_T)_*[M_T]=(h_T)_*[S^n]=[S^n]\ne0$ となり、$(\bar h_T)_*[M_T]=[\mathbb{RP}^n]$ である。$\pi_*$ は同型で $\pi_*(c_T)_*[M_T]=[\mathbb{RP}^n]=\pi_*z$ なので、$(c_T)_*[M_T]=z$ である。$\square$
$u\in H^n(E,E\setminus Z)$ を $E$ の Thom 類とする(Thom同型(特異コホモロジー) の定義「Thom 類」。存在と一意性は同じ記事の定理「mod 2 の Thom 同型」)。コンパクト台コホモロジー $H^n_c(E)=\varinjlim_KH^n(E,E\setminus K)$($K$ はコンパクト集合)から絶対類への写像を $j\colon H^n_c(E)\to H^n(E)$ とする。$\mathbb{F}_2$ 係数ではすべての多様体が向き付けられているので、双対写像
$$
D_E\colon H^n_c(E)\to H_n(E)
$$
は同型である(Poincaré双対 の定理「コンパクトでない多様体の双対」、Hat02 Theorem 3.35, p. 245)。$Z$ はコンパクトなので $u$ は類 $u_c\in H^n_c(E)$ を定め、$j(u_c)=u|_E$ である。
$\langle j(u_c),z\rangle=1$ であり、$D_E(u_c)=z$ である。
要点:$\langle u|_E,(s_0)_*[\mathbb{RP}^n]\rangle$ は $w_n(\gamma_n^\perp)=a^n$ の値で $1$ になる。すると $u_c\ne0$ であり、$H_n(E)$ の $0$ でない元は $z$ だけである。
$\langle u|_E,(s_0)_*[\mathbb{RP}^n]\rangle=\langle s_0^*(u|_E),[\mathbb{RP}^n]\rangle$ であり、Stiefel–Whitney類 の系「Euler 類の mod 2 還元」により $s_0^*(u|_E)=w_n(\gamma_n^\perp)$ である。$\gamma_n\oplus\gamma_n^\perp$ は自明な束 $\mathbb{RP}^n\times\mathbb{R}^{n+1}$ なので、Whitney の和公式と同じ記事の補題「トートロジー直線束」$w(\gamma_n)=1+a$ から $(1+a)\,w(\gamma_n^\perp)=1$、すなわち $w(\gamma_n^\perp)=1+a+\dots+a^n$ で、$w_n(\gamma_n^\perp)=a^n$ である。Poincaré双対 の命題「実射影空間の 2 を法とするコホモロジー環」により $\langle a^n,[\mathbb{RP}^n]\rangle=1$ である。よって $j(u_c)\ne0$、したがって $u_c\ne0$ で、$D_E$ は同型なので $D_E(u_c)\ne0$ である。$H_n(E)=\{0,z\}$ なので $D_E(u_c)=z$ である。$\square$
$n\ge0$ とし、$T,S$ を $S^n$ の自由な対合とする。このとき $Tx=Sx$ となる $x\in S^n$ が存在する。
$n=0$ では $S^0$ の自由な対合は 2 点の入れ替えだけなので $T=S$ である。$n\ge1$ とし、一致点がないと仮定する。ffs-lem-config の 1・2 により、$C_T$ と $C_S$ は $E$ の交わらないコンパクト集合である。Hausdorff 空間の交わらないコンパクト集合は交わらない開集合 $U\supset C_T$、$V\supset C_S$ で分けられる。
$U$ は $E$ の開集合なので $2n$ 次元多様体で、$c_T$ は $U$ に値をとる。$a:=(c_T)_*[M_T]\in H_n(U)$ とおくと、$U$ での双対写像 $D_U$ は同型なので、あるコンパクト集合 $K\subset U$ と類 $\alpha\in H^n(U,U\setminus K)$ で $a=D_U(\alpha)$ となるものがある。$E\setminus U$ は閉集合で開集合 $E\setminus K$ に含まれるので、切除により包含 $i\colon(U,U\setminus K)\to(E,E\setminus K)$ は同型 $i^*\colon H^n(E,E\setminus K)\to H^n(U,U\setminus K)$ を与える。$\alpha=i^*\alpha'$ とする。ffs-lem-naturality により、$\alpha'$ の $H^n_c(E)$ での類 $[\alpha']$ について
$$
D_E([\alpha'])=i_*D_U(\alpha)=i_*a=(c_T)_*[M_T]=z
$$
である(最後は ffs-lem-config の 3)。ffs-lem-thom により $D_E(u_c)=z$ でもあり、$D_E$ は単射なので $[\alpha']=u_c$ である。
$j(u_c)$ は $\alpha'\in H^n(E,E\setminus K)$ を絶対類とみたものなので、対 $(E,E\setminus K)$ の完全列により $E\setminus K$ への制限は $0$ である。$V\subset E\setminus U\subset E\setminus K$ で、$(c_S)_*[M_S]$ は $c_S$ が $V$ に値をとることから $H_n(E\setminus K)$ の類の像である。よって $\langle j(u_c),(c_S)_*[M_S]\rangle=0$ である。一方 ffs-lem-config の 3 を $S$ に当てると $(c_S)_*[M_S]=z$ で、ffs-lem-thom により $\langle j(u_c),z\rangle=1$ である。これは矛盾である。$\square$
証明で使った双対写像の自然性を述べておく。
$M$ を $m$ 次元位相多様体、$U\subset M$ を開集合、$K\subset U$ をコンパクト集合とし、切除の同型 $i^*\colon H^k(M,M\setminus K)\to H^k(U,U\setminus K)$ を考える(係数 $\mathbb{F}_2$)。$\alpha'\in H^k(M,M\setminus K)$ について $D_M([\alpha'])=i_*D_U([i^*\alpha'])$ である。
要点:双対写像は $K$ の上の基本類 $\mu_K$ とのキャップ積で定義され、$\mu_K$ は各点の局所的な生成元への制限で一意に決まるので、包含で $\mu^U_K$ は $\mu^M_K$ に写る。あとはキャップ積の自然性である。
Hat02 §3.3(Lemma 3.27, p. 236 と双対写像の定義, p. 245)により、$H_m(M,M\setminus K)$ には各点 $x\in K$ で $H_m(M,M\setminus x)\cong\mathbb{F}_2$ の生成元に制限されるただ一つの類 $\mu^M_K$ があり、$D_M([\alpha'])=\mu^M_K\frown\alpha'$ である。$U$ についても同様に $\mu^U_K$ があり $D_U([\alpha])=\mu^U_K\frown\alpha$ である。$i_*\mu^U_K$ は各点 $x\in K$ で、切除の同型 $H_m(U,U\setminus x)\cong H_m(M,M\setminus x)$ により生成元に制限されるので、一意性から $i_*\mu^U_K=\mu^M_K$ である。キャップ積の自然性 $i_*(\mu^U_K\frown i^*\alpha')=i_*\mu^U_K\frown\alpha'$ により $i_*D_U([i^*\alpha'])=\mu^M_K\frown\alpha'=D_M([\alpha'])$ である。これは Hat02 Lemma 3.36(p. 246)の証明で余鎖の段階で確かめられる正方形の可換性と同じものである。$\square$
有限群 $G$ が球面 $S^n$ に自由に作用するなら、$G$ の位数 $2$ の元は高々一つである。それがあれば $G$ の中心に属する。
$t,s$ を位数 $2$ の元とすると、それぞれの作用は $S^n$ の自由な対合である。ffs-thm-coincidence により $tx=sx$ となる $x$ があり、$s^{-1}t$ が $x$ を固定するので、自由性から $s^{-1}t=1$、すなわち $t=s$ である。任意の $g\in G$ について $gtg^{-1}$ も位数 $2$ なので $gtg^{-1}=t$ である。$\square$
球面に自由に作用する有限群 $G$ は次の二つを満たす。
$G$ を有限群とする。
要点:可換群 $A$ では $A[p]:=\{a\mid a^p=1\}$ が $\mathbb{F}_p$ 上のベクトル空間で、その次元が $1$ 以下なら $A$ は巡回群になる。位数 $p^2$ の群は可換である。(B) と (Q) の関係は、二つの対合が二面体群を生成することによる。
1:$\mathbb{Z}/p\times\mathbb{Z}/p$ は可換で巡回群でないので、(A) ならそれを含まない。逆に、可換な部分群 $A$ が $\mathbb{Z}/p\times\mathbb{Z}/p$ を含まなければ、$\mathbb{F}_p$ 上のベクトル空間 $A[p]$ は $2$ 次元以上の部分空間をもたないので $\lvert A[p]\rvert\le p$ であり、これがすべての $p$ で成り立つので 有限アーベル群の基本定理 の命題「巡回群であることの判定」により $A$ は巡回群である。
位数 $p^2$ の群 $H$ は可換である:共役による作用に p群 の補題「固定点の個数の合同式」を当てると、中心 $Z(H)$ の位数は $\lvert H\rvert\equiv0$ と $p$ を法として合同で、$Z(H)\ne1$ である。$\lvert Z(H)\rvert=p$ なら $H/Z(H)$ は位数 $p$ で巡回群なので、$hZ(H)$ を生成元として任意の元は $h^iz$($z\in Z(H)$)と書け、それらは互いに可換である。
2:(A)・(B) ⇒ (P)・(Q)。位数 $p^2$ の部分群は可換なので (A) により巡回群である。$p=2$ の (Q) はこれに含まれる。$p$ を奇素数、$H$ を位数 $2p$ の部分群とする。Sylowの定理 の系「素数位数の元の存在」により位数 $p$ の元 $a$ と位数 $2$ の元 $s$ があり、$\langle a\rangle$ は指数 $2$ なので正規部分群で、$s\notin\langle a\rangle$ である。$sas^{-1}=a^r$ とおくと $s^2=1$ から $a^{r^2}=a$、すなわち $r^2\equiv1\pmod p$ で、$\mathbb{F}_p$ は体なので $r\equiv\pm1$ である。$r\equiv-1$ なら $(a^is)^2=a^ia^{-i}=1$ で、$a^is$($0\le i< p$)は位数 $2$ の相異なる $p\ge3$ 個の元となり (B) に反する。よって $r\equiv1$ で、$a$ と $s$ は可換、$as$ の位数は $2p$ であり、$H=\langle as\rangle$ は巡回群である。
(P)・(Q) ⇒ (A)・(B)。$\mathbb{Z}/p\times\mathbb{Z}/p$ は巡回群でない位数 $p^2$ の群なので、(P) と 1 から (A) が従う。相異なる位数 $2$ の元 $s,t$ があったとし、$r:=st$ の位数を $m$ とする。二面体群 の定理「二つの対合で生成される有限群」により $m\ge2$ で、$\langle s,t\rangle$ は位数 $2m$ の二面体群で、$r$ が回転、$s$ が鏡映に当たる。$m$ が偶数なら $u:=r^{m/2}$ は $sus^{-1}=u^{-1}=u$ を満たす位数 $2$ の回転で、$\{1,u,s,us\}$ は巡回群でない位数 $4$ の部分群となり、$p=2$ の (P) に反する。$m$ が奇数なら $m$ の素因数 $p$(奇素数)をとり $u:=r^{m/p}$ とおくと、$\langle u,s\rangle=\langle u\rangle\cup\langle u\rangle s$ は位数 $2p$ で、$sus^{-1}=u^{-1}\ne u$ なので可換でなく、(Q) に反する。$\square$
奇数 $m\ge3$ の位数 $2m$ の二面体群は (A) を満たすが (B) を満たさない。鏡映を含む可換な部分群は鏡映一つと単位元だけからなり(鏡映 $s$ と回転 $r^k\ne1$ について $sr^ks^{-1}=r^{-k}\ne r^k$)、鏡映は $m$ 個あるからである。よってこの群はどの球面にも自由に作用しない。
有限群の実表現には不変な内積がある(群の表現 の定理「不変な内積の存在」)ので、その正規直交基底で書けば直交表現 $\rho\colon G\to\mathrm{O}(N)$ になる。固有値は複素数の範囲で考える。$\rho$ の指標を $\chi(g):=\operatorname{tr}\rho(g)$ と書く。
$G$ を有限群、$\rho\colon G\to\mathrm{O}(N)$($N\ge1$)とする。次は同値である。
単位ベクトル $x$ が $\rho(g)x=x$ を満たすことは、$\rho(g)$ が固有値 $1$ の実固有ベクトルをもつことと同じである。複素固有ベクトル $a+\sqrt{-1}\,b$($a,b$ は実ベクトル)が固有値 $1$ をもてば $a,b$ も固定され、一方は $0$ でない。よって 1 は「$g\ne1$ なら $\rho(g)$ が固有値 $1$ をもたない」と同値である。
1 ⇒ 2:$d:=\operatorname{ord}(g)$ とすると $\rho(g)^d=I$ なので、固有値 $\lambda$ は $\lambda^d=1$ を満たす。$\lambda$ の位数 $e$ が $d$ より小さければ、$g^e\ne1$ で $\rho(g^e)$ が固有値 $\lambda^e=1$ をもち、1 に反する。2 ⇒ 1 は、原始 $d$ 乗根($d\ge2$)が $1$ でないことによる。1 ⇒ 3 は明らかである。3 ⇒ 1:$g\ne1$ が $x$ を固定するとし、$d:=\operatorname{ord}(g)$ の素因数 $p$ をとると、$g^{d/p}$ は位数 $p$ で $x$ を固定する。3 の言い換えは、$P:=\frac1p\sum_{j=0}^{p-1}\rho(g)^j$ が $\rho(g)$ の固定ベクトルの空間への射影($\rho(g)P=P\rho(g)=P$、$P^2=P$、固定ベクトル $v$ で $Pv=v$)であり、$\operatorname{tr}P$ がその次元に等しいことによる。$\square$
$\rho\colon G\to\mathrm{O}(N)$ による $S^{N-1}$ への作用が自由なら、次が成り立つ。
要点:(a) は可換な部分群の同時固有ベクトルが単射準同型 $A\to\mathbb{C}^\times$ を与えることによる。(b) は位数 $2$ の直交行列の固有値が $\pm1$ であることによる。(c) は $g\ne1$ について $\det\rho(g)=(-1)^N$ となることによる。
(a):$A$ を可換な部分群とする。$\mathbb{C}^N$ への $A$ の表現は 1 次元の表現の直和に分かれる(群の表現 の定理「有限群の実・複素表現の完全可約性」と系「可換群の既約表現は 1 次元」)。その一つを $\mathbb{C}v$ とし、$\rho(a)v=\psi(a)v$ と書くと $\psi\colon A\to\mathbb{C}^\times$ は準同型で、ffs-thm-linear の 2 により $a\ne1$ なら $\psi(a)\ne1$ である。よって $A$ は $\mathbb{C}^\times$ の有限部分群と同型で、それは $1$ の $\lvert A\rvert$ 乗根の巡回群の部分群なので巡回群である(巡回群 の命題「巡回群の部分群は巡回群」)。
(b):$t$ が位数 $2$ なら、直交行列 $\rho(t)$ は $\rho(t)^2=I$ から対称行列であり、固有値 $\pm1$ で対角化できる。ffs-thm-linear の 2 により固有値は $-1$ だけなので $\rho(t)=-I$ である。作用は自由なので $\rho$ は単射であり、位数 $2$ の元は $t$ だけである。
(c):$Q\in\mathrm{O}(N)$ について $\det(I-Q)=\det(-Q)\det(I-Q^{-1})=(-1)^N\det Q\,\det(I-Q)$ である($I-Q^{-1}=(I-Q)^{\mathsf T}$)。$g\ne1$ なら $\rho(g)$ は固有値 $1$ をもたず $\det(I-\rho(g))\ne0$ なので、$\det\rho(g)=(-1)^N$ である。$N$ が奇数のとき、相異なる $g,h\ne1$ があれば $gh^{-1}\ne1$ なのに $\det\rho(gh^{-1})=(-1)(-1)^{-1}=1$ となり矛盾する。よって単位元以外の元は高々一つである。$\square$
(b) は ffs-cor-involution の線形な場合の短い証明であり、(c) は偶数次元の球面についての結果の線形な場合を写像度を使わずに示している。
$m\ge3$ とし、位数 $m$ の巡回群 $C_m=\langle t\rangle$ と $\rho\colon C_m\to\mathrm{O}(N)$ を考える。$R(\theta)$ を角 $\theta$ の回転行列 $\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}$ とする。
要点:$\mathbb{C}^N$ を $\rho(t)$ の固有値 $\zeta^a$ の固有空間 $E_a$ の直和に分けると、自由性は $\gcd(a,m)=1$ の $a$ だけが現れることと同値である。複素共役が $E_a$ と $E_{-a}$ を入れ替え、$a\not\equiv-a$ なので、$E_a$ の正規直交基底の実部と虚部が回転の 2 次元ブロックを与える。
$\rho$ の内積を $\mathbb{C}^N$ の不変な Hermite 内積に延ばす。$P_a:=\frac1m\sum_{j=0}^{m-1}\zeta^{-aj}\rho(t)^j$($a\in\mathbb{Z}/m$)とおくと、$\sum_{j=0}^{m-1}\zeta^{bj}$ が $b\equiv0$ なら $m$、そうでなければ $0$ であることから、$\rho(t)P_a=\zeta^aP_a$、$\sum_aP_a=I$、$P_aP_b=\delta_{ab}P_a$ である。よって $\mathbb{C}^N=\bigoplus_aE_a$($E_a:=\operatorname{Im}P_a=\ker(\rho(t)-\zeta^a)$)で、$a\ne b$ なら $\langle v,w\rangle=\langle\rho(t)v,\rho(t)w\rangle=\zeta^{a-b}\langle v,w\rangle$ から $E_a\perp E_b$ である。ffs-thm-linear の 2 により、自由であることと、$E_a\ne0$ となる $a$ がすべて $\gcd(a,m)=1$ を満たすことは同値である($\gcd(a,m)>1$ なら $\zeta^a$ の位数は $m$ より小さい)。
1 の必要性:$\rho(t)$ は実行列なので複素共役は $E_a$ を $E_{-a}$ に移す。$m\ge3$ と $\gcd(a,m)=1$ から $2a\not\equiv0$、すなわち $a\not\equiv-a$ である。各組 $\{a,-a\}$ から一方 $a$ を選び、$E_a$ の正規直交基底 $v$ ごとに $e:=(v+\bar v)/\sqrt2$、$f:=-(v-\bar v)/(\sqrt{-1}\sqrt2)$ とおく。$v\perp\bar v$($E_a\perp E_{-a}$)から $e,f$ は正規直交な実ベクトルで、$\theta:=2\pi a/m$ について $\rho(t)e=\cos\theta\,e+\sin\theta\,f$、$\rho(t)f=-\sin\theta\,e+\cos\theta\,f$ となる。異なる $v$ や異なる組からの $e,f$ は直交し、実次元を数えるとこれらは $\mathbb{R}^N$ の正規直交基底になる。この基底で $\rho(t)$ は $R(\theta)$ のブロックの直和で、$N$ は偶数である。十分性は、$R(2\pi a/m)$ の固有値が $\zeta^{\pm a}$ で、$\gcd(a,m)=1$ ならこれらが原始 $m$ 乗根であることと ffs-thm-linear の 2 による。商がレンズ空間であることは定義(レンズ空間 の定義「高次元レンズ空間」)による。
2:共役な行列は各固有値の重複度が等しい。右辺の $\zeta^c$ の重複度は $\#\{i\mid a_i\equiv c\}+\#\{i\mid a_i\equiv-c\}$ なので、重複度が等しければ組 $\{\pm a_i\}$ の多重集合が一致する。逆に、ブロックの並べ替えは置換行列で、$R(-\theta)=\operatorname{diag}(1,-1)R(\theta)\operatorname{diag}(1,-1)$ なので各ブロックの符号も直交行列で変えられる。$m=2$ の場合は ffs-cor-linear の (b) による。$\square$
ffs-ex-basic の 3 の群は、可換な部分群がすべて巡回群で、位数 $2$ の元は $-1$ だけである。これは ffs-cor-linear の (a)(b) と合っている。
ジョイン $X\ast Y$ の点を $[x,y,t]$($x\in X$、$y\in Y$、$t\in[0,1]$。$t=0$ では $y$ を、$t=1$ では $x$ を区別しない)と書く。
有限群 $G$ が $S^a$ と $S^b$ に自由に作用するとする($a,b\ge0$)。
1:$g$ の作用する同相写像を $\varphi_g,\psi_g$ とすると、ジョイン の命題「関手性と可換性」により $\varphi_g\ast\psi_g$ は $[x,y,t]\mapsto[gx,gy,t]$ で矛盾なく定まる連続写像で、$(\varphi_g\ast\psi_g)\circ(\varphi_h\ast\psi_h)=\varphi_{gh}\ast\psi_{gh}$、$\varphi_1\ast\psi_1=\mathrm{id}$ を満たす。よって $G$ の作用で、各 $g$ は同相写像(逆写像は $g^{-1}$ の作用)である。自由であること:$g[x,y,t]=[x,y,t]$ とする。$0< t<1$ なら同じ類は一点なので $gx=x$ かつ $gy=y$ で、$g=1$ である。$t=0$ なら類は $x$ で決まるので $gx=x$、$S^a$ での自由性から $g=1$ である。$t=1$ も $S^b$ での自由性から同様である。$S^a\ast S^b\cong S^{a+b+1}$ は ジョイン の命題「球面のジョイン公式」で、この同相写像で作用を移せばよい。
2:その命題の同相写像は $\Phi[x,y,t]=(\cos\frac{\pi t}{2}\,x,\ \sin\frac{\pi t}{2}\,y)\in\mathbb{R}^{a+1}\times\mathbb{R}^{b+1}$ で与えられる。$\Phi[\rho_1(g)x,\rho_2(g)y,t]=(\rho_1(g)\oplus\rho_2(g))\Phi[x,y,t]$ である。
3:$a,b\in\mathcal{D}(G)$ なら 1 により $(a+1)+(b+1)=(a+b+1)+1\in\mathcal{D}(G)+1$ である。後半は $r$ についての帰納法による。
4:$G$ の自由な作用を $H$ に制限しても、$H$ の単位元以外の元は固定点をもたない。$\square$
群 $G$ と自明でない群 $H$ の自由な作用から $G\times H$ を $[x,y,t]\mapsto[gx,hy,t]$ で作用させても、$t=0$ の点は $\{1\}\times H$ で固定されるので自由にならない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 空間が球面であること(ffs-thm-coincidence) | トーラス $S^1\times S^1$ の $T(z,w)=(-z,w)$、$S(z,w)=(z,-w)$ | 二つの自由な対合が一致点をもつこと |
| $S$ が固定点をもたないこと(ffs-thm-coincidence) | $S^n$ の対蹠写像 $T$ と恒等写像 $S$ | 一致点が存在すること |
| (B)(節「存在と分類」の存在定理の仮定) | 奇数 $m\ge3$ の位数 $2m$ の二面体群 | 球面への自由な作用が存在すること |
| 二つの作用がともに自由であること(ffs-thm-join) | 位数 $2$ の群の $S^0$ への入れ替えと、$S^0$ への自明な作用 | 結の作用が自由であること |
1 行目:$T,S$ は固定点のない対合で、$(-z,w)=(z,-w)$ となる点はない。$TS(z,w)=(-z,-w)$ も固定点をもたないので、$\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2$ がトーラスに自由に作用し、ffs-cor-involution の結論も成り立たない。
2 行目:$S=\mathrm{id}$ は $S\circ S=\mathrm{id}$ を満たすが固定点をもち、$Tx=-x\ne x=Sx$ である。
3 行目:この群は (A) を満たし (B) を満たさない(ffs-prop-group-conditions の後の段落)ので、ffs-cor-involution によりどの球面にも自由に作用しない。
4 行目:結 $S^0\ast S^0\cong S^1$ の上で作用は $(u,v)\mapsto(-u,v)$ となり、$t=1$ の端点 $(0,\pm1)$ を固定する。
次の事実はこの記事では証明しない。
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