最終頂点写像の共終性(cofinality of the last vertex map)とは、任意の単体的集合 $K$ について、単体の圏 $\Delta/K$ の脈体から $K$ への最終頂点写像 $\lambda_K$ が ∞圏の意味で共終である、すなわちすべての右ファイブレーションの切断の空間の間の制限をホモトピー同値にするという定理である。証明では $\lambda_K$ を、$K$ と $N(\Delta/K)$ を結でつないだ単体的集合 $K_F$ への右アノダインな包含と、底を固定した縮約をもつ最後の頂点のレトラクションに分ける。帰結として $\lambda_K$ は弱ホモトピー同値であり、$K$ を添字とする ∞圏の余極限は普通の圏 $\Delta/K$ を添字とする余極限で計算できる。
前提知識: 単体的集合の単体の圏, 右アノダイン射, 共終関手, 余極限(∞圏)
単体的集合 $K$ の単体の圏 $\Delta/K$ の脈体から $K$ への 最終頂点写像 $\lambda_K\colon N(\Delta/K)\to K$ は、単体の鎖 $(m_0,x_0)\to\cdots\to(m_n,x_n)$ を、$x_n$ の中で各 $x_i$ の最後の頂点を結んだ $n$ 単体に送る写像である(単体的集合の単体の圏 の命題「最終頂点写像」)。この記事の主定理は、$\lambda_K$ が任意の $K$ について ∞圏の意味で 共終 であること(HTT09 Proposition 4.2.3.14, p. 254)である。共終な写像は弱同値なので、$\lambda_K$ が弱ホモトピー同値であることもわかる。さらに共終な写像は ∞圏の余極限を保つので、$K$ を添字とする図式の余極限は、普通の圏 $\Delta/K$ を添字とする図式の余極限として計算できる。
証明では、$K$ と $N(\Delta/K)$ を結でつないだ単体的集合 $K_F$ を作り、$\lambda_K$ を、包含 $N(\Delta/K)\subset K_F$ と最後の頂点のレトラクション $r\colon K_F\to K$ の合成に分ける。包含が右アノダインであることは、$K$ の単体を次元の順に結で貼っていくことで示し、$r$ が共終であることは、$r$ の上に固定したホモトピーを具体的に書いて示す。
記号は 単体的集合の単体の圏 と 右アノダイン射 に従う。単体的写像 $f\colon S\to T$ と $p\colon X\to T$ について、$n$ 単体を $pg=f\circ\mathrm{pr}_S$ をみたす写像 $g\colon S\times\Delta^n\to X$ とする単体的集合を $\operatorname{Map}_T(S,X)$ と書く。$f$ が 共終(cofinal)であるとは、すべての右ファイブレーション $p\colon X\to T$ について、$f$ との合成が定める写像 $\operatorname{Map}_T(T,X)\to\operatorname{Map}_T(S,X)$ がホモトピー同値(Kan–Quillenモデル構造 の定義「単体的ホモトピー類とホモトピー同値」)であることをいう(HTT09 Definition 4.1.1.1, p. 223)。普通の圏の 共終関手 との関係は同記事の節「∞圏での共終写像」にある。右アノダインな包含は共終であり、共終な写像は弱同値である(右アノダイン射 の命題「右アノダインな包含は共終」)。
任意の単体的集合 $K$ について、最終頂点写像 $\lambda_K\colon N(\Delta/K)\to K$ は共終である。とくに $\lambda_K$ は弱ホモトピー同値である。
証明は §5 の prf-lvc-main で与える。後半は 右アノダイン射 の命題「右アノダインな包含は共終」の 2 による。これにより 単体的集合の単体の圏 の定理「最終頂点写像は弱ホモトピー同値」が一般の $K$ について証明される。
単体 $(m,\sigma)$($\sigma\in K_m$ を写像 $\Delta^m\to K$ とみる)に $\sigma\colon\Delta^m\to K$ を対応させる関手を $F$ と書く。HTT09 Notation 4.2.3.1(p. 248)の構成をこの $F$ に当てた単体的集合 $K_F$ を、次のデータで記述する。
$K_F$ の $n$ 単体 $e$ は次のデータである。
$\alpha$ は順序を保つので左の頂点の逆像は始切片であり、$(\alpha\alpha')^*=\alpha'^*\alpha^*$ は制限の合成から従う。$i=n$ の単体の全体は $K$ と同一視でき、$i=-1$ の単体の全体は $N(\Delta/K)$ である。この 2 つを $K\subset K_F$、$v\colon N(\Delta/K)\subset K_F$ と書く。頂点の左右を $0,1$ に送る写像 $K_F\to\Delta^1$ があり、$K$ と $N(\Delta/K)$ はその $0$ と $1$ の上のファイバーである。$0\le i< n$ の単体のデータ $e^-$ と $u_a$ は最初の橋 $u_{i+1}$ で決まる($e^-=\sigma_{i+1}u_{i+1}$、$u_a=\varphi_{i+1,a}u_{i+1}$)。
$K_F$ の $n$ 単体 $e$ について、$i=n$ なら $r(e):=e^-$、$i< n$ なら、順序写像 $f_e\colon[n]\to[m_n]$ を
$$
f_e(q)=u_n(q)\ (q\le i),\qquad f_e(q)=\varphi_{qn}(m_q)\ (q>i)
$$
で定めて $r(e):=\sigma_n\circ f_e$ とおく。このとき $r\colon K_F\to K$ は単体的写像で、$r|_K=\mathrm{id}_K$、$r\circ v=\lambda_K$ であり、$K$ について自然である。
要点:最後の右の頂点が $\alpha$ で消えるときは、$\varphi$ で最後の対象どうしを比べる。
順序写像であること。左の範囲では $u_n$ が順序を保つ。左と右の境目では $u_n(i)=\varphi_{i+1,n}u_{i+1}(i)\le\varphi_{i+1,n}(m_{i+1})$、右の範囲では $q< q'$ について $\varphi_{qn}(m_q)=\varphi_{q'n}\varphi_{qq'}(m_q)\le\varphi_{q'n}(m_{q'})$ である。
単体的であること。$\alpha\colon[n']\to[n]$ をとる。$i=n$ なら両辺とも $e^-\alpha$ である。像が左に入るなら $f_e\alpha=u_n\alpha$ で、$\alpha^*e$ は $K$ の単体 $e^-\alpha=\sigma_nu_n\alpha$ である。残りの場合、$b:=\alpha(n')>i$ で、$\alpha^*e$ の最後の対象は $\sigma_b$、その $f$ は $f'(q)=u_b(\alpha(q))$($\alpha(q)\le i$)、$f'(q)=\varphi_{\alpha(q)b}(m_{\alpha(q)})$($\alpha(q)>i$)である。$\varphi_{bn}f'=f_e\alpha$ なので $r(\alpha^*e)=\sigma_bf'=\sigma_n\varphi_{bn}f'=\sigma_nf_e\alpha=\alpha^*r(e)$ である。
残りの主張。$r|_K=\mathrm{id}$ は定義による。$i=-1$ では $f_e(q)=\varphi_{qn}(m_q)$ で、これは 単体的集合の単体の圏 の命題「最終頂点写像」の $\theta_\sigma$ にほかならないので $rv=\lambda_K$ である。$g\colon K\to L$ は $e^-$ と $\sigma_a$ を $g$ で写し、$\varphi$ と $u$ を変えないので、$f_e$ は変わらず $r$ は自然である。$\square$
HTT09 Lemma 4.2.3.13(p. 254)はこの $r$ を定め、単体的であることの確かめを省いている。
$K_F$ の $n$ 単体 $e$ と $\varepsilon\colon[n]\to[1]$($\Delta^1$ の $n$ 単体)について、$c:=\max\varepsilon^{-1}(0)$(なければ $-1$)、$i':=\max(i,c)$ とおく。$i'=n$ なら $H(e,\varepsilon):=r(e)\in K$、$i'< n$ なら、分かれ目 $i'$、左の部分 $r(e)|_{[0,i']}$、鎖 $(m_a,\sigma_a)$($a>i'$)と $\varphi$、橋
$$
w_a(q)=u_a(q)\ (q\le i),\qquad w_a(q)=\varphi_{qa}(m_q)\ (i< q\le i')
$$
からなる単体を $H(e,\varepsilon)$ とする。$H\colon K_F\times\Delta^1\to K_F$ は単体的写像で、$H|_{K_F\times\{0\}}=r$($K\subset K_F$ への写像とみる)、$H|_{K_F\times\{1\}}=\mathrm{id}$、$r\circ H=r\circ\mathrm{pr}_{K_F}$ をみたす。
要点:$\varepsilon=0$ の右の頂点を左へ移し、その最後の頂点を残りの右の対象への橋として運ぶ。
単体であること。$w_a$ が順序を保つことは prf-lvc-retraction の順序の確かめと同じである。$\varphi_{ab}w_a=w_b$ は、左の範囲では橋の条件、$i< q\le i'$ では $\varphi_{ab}\varphi_{qa}=\varphi_{qb}$ による。$\varphi_{an}w_a=f_e|_{[0,i']}$ なので $\sigma_aw_a=\sigma_n\varphi_{an}w_a=r(e)|_{[0,i']}$ であり、橋の条件をみたす。
単体的であること。$\alpha\colon[n']\to[n]$ について、$\varepsilon$ は順序を保つので $\varepsilon(\alpha(q))=0$ と $\alpha(q)\le c$ は同値であり、$(e\alpha,\varepsilon\alpha)$ の分かれ目は $\max\{q\mid\alpha(q)\le i'\}$ で、$H(e,\varepsilon)\alpha$ の分かれ目と一致する。左の部分はどちらも $r(e)\alpha$ の始切片への制限である($r$ は単体的)。右の鎖はどちらも $\sigma_{\alpha(q)}$ と $\varphi_{\alpha(q)\alpha(q')}$ である。橋の値は、左の位置 $q$ について $\alpha(q)\le i$ なら $u_{\alpha(q')}(\alpha(q))$、$\alpha(q)>i$ なら $\varphi_{\alpha(q)\alpha(q')}(m_{\alpha(q)})$ で、両辺で同じである。
端点と底。$\varepsilon=0$ なら $c=n$ で $H=r(e)$、$\varepsilon=1$ なら $c=-1$、$i'=i$、$w_a=u_a$ で、左の部分は $\sigma_nu_n=e^-$ なので $H=e$ である。$i'< n$ のとき $H(e,\varepsilon)$ の $f$ は、$q\le i'$ で $w_n(q)=f_e(q)$、$q>i'$ で $\varphi_{qn}(m_q)=f_e(q)$ なので $f_e$ に等しく、$r(H(e,\varepsilon))=r(e)$ である。$i'=n$ でも $r(r(e))=r(e)$ である。$\square$
任意の単体的写像 $p\colon X\to K$ について、$r$ との合成 $r^*\colon\operatorname{Map}_K(K,X)\to\operatorname{Map}_K(K_F,X)$ はホモトピー同値で、包含 $K\subset K_F$ との合成 $j^*$ がそのホモトピー逆である。とくに $r$ は共終である。
$r\circ(K\subset K_F)=\mathrm{id}_K$ なので $j^*r^*=\mathrm{id}$ である。$\operatorname{Map}_K(K_F,X)$ の $n$ 単体 $g\colon K_F\times\Delta^n\to X$($pg=r\circ\mathrm{pr}$)と $\tau\colon\Delta^n\to\Delta^1$ に、$(x,t)\mapsto g(H(x,\tau(t)),t)$ を対応させる。$r\circ H=r\circ\mathrm{pr}$ なので $p$ との合成は $r\circ\mathrm{pr}$ で、再び $\operatorname{Map}_K(K_F,X)$ の $n$ 単体であり、$n$ について自然なので単体的写像 $\operatorname{Map}_K(K_F,X)\times\Delta^1\to\operatorname{Map}_K(K_F,X)$ を定める。lem-lvc-homotopy により、$\tau=0$ では $r^*j^*$、$\tau=1$ では恒等写像なので、これは $r^*j^*$ から $\mathrm{id}$ へのホモトピーである。$\square$
$p$ に右ファイブレーションであることを仮定していない。HTT09 の証明(p. 255)は $r$ の共終性を余極限の性質(Proposition 4.1.1.8 と 4.2.3.4)から導くが、上の証明は $r^*$ のホモトピー逆を直接与える。
$K$ の $d$ 単体 $\sigma$ について、$\sigma$ を通る分解の圏を考える。
$\sigma\in K_d$ について、圏 $I_\sigma$ の対象を組 $(s,t)$($s\colon[d]\to[M]$ は順序写像、$t\in K_M$、$t\circ s=\sigma$)、$(s,t)$ から $(s',t')$ への射を $\psi s=s'$、$t'\psi=t$ をみたす順序写像 $\psi\colon[M]\to[M']$ とし、$s$ が単射でない対象のなす充満部分圏を $I'_\sigma$ とする。
要点:$I_\sigma$ は始対象をもち、$I'_\sigma$ は全射の部分に変形でき、そこには終対象がある。
1。$(\mathrm{id}_{[d]},\sigma)$ は始対象である($(s,t)$ への射は $\psi=s$ だけ)。反対圏は終対象をもつので、圏の分類空間 の系「終対象をもつ圏は可縮」と命題「反対圏の分類空間」により $BI_\sigma$ は可縮である。
2。$s$ が全射でもある対象のなす充満部分圏を $I''_\sigma$、包含を $L\colon I''_\sigma\to I'_\sigma$ とする。$s=\nu q$($q\colon[d]\to[Q]$ は全射、$\nu\colon[Q]\to[M]$ は単射)と像で分け、$R(s,t):=(q,t\nu)$ とおく($q$ も単射でない)。射 $\psi\colon(s,t)\to(s',t')$ は $\psi(\nu[Q])=\psi s[d]=s'[d]=\nu'[Q']$ をみたすので $\nu'\beta=\psi\nu$ となる $\beta$ がただ 1 つあり、$\beta q=q'$、$t'\nu'\beta=t\nu$ なので $R(\psi):=\beta$ で関手 $R$ が定まり、$RL=\mathrm{id}$ である。$a=(q_a,t_a)\in I''_\sigma$ から $L$ を通した $(s,t)$ への射 $\psi$ は、$q_a$ が全射なので像が $\nu[Q]$ で、$\psi=\nu\beta$ と一意に書け、$\beta$ はちょうど $a$ から $R(s,t)$ への射である。よって $L$ は $R$ の左随伴で、圏の分類空間 の系「随伴関手はホモトピー同値を与える」により $BL$ はホモトピー同値である。$\sigma=\bar\sigma\circ q_0$($\bar\sigma$ は非退化、$q_0$ は全射)を 単体的集合 の命題「退化単体の一意な表示」の分解とすると、$\sigma$ は退化なので $q_0$ は単射でなく、$c:=(q_0,\bar\sigma)\in I''_\sigma$ である。$(q,t)\in I''_\sigma$ について $t=\bar t\circ q_1$ と分解すると、$\sigma=\bar t\circ(q_1q)$ と表示の一意性から $\bar t=\bar\sigma$、$q_1q=q_0$ であり、$q_1$ は $(q,t)$ から $c$ への射で、$q$ が全射なので射はこれだけである。よって $c$ は終対象で、$BI''_\sigma$、したがって $BI'_\sigma$ は可縮である。弱可縮な単体的集合の間の単射 $N(I'_\sigma)\subset N(I_\sigma)$ は弱同値なので、Kan–Quillenモデル構造 の定理「Kan–Quillen モデル構造」の 2 によりアノダイン拡大である。$\square$
$K_F$ の $n$ 単体 $e$ が非退化であるのは、$i=n$ なら $e^-$ が $K$ で非退化のとき、$i< n$ なら、$i\ge0$ のとき最初の橋 $u_{i+1}$ が単射であり、かつ鎖の射 $\varphi_{a,a+1}$($i< a< n$)がどれも恒等射でないときである。$i\ge0$ で $u_{i+1}$ が単射でなければ、$e$ は分かれ目 $i-1$ の単体の退化である。
$e=(\sigma^k)^*e'$ なら $e$ の頂点 $k,k+1$ は $K_F\to\Delta^1$ で同じ値に写るので、$i\ge0$ かつ $i< n$ なら $k\ne i$ である。$k< i$ なら $u_{i+1}=u'_{i+1}\sigma^k$ は単射でない。逆に $u_{i+1}(k)=u_{i+1}(k+1)$($k< i$)なら $u_{i+1}=u'\sigma^k$ と書け(単体的集合 の補題「余退化写像による分解」)、分かれ目 $i-1$、左の部分 $\sigma_{i+1}u'$、同じ鎖、橋 $\varphi_{i+1,a}u'$ の単体 $e'$ について $e=(\sigma^k)^*e'$ である。$k>i$ なら $(\sigma^k)^*e'$ の鎖の $k$ 番目の射は恒等射であり、逆に $\varphi_{k,k+1}=\mathrm{id}$ なら $e$ は鎖から $k+1$ 番目の対象を除いた単体の退化である。$i=n$ と $i=-1$ では $K$ と $N(\Delta/K)$ の中の退化と同じである。$\square$
$d\ge-1$ について、$K_F$ の単体で、退化単体の一意な表示の非退化単体の分かれ目が $d$ 以下であるものの全体を $K_F^{(d)}$ とする。面をとっても分かれ目は増えず、退化単体の表示の非退化単体はその単体の面なので、$K_F^{(d)}$ は部分単体的集合である。$K_F^{(-1)}=N(\Delta/K)$、$\bigcup_dK_F^{(d)}=K_F$ である。$\sigma\in K_d$ について、結(単体的集合) の $\Delta^d\star N(I_\sigma)$ の単体 $(\alpha,(s_a,t_a)_a)$($\alpha\colon[i]\to[d]$ と $I_\sigma$ の鎖)を、左の部分 $\sigma\alpha$、鎖 $(M_a,t_a)$ とその射、橋 $s_a\alpha$ の単体に送る単体的写像を $\chi_\sigma\colon\Delta^d\star N(I_\sigma)\to K_F$ とする($t_as_a\alpha=\sigma\alpha$、$\psi s_a\alpha=s_b\alpha$ から橋の条件がみたされる)。$\sigma$ が非退化なら $D_\sigma:=\partial\Delta^d\star N(I_\sigma)$、退化なら $D_\sigma:=(\partial\Delta^d\star N(I_\sigma))\cup(\Delta^d\star N(I'_\sigma))$ とおく。
各 $d\ge0$ について、$K_F^{(d)}$ は $K_F^{(d-1)}$ に $\coprod_{\sigma\in K_d}\Delta^d\star N(I_\sigma)$ を $\coprod_\sigma\chi_\sigma|_{D_\sigma}$ に沿って貼った押し出しであり、各 $D_\sigma\subset\Delta^d\star N(I_\sigma)$ は右アノダインである。したがって $v\colon N(\Delta/K)\subset K_F$ は右アノダインである。
要点:分かれ目がちょうど $d$ の非退化単体は、左の部分 $\sigma\in K_d$ と $I_\sigma$ の鎖の組と 1 対 1 に対応する。
$\chi_\sigma(D_\sigma)\subset K_F^{(d-1)}$。$(\alpha,c)$ について $\alpha=\delta\gamma$($\gamma$ は全射、$\delta$ は単射)と分けると、$\chi_\sigma(\alpha,c)$ は $\chi_\sigma(\delta,c)$ の左の部分での退化なので、同じ非退化単体の表示をもつ。$\alpha$ が全射でなければ $\chi_\sigma(\delta,c)$ の分かれ目は $d-1$ 以下である。$\sigma$ が退化で $c$ が $I'_\sigma$ の鎖(空も含む)なら、$\chi_\sigma(\mathrm{id},c)$ は、$c$ が空なら退化した $\sigma$、空でなければ最初の橋 $s$ が単射でない単体で、lem-lvc-nondeg により分かれ目 $d-1$ の単体の退化である。
補集合の対応。$\Delta^d\star N(I_\sigma)$ の $D_\sigma$ の補集合は、$\alpha$ が全射で、$c$ が空でなく最初の対象の $s$ が単射であるもの($\sigma$ が非退化なら $c$ が空のものも含む)からなる。$s_a=\psi s$ なので最初の $s$ が単射でなければすべて単射でない。この補集合の元は $(\alpha,c)=(\gamma\sqcup\rho)^*(\mathrm{id},\bar c)$($\bar c$ は恒等射を含まない鎖、$\gamma\sqcup\rho$ は全射)と一意に書け、$\chi_\sigma(\mathrm{id},\bar c)$ は lem-lvc-nondeg により分かれ目 $d$ の非退化単体である($I_\sigma$ の射が恒等射であることと $\Delta/K$ の射として恒等射であることは同値)。逆に分かれ目 $d$ の非退化単体 $w$ は、$\sigma:=w^-$、$\bar c:=((u_a,\sigma_a))_a$ として $\chi_\sigma(\mathrm{id},\bar c)$ にただ一通りに書ける。$K_F^{(d)}\setminus K_F^{(d-1)}$ の単体は、分かれ目 $d$ の非退化単体の退化として一意に書けるので、$\chi=\coprod\chi_\sigma$ は各次数で $\coprod_\sigma(\Delta^d\star N(I_\sigma)\setminus D_\sigma)$ を $K_F^{(d)}\setminus K_F^{(d-1)}$ に全単射に写す。Kan–Quillenモデル構造 の節「1 単射と小対象の議論」の補集合による判定により押し出しである。
右アノダインであること。$\sigma$ が非退化なら、$D_\sigma\subset\Delta^d\star N(I_\sigma)$ は lem-lvc-factor の 1 と 右アノダイン射 の系「弱可縮な単体的集合との結」($\partial\Delta^d\subset\Delta^d$)により右アノダインである。$\sigma$ が退化なら $D_\sigma\subset\Delta^d\star N(I_\sigma)$ は $J(\partial\Delta^d\subset\Delta^d,\ N(I'_\sigma)\subset N(I_\sigma))$ で、lem-lvc-factor の 2 と 右アノダイン射 の定理「単射とアノダイン拡大の結」により右アノダインである。右アノダイン射は余積・押し出し・可算列の合成で閉じている(右アノダイン射 の命題「生成と閉包性」)ので、$v$ は右アノダインである。$\square$
HTT09 Proposition 4.2.3.8(p. 252)は、一般の関手 $F$ についてこの形の貼り合わせを 1 単体ずつ行い、同じ 2 つの結の補題(同 Lemma 4.2.3.5・4.2.3.6, p. 251)で右アノダインであることを示している。上では同じ次元の単体を一度に貼るので、可算列の合成で足りる。
$p\colon X\to K$ を右ファイブレーションとし、$\lambda_K=r\circ v$ との合成が定める写像を
$$
\operatorname{Map}_K(K,X)\xrightarrow{\ r^*\ }\operatorname{Map}_K(K_F,X)\xrightarrow{\ v^*\ }\operatorname{Map}_K(N(\Delta/K),X)
$$
と分ける(中央は $r$ の上、右は $rv=\lambda_K$ の上の切断の空間)。$r^*$ は prop-lvc-r-cofinal によりホモトピー同値である。$X':=K_F\times_KX\to K_F$($r$ に沿った引き戻し)は右ファイブレーションである。$pg=r\circ\mathrm{pr}$ をみたす $g\colon K_F\times\Delta^n\to X$ に $(\mathrm{pr}_{K_F},g)\colon K_F\times\Delta^n\to X'$ を、$pg'=rv\circ\mathrm{pr}$ をみたす $g'\colon N(\Delta/K)\times\Delta^n\to X$ に $(v\circ\mathrm{pr},g')$ を対応させると、$\operatorname{Map}_K(K_F,X)\cong\operatorname{Map}_{K_F}(K_F,X')$、$\operatorname{Map}_K(N(\Delta/K),X)\cong\operatorname{Map}_{K_F}(N(\Delta/K),X')$ であり、$v^*$ は $v$ に沿った制限に対応する。$v$ は右アノダインな包含なので(thm-lvc-anodyne)、右アノダイン射 の命題「右アノダインな包含は共終」の 1 によりこの制限は自明 Kan ファイブレーションで、とくにホモトピー同値である。ホモトピー同値の合成はホモトピー同値なので、$\lambda_K$ は共終である。後半は同じ命題の 2 による。$\square$
共終な写像は ∞圏の余極限を保つ。すなわち、共終な $f\colon S\to T$、∞圏 $\mathcal C$、図式 $q\colon T\to\mathcal C$ について、余錐の ∞圏の間の写像 $\mathcal C_{q/}\to\mathcal C_{qf/}$ は ∞圏の圏同値であり、$q$ の余極限を $f$ で制限した余錐は $qf$ の余極限である(HTT09 Proposition 4.1.1.8 (2)(3), p. 226。この記事では証明しない)。余極限(∞圏) の定義「余錐と余極限」の意味で、主定理から次が従う。
∞圏 $\mathcal C$ と図式 $q\colon K\to\mathcal C$ について、$q$ の余極限は普通の圏 $\Delta/K$ を添字とする図式 $q\circ\lambda_K\colon N(\Delta/K)\to\mathcal C$ の余極限と一致する。より正確に、$\mathcal C_{q/}\to\mathcal C_{q\lambda_K/}$ は ∞圏の圏同値である。
たとえば $K=\Delta^n$ では、$\{n\}\subset\Delta^n$ が右アノダイン(右アノダイン射 の系「錐点と最後の頂点」の 2)なので共終で、余極限は頂点 $n$ での値で計算できる。単体の圏の側では $\Delta/\Delta^n$ が終対象 $(n,\mathrm{id})$ をもち(単体的集合の単体の圏 の例「標準単体」)、$\lambda_{\Delta^n}$ はそれを頂点 $n$ に送る。$K$ が圏の脈体 $N(\mathcal D)$ のときは、単体的集合の単体の圏 の定理「脈体の場合」の関手 $\Delta/N(\mathcal D)\to\mathcal D$ の脈体が $\lambda_K$ である。
$K=\Delta^0$ では $\Delta/\Delta^0$ は単体圏 $\Delta$ と同型で、主定理は $N(\Delta)\to\Delta^0$ が共終であることを述べる。$\Delta$ は終対象 $[0]$ をもつので、$N(\Delta)$ が弱可縮であることは 圏の分類空間 の系「終対象をもつ圏は可縮」からも直接わかる。
$\{0\}\subset\Delta^1$ はアノダイン拡大(とくに弱同値)だが共終でない。$R=\{0<1,\ 0<2\}$($1$ と $2$ は比較できない)の脈体 $\Lambda^2_0$ を、$0\mapsto0$、$1,2\mapsto1$ で $\Delta^1$ に写すと右ファイブレーションになり、切断の空間 $\operatorname{Map}_{\Delta^1}(\Delta^1,\Lambda^2_0)$ は 2 点(辺 $0\to1$ と $0\to2$)、$\operatorname{Map}_{\Delta^1}(\{0\},\Lambda^2_0)$ は 1 点なので、制限はホモトピー同値でない。
$n\ge3$ の右ホーンは $\Delta^n$ の辺をすべて含み、順序集合の脈体への写像は頂点の順序写像で決まるので延長がある。$\Lambda^2_1$ は推移律で延びる。$\Lambda^2_2$ では頂点 $x_0,x_1\le x_2$ が与えられ、$x_0\le x_1$ を示せばよい。$x_2=0$ なら $x_0=x_1=0$、$x_2\in\{1,2\}$ なら $x_0,x_1\in\{0,x_2\}$ で、底の順序から $p(x_0)\le p(x_1)$ なので $x_0=x_2$、$x_1=0$ となることはない。$\Lambda^1_1$ では、底の辺が $0\to1$ なら頂点 $0$ からの辺が、退化した辺なら退化した辺が持ち上げである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 右アノダイン射 の命題「右アノダインな包含は共終」の「右」 | $\{0\}\subset\Delta^1$(ex-lvc-first-vertex) | 共終であること |
| lem-lvc-factor の 2 の「$\sigma$ は退化」 | 非退化な $\sigma$($I'_\sigma=\emptyset$) | $N(I'_\sigma)\subset N(I_\sigma)$ がアノダイン拡大であること |
2 行目では $N(I_\sigma)$ は空でないので、空集合からの包含は弱同値でない。そのため非退化な $\sigma$ には $D_\sigma=\partial\Delta^d\star N(I_\sigma)$ を使い、lem-lvc-factor の 1 で処理している。
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