彩色多項式(chromatic polynomial)とは、単純グラフ $G$ の頂点を $k$ 色で隣接頂点が異なる色になるように塗る方法の個数 $P_G(k)$ のことであり、$G$ を独立集合に分ける分割の個数を係数とする下降階乗の和として $k$ の多項式になる。辺 $e$ について削除縮約の公式 $P_G=P_{G-e}-P_{G/e}$ が成り立ち、そこから係数の符号が交互に並ぶこと、$k^{n-1}$ の係数が辺の数の $-1$ 倍であること、$0$ が連結成分の個数と同じ重複度の根で、負の実数と $(0,1)$ に根がないことが従う。$(-1)^nP_G(-1)$ は非巡回な向き付けの個数に等しく(Stanley の定理)、彩色数は $P_G(k)>0$ となる最小の $k$ である。四色問題への手がかりとして導入され、マトロイドの特性多項式や係数の対数凹性と結びつく。
グラフ $G$ を $k$ 色で塗り分ける方法が何通りあるかを数えると、その個数は $k$ の多項式になる。これが $G$ の彩色多項式 $P_G(k)$ である。彩色数 $\chi(G)$ は $P_G(k)>0$ となる最小の正の整数 $k$ なので、彩色多項式は「塗れるかどうか」の情報を「何通り塗れるか」の情報に精密化したものである。Birkhoff は四色問題への手がかりとして、彩色の個数を数える方法を考えた(BM76 §8.4、p. 125)。
彩色多項式は辺の削除と縮約についての簡単な漸化式を満たし、そこから係数の符号が交互に並ぶこと、係数が辺の数や三角形の数を記録していること、負の実数や $(0,1)$ に根をもたないことが導かれる。$-1$ での値は、グラフの辺に向きを付けて有向閉路を作らない方法の数を数える。
この記事では、独立集合への分割による展開、削除縮約の公式、係数と根についての性質、張り合わせの公式、非巡回な向き付けとの関係(Stanley の定理)を証明する。
この記事では、グラフは有限な単純グラフ $G=(V,E)$ とし、$n=|V|\ge1$、$m=|E|$、連結成分の個数を $c(G)$ と書く。正の整数 $k$ について、$G$ の $k$-頂点彩色(彩色 の定義「頂点彩色」で色の集合を $\{1,\dots,k\}$ としたもの)の個数を $P_G(k)$ と書く。2 つの彩色は、ある頂点に異なる色を割り当てるとき異なるものと数える。
$k$ の下降階乗を $k^{\underline{j}}=k(k-1)\cdots(k-j+1)$($k^{\underline0}=1$)とする。$V$ を $j$ 個の空でない独立集合に分ける分割(ブロックの順序は区別しない)の個数を $a_j(G)$ とする。
任意の正の整数 $k$ について
$$
P_G(k)=\sum_{j=1}^{n}a_j(G)\,k^{\underline{j}}
$$
が成り立つ。特に、$P_G(k)$ は $k$ の整数係数の多項式で表され、その多項式は次数 $n$、最高次の係数 $1$ である。さらに $\chi(G)=\min\{j: a_j(G)>0\}$ であり、正の整数 $k$ について $P_G(k)>0$ と $k\ge\chi(G)$ は同値である。
$k$-頂点彩色 $c\colon V\to\{1,\dots,k\}$ に、空でない色類 $c^{-1}(s)$ 全体からなる分割 $\pi(c)$ と、各ブロックにその色を対応させる写像を対応させる。彩色 の命題「適正彩色と独立な色類」により、各色類は独立集合であり、異なるブロックには異なる色が付くので、ブロックから色への写像は単射である。逆に、$V$ の $j$ 個の空でない独立集合への分割と、ブロックの集合から $\{1,\dots,k\}$ への単射が与えられれば、各頂点にそのブロックの色を付けることで $k$-頂点彩色が得られる(同じ命題)。2 つの対応は互いに逆である。
$j$ 個のブロックから $k$ 色への単射は $k^{\underline j}$ 個あるので、分割のブロック数 $j$ ごとに数えて
$$
P_G(k)=\sum_{j=1}^na_j(G)\,k^{\underline j}
$$
を得る。右辺は $k$ の整数係数の多項式である。$a_n(G)=1$($n$ 個のブロックへの分割は 1 点集合への分割だけで、1 点集合は独立)であり、$k^{\underline n}$ だけが $k^n$ を含むので、次数は $n$、最高次の係数は $1$ である。
$k^{\underline j}>0$ と $j\le k$ は同値なので、$P_G(k)>0$ は「$j\le k$ かつ $a_j(G)>0$ となる $j$ がある」ことと同値である。$a_j(G)>0$ なら $G$ は $j$ 色で塗れるので $j\ge\chi(G)$ である。逆に $\chi(G)$ 色の彩色では空の色類がない(あれば $\chi(G)-1$ 色で塗れる)ので $a_{\chi(G)}(G)>0$ である。よって最小の $j$ は $\chi(G)$ であり、主張が従う。$\square$
thm-cp-partition の右辺の多項式を $G$ の彩色多項式(chromatic polynomial)といい、$P_G(k)$ と書く。変数 $k$ は実数・複素数に置き換えてよい。
正の整数で値が一致する 2 つの多項式は等しいので、彩色多項式は「正の整数 $k$ での値が $k$ 色の彩色の個数になる多項式」としてただ 1 つに決まる。以下、2 つの多項式の等式を示すには、すべての正の整数(または十分大きいすべての整数)$k$ での等式を示せば足りる。
辺 $e=uv$ について、$G-e$ を $e$ を除いたグラフ、$G/e$ を $u$ と $v$ を 1 つの新しい頂点 $z$ に置き換え、$u$ または $v$ に隣接していた頂点($u,v$ を除く)を $z$ に隣接させた単純グラフとする。$u$ と $v$ の共通の隣接頂点 $w$ について、2 本の辺 $uw,vw$ は $G/e$ では 1 本の辺 $zw$ になる。
単純グラフ $G$ の任意の辺 $e$ について
$$
P_G=P_{G-e}-P_{G/e}
$$
が成り立つ。
正の整数 $k$ を固定する。$G-e$ の $k$-頂点彩色 $c$ を、$c(u)\ne c(v)$ のものと $c(u)=c(v)$ のものに分ける。
$c(u)\ne c(v)$ のものは、辺 $e$ の条件も満たすので、ちょうど $G$ の $k$-頂点彩色である。
$c(u)=c(v)$ のものは $G/e$ の $k$-頂点彩色と一対一に対応する。実際、$c$ に対し、$z$ に共通の色 $c(u)$ を付け、ほかの頂点の色はそのままにした写像 $c'$ を考える。$G/e$ の辺は、$G-e$ の $u,v$ を含まない辺か、$G-e$ の辺 $uw$ または $vw$ から来た辺 $zw$ である。前者の両端の色は $c$ で異なり、後者では $c'(z)=c(u)=c(v)$ が $c(w)$ と異なる。よって $c'$ は $G/e$ の彩色である。逆に $G/e$ の彩色 $c'$ から $c(u)=c(v)=c'(z)$ とおけば同じ理由で $G-e$ の彩色が得られ、2 つの対応は互いに逆である。
以上より $P_{G-e}(k)=P_G(k)+P_{G/e}(k)$ がすべての正の整数 $k$ で成り立つので、多項式として等しい。$\square$
この公式は BM76 Theorem 8.6(p. 125)である。$G-e$ も $G/e$ も $G$ より辺が少ないので、公式をくり返すと、どの彩色多項式も辺のないグラフの彩色多項式 $k^r$ の整数係数の 1 次結合として計算できる。逆向きに $P_{G-e}=P_G+P_{G/e}$ と読めば、辺を足して完全グラフの彩色多項式 $k^{\underline r}$ の 1 次結合として計算することもできる(BM76 p. 128)。辺の多いグラフでは後者が速い。
3 から、頂点数の等しい木はすべて同じ彩色多項式をもつ。たとえば 4 頂点の道 $P_4$ と星 $K_{1,3}$ は同型でないが、どちらも $k(k-1)^3$ である。彩色多項式はグラフを同型を除いて決めない。
$n\ge1$ 頂点、$m$ 辺、$c=c(G)$ 個の連結成分をもつ単純グラフ $G$ の彩色多項式を
$$
P_G(k)=\sum_{j=0}^{n}(-1)^{n-j}b_j\,k^{j}
$$
と書く。
1 と 2.$m$ についての帰納法で示す。$m=0$ なら $P_G=k^n$、$c=n$ なので、$b_n=1$ でほかの $b_j$ は $0$ であり、主張が成り立つ。
$m\ge1$ とし、辺 $e=uv$ をとる。$G-e$ は $n$ 頂点 $m-1$ 辺で、連結成分は $c$ 個($e$ が橋でないとき)か $c+1$ 個(橋のとき)である。$G/e$ は $n-1$ 頂点で、$u,v$ の共通の隣接頂点の個数を $s$ とすると辺は $m-1-s$ 本であり、連結成分は $c$ 個である($u,v$ は同じ成分にあり、つぶしても成分のつながり方は変わらない)。帰納法の仮定により
$$
P_{G-e}(k)=\sum_j(-1)^{n-j}b'_jk^j,\qquad P_{G/e}(k)=\sum_j(-1)^{n-1-j}b''_jk^j
$$
と書けて、$b'_j,b''_j$ は 1・2 を満たす($b''_n:=0$)。thm-cp-deletion-contraction により
$$
P_G(k)=\sum_j(-1)^{n-j}\bigl(b'_j+b''_j\bigr)k^j
$$
なので $b_j=b'_j+b''_j\ge0$ である。$b_n=1+0=1$、$b_{n-1}=(m-1)+1=m$ である($b''_{n-1}$ は $n-1$ 頂点のグラフ $G/e$ の最高次の係数 $1$)。$c\le j\le n-1$ では $G/e$ が $c$ 個の成分と $n-1$ 個の頂点をもつので $b''_j>0$、したがって $b_j>0$ である。$j< c$ では、$G-e$ の成分の個数は $c$ 以上なので $b'_j=0$、$b''_j=0$ であり、$b_j=0$ である。
3.Heron–Rota–Welsh予想 の定理「彩色多項式と特性多項式」により
$$
P_G(k)=\sum_{A\subset E}(-1)^{|A|}k^{\,c(A)}
$$
である。ここで $c(A)$ はグラフ $(V,A)$ の連結成分の個数である。$k^{n-2}$ の係数に寄与するのは $c(A)=n-2$ となる $A$ である。$(V,A)$ の辺をもつ成分を考えると、$c(A)=n-2$ は「辺をもつ成分が 3 頂点の成分 1 つだけ」か「2 頂点の成分がちょうど 2 つ」のどちらかであることと同値である(辺をもつ成分の頂点数を $s_1,\dots,s_r$ とすると $c(A)=n-\sum_i(s_i-1)$)。前者では $A$ は 3 頂点の上の連結な単純グラフの辺集合なので、2 本の辺か三角形の 3 辺である。後者では $A$ は端点を共有しない 2 本の辺である。よって $c(A)=n-2$ となる $A$ は、任意の 2 本の辺($\binom m2$ 個、符号 $+$)と三角形の 3 辺($t$ 個、符号 $-$)であり、$k^{n-2}$ の係数は $\binom m2-t$ である。$(-1)^{n-(n-2)}=1$ なので $b_{n-2}=\binom m2-t$ である。$\square$
1 と、2 のうち係数の符号が交互で定数項が $0$ であることは、BM76 Corollary 8.6(p. 126)と Exercise 8.4.2(a)(p. 128)の内容である。たとえば $C_4$ では $b_3=4=m$、$b_2=6=\binom42-0$ で、ex-cp-examples の 4 と一致する。$K_3$ では $P(k)=k^3-3k^2+2k$ で、$b_2=3=m$、$b_1=2=\binom32-1$ である。
$f(k)=k^4-3k^3+3k^2$ は、最高次の係数が $1$、係数の符号が交互、定数項が $0$ であり、thm-cp-coefficients の 1・2 の形をしている。しかし $f$ はどのグラフの彩色多項式でもない(BM76 Exercise 8.4.2(b)、p. 128)。
実際、$f=P_G$ とすると、1 により $G$ は 4 頂点 3 辺であり、2 により最低次の項 $3k^2$ から $c(G)=2$ である。成分が 2 つの 4 頂点の森は辺が $4-2=2$ 本なので、$G$ は閉路を含む。閉路は 3 頂点以上を使うので、成分の頂点数は $3$ と $1$ で、3 頂点の成分は 3 辺をもつ三角形である。よって $G=K_3\sqcup K_1$ で、$P_G(k)=k\cdot k(k-1)(k-2)=k^4-3k^3+2k^2\ne f$ となり矛盾する。3 を使えば $b_2=\binom32-t=3$ から $t=0$ だが、上の議論で $G$ は三角形を含むので、同じ矛盾が得られる。
1.$G\sqcup H$ の $k$-頂点彩色は、$G$ の彩色と $H$ の彩色の組と一対一に対応する。
2.共通部分の頂点集合を $S$ とし、$k\ge r$ を固定する。$S$ 上の写像 $\sigma\colon S\to\{1,\dots,k\}$ で単射なもの($K_r$ の $k$-頂点彩色)を 1 つ固定し、$G_i$ の彩色で $S$ への制限が $\sigma$ になるものの個数を $N_i(\sigma)$ とする。色の置換 $\rho$ は $G_i$ の彩色を $G_i$ の彩色に写し(彩色 の命題「色集合の単射による彩色の移送」)、制限が $\sigma$ のものを制限が $\rho\circ\sigma$ のものに一対一に写す。$S$ 上の単射どうしは色の置換で移り合うので、$N_i(\sigma)$ は $\sigma$ によらない。$G_i$ の彩色は $S$ への制限で分類できるので $P_{G_i}(k)=k^{\underline r}N_i$ である。
$G$ の写像 $c\colon V\to\{1,\dots,k\}$ が彩色であることは、$G_1$ と $G_2$ への制限がともに彩色であることと同値である(どの辺もどちらかに属するので)。よって $G$ の彩色は、$S$ 上の単射 $\sigma$ と、制限が $\sigma$ になる $G_1$・$G_2$ の彩色の組に一対一に対応し、
$$
P_G(k)=k^{\underline r}N_1N_2=\frac{P_{G_1}(k)P_{G_2}(k)}{k^{\underline r}}
$$
である。$k^{\underline r}=P_{K_r}(k)$ を掛けて分母を払うと、$k\ge r$ のすべての整数で主張の等式が成り立つので、多項式として等しい。$\square$
1 から、$G$ の連結成分を $G_1,\dots,G_c$ とすると $P_G=P_{G_1}\cdots P_{G_c}$ である。2 を $r=1$ でくり返すと、ex-cp-examples の木の公式がもう一度得られる(辺 $K_2$ を 1 頂点で次々に貼り合わせると $P=k\cdot\bigl(k(k-1)/k\bigr)^{n-1}$)。
$G$ の向き付けとは、各辺 $uv$ に $u\to v$ か $v\to u$ のどちらか一方の向きを与えることである。向き付けが非巡回であるとは、有向閉路(向きに沿って進み出発点に戻る、相異なる頂点を通る長さ 3 以上の閉路)をもたないことをいう。これは 有向非巡回グラフ になることと同じである。$G$ の非巡回な向き付けの個数を $\alpha(G)$ と書く。
$n$ 頂点の単純グラフ $G$ について
$$
\alpha(G)=(-1)^nP_G(-1)
$$
が成り立つ。
準備.向き付けで、向きに沿って進み出発点に戻る長さ $1$ 以上の道筋(有向閉歩道)があれば、有向閉路がある。実際、長さ最小の有向閉歩道をとると、途中で同じ頂点を 2 度通れば、その間の部分がより短い有向閉歩道になるので、頂点はすべて相異なる。単純グラフにはループがなく、2 頂点の間の辺は 1 本で向きは 1 つなので、長さは $1$ でも $2$ でもなく、3 以上である。
漸化式.$\alpha(G)=\alpha(G-e)+\alpha(G/e)$ を示す。$e=uv$ とし、$G-e$ の非巡回な向き付け $O$ に $u\to v$ を加えたものを $O_1$、$v\to u$ を加えたものを $O_2$ とする。$O_1$ の有向閉路は $O$ が非巡回なので $u\to v$ を通り、残りは $O$ の $v$ から $u$ への有向道である。逆にそのような有向道があれば $O_1$ は有向閉路をもつ。よって $O_1$ が非巡回であることは、$O$ に $v$ から $u$ への有向道がないことと同値であり、$O_2$ についても $u$ と $v$ を入れ換えて同様である。$O$ に $u$ から $v$ への有向道と $v$ から $u$ への有向道が両方あれば、つないで有向閉歩道ができ、準備により $O$ は非巡回でない。したがって $O_1,O_2$ の少なくとも一方は非巡回であり、両方が非巡回になるのは、$O$ に $u,v$ 間の有向道がどちらの向きにもないときである。$G$ の非巡回な向き付けは $e$ を除けば $G-e$ の非巡回な向き付けになるので、
$$
\alpha(G)=\alpha(G-e)+N,\qquad N=\#\{O: u,v\text{ 間に有向道のない }G-e\text{ の非巡回な向き付け}\}
$$
である。
$N=\alpha(G/e)$ を示す。$O$ を $N$ に数える向き付けとする。$u,v$ の共通の隣接頂点 $w$ について、$u\to w\to v$ も $v\to w\to u$ も有向道になるので、$uw$ と $vw$ はともに $w$ に向かうか、ともに $w$ から出る。そこで $G/e$ の向き付け $O'$ を、$u,v$ を含まない辺はそのままに、辺 $zw$ は $G-e$ の辺 $uw$ または $vw$ と同じ向きに($u,v$ を $z$ に読み替えて)定める。$O'$ に有向閉路があるとする。$z$ を通らなければそれは $O$ の有向閉路である。$z$ を通るなら $z\to w_1\to\cdots\to w_r\to z$ と書け、$O$ では $x\to w_1\to\cdots\to w_r\to y$($x,y\in\{u,v\}$)となる。$x=y$ なら $O$ の有向閉歩道、$x\ne y$ なら $u,v$ 間の有向道であり、どちらも $O$ の選び方に反する。よって $O'$ は非巡回である。
逆に $G/e$ の非巡回な向き付け $O'$ から、$G-e$ の向き付け $O$ を、$z$ を含む辺 $zw$ の向きを、それから来た辺 $uw$・$vw$ に写して定める。$O$ の有向閉路、または $u$ から $v$(あるいは $v$ から $u$)への有向道があれば、$u,v$ を $z$ に置き換えると、$O'$ の長さ $1$ 以上の有向閉歩道になる(有向道の長さは $2$ 以上である。$uv$ は $G-e$ の辺でないから)。準備によりこれは $O'$ が非巡回であることに反する。よって $O$ は $N$ に数えられ、2 つの対応は互いに逆である。
結論.$m$ についての帰納法で示す。$m=0$ なら向き付けは 1 通りで、$(-1)^nP_G(-1)=(-1)^n(-1)^n=1$ である。$m\ge1$ なら、thm-cp-deletion-contraction と、$G/e$ の頂点数が $n-1$ であることから
$$
(-1)^nP_G(-1)=(-1)^nP_{G-e}(-1)+(-1)^{n-1}P_{G/e}(-1)=\alpha(G-e)+\alpha(G/e)=\alpha(G)
$$
である。$\square$
この定理は Sta73 Corollary 1.3 であり、同論文 Theorem 1.2 は正の整数 $\lambda$ について $(-1)^nP_G(-\lambda)$ を非巡回な向き付けと色の組の個数として解釈している。
$G$ を $n\ge1$ 頂点、$c$ 個の連結成分をもつ単純グラフとする。
1.thm-cp-coefficients の記法で $(-1)^nP_G(q)=\sum_jb_j(-1)^{2n-j}q^j=\sum_jb_j|q|^j$ であり、$b_j\ge0$、$b_n=1$ なので、この和は $|q|^n>0$ 以上である。
2.thm-cp-coefficients の 2 により、$P_G$ の $0$ でない最低次の項は $k^c$ の項である。
3.辺の数 $m$ についての帰納法で示す。$m=0$ なら $P_G=q^n$、$c=n$ で正である。$m\ge1$ とし、辺 $e=uv$ をとる。
$e$ が橋でないとき、$G-e$ は $n$ 頂点 $c$ 成分、$G/e$ は $n-1$ 頂点 $c$ 成分で、どちらも辺が少ない。thm-cp-deletion-contraction により
$$
(-1)^{n-c}P_G(q)=(-1)^{n-c}P_{G-e}(q)+(-1)^{(n-1)-c}P_{G/e}(q)
$$
で、右辺の 2 項は帰納法の仮定により正である。
$e$ が橋のとき、まず $q\,P_G(q)=(q-1)P_{G-e}(q)$ を示す。正の整数 $k$ を固定する。$G-e$ で $v$ を含む成分を $H$、残りを $H'$ とすると、$u$ は $H'$ にあり、prop-cp-gluing の 1 の対応で $G-e$ の彩色は $H$ と $H'$ の彩色の組である。色の置換は $H$ の彩色を $H$ の彩色に写すので、$v$ の色が $a$ である $H$ の彩色の個数は $a$ によらず $P_H(k)/k$ である。したがって $c(u)=c(v)$ となる $G-e$ の彩色は $P_{G-e}(k)/k$ 個あり、$P_G(k)=P_{G-e}(k)-P_{G-e}(k)/k$ である。$G-e$ は $n$ 頂点 $c+1$ 成分なので、帰納法の仮定から
$$
(-1)^{n-c}P_G(q)=\frac{1-q}{q}\,(-1)^{n-(c+1)}P_{G-e}(q)>0
$$
である。
4.$P_G(1)$ は 1 色での彩色の個数であり、辺があれば $0$、なければ $1$ である。$\square$
正の実根はすべて $n-1$ 以下である。実際、実数 $q>n-1$ では $1\le j\le n$ について $q^{\underline j}=q(q-1)\cdots(q-j+1)>0$ であり、thm-cp-partition の係数 $a_j(G)$ は $0$ 以上で $a_n(G)=1$ なので、$P_G(q)\ge q^{\underline n}>0$ となる(BM76 Exercise 8.4.8、p. 129 は「$n$ 以下」の形で述べる)。$C_4$ の例(ex-cp-examples の 4)のように、彩色多項式は実数でない根をもちうる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| ループをもたない | 1 頂点にループをもつグラフ | $P_G$ が次数 $n$・最高次の係数 $1$ であること(彩色がなく $P_G=0$) |
| 「$G\cong G'$」を「$P_G=P_{G'}$」に弱める | $P_4$ と $K_{1,3}$(ex-cp-examples の 3) | 同型であること(どちらも $k(k-1)^3$) |
| 多項式が $G$ から来ること(thm-cp-coefficients の形だけを仮定する) | $k^4-3k^3+3k^2$(ex-cp-not-chromatic) | 彩色多項式であること |
| $G$ が連結(thm-cp-roots の 3 で $c=1$) | 2 頂点の辺のないグラフ | $(-1)^{n-1}P_G(q)>0$($0< q< 1$)($P=q^2$ で符号が逆) |
| 共通部分が完全グラフ(prop-cp-gluing の 2) | $C_4$ を 2 本の道 $P_3$ に分け、共通部分を辺のない 2 頂点とする | $P_GP_S=P_{G_1}P_{G_2}$(左辺 $k^2(k^4-4k^3+6k^2-3k)$、右辺 $k^2(k-1)^4$) |
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する