級数(series)とは、数列 $(a_n)$ の項を順に限りなく足し合わせた形式的な和 $\sum_{n=1}^{\infty}a_n$ のことで、その値は部分和 $S_N=a_1+\cdots+a_N$ の極限として定める。部分和が収束すれば級数は収束するといい、極限を和とする。たとえば $\frac12+\frac14+\frac18+\cdots=1$、$0.999\cdots=1$ であり、等比級数 $\sum ar^n$ は $|r|<1$ のとき $a/(1-r)$ に収束する。収束する級数の項は $0$ に近づくが、逆は成り立たず、調和級数 $\sum1/n$ は発散する。正の項の級数には比較判定・比判定が、符号が交互に変わり絶対値が単調に $0$ に減る級数には Leibniz の判定が使える。
$\frac12+\frac14+\frac18+\cdots$ と、半分ずつ小さくなる数を限りなく足していくとどうなるか。最初の $N$ 項までの和は
$$
\frac12=1-\frac12,\qquad \frac12+\frac14=1-\frac14,\qquad \frac12+\frac14+\frac18=1-\frac18,\qquad\ldots,\qquad \sum_{n=1}^{N}\frac1{2^n}=1-\frac1{2^N}
$$
であり、$N$ を大きくすると $1$ に近づく。そこでこの「無限個の和」の値を $1$ と定める。長さ $1$ の線分の半分、残りの半分、さらにその半分、と切り取っていくと、切り取った部分の合計は線分全体に近づく、という図でも理解できる。同じ考え方で、循環小数 $0.999\cdots=\frac9{10}+\frac9{100}+\frac9{1000}+\cdots$ は $1$ に等しく、$0.142857142857\cdots$ は $\frac17$ に等しい(ex-series-decimal)。
一方、$1-1+1-1+\cdots$ の最初の $N$ 項の和は $1,0,1,0,\ldots$ と振動し、どの数にも近づかない。この場合は和を定めない。無限個の数の和は、有限個の和の極限として定義され、その極限が存在するときにだけ意味をもつ。
実数列(または複素数の列)$(a_n)_{n\geq1}$ に対し、形式的な和
$$
\sum_{n=1}^{\infty}a_n=a_1+a_2+a_3+\cdots
$$
を級数(series)または無限級数といい、$a_n$ をその第 $n$ 項という。$N\geq1$ について
$$
S_N:=\sum_{n=1}^{N}a_n=a_1+a_2+\cdots+a_N
$$
を第 $N$ 部分和(partial sum)という。部分和の列 $(S_N)$ がある数 $S$ に収束する(数列の極限)とき、級数は $S$ に収束する(converge)といい、$S$ を級数の和と呼んで
$$
\sum_{n=1}^{\infty}a_n=S
$$
と書く。$(S_N)$ が収束しないとき、級数は発散する(diverge)という。実数の級数で $S_N\to+\infty$ のとき、$\sum a_n=+\infty$ と書き、級数は $+\infty$ に発散するという($-\infty$ も同様)。
添字は $n=0$ から始めてもよく、$\sum_{n=0}^\infty a_n$ の部分和は $S_N=\sum_{n=0}^Na_n$ である。記号 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ は、「級数という対象」と「その和という数」の両方を表すので、文脈で区別する。「級数が収束する」と言うときは前者、「$\sum a_n=S$」と書くときは後者である。
複素数の級数 $\sum z_n$ が収束することと、実部の級数 $\sum\operatorname{Re}z_n$ と虚部の級数 $\sum\operatorname{Im}z_n$ がともに収束することは同値である。部分和の実部・虚部がそれぞれの部分和なので、数列の極限 の記事の命題「実部と虚部による判定」から従う。
級数という語は、収束を問わない形式的な対象(形式的冪級数)や、収束しないが近似に使う級数(漸近展開)にも用いられる。本記事は実数・複素数の級数の収束と和を扱う。
級数は「数列の各項を順に足していく」操作であり、その結果は部分和の列の極限である。したがって級数の問題は、部分和という別の数列の極限の問題に翻訳される。部分和が簡単な式で書ける場合(thm-series-geometric、prop-series-telescoping)は和の値まで求まるが、多くの場合は値がわからないまま「収束するかどうか」だけを判定する。そのための道具が、正の項の級数に対する比較判定・比判定と、符号が交互に変わる級数に対する Leibniz の判定である。
収束するためには項が $0$ に近づかなければならない(prop-series-term-test)が、それだけでは足りない。調和級数 $1+\frac12+\frac13+\cdots$ は項が $0$ に近づくのに発散し、$1+\frac14+\frac19+\cdots$ は収束する。項が小さくなる速さが問題になる。
$0.999\cdots$ は級数 $\sum_{n=1}^\infty 9\cdot10^{-n}$ の和であり、thm-series-geometric で $a=9/10$、$r=1/10$ として
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\frac9{10^n}=\frac{9/10}{1-1/10}=1
$$
である。同様に、$0.142857142857\cdots$ は 6 桁の塊 $142857$ が繰り返すので
$$
\sum_{k=1}^{\infty}\frac{142857}{10^{6k}}=\frac{142857/10^6}{1-1/10^6}=\frac{142857}{999999}=\frac17
$$
である($999999=7\times142857$)。循環小数がすべて有理数を表すことは、この計算を一般化すれば示せる。
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n(n+1)}=\frac1{1\cdot2}+\frac1{2\cdot3}+\frac1{3\cdot4}+\cdots=1
$$
である。$\frac1{n(n+1)}=\frac1n-\frac1{n+1}$ なので、部分和は隣り合う項が打ち消し合って
$$
S_N=\Bigl(1-\frac12\Bigr)+\Bigl(\frac12-\frac13\Bigr)+\cdots+\Bigl(\frac1N-\frac1{N+1}\Bigr)=1-\frac1{N+1}
$$
となり、$N\to\infty$ で $1$ に収束する。これは prop-series-telescoping の例である。
$\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac1{n^2}$ は収束し、和は $2$ 以下である。$n\geq1$ で $n^2\geq n(n+1)/2$($\iff n\geq1$)なので
$$
0<\frac1{n^2}\leq\frac2{n(n+1)}
$$
であり、ex-series-telescoping-example から右辺の級数は $2$ に収束する。thm-series-comparison により左辺の級数は収束し、和は $2$ 以下である。実際の和は $\pi^2/6=1.6449\ldots$ であり、これを求める問題が Basel問題 である。より一般に、$\sum1/n^p$ が $p>1$ で収束し $p\leq1$ で発散することは、調和級数 の記事の命題「冪の逆数の級数」で示されている。
$\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n=1-1+1-1+\cdots$ の部分和は $S_N=1$($N$ 偶数)、$S_N=0$($N$ 奇数)であり、収束しない。項 $(-1)^n$ が $0$ に近づかないので、prop-series-term-test からも発散がわかる。ところが項を 2 つずつ括弧でまとめると
$$
(1-1)+(1-1)+\cdots=0,\qquad 1+(-1+1)+(-1+1)+\cdots=1
$$
となり、まとめ方によって異なる値の「和」が得られてしまう。括弧でまとめてよいのは、もとの級数が収束する場合(または項がすべて $0$ 以上の場合)である(prop-series-grouping)。発散する級数を有限和と同じように扱うと、このような矛盾が生じる。
調和級数 $\sum_{n=1}^{\infty}\frac1n$ は、項 $1/n$ が $0$ に収束するにもかかわらず $+\infty$ に発散する(調和級数 の記事の定理「調和級数の発散」)。したがって prop-series-term-test の逆「$a_n\to0\Rightarrow\sum a_n$ は収束する」は成り立たない。部分和の増え方は非常に遅く、$S_N>10$ となるには $N=12367$ 項が必要である(同記事)。
$\sum a_n=A$、$\sum b_n=B$ がともに収束するならば、定数 $c$ について $\sum(a_n+b_n)$ と $\sum ca_n$ も収束し、
$$
\sum_{n=1}^{\infty}(a_n+b_n)=A+B,\qquad\sum_{n=1}^{\infty}ca_n=cA
$$
である。
部分和について $\sum_{n=1}^N(a_n+b_n)=\sum_{n=1}^Na_n+\sum_{n=1}^Nb_n$、$\sum_{n=1}^Nca_n=c\sum_{n=1}^Na_n$ が成り立つ(有限和の性質)。数列の極限 の記事の命題「極限の四則演算」により、右辺はそれぞれ $A+B$、$cA$ に収束する。
積については同じことが言えない。$\sum a_n\cdot\sum b_n$ を項の積 $a_ib_j$ の和として並べ直すには、項の並べ方が和に影響しないことが必要であり、それは絶対収束の記事で扱う。
級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ と番号 $M\geq1$ について、$\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束することと、$\sum_{n=M+1}^\infty a_n$ が収束することは同値であり、そのとき
$$
\sum_{n=1}^{\infty}a_n=\sum_{n=1}^{M}a_n+\sum_{n=M+1}^{\infty}a_n
$$
である。特に、収束する級数の尾部 $R_M:=\sum_{n=M+1}^{\infty}a_n$ は $M\to\infty$ で $0$ に収束する。
$N>M$ について $\sum_{n=1}^Na_n=\sum_{n=1}^Ma_n+\sum_{n=M+1}^Na_n$ であり、右辺第 1 項は $N$ によらない定数である。定数を加えても数列の収束は変わらないので、前半と等式が従う。$S:=\sum_{n=1}^\infty a_n$ とすると $R_M=S-S_M$ であり、$S_M\to S$ なので $R_M\to0$ である。
したがって、級数が収束するかどうかは最初の有限個の項によらない(和の値は変わる)。以下の判定法で「ある番号から先で」という仮定で十分なのはこのためである。
級数 $\sum a_n$ が収束するならば $a_n\to0$ である。対偶として、$a_n$ が $0$ に収束しなければ級数は発散する。
$S_N\to S$ とすると $S_{N-1}\to S$ でもあるので、$n\geq2$ について $a_n=S_n-S_{n-1}\to S-S=0$ である(数列の極限 の記事の命題「極限の四則演算」)。
逆は成り立たない(ex-series-harmonic)。この命題は発散を示す最も簡単な判定法であり、ex-series-grandi や $\sum n/(n+1)$ の発散はこれでわかる。
収束の必要十分条件は、部分和の列が Cauchy列 であることで与えられる。すなわち $\sum a_n$ が収束することと、任意の $\varepsilon>0$ に対してある $N$ が存在し、$m>n\geq N$ ならば $|a_{n+1}+a_{n+2}+\cdots+a_m|<\varepsilon$ となることは同値である(Cauchy列 の記事の系「級数の Cauchy判定法」。実数の級数についての系であり、複素数の級数でも、本文の定義のあとの注意により実部と虚部に分ければ同じことが成り立つ)。この判定法は和の値を使わずに収束を判定でき、絶対収束の記事で「絶対収束する級数は収束する」ことを示すのに使われる。
実数または複素数 $a\ne0$、$r$ について、等比級数 $\sum_{n=0}^{\infty}ar^n=a+ar+ar^2+\cdots$ は、$|r|<1$ ならば収束して
$$
\sum_{n=0}^{\infty}ar^n=\frac a{1-r}
$$
であり、$|r|\geq1$ ならば発散する。
$r\ne1$ のとき、$S_N:=\sum_{n=0}^Nar^n$ について $S_N-rS_N=a-ar^{N+1}$ なので
$$
S_N=\frac{a(1-r^{N+1})}{1-r}
$$
である。$|r|<1$ なら $r^{N+1}\to0$(数列の極限 の記事の例「等比数列」とその複素数への拡張)なので、$S_N\to a/(1-r)$ である。$|r|\geq1$ なら $|ar^n|=|a||r|^n\geq|a|>0$ なので項は $0$ に収束せず、prop-series-term-test により発散する($r=1$ の場合もこれに含まれる)。
冒頭の $\sum_{n\geq1}2^{-n}=1$ は $a=r=1/2$ の場合である。等比級数は、比較判定(thm-series-comparison)や比判定(thm-series-ratio)の比較の相手として、また冪級数の最も基本的な例($\sum z^n=1/(1-z)$、$|z|<1$)として、解析学の随所で使われる。
数列 $(b_n)_{n\geq1}$ について、級数 $\sum_{n=1}^{\infty}(b_n-b_{n+1})$ が収束することと、$(b_n)$ が収束することは同値であり、そのとき
$$
\sum_{n=1}^{\infty}(b_n-b_{n+1})=b_1-\lim_{n\to\infty}b_n
$$
である。
部分和は $S_N=\sum_{n=1}^N(b_n-b_{n+1})=b_1-b_{N+1}$ である。$(S_N)$ が収束することと $(b_{N+1})$ が収束することは同値で、そのとき $\lim S_N=b_1-\lim b_n$ である。
ex-series-telescoping-example は $b_n=1/n$ の場合である。$b_n=\log n$ とすると $\sum(\log n-\log(n+1))=\sum\log\frac n{n+1}$ は、$\log n\to+\infty$ なので $-\infty$ に発散する。
$0=n_0< n_1< n_2<\cdots$ を整数の狭義増加列とし、$b_k:=a_{n_{k-1}+1}+a_{n_{k-1}+2}+\cdots+a_{n_k}$(連続する項を順序を変えずにまとめたもの)とおく。
$\sum b_k$ の第 $K$ 部分和は $\sum_{k=1}^Kb_k=S_{n_K}$ であり、$(S_{n_K})_K$ は部分和の列 $(S_N)$ の部分列である。
項がすべて $0$ 以上の級数を正項級数という。部分和が単調増加になるので、収束の判定が特に簡単になる。
すべての $n$ で $a_n\geq0$ とする。$\sum a_n$ が収束することと、部分和の列 $(S_N)$ が上に有界であることは同値である。そのとき $\sum a_n=\sup_NS_N$ であり、有界でないときは $\sum a_n=+\infty$ である。
したがって正項級数は、収束するか $+\infty$ に発散するかのどちらかであり、振動することはない。
ある番号から先のすべての $n$ で $0\leq a_n\leq b_n$ とする。
prop-series-tail により、最初から $0\leq a_n\leq b_n$ がすべての $n$ で成り立つとしてよい。$\sum b_n=B$ が収束すれば、prop-series-nonnegative により $\sum_{n=1}^Na_n\leq\sum_{n=1}^Nb_n\leq B$ であり、左辺は上に有界なので同じ命題により $\sum a_n$ は収束する。2. は 1. の対偶である。
すべての $n$ で $a_n>0$、$b_n>0$ とし、$a_n/b_n$ が正の実数 $c$ に収束するとする。このとき $\sum a_n$ と $\sum b_n$ は、ともに収束するかともに発散するかのどちらかである。
$\varepsilon=c/2$ に対して、十分大きい $n$ で $|a_n/b_n-c|< c/2$、すなわち $\frac c2b_n< a_n<\frac{3c}2b_n$ である。$\sum b_n$ が収束すれば $\sum\frac{3c}2b_n$ も収束し(prop-series-linear)、thm-series-comparison により $\sum a_n$ は収束する。$\sum a_n$ が収束すれば同様に $\sum\frac c2b_n$、したがって $\sum b_n$ が収束する。
たとえば $\sum\frac1{n^2+n+1}$ は $\frac{1/(n^2+n+1)}{1/n^2}\to1$ なので、ex-series-squares と同じく収束する。$\sum\frac1{2n-1}$ は $\frac{1/(2n-1)}{1/n}\to\frac12$ なので、調和級数と同じく発散する。
すべての $n$ で $a_n>0$ とし、$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}$ が $L$ に収束する($L=+\infty$ も許す)とする。
$\sum\frac1{n!}$ は $\frac{a_{n+1}}{a_n}=\frac1{n+1}\to0$ なので収束し、$\sum\frac n{2^n}$ は $\frac{a_{n+1}}{a_n}=\frac{n+1}{2n}\to\frac12$ なので収束する。$\sum\frac{2^n}{n^2}$ は比が $\frac{2n^2}{(n+1)^2}\to2$ なので発散する。項の符号が一定でない級数や複素数の級数については、絶対値に比判定を適用する形の判定法が 絶対収束 の記事にある。
$\sum\frac1n$ と $\sum\frac1{n^2}$ は、どちらも比が
$$
\frac{n}{n+1}\to1,\qquad\frac{n^2}{(n+1)^2}\to1
$$
で $L=1$ となるが、前者は発散し(ex-series-harmonic)、後者は収束する(ex-series-squares)。したがって thm-series-ratio は $L=1$ のとき何も結論せず、「$L=1$ ならば収束する」「$L=1$ ならば発散する」のどちらの含意も成り立たない。
$(a_n)_{n\geq1}$ を $0$ に収束する単調減少な数列とする(したがってすべての $n$ で $a_n\geq0$)。このとき交代級数
$$
\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n+1}a_n=a_1-a_2+a_3-a_4+\cdots
$$
は収束する。さらに、その和を $S$、部分和を $S_N$ とすると、すべての $N$ で
$$
|S-S_N|\leq a_{N+1}
$$
であり、$S$ は隣り合う部分和 $S_N$ と $S_{N+1}$ の間にある。
単調減少性から
$$
S_{2k+2}-S_{2k}=a_{2k+1}-a_{2k+2}\geq0,\qquad S_{2k+1}-S_{2k-1}=-a_{2k}+a_{2k+1}\leq0
$$
なので、$(S_{2k})_{k\geq1}$ は単調増加、$(S_{2k-1})_{k\geq1}$ は単調減少である。また $S_{2k}=S_{2k-1}-a_{2k}\leq S_{2k-1}$ なので
$$
S_2\leq S_{2k}\leq S_{2k-1}\leq S_1
$$
がすべての $k\geq1$ で成り立つ。したがって両者は有界な単調列であり、点列 の記事の定理「単調有界列の収束」により、$S_{2k}\to s$、$S_{2k-1}\to s'$ となる実数 $s\leq s'$ がある。$s'-s=\lim(S_{2k-1}-S_{2k})=\lim a_{2k}=0$ なので $s=s'$ である。$\varepsilon>0$ に対し、$k\geq K_1$ で $|S_{2k}-s|<\varepsilon$、$k\geq K_2$ で $|S_{2k-1}-s|<\varepsilon$ となる $K_1,K_2$ をとれば、$N\geq2\max\{K_1,K_2\}$ で $|S_N-s|<\varepsilon$ となる。よって級数は $S:=s$ に収束する。
単調増加列の極限はその上限、単調減少列の極限はその下限なので、すべての $k$ で $S_{2k}\leq S\leq S_{2k+1}$ かつ $S_{2k+2}\leq S\leq S_{2k+1}$ である。したがって $0\leq S-S_{2k}\leq S_{2k+1}-S_{2k}=a_{2k+1}$、$0\leq S_{2k+1}-S\leq S_{2k+1}-S_{2k+2}=a_{2k+2}$ であり、どちらの場合も $|S-S_N|\leq a_{N+1}$ で、$S$ は $S_N$ と $S_{N+1}$ の間にある。
たとえば交代調和級数 $1-\frac12+\frac13-\frac14+\cdots$ はこの判定法で収束し、和は $\log2=0.6931\ldots$ である(調和級数 の記事の系「交代調和級数の和」)。部分和は $S_1=1$、$S_2=0.5$、$S_3=0.8333\ldots$、$S_4=0.5833\ldots$ と $\log2$ の両側を交互にとり、$S_{100}=0.6881\ldots$ の誤差は $1/101$ 以下である。同じ定理は、Abelの級数変形法とその応用 の記事の系「交代級数への応用」でも、Dirichlet の判定法から別の筋で導かれている。
$a_{2k-1}:=\frac1k$、$a_{2k}:=\frac1{k^2}$ とおくと、$a_n\to0$ で級数 $\sum(-1)^{n+1}a_n=1-1+\frac12-\frac14+\frac13-\frac19+\cdots$ の符号は交互に変わるが、$(a_n)$ は単調減少でない($a_4=\frac14<\frac13=a_5$)。この級数の部分和は
$$
S_{2k}=\sum_{j=1}^{k}\Bigl(\frac1j-\frac1{j^2}\Bigr)\geq\sum_{j=1}^{k}\frac1j-2
$$
(ex-series-squares による)であり、調和級数の発散により $S_{2k}\to+\infty$ となるので、級数は発散する。したがって thm-series-leibniz の単調減少の仮定は外せない。「項が $0$ に近づき符号が交互に変わる $\Rightarrow$ 収束する」という含意は成り立たない。
どんな数列 $(c_N)$ も、$a_1:=c_1$、$a_n:=c_n-c_{n-1}$($n\geq2$)とおけば級数 $\sum a_n$ の部分和の列になる。したがって「数列の極限」と「級数の和」は同じ内容の 2 つの言い方であり、どちらを基本にしてもよい。級数の形にすると、項 $a_n$ の大きさを比べるという判定法が使えるようになる。
部分和による定義は Leb §2.5 の Definition 2.5.1(p. 87)と Ham §13.8 の Definition 13.7(p. 266)による。$\sum2^{-n}=1$ は Leb Example 2.5.4(p. 88)と Ham Example 13.10(p. 266)、等比級数は Leb Proposition 2.5.5(p. 88)と Example 2.5.10(p. 90)、尾部は Proposition 2.5.6(p. 89)、Cauchy 判定は Proposition 2.5.8(p. 89)、項が $0$ に近づくことは Proposition 2.5.9(p. 90)と Ham Theorem 13.11(p. 267)、線形性は Leb Proposition 2.5.12(p. 91)、正項級数は Proposition 2.5.13(p. 92)、比較判定は Proposition 2.5.16(p. 93)、比判定は Proposition 2.5.19(p. 96、絶対値についての形)、交代級数は Proposition 2.6.2(p. 101)にある。Ham は等比級数・比較判定などを §13.8 の演習(p. 268)として挙げている。
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