支持関数

同義語:support function

概要

支持関数(support function)とは、実ノルム空間 $E$ の空でない部分集合 $K$ に対し、双対空間の元 $f$ に $h_K(f)=\sup_{x\in K}\langle f,x\rangle$ を対応させる関数であり、凸解析の指示関数($K$ 上で $0$、外で $+\infty$)の Fenchel 共役に等しい。値 $h_K(f)$ は $K$ を含む閉半空間 $\{x\mid\langle f,x\rangle\le c\}$ の最小の $c$ を表し、支持関数は劣線形で下半連続で、集合の閉凸包だけで決まる。空でない閉凸集合どうしの包含は支持関数の大小と同値であり、反射的な Banach 空間では、劣線形で下半連続な関数はちょうど空でない閉凸集合の支持関数である。集合への距離関数の共役の計算や、Minkowski 汎関数・極錐の記述に使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Fenchel共役, 凸集合, ノルム空間, Hahn–Banachの定理

平面の凸集合 $K$ と単位ベクトル $u$ について、$K$ の点が方向 $u$ にどこまで出ているかを $h(u)=\sup_{x\in K}u\cdot x$ で測る。半平面 $\{x\mid u\cdot x\le h(u)\}$ は、外向きの法線が $u$ で $K$ を含むもののうち最小のものであり、その境界の直線は $K$ に外から接している。原点を中心とする半径 $r$ の円板なら $h(u)=r$ で、正方形 $[-1,1]^2$ なら $u=(u_1,u_2)$ に対して $h(u)=|u_1|+|u_2|$ である。
この関数を、法線の方向だけでなく長さも込めて双対空間の上で考えたものが 支持関数 である。支持関数は「$K$ を含む閉半空間の一覧表」であり、閉凸集合はこの一覧表から閉半空間の共通部分として復元される。凸解析では、支持関数は集合の指示関数(集合の上で $0$、外で $+\infty$)の Fenchel共役 として現れ、集合の幾何と凸関数の解析を結ぶ。
この記事では、支持関数を定義して基本性質を示したあと、閉凸集合の包含が支持関数の大小と同値であること、反射的な空間では、$0$ で $0$ をとる正斉次・劣加法的・下半連続な関数がちょうど空でない閉凸集合の支持関数であることを証明する。例として球・凸多面体・楕円体・錐の支持関数と、集合への距離関数の共役を計算し、特徴づけの仮定を外した反例を挙げる。

定義

以下、$E$ を実数体上のノルム空間、$E^*$ をその連続双対、$\|\cdot\|_*$ を双対ノルムとし、$f\in E^*$ の $x\in E$ での値を $\langle f,x\rangle$ と書く。

支持関数

空でない集合 $K\subset E$ に対し、
$$ h_K(f):=\sup_{x\in K}\langle f,x\rangle\in(-\infty,+\infty]\qquad(f\in E^*) $$
で定まる関数 $h_K\colon E^*\to(-\infty,+\infty]$ を $K$ の 支持関数(support function)という。

$K$ が空でないので $h_K$ は値 $-\infty$ をとらない。$f\neq0$ で $h_K(f)$ が有限のとき、閉半空間 $\{x\mid\langle f,x\rangle\le h_K(f)\}$ は $K$ を含み、定数 $h_K(f)$ をこれより小さくすると $K$ を含まなくなる。$h_K(f)+h_K(-f)$ は、$K$ を 2 枚の平行な閉超平面 $\langle f,\cdot\rangle=\text{const}$ で挟んだときの「幅」($\langle f,\cdot\rangle$ の値の範囲の長さ)である。
双対空間の空でない部分集合 $B\subset E^*$ についても、同じ式 $h_B(x):=\sup_{f\in B}\langle f,x\rangle$($x\in E$)で $E$ 上の支持関数を定める。

指示関数の共役として

凸解析の指示関数

空でない集合 $K\subset E$ に対し、$K$ 上で $0$、$K$ の外で $+\infty$ をとる関数を $I_K$ と書き、$K$ の 指示関数(凸解析の意味の indicator function)という。

$K$ 上で $1$、外で $0$ をとる 特性関数(集合) とは別のものである。$I_K$ は真の関数で、

  • $I_K$ が凸であることと $K$ が凸であることは同値である。$K$ が凸なら凸不等式は、両端が $K$ にあれば $0\le0$、一方が外にあれば右辺が $+\infty$ で成り立つ。逆に $I_K$ が凸なら、$x,y\in K$ について $I_K((1-t)x+ty)\le0$ なので $(1-t)x+ty\in K$ である。
  • $I_K$ が下半連続であることと $K$ が閉であることは同値である。$\{I_K\le c\}$ は $c< 0$ なら空集合、$c\ge0$ なら $K$ だからである。
    Fenchel共役 の定義により $I_K^*(f)=\sup_x(\langle f,x\rangle-I_K(x))=\sup_{x\in K}\langle f,x\rangle$ なので、
    $$ I_K^*=h_K $$
    である(Fenchel共役 の例「指示関数と支持関数」。Bre11 Example 2(p. 14)は $I_K^*$ を $K$ の支持関数と呼び、$I_K$ の凸性・下半連続性と $K$ の凸性・閉性の対応も述べている)。支持関数の性質の多くは、共役の一般論を指示関数に当てはめたものとして読める。

基本性質

支持関数の基本性質

$K,L\subset E$ を空でない集合とする。

  1. $h_K(0)=0$、$h_K(tf)=t\,h_K(f)$($t>0$)、$h_K(f+g)\le h_K(f)+h_K(g)$ である。とくに $h_K$ は凸である。
  2. $h_K$ は $E^*$ の弱スター位相について下半連続であり、とくにノルム位相についても下半連続である。
  3. $\overline{\operatorname{conv}}\,K$ を $K$ の閉凸包($K$ を含む最小の閉凸集合)とすると、$h_K=h_{\overline{\operatorname{conv}}\,K}$ である。
  4. $K\subset L$ なら $h_K\le h_L$ である。また $h_{K\cup L}=\max\{h_K,h_L\}$、$h_{K+L}=h_K+h_L$、$h_{tK}=t\,h_K$($t>0$)、$h_{x_0+K}(f)=\langle f,x_0\rangle+h_K(f)$ である。ここで $K+L=\{x+y\mid x\in K,\ y\in L\}$ である。
  5. すべての $f$ について $h_K(f)+h_K(-f)\ge0$ である。すべての $f$ で等号が成り立つのは、$K$ が 1 点のときに限る。

各項を定義から確かめる。

詳細

1:$\langle0,x\rangle=0$ なので $h_K(0)=0$ である。$\langle tf,x\rangle=t\langle f,x\rangle$ の上限をとれば正斉次性が出る。$x\in K$ について $\langle f+g,x\rangle\le h_K(f)+h_K(g)$ なので、上限をとって劣加法性を得る(右辺が $+\infty$ なら自明)。$0< t< 1$ について $h_K((1-t)f+tg)\le h_K((1-t)f)+h_K(tg)=(1-t)h_K(f)+t\,h_K(g)$ なので凸である。

2:各 $x\in K$ について $f\mapsto\langle f,x\rangle$ は弱スター位相の定義により連続である(弱スター位相 の定義「弱スター位相」)。連続関数の族の上限は下半連続なので(半連続 の命題「上限・下限と安全な加法」の 1)、$h_K$ は弱スター位相で下半連続である。ノルム位相は弱スター位相より細かいので、ノルム位相でも下半連続である。

3:$K\subset\overline{\operatorname{conv}}\,K$ から $h_K\le h_{\overline{\operatorname{conv}}\,K}$ である。逆に $f$ を固定すると、$\{x\mid\langle f,x\rangle\le h_K(f)\}$ は $K$ を含む閉凸集合なので($h_K(f)=+\infty$ なら $E$ 全体)、$\overline{\operatorname{conv}}\,K$ を含む。よって $h_{\overline{\operatorname{conv}}\,K}(f)\le h_K(f)$ である。

4:はじめの 2 つは上限の定義から明らかである。$\sup_{x\in K,\,y\in L}(\langle f,x\rangle+\langle f,y\rangle)=h_K(f)+h_L(f)$ で、$tK$ と $x_0+K$ も同様である。

5:$x\in K$ をとると $h_K(f)+h_K(-f)\ge\langle f,x\rangle+\langle -f,x\rangle=0$ である。$K=\{x_0\}$ なら等号が成り立つ。逆にすべての $f$ で等号が成り立てば $\sup_K\langle f,\cdot\rangle=\inf_K\langle f,\cdot\rangle$、すなわち各 $f$ が $K$ 上で定数である。$x,y\in K$、$x\neq y$ なら、連続双対空間 の定理「点でノルムを実現する汎関数」を $x-y$ に用いて $\langle f,x-y\rangle=\|x-y\|\neq0$ となる $f$ がとれるので矛盾する。$\square$

1 の 3 条件をまとめて、$h_K$ は 劣線形 であるという。凸性と正斉次性をもつ関数は劣加法的なので($h(f+g)=2h(\frac f2+\frac g2)\le h(f)+h(g)$)、劣線形であることは「$h(0)=0$、正斉次、凸」とも言いかえられる。3 により、支持関数は集合の閉凸包しか見ない。たとえば円周と閉円板の支持関数は等しい。
有界性は、支持関数が有限値であることで読み取れる。

有界性と有限性

空でない $K\subset E$ について、$K$ が有界であることと、$h_K$ が $E^*$ 全体で有限値であることは同値である。このとき $R:=\sup_{x\in K}\|x\|$ について $|h_K(f)-h_K(g)|\le R\|f-g\|_*$ である。

$K\subset\{\|x\|\le R\}$ なら、$x\in K$ について $\langle f,x\rangle\le\langle g,x\rangle+\|f-g\|_*R\le h_K(g)+R\|f-g\|_*$ であり、上限をとると $h_K(f)\le h_K(g)+R\|f-g\|_*$ である。$g=0$ とすれば $h_K(f)\le R\|f\|_*< \infty$ で、$f,g$ を入れかえて Lipschitz の評価を得る。
逆に $h_K$ が有限値なら、各 $f$ について $\sup_{x\in K}|\langle f,x\rangle|=\max\{h_K(f),h_K(-f)\}< \infty$ である。$x\in K$ に対し $T_x(f):=\langle f,x\rangle$ とおくと、$T_x$ は $E^*$ 上の連続線形汎関数で、連続双対空間 の系「双対ノルムによる元のノルムの復元」により $\|T_x\|=\|x\|$ である。$E^*$ は Banach 空間であり(同じ記事の定理「連続双対の完備性」)、族 $\{T_x\}_{x\in K}$ は各点で有界なので、一様有界性原理 の定理「一様有界性原理」により $\sup_{x\in K}\|x\|=\sup_{x\in K}\|T_x\|< \infty$ である。$\square$

閉凸集合は支持関数で決まる

閉凸集合が閉半空間の共通部分であることは、Fenchel–Moreauの定理 の系「閉凸集合は閉半空間の共通部分」で、支持関数を使って
$$ L=\{x\in E\mid\langle f,x\rangle\le h_L(f)\ \ (f\in E^*)\}\qquad(L\text{ は空でない閉凸集合}) $$
の形で証明されている($h_L(f)=+\infty$ となる $f$ の条件は空とみなす)。この記事ではこれを引用し、支持関数の言葉で言いかえる。

包含と支持関数の大小

$K\subset E$ を空でない集合、$L\subset E$ を空でない閉凸集合とする。このとき
$$ K\subset L\iff h_K(f)\le h_L(f)\quad(f\in E^*) $$
である。とくに、空でない $K,L\subset E$ について、$h_K=h_L$ であることと $\overline{\operatorname{conv}}\,K=\overline{\operatorname{conv}}\,L$ であることは同値である。

$K\subset L$ なら $h_K\le h_L$ である(prop-sf-basic の 4)。逆に $h_K\le h_L$ とし、$x\in K$ をとる。すべての $f$ について $\langle f,x\rangle\le h_K(f)\le h_L(f)$ なので、上の表示により $x\in L$ である。
後半:$h_K=h_L$ なら、prop-sf-basic の 3 により $h_{\overline{\operatorname{conv}}\,K}=h_K=h_L=h_{\overline{\operatorname{conv}}\,L}$ である。前半を $\overline{\operatorname{conv}}\,K$ と閉凸集合 $\overline{\operatorname{conv}}\,L$ に用いると $\overline{\operatorname{conv}}\,K\subset\overline{\operatorname{conv}}\,L$、役割を入れかえて逆の包含を得る。逆向きは prop-sf-basic の 3 から直ちに従う。$\square$

したがって写像 $L\mapsto h_L$ は、空でない閉凸集合の全体から $E^*$ 上の関数への単射で、包含を関数の大小に移す。prop-sf-basic の 4 により、和集合の閉凸包は支持関数の最大に、集合の和(Minkowski 和)は支持関数の和に、拡大は定数倍に対応する。$\mathbb{R}^n$ で閉凸集合が支持関数で決まることは BV04 Exercise 2.26(p. 63)に演習として挙げられている。

支持関数の特徴づけ

どのような関数が支持関数になるか。prop-sf-basic の 1・2 により支持関数は劣線形で下半連続である。空間が反射的なら、逆も成り立つ。$E$ が 反射的 であるとは、評価写像 $J\colon E\to E^{**}$、$\langle Jx,f\rangle:=\langle f,x\rangle$ が全射であることをいう(反射的Banach空間 の定義「反射的Banach空間」)。$\mathbb{R}^n$ や Hilbert 空間は反射的である。

支持関数の特徴づけ

$E$ を実反射的 Banach 空間、$\sigma\colon E^*\to(-\infty,+\infty]$ とする。次の 2 条件は同値である。

  1. 空でない閉凸集合 $K\subset E$ で $\sigma=h_K$ となるものがある。
  2. $\sigma(0)=0$、$\sigma(tf)=t\,\sigma(f)$($t>0$)、$\sigma(f+g)\le\sigma(f)+\sigma(g)$ であり、$\sigma$ は $E^*$ のノルム位相について下半連続である。
    このとき $K=\{x\in E\mid\langle f,x\rangle\le\sigma(f)\ \ (f\in E^*)\}$ であり、$K$ は $\sigma$ から一意に決まる。

1 ⇒ 2 は prop-sf-basic の 1・2 である。
2 ⇒ 1 を示す。$X:=E^*$ を実ノルム空間とみて、$\sigma$ に Fenchel–Moreauの定理 を当てる。$\sigma(0)=0$ なので $\sigma$ は真である。$0< t< 1$ について
$$ \sigma((1-t)f+tg)\le\sigma((1-t)f)+\sigma(tg)=(1-t)\sigma(f)+t\,\sigma(g) $$
なので凸であり、仮定により下半連続である。よって Fenchel–Moreau の定理により、共役 $\sigma^*\colon X^*=E^{**}\to(-\infty,+\infty]$ は真で、$\sigma=\sigma^{**}$ である。
$\sigma^*$ を計算する。$\varphi\in E^{**}$ について、ある $f$ で $\langle\varphi,f\rangle-\sigma(f)=c>0$ なら、$t>0$ について $\langle\varphi,tf\rangle-\sigma(tf)=tc\to+\infty$ なので $\sigma^*(\varphi)=+\infty$ である。そうでなければ $\langle\varphi,f\rangle-\sigma(f)\le0$ がすべての $f$ で成り立ち、$f=0$ で $0$ になるので $\sigma^*(\varphi)=0$ である。すなわち $\sigma^*$ は
$$ K':=\{\varphi\in E^{**}\mid\langle\varphi,f\rangle\le\sigma(f)\ \ (f\in E^*)\} $$
の指示関数であり、$\sigma^*$ が真なので $K'\neq\emptyset$ である。$E$ は反射的なので $K'=J(K)$、$K:=\{x\in E\mid\langle f,x\rangle\le\sigma(f)\ (f\in E^*)\}$ である。$\sigma=\sigma^{**}$ に代入すると
$$ \sigma(f)=\sup_{\varphi\in E^{**}}\bigl(\langle\varphi,f\rangle-I_{K'}(\varphi)\bigr)=\sup_{\varphi\in K'}\langle\varphi,f\rangle=\sup_{x\in K}\langle f,x\rangle=h_K(f) $$
となる。$K$ は閉半空間($\sigma(f)=+\infty$ の $f$ では $E$ 全体)の共通部分なので閉凸であり、$K'\neq\emptyset$ から空でない。一意性は thm-sf-inclusion の後半による。$\square$

証明の核心は、正斉次な関数の共役が $0$ と $+\infty$ しかとらないこと、すなわち劣線形関数の共役が集合の指示関数になることである。反射性は、その集合 $K'\subset E^{**}$ が $E$ の部分集合として表されるところだけで使った。
有限次元では、有限値の場合に連続性が自動的に従う。

コンパクト凸集合と有限な劣線形関数

$\mathbb{R}^n$ の空でないコンパクト凸集合 $K$ に $h_K$ を対応させる写像は、空でないコンパクト凸集合の全体から、$\mathbb{R}^n$ 上の有限値の劣線形関数の全体への全単射である($(\mathbb{R}^n)^*$ を内積で $\mathbb{R}^n$ と同一視する)。

$K$ がコンパクトなら有界なので、prop-sf-bounded により $h_K$ は有限値の劣線形関数である。単射性は thm-sf-inclusion による。全射性:$\sigma$ を有限値の劣線形関数とし、$M:=\max_i\max\{\sigma(e_i),\sigma(-e_i)\}$ とおく。劣加法性と正斉次性から $\sigma(f)\le\sum_i|f_i|M=M\|f\|_1$ であり、$\sigma(f)\ge\sigma(f+g)-\sigma(g)$ を使うと $|\sigma(f)-\sigma(g)|\le\max\{\sigma(f-g),\sigma(g-f)\}\le M\|f-g\|_1$ なので $\sigma$ は連続である。thm-sf-characterization により $\sigma=h_K$ となる空でない閉凸集合 $K$ があり、$h_K$ が有限値なので prop-sf-bounded により $K$ は有界、したがってコンパクトである。$\square$

例

球の支持関数

$x_0\in E$、$r>0$ とし、$B(x_0,r):=\{x\mid\|x-x_0\|\le r\}$ とする。双対ノルムの定義から $h_{B(0,1)}(f)=\sup_{\|x\|\le1}\langle f,x\rangle=\|f\|_*$ であり、prop-sf-basic の 4 により
$$ h_{B(x_0,r)}(f)=\langle f,x_0\rangle+r\|f\|_* $$
である。$\mathbb{R}^n$ の Euclid ノルムでは $h_{B(x_0,r)}(y)=y\cdot x_0+r|y|$ となる。

凸多面体と楕円体

$\mathbb{R}^n$ では $(\mathbb{R}^n)^*$ を内積で $\mathbb{R}^n$ と同一視する。

  1. 有限集合 $\{v_1,\dots,v_m\}$ の凸包 $P$ について、prop-sf-basic の 3 により $h_P(y)=\max_iy\cdot v_i$ である。正方形 $[-1,1]^2$ は 4 頂点 $(\pm1,\pm1)$ の凸包なので $h(y)=|y_1|+|y_2|$、菱形 $\{|x_1|+|x_2|\le1\}$ は $\pm e_1,\pm e_2$ の凸包なので $h(y)=\max\{|y_1|,|y_2|\}$ である。
  2. $Q$ を正定値対称行列とし、$K:=\{x\mid x\cdot Q^{-1}x\le1\}$ とする。このとき $h_K(y)=\sqrt{y\cdot Qy}$ である。実際、$\langle a,b\rangle_Q:=a\cdot Q^{-1}b$ は内積なので、Cauchy–Schwarz の不等式により $x\in K$ について
    $$ y\cdot x=\langle Qy,x\rangle_Q\le\sqrt{\langle Qy,Qy\rangle_Q}\sqrt{\langle x,x\rangle_Q}\le\sqrt{y\cdot Qy} $$
    であり、$y\neq0$ なら $x=Qy/\sqrt{y\cdot Qy}\in K$ で等号が成り立つ。
部分空間と錐

$K\subset E$ を空でない凸錐(凸で、$x\in K$、$t>0$ なら $tx\in K$)とする。$K^\circ:=\{f\in E^*\mid\langle f,x\rangle\le0\ (x\in K)\}$ とおくと、$h_K=I_{K^\circ}$ である。実際、$\langle f,x\rangle>0$ となる $x\in K$ があれば $\langle f,tx\rangle\to+\infty$($t\to\infty$)なので $h_K(f)=+\infty$ である。そうでなければ $h_K(f)\le0$ で、$x\in K$ について $\langle f,tx\rangle\to0$($t\to0$)なので $h_K(f)=0$ である。$K^\circ$ を $K$ の 極錐 といい、双極定理 で詳しく扱う。$K=M$ が線形部分空間なら $K^\circ$ は零化空間 $M^\perp$ であり、$h_M=I_{M^\perp}$ となる(Fenchel共役 の例「指示関数と支持関数」)。

双対空間の部分集合の支持関数の例として、原点を内点にもつ閉凸集合 $C\subset E$ の Minkowski汎関数 $p_C$ は、極集合 $C^\circ=\{f\mid\langle f,x\rangle\le1\ (x\in C)\}$ の支持関数 $h_{C^\circ}$ に等しい(Minkowski汎関数 の定理「Minkowski 汎関数の双対表示」)。

距離関数の共役

集合 $A$ への距離関数の共役は、$A$ が凸でなくても支持関数で書ける。

距離関数の共役

$A\subset E$ を空でない集合とし、$d_A(x):=\inf_{a\in A}\|x-a\|$、$B_*:=\{f\in E^*\mid\|f\|_*\le1\}$ とおく。このとき
$$ d_A^*=h_A+I_{B_*} $$
である。すなわち $\|f\|_*\le1$ なら $d_A^*(f)=h_A(f)$、$\|f\|_*>1$ なら $d_A^*(f)=+\infty$ である。

$y=x-a$ と置きかえると
$$ d_A^*(f)=\sup_{x\in E}\sup_{a\in A}\bigl(\langle f,x\rangle-\|x-a\|\bigr)=\sup_{a\in A}\Bigl(\langle f,a\rangle+\sup_{y\in E}\bigl(\langle f,y\rangle-\|y\|\bigr)\Bigr) $$
である。内側の上限はノルムの共役であり、$\|f\|_*\le1$ なら $0$、$\|f\|_*>1$ なら $+\infty$ である(Fenchel共役 の例「ノルムの共役」)。前者なら全体は $h_A(f)$、後者なら $+\infty$ となる($h_A(f)>-\infty$ なので和は意味をもつ)。$\square$

この等式は Bre11 Exercise 1.22 の 4(p. 26)に演習として挙げられている(そこでは $A$ を閉集合とするが、証明に閉性は要らない)。右辺は $A$ の閉凸包しか見ないので、次が従う。

距離関数の二重共役

空でない $A\subset E$ について、$C:=\overline{\operatorname{conv}}\,A$ とおくと $d_A^{**}=d_C$ である。とくに $A$ が凸なら
$$ d_A(x)=\sup_{\|f\|_*\le1}\bigl(\langle f,x\rangle-h_A(f)\bigr)\qquad(x\in E) $$
である。

$d_C$ は凸である。実際、$x,y\in E$、$a,b\in C$、$0< t< 1$ について $(1-t)a+tb\in C$ なので $d_C((1-t)x+ty)\le(1-t)\|x-a\|+t\|y-b\|$ であり、$a,b$ について下限をとればよい。また $\|x-a\|\le\|x-y\|+\|y-a\|$ から $d_C(x)\le\|x-y\|+d_C(y)$ なので、$d_C$ は 1-Lipschitz で連続である。よって $d_C$ は凸で連続な真の関数で、Fenchel–Moreauの定理 により $d_C=d_C^{**}$ である。一方 prop-sf-distance と prop-sf-basic の 3 により $d_C^*=h_C+I_{B_*}=h_A+I_{B_*}=d_A^*$ なので、$d_A^{**}=d_C^{**}=d_C$ である。$A$ が凸なら $d_A=d_{\overline A}=d_C$ であり、$d_A^{**}$ を書き下すと式を得る。$\square$

$A$ が凸のとき右辺の上限が達成されることは、Fenchel–Rockafellarの双対定理 の例「凸集合への距離」で示されている。凸でない例として $A=\{-1,1\}\subset\mathbb{R}$ をとると、$d_A(x)=\bigl||x|-1\bigr|$ は凸でなく、$d_A^{**}(x)=d_{[-1,1]}(x)=\max\{|x|-1,0\}$ は 2 点のあいだを $0$ で埋めた関数になる。

反例の表

thm-sf-characterization の 2 の条件と反射性を 1 つずつ外すと、$\sigma$ はどの空でない集合の支持関数にもならない。表の各行は 1 つの条件だけを破る。

外す条件反例成り立たなくなること
劣加法性$\sigma(f)=\min\{\lvert f_1\rvert,\lvert f_2\rvert\}$($E=\mathbb{R}^2$)正斉次・連続だが、どの集合の支持関数でもない
正斉次性$\sigma(f)=\sqrt{\lvert f\rvert}$($E=\mathbb{R}$)劣加法的・連続で $\sigma(0)=0$ だが、支持関数でない
下半連続性$E=\mathbb{R}^2$ で、$f_2>0$ または $f=0$ なら $\sigma(f)=0$、それ以外は $+\infty$劣線形だが、支持関数でない
反射性$E=c_0$、$E^*=\ell^1$ 上の $\sigma(f)=\sum_nf_n$連続な線形汎関数(劣線形・連続)だが、$c_0$ のどの部分集合の支持関数でもない
表の反例の確かめ

支持関数が劣線形・下半連続で、prop-sf-basic の 5 を満たすことを使う。

詳細

1 行目:$\sigma(e_1)+\sigma(e_2)=0< 1=\sigma(e_1+e_2)$ で劣加法的でない。正斉次で、$\min$ と絶対値の合成なので連続である。支持関数は劣加法的なので、$\sigma$ は支持関数でない。

2 行目:$\sqrt{|a+b|}\le\sqrt{|a|+|b|}\le\sqrt{|a|}+\sqrt{|b|}$ なので劣加法的で、連続で $\sigma(0)=0$ である。$\sigma(4)=2\neq4=4\sigma(1)$ なので正斉次でなく、支持関数でない。

3 行目:$\sigma$ が有限になる集合 $D=\{f_2>0\}\cup\{0\}$ は和と正の定数倍で閉じているので、$\sigma$ は劣加法的(右辺が $+\infty$ なら自明)で正斉次、$\sigma(0)=0$ である。$(1,1/k)\to(1,0)$ で $\sigma(1,1/k)=0$、$\sigma(1,0)=+\infty$ なので下半連続でなく、支持関数でない。

4 行目:$c_0$ の双対は $\ell^1$ と等長同型である(ℓp空間 の定理「$\ell^p$ と $c_0$ の双対」)。$\sigma$ は線形で $|\sigma(f)|\le\|f\|_1$ なので連続である。$\sigma=h_K$($K\subset c_0$ 空でない)と仮定すると、線形性から $h_K(f)+h_K(-f)=0$ がすべての $f$ で成り立つので、prop-sf-basic の 5 により $K=\{x\}$ であり、$\sigma(f)=\sum_nf_nx_n$ となる。$f=e_n$ とおくと $x_n=1$ がすべての $n$ で成り立つが、これは $x\in c_0$ に反する。$c_0$ は反射的でない(ℓp空間 の系「反射性」)。

4 行目の $\sigma$ は、$\ell^\infty=(\ell^1)^*$ の元 $(1,1,1,\dots)$ が定める汎関数であり、thm-sf-characterization の証明の $K'\subset E^{**}$ が $E$ の外にある場合にあたる。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Example 2(p. 14、指示関数とその共役としての支持関数)、Exercise 1.22(p. 26、距離関数の共役)
[2]
Stephen Boyd, Lieven Vandenberghe, Convex Optimization, Cambridge University Press, 2004, Exercise 2.26(p. 63、支持関数による閉凸集合の判定)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する