Martinの公理(Martin's axiom)とは、可算鎖条件(ccc)を満たす任意の強制概念と、連続体濃度 $2^{\aleph_0}$ より少ない個数の稠密集合の族に対し、それらすべてと交わるフィルターが存在するという集合論の公理である。可算個の稠密集合については ZFC で証明でき、連続体仮説からは MA が従う。一方、稠密集合を $2^{\aleph_0}$ 個にすると偽になり、ccc の仮定を外すと $\aleph_1$ 個でも偽になる。MA のもとでは Cantor 空間は $2^{\aleph_0}$ 未満個の痩せた集合で覆えず、$\aleph_0\le\kappa<2^{\aleph_0}$ なら $2^\kappa=2^{\aleph_0}$ となるなど、連続体濃度未満の集合が可算集合のようにふるまう。MA は連続体仮説とも、その否定とも両立する。
強制概念の稠密集合は、「どの条件から出発しても、条件を強めれば満たせる要求」を表す。要求が可算個なら、条件を 1 つずつ強めていけば、すべての要求を満たすフィルターが作れる。Martinの公理(Martin's axiom、MA)は、強制概念が可算鎖条件(ccc)を満たすなら、この同時充足が連続体濃度 $2^{\aleph_0}$ より少ない個数の要求まで続けられる、という主張である。
MA には二つの境界がある。要求の個数を $2^{\aleph_0}$ 個にすると ZFC で反証でき、ccc の仮定を外すと $\aleph_1$ 個の要求でも反証できる。この二つの境界の内側で、MA は「$2^{\aleph_0}$ 未満の大きさの集合は可算集合のようにふるまう」という形の帰結を多く生む。本記事では、定義と二つの境界を証明し、帰結として Cantor 空間の被覆についての定理と、$2^\kappa=2^{\aleph_0}$($\aleph_0\le\kappa<2^{\aleph_0}$)の定理を証明する。
以下、$\mathbb P=(P,\le)$ は空でない半順序集合で、$p\le q$ を「$p$ は $q$ より強い($q$ の要求をすべて含む)」と読む。この向きは強制概念の記事と同じである。
族 $\mathcal D$ の各元と交わるフィルターを $\mathcal D$-ジェネリックなフィルターと呼ぶ。
基数 $\kappa$ に対し、$\mathrm{MA}_\kappa$ とは次の主張である:ccc を満たす任意の強制概念 $\mathbb P$ と、$P$ の稠密集合からなる濃度 $\kappa$ 以下の任意の族 $\mathcal D$ に対し、$\mathcal D$-ジェネリックなフィルター $G\subseteq P$ が存在する。
Martinの公理 $\mathrm{MA}$ とは、$\kappa<2^{\aleph_0}$ を満たすすべての基数 $\kappa$ について $\mathrm{MA}_\kappa$ が成り立つという主張である。
$\kappa\le\lambda$ なら $\mathrm{MA}_\lambda$ から $\mathrm{MA}_\kappa$ が従う(族の濃度の上限が小さくなるだけである)。
文献によっては、$\mathcal D$ を稠密開集合(稠密で、$p\in D$ かつ $q\le p$ なら $q\in D$ を満たす集合)の族に限って定義する。これは同じ主張を与える。稠密集合 $D$ に対し $D^{\downarrow}:=\{q\in P\mid q\le d\text{ となる }d\in D\text{ がある}\}$ は稠密開集合であり、フィルター $G$ が $D^{\downarrow}$ と $q\le d$($d\in D$)で交われば、条件 (ii) により $d\in G$ となって $G$ は $D$ とも交わる。
MA は、あるモデル $M$ に属するすべての稠密集合と交わるというジェネリックフィルターの条件とは量化の範囲が違う。MA が要求するのは、指定した族 $\mathcal D$ の各元と交わるフィルターの存在だけである。
| 強制概念 | ccc か | 理由 |
|---|---|---|
| 可算な半順序集合(例:有限二値列全体 $2^{<\omega}$ を延長で順序づけたもの) | ccc | 反鎖は $P$ の部分集合なので高々可算 |
| $\operatorname{Fn}(I,2)$($I$ の有限部分集合から $\{0,1\}$ への関数全体、延長を強いとする。$I$ は任意の集合) | ccc | $\Delta$-システム補題による(Δ-システムと強制法の鎖条件の記事) |
| 後のlem-ma-codingで使う $\langle s,E\rangle$ の強制概念 | ccc | 第 1 成分 $s$ が同じ 2 条件は両立し、$s$ は可算通りしかない |
| $\operatorname{Fn}(\omega,\omega_1)$($\omega$ の有限部分集合から $\omega_1$ への関数全体) | ccc でない | $\{\{\langle0,\alpha\rangle\}\mid\alpha<\omega_1\}$ が非可算な反鎖 |
$\operatorname{Fn}(\omega,\omega_1)$ の反鎖について確かめておく。$\alpha\ne\beta$ なら、$\{\langle0,\alpha\rangle\}$ と $\{\langle0,\beta\rangle\}$ の共通の延長は $0$ で $\alpha$ と $\beta$ の両方の値をとる関数になってしまうので存在しない。
$\mathbb P$ を空でない強制概念とし、$D_0,D_1,D_2,\ldots$ を稠密集合の列とする。任意の $p\in P$ に対し、$p$ を含み、すべての $D_n$ と交わるフィルターが存在する。ccc は仮定しない。
$p_{-1}:=p$ とおく。$D_0$ の稠密性から $p_0\le p_{-1}$ を満たす $p_0\in D_0$ を選び、以下同様に $p_n\le p_{n-1}$ を満たす $p_n\in D_n$ を順に選ぶ(各段の選択が前の段の結果に依存するので、使うのは従属選択公理である)。すると $p_{-1}\ge p_0\ge p_1\ge\cdots$ である。
$$
G:=\{q\in P\mid q\ge p_n\text{ となる }n\ge-1\text{ がある}\}
$$
とおく。$p=p_{-1}\in G$ なので (i) が成り立つ。$q\in G$ の証人を $p_n$ とすると、$q\le q'$ なら $q'\ge q\ge p_n$ なので (ii) が成り立つ。$q_1,q_2\in G$ の証人を $p_m,p_n$ とし $k=\max(m,n)$ とおくと、列が減少するので $p_k\le p_m\le q_1$、$p_k\le p_n\le q_2$ であり、$p_k\in G$ だから (iii) が成り立つ。最後に $p_n\in G\cap D_n$ なので、$G$ はすべての $D_n$ と交わる。$\square$
よって $\mathrm{MA}_{\aleph_0}$ は ZFC の定理である(有限個の族は列を繰り返して可算列にすればよい)。MA が ZFC に新しい内容を付け加えるのは、$\aleph_1\le\kappa<2^{\aleph_0}$ を満たす $\kappa$ についての $\mathrm{MA}_\kappa$ の部分である。
連続体仮説 $2^{\aleph_0}=\aleph_1$ が成り立つなら MA が成り立つ。
$\kappa<2^{\aleph_0}=\aleph_1$ なら $\kappa\le\aleph_0$ であり、$\mathrm{MA}_\kappa$ はprop-ma-countableから従う。$\square$
したがって MA 自体は連続体仮説の否定を含意しない。MA が実質的な主張になるのは $2^{\aleph_0}>\aleph_1$ のときであり、応用ではしばしば「MA と連続体仮説の否定」を組にして仮定する。
$2^{<\omega}$(有限二値列全体、延長を強いとする)は ccc を満たすが、この強制概念の稠密集合の族 $\mathcal D$ で、$\lvert\mathcal D\rvert=2^{\aleph_0}$ かつ $\mathcal D$-ジェネリックなフィルターが存在しないものがある。
$P=2^{<\omega}$ は可算なので ccc を満たす。各 $n<\omega$ に対し $E_n:=\{s\in P\mid\text{長さが }n\text{ 以上}\}$ とおく。任意の $s$ は $0$ を付け足して長さ $n$ 以上に延長できるので、$E_n$ は稠密である。各 $x\in2^\omega$(無限二値列)に対し
$$
D_x:=\{s\in P\mid s(k)\ne x(k)\text{ となる }k<\operatorname{長さ}(s)\text{ がある}\}
$$
とおく。任意の $s$ に、次の位置 $k=\operatorname{長さ}(s)$ の値として $1-x(k)$ を付け足せば $D_x$ の元になるので、$D_x$ も稠密である。$\mathcal D:=\{E_n\mid n<\omega\}\cup\{D_x\mid x\in2^\omega\}$ とおくと、$x\mapsto D_x$ は単射($x\ne y$ なら $y$ の長さ $k+1$ の初期部分は $D_x$ に入り $D_y$ に入らない、ただし $k$ は $x(k)\ne y(k)$ となる位置)なので $\lvert\mathcal D\rvert=2^{\aleph_0}$ である。
$G$ を $\mathcal D$-ジェネリックなフィルターと仮定する。$G$ の 2 元は共通の延長をもつので、互いに一方が他方の初期部分である。よって $c:=\bigcup G$ は関数であり、$G$ がすべての $E_n$ と交わることから定義域は $\omega$ 全体、すなわち $c\in2^\omega$ である。$G$ は $D_c$ とも交わるので、ある $s\in G$ と $k$ について $s(k)\ne c(k)$ となる。しかし $s\subseteq c$ だから $s(k)=c(k)$ であり、矛盾する。$\square$
この強制概念は可算なので、失敗の原因は反鎖ではなく要求の個数である。MA の定義の「$\kappa<2^{\aleph_0}$」を「$\kappa\le2^{\aleph_0}$」に替えることはできない。
$\mathrm{MA}_{\aleph_1}$ が成り立つなら $2^{\aleph_0}>\aleph_1$ である。したがって MA のもとでは、$2^{\aleph_0}>\aleph_1$ と $\mathrm{MA}_{\aleph_1}$ は同値である。
$2^{\aleph_0}=\aleph_1$ なら $\mathrm{MA}_{\aleph_1}$ は $\mathrm{MA}_{2^{\aleph_0}}$ そのものであり、prop-ma-continuumに反する。後半は、前半と、$2^{\aleph_0}>\aleph_1$ なら $\aleph_1<2^{\aleph_0}$ なので MA から $\mathrm{MA}_{\aleph_1}$ が従うことによる。$\square$
$\operatorname{Fn}(\omega,\omega_1)$ の稠密集合の族 $\mathcal D$ で、$\lvert\mathcal D\rvert=\aleph_1$ かつ $\mathcal D$-ジェネリックなフィルターが存在しないものがある。
$n<\omega$ に対し $E_n:=\{p\mid n\in\operatorname{dom}(p)\}$、$\alpha<\omega_1$ に対し $R_\alpha:=\{p\mid\alpha\in\operatorname{ran}(p)\}$ とおく。任意の $p$ に対し、$n\notin\operatorname{dom}(p)$ なら $p\cup\{\langle n,0\rangle\}\in E_n$ が $p$ を延長する。また $\alpha\notin\operatorname{ran}(p)$ なら、$\operatorname{dom}(p)$ は有限なので $m\notin\operatorname{dom}(p)$ を選べて $p\cup\{\langle m,\alpha\rangle\}\in R_\alpha$ が $p$ を延長する。よってどれも稠密であり、族 $\mathcal D:=\{E_n\}_{n<\omega}\cup\{R_\alpha\}_{\alpha<\omega_1}$ の濃度は $\aleph_1$ である。
$\mathcal D$-ジェネリックなフィルター $G$ があれば、prop-ma-continuumの証明と同じ理由で $f:=\bigcup G$ は関数で、$E_n$ と交わることから $\operatorname{dom}(f)=\omega$、$R_\alpha$ と交わることから $\operatorname{ran}(f)\supseteq\omega_1$ となる。すると $f$ は $\omega$ から $\omega_1$ への全射であり、$\omega_1$ が非可算であることに反する。$\square$
この族の濃度は $\aleph_1$ である。したがって MA の定義から ccc の仮定を外した主張は、$2^{\aleph_0}>\aleph_1$ のもとでは偽になる。連続体仮説のもとでは $2^{\aleph_0}$ 未満の個数は高々可算なので、ccc を仮定しないprop-ma-countableによりこの主張は成り立つ。すなわち ccc を外した MA は連続体仮説と同値であり、MA と連続体仮説の否定を組にする応用には使えない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 族の濃度が $2^{\aleph_0}$ 未満 | $2^{<\omega}$ と $2^{\aleph_0}$ 個の稠密集合 $E_n$、$D_x$(prop-ma-continuum) | ジェネリックなフィルターの存在 |
| 強制概念が ccc | $\operatorname{Fn}(\omega,\omega_1)$ と $\aleph_1$ 個の稠密集合 $E_n$、$R_\alpha$(prop-ma-not-ccc) | ジェネリックなフィルターの存在($\aleph_1<2^{\aleph_0}$ でも) |
| 族の各元が稠密 | $2^{<\omega}$ で $A_0:=\{s\mid s(0)=0\}$、$A_1:=\{s\mid s(0)=1\}$ | 2 個の集合とさえ交わるフィルターの存在 |
最後の行の $A_0$、$A_1$ は稠密でない。列 $\langle1\rangle$ のどの延長も $A_0$ に入らず、列 $\langle0\rangle$ のどの延長も $A_1$ に入らない。$A_0$ の元と $A_1$ の元は位置 $0$ の値が違うので両立せず、両方と交わるフィルターは (iii) に反する。
$2^\omega$ を無限二値列全体の空間とし、有限列 $s$ に対して $[s]:=\{x\in2^\omega\mid s\text{ は }x\text{ の初期部分}\}$ を基本開集合とする位相を入れる($\{0,1\}$ の可算個の直積位相)。$N\subseteq2^\omega$ が疎であるとは、その閉包の内部が空であることをいい、疎な集合の可算和を痩せた集合という。
$\kappa$ を無限基数とし、$\mathrm{MA}_\kappa$ を仮定する。このとき、$2^\omega$ の痩せた集合 $\kappa$ 個の和集合は $2^\omega$ 全体にならない。特に MA のもとでは、$2^{\aleph_0}$ 未満個の痩せた集合で $2^\omega$ を覆うことはできない。
痩せた集合 $M_i$($i<\kappa$)が与えられたとする。各 $M_i$ は疎な集合の可算和であり、$\kappa\cdot\aleph_0=\kappa$ だから、疎な集合 $N_j$($j<\kappa$)で $\bigcup_iM_i=\bigcup_jN_j$ となるものがとれる。これらの外にある点を作る。
強制概念 $P=2^{<\omega}$(延長を強いとする)を使う。可算なので ccc を満たす。各 $j$ に対し
$$
D_j:=\{s\in P\mid[s]\cap N_j=\emptyset\}
$$
とおく。$D_j$ が稠密であることを示す。$s\in P$ を任意にとる。$[s]$ は空でない開集合で、$\overline{N_j}$ の内部は空なので $[s]\not\subseteq\overline{N_j}$ であり、点 $x\in[s]\setminus\overline{N_j}$ がある。$2^\omega\setminus\overline{N_j}$ は開集合なので、$x$ の十分長い初期部分 $t$ について $[t]\subseteq[s]\setminus\overline{N_j}$ となり、$t$ は長さを $s$ 以上にとれば $s$ の延長である。$t\in D_j$ だから $D_j$ は稠密である。
prop-ma-continuumの証明で使った $E_n$(長さ $n$ 以上の列全体)とあわせた族 $\{D_j\}_{j<\kappa}\cup\{E_n\}_{n<\omega}$ の濃度は $\kappa$ なので、$\mathrm{MA}_\kappa$ によりこの族に対するジェネリックなフィルター $G$ がある。prop-ma-continuumの証明と同じく $x:=\bigcup G\in2^\omega$ である。各 $j$ について $s\in G\cap D_j$ をとると、$s\subseteq x$ より $x\in[s]$、そして $[s]\cap N_j=\emptyset$ だから $x\notin N_j$ である。よって $x\notin\bigcup_jN_j$。$\square$
$\kappa=\aleph_0$ の場合は、$2^\omega$ についての Baireのカテゴリー定理(完備距離空間は痩せていない)にあたる。定理は、MA がこの結論を $2^{\aleph_0}$ 未満の個数まで押し広げることを示す。一方、$2^\omega$ は $2^{\aleph_0}$ 個の一点集合(どれも疎)の和なので、個数の上限 $2^{\aleph_0}$ はここでも越えられない。
無限集合 $a,b\subseteq\omega$ が概素であるとは、$a\cap b$ が有限であることをいう。$\omega$ の無限部分集合の族で、相異なる 2 元がどれも概素であるものを概素族という。
有限二値列全体 $2^{<\omega}$ は可算なので、全単射で $\omega$ と同一視する。$x\in2^\omega$ に対し $a_x:=\{x\restriction n\mid n<\omega\}$($x$ の初期部分全体)とおく。$x\ne y$ で $x(k)\ne y(k)$ なら、$a_x\cap a_y$ の元は長さ $k$ 以下の共通の初期部分だけで、高々 $k+1$ 個である。よって $\{a_x\mid x\in2^\omega\}$ は濃度 $2^{\aleph_0}$ の概素族であり、その部分族をとれば $2^{\aleph_0}$ 以下の任意の濃度の概素族が得られる。
$\kappa$ を無限基数とし、$\mathrm{MA}_\kappa$ を仮定する。$\mathcal A$ を濃度 $\kappa$ 以下の概素族、$\mathcal B\subseteq\mathcal A$ を任意の部分族とする。このとき $c\subseteq\omega$ で、すべての $a\in\mathcal A$ について
$$
c\cap a\text{ が無限}\iff a\in\mathcal B
$$
となるものがある。
$\mathcal C:=\mathcal A\setminus\mathcal B$ とおく。$P$ を、$s$ が $\omega$ の有限部分集合、$E$ が $\mathcal C$ の有限部分集合であるような対 $\langle s,E\rangle$ 全体とし、
$$
\langle t,F\rangle\le\langle s,E\rangle\iff s\subseteq t,\ E\subseteq F,\ (t\setminus s)\cap\textstyle\bigcup E=\emptyset
$$
と定める。$\langle s,E\rangle$ は「$c$ の元のうち $s$ までは確定し、以後 $E$ の元には新しい点を入れない」という約束を表す。$\langle u,H\rangle\le\langle t,F\rangle\le\langle s,E\rangle$ なら $u\setminus s=(u\setminus t)\cup(t\setminus s)$ で、$u\setminus t$ は $\bigcup F\supseteq\bigcup E$ と、$t\setminus s$ は $\bigcup E$ と交わらないので、推移律が成り立つ。反射律・反対称律は明らかである。
ccc。 $\langle s,E\rangle$ と $\langle s,F\rangle$ は $\langle s,E\cup F\rangle$ を共通の延長にもつので両立する。$\omega$ の有限部分集合は可算個しかないので、非可算な部分集合 $W\subseteq P$ には第 1 成分の等しい相異なる 2 元があり、$W$ は反鎖でない。
稠密集合。 $a\in\mathcal C$ に対し $D_a:=\{\langle s,E\rangle\mid a\in E\}$ は稠密である($\langle s,E\cup\{a\}\rangle\le\langle s,E\rangle$)。$b\in\mathcal B$ と $k<\omega$ に対し $D_{b,k}:=\{\langle s,E\rangle\mid\lvert s\cap b\rvert\ge k\}$ も稠密である。実際、$\langle s,E\rangle$ が与えられたとき、$b\notin E$ で $E$ は有限だから $b\cap\bigcup E$ は有限であり、無限集合 $b\setminus\bigcup E$ から $k$ 個の点を選んで $s$ に加えた $t$ について $\langle t,E\rangle\le\langle s,E\rangle$、$\langle t,E\rangle\in D_{b,k}$ となる。
族 $\{D_a\}_{a\in\mathcal C}\cup\{D_{b,k}\}_{b\in\mathcal B,k<\omega}$ の濃度は $\kappa$ 以下なので、$\mathrm{MA}_\kappa$ によりこれに対するジェネリックなフィルター $G$ がある。$c:=\bigcup\{s\mid\langle s,E\rangle\in G\}$ とおく。
$b\in\mathcal B$ なら、各 $k$ について $G\cap D_{b,k}$ の元 $\langle s,E\rangle$ があり $\lvert c\cap b\rvert\ge\lvert s\cap b\rvert\ge k$ なので、$c\cap b$ は無限である。
$a\in\mathcal C$ なら、$\langle s,E\rangle\in G\cap D_a$ をとる。任意の $\langle t,F\rangle\in G$ に対し、フィルターの条件 (iii) から共通の延長 $\langle u,H\rangle\in G$ がある。$u\setminus s$ は $\bigcup E\supseteq a$ と交わらないので $t\cap a\subseteq u\cap a\subseteq s\cap a$ である。よって $c\cap a\subseteq s$ は有限である。$\square$
$\kappa$ を $\aleph_0\le\kappa<2^{\aleph_0}$ を満たす基数とし、$\mathrm{MA}_\kappa$ を仮定する。このとき $2^\kappa=2^{\aleph_0}$ である。
ex-ma-ad-familyにより、濃度 $\kappa$ の概素族 $\mathcal A=\{a_\alpha\mid\alpha<\kappa\}$(添字づけは単射)がとれる。各 $u\subseteq\kappa$ に対し、$\mathcal B_u:=\{a_\alpha\mid\alpha\in u\}$ としてlem-ma-codingを適用し、$c_u\subseteq\omega$ を 1 つ選ぶ。
$u\ne v$ なら $c_u\ne c_v$ である。実際、たとえば $\alpha\in u\setminus v$ なら $c_u\cap a_\alpha$ は無限、$c_v\cap a_\alpha$ は有限である。よって $u\mapsto c_u$ は $\mathcal P(\kappa)$ から $\mathcal P(\omega)$ への単射で、$2^\kappa\le2^{\aleph_0}$ となる。逆向きの $2^{\aleph_0}\le2^\kappa$ は $\aleph_0\le\kappa$ から従う。$\square$
MA のもとで、$2^{\aleph_0}$ は正則基数である。また $2^{\aleph_0}>\aleph_1$ なら $2^{\aleph_1}=2^{\aleph_0}$ である。
$\lambda:=\operatorname{cf}(2^{\aleph_0})$ とし、$\lambda<2^{\aleph_0}$ と仮定する。$\lambda$ は無限基数なので、MA から $\mathrm{MA}_\lambda$ が従い、thm-ma-powerにより $2^\lambda=2^{\aleph_0}$ である。一方、Königの定理の記事の「冪の基数の共終数」により $\operatorname{cf}(2^\lambda)>\lambda$ だから、$\operatorname{cf}(2^{\aleph_0})>\lambda=\operatorname{cf}(2^{\aleph_0})$ となって矛盾する。後半は $\kappa=\aleph_1$ にthm-ma-powerを適用すればよい。$\square$
たとえば MA のもとでは $2^{\aleph_0}=\aleph_\omega$ はありえない($\aleph_\omega$ の共終数は $\aleph_0$)。$\aleph_1<2^{\aleph_0}$ の場合、$\aleph_1$ という非可算な濃度の冪が可算濃度の冪と一致するので、濃度 $\aleph_1$ の集合の部分集合は、実数によって符号化できることになる。これが「$2^{\aleph_0}$ 未満の集合は可算集合のようにふるまう」の一つの具体的な形である。
cor-ma-chにより、連続体仮説が成り立つモデルでは MA も成り立つ。MA と $2^{\aleph_0}>\aleph_1$ が同時に成り立つモデルは、ccc 強制概念を有限台で反復する強制法によって作られ、たとえば ZFC が無矛盾なら ZFC + MA + $2^{\aleph_0}=\aleph_2$ も無矛盾である。この記事では証明しない(Hal12 Chapter 19, Proposition 19.3)。有限台の反復で ccc が保たれること(同 Proposition 18.8)と、各段階で扱える強制概念の大きさを $2^{\aleph_0}$ 未満に制限してよいこと(同 Lemma 19.2)が要点である。
したがって ZFC が無矛盾なら MA は ZFC から反証できず、連続体仮説の否定とも両立する追加の公理として用いられる。連続体仮説を使う多くの証明で、MA が連続体仮説の代わりになる(Hal12 Chapter 13, Notes)。上のthm-ma-meager-coverはその典型で、可算個についての Baire 型の議論を $2^{\aleph_0}$ 未満の個数に広げている。群論では、Whiteheadの問題の記事で扱うとおり、MA と連続体仮説の否定を併せたモデルで自由でないホワイトヘッド群が存在する。
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