アデール(adele)とは、代数体 $K$ のすべての素点 $v$ での完備化 $K_v$ の元の組 $(x_v)_v$ で、有限個を除くすべての有限素点で $x_v$ が整数環 $\mathcal{O}_v$ に属するものをいう。その全体 $\mathbb{A}_K$ は、$\mathcal{O}_v$ に関する制限直積位相について局所コンパクトな位相環になり、アデール環と呼ばれる。$K$ は対角に埋め込まれて $\mathbb{A}_K$ の離散部分環になり、商 $\mathbb{A}_K/K$ はコンパクトである($\mathbb{Z}\subset\mathbb{R}$ と $\mathbb{R}/\mathbb{Z}$ の類似)。$0$ でない $x\in K$ は積公式 $\prod_v\lvert x\rvert_v=1$ を満たす。
有理数体 $\mathbb{Q}$ は、実数体 $\mathbb{R}$ にも、各素数 $p$ の $p$ 進数体 $\mathbb{Q}_p$ にも埋め込まれる。どの埋め込みでも $\mathbb{Q}$ は稠密で、1 つの完備化だけを見ていると $\mathbb{Q}$ の「整数らしさ」は見えない。ところが、すべての完備化を同時に見て、有理数 $x$ を組 $(x,x,x,\dots)\in\mathbb{R}\times\prod_p\mathbb{Q}_p$ として扱うと、事情が変わる。$x$ が「実数として $\lvert x\rvert<1$」かつ「すべての $p$ で $p$ 進整数」なら、$x$ は $\lvert x\rvert<1$ の整数、すなわち $0$ である。こうして $\mathbb{Q}$ は全体の中で離散的な部分集合になる。
アデール は、代数体 $K$ のすべての素点での完備化 $K_v$ を 1 つにまとめた環 $\mathbb{A}_K$ の元である。ただし単なる直積ではなく、ほとんどすべての素点で整数になる組だけをとり(制限直積)、それに合った位相を入れる。この記事では、アデール環を定義し、それが局所コンパクトな位相環であること、$K$ がその中で離散的な部分環で、商 $\mathbb{A}_K/K$ がコンパクトであること、そして積公式 $\prod_v\lvert x\rvert_v=1$ を記事の中で証明する。乗法群の側の理論は イデールとイデール類群 で扱う。
以下 $K$ を次数 $n$ の 代数体、$\mathcal{O}_K$ をその整数環、$(r_1,r_2)$ を符号数(実埋め込みの個数と、複素埋め込みの組の個数)とする。$0$ でない $x\in K$ について、単項分数イデアル $x\mathcal{O}_K$ を素イデアルの積 $\prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{n_{\mathfrak{p}}}$ に分解し(イデアル類群 の記事の命題「整数環の分数イデアルは群をなす」)、$v_{\mathfrak{p}}(x):=n_{\mathfrak{p}}$、$v_{\mathfrak{p}}(0):=\infty$ とおく。$v_{\mathfrak{p}}(xy)=v_{\mathfrak{p}}(x)+v_{\mathfrak{p}}(y)$、$v_{\mathfrak{p}}(x+y)\ge\min\{v_{\mathfrak{p}}(x),v_{\mathfrak{p}}(y)\}$ が成り立ち、$v_{\mathfrak{p}}$ は $K$ の離散付値である。$N(\mathfrak{p})=\lvert\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}\rvert$ はイデアルのノルム(イデアル類群 の記事の定義「イデアルのノルム」)である。
$K$ の 素点(place)とは、次のいずれかをいう。
無限素点は $r_1+r_2$ 個あり、$K_v$ は実素点では $\mathbb{R}$、複素素点では $\mathbb{C}$ である。有限素点 $v=\mathfrak{p}$ では、$K_v$ は局所体であり(局所体 の記事の注意「大域体の完備化」)、その付値環を $\mathcal{O}_v:=\{x\in K_v\mid\lvert x\rvert_v\le1\}$ と書く。$\mathcal{O}_v$ はコンパクトな開部分環であり、$K_v$ は局所コンパクトである(局所体 の記事の命題「整数環のコンパクト性」)。剰余体 $\mathcal{O}_v/\mathfrak{p}\mathcal{O}_v$ は $\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}$ と同型で、元の個数は $N(\mathfrak{p})$ である(Neu99 Chapter II, Proposition (4.3), p. 126)。複素素点の $\lvert\cdot\rvert_v$ は 2 乗をとっているので三角不等式を満たさないが、完備化や位相は $\lvert\sigma(\cdot)\rvert$ と同じであり、2 乗は thm-adele-product-formula のために必要な正規化である。
$K$ の自明でない絶対値は、同値を除いて上の素点のどれかに一致する($\mathbb{Q}$ については p進数体 の記事の定理「Ostrowski の定理」)。この記事ではこの分類を使わず、上の素点の一覧そのものを定義として扱う。
$0$ でない $x\in K$ について、$\lvert x\rvert_v\ne1$ となる有限素点 $v$ は有限個である。とくに、有限個を除くすべての有限素点 $v$ で $x\in\mathcal{O}_v$ である。
$x\mathcal{O}_K=\prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{n_{\mathfrak{p}}}$ の分解に現れる素イデアルは有限個なので、有限個を除く $\mathfrak{p}$ で $v_{\mathfrak{p}}(x)=0$、すなわち $\lvert x\rvert_{\mathfrak{p}}=1$ である。$\lvert x\rvert_v\le1$ は $x\in\mathcal{O}_v$ と同値である。$\square$
添字集合 $V$ の各元 $v$ に局所コンパクトな Hausdorff 空間 $X_v$ が与えられ、有限個を除く $v$ について、コンパクトな開部分集合 $U_v\subset X_v$ が与えられているとする。直積 $\prod_vX_v$ の元 $x=(x_v)_v$ のうち、有限個を除くすべての $v$ で $x_v\in U_v$ となるものの全体を
$$
\prod_{v}{}'(X_v;U_v)
$$
と書き、$(X_v)$ の $(U_v)$ に関する 制限直積(restricted product)という。その位相は、各 $v$ で $W_v\subset X_v$ が開集合で、有限個を除く $v$ で $W_v=U_v$ となる集合 $\prod_vW_v$ を開基とする位相とする(制限直積位相)。
$U_v$ が与えられていない $v$ をすべて含む有限集合 $S\subset V$ を 1 つ固定して例外の集合とよぶ。例外の集合を含む有限集合 $S$ について
$$
X_S:=\prod_{v\in S}X_v\times\prod_{v\notin S}U_v
$$
とおく。制限直積は $X_S$ たちの和集合である。
$K$ の アデール環(adele ring)とは、すべての素点の完備化 $K_v$ の、有限素点での付値環 $\mathcal{O}_v$ に関する制限直積
$$
\mathbb{A}_K:=\prod_{v}{}'(K_v;\mathcal{O}_v)
$$
に、成分ごとの和と積を入れた環である(無限素点には $\mathcal{O}_v$ を指定しない)。その元を アデール(adele)という。$x\in K$ を全成分が $x$ の組 $(x)_v$ に写す写像 $K\to\mathbb{A}_K$ の像を 主アデール という。
$(x)_v$ がアデールであることは prop-adele-almost-all-integral による。この写像は単射な環準同型であり(成分の 1 つだけで $x$ が決まる)、以下 $K$ を $\mathbb{A}_K$ の部分環とみなす。$K_\infty:=\prod_{v\mid\infty}K_v\cong\mathbb{R}^{r_1}\times\mathbb{C}^{r_2}$ とおき、無限素点の全体を $S_\infty$ と書く。$S_\infty$ を含む有限集合 $S$ について
$$
\mathbb{A}_{K,S}:=\prod_{v\in S}K_v\times\prod_{v\notin S}\mathcal{O}_v,\qquad \mathbb{A}_{K,\infty}:=\mathbb{A}_{K,S_\infty}=K_\infty\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v
$$
とおく。有限素点の成分だけを集めた制限直積 $\mathbb{A}_{K,f}:=\prod'_{v\nmid\infty}(K_v;\mathcal{O}_v)$ を 有限アデール環 といい、$\mathbb{A}_K=K_\infty\times\mathbb{A}_{K,f}$ である。
$K_\infty$ を $\mathbb{R}^n$ と同一視する:実素点の成分は $\sigma(x)$ そのもの、複素素点の成分は、組から 1 つ選んだ $\sigma$ について $(\operatorname{Re}\sigma(x),\operatorname{Im}\sigma(x))$ とする。この同一視のもとで、主アデール $x\in K$ の $K_\infty$ 成分は 判別式(代数体) の記事の Minkowski 埋め込み $j(x)$ である。
アデールは「$K$ の元を、すべての素点で同時に近似したもの」である。1 つの素点 $K_v$ の中では $K$ は稠密であり、どれほど小さい近傍にも $K$ の元が無数にある。ところが、すべての有限素点で整数であるという条件は $K$ の元を $\mathcal{O}_K$ に閉じ込め、さらに無限素点で小さいという条件は $\mathcal{O}_K$ の元を $0$ だけに絞る(ノルムが $1$ 未満の $0$ でない代数的整数はない)。これが $K$ が $\mathbb{A}_K$ で離散的になる理由である。逆に、分母は中国剰余定理で消し、無限素点の成分は格子 $j(\mathcal{O}_K)$ の平行移動で有界な範囲に収められるので、どのアデールも $K$ の元をずらすとコンパクトな集合に入る。これが商 $\mathbb{A}_K/K$ のコンパクト性である。$\mathbb{Z}\subset\mathbb{R}$ が離散で $\mathbb{R}/\mathbb{Z}$ がコンパクトであることの、すべての素点を使った類似である。
def-adele-restricted-product の記号で、$X:=\prod'_v(X_v;U_v)$ とする。
要点:$X_S$ の上では開基の元が直積位相の開基とちょうど一致する。各点はある $X_S$ に入り、$X_S$ はコンパクトな近傍の積と $\prod U_v$ の積でコンパクトな近傍をもつ(Tychonoffの定理)。
開基の条件:$\prod_vW_v$ と $\prod_vW'_v$ がともに開基の元なら、共通部分 $\prod_v(W_v\cap W'_v)$ も、有限個を除いて $W_v\cap W'_v=U_v$ となるので開基の元である。$x\in X$ について、$x_v\notin U_v$ となる $v$ と例外の集合を合わせた有限集合を $T$ とすると、$\prod_{v\in T}X_v\times\prod_{v\notin T}U_v$ は $x$ を含む開基の元である。
1:$X_S$ 自身が開基の元なので開集合である。開基の元と $X_S$ の共通部分は $\prod_{v\in S}W_v\times\prod_{v\notin S}(W_v\cap U_v)$ で、有限個を除いて $W_v\cap U_v=U_v$ である。これは直積 $\prod_{v\in S}X_v\times\prod_{v\notin S}U_v$ の直積位相の開基(有限個を除いて因子全体に等しい開集合の積)と同じものである。よって 2 つの位相は一致する。
2:Hausdorff 性。$x\ne y$ なら、ある $w$ で $x_w\ne y_w$ であり、$X_w$ の交わらない開集合 $W_w\ni x_w$、$W'_w\ni y_w$ がある。$x_v$ または $y_v$ が $U_v$ に属さない $v$ と例外の集合を合わせた有限集合を $T$ とし、$w$ 以外の $v$ では $v\in T$ なら $X_v$、$v\notin T$ なら $U_v$ を置いた開基の元を 2 つ作れば、$x,y$ を分ける交わらない開集合になる。局所コンパクト性。$x\in X$ とし、$x\in X_S$ となる $S$ をとる。各 $v\in S$ について $x_v$ のコンパクトな近傍 $C_v$ をとると、Tychonoffの定理 により $C:=\prod_{v\in S}C_v\times\prod_{v\notin S}U_v$ は直積位相でコンパクトであり、1 により $X$ の中でもコンパクトである。$C$ は $x$ の開近傍 $\prod_{v\in S}C_v^\circ\times\prod_{v\notin S}U_v$($C_v^\circ$ は $C_v$ の内部)を含む。$\square$
$\mathbb{A}_K$ は制限直積位相について局所コンパクトな Hausdorff 位相環である。$S_\infty$ を含む有限集合 $S$ について $\mathbb{A}_{K,S}$ は開部分環で、その位相は直積位相である。
要点:位相の主張は prop-adele-restricted-basic である。和と積は開集合 $\mathbb{A}_{K,S}\times\mathbb{A}_{K,S}$ を $\mathbb{A}_{K,S}$ に写し、そこでは直積位相なので成分ごとの連続性で足りる。
$x,y\in\mathbb{A}_K$ なら、有限個を除く $v$ で $x_v,y_v\in\mathcal{O}_v$ であり、$\mathcal{O}_v$ は部分環なので $x+y$、$xy$、$-x$ もアデールである。$K_v$ は局所コンパクトな Hausdorff 空間で、$\mathcal{O}_v$ はコンパクトな開集合なので、prop-adele-restricted-basic により $\mathbb{A}_K$ は局所コンパクトな Hausdorff 空間で、$\mathbb{A}_{K,S}$ は直積位相をもつ開集合である。
和と積の連続性。$(x,y)\in\mathbb{A}_K\times\mathbb{A}_K$ について、$x,y\in\mathbb{A}_{K,S}$ となる $S$ をとる。$\mathbb{A}_{K,S}\times\mathbb{A}_{K,S}$ は $(x,y)$ の開近傍で、和と積はこれを $\mathbb{A}_{K,S}$ に写す。$\mathbb{A}_{K,S}$ は直積位相をもつので、直積への写像の連続性は各成分の連続性で判定でき、各成分 $K_v\times K_v\to K_v$、$\mathcal{O}_v\times\mathcal{O}_v\to\mathcal{O}_v$ の和と積は連続である。よって和と積は各点の開近傍の上で連続であり、全体で連続である。$x\mapsto-x$ も同様である。$\square$
$0$ でない $x\in K$ について、$\lvert x\rvert_v=1$ が有限個を除くすべての素点 $v$ で成り立ち、
$$
\prod_v\lvert x\rvert_v=1
$$
である。より詳しく、$\prod_{v\mid\infty}\lvert x\rvert_v=\lvert N_{K/\mathbb{Q}}(x)\rvert$ かつ $\prod_{v\nmid\infty}\lvert x\rvert_v=\lvert N_{K/\mathbb{Q}}(x)\rvert^{-1}$ である。
前半は prop-adele-almost-all-integral である(無限素点は有限個)。無限素点について、実素点は $\lvert\sigma(x)\rvert$、複素素点は $\lvert\sigma(x)\rvert^2=\lvert\sigma(x)\rvert\,\lvert\bar\sigma(x)\rvert$ を与えるので、積は $n$ 個の埋め込みすべてについての $\lvert\sigma(x)\rvert$ の積であり、$\lvert N_{K/\mathbb{Q}}(x)\rvert$ に等しい(代数体 の記事の定理「ノルムとトレースは共役の積と和」)。
有限素点について。まず $x\in\mathcal{O}_K$、$x\ne0$ とする。$x\mathcal{O}_K=\prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(x)}$ のノルムをとると、イデアル類群 の記事の定理「イデアルのノルムの乗法性」と命題「単項イデアルのノルム」により
$$
\prod_{\mathfrak{p}}N(\mathfrak{p})^{v_{\mathfrak{p}}(x)}=N(x\mathcal{O}_K)=\lvert N_{K/\mathbb{Q}}(x)\rvert
$$
であり、左辺の逆数が $\prod_{v\nmid\infty}\lvert x\rvert_v$ である。一般の $x\in K^\times$ は $x=a/b$($a\in\mathcal{O}_K$、$b\in\mathbb{Z}$、$b\ne0$)と書ける($x\mathcal{O}_K$ に イデアル類群 の記事の定義「分数イデアル」の直後の段落を当てはめ、$b\,x\mathcal{O}_K\subset\mathcal{O}_K$ となる整数 $b\ne0$ をとり $a:=bx$ とする)。$\lvert\cdot\rvert_v$ と $N_{K/\mathbb{Q}}$ はどちらも乗法的なので、$a$ と $b$ についての等式を割れば $x$ についての等式を得る。2 つの等式を掛ければ積公式になる。$\square$
複素素点で 2 乗をとらずに $\lvert\sigma(x)\rvert$ を使うと、積公式は成り立たない(ex-adele-counterexamples の 4 行目)。積公式は、$K$ の元が「すべての素点で同時に小さく」なることはできない、という thm-adele-main の離散性の議論の定量的な形である。
有限素点 $v=\mathfrak{p}$ と $m\ge1$ について、$\mathfrak{p}^m\mathcal{O}_v:=\{y\in K_v\mid\lvert y\rvert_v\le N(\mathfrak{p})^{-m}\}$ とおく。包含 $\mathcal{O}_K\subset\mathcal{O}_v$ は環の同型 $\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^m\cong\mathcal{O}_v/\mathfrak{p}^m\mathcal{O}_v$ を引き起こす。
要点:写像の核は $\mathfrak{p}^m$ なので単射であり、両辺の元の個数はどちらも $N(\mathfrak{p})^m$ なので全射でもある。
核:$0$ でない $x\in\mathcal{O}_K$ について、$x\in\mathfrak{p}^m$ と $v_{\mathfrak{p}}(x)\ge m$ は同値である。実際、$v_{\mathfrak{p}}(x)\ge m$ なら $x\mathcal{O}_K=\mathfrak{p}^mJ$($J$ は整イデアル)と書けて $x\mathcal{O}_K\subset\mathfrak{p}^m$ であり、逆に $x\mathcal{O}_K\subset\mathfrak{p}^m$ なら含むことは割ること(イデアル類群 の記事の命題「整数環の分数イデアルは群をなす」)から $x\mathcal{O}_K=\mathfrak{p}^mL$($L$ は整イデアル)で、分解の一意性により $v_{\mathfrak{p}}(x)\ge m$ である。よって写像 $\mathcal{O}_K\to\mathcal{O}_v/\mathfrak{p}^m\mathcal{O}_v$ の核は $\mathfrak{p}^m$ で、$\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^m\to\mathcal{O}_v/\mathfrak{p}^m\mathcal{O}_v$ は単射である。
全射:左辺の元の個数は $N(\mathfrak{p}^m)=N(\mathfrak{p})^m$ である(イデアル類群 の記事の定理「イデアルのノルムの乗法性」)。右辺は、剰余体の元の個数が $q=N(\mathfrak{p})$ なので、局所体 の記事の命題「整数環のコンパクト性」の 1 により $q^m$ 個の元をもつ。元の個数が等しい有限集合の間の単射は全単射である。$\square$
任意の $x\in\mathbb{A}_K$ について、$\alpha\in K$ で、すべての有限素点 $v$ について $x_v-\alpha\in\mathcal{O}_v$ となるものがある。すなわち $\mathbb{A}_K=K+\mathbb{A}_{K,\infty}$ である。
$x_v\notin\mathcal{O}_v$ となる有限素点 $v$ の集合 $T$ は有限である。$T=\emptyset$ なら $\alpha=0$ でよい。$v=\mathfrak{p}_v\in T$ について $m_v:=-v_{\mathfrak{p}_v}(x_v)>0$ とおき、$d:=\prod_{v\in T}N(\mathfrak{p}_v)^{m_v}$ とする。$N(\mathfrak{p})$ は加法群 $\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}$ の位数なので $N(\mathfrak{p})\in\mathfrak{p}$ であり、$v_{\mathfrak{p}_v}(d)\ge m_v$($v\in T$)である。よってすべての有限素点で $dx_v\in\mathcal{O}_v$ である。
$v_{\mathfrak{p}}(d)>0$ となる有限素点の集合を $P$ とし($T\subset P$)、$k_v:=v_{\mathfrak{p}_v}(d)$ とおくと $d\mathcal{O}_K=\prod_{v\in P}\mathfrak{p}_v^{k_v}$ である。異なる素イデアルの冪 $\mathfrak{p}^a,\mathfrak{q}^b$ は $\mathfrak{p}^a+\mathfrak{q}^b=\mathcal{O}_K$ を満たす(両方を含む極大イデアルは $\mathfrak{p}$ と $\mathfrak{q}$ を含み、$0$ でない素イデアルは極大なので両者に等しくなり矛盾する)。中国剰余定理 の記事の定理「可換環における中国剰余定理」と lem-adele-residue により、$\beta\in\mathcal{O}_K$ で、すべての $v\in P$ について $\beta-dx_v\in\mathfrak{p}_v^{k_v}\mathcal{O}_v$ となるものがある。
$\alpha:=\beta/d$ とおく。$v\in P$ なら $v_{\mathfrak{p}_v}(\alpha-x_v)=v_{\mathfrak{p}_v}(\beta-dx_v)-k_v\ge0$ である。$v\notin P$ なら $\lvert d\rvert_v=1$ なので $\alpha=\beta/d\in\mathcal{O}_v$ で、$v\notin T$ から $x_v\in\mathcal{O}_v$ である。いずれの場合も $x_v-\alpha\in\mathcal{O}_v$ である。$\square$
$\omega_1,\dots,\omega_n$ を $\mathcal{O}_K$ の整数底とし、$K_\infty=\mathbb{R}^n$ の中の半開の平行体
$$
F:=\Bigl\{\sum_{i=1}^nt_i\,j(\omega_i)\Bigm|0\le t_i<1\Bigr\}
$$
をとる。$j(\omega_1),\dots,j(\omega_n)$ は $\mathbb{R}^n$ の基底であり、$j(\mathcal{O}_K)$ は体積 $2^{-r_2}\sqrt{\lvert d_K\rvert}$ の格子である(判別式(代数体) の記事の定理「整数環の格子としての体積」)。
1:$\alpha\in K$ が $\mathbb{A}_{K,\infty}$ に属することは、すべての $\mathfrak{p}$ で $v_{\mathfrak{p}}(\alpha)\ge0$、すなわち $\alpha\mathcal{O}_K$ が整イデアルであること($\alpha=0$ も含めて)、すなわち $\alpha\in\mathcal{O}_K$ と同値である。
2:$U:=\{y\in K_\infty\mid\text{すべての }v\mid\infty\text{ で }\lvert y_v\rvert_v<1\}\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v$ は $0$ の開近傍である。$\alpha\in K\cap U$ なら、1 により $\alpha\in\mathcal{O}_K$ で、thm-adele-product-formula の前半の等式から $\lvert N_{K/\mathbb{Q}}(\alpha)\rvert=\prod_{v\mid\infty}\lvert\alpha\rvert_v<1$ である。$N_{K/\mathbb{Q}}(\alpha)$ は整数なので $0$ であり、$\alpha=0$ である。よって $K\cap U=\{0\}$ で、各 $\beta\in K$ について $K\cap(\beta+U)=\{\beta\}$ だから、$K$ の各点は孤立点である。閉集合であること:$0$ の開近傍 $V$ で $V-V\subset U$ となるものをとる(和と $x\mapsto-x$ の連続性による)。$z+V$ が $K$ の 2 点 $\alpha\ne\alpha'$ を含めば $\alpha-\alpha'\in V-V\subset U$ で矛盾するので、各 $z$ の近傍 $z+V$ は $K$ の点を高々 1 つしか含まない。$z\notin K$ とし、$z+V$ が $K$ の点 $\alpha$ を含むなら、$\mathbb{A}_K$ は Hausdorff なので $\alpha$ を含まない $z$ の近傍 $W$ がとれ、$(z+V)\cap W$ は $K$ と交わらない $z$ の近傍である。よって $K$ の補集合は開集合で、$K$ は閉集合である。
3:存在。lem-adele-approx により $\alpha_1\in K$ で $x-\alpha_1\in\mathbb{A}_{K,\infty}$ となるものがある。$x-\alpha_1$ の $K_\infty$ 成分を $\sum_it_i\,j(\omega_i)$($t_i\in\mathbb{R}$)と書き、$\beta:=\sum_i\lfloor t_i\rfloor\omega_i\in\mathcal{O}_K$、$\alpha:=\alpha_1+\beta$、$y:=x-\alpha$ とおく。$y$ の $K_\infty$ 成分は $\sum_i(t_i-\lfloor t_i\rfloor)j(\omega_i)\in F$ であり、有限成分は $(x_v-\alpha_1)-\beta\in\mathcal{O}_v$ である。一意性。$\alpha+y=\alpha'+y'$ なら $\alpha-\alpha'=y'-y\in K\cap\mathbb{A}_{K,\infty}=\mathcal{O}_K$ なので、$\alpha-\alpha'=\sum_ic_i\omega_i$($c_i\in\mathbb{Z}$)と書ける。$j(\alpha-\alpha')=y'_\infty-y_\infty$ の座標は $F-F$ の中にあり $\lvert c_i\rvert<1$ なので、$c_i=0$、$\alpha=\alpha'$ である。
4:3 により、商写像 $\mathbb{A}_K\to\mathbb{A}_K/K$ は $F\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v$ 上ですでに全射である。$\overline{F}$ は $\mathbb{R}^n$ の有界閉集合でコンパクトであり、$\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v$ は Tychonoffの定理 によりコンパクトである。その直積は $\mathbb{A}_{K,\infty}$ の直積位相でコンパクトで、prop-adele-topological-ring によりこれは $\mathbb{A}_K$ の中でのコンパクト性と同じである。コンパクト集合の連続写像による像なので $\mathbb{A}_K/K$ はコンパクトである。2 により $K$ は閉部分群なので、$\mathbb{A}_K/K$ は Hausdorff である(位相群 の記事の命題「剰余空間の位相」の 2)。$\square$
3 の $F\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v$ は、$\mathbb{A}_K$ を $K$ の平行移動で埋め尽くす 基本領域 である。1 と 3 はまとめて「$\mathbb{A}_{K,\infty}$ の中で $\mathcal{O}_K$ は $K_\infty$ の格子 $j(\mathcal{O}_K)$ のように並び、$\mathbb{A}_K$ の中で $K$ はそれを分母の分だけ広げたものである」と読める。
$K=\mathbb{Q}$ では、素点は実素点 $\infty$ と素数 $p$ で、$\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}=\mathbb{R}\times\prod'_p(\mathbb{Q}_p;\mathbb{Z}_p)$ である。整数底は $\omega_1=1$、$F=[0,1)$ なので、thm-adele-main は「任意のアデールは、有理数と $[0,1)\times\widehat{\mathbb{Z}}$ の元の和にただ 1 通りに書ける」という主張になる。ここで $\widehat{\mathbb{Z}}:=\prod_p\mathbb{Z}_p$ である。
たとえば $x$ を、$2$ 成分が $\frac12$ で、他の成分(実成分を含む)がすべて $0$ のアデールとする。prf-adele-approx の手順では $T=\{2\}$、$d=2$ で、$\beta\equiv2\cdot\frac12=1\pmod2$ から $\beta=1$、$\alpha_1=\frac12$ である。$x-\frac12$ の実成分は $-\frac12$ なので $\lfloor-\frac12\rfloor=-1$ を足して $\alpha=-\frac12$ となり、
$$
x=-\tfrac12+y,\qquad y=\bigl(\tfrac12;\ y_2=1,\ y_p=\tfrac12\ (p\ne2)\bigr)
$$
である。$p\ne2$ では $\frac12\in\mathbb{Z}_p$ なので、確かに $y\in[0,1)\times\widehat{\mathbb{Z}}$ である。
さらに、$\mathbb{Z}$ を $n\mapsto(n,n)$ で $\mathbb{R}\times\widehat{\mathbb{Z}}$ に埋め込むと、位相群の同型
$$
\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q}\cong(\mathbb{R}\times\widehat{\mathbb{Z}})/\mathbb{Z}
$$
がある。
包含 $\mathbb{R}\times\widehat{\mathbb{Z}}=\mathbb{A}_{\mathbb{Q},\infty}\to\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ と商写像の合成は、thm-adele-main の 3 により全射で、1 によりその核は $\mathbb{Q}\cap\mathbb{A}_{\mathbb{Q},\infty}=\mathbb{Z}$ である。$\mathbb{A}_{\mathbb{Q},\infty}$ は開部分群で、商写像は開写像なので(位相群 の記事の命題「剰余空間の位相」の 1)、引き起こされる連続な全単射準同型は開写像であり、同型である。
素数 $p$ について、$p$ 成分が $\frac1p$ で他の成分がすべて $0$ のアデールを $e^{(p)}$ とする。直積 $\mathbb{R}\times\prod_p\mathbb{Q}_p$ の直積位相では、各成分が $p$ の十分大きいところで $0$ になるので $e^{(p)}\to0$($p\to\infty$)である。一方、$\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}$ の制限直積位相では、$0$ の開近傍 $(-1,1)\times\widehat{\mathbb{Z}}$ はどの $e^{(p)}$ も含まない($\frac1p\notin\mathbb{Z}_p$)ので、$e^{(p)}$ は $0$ に収束しない。制限直積位相は、直積からの相対位相より真に細かい。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 制限をかけること | 直積 $\prod_p\mathbb{Q}_p$(直積位相) | 局所コンパクトであること |
| すべての素点をとること(無限素点を除く) | 有限アデール環 $\mathbb{A}_{\mathbb{Q},f}$ | $\mathbb{Q}$ が離散であること |
| すべての素点をとること(有限個だけとる) | $\mathbb{R}\times\mathbb{Q}_p$ に対角に入れた $\mathbb{Q}$ | $\mathbb{Q}$ が離散であること |
| 複素素点で 2 乗をとる正規化 | $K=\mathbb{Q}(i)$、$\lvert x\rvert_\infty:=\lvert2+i\rvert$ | 積公式 |
各行は、表の条件だけを外すと結論が破れることを示す。
1 行目:$0$ がコンパクトな近傍 $C$ をもつとすると、$C$ は開基の元 $\prod_{p\in S}W_p\times\prod_{p\notin S}\mathbb{Q}_p$($S$ は有限集合)を含む。$q\notin S$ について、射影 $\mathrm{pr}_q$ は連続なので $\mathrm{pr}_q(C)$ はコンパクトで $\mathbb{Q}_q$ 全体を含み、$\mathbb{Q}_q$ はコンパクトになる。これは $\mathbb{Q}_q$ がコンパクトでないこと(局所体 の記事の命題「整数環のコンパクト性」の 4)に反する。
2 行目:$\mathbb{A}_{\mathbb{Q},f}$ の $0$ の近傍は、有限集合 $S$ と $k_p\ge0$ による $\prod_{p\in S}p^{k_p}\mathbb{Z}_p\times\prod_{p\notin S}\mathbb{Z}_p$ を含む。整数 $M:=\prod_{p\in S}p^{k_p}\ne0$ はこの近傍に属するので、$0$ は $\mathbb{Q}$ の孤立点でない。thm-adele-main の 2 の証明で無限素点の条件 $\lvert y_v\rvert_v<1$ が $0$ 以外の整数を除く役割を果たしていたことが、ここで失われている。
3 行目:$0$ の近傍は $(-\varepsilon,\varepsilon)\times p^k\mathbb{Z}_p$ の形のものを含む。$q\ne p$ を $q>p^k/\varepsilon$ となる素数とすると、$p^k/q$ は実数として $\varepsilon$ より小さく、$p$ 進付値は $k$ なので、この近傍に属する。よって $\mathbb{Q}$ は離散でない。分母に $q$ が現れることを禁じる $q$ 成分の条件がないためである。
4 行目:ex-adele-product-formula の 2 と同じ計算で、無限素点の値だけが $\sqrt5$ に変わるので、積は $\sqrt5\cdot5^{-1}\ne1$ となる。
有限次拡大 $L/K$ について、$\mathbb{A}_K\otimes_KL\cong\mathbb{A}_L$(環としても位相についても)であり、この同型で $K\otimes_KL=L$ は主アデールの $L$ に移る。とくに加法群として $\mathbb{A}_L\cong\mathbb{A}_K^{[L:K]}$ である。この記事では証明しない(CF67 Chapter II, §14, Lemma と Corollary, pp. 63–64、Ste12 Lemma 18.3.3 と Corollary 18.3.4, pp. 187–188)。これを使うと thm-adele-main の 2 と 4 は $K=\mathbb{Q}$ の場合に帰着でき、CF67 と Ste12 はその方法で証明している。本記事では帰着を使わず、中国剰余定理と格子 $j(\mathcal{O}_K)$ で直接示した。
$\mathbb{A}_K$ は局所コンパクトな可換位相群なので Haar 測度をもつ(位相群 の記事の定理「Haar 測度の存在と一意性」)。実素点で Lebesgue 測度、複素素点で通常の面積の $2$ 倍、有限素点で $\mathcal{O}_v$ の測度が $1$ になる測度をとり、それらの積として Haar 測度を正規化すると、thm-adele-main の基本領域 $F\times\prod_{v\nmid\infty}\mathcal{O}_v$ の測度、したがって $\mathbb{A}_K/K$ の体積は $\sqrt{\lvert d_K\rvert}$ になる。$F$ の通常の体積 $2^{-r_2}\sqrt{\lvert d_K\rvert}$ が複素素点の係数 $2^{r_2}$ で打ち消されるからである。Tate は、加法指標について自己双対な測度(有限素点で $\mathcal{O}_v$ の測度が共役差積のノルムの $-\frac12$ 乗になる測度)をとると、この体積がちょうど $1$ になることを示した(Tat67 Lemma 4.1.4 と Theorem 4.1.3, p. 330)。この記事では測度の構成には立ち入らない。
ex-adele-counterexamples の 2・3 行目のように、素点を 1 つでも除くと $K$ は離散でなくなる。実はもっと強く、素点 $v_0$ を 1 つ除いた制限直積 $\prod'_{v\ne v_0}(K_v;\mathcal{O}_v)$ の中で $K$ は稠密である(強近似定理)。この記事では証明しない(CF67 Chapter II, §15, p. 67、Ste12 Theorem 18.4.4, p. 193)。有限個の素点についての近似である lem-adele-approx や弱近似定理と違い、残りのすべての有限素点で整数という条件を同時に課せる点が強い。
制限直積とアデール環の定義、局所コンパクト性、$K$ の離散性と $\mathbb{A}_K/K$ のコンパクト性は CF67 Chapter II, §13(pp. 62–63)と §14 の Theorem(p. 64)、Ste12 §18.2–§18.3(Lemma 18.2.4, p. 185、Theorem 18.3.5, p. 188)にある。$K\cap\mathbb{A}_{K,\infty}=\mathcal{O}_K$ と $\mathbb{A}_K=K+\mathbb{A}_{K,\infty}$ は Tat67 Lemma 4.1.3(p. 329)で、そこでは中国剰余定理による近似として述べられている。素点の正規化された絶対値と積公式は Neu99 Chapter III, §1(p. 184、Proposition (1.3), p. 185)、アデールの名と定義は同 Chapter VI, §1(p. 357)にある。
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