カージオイド

同義語:心臓形cardioid

概要

カージオイド(cardioid)とは、極方程式 $r=a(1+\cos\theta)$($a>0$)で表される心臓の形の曲線で、極は曲線のとがった点(尖点)である。半径 $\frac a2$ の円の外側を、同じ半径の円が滑らずに転がるとき、転がる円の周の上の点は、出発点を極とするカージオイドをえがく。複素数では、中心のまわりの 2 つの回転の合成 $\frac a2+a\,e^{i\theta}+\frac a2e^{2i\theta}$ が $a(1+\cos\theta)e^{i\theta}$ にまとまることで示される。尖点を通る弦の長さは向きによらず $2a$ で、弦の中点は固定した円の上にある。全長は $8a$ である。転がる円の半径を固定した円の半径の半分にすると、尖点が 2 つのネフロイドになる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 極座標と極方程式, 複素数の掛け算は回転と拡大, サイクロイド, 媒介変数表示と曲線の長さ

高校での出発点:極方程式 $r=a(1+\cos\theta)$

極方程式 $r=a(1+\cos\theta)$($a>0$)の曲線は、ハートの形をしているので カージオイド(心臓形)と呼ばれる。$a=1$ の場合の形と対称性は 極座標と極方程式 の例「螺旋・カージオイド・レムニスケート」で、囲む面積 $\dfrac32\pi$ は 極座標で表された図形の面積 の例「カージオイドの面積」で調べた(一般の $a$ では、各点を $a$ 倍するので面積は $\dfrac32\pi a^2$)。まず点をとって形を思い出す。

極方程式から点をとる

$a=2$ とし、$r=2(1+\cos\theta)$ の点を計算する。極座標 $(r,\theta)$ の点は直交座標で $(r\cos\theta,\ r\sin\theta)$ である。

$\theta$$0$$\dfrac\pi3$$\dfrac\pi2$$\dfrac{2\pi}3$$\pi$$\dfrac{4\pi}3$$\dfrac{3\pi}2$$\dfrac{5\pi}3$
$r$$4$$3$$2$$1$$0$$1$$2$$3$
点$(4,0)$$\left(\dfrac32,\dfrac{3\sqrt3}2\right)$$(0,2)$$\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$$(0,0)$$\left(-\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$$(0,-2)$$\left(\dfrac32,-\dfrac{3\sqrt3}2\right)$

$\theta=\pi$ で $r=0$ となり、曲線は極(原点)を通る。極で曲線はとがっていて、この点を 尖点 という。
表の中で、向きが反対の 2 つの $\theta$(差が $\pi$)の $r$ を足してみる。$\theta=\dfrac\pi3$ と $\dfrac{4\pi}3$ で $3+1=4$、$\dfrac\pi2$ と $\dfrac{3\pi}2$ で $2+2=4$、$0$ と $\pi$ で $4+0=4$、$\dfrac{2\pi}3$ と $\dfrac{5\pi}3$ で $1+3=4$ である。どれも $4=2a$ になる。

ex-card-start の最後の計算は、尖点を通る直線がカージオイドから切り取る線分(弦)の長さである。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. カージオイドは、どんな運動でえがかれる曲線か。→ thm-card-roll
  2. 尖点を通る弦の長さは、いつも $2a$ か。→ thm-card-chord (1)
  3. 弦の中点、曲線の全長はどうなるか。→ thm-card-chord (2)(3)
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    極方程式 $r=a(1+\cos\theta)$円の外を同じ大きさの円が転がる外サイクロイド
    $r(\theta)+r(\theta+\pi)$尖点を通る弦の長さ $2a$円のコンコイド
    複素数の積 $e^{i\theta}\cdot e^{i\theta}$回転の合成、$\dfrac a2(1+e^{i\theta})^2$2 乗の写像 $w\mapsto w^2$
    極座標の曲線の長さ全長 $8a$弧長
カージオイド

$a>0$ とする。極方程式
$$ r=a(1+\cos\theta) $$
で表される曲線を カージオイド(cardioid、心臓形)という。$1+\cos\theta\ge0$ なので $r\ge0$ で、曲線の点は $\theta$ ごとにただ 1 つ決まる。極 $O$($\theta=\pi$ の点)を 尖点 という。

主定理 1:円の外を転がる円の点

サイクロイド では、直線の上を転がる円の周の点を、中心の平行移動と中心のまわりの回転の合成として複素数で書いた。ここでは直線の代わりに円の上を転がす。
次の配置を考える(図 1)。

  • 固定した円 $\Gamma$:中心 $F=\dfrac a2$(点 $\left(\dfrac a2,0\right)$)、半径 $\dfrac a2$。$\Gamma$ は原点 $O$ と点 $(a,0)$ を通る。
  • 転がる円:半径 $\dfrac a2$($\Gamma$ と同じ)。$\Gamma$ の外側で $\Gamma$ に接しながら、滑らずに転がる。はじめは中心が $\left(-\dfrac a2,0\right)$ にあり、$O$ で $\Gamma$ に接している。
  • 転がる円の周の上の点 $P$:はじめ $O$ にある。
    転がる円の中心 $Q$ が $F$ から見て向き $\theta$ にあるとき(はじめは $\theta=\pi$)の $P$ の位置を、3 段で求める。
    段 1(中心の位置)。2 つの円は外側で接しているので、中心の距離は半径の和 $\dfrac a2+\dfrac a2=a$ である。よって
    $$ Q=F+a\,e^{i\theta}=\frac a2+a\,e^{i\theta} $$
    である。
    段 2(接点)。接点 $K$ は線分 $FQ$ の中点で、$K=F+\dfrac a2e^{i\theta}$ である。はじめ接点は $O=F+\dfrac a2e^{i\pi}$ にあったので、接点は $\Gamma$ の上を中心角 $\theta-\pi$ だけ進んだ。進んだ弧の長さは $\dfrac a2(\theta-\pi)$ である。
    段 3(中心から見た $P$)。滑らずに転がるので、転がる円の周の上で、接点 $K$ から $P$ までの弧の長さも $\dfrac a2(\theta-\pi)$ である。つまり $\angle KQP=\theta-\pi$ である。$Q$ から見た $K$ の向きは $-e^{i\theta}$ で、$P$ はそれを反時計回りに $\theta-\pi$ だけ回した向きにある(転がる円は反時計回りに回りながら $\Gamma$ のまわりを反時計回りに進み、$P$ は接点の後ろに残る)。よって $Q$ から見た $P$ の向きは
    $$ -e^{i\theta}\cdot e^{i(\theta-\pi)}=-e^{2i\theta}\cdot e^{-i\pi}=-e^{2i\theta}\cdot(-1)=e^{2i\theta} $$
    で、$P=Q+\dfrac a2e^{2i\theta}$ である。
    回る向きを速度で確かめる

    転がる円の周の点のうち、中心から見て向き $\psi$ にある点は $Q+\dfrac a2e^{i\psi}$ にある。円が回ると、この点の向きは $\psi+(\text{円の回った角})$ になる。段 3 の結論では円の回った角は $2\theta$ の増え方と同じ($\theta$ が $1$ 増えると $2$ 回る)なので、接点にある円の点の速度は $\dfrac{dQ}{d\theta}+\dfrac a2\cdot2i\cdot(-e^{i\theta})=ai\,e^{i\theta}-ai\,e^{i\theta}=0$ である。地面($\Gamma$)に触れている点が一瞬止まっていることが、滑らないことの意味である(サイクロイド と同じ)。もし逆向きに回るとすると、速度は $ai\,e^{i\theta}+ai\,e^{i\theta}=2ai\,e^{i\theta}\ne0$ になり、滑ってしまう。

    以上から、$P$ の位置は
    $$ z(\theta)=\underbrace{\frac a2}_{F}+\underbrace{a\,e^{i\theta}}_{F\text{ から見た }Q}+\underbrace{\frac a2e^{2i\theta}}_{Q\text{ から見た }P}\qquad(\pi\le\theta\le3\pi) $$
    である。$\theta=\pi$ で $z=\dfrac a2-a+\dfrac a2=0$、つまり $P=O$ となり、はじめの配置と合っている。
転がる円の式で点を計算する

$a=2$ とする。$F=1$、$Q=1+2e^{i\theta}$、$P=Q+e^{2i\theta}$ である。
(1) $\theta=\dfrac{3\pi}2$($\Gamma$ のまわりを $\dfrac14$ 周)。$e^{i\theta}=-i$、$e^{2i\theta}=e^{3\pi i}=-1$ なので $Q=1-2i$、$P=1-2i-1=-2i$、つまり点 $(0,-2)$ である。
(2) $\theta=2\pi$(半周)。$Q=1+2=3$、$P=3+1=4$、点 $(4,0)$ である。
(3) $\theta=\dfrac{7\pi}3$($\theta-\pi=\dfrac{4\pi}3$)。$e^{i\theta}=e^{i\pi/3}=\dfrac12+\dfrac{\sqrt3}2i$、$e^{2i\theta}=e^{2\pi i/3}=-\dfrac12+\dfrac{\sqrt3}2i$ なので
$$ P=1+2\left(\frac12+\frac{\sqrt3}2i\right)+\left(-\frac12+\frac{\sqrt3}2i\right)=\frac32+\frac{3\sqrt3}2i $$
である。
3 つとも ex-card-start の表の点($\theta=\dfrac{3\pi}2$、$0$、$\dfrac\pi3$ の点)と一致する。

a=2 のとき、固定した円(灰色)の外を同じ大きさの円(緑の破線)が転がる様子。θ−π が π/3、2π/3、π、3π/2 のときの点 P(赤)と、それまでにえがいた部分(黒) a=2 のとき、固定した円(灰色)の外を同じ大きさの円(緑の破線)が転がる様子。θ−π が π/3、2π/3、π、3π/2 のときの点 P(赤)と、それまでにえがいた部分(黒)
ex-card-roll で見た一致は偶然ではない。

転がる円の点はカージオイドをえがく

上の配置で、転がる円が $\Gamma$ のまわりを 1 周するとき($\pi\le\theta\le3\pi$)、点 $P$ の位置は
$$ z(\theta)=\frac a2+a\,e^{i\theta}+\frac a2e^{2i\theta}=a(1+\cos\theta)\,e^{i\theta} $$
である。したがって $P$ は、はじめの位置 $O$ を極とするカージオイド $r=a(1+\cos\theta)$ をちょうど 1 周えがく。

平方の形にまとめる

段 1(平方の形)。$e^{2i\theta}=\bigl(e^{i\theta}\bigr)^2$ なので
$$ \frac a2+a\,e^{i\theta}+\frac a2e^{2i\theta}=\frac a2\left(1+2e^{i\theta}+\bigl(e^{i\theta}\bigr)^2\right)=\frac a2\left(1+e^{i\theta}\right)^2 $$
である。
段 2($1+e^{i\theta}$ を半分の角で書く)。$e^{i\theta}=e^{i\theta/2}\cdot e^{i\theta/2}$ と $e^{-i\theta/2}\cdot e^{i\theta/2}=1$ から
$$ 1+e^{i\theta}=e^{i\theta/2}\left(e^{-i\theta/2}+e^{i\theta/2}\right)=e^{i\theta/2}\cdot2\cos\frac\theta2 $$
である($e^{-i\theta/2}+e^{i\theta/2}=\left(\cos\dfrac\theta2-i\sin\dfrac\theta2\right)+\left(\cos\dfrac\theta2+i\sin\dfrac\theta2\right)=2\cos\dfrac\theta2$)。
段 3(まとめる)。段 1・2 から
$$ z(\theta)=\frac a2\left(e^{i\theta/2}\cdot2\cos\frac\theta2\right)^2=\frac a2\cdot4\cos^2\frac\theta2\cdot e^{i\theta}=a(1+\cos\theta)\,e^{i\theta} $$
である(半角の公式 $2\cos^2\dfrac\theta2=1+\cos\theta$)。
段 4(極方程式)。$a(1+\cos\theta)\ge0$ なので、$z(\theta)$ は原点からの距離 $a(1+\cos\theta)$、向き $\theta$ の点、つまり極座標 $\bigl(a(1+\cos\theta),\,\theta\bigr)$ の点である。$\theta$ が $\pi$ から $3\pi$ まで動くと、向き $\theta$ は 1 周分をちょうど 1 回ずつとるので($\cos$ の周期は $2\pi$)、$P$ はカージオイド $r=a(1+\cos\theta)$ の各点をちょうど 1 回通る($\theta=\pi$ と $3\pi$ で同じ点 $O$ にもどる)。$\square$

段 2 の変形は、$1+e^{i\theta}$ が「$1$ と $e^{i\theta}$ のひし形の対角線」で、向きが半分の角 $\dfrac\theta2$ になることを式で書いたものである(複素数平面と図形)。

尖点は 1 つ、円は 2 回まわる

$z(\theta)=\dfrac a2+a\,e^{i\theta}+\dfrac a2e^{2i\theta}$ を微分すると
$$ \frac{dz}{d\theta}=ai\,e^{i\theta}+ai\,e^{2i\theta}=ai\,e^{i\theta}\left(1+e^{i\theta}\right) $$
で、$\lvert ai\,e^{i\theta}\rvert=a\ne0$ なので、速度が $0$ になるのは $e^{i\theta}=-1$、つまり $\theta=\pi$(と $3\pi$)のときだけである。そのとき $P$ は $O$ にあり、$O$ は $\Gamma$ と転がる円の接点である。$P$ は接点に来た瞬間に一瞬止まり、そこで曲線がとがる。1 周の間に $P$ が接点に来るのは 1 回なので、尖点は 1 つである。
また、段 3 の式から、転がる円は $\Gamma$ のまわりを 1 周する間($\theta$ が $2\pi$ 増える間)に $2\cdot2\pi$、つまり 2 回転する。同じ大きさの硬貨 2 枚の一方を他方のまわりに滑らずに 1 周させると、硬貨の絵柄は 2 回まわるのと同じである。

いろいろな表し方

thm-card-roll から、カージオイドには次の表し方がある。

表し方式見えること
極方程式$r=a(1+\cos\theta)$尖点が極、$x$ 軸について対称
媒介変数表示$x=a(1+\cos\theta)\cos\theta$、$y=a(1+\cos\theta)\sin\theta$点を順にたどれる
複素数(転がる円)$\dfrac a2+a\,e^{i\theta}+\dfrac a2e^{2i\theta}$2 つの回転の合成
複素数(平方)$\dfrac a2\left(1+e^{i\theta}\right)^2$円 $1+e^{i\theta}$ の 2 乗
直交座標$\left(x^2+y^2-ax\right)^2=a^2\left(x^2+y^2\right)$4 次の代数曲線

直交座標の式は、極座標と極方程式 で $a=1$ の場合を導いた($r=a+a\cos\theta$ の両辺に $r$ を掛けて $r^2=ar+ax$、つまり $x^2+y^2-ax=ar$ とし、両辺を 2 乗する)。

主定理 2:尖点を通る弦と全長

尖点 $O$ を通る直線 $\ell$ を、向き $\theta$($0\le\theta<\pi$)の直線とする。$\ell$ の上の $O$ 以外の点は、極座標で向き $\theta$ か向き $\theta+\pi$ にある。def-card により、カージオイドの点で向き $\theta$ のものは $P(\theta)=a(1+\cos\theta)e^{i\theta}$ ただ 1 つで($r>0$ のとき)、向き $\theta+\pi$ のものも $P(\theta+\pi)$ ただ 1 つである。$\ell$ とカージオイドの共有点のうち、この 2 点を両端とする線分を、尖点を通る弦 という($\theta=0$ のときは $P(\pi)=O$ で、弦は $O$ と $(2a,0)$ を結ぶ線分である)。

尖点を通る弦と全長

カージオイド $r=a(1+\cos\theta)$ について、次が成り立つ。
(1) 尖点を通る弦の長さは、向き $\theta$ によらず $2a$ である。
(2) 尖点を通る弦の中点は、thm-card-roll の固定した円 $\Gamma$(中心 $\left(\dfrac a2,0\right)$、半径 $\dfrac a2$)の上にある。
(3) カージオイドの全長は $8a$ である。

反対向きの 2 点の距離を足す

段 1((1) の証明)。$r_1=a(1+\cos\theta)$、$r_2=a\bigl(1+\cos(\theta+\pi)\bigr)=a(1-\cos\theta)$ とおく($\cos(\theta+\pi)=-\cos\theta$)。$P(\theta)=r_1e^{i\theta}$、$P(\theta+\pi)=r_2e^{i(\theta+\pi)}=-r_2e^{i\theta}$ で、2 点は $O$ をはさんで反対側にある。よって弦の長さは
$$ \bigl\lvert P(\theta)-P(\theta+\pi)\bigr\rvert=\bigl\lvert(r_1+r_2)e^{i\theta}\bigr\rvert=r_1+r_2=a(1+\cos\theta)+a(1-\cos\theta)=2a $$
である。
段 2((2) の証明)。弦の中点は
$$ M=\frac{P(\theta)+P(\theta+\pi)}2=\frac{r_1-r_2}2e^{i\theta}=a\cos\theta\,e^{i\theta} $$
である。$2\cos\theta\,e^{i\theta}=\left(e^{i\theta}+e^{-i\theta}\right)e^{i\theta}=e^{2i\theta}+1$ を使うと
$$ M-\frac a2=\frac a2\left(2\cos\theta\,e^{i\theta}-1\right)=\frac a2e^{2i\theta},\qquad \left\lvert M-\frac a2\right\rvert=\frac a2 $$
である。よって $M$ は中心 $\dfrac a2$、半径 $\dfrac a2$ の円 $\Gamma$ の上にある。
段 3((3) の証明)。媒介変数表示 $x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$($r=a(1+\cos\theta)$)で、$r'=\dfrac{dr}{d\theta}=-a\sin\theta$ とすると
$$ x'=r'\cos\theta-r\sin\theta,\qquad y'=r'\sin\theta+r\cos\theta $$
なので、2 乗して足すと $x'^2+y'^2=r'^2\left(\cos^2\theta+\sin^2\theta\right)+r^2\left(\sin^2\theta+\cos^2\theta\right)=r^2+r'^2$ である(交差する項 $\pm2rr'\sin\theta\cos\theta$ は打ち消し合う)。さらに
$$ r^2+r'^2=a^2\left(1+2\cos\theta+\cos^2\theta+\sin^2\theta\right)=2a^2(1+\cos\theta)=4a^2\cos^2\frac\theta2 $$
である。曲線は $x$ 軸について対称なので、$0\le\theta\le\pi$ の部分の長さの 2 倍が全長である。$0\le\theta\le\pi$ では $\cos\dfrac\theta2\ge0$ なので(媒介変数表示と曲線の長さ の長さの公式)
$$ L=2\int_0^\pi2a\cos\frac\theta2\,d\theta=2\Bigl[4a\sin\frac\theta2\Bigr]_0^\pi=2\cdot4a=8a $$
である。$\square$

全長 $8a$ は、極座標で表された図形の面積 の節「さらに先へ」でも $a=1$ の場合に求めている。直線の上を転がる円の場合の 1 つのアーチの長さも $8a$(サイクロイド)だが、カージオイドの $a$ は転がる円の直径なので、転がる円の半径 $\dfrac a2$ で言えば $16$ 倍である。

6 本の弦を数で確かめる

$a=2$ とし、$\theta=0,\dfrac\pi6,\dfrac\pi3,\dfrac\pi2,\dfrac{2\pi}3,\dfrac{5\pi}6$ の 6 本の弦を調べる。$r_1=2(1+\cos\theta)$、$r_2=2(1-\cos\theta)$、中点は $M=2\cos\theta\,e^{i\theta}$ である。

$\theta$$r_1$$r_2$弦の長さ中点 $M$
$0$$4$$0$$4$$(2,0)$
$\dfrac\pi6$$2+\sqrt3$$2-\sqrt3$$4$$\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$
$\dfrac\pi3$$3$$1$$4$$\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$
$\dfrac\pi2$$2$$2$$4$$(0,0)$
$\dfrac{2\pi}3$$1$$3$$4$$\left(\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$
$\dfrac{5\pi}6$$2-\sqrt3$$2+\sqrt3$$4$$\left(\dfrac32,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$

たとえば $\theta=\dfrac\pi3$ の中点 $\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ と $\Gamma$ の中心 $(1,0)$ の距離は $\sqrt{\dfrac14+\dfrac34}=1$ で、$\Gamma$ の半径 $1$ に等しい。$\theta=\dfrac\pi2$ では弦は $y$ 軸の上の $(0,2)$ から $(0,-2)$ までで、中点は $O$ そのもの($O$ も $\Gamma$ の上)である。

a=2 のカージオイドの尖点 O を通る 6 本の弦。長さはどれも 4 で、弦の中点(色の点)は固定した円(灰色)の上にある a=2 のカージオイドの尖点 O を通る 6 本の弦。長さはどれも 4 で、弦の中点(色の点)は固定した円(灰色)の上にある
thm-card-chord (2) を言いかえると、カージオイドは次のように作れる。

円の上の点から両側に $a$ だけとる

円 $\Gamma$ の上の点 $M$ をとり、直線 $OM$ の上で $M$ から両側に距離 $a$ の 2 点をとる($M=O$ のときは、$\Gamma$ の $O$ での接線、つまり $y$ 軸の上にとる)。$M$ が $\Gamma$ を 1 周するとき、この 2 点はカージオイド $r=a(1+\cos\theta)$ の全体をえがく。

中点の式から

$\Gamma$ の点は $M=a\cos\theta\,e^{i\theta}$($0\le\theta<\pi$)とすべて表せる(prf-card-chord の段 2 の式 $M-\dfrac a2=\dfrac a2e^{2i\theta}$ で、$2\theta$ が $0$ から $2\pi$ まで動くから)。$M\ne O$ のとき、直線 $OM$ の向きは $e^{i\theta}$ で、$M$ から距離 $a$ の 2 点は
$$ M\pm a\,e^{i\theta}=(a\cos\theta\pm a)e^{i\theta} $$
である。$+$ の方は $a(1+\cos\theta)e^{i\theta}=P(\theta)$、$-$ の方は $-a(1-\cos\theta)e^{i\theta}=a(1-\cos\theta)e^{i(\theta+\pi)}=P(\theta+\pi)$ である。$M=O$($\theta=\dfrac\pi2$)のときも同じ式で $\pm ai$、つまり $P\left(\dfrac\pi2\right)$、$P\left(\dfrac{3\pi}2\right)$ になる。$\theta$ が $0\le\theta<\pi$ を動くと、$P(\theta)$ と $P(\theta+\pi)$ でカージオイドのすべての点をとる。$\square$

円 $\Gamma$ の上の点から、$O$ を通る直線に沿って一定の距離だけずらした点の集まりを、円の コンコイド という。cor-card-conchoid は、カージオイドが、ずらす距離を円の直径 $a$ に等しくとったコンコイドであることを言っている(Wei26b)。

例と反例

主定理 1・2 の条件を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
転がる円の半径が固定した円の半径に等しい半径 $1$ の円の外を半径 $\dfrac12$ の円が転がるえがく曲線がカージオイドになる(尖点が 1 つ)
弦が尖点を通る固定した円の中心 $F$ を通る弦弦の長さがいつも $2a$
反例:半径の比が $1:2$ のとき

中心が原点で半径 $1$ の円の外側を、半径 $\dfrac12$ の円が滑らずに転がる。はじめ転がる円の中心は $\dfrac32$、周の上の点 $P$ は接点 $1$ にあるとする。thm-card-roll の前の 3 段と同じ考え方で、中心は $\dfrac32e^{it}$ にあり、固定した円の上で接点が中心角 $t$ だけ進むと、進んだ弧の長さは $1\cdot t=t$ である。転がる円の上で接点から $P$ までの弧も $t$ なので、その中心角は $\dfrac{t}{1/2}=2t$ である。$Q$ から見た接点の向きは $-e^{it}$ なので、$P$ の向きは $-e^{it}\cdot e^{2it}=-e^{3it}$ で
$$ P(t)=\frac32e^{it}-\frac12e^{3it} $$
である($t=0$ で $P=1$)。速度は
$$ \frac{dP}{dt}=\frac32i\,e^{it}-\frac32i\,e^{3it}=\frac32i\,e^{it}\left(1-e^{2it}\right) $$
で、$0$ になるのは $e^{2it}=1$、つまり $t=0$ と $t=\pi$ のときである。そのとき $P$ は $1$ と $-1$ にあり、どちらも固定した円との接点である。尖点が 2 つあるので(図 3 の × 印)、この曲線はカージオイドではない。rem-card-cusp のとおりカージオイドの尖点は 1 つで、拡大・縮小・回転・平行移動で尖点の数は変わらないからである。この曲線を ネフロイド(腎臓形)という(Wei26c)。

反例:尖点を通らない弦

$a=2$ のカージオイドで、固定した円 $\Gamma$ の中心 $F=(1,0)$ を通る弦を考える。
(1) $x$ 軸(向き $0$)の弦は尖点 $O$ も通り、長さは $4$ である。
(2) 直線 $x=1$(向き $\dfrac\pi2$)。極座標で $r\cos\theta=1$ と $r=2(1+\cos\theta)$ を連立すると $2\cos\theta+2\cos^2\theta=1$ で、$\cos\theta=\dfrac{-1+\sqrt3}2$(もう 1 つの解 $\dfrac{-1-\sqrt3}2$ は $-1$ より小さいので不適)である。このとき $r=2(1+\cos\theta)=1+\sqrt3$ で、$y^2=r^2-x^2=(1+\sqrt3)^2-1=3+2\sqrt3$ なので、交点は $\left(1,\pm\sqrt{3+2\sqrt3}\right)$ である。弦の長さは
$$ 2\sqrt{3+2\sqrt3}=5.0849\ldots\ne4 $$
である。
(3) 向き $\dfrac\pi6$、$\dfrac\pi3$ の弦の長さを数値で求めると、$4.6807\ldots$、$4.9862\ldots$ である(直線 $F+s\,e^{i\varphi}$ を直交座標の式 $\left(x^2+y^2-2x\right)^2=4\left(x^2+y^2\right)$ に代入し、$s$ の方程式の 2 つの実数解の差を求めた)。
$F$ を通る弦の長さは向きによって変わる。長さが一定になるのは、尖点を通る弦だからである。

半径 1 の円(灰色)の外を半径 1/2 の円(緑の破線)が転がってえがく曲線。× 印の尖点が 2 つある 半径 1 の円(灰色)の外を半径 1/2 の円(緑の破線)が転がってえがく曲線。× 印の尖点が 2 つある
a=2 のカージオイドで、固定した円の中心 F を通る 3 本の弦。長さは約 4.68、4.99、5.08 で一定でない a=2 のカージオイドで、固定した円の中心 F を通る 3 本の弦。長さは約 4.68、4.99、5.08 で一定でない

大学数学で見る:円の 2 乗と外サイクロイド

円を 2 乗するとカージオイド

prf-card-roll の段 1 の式 $z=\dfrac a2\left(1+e^{i\theta}\right)^2$ は、「中心 $1$、半径 $1$ の円 $w=1+e^{i\theta}$ の各点を 2 乗して $\dfrac a2$ 倍する」と読める。複素数の 2 乗は、原点からの距離を 2 乗し、偏角を 2 倍する写像である(複素数の掛け算は回転と拡大)。円 $w=1+e^{i\theta}$ は原点を通り、原点の近くでは偏角がほぼ $\pm\dfrac\pi2$ の向きから原点に入る。2 乗すると偏角は $\pm\pi$ になり、2 つの向きが同じ向きに重なる。これが、原点で曲線が折れ返って尖点ができる理由である。原点を通らない円を 2 乗しても尖点はできない(原点以外では 2 乗の写像は向きの角を保つ。この記事では証明しない)。

外サイクロイドと尖点の数

半径 $R$ の円の外側を半径 $\rho$ の円が滑らずに転がるとき、周の上の点がえがく曲線を 外サイクロイド という。ex-card-cx-nephroid と同じ計算で、固定した円の中心を原点、はじめの接点を $R$ にとると
$$ z(t)=(R+\rho)e^{it}-\rho\,e^{i\frac{R+\rho}{\rho}t} $$
である。$\rho=\dfrac Rn$($n$ は正の整数)のとき、曲線は尖点を $n$ 個もつ閉じた曲線になり、$n=1$ がカージオイド、$n=2$ がネフロイドである(Wei26c)。$n=1$ の場合は、平行移動と回転で thm-card-roll の式に一致する。円の内側を転がす場合(内サイクロイド)は アステロイド で扱う。

光が円で反射してできるカージオイド

円の周の上の 1 点から出た光が、円の内側で反射すると、反射した光の線の包絡線(光が集まって明るく見える曲線、火線)はカージオイドになる(Wei26a。この記事では証明しない)。包絡線の考え方は 通過領域と包絡線 で扱う。

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  • 極方程式 $r=b+a\cos\theta$ の曲線を リマソン(Pascal の蝸牛形)といい、$b=a$ のときがカージオイドである(Wei26b)。$b\ge a>0$ なら $r\ge0$ で、prf-card-chord の段 1 と同じ計算により、極を通る弦の長さは $r(\theta)+r(\theta+\pi)=2b$ で一定になる。
  • 転がる円の曲線の仲間は サイクロイド の表にまとめた。円の内側を転がる円の曲線は アステロイド で扱う。

関連項目

参考文献

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