Cartanの定理A・B(Cartan's theorems A and B)とは、Stein 多様体(より一般に Stein 空間)$X$ の上の連接層 $\mathcal{F}$ について、各点の茎 $\mathcal{F}_x$ が大域切断の芽で生成されることと、$q\ge1$ で層コホモロジー $H^q(X,\mathcal{F})$ が消えることを述べる 2 つの定理である。消滅からは茎の生成が Nakayama の補題で導かれ、大域切断の大域正則係数による表示も従う。$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合の上で大域的な有限自由分解をもつ層の場合は、$\bar\partial$ 方程式の $L^2$ 評価による構造層の消滅から次数をずらして示される。affine スキーム上の消滅定理の解析版であり、Cousin 問題や正則関数の延長など多変数関数論の存在定理の土台になる。
前提知識: Stein空間, 連接層, 層コホモロジー, Nakayamaの補題, 複素多様体
Cartan の定理 A・B は、Stein 多様体(より一般に Stein 空間)の上の連接層について、局所的な情報が大域的な切断で捉えられることを述べる 2 つの定理である。定理 A は、各点の茎が大域切断の芽で生成されることを、定理 B は、正の次数の層コホモロジーがすべて消えることを述べる。代数幾何で affine スキームの上の準連接層について成り立つ Serre の定理(連接層 の定理「アフィンスキーム上の消滅」)の解析版にあたり、多変数関数論の多くの存在定理(Cousin問題、閉部分多様体からの正則関数の延長、補間)はここから導かれる。
定理 A・B の一般の証明は、Oka の連接定理、Stein 多様体の上の近似定理、$\bar\partial$ 方程式の解の存在を組み合わせる長いもので、この記事では一般形を引用として述べる(rem-cartan-source)。記事の中で完全に証明するのは、$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合の上で大域的な有限自由分解をもつ層についての定理 A・B である(thm-cartan-ab-free)。このほか、定理 B からは定理 A が点のイデアル層と Nakayama の補題だけで従い(thm-cartan-b-to-a)、大域切断による一次結合の表示も従う(thm-cartan-global-combination)。また構造層のコホモロジーが消える空間では、大域的な有限自由分解をもつ層について定理 B の結論が次数のずらしで得られ(thm-cartan-resolution)、擬凸領域の上ではこれが定理 A・B の特別な場合を与え(thm-cartan-ab-free)、超曲面に沿った延長などの具体的な帰結になる。
以下、複素多様体は Hausdorff で可算個のコンパクト集合の和集合であるとし、$X$ 上の正則関数の層を $\mathcal{O}_X$、点 $x$ での茎を $\mathcal{O}_{X,x}$、大域正則関数の環を $\mathcal{O}(X)$ と書く。$\mathcal{O}_{X,x}$ は局所環であり、その極大イデアル $\mathfrak{m}_x$ は $x$ で消える芽からなる。連接層とは 連接層 の定義「連接層の定義」の意味での連接な $\mathcal{O}_X$ 加群の層(連接解析層)である。$\mathcal{O}_X$ 自身は連接である(複素解析空間 の定理「Oka の連接定理」)。
Stein 多様体とは、Stein空間 の定義「Stein 空間」の 3 条件(正則凸性・点の分離・大域正則関数による局所座標)を満たす複素多様体である(Hor90 Definition 5.1.3、p. 116)。$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合(擬凸領域)は正則領域なので Stein 多様体であり(Hor90 Theorem 4.2.8(p. 88)と p. 116 の例)、Stein 多様体の閉部分多様体も Stein 多様体である(同 Theorem 5.1.5、p. 117)。
$X$ を Stein 多様体、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の連接層とする。
定理 A は Hor90 Theorem 7.2.8(p. 190)、定理 B は同 Theorem 7.4.3(pp. 199–200)にある。この記事ではこの一般形を証明せず、記事の中で完全に証明するのは thm-cartan-ab-free の場合である。Hor90 では、まず Oka の連接定理と近似定理から定理 A を示し、次に $H^q(X,\mathcal{O}_X)=0$($q\ge1$。同 Corollary 7.4.2、p. 199。∂̄方程式のL²評価 の方法を Stein 多様体に広げて得る)と、定理 A で得られる全射 $\mathcal{O}^{\oplus N}\to\mathcal{F}$ を使って次数をずらし、最後に $X$ を相対コンパクトな Stein 開集合の増大列で尽くして定理 B を得る。次数をずらす部分は thm-cartan-resolution と同じ議論である。同じ定理は特異点をもつ Stein 空間でも成り立つ(Stein空間 の定理「Cartan の定理 A・B」)。
定理 A の茎 $\mathcal{F}_x$ は有限生成なので、有限個の大域切断の芽で生成される。定理 B は層の短完全列から大域切断の短完全列を作る道具として使われる。$0\to\mathcal{F}'\to\mathcal{F}\to\mathcal{F}''\to0$ が連接層の短完全列なら、長完全列(層コホモロジー の定理「層コホモロジーの長完全列」)と $H^1(X,\mathcal{F}')=0$ から
$$
0\to\Gamma(X,\mathcal{F}')\to\Gamma(X,\mathcal{F})\to\Gamma(X,\mathcal{F}'')\to0
$$
が完全になる。すなわち、$\mathcal{F}''$ の大域切断はすべて $\mathcal{F}$ の大域切断に持ち上がる。
点 $x\in X$ のイデアル層 $\mathcal{I}_x\subset\mathcal{O}_X$ を、$y\ne x$ で $\mathcal{I}_{x,y}=\mathcal{O}_{X,y}$、$y=x$ で $\mathcal{I}_{x,x}=\mathfrak{m}_x$ となる部分層とする。開集合 $U$ 上の切断は、$x\in U$ なら $x$ で $0$ になる正則関数、$x\notin U$ なら任意の正則関数である。$\mathcal{O}_X$ 加群の層 $\mathcal{F}$ に対し、$\mathcal{I}_x\mathcal{F}\subset\mathcal{F}$ を $\mathcal{I}_x$ の切断と $\mathcal{F}$ の切断の積が局所的に生成する部分層とする。
$X$ を $n$ 次元の複素多様体、$x\in X$、$\mathcal{F}$ を連接層とする。
1:$x$ のまわりの座標 $z=(z_1,\dots,z_n)$ を $x$ が原点になるようにとり、その座標近傍を $U$ とする。$x$ で $0$ になる芽は 複素解析空間 の補題「Hadamard の補題」により $\sum z_ig_i$ と書けるので、$\mathfrak{m}_x$ は $z_1,\dots,z_n$ の芽で生成される。$y\in U$、$y\ne x$ では $z_i(y)\ne0$ となる $i$ があり、$z_i$ の芽は $\mathcal{O}_{X,y}$ の単元なので、$z_1,\dots,z_n$ の芽は $\mathcal{O}_{X,y}$ を生成する。よって $U$ 上で $\mathcal{I}_x$ は $z_1,\dots,z_n$ が生成し、$X\setminus\{x\}$ 上では $1$ が生成するので、$\mathcal{I}_x$ は有限型であり、連接層 $\mathcal{O}_X$ の有限型の部分層として連接である(連接層 の補題「有限型の像と部分層」)。同様に $U$ 上で $\mathcal{I}_x\mathcal{F}$ は射 $\mathcal{F}^{\oplus n}\to\mathcal{F}$、$(s_i)\mapsto\sum z_is_i$ の像であり、$X\setminus\{x\}$ 上では $\mathcal{F}$ に等しい。有限型の層の像は有限型なので、同じ補題により $\mathcal{I}_x\mathcal{F}$ は連接である。
2:$y\ne x$ では $(\mathcal{I}_x\mathcal{F})_y=\mathcal{F}_y$ なので商の茎は $0$、$x$ での茎は $\mathcal{F}_x/\mathfrak{m}_x\mathcal{F}_x$ である。茎が $x$ 以外で $0$ の層の切断は $x$ での芽で決まるので、写像は単射である。全射性:$x$ の近傍 $V$ 上の切断 $s$ は $V\setminus\{x\}$ 上で $0$ なので、$X\setminus\{x\}$ 上の $0$ と貼り合わせて大域切断になる。$\square$
$X$ を複素多様体、$\mathcal{F}$ を連接層、$x\in X$ とし、$H^1(X,\mathcal{I}_x\mathcal{F})=0$ とする。このとき $\mathcal{F}_x$ は $\Gamma(X,\mathcal{F})$ の芽で $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群として生成される。とくに、連接層について定理 B が成り立つ複素多様体では定理 A も成り立つ。
短完全列 $0\to\mathcal{I}_x\mathcal{F}\to\mathcal{F}\to\mathcal{F}/\mathcal{I}_x\mathcal{F}\to0$ の長完全列と仮定 $H^1(X,\mathcal{I}_x\mathcal{F})=0$ から、$\Gamma(X,\mathcal{F})\to\Gamma(X,\mathcal{F}/\mathcal{I}_x\mathcal{F})$ は全射である。lem-cartan-point-ideal の 2 と合わせると、合成 $\Gamma(X,\mathcal{F})\to\mathcal{F}_x\to\mathcal{F}_x/\mathfrak{m}_x\mathcal{F}_x$ は全射である。大域切断の芽が生成する部分加群を $M\subset\mathcal{F}_x$ とすると、これは $M+\mathfrak{m}_x\mathcal{F}_x=\mathcal{F}_x$ を意味する。$\mathcal{F}$ は連接なので $\mathcal{F}_x$ は有限生成であり、有限生成加群 $N:=\mathcal{F}_x/M$ は $\mathfrak{m}_xN=N$ を満たす。局所環 $\mathcal{O}_{X,x}$ 上の Nakayamaの補題(定理「Nakayamaの補題」)により $N=0$、すなわち $M=\mathcal{F}_x$ である。後半は、$\mathcal{I}_x\mathcal{F}$ が連接であること(lem-cartan-point-ideal の 1)による。$\square$
逆向きに定理 A から定理 B を導くには、thm-cartan-resolution のように、定理 A による全射 $\mathcal{O}^{\oplus N}\to\mathcal{F}$ の核にも同じことを繰り返し、構造層のコホモロジーの消滅 $H^q(X,\mathcal{O}_X)=0$ と組み合わせる。
$X$ を Stein 多様体、$\mathcal{F}$ を連接層、$s_1,\dots,s_N\in\Gamma(X,\mathcal{F})$ とする。$s\in\Gamma(X,\mathcal{F})$ が、各点 $y\in X$ で $s_1,\dots,s_N$ の芽が生成する $\mathcal{O}_{X,y}$ 部分加群に芽として属するなら、$c_1,\dots,c_N\in\mathcal{O}(X)$ があって
$$
s=c_1s_1+\cdots+c_Ns_N
$$
となる。とくに $s_1,\dots,s_N$ の芽が各点の茎を生成するなら、すべての大域切断がこの形に書ける。
$\alpha\colon\mathcal{O}_X^{\oplus N}\to\mathcal{F}$ を $(c_j)\mapsto\sum c_js_j$ で定め、像を $\mathcal{G}$、核を $\mathcal{K}$ とする。$\mathcal{G}$ と $\mathcal{K}$ は連接である(連接層 の系「連接層の射の核・像・余核」)。仮定は、各点で $s$ の芽が $\mathcal{G}_y$ に属すること、すなわち $s\in\Gamma(X,\mathcal{G})$ を意味する。短完全列 $0\to\mathcal{K}\to\mathcal{O}_X^{\oplus N}\to\mathcal{G}\to0$ の長完全列と定理 B による $H^1(X,\mathcal{K})=0$ から、$\Gamma(X,\mathcal{O}_X^{\oplus N})=\mathcal{O}(X)^{\oplus N}\to\Gamma(X,\mathcal{G})$ は全射である。$s$ の逆像 $(c_j)$ が求める係数である。$\square$
これは Hor90 Theorem 7.2.9(pp. 190–191)の主張であり、そこでは定理 B を使わず近似で証明されている。たとえば $X=\mathbb{C}^n$、$\mathcal{F}=\mathcal{O}$ で、整関数 $f_1,\dots,f_N$ が共通零点をもたなければ、各点で芽は $\mathcal{O}_y$ を生成するので、$\sum c_jf_j=1$ となる整関数 $c_j$ がある(整関数の環での Bézout 型の等式)。
$X$ を Stein 多様体、$\mathcal{J}\subset\mathcal{O}_X$ を連接なイデアル層、$z\in X$ を $\mathcal{J}_z=\mathcal{O}_{X,z}$ となる点とする。このとき $f(z)\ne0$ となる $f\in\Gamma(X,\mathcal{J})$ がある。
すべての $f\in\Gamma(X,\mathcal{J})$ が $f(z)=0$ を満たすなら、それらの芽はすべて $\mathfrak{m}_z$ に属し、生成する部分加群も $\mathfrak{m}_z\ne\mathcal{O}_{X,z}=\mathcal{J}_z$ に含まれる。これは定理 A に反する。$\square$
$\mathcal{J}$ が解析的集合 $V$ の上で消える芽のイデアル層なら(Cartan により連接である。複素解析空間 の注意「出典と帰結」)、$z\notin V$ で $\mathcal{J}_z=\mathcal{O}_{X,z}$ なので、$V$ の上で $0$、$z$ で $0$ でない大域正則関数が得られる(Hor90 Theorem 7.2.11、p. 192)。
$X$ を複素多様体とし、$q\ge1$ について $H^q(X,\mathcal{O}_X)=0$ とする。$\mathcal{O}_X$ 加群の層 $\mathcal{F}$ が、$X$ 全体で定義された完全列
$$
0\to\mathcal{O}_X^{\oplus p_m}\to\cdots\to\mathcal{O}_X^{\oplus p_1}\to\mathcal{O}_X^{\oplus p_0}\to\mathcal{F}\to0
$$
をもつとする。このとき $q\ge1$ について $H^q(X,\mathcal{F})=0$ であり、$\mathcal{O}(X)^{\oplus p_0}\to\Gamma(X,\mathcal{F})$ は全射である。
$m=0$ なら $\mathcal{F}\cong\mathcal{O}_X^{\oplus p_0}$ で、コホモロジーは直和と交換するので主張は仮定そのものである。$m\ge1$ とし、$\mathcal{K}_0:=\mathcal{F}$、$1\le i\le m$ について $\mathcal{K}_i$ を $\mathcal{O}_X^{\oplus p_i}\to\mathcal{O}_X^{\oplus p_{i-1}}$ の像とする。完全性から $\mathcal{K}_m\cong\mathcal{O}_X^{\oplus p_m}$ であり、$0\le i\le m-1$ について短完全列
$$
0\to\mathcal{K}_{i+1}\to\mathcal{O}_X^{\oplus p_i}\to\mathcal{K}_i\to0
$$
がある。長完全列の一部 $H^q(X,\mathcal{O}_X^{\oplus p_i})\to H^q(X,\mathcal{K}_i)\to H^{q+1}(X,\mathcal{K}_{i+1})\to H^{q+1}(X,\mathcal{O}_X^{\oplus p_i})$ の両端は $q\ge1$ で $0$ なので、$H^q(X,\mathcal{K}_i)\cong H^{q+1}(X,\mathcal{K}_{i+1})$ である。これを繰り返すと、$q\ge1$ について
$$
H^q(X,\mathcal{F})\cong H^{q+1}(X,\mathcal{K}_1)\cong\cdots\cong H^{q+m}(X,\mathcal{K}_m)\cong H^{q+m}(X,\mathcal{O}_X)^{\oplus p_m}=0
$$
である。同じ議論で $H^1(X,\mathcal{K}_1)=0$ なので、$i=0$ の短完全列の長完全列から $\mathcal{O}(X)^{\oplus p_0}\to\Gamma(X,\mathcal{F})$ は全射である。$\square$
Hor90 の定理 B の証明(pp. 199–200)も、この次数のずらしを相対コンパクトな Stein 開集合の上で行う。そこでは分解が有限で止まるとは限らないので、代わりに、交わりの空でない開集合の個数が $2n+1$ 以下の被覆をとって、高い次数のコホモロジーが自明に消えることを使う。
$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合の上では、構造層のコホモロジーの消滅が ∂̄方程式のL²評価 で示されているので、thm-cartan-resolution から定理 A・B の次の場合が完全に証明できる。
$\Omega\subset\mathbb{C}^n$ を擬凸な開集合とし、$\mathcal{O}$ 加群の層 $\mathcal{F}$ が $\Omega$ 全体で thm-cartan-resolution の形の有限自由分解をもつとする(このとき $\mathcal{F}$ は自由層の間の射の余核、または自由層そのものなので連接である)。このとき $\mathcal{F}$ について定理 A・B が成り立つ。すなわち、
2 と最後の主張:∂̄方程式のL²評価 の系「擬凸領域の上の層コホモロジーの消滅」により、$q\ge1$ について $H^q(\Omega,\mathcal{O})=0$ である。よって thm-cartan-resolution が使え、$q\ge1$ で $H^q(\Omega,\mathcal{F})=0$ であり、$\mathcal{O}(\Omega)^{\oplus p_0}\to\Gamma(\Omega,\mathcal{F})$、$(c_i)\mapsto\sum c_is_i$ は全射である。
1:$\mathcal{O}^{\oplus p_0}\to\mathcal{F}$ は層の全射なので、各点 $x$ で茎の写像 $\mathcal{O}_x^{\oplus p_0}\to\mathcal{F}_x$ は全射である。$\mathcal{O}_x^{\oplus p_0}$ は標準基底の芽で生成されるから、$\mathcal{F}_x$ はその像、すなわち $s_1,\dots,s_{p_0}$ の芽で生成される。$\square$
$\mathbb{C}^n$ の擬凸な開集合は Stein 多様体なので、これは thm-cartan-ab の特別な場合である。たとえば次の系の $\mathcal{O}/f\mathcal{O}$ は $m=1$ の分解をもつ。
$\Omega\subset\mathbb{C}^n$ を連結な擬凸開集合、$f\in\mathcal{O}(\Omega)$ を恒等的に $0$ でない関数とする。このとき $q\ge1$ について $H^q(\Omega,\mathcal{O}/f\mathcal{O})=0$ であり、$\Omega$ の開被覆 $(U_i)$ と $g_i\in\mathcal{O}(U_i)$ が $U_i\cap U_j$ 上で $g_i-g_j\in f\,\mathcal{O}(U_i\cap U_j)$ を満たせば、各 $U_i$ 上で $G-g_i\in f\,\mathcal{O}(U_i)$ となる $G\in\mathcal{O}(\Omega)$ がある。
擬凸開集合の上では $q\ge1$ について $H^q(\Omega,\mathcal{O})=0$ である(∂̄方程式のL²評価 の系「擬凸領域の上の層コホモロジーの消滅」)。$\Omega$ は連結なので、一致の定理 により $f$ の芽はどの点でも $0$ でなく、$\mathcal{O}_y$ は整域だから $f$ を掛ける写像 $\mathcal{O}\to\mathcal{O}$ は単射である。よって $0\to\mathcal{O}\xrightarrow{f}\mathcal{O}\to\mathcal{O}/f\mathcal{O}\to0$ は完全で、thm-cartan-resolution を $m=1$ で使えばよい。後半:$g_i$ の像は $U_i\cap U_j$ 上で一致するので貼り合わさり、$\Gamma(\Omega,\mathcal{O}/f\mathcal{O})$ の元を定める。その元の $\mathcal{O}(\Omega)$ への持ち上げを $G$ とすると、$U_i$ 上で $G$ と $g_i$ の像が一致する。$U_i$ 上で $G-g_i$ の像が $0$ なので、各点の近くで $G-g_i=fh$ と書け、$f$ を掛ける写像が単射なので局所的な $h$ は一意で、貼り合わさって $h\in\mathcal{O}(U_i)$ を与える。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X$ が Stein | $X$ は正の次元の連結なコンパクト複素多様体、$\mathcal{F}=\mathcal{I}_x$ | 定理 A |
| $X$ が Stein | 同じ $X$、相異なる 2 点 $x,y$ のイデアル層 $\mathcal{I}_{\{x,y\}}$ | 定理 B($q=1$) |
| $X$ が Stein | $X=\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$、$\mathcal{F}=\mathcal{O}$ | 定理 B($q=1$) |
| $\mathcal{F}$ が連接 | $X=\mathbb{C}$、$\mathcal{F}=\bigoplus_{m\ge1}\mathcal{O}$ | 定理 B($q=1$) |
定理 B を構造層 $\mathcal{O}_X$ に使い、乗法群の層 $\mathcal{O}_X^\times$(連接層ではない)については指数完全列 $0\to\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_X^\times\to0$ と組み合わせると、Stein 多様体の上では第 1 Cousin 問題がつねに解け、第 2 Cousin 問題は位相的な障害 $H^2(X,\mathbb{Z})$ だけで決まる(Cousin問題 の定理「Stein 多様体上の第1 Cousin 問題」「Stein 多様体上の第2 Cousin 問題」)。閉解析的部分空間の正則関数がすべて大域正則関数に延びることも定理 B の帰結である(Stein空間 の系「閉解析的部分空間からの正則関数の延長」)。逆に、複素解析空間の上のすべての連接イデアル層の第 1 コホモロジーが消えれば Stein であり(Stein空間 の定理「Cartan の定理 A・B」)、定理 B は Stein 性を特徴づける。
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