代数的数(algebraic number)とは、$0$ でない有理数係数の多項式の根になる複素数のことで、$\sqrt2$、$i$、$\cos(2\pi/7)$ などが例である。$\alpha$ が代数的であることは、$\mathbb{Q}(\alpha)$ が $\mathbb{Q}$ 上有限次であることとも、有理数を成分とする正方行列の固有値であることとも同値で、根にもつ多項式の最小の次数を $\alpha$ の次数という。代数的数全体 $\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{C}$ の部分体をなす可算な代数閉体で、$\mathbb{Q}$ の代数閉包である。可算であることから、代数的でない複素数(超越数)が非可算個存在する。
$\sqrt2$ は $x^2-2$ の、虚数単位 $i$ は $x^2+1$ の、黄金比 $\frac{1+\sqrt5}2$ は $x^2-x-1$ の根である。このように有理数係数の多項式の根として捉えられる複素数を代数的数という。代数的数は、有理数から出発して四則演算と「多項式の根をとる」操作を何度繰り返しても外に出ない数の範囲であり、その全体 $\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{C}$ の中の可算な代数閉体になる。整数論で扱う代数体はどれも $\overline{\mathbb{Q}}$ の部分体と同型であり、代数的数は代数的整数論の舞台である。一方、$\overline{\mathbb{Q}}$ は可算なので、代数的でない複素数(超越数)が非可算個存在する。
複素数 $\alpha$ が 代数的 であるとは、$0$ でない有理数係数の多項式 $f\in\mathbb{Q}[x]$ で $f(\alpha)=0$ となるものが存在することをいい、そのような複素数を 代数的数(algebraic number)という。代数的数全体を $\overline{\mathbb{Q}}$ と書く。
代数的数 $\alpha$ を根にもつ $0$ でない有理数係数の多項式のうち、次数が最小で最高次の係数が $1$(モニック)のものはただ 1 つあり、これを $\alpha$ の($\mathbb{Q}$ 上の)最小多項式 といって $m_\alpha$ と書く。$\deg m_\alpha$ を $\alpha$ の 次数 といい、$\deg\alpha$ と書く。
有理数係数の多項式は、係数の分母の公倍数を掛ければ同じ根をもつ整数係数の多項式になるので、定義の「有理数係数」を「整数係数」に替えても同じ概念である。この定義と次数は、無理数 の定義「代数的数と超越数」、超越数 の定義「超越数の定義」(どちらも整数係数で述べている)と一致する。体の拡大の言葉では、代数的数とは $\mathbb{C}$ の元で $\mathbb{Q}$ 上代数的なもののことである(体の拡大 の定義「代数的元と超越的元」)。最小多項式がただ 1 つであること、それが既約であること、$\alpha$ を根にもつ有理数係数の多項式はすべて $m_\alpha$ で割り切れることは、体の拡大 の命題「最小多項式の存在と一意性」による($\{f\in\mathbb{Q}[x]\mid f(\alpha)=0\}$ が $\mathbb{Q}[x]$ のイデアルで、$m_\alpha$ がその生成元である)。
有理数 $q$ は $x-q$ の根なので次数 $1$ の代数的数であり、逆に次数 $1$ の代数的数は有理数である。したがって実数の超越数はすべて無理数である。
$\zeta=e^{2\pi i/7}$ とし、$t:=\zeta+\zeta^{-1}=2\cos(2\pi/7)$ とおく。$\zeta\ne1$ は $x^7-1=(x-1)(x^6+x^5+\cdots+1)$ の根なので $\zeta^6+\zeta^5+\cdots+\zeta+1=0$ であり、両辺を $\zeta^3$ で割ると
$$
(\zeta^3+\zeta^{-3})+(\zeta^2+\zeta^{-2})+(\zeta+\zeta^{-1})+1=0
$$
となる。$\zeta^2+\zeta^{-2}=t^2-2$、$\zeta^3+\zeta^{-3}=t^3-3t$ を代入すると
$$
t^3+t^2-2t-1=0
$$
を得る。この 3 次式は有理数の根をもたない(整数係数でモニックなので、有理数の根があればそれは整数であり(代数的整数 の命題「有理数である代数的整数は整数」)、定数項 $-1$ を割り切るので $\pm1$ であるが、$x=1$ で $-1$、$x=-1$ で $1$ になる)ので既約であり、$t$ の最小多項式である。よって $t=2\cos(2\pi/7)$ は次数 $3$ の代数的数であり、$\cos(2\pi/7)=t/2$ の最小多項式は $x^3+\frac12x^2-\frac12x-\frac18$、次数は $3$ である。
多項式の根という定義は、有限次元性や行列の固有値という言葉に言い換えられる。以下、$\mathbb{Q}[\alpha]:=\{g(\alpha)\mid g\in\mathbb{Q}[x]\}$ を $\alpha$ の有理数係数の多項式で表せる数の全体($\mathbb{C}$ の部分環)、$\mathbb{Q}(\alpha)$ を $\alpha$ を含む $\mathbb{C}$ の最小の部分体とする。
複素数 $\alpha$ について次は同値である。
1 ⇒ 2:$d=\deg\alpha$ とする。$g\in\mathbb{Q}[x]$ を $m_\alpha$ で割って $g=qm_\alpha+r$($\deg r< d$)と書くと、$g(\alpha)=r(\alpha)$ なので、$\mathbb{Q}[\alpha]$ は $1,\alpha,\dots,\alpha^{d-1}$ で張られる。
2 ⇒ 1:$\dim_{\mathbb{Q}}\mathbb{Q}[\alpha]=n$ とすると、$n+1$ 個の元 $1,\alpha,\dots,\alpha^n$ は 1 次従属なので、すべては $0$ でない $c_0,\dots,c_n\in\mathbb{Q}$ で $\sum_kc_k\alpha^k=0$ となる。$0$ でない多項式 $\sum_kc_kx^k$ が $\alpha$ を根にもつ。
1 ⇒ 3 と最後の主張:最小多項式 の命題「最小多項式の次数と拡大次数」により、代入写像は体の同型 $\mathbb{Q}[x]/(m_\alpha)\cong\mathbb{Q}(\alpha)$ を引き起こし、$\mathbb{Q}(\alpha)=\mathbb{Q}[\alpha]$、$[\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}]=d$ で、$1,\alpha,\dots,\alpha^{d-1}$ が基底である。
3 ⇒ 2:$\mathbb{Q}[\alpha]$ は有限次元の $\mathbb{Q}$ ベクトル空間 $\mathbb{Q}(\alpha)$ の部分空間である。
1 ⇒ 4:$m_\alpha=x^d+a_{d-1}x^{d-1}+\cdots+a_0$ とし、$d$ 次正方行列 $C$ を、第 $k$ 行($k< d$)は第 $k+1$ 成分だけが $1$ で他は $0$、第 $d$ 行は $(-a_0,-a_1,\dots,-a_{d-1})$ と定める(同伴行列)。$v:=(1,\alpha,\dots,\alpha^{d-1})^{\top}$ とおくと、$Cv$ の第 $k$ 成分($k< d$)は $\alpha^k$、第 $d$ 成分は $-\sum_ka_k\alpha^k=\alpha^d$ なので、$Cv=\alpha v$ である。$v\ne0$(第 1 成分が $1$)なので、$\alpha$ は有理数の行列 $C$ の固有値である。
4 ⇒ 1:$A$ を有理数を成分とする $n$ 次正方行列、$Av=\alpha v$($v\ne0$)とすると $\det(\alpha I-A)=0$ である。$\chi_A(x):=\det(xI-A)$ は有理数係数のモニックな $n$ 次多項式で(行列式の定義の式を展開すればよい)、$\chi_A(\alpha)=0$ である。$\square$
条件 2 と 3 の同値は、一般の体の拡大 $L/K$ で「$K$ 上代数的な元は有限次拡大を生成し、有限次拡大の元はすべて代数的」という形で成り立つ(体の拡大 の命題「有限次拡大と有限生成な代数拡大」、MilFT Proposition 1.30)。条件 4 は次の節で、代数的数どうしの和と積の多項式を具体的に作るのに使う。
$\alpha,\beta$ を代数的数とする。$A$、$B$ をそれぞれ $\alpha$、$\beta$ を固有値にもつ有理数の $d$ 次・$e$ 次の正方行列とすると、$\alpha+\beta$ は $A\otimes I_e+I_d\otimes B$ の、$\alpha\beta$ は $A\otimes B$ の固有値である($\otimes$ は下で定める Kronecker 積)。したがって $\alpha+\beta$、$\alpha\beta$、$-\alpha$ は代数的数であり、$\alpha\ne0$ なら $1/\alpha$ も代数的数である。すなわち $\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{C}$ の部分体である。$A,B$ として最小多項式の同伴行列をとれば $\deg(\alpha+\beta)\le\deg\alpha\cdot\deg\beta$、$\deg(\alpha\beta)\le\deg\alpha\cdot\deg\beta$ である。
ここで $d$ 次正方行列 $A=(a_{ij})$ と $e$ 次正方行列 $B$ の Kronecker 積 $A\otimes B$ は、$(i,j)$ ブロックが $a_{ij}B$ である $de$ 次正方行列であり、ベクトル $v\in\mathbb{C}^d$、$w\in\mathbb{C}^e$ に対し $v\otimes w\in\mathbb{C}^{de}$ は第 $i$ ブロックが $v_iw$ であるベクトルである。$A,B$ の成分が有理数なら $A\otimes B$ の成分も有理数である。
段 1(Kronecker 積の計算規則):$(A\otimes B)(v\otimes w)=(Av)\otimes(Bw)$ である。実際、左辺の第 $i$ ブロックは $\sum_ja_{ij}B(v_jw)=\bigl(\sum_ja_{ij}v_j\bigr)Bw=(Av)_i\,Bw$ で、右辺の第 $i$ ブロックに等しい。
段 2(固有ベクトル):$Av=\alpha v$、$Bw=\beta w$($v,w\ne0$)とする。段 1 より
$$
(A\otimes I_e+I_d\otimes B)(v\otimes w)=(Av)\otimes w+v\otimes(Bw)=(\alpha+\beta)(v\otimes w),\qquad(A\otimes B)(v\otimes w)=\alpha\beta\,(v\otimes w)
$$
である。$v_i\ne0$、$w_j\ne0$ となる $i,j$ をとると $v\otimes w$ の成分 $v_iw_j$ は $0$ でないので、$v\otimes w\ne0$ である。よって $\alpha+\beta$、$\alpha\beta$ は有理数の行列の固有値であり、thm-algnum-char の 4 ⇒ 1 により代数的数である。
段 3(符号と逆数):$-\alpha$ は $-A$ の固有値なので代数的数である。$\alpha\ne0$ とする。$m_\alpha$ は既約なので、定数項が $0$ なら $m_\alpha=x$、すなわち $\alpha=0$ となり矛盾する。よって $m_\alpha$ の同伴行列 $C$(thm-algnum-char の証明)について $a_0\ne0$ である。$Cu=0$ とすると、第 $k$ 行($k< d$)から $u_{k+1}=0$、第 $d$ 行から $-a_0u_1=0$ となり $u=0$ なので、$C$ は正則である。$Cv=\alpha v$ から $C^{-1}v=\alpha^{-1}v$ で、$C^{-1}$ の成分は有理数なので、$1/\alpha$ は代数的数である。$0,1\in\overline{\mathbb{Q}}$ とあわせて、$\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{C}$ の部分体である。
段 4(次数):$A,B$ を $m_\alpha,m_\beta$ の同伴行列とすると $d=\deg\alpha$、$e=\deg\beta$ で、$\alpha+\beta$ は $de$ 次のモニックな有理数係数の多項式 $\chi_{A\otimes I+I\otimes B}$ の根なので、その最小多項式はこれを割り切り、$\deg(\alpha+\beta)\le de$ である。積も同じである。$\square$
$x^2-2$、$x^2-3$ の同伴行列 $A=\begin{pmatrix}0&1\\2&0\end{pmatrix}$、$B=\begin{pmatrix}0&1\\3&0\end{pmatrix}$ をとる。$A\begin{pmatrix}1\\\sqrt2\end{pmatrix}=\sqrt2\begin{pmatrix}1\\\sqrt2\end{pmatrix}$ である。
$$
M:=A\otimes I_2+I_2\otimes B=\begin{pmatrix}0&1&1&0\\3&0&0&1\\2&0&0&1\\0&2&3&0\end{pmatrix},\qquad P:=A\otimes B=\begin{pmatrix}0&0&0&1\\0&0&3&0\\0&2&0&0\\6&0&0&0\end{pmatrix}
$$
の固有多項式を計算すると $\chi_M=x^4-10x^2+1$、$\chi_P=x^4-12x^2+36=(x^2-6)^2$ である。前者は $\sqrt2+\sqrt3$ の最小多項式そのものである。実際、$A$ は固有ベクトル $(1,\pm\sqrt2)^{\top}$ に固有値 $\pm\sqrt2$、$B$ は $(1,\pm\sqrt3)^{\top}$ に $\pm\sqrt3$ をもち、thm-algnum-field の証明の段 2 により $M$ は 4 つの 1 次独立なベクトル $v\otimes w$ に固有値 $\pm\sqrt2\pm\sqrt3$(複号任意)をもつので、$\chi_M=\prod(x\mp\sqrt2\mp\sqrt3)=x^4-10x^2+1$ となる。後者は $\sqrt6$ の最小多項式 $x^2-6$ の 2 乗であり、行列から得た多項式が最小多項式とは限らないことを示す(最小多項式はその既約因子の 1 つである)。
代数的数全体が体をなすことには、ほかに 2 通りの証明が既存の記事にある。
| 証明 | 使う道具 | 得られるもの |
|---|---|---|
| thm-algnum-field | 同伴行列と Kronecker 積 | $\alpha+\beta$、$\alpha\beta$ を根にもつ多項式を具体的に計算できる |
| 体の拡大 の系「代数的な元のなす部分体と推移性」 | $\mathbb{Q}(\alpha,\beta)$ が有限次拡大であること | 一般の体の拡大 $L/K$ で、$K$ 上代数的な元が部分体をなす |
| 超越数 の命題「代数的数全体は体をなす」 | 代数的整数全体が環をなすこと | 分母を払って代数的整数に帰着する |
代数的数を係数とする定数でない多項式の複素数の根は、すべて代数的数である。したがって $\overline{\mathbb{Q}}$ は代数閉体であり、$\mathbb{Q}$ 上代数的な代数閉体、すなわち $\mathbb{Q}$ の代数閉包である。
$f=\sum_{k=0}^nc_kx^k$($c_k\in\overline{\mathbb{Q}}$、$n\ge1$、$c_n\ne0$)とし、$\gamma\in\mathbb{C}$ を $f$ の根とする(代数学の基本定理 により根は存在する)。$K:=\mathbb{Q}(c_0,\dots,c_n)$ は有限個の代数的数で生成されるので $\mathbb{Q}$ の有限次拡大であり(体の拡大 の命題「有限次拡大と有限生成な代数拡大」の 2)、$\gamma$ は $K$ 係数の $0$ でない多項式 $f$ の根なので $K$ 上代数的で、$K(\gamma)/K$ は有限次拡大である。拡大次数の乗法性(拡大次数 の定理「次数の乗法性」)により $[K(\gamma):\mathbb{Q}]=[K(\gamma):K][K:\mathbb{Q}]$ は有限であり、$\mathbb{Q}(\gamma)\subset K(\gamma)$ も有限次拡大なので、thm-algnum-char により $\gamma$ は代数的数である。
よって $f$ は $\overline{\mathbb{Q}}$ の中に根をもつ。$\overline{\mathbb{Q}}$ の定数でない多項式がすべて $\overline{\mathbb{Q}}$ に根をもつので、$\overline{\mathbb{Q}}$ は代数閉体である(代数閉体 の定義「代数閉体」)。$\overline{\mathbb{Q}}$ の元はすべて $\mathbb{Q}$ 上代数的なので、$\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{Q}$ の代数閉包(代数閉体 の定義「体の代数閉包」)である。$\square$
この定理は 代数閉体 の例「代数的数全体のなす体」・命題「代数閉体の中の代数閉包」、MilFT Corollary 5.7(b) にもある。代数閉包は同型を除いてただ 1 つなので(代数閉体 の定理「代数閉包の存在と一意性」)、$\mathbb{Q}$ の代数閉包を $\mathbb{C}$ の中にとったものが $\overline{\mathbb{Q}}$ である。$\overline{\mathbb{Q}}$ は複素共役で閉じており($f$ が有理数係数なら $f(\bar\alpha)=\overline{f(\alpha)}$)、実数である代数的数の全体 $\overline{\mathbb{Q}}\cap\mathbb{R}$ は実閉体である(実閉体 の例「実代数的数の体」)。
$\overline{\mathbb{Q}}$ は可算無限集合である。
整数係数の多項式 $f=\sum_{k=0}^nc_kx^k\ne0$ に対し、その高さを $H(f):=n+\sum_k\lvert c_k\rvert$ と定める。各正の整数 $N$ について、$H(f)\le N$ となる $f$ は有限個しかない(次数も係数の絶対値も $N$ 以下)。それぞれの根は次数以下の個数しかないので、$H(f)\le N$ となる $0$ でない $f$ の根全体 $A_N$ は有限集合で、$A_1\subset A_2\subset\cdots$、$\overline{\mathbb{Q}}=\bigcup_NA_N$ である。$A_1$ の元、次に $A_2\setminus A_1$ の元、…と(各有限集合の中は実部、続いて虚部の小さい順に)並べれば $\overline{\mathbb{Q}}$ の元に番号が付く。$\mathbb{Q}\subset\overline{\mathbb{Q}}$ は無限集合なので、$\overline{\mathbb{Q}}$ は可算無限である。$\square$
各有限集合の中の並べ方を明示したので、この証明は選択公理を使わない(MilFT Proposition 1.33 と同じ筋である)。$\mathbb{C}$ は非可算なので、$\mathbb{C}\setminus\overline{\mathbb{Q}}$、すなわち超越数全体は非可算であり、とくに超越数は存在する(超越数 の命題「代数的数の可算性と超越数の非可算性」)。この論法は個々の数が超越数かどうかについては何も教えない。$e$ や $\pi$ の超越性はそれぞれ Hermite、Lindemann の定理である(超越数 の定理「Lindemann–Weierstrass の定理」)。
最小多項式の係数がすべて整数である代数的数を 代数的整数 という(モニックな整数係数の多項式の根であることと同値。代数的整数 の命題「最小多項式による判定」)。$2\cos(2\pi/7)$(ex-algnum-cos)は代数的整数であり、$\cos(2\pi/7)$ はそうでない。任意の代数的数 $\alpha$ は、$0$ でない整数 $d$ を掛けると代数的整数になる(代数的整数 の命題「代数的数の整数倍」。$\alpha$ が $a_nx^n+\cdots+a_0$ の根なら $d=a_n$ でよい)。したがって $\overline{\mathbb{Q}}$ は、代数的整数全体のなす環(代数的整数 の定理「代数的整数全体のなす環」)の分数全体であり、有理数が整数の分数であることの類似になっている。
| 成り立ちそうな主張 | 反例 | 成り立たない理由 |
|---|---|---|
| 代数的数の列の極限は代数的数 | Liouville 定数 $\sum_{k\ge1}10^{-k!}$ | 部分和は有理数だが、極限は超越数 |
| $\deg(\alpha+\beta)=\deg\alpha\cdot\deg\beta$ | $\alpha=\sqrt2$、$\beta=-\sqrt2$ | $\alpha+\beta=0$ は次数 $1$ |
| 係数を実数にしても同じ概念 | 任意の実数 $r$ | $x-r$ の根なので、実数係数では条件が空になる |
| 代数的数は根号で表せる | $x^5-x-1$ の実数の根 | Galois 群が可解でない |
1 行目:部分和 $\sum_{k=1}^n10^{-k!}$ は有理数、したがって代数的数であるが、その極限 $L$ は超越数である(超越数 の例「Liouville定数」)。満たす性質:各項が代数的数の収束列である。満たさない性質:極限が代数的数である。$\overline{\mathbb{Q}}$ は体の演算では閉じているが、$\mathbb{C}$ の中で閉集合ではない(実際 $\mathbb{Q}$ だけで $\mathbb{R}$ の中で稠密である)。
2 行目:thm-algnum-field が与えるのは上からの評価 $\deg(\alpha+\beta)\le\deg\alpha\cdot\deg\beta$ だけである。$\sqrt2+\sqrt3$ では等号($4=2\cdot2$)だが、$\sqrt2+(-\sqrt2)=0$ では次数 $1<4$ である。積でも $\sqrt2\cdot\sqrt2=2$ は次数 $1$ である。次数は $\mathbb{Q}(\alpha,\beta)$ の中で $\alpha+\beta$ が生成する部分体の次数であり、$\alpha$ と $\beta$ の関係に依存する。
3 行目:「代数的」は基礎体を指定して初めて意味をもつ。$\mathbb{R}$ 係数の多項式を許すと、すべての実数、さらに $(x-z)(x-\bar z)=x^2-2\operatorname{Re}(z)x+\lvert z\rvert^2$ によりすべての複素数が「代数的」になり、定義が何も区別しなくなる(超越数 の例「反例:基礎体によって変わる超越性」)。代数的数の定義では基礎体が $\mathbb{Q}$ であることが本質的である。
4 行目:$x^5-x-1$ は $\mathbb{Q}$ 上既約で($3$ を法として既約)、実数の根を 1 つだけもつ(約 $1.1673$)。この根は次数 $5$ の代数的数であるが、$x^5-x-1$ の Galois 群は 5 次対称群 $S_5$ であり(MilFT Example 4.30)、標数 $0$ の体の上の方程式が根号で解けることは Galois 群が可解であることと同値で(MilFT Theorem 3.28、証明は Theorem 5.34)、$S_5$ は可解でないので、この根は有理数から四則演算と冪根をとる操作を有限回繰り返しても得られない。なお、$x^5-x-1$ は既約なので、1 つの根が冪根の拡大の列に入れば、その列の Galois 閉包(共役な列の合成)も冪根の拡大の列で、すべての根を含む。したがって 1 つの根が冪根で表せれば方程式が冪根で解けることになり、上の定理に反する。定理の証明はここでは述べず、出典に譲る。満たす性質:代数的数である。満たさない性質:根号で表せる。
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