等差数列位相(arithmetic progression topology)とは、整数全体 $\mathbb Z$ の上で、公差が正の整数である等差数列 $a+b\mathbb Z$ の全体を開基とする位相であり、H. Furstenberg が素数の無限性の位相的証明に用いたことから Furstenberg の位相とも呼ばれる。空でない開集合はすべて無限集合で、各等差数列は開かつ閉である。$x\ne y$ のとき $d(x,y)=2^{-\max\{j\ge1:\ j!\mid x-y\}}$ と定めた超距離で距離化でき、孤立点をもたない可算な距離空間なので有理数空間と同相であり、コンパクトでも局所コンパクトでもない。Dirichlet の算術級数定理により、正の素数全体の閉包は正の素数全体に $1$ と $-1$ を加えた集合になる。
整数全体 $\mathbb Z$ の上で、公差が正の等差数列 $a+b\mathbb Z$ を開集合の基本単位にとると、位相が一つ定まる。これを等差数列位相という。H. Furstenberg はこの位相を使って、素数が無限に存在することを数行で証明した(素数の無限性)。その証明が使うのは「空でない開集合は無限集合である」「等差数列は開集合であると同時に閉集合でもある」という二つの性質だけである。
空間として見ると、等差数列位相の $\mathbb Z$ にはそれ以上の性質がある。階乗を使った超距離空間の距離で距離化でき、孤立点をもたない可算な距離空間なので、通常の位相の有理数全体 $\mathbb Q$ と同相になる。コンパクトでも局所コンパクトでもなく、空でない連結な部分集合は 1 点だけである。さらに、正の素数全体の閉包は、正の素数のほかに $1$ と $-1$ だけを含む(Dirichletの算術級数定理 による)。この記事ではこれらを証明し、公差を素数 $p$ の冪に限った $p$ 進位相と比べる。
$a\in\mathbb Z$ と整数 $b\ge1$ に対し、公差 $b$ の等差数列(等差数列と等比数列)を
$$
S(a,b):=a+b\mathbb Z=\{a+bk\mid k\in\mathbb Z\}
$$
と書く。$c\in S(a,b)$ なら $c-a\in b\mathbb Z$ なので $S(c,b)=S(a,b)$ である。$S(a,b)$ は $b\mathbb Z$ の剰余類であり、$b$ 個の集合 $S(0,b),S(1,b),\dots,S(b-1,b)$ は $\mathbb Z$ を互いに交わらない部分に分ける。
$\mathbb Z$ の部分集合 $U$ が開であるとは、任意の $a\in U$ に対し、整数 $b\ge1$ で $S(a,b)\subset U$ となるものが存在することをいう。開な集合の全体を $\mathbb Z$ 上の等差数列位相(arithmetic progression topology)といい、この位相を入れた $\mathbb Z$ を以下 $X$ と書く。
Steen–Seebach はこの空間を evenly spaced integer topology と呼んでいる(SS78 Example 58, pp. 80–81)。
$S(a,b)\cap S(a',b')$ は空であるか、その任意の元 $c$ について $S(c,\operatorname{lcm}(b,b'))$ に等しい。
$c$ が共通部分に属するとする。上の注意により $S(a,b)=S(c,b)$、$S(a',b')=S(c,b')$ なので、共通部分は $c+(b\mathbb Z\cap b'\mathbb Z)$ である。整数が $b$ と $b'$ の両方で割り切れることと、最小公倍数 $\operatorname{lcm}(b,b')$ で割り切れることは同値なので、$b\mathbb Z\cap b'\mathbb Z=\operatorname{lcm}(b,b')\mathbb Z$ であり、共通部分は $S(c,\operatorname{lcm}(b,b'))$ に等しい。
1:空集合は条件を自明に満たし、$\mathbb Z=S(a,1)$ も満たす。開集合の族の和集合の点 $a$ はある成員 $U$ に属し、$S(a,b)\subset U$ となる $b$ がある。二つの開集合 $U,V$ の共通部分の点 $a$ について $S(a,b)\subset U$、$S(a,b')\subset V$ とすると、$S(a,bb')\subset S(a,b)\cap S(a,b')\subset U\cap V$ である。$c\in S(a,b)$ なら $S(c,b)=S(a,b)$ なので $S(a,b)$ は開であり、開集合の定義から $\{S(a,b)\}$ は開基である。
2:空でない開集合は点 $a$ とともに無限集合 $S(a,b)$ を含む。一点集合は開でないので、孤立点はない。
3:$S(a,b)$ の補集合は $S(a+1,b)\cup\cdots\cup S(a+b-1,b)$ で開なので、$S(a,b)$ は閉である。
4:$b>|x-y|\ge1$ なら $b$ は $x-y$ を割り切らないので、$S(x,b)$ と $S(y,b)$ は $b\mathbb Z$ の異なる剰余類であり、交わらない。3 と合わせて、$X$ は開かつ閉な集合からなる開基をもつ Hausdorff 空間である。
Furstenberg の証明は 2 と 3 だけを使う。$\pm1$ 以外の整数はどれもある素数 $p$ で割り切れるので $\mathbb Z\setminus\{-1,1\}=\bigcup_pS(0,p)$ であり、素数が有限個なら右辺は有限個の閉集合の和集合として閉になり、空でない有限集合 $\{-1,1\}$ が開集合になって 2 に反する(詳しくは 素数の無限性 の節「Furstenbergの位相的証明」)。素数は無限にあるので、実際には $\bigcup_pS(0,p)$ は閉集合でない。この食い違いは、下の thm-apt-primes-closure で素数の集合の閉包を求めると、具体的に見える。
0 でない整数 $t$ について
$$
v(t):=\max\{\,j\ge1\mid j!\text{ が }t\text{ を割り切る}\,\}
$$
とおく。$1!=1$ はすべての整数を割り切るので右辺の集合は空でなく、$j!>|t|$ となる $j$ では $j!\nmid t$ なので最大値は有限である。$i\le j$ なら $i!\mid j!$ だから、$j!$ が $t$ を割り切る $j$ の全体はちょうど $\{1,2,\dots,v(t)\}$ である。$x,y\in\mathbb Z$ に対し
$$
d(x,y):=\begin{cases}2^{-v(x-y)}&(x\ne y),\\ 0&(x=y)\end{cases}
$$
と定める。
$d$ は $\mathbb Z$ 上の超距離である。すなわち距離の公理を満たし、さらに任意の $x,y,z\in\mathbb Z$ について
$$
d(x,z)\le\max\{d(x,y),\,d(y,z)\}
$$
が成り立つ。整数 $r\ge1$ と $x\in\mathbb Z$ について、開球は
$$
B(x,2^{-r}):=\{y\mid d(x,y)<2^{-r}\}=S\bigl(x,(r+1)!\bigr)
$$
である。$d$ の定める位相は等差数列位相に一致する。
$d(x,y)=0$ と $x=y$ は同値であり、$v(-t)=v(t)$ から $d$ は対称である。強三角不等式を示す。$x=y$ または $y=z$ なら明らかなので、$s:=x-y\neq0$、$t:=y-z\neq0$ とし、$k:=\min\{v(s),v(t)\}$ とおく。$k\le v(s)$ なので $k!\mid s$、同様に $k!\mid t$ であり、$k!\mid s+t=x-z$ である。$x=z$ なら $d(x,z)=0$ で不等式は成り立つ。$x\ne z$ なら $v(x-z)\ge k$ なので
$$
d(x,z)=2^{-v(x-z)}\le2^{-k}=\max\{d(x,y),d(y,z)\}
$$
である。強三角不等式から通常の三角不等式も従うので、$d$ は距離である。
開球:$y\ne x$ について、$d(x,y)<2^{-r}$ は $v(x-y)\ge r+1$、すなわち $(r+1)!\mid x-y$ と同値である。$y=x$ も $S(x,(r+1)!)$ に属するので、$B(x,2^{-r})=S(x,(r+1)!)$ である。
位相の一致:$U$ が $d$ について開とする。$x\in U$ に対し $B(x,\varepsilon)\subset U$ となる $\varepsilon>0$ があり、$2^{-r}<\varepsilon$ となる $r\ge1$ をとると $S(x,(r+1)!)=B(x,2^{-r})\subset U$ なので、$U$ は等差数列位相で開である。逆に $U$ が等差数列位相で開とし、$x\in U$、$S(x,b)\subset U$ とする。$b$ は $(b+1)!$ を割り切るので $S(x,(b+1)!)\subset S(x,b)$ であり、$B(x,2^{-b})=S(x,(b+1)!)\subset U$ となる。よって $U$ は $d$ について開である。
証明で階乗の性質として使ったのは、「最初の項は 1 である」「どの正の整数もある項を割り切る」「各項は次の項を割り切る」の三つだけである。$j!$ の代わりに $\operatorname{lcm}(1,2,\dots,j)$ を使っても、同じ位相を定める超距離が得られる。
thm-apt-metric により $X$ は距離化可能空間なので、距離空間の一般的な性質(正規空間であることなど)をもつ。そのほかの性質を表にまとめる。
| 性質 | $X$ で | 根拠 |
|---|---|---|
| Hausdorff・零次元 | 成り立つ | prop-apt-basic の 4 |
| 第 2 可算・Lindelöf空間 | 成り立つ | 開基 $\{S(a,b)\}$ は各 $b$ について $b$ 個で可算。$X$ 自身も可算 |
| 距離化可能・正規 | 成り立つ | thm-apt-metric |
| パラコンパクト空間 | 成り立つ | prop-apt-refinement |
| 孤立点をもたない | 成り立つ | prop-apt-basic の 2 |
| 自分自身の中で第 1 類 | 成り立つ | 一点集合は閉で内部が空(疎集合)であり、$X$ はその可算個の和集合 |
| 完全距離化可能 | 成り立たない | 上の行と Baireの範疇定理。$d$ が完備でないことは prop-apt-noncompact |
| 可算コンパクト・コンパクト | 成り立たない | prop-apt-noncompact |
| 局所コンパクト | 成り立たない | prop-apt-not-locally-compact |
| 連結・局所連結 | 成り立たない | prop-apt-components |
| 開集合の閉包がつねに開 | 成り立たない | ex-apt-extremal |
| $\mathbb Q$ と同相 | 成り立つ | cor-apt-rationals |
| 加法・乗法が連続 | 成り立つ | $S(x,b)+S(y,b)\subset S(x+y,b)$、$S(x,b)\cdot S(y,b)\subset S(xy,b)$ |
最後の行は、$(x+bs)(y+bt)=xy+b(xt+ys+bst)$ からわかる。加法の逆元 $x\mapsto-x$ も $S(x,b)$ を $S(-x,b)$ に移すので連続であり、$X$ は Hausdorff な位相環である。
$X$ の任意の開被覆 $\mathcal U$ に対し、互いに交わらない開かつ閉な集合からなる被覆 $\mathcal V$ で、各成員がある $U\in\mathcal U$ に含まれるものが存在する。特に $X$ はパラコンパクトである。
要点:各点 $x$ について、$S(x,r!)$ が $\mathcal U$ のある成員に含まれる最小の $r$ を選ぶ。選んだ二つの剰余類は、交われば一方が他方を含み、最小性から一致するので、互いに交わらない。
各 $x$ について、$S(x,r!)$ がある $U\in\mathcal U$ に含まれる最小の $r\ge1$ を $r(x)$ とし($x$ を含む $U$ と $S(x,b)\subset U$ をとれば $r=b$ で $S(x,b!)\subset U$ となるので存在する)、$\mathcal V:=\{S(x,r(x)!)\mid x\in\mathbb Z\}$ とおく。$\mathcal V$ は $X$ を覆い、各成員は開かつ閉で、ある $U$ に含まれる。$S(x,r(x)!)$ と $S(y,r(y)!)$ が交わり、$r(x)\le r(y)$ とする。$r(x)!\mid r(y)!$ なので lem-apt-intersection により $S(y,r(y)!)\subset S(x,r(x)!)$ であり、$y\in S(x,r(x)!)=S(y,r(x)!)$ である。$S(y,r(x)!)$ はある $U$ に含まれるので、$r(y)$ の最小性から $r(y)\le r(x)$、よって $r(x)=r(y)$ で、二つの剰余類は一致する。したがって $\mathcal V$ の成員は互いに交わらない。各点の近傍としてその点を含む $\mathcal V$ の成員をとれば、それは $\mathcal V$ の他の成員と交わらないので、$\mathcal V$ は局所有限な開細分である。
コンパクトでないことを示すには、集積点をもたない無限集合を一つ見つければよい。階乗の部分和がその例になる。
1:$m>n$ なら $x_m-x_n=(n+1)!+\cdots+m!$ は $(n+1)!$ で割り切れるので、$d(x_m,x_n)\le2^{-(n+1)}$ である。
2:$y\in\mathbb Z$ を固定する。$N\ge3$ を $(N-1)!>|y|$ となるようにとる。$n\ge2$ について $1!+\cdots+(n-1)!\le(n-1)\cdot(n-1)!< n!$ なので、$n\ge1$ で $n!\le x_n<2\cdot n!$ である。$n=N-1$ に使うと
$$
0<(N-1)!-|y|\le x_{N-1}-y<2\cdot(N-1)!+|y|<3\cdot(N-1)!\le N!
$$
であり、$N!$ は $x_{N-1}-y$ を割り切らない。$n\ge N$ なら $x_n-x_{N-1}=N!+\cdots+n!$ は $N!$ で割り切れるので、$n\ge N-1$ のすべてについて $x_n-y$ は $N!$ で割り切れず、$x_n\notin S(y,N!)$ である。よって $S(y,N!)\cap A\subset\{x_1,\dots,x_{N-2}\}$ は有限集合である。この有限集合から $y$ を除いたものは閉集合なので($X$ は Hausdorff)、それを $S(y,N!)$ から除くと、$A$ と $y$ 以外で交わらない $y$ の開近傍が得られる。したがって $y$ は $A$ の集積点でない。$(x_n)$ が $y$ に収束するなら $n\ge N-1$ の $x_n$ が $S(y,N!)$ に入るはずなので、収束しない。
3:2 により $A$ は集積点をもたないので、$A$ の部分集合はすべて閉であり、$A$ は無限個の点からなる閉かつ離散な部分集合である。可算コンパクト空間の閉かつ離散な部分集合は有限なので(可算コンパクト空間 の命題「閉離散部分集合は有限」)、$X$ は可算コンパクトでない。コンパクト空間は可算コンパクトなので、$X$ はコンパクトでもない。1 と 2 から、$(x_n)$ は収束しない Cauchy 列であり、$d$ は完備でない。
$X$ には、$d$ 以外にも同じ位相を定める距離が多くあるが、どれも完備にはならない。完備な距離で距離化できるなら Baireの範疇定理 により $X$ は可算個の疎集合の和集合になりえないが、$X=\bigcup_{n\in\mathbb Z}\{n\}$ は可算個の疎集合の和集合だからである。
$a\in\mathbb Z$、$b\ge1$ について、写像 $\varphi\colon X\to S(a,b)$、$\varphi(x)=a+bx$ は部分空間 $S(a,b)$ への同相写像である。$X$ のどの点もコンパクトな近傍をもたない。
要点:$\varphi$ による開基の逆像は合同式の解の集合で、空か等差数列なので開であり、$\varphi(S(c,m))=S(a+bc,bm)$ なので $\varphi$ は開写像である。コンパクトな近傍 $K$ があれば、$K$ の中の閉集合 $S(y,b)$ がコンパクトになるが、それは $X$ と同相なので prop-apt-noncompact に反する。
$\varphi$ は全単射である。部分空間 $S(a,b)$ の開基は $S(c,m)\cap S(a,b)$ の形の集合であり、その $\varphi$ による逆像は、合同式 $bx\equiv c-a\pmod m$ の解の集合である。解 $x_0$ が一つあれば、$x$ が解であることは $m\mid b(x-x_0)$、すなわち $m/\gcd(b,m)$ が $x-x_0$ を割り切ることと同値なので、解の集合は空か $S(x_0,m/\gcd(b,m))$ であり、開である。よって $\varphi$ は連続である。また $\varphi(S(c,m))=S(a+bc,bm)$ は開なので、$\varphi$ は開写像であり、同相写像である。
点 $y$ がコンパクトな近傍 $K$ をもつとすると、$y\in S(y,b)\subset K$ となる $b$ がある。$S(y,b)$ は閉集合なので $K$ の閉部分集合としてコンパクトである。しかし前半により $S(y,b)$ は $X$ と同相であり、prop-apt-noncompact により $X$ はコンパクトでない。これは矛盾である。
部分集合 $C$ が相異なる 2 点 $x,y$ を含むとする。prop-apt-basic の 4 の $S(x,b)$ は開かつ閉で、$x$ を含み $y$ を含まないので、$C=(C\cap S(x,b))\cup(C\setminus S(x,b))$ は $C$ を空でない二つの開集合に分け、$C$ は連結でない。連結な空間の連続像は連結なので一点である。局所連結なら各点が連結な開近傍をもつが、それは一点集合で、prop-apt-basic の 2 に反する。
$r\ge0$ について $L_r:=\{2^ru\mid u\text{ は奇数}\}=S(2^r,2^{r+1})$ とおく。$0$ でない整数は $2^ru$($u$ は奇数)とただ一通りに書けるので、$L_0,L_1,\dots$ は互いに交わらず、和集合は $\mathbb Z\setminus\{0\}$ である。開集合 $A:=\bigcup_{r\text{ は偶数}}L_r$ と $B:=\bigcup_{r\text{ は奇数}}L_r$ は交わらない。$b\ge1$ を $b=2^ew$($w$ は奇数)と書くと、$r\ge e$ のとき $2^rw\in S(0,b)\cap L_r$ なので、$0$ のどの近傍 $S(0,b)$ も $A$ と $B$ の両方と交わる。$B$ は $A$ と交わらない開集合なので $B$ の点は $A$ の閉包に入らず、$\overline A=A\cup\{0\}$ である。$0$ のどの近傍も $B$ と交わるので $\overline A$ は $0$ の近傍でなく、開集合でない。
$X$ は通常の位相の $\mathbb Q$ と同相である。
$X$ は空でない可算な距離化可能空間で(thm-apt-metric)、孤立点をもたない(prop-apt-basic の 2)。空でない可算な距離化可能空間で孤立点をもたないものは $\mathbb Q$ と同相である(有理数空間 の定理「Sierpiński の定理」)。
この同相写像は整数の算術とはまったく関係がない。それでも、上の表の性質のうち位相だけで決まるもの(加法・乗法の行を除く)は、成り立つかどうかが $\mathbb Q$ でも同じである。たとえば $\mathbb Q$ が局所コンパクトでないことと prop-apt-not-locally-compact は、同じ事実の二つの見え方である。
連結な部分集合が一点しかないので、道や球面からの写像は定数になり、ホモトピー群と特異ホモロジーは離散空間 $\mathbb Z$ と同じになる。それでも $X$ は離散空間とホモトピー同値ではない。
要点:連結な空間からの写像は定数なので(prop-apt-components)、球面からの写像と特異単体はすべて定数であり、特異鎖複体は各点の鎖複体の直和になる。恒等写像から定数写像へのホモトピーがあると、各点の軌道が定数なので恒等写像自身が定数になり、矛盾する。
1:prop-apt-components により弧状連結成分は一点集合である。$n\ge1$ の球面 $S^n$ は連結なので、基点付き写像 $S^n\to X$ は定数であり、$\pi_n(X,x)$ は自明である。
2:標準単体 $\Delta^n$ は連結なので、特異単体 $\sigma\colon\Delta^n\to X$ はすべて定数である。点 $x$ に値をとる定数の $n$ 単体の面はまた $x$ に値をとる定数の単体なので、特異鎖複体は鎖複体として $C_\bullet(X;G)=\bigoplus_{x\in\mathbb Z}C_\bullet(\{x\};G)$ と分かれる。ホモロジーは直和と交換するので、$H_n(X;G)\cong\bigoplus_xH_n(\{x\};G)$ であり、一点の特異鎖複体は各次数で $G$ であり、境界写像は $n$ が偶数($n\ge2$)のとき恒等写像、奇数のとき $0$ なので(特異ホモロジー)、一点のホモロジーは $H_0=G$、$n\ge1$ で $H_n=0$ であり、結論を得る。
3:恒等写像から定数写像 $c$ へのホモトピー $H\colon X\times[0,1]\to X$ があるとする。各 $x$ について $t\mapsto H(x,t)$ は $[0,1]$ からの連続写像なので定数であり、$c=H(x,1)=H(x,0)=x$ がすべての $x$ で成り立つ。$X$ は 2 点以上を含むので矛盾である。
離散位相の $\mathbb Z$ を $\mathbb Z_{\mathrm{disc}}$ と書き、恒等写像 $\iota\colon\mathbb Z_{\mathrm{disc}}\to X$ を考える。離散空間からの写像なので連続であり、prop-apt-homology の 1 により弧状連結成分の全単射を引き起こし、すべてのホモトピー群は両側で自明なので、$\iota$ は弱ホモトピー同値である。しかし $\iota$ はホモトピー同値でない。実際、連続写像 $g\colon X\to\mathbb Z_{\mathrm{disc}}$ で $g\circ\iota$ が恒等写像とホモトピックなものがあるとすると、$\mathbb Z_{\mathrm{disc}}$ の中の道は定数なので $g\circ\iota$ は恒等写像そのものであり、$g$ は写像としては恒等写像になる。ところが $\{0\}$ は $\mathbb Z_{\mathrm{disc}}$ で開だが $X$ で開でないので、$g$ は連続でない。
このことから、$X$ はどの CW 複体ともホモトピー同値でなく、Whiteheadの定理 で CW 複体の仮定を外せないことの例になる。
$X$ が CW 複体 $W$ とホモトピー同値写像 $h\colon X\to W$ で結ばれるなら、$h\circ\iota$ は CW 複体の間の弱ホモトピー同値なので Whitehead の定理によりホモトピー同値であり、$h$ のホモトピー逆写像を $h'$ とすると $\iota$ は $h'\circ(h\circ\iota)$ とホモトピックであり、ホモトピー同値の合成としてホモトピー同値になってしまう。
正の素数の全体を $P$、そのうち $4$ で割って $3$ 余るものの全体を $P_3$ とする。$P_3$ が無限集合であることは、Euclid と同じ型の初等的な議論で示せる(素数の無限性)。
閉包は、集合とその集積点全体との和集合である。
(a) $P\cup\{1,-1\}$ に属さない $y$ は $P$ の閉包に入らない。このような $y$ は $0$ であるか、$|y|\ge2$ で正の素数でない。どちらの場合も $y$ を割り切る素数 $p$ がとれ($y=0$ なら $p=2$)、$y\ne p$ である。$m:=|p-y|\ge1$ とおくと、$S(y,pm)\subset S(y,p)=p\mathbb Z$ に属する素数は $p$ だけであり、$pm\ge2m>|p-y|$ なので $pm$ は $p-y$ を割り切らず、$p\notin S(y,pm)$ である。よって $S(y,pm)$ は $P$ と交わらない $y$ の近傍である。
(b) 素数 $p$ の近傍 $S(p,p)=p\mathbb Z$ と $P$ の共通部分は $\{p\}$ なので、$p$ は $P$ の中で孤立しており、$P$ の集積点でない。
(c) $\varepsilon\in\{1,-1\}$ と $b\ge1$ について、$\varepsilon$ と $b$ は互いに素なので、Dirichletの算術級数定理 により $q\equiv\varepsilon\pmod b$ となる素数 $q$ が(無限に)存在する。$q\in S(\varepsilon,b)\cap P$ かつ $q\ne\varepsilon$ なので、$\varepsilon$ のどの近傍も $\varepsilon$ 以外の $P$ の点を含み、$\varepsilon$ は $P$ の集積点である。(a)(b)(c) から 1 が従う。
2:$P_3\subset P$ なので、1 により $P_3$ の集積点は $\pm1$ に限られる。$S(1,4)$ は $4$ で割って $3$ 余る数を含まないので、$1$ は $P_3$ の集積点でない。$-1$ については、$b\ge1$ に対し $M:=\operatorname{lcm}(4,b)$ とおく。$-1$ と $M$ は互いに素なので、Dirichlet の算術級数定理により $q\equiv-1\pmod M$ となる素数 $q$ がある。$4\mid M$ なので $q\equiv-1\equiv3\pmod 4$、$b\mid M$ なので $q\in S(-1,b)$ であり、$q\in P_3$、$q\ne-1$ である。よって $-1$ は $P_3$ の集積点である。
$P$ も $P_3$ も無限集合だが集積点をもつので、prop-apt-noncompact の集合 $A$ の代わりにはならない。(a) と (b) は素因数分解だけで示せる。$\pm1$ が閉包に入ることには、法 $b$ で $\pm1$ と合同な素数の存在が、すべての $b$ について要る。仮に素数が $p_1,\dots,p_s$ だけなら、$S(\pm1,p_1\cdots p_s)$ の元はどの $p_i$ でも割り切れないので素数でなく、$\pm1$ は閉包に入らないはずである。1 はこれと両立しないので、Furstenberg の証明の結論を精密にした形になっている。
素数 $p$ を固定する。公差を $p$ の冪 $p^k$($k\ge0$)に限って同じように開集合を定めると、$\mathbb Z$ 上の $p$ 進位相 が得られる(SS78 Example 59, pp. 81–82)。この空間を $X_p$ と書く。0 でない整数 $t$ の p進付値 を $v_p(t)=\max\{k\ge0\mid p^k\mid t\}$ とし、$d_p(x,y):=2^{-v_p(x-y)}$($x\ne y$)、$d_p(x,x):=0$ とおく。
要点:1 は thm-apt-metric と同じ計算、2 は $p^k$ が $q$ で割り切れないこと、3 は公差の素因数分解による $S(a,b)=\bigcap_iS(a,p_i^{e_i})$、4 は Sierpiński の定理による。
1:$k\le\min\{v_p(s),v_p(t)\}$ なら $p^k\mid s+t$ なので $v_p(s+t)\ge\min\{v_p(s),v_p(t)\}$ であり、thm-apt-metric の証明と同じく強三角不等式が従う。$y\ne x$ について $d_p(x,y)<2^{-k}$ は $v_p(x-y)\ge k+1$ と、$d_p(x,y)\le2^{-k}$ は $v_p(x-y)\ge k$ と同値である。$x$ を中心とする開球は $S(x,p^{k})$($k\ge1$)か $\mathbb Z=S(x,p^0)$ であり、これらは $X_p$ での $x$ の近傍の基をなすので、$d_p$ の位相は $X_p$ の位相である。
2:$X_p$ の開集合は等差数列位相でも開なので、恒等写像は連続である。$q\mathbb Z=S(0,q)$ は $X$ で開である。$0$ の $X_p$ での近傍はある $S(0,p^k)$ を含み、$p^k\in S(0,p^k)$ は $q$ で割り切れないので、$q\mathbb Z$ は $X_p$ で $0$ の近傍でない。
3:$b=p_1^{e_1}\cdots p_s^{e_s}$ と素因数分解すると、$b$ が $x-a$ を割り切ることと各 $p_i^{e_i}$ が割り切ることは同値なので $S(a,b)=S(a,p_1^{e_1})\cap\cdots\cap S(a,p_s^{e_s})$ である。よって $S(a,b)$ は各 $p$ 進位相の開集合の有限個の共通部分であり、すべての $p$ 進位相を含む位相は等差数列位相を含む。逆に 2 により等差数列位相は各 $p$ 進位相を含む。
4:$X_p$ は空でない可算な距離化可能空間で、空でない開集合は無限集合なので孤立点をもたない。cor-apt-rationals と同じく Sierpiński の定理を使う。
2 と 4 から、恒等写像は同相写像でないが、$X$ と $X_p$ は抽象的な位相空間としては同相である。同相写像は数の並びを大きく入れ替える。
$p$ 進位相では素数の集合の閉包が大きくなる。$X_p$ での $P$ の閉包は $\{y\mid p\nmid y\}\cup\{p\}$ であり、thm-apt-primes-closure の $P\cup\{1,-1\}$ よりずっと大きい。
$p$ で割り切れない整数 $y$ と $k\ge0$ について、$y$ と $p^k$ は互いに素なので Dirichlet の算術級数定理により $S(y,p^k)$ は素数を含み、$y$ は閉包に入る。$p$ で割り切れる $y\ne p$ は、$p^k$ が $y-p$ を割り切らない $k\ge1$ をとると $S(y,p^k)\subset p\mathbb Z$ が素数を含まないので、閉包に入らない。
$d_p$ は $p$ 進絶対値の距離 $|x-y|_p=p^{-v_p(x-y)}$ と $d_p=|x-y|_p^{\log2/\log p}$ の関係にあるので、同じ Cauchy 列と同じ収束をもつ。$\mathbb Z$ は $\mathbb Z_p$ の稠密な部分集合で、$\mathbb Z_p$ は $|\cdot|_p$ について完備なので、$(\mathbb Z,d_p)$ の完備化は $\mathbb Z_p$ である。
等差数列位相の性質が、どの条件で崩れるかを比べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 公差 $b$ がすべての正の整数をわたること | 公差を $p$ の冪に限った $p$ 進位相 $X_p$ | $p$ と異なる素数 $q$ について $q\mathbb Z$ が開であること。素数の集合の閉包が $P\cup\{1,-1\}$ であること |
| 開集合が等差数列の和集合に限られること | 離散位相の $\mathbb Z$ | 孤立点をもたないこと、$\mathbb Q$ と同相であること、自分自身の中で第 1 類であること |
| 等差数列がすべて開であること | 補有限位相の $\mathbb Z$ | Hausdorff であること(空でない開集合どうしがつねに交わる) |
離散位相では一点集合が開なので孤立点ばかりであり、空でない集合はどれも内部が空でないので、疎集合は空集合だけで、空でない空間は第 1 類にならない。補有限位相は等差数列位相より粗く(有限集合は $X$ で閉なので、その補集合は $X$ で開である)、$T_1$ 空間だが Hausdorff でない。
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