黄金比(golden ratio)とは、2 次方程式 $x^2=x+1$ の正の根 $\varphi=(1+\sqrt5)/2=1.618\ldots$ のことであり、線分を全体と長い部分の比が長い部分と短い部分の比に等しくなるように分けたときの比(Euclid の外中比)である。無理数で、$1/\varphi=\varphi-1$、$\varphi^n=F_n\varphi+F_{n-1}$($F_n$ は Fibonacci 数)を満たす。連分数展開は $[1;1,1,\dots]$、収束子は $F_{n+2}/F_{n+1}$ である。有理数で近似しにくく、$|\varphi-p/q|<1/(cq^2)$ の解は $c>\sqrt5$ なら有限個しかない。一辺 $1$ の正五角形の対角線の長さは $\varphi$ で、$\cos36^\circ=\varphi/2$ である。
前提知識: 無理数, 連分数, Fibonacci数, 相似
長さ $1$ の線分を 2 つに分けて、全体と長い部分の比が、長い部分と短い部分の比に等しくなるようにしたい。長い部分を $s$ とすると $1:s=s:(1-s)$、すなわち $s^2+s-1=0$ であり、$s=\frac{\sqrt5-1}{2}=0.618\ldots$ となる。このときの比 $1:s$ の値
$$
\frac1s=\frac{1+\sqrt5}{2}=1.6180339887\ldots
$$
が黄金比である。同じ数は身近な計算にも現れる。Fibonacci数 $1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,\dots$ の隣り合う項の比 $\frac{89}{55}=1.61818\ldots$ は黄金比に近く、正五角形の対角線の長さは一辺のちょうど黄金比倍である(thm-gr-pentagon)。また、縦横の比が黄金比の長方形から正方形を 1 つ切り取ると、残りの長方形はもとの長方形と相似になる(ex-gr-rectangle)。
実数
$$
\varphi:=\frac{1+\sqrt5}{2}
$$
を 黄金比(golden ratio)という。$\varphi$ は 2 次方程式 $x^2=x+1$ の正の根である。
$x^2-x-1=0$ の 2 根は $\frac{1\pm\sqrt5}{2}$ であり、正のものが $\varphi$、負のものを
$$
\psi:=\frac{1-\sqrt5}{2}=-0.6180339887\ldots
$$
と書く(Fibonacci数 の記事と同じ記号)。$\varphi$ は次のように比の言葉でも特徴づけられる。正の数 $a>b>0$ について
$$
\frac{a+b}{a}=\frac ab
$$
が成り立つことと、$\frac ab=\varphi$ であることは同値である。実際 $r:=a/b>1$ とおくと左辺は $1+\frac1r$ なので、条件は $r^2=r+1$ と同値であり、その正の根は $\varphi$ だけである。この比で線分を分けることを Euclid の『原論』は「外中比に分ける」と呼び(Hea08 Vol. II 第 VI 巻 定義 3、p. 188)、その作図を与えている(同 Vol. II 第 VI 巻 命題 30、p. 267)。
黄金比の長方形から正方形を切り取ると、また黄金比の長方形が残る。これを無限に繰り返せることが、連分数展開 $\varphi=[1;1,1,1,\dots]$ のすべての部分商が $1$ であることに対応する(thm-gr-continued-fraction)。部分商が大きいほど収束子の近似はよくなるので、すべての部分商が最小の $1$ である $\varphi$ は、有理数による近似の精度の定数がすべての無理数の中で最も悪いという意味で、最も近似しにくい無理数の一つである(thm-gr-hurwitz-optimal とその後の Hurwitz の定理の説明)。その収束子は隣り合う Fibonacci 数の比であり、Fibonacci 数列が「約 $1.618$ 倍ずつ」増えることもここから説明される。
横 $\varphi$・縦 $1$ の長方形から一辺 $1$ の正方形を切り取ると、横 $1$・縦 $\varphi-1$ の長方形が残る。$\varphi(\varphi-1)=\varphi^2-\varphi=1$ なので $\frac{1}{\varphi-1}=\varphi$ であり、残りの長方形の長辺と短辺の比はふたたび $\varphi$ である。したがって残りはもとの長方形と相似であり、同じ切り取りを何度でも続けられる。逆に、長辺と短辺の比が $r>1$ の長方形から正方形を 1 つ切り取った残りがもとと相似であれば、$\frac{1}{r-1}=r$($1< r<2$ の場合)より $r^2=r+1$、すなわち $r=\varphi$ である($r\ge2$ の場合は残りの長辺と短辺の比 $r-1$ が $r$ に等しくなりえない)。
A 判・B 判の用紙の縦横の比は $\sqrt2:1$ で、半分に折ると同じ比の長方形になる。しかし正方形を 1 つ切り取った残りは、辺が $1$ と $\sqrt2-1$ で、比は $\frac{1}{\sqrt2-1}=\sqrt2+1=2.414\ldots$ となり、$\sqrt2$ ではない。つまり「正方形を切り取ると相似な長方形が残る」性質は $\sqrt2$ の長方形にはない。残りの長方形からは正方形が $2$ 個切り取れ、それ以後は $2$ 個ずつ切り取る操作が繰り返される。これは連分数展開 $\sqrt2=[1;2,2,2,\dots]$(連分数 の記事の例「平方根の展開」)に対応する。満たす性質:切り取りの操作は無限に続く(比が無理数)。満たさない性質:1 回の切り取りでもとと相似になる。破る含意:「無理数の比の長方形は正方形を 1 つ切り取ると相似な長方形を残す」は成り立たない。これが成り立つのは比が $\varphi$ のときだけである(ex-gr-rectangle)。
正二十面体の 12 個の頂点は $(0,\pm1,\pm\varphi)$ とその座標を巡回的にずらした点としてとれ、正十二面体の 20 個の頂点も $\varphi$ と $1/\varphi$ を使って書ける(正多面体 の記事の命題「5種類の正多面体の座標」)。正十二面体の面は正五角形であり、その対角線と辺の比が $\varphi$ であること(thm-gr-pentagon)が座標に $\varphi$ が現れる理由の一つである。
1:$\varphi,\psi$ は $x^2-x-1=0$ の 2 根なので、根と係数の関係から $\varphi+\psi=1$、$\varphi\psi=-1$ であり、$\varphi^2=\varphi+1$ を $\varphi$ で割ると $\varphi=1+1/\varphi$ を得る。$\varphi-\psi=\sqrt5$ は定義から、$\psi=-1/\varphi$ は $\varphi\psi=-1$ から従う。
2:$n=1$ では $\varphi=1\cdot\varphi+0$ である。$n$ で成り立つとすると
$$
\varphi^{n+1}=F_n\varphi^2+F_{n-1}\varphi=F_n(\varphi+1)+F_{n-1}\varphi=(F_n+F_{n-1})\varphi+F_n=F_{n+1}\varphi+F_n
$$
である。$\psi$ も $\psi^2=\psi+1$ を満たすので同じ計算が成り立つ。
3:$n=0$ では $F_1-\varphi F_0=1=\psi^0$ である。$n$ で成り立つとすると、$\varphi\psi=-1$ より
$$
\psi^{n+1}=\psi F_{n+1}-\psi\varphi F_n=\psi F_{n+1}+F_n=(1-\varphi)F_{n+1}+F_n=F_{n+2}-\varphi F_{n+1}
$$
である。$\square$
2 の 2 式を引くと $\varphi^n-\psi^n=F_n(\varphi-\psi)=\sqrt5\,F_n$ となり、Fibonacci数 の記事の定理「Binetの公式」$F_n=(\varphi^n-\psi^n)/\sqrt5$ が再び得られる。また $\varphi$ は最高次の係数が $1$ の整数係数多項式 $x^2-x-1$ の根なので代数的整数であり、$\varphi(\varphi-1)=1$ なので、環 $\mathbb{Z}[\varphi]=\{a+b\varphi\mid a,b\in\mathbb{Z}\}$ の単元である。2 より $\varphi^n$ もすべてこの環の単元である。
$\varphi$ は無理数である。
$\varphi=p/q$($p,q$ は正の整数)と書けたとし、そのような表し方のうち $q$ が最小のものをとる。$2<\sqrt5<3$ より $1<\varphi<2$ なので $q< p<2q$、すなわち $0< p-q< q$ である。prop-gr-identities の $\frac1\varphi=\varphi-1$ より
$$
\varphi=\frac{1}{\varphi-1}=\frac{1}{\frac pq-1}=\frac{q}{p-q}
$$
であり、$\varphi$ は分母 $p-q< q$ の分数でも表せる。これは $q$ の最小性に反する。$\square$
この証明は ex-gr-rectangle の「正方形を切り取ると相似な長方形が残る」の数の言葉への翻訳である。辺の比が $p:q$ の整数の長方形なら、切り取るたびに辺の長さの整数が小さくなって有限回で止まるはずだが、黄金長方形では止まらない。$\varphi$ の無理性から、$\sqrt5=2\varphi-1$ も無理数である(無理数 の記事の命題「有理数と無理数の和と積」)。別の方法として、$x^2-x-1$ の有理数の根 $p/q$(既約)は $p\mid1$、$q\mid1$ を満たすはずで、候補 $\pm1$ はどちらも根でないことからも分かる。
$\varphi=[1;1,1,1,\dots]$ である。その第 $n$ 収束子は $F_{n+2}/F_{n+1}$ であり、とくに $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{F_{n+1}}{F_n}=\varphi$ である。
連分数 の記事の連分数展開の手続きを $x_0=\varphi$ に施す。$1<\varphi<2$ より $a_0=1$ であり、$x_1=\frac{1}{\varphi-1}=\varphi$(prop-gr-identities)なので、以後 $x_k=\varphi$、$a_k=1$ がすべての $k$ で続く。$\varphi$ は無理数(thm-gr-irrational)なので、連分数 の記事の定理「無理数の連分数展開」により $\varphi=[1;1,1,\dots]$ である。
収束子の分子・分母は $p_{-1}=1$、$p_0=1$、$q_{-1}=0$、$q_0=1$ と、部分商がすべて $1$ の漸化式 $p_n=p_{n-1}+p_{n-2}$、$q_n=q_{n-1}+q_{n-2}$ で定まる。$(p_{-1},p_0)=(F_1,F_2)$、$(q_{-1},q_0)=(F_0,F_1)$ であり、Fibonacci 数と同じ漸化式を満たすので、帰納法により $p_n=F_{n+2}$、$q_n=F_{n+1}$ である。収束子は $\varphi$ に収束するので、$F_{n+2}/F_{n+1}\to\varphi$ である。$\square$
収束子は $\frac11,\frac21,\frac32,\frac53,\frac85,\frac{13}{8},\dots,\frac{89}{55},\dots$ であり、$\varphi$ の上下に交互に現れる(Ste17 例 5.3.2、PDF の p. 109。Fibonacci数 の記事の命題「隣り合う項の比の極限」は同じ極限を Binet の公式から導いている)。次の命題はその誤差を正確に与える。
すべての $n\ge1$ について
$$
\left|\varphi-\frac{F_{n+1}}{F_n}\right|=\frac{1}{\varphi^nF_n}=\frac{1}{F_n\bigl(\sqrt5\,F_n+\psi^n\bigr)}
$$
である。とくに $F_n^2\left|\varphi-\frac{F_{n+1}}{F_n}\right|\to\frac{1}{\sqrt5}$ であり、$n$ が偶数のときは $\left|\varphi-\frac{F_{n+1}}{F_n}\right|<\frac{1}{\sqrt5\,F_n^2}$ である。
prop-gr-identities の 3 を $F_n\ge1$ で割ると $\bigl|\frac{F_{n+1}}{F_n}-\varphi\bigr|=\frac{|\psi|^n}{F_n}$ であり、$|\psi|=1/\varphi$ なので最初の等式を得る。同じ命題の 2 から $\varphi^n-\psi^n=\sqrt5F_n$、すなわち $\varphi^n=\sqrt5F_n+\psi^n$ なので 2 つ目の等式を得る。$|\psi|<1$ より $\psi^n/F_n\to0$ なので $F_n^2|\varphi-F_{n+1}/F_n|=1/(\sqrt5+\psi^n/F_n)\to1/\sqrt5$ である。$n$ が偶数なら $\psi^n>0$ なので分母は $\sqrt5F_n^2$ より大きい。$\square$
たとえば $n=10$ では $\frac{89}{55}-\varphi=0.000147\ldots$ で、$F_{10}^2=3025$ を掛けると $0.44718\ldots$ となり、$1/\sqrt5=0.44721\ldots$ よりわずかに小さい。
どの無理数 $x$ についても $|x-p/q|<1/q^2$ を満たす有理数 $p/q$ は無限個ある(連分数 の記事の定理「無理数の連分数展開」)。定数を $1$ より大きい $c$ に替えて $|x-p/q|<1/(cq^2)$ を求めると、$\varphi$ では $c=\sqrt5$ が限界になる。
$c>\sqrt5$ ならば、
$$
\left|\varphi-\frac pq\right|<\frac{1}{cq^2}
$$
を満たす整数の組 $(p,q)$($q\ge1$)は有限個しかない。一方 $c=\sqrt5$ では、prop-gr-convergent-error により $(p,q)=(F_{n+1},F_n)$($n$ は正の偶数)が無限個の解を与える。
$(p,q)$ が不等式を満たすとし、$N:=p^2-pq-q^2$ とおく。$t^2-t-1=(t-\varphi)(t-\psi)$ より
$$
N=q^2\Bigl(\frac pq-\varphi\Bigr)\Bigl(\frac pq-\psi\Bigr)
$$
である。$\varphi,\psi$ は無理数なので右辺の因数は $0$ でなく、$N$ は $0$ でない整数だから $|N|\ge1$ である。$\frac pq-\psi=\bigl(\frac pq-\varphi\bigr)+\sqrt5$ なので $\bigl|\frac pq-\psi\bigr|<\sqrt5+\frac{1}{cq^2}$ であり、
$$
1\le|N|< q^2\cdot\frac{1}{cq^2}\Bigl(\sqrt5+\frac{1}{cq^2}\Bigr)=\frac{\sqrt5}{c}+\frac{1}{c^2q^2}
$$
となる。これを変形すると $q^2<\dfrac{1}{c(c-\sqrt5)}$ であり、$q$ は有界である。各 $q$ について、$p$ は $|q\varphi-p|<\frac{1}{cq}<1$ を満たす整数なので高々 2 個である。よって解は有限個である。$\square$
一般に、すべての無理数 $x$ について $|x-p/q|<1/(\sqrt5q^2)$ を満たす有理数が無限個あることが知られている(Hurwitz の定理。無理数 の記事の注意「近似の限界と Liouville 数」)。thm-gr-hurwitz-optimal は、この定理の $\sqrt5$ をより大きい定数に替えられないこと、その障害が $\varphi$ であることを示している。$\varphi$ の連分数の部分商がすべて最小の $1$ であり、連分数 の記事の誤差の評価 $1/(q_n(q_{n+1}+q_n))<|x-p_n/q_n|$ で $q_{n+1}$ が最も小さくなることが、近似しにくさの理由である。
thm-gr-hurwitz-optimal の有限性は $\varphi$ に特有の性質であり、すべての無理数で成り立つわけではない。$x=\sqrt2$、$c=\frac52>\sqrt5$ とする。整数の組 $(p,q)$ を $(1,1)$ から始めて $(p,q)\mapsto(p+2q,\ p+q)$ で次々に作ると $(3,2),(7,5),(17,12),(41,29),\dots$ となり、$q$ は狭義に増加する。$(p+2q)^2-2(p+q)^2=-(p^2-2q^2)$ なので、すべての組で $p^2-2q^2=\pm1$ である。$q\ge2$ の組では $\frac pq=\sqrt{2\pm1/q^2}\ge\sqrt{7/4}>1.3$ なので
$$
\left|\sqrt2-\frac pq\right|=\frac{|p^2-2q^2|}{q^2\bigl(\frac pq+\sqrt2\bigr)}=\frac{1}{q^2\bigl(\frac pq+\sqrt2\bigr)}<\frac{1}{2.7\,q^2}<\frac{1}{\frac52q^2}
$$
であり、解が無限個ある。満たす性質:$\sqrt2$ は無理数である。満たさない性質:$c>\sqrt5$ で解が有限個。破る含意:「どの無理数 $x$ についても、$c>\sqrt5$ なら $|x-p/q|<1/(cq^2)$ の解は有限個」は成り立たない。
以下、正五角形とは、5 辺の長さが等しく 5 つの内角が等しい凸五角形をいう。内角の和は $540^\circ$ なので、各内角は $108^\circ$ である。
一辺の長さ $1$ の正五角形 $ABCDE$ の対角線の長さは $\varphi$ である。さらに、対角線 $AD$ と $CE$ の交点を $F$ とすると $AF=CF=1$、$FD=\varphi-1=1/\varphi$ であり、
$$
AD:AF=AF:FD=\varphi:1
$$
が成り立つ。すなわち 2 本の対角線は互いを外中比に分け、長い部分は辺に等しい。
三角形 $ABC$ は $AB=BC=1$、$\angle ABC=108^\circ$ の二等辺三角形なので、$\angle BAC=\angle BCA=36^\circ$ である。同様に三角形 $AED$ で $\angle EAD=\angle EDA=36^\circ$、三角形 $CDE$ で $\angle DCE=\angle DEC=36^\circ$ である。三角形 $ABC$ と $AED$ は 2 辺とその間の角が等しいので合同であり、$AC=AD=:d$ である。
凸五角形なので、頂点 $A$ で半直線 $AB,AC,AD,AE$ はこの順に並び、$\angle CAD=108^\circ-36^\circ-36^\circ=36^\circ$ である。三角形 $ACD$ は $AC=AD$ の二等辺三角形なので $\angle ACD=\angle ADC=72^\circ$ である。頂点 $C$ でも半直線 $CB,CA,CE,CD$ がこの順に並び、$\angle ACE=108^\circ-36^\circ-36^\circ=36^\circ$ なので、$CE$ は $\angle ACD$ を 2 等分し、三角形 $ACD$ の辺 $AD$ と内部の点 $F$ で交わる。
三角形 $FCD$ では $\angle FCD=36^\circ$、$\angle FDC=72^\circ$ なので $\angle CFD=72^\circ$ であり、底角が等しいので $CF=CD=1$ である。三角形 $AFC$ では $\angle FAC=\angle FCA=36^\circ$ なので $AF=CF=1$ である。よって $FD=AD-AF=d-1$ である。
三角形 $ACD$ と $CFD$ は角が $36^\circ,72^\circ,72^\circ$ で等しいので相似であり、頂点は $A\leftrightarrow C$、$C\leftrightarrow F$、$D\leftrightarrow D$ と対応する。$36^\circ$ の角の対辺どうし、$72^\circ$ の角 $C$ と $F$ の対辺どうしの比が等しいので
$$
\frac{CD}{FD}=\frac{AD}{CD},\qquad\text{すなわち}\quad\frac{1}{d-1}=d
$$
である。よって $d^2-d-1=0$、$d>0$ から $d=\varphi$ である。このとき $FD=\varphi-1=1/\varphi$(prop-gr-identities)であり、$AD:AF=\varphi:1$、$AF:FD=1:(1/\varphi)=\varphi:1$ である。対角線はすべて合同な三角形の底辺なので、どの対角線の長さも $\varphi$ である。$\square$
後半の主張は Euclid『原論』第 XIII 巻 命題 8 にあたる(Hea08 Vol. III pp. 453–454)。証明に現れた三角形 $ACD$(頂角 $36^\circ$)と $AFC$(頂角 $108^\circ$)は、辺の比が $\varphi$ の二等辺三角形である。
$$
\cos36^\circ=\frac{\varphi}{2}=\frac{1+\sqrt5}{4},\qquad \cos72^\circ=\frac{1}{2\varphi}=\frac{\varphi-1}{2}=\frac{\sqrt5-1}{4}
$$
である。
prf-thm-gr-pentagon の三角形 $AFC$ は $AF=CF=1$、$AC=\varphi$、底角 $36^\circ$ の二等辺三角形である。頂点 $F$ から底辺 $AC$ に下ろした垂線の足は $AC$ の中点 $M$ であり、直角三角形 $AMF$ で $\cos36^\circ=AM/AF=\varphi/2$ である。同様に三角形 $ACD$ は $AC=AD=\varphi$、$CD=1$、底角 $72^\circ$ なので、$CD$ の中点 $N$ について $\cos72^\circ=CN/AC=\frac{1/2}{\varphi}$ である。$1/\varphi=\varphi-1$ から残りの等式を得る。$\square$
$\cos72^\circ=\cos(2\pi/5)$ が $\sqrt5$ だけで書けることから正五角形は定規とコンパスで作図でき(作図可能数 の記事の例「正 5 角形の頂点」は同じ値 $2\cos(2\pi/5)=(-1+\sqrt5)/2$ を代数的に求めている)、黄金比の長さを作図する方法は Euclid の外中比の作図(Hea08 Vol. II 第 VI 巻 命題 30)そのものである。
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