Fuhrmannの円

同義語:フールマンの円Fuhrmann三角形Fuhrmann circle

概要

Fuhrmannの円(Fuhrmann circle)とは、正三角形でない三角形 $ABC$ で、外接円の弧 $BC$($A$ を含まない方)の中点 $M_A$ を辺 $BC$ に関して折り返した点 $F_A$ と、同様の $F_B$、$F_C$ を頂点とする Fuhrmann 三角形の外接円である。この円は垂心 $H$ と Nagel 点 $N_a$ を結ぶ線分を直径とし、半径は外心 $O$ と内心 $I$ の距離 $OI=\sqrt{R^2-2Rr}$ に等しい。外心を原点にとると、垂心は $\vec a+\vec b+\vec c$、内心は弧の中点の和 $\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C$ と書け、円の中心は $\vec h-\vec i$ になる。Fuhrmann 三角形の垂心は内心である。$A$ を含む弧の中点を使うと $H$、$N_a$ を通らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の垂心, Eulerの三角形の定理, Gergonne点とNagel点, ベクトルの内積

高校での出発点:弧の中点を辺で折り返す

三角形 $ABC$ の外接円で、頂点 $A$ を含まない方の弧 $BC$ の中点を $M_A$ とする。$M_A$ は角 $A$ の二等分線と外接円の交点でもある(Eulerの三角形の定理)。この $M_A$ を辺 $BC$ に関して折り返した点を $F_A$ とする($F_A$ は三角形の内側にあるとは限らない)。同じように $F_B$、$F_C$ を作り、3 点を通る円を描く。この円は、三角形の垂心 $H$ と Nagel 点 $N_a$(Gergonne点とNagel点)という、一見関係のなさそうな 2 点を通る。

3 辺が 13, 20, 21 の三角形で計算する

$A(5,12)$、$B(0,0)$、$C(21,0)$ とする。$AB=13$、$CA=20$、$BC=21$ で、3 つの角はおよそ $75.8^\circ$、$67.4^\circ$、$36.9^\circ$ の鋭角三角形である。
(1) 外心と内心。外心は $O\left(\dfrac{21}2,\dfrac83\right)$、外接円の半径は $R=\dfrac{65}6$ である($OB^2=\dfrac{441}4+\dfrac{64}9=\dfrac{4225}{36}$)。内心は $I=\dfrac{21A+20B+13C}{54}=\left(7,\dfrac{14}3\right)$、内接円の半径は $r=\dfrac{14}3$ である(三角形の内心と傍心。面積 $126$ を $s=27$ で割る)。
(2) 弧の中点。$M_A$ は辺 $BC$ の垂直二等分線 $x=\dfrac{21}2$ の上で、$BC$ について $A$ と反対側にある外接円の点なので、$M_A\left(\dfrac{21}2,\dfrac83-\dfrac{65}6\right)=\left(\dfrac{21}2,-\dfrac{49}6\right)$ である。同じく辺 $CA$、$AB$ の垂直二等分線を使うと
$$ M_B\left(17,\frac{34}3\right),\qquad M_C\left(\frac12,\frac{41}6\right) $$
である。
(3) 折り返し。辺 $BC$ は $x$ 軸なので、$M_A$ を折り返すと $y$ 座標の符号が変わり、$F_A\left(\dfrac{21}2,\dfrac{49}6\right)$ である。辺 $CA$ の中点は $K_B(13,6)$ で、$\overrightarrow{K_BM_B}=\left(4,\dfrac{16}3\right)$ は $\overrightarrow{CA}=(-16,12)$ に垂直である(内積 $-64+64=0$)。折り返した点は $K_B$ から反対向きに同じだけ進んだ点で、$F_B=\left(13-4,\ 6-\dfrac{16}3\right)=\left(9,\dfrac23\right)$ である。同じく $F_C\left(\dfrac92,\dfrac{31}6\right)$ である。
(4) 円。点 $Q\left(\dfrac{17}2,\dfrac{14}3\right)$ からの距離の 2 乗を計算すると
$$ QF_A^2=2^2+\left(\frac72\right)^2=\frac{65}4,\qquad QF_B^2=\left(\frac12\right)^2+4^2=\frac{65}4,\qquad QF_C^2=4^2+\left(\frac12\right)^2=\frac{65}4 $$
で、3 点 $F_A$、$F_B$、$F_C$ を通る円は、中心 $Q$、半径 $\dfrac{\sqrt{65}}2$ の円である。
(5) 垂心と Nagel 点。垂心は $H\left(5,\dfrac{20}3\right)$、Nagel 点は $N_a\left(12,\dfrac83\right)$ である(Gergonne点とNagel点 の式 $N_a=\dfrac{(s-a)A+(s-b)B+(s-c)C}s$ で、$s-a=6$、$s-b=7$、$s-c=14$)。
$$ QH^2=\left(-\frac72\right)^2+2^2=\frac{65}4,\qquad QN_a^2=\left(\frac72\right)^2+(-2)^2=\frac{65}4 $$
なので、$H$ と $N_a$ もこの円の上にある。しかも $\overrightarrow{QH}=-\overrightarrow{QN_a}$ なので、$Q$ は線分 $HN_a$ の中点で、$HN_a$ は円の直径である。
(6) 半径。$OI^2=\left(7-\dfrac{21}2\right)^2+\left(\dfrac{14}3-\dfrac83\right)^2=\dfrac{49}4+4=\dfrac{65}4$ で、円の半径は外心と内心の距離に等しい:$\boxed{\text{半径}=OI=\dfrac{\sqrt{65}}2}$。

鈍角三角形でも同じことが起こる

$A(-5,12)$、$B(0,0)$、$C(11,0)$ とする。$AB=13$、$CA=20$、$BC=11$ で、$\angle B\approx112.6^\circ$ の鈍角三角形である。外心 $O\left(\dfrac{11}2,\dfrac{28}3\right)$、内心 $I(2,3)$、垂心 $H\left(-5,-\dfrac{20}3\right)$、Nagel 点 $N_a(2,6)$ で、$F_A\left(\dfrac{11}2,\dfrac32\right)$、$F_B(-6,-6)$、$F_C\left(-\dfrac12,\dfrac{41}6\right)$ を通る円の中心は $\left(-\dfrac32,-\dfrac13\right)$(線分 $HN_a$ の中点)、半径の 2 乗は $\dfrac{1885}{36}=OI^2$ である。

弧の中点と距離の計算を開く

弧の中点は $M_A\left(\dfrac{11}2,-\dfrac32\right)$、$M_B(12,18)$、$M_C\left(-\dfrac92,\dfrac{31}6\right)$ である。中心 $\left(-\dfrac32,-\dfrac13\right)$ から $F_A$、$F_B$、$F_C$、$H$、$N_a$ までの距離の 2 乗は、順に $7^2+\left(\dfrac{11}6\right)^2$、$\left(\dfrac92\right)^2+\left(\dfrac{17}3\right)^2$、$1^2+\left(\dfrac{43}6\right)^2$、$\left(\dfrac72\right)^2+\left(\dfrac{19}3\right)^2$、$\left(\dfrac72\right)^2+\left(\dfrac{19}3\right)^2$ で、どれも $\dfrac{1885}{36}$ である。$OI^2=\left(\dfrac72\right)^2+\left(\dfrac{19}3\right)^2=\dfrac{1885}{36}$ である。

鋭角三角形で、弧の中点 M を辺で折り返した 3 点 F を通る青い円は、垂心 H と Nagel 点 Na を直径の両端として通る 鋭角三角形で、弧の中点 M を辺で折り返した 3 点 F を通る青い円は、垂心 H と Nagel 点 Na を直径の両端として通る
鈍角三角形では垂心 H が三角形の外にあるが、青い円はやはり H と Na を直径の両端として通る 鈍角三角形では垂心 H が三角形の外にあるが、青い円はやはり H と Na を直径の両端として通る

この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 3 点 $F_A$、$F_B$、$F_C$ を通る円は、いつも $H$ と $N_a$ を直径の両端として通るか。→ thm-fuh-main
  2. 半径が $OI$ になるのはなぜか。→ thm-fuh-main、cor-fuh-euler
  3. 弧の中点の代わりに別の点を折り返したらどうなるか。→ ex-fuh-cx-arc、ex-fuh-cx-mid
    高校の計算この記事の言葉大学数学での見方
    垂直二等分線と外接円の交点弧の中点 $M_A$角の二等分線と外接円の交点
    辺に関する折り返し$F_A=\vec b+\vec c-\vec m_A$鏡映を位置ベクトルで書く
    $H=A+B+C$(外心が原点)$I=M_A+M_B+M_C$弧の中点の三角形の垂心が内心
    3 点を通る円Fuhrmann の円直径 $HN_a$、半径 $OI$

言葉の準備:弧の中点と Fuhrmann 三角形

以下、三角形 $ABC$ の外接円を $\Gamma$、外心を $O$、外接円の半径を $R$、内心を $I$、内接円の半径を $r$ とする。

弧の中点と Fuhrmann の円

直線 $AI$ が $\Gamma$ と交わる点のうち $A$ でない方を $M_A$ とする。同じく直線 $BI$、$CI$ から $M_B$、$M_C$ を定める。$M_A$ を直線 $BC$ に関して折り返した点を $F_A$、$M_B$ を直線 $CA$ に関して折り返した点を $F_B$、$M_C$ を直線 $AB$ に関して折り返した点を $F_C$ とする。三角形 $ABC$ が正三角形でないとき、3 点 $F_A$、$F_B$、$F_C$ は相異なり(thm-fuh-main (2))、三角形 $F_AF_BF_C$ を Fuhrmann 三角形、その外接円を Fuhrmann の円 という。

$M_A$ は、$A$ を含まない弧 $BC$ の中点で、$M_AB=M_AC=M_AI$ を満たす(Eulerの三角形の定理 の補題「弧の中点から等距離の点」)。Nagel 点 $N_a$ は、3 つの傍接円が辺と接する点と向かいの頂点を結ぶ 3 本の線分の交点で、重心 $G$・内心 $I$ と
$$ G=\frac{2I+N_a}3,\qquad\text{つまり}\qquad N_a=3G-2I $$
の関係にある(Gergonne点とNagel点 の定理「Nagel 線」)。
位置ベクトルで計算するので、点 $P$ の位置ベクトルを $\vec p$ と書く。まず折り返しを式にする。

折り返した点の位置ベクトル

$\vec f_A=\vec b+\vec c-\vec m_A$、$\vec f_B=\vec c+\vec a-\vec m_B$、$\vec f_C=\vec a+\vec b-\vec m_C$ である(原点はどこにとってもよい)。

垂線の足から反対向きに進む

辺 $BC$ の中点を $K$ とすると $\vec k=\dfrac{\vec b+\vec c}2$ である。$M_AB=M_AC$ なので、$M_A$ は $BC$ の垂直二等分線の上にあり、$\overrightarrow{KM_A}$ は $BC$ に垂直である($M_A=K$ にはならない。$K$ は円の内部の点だから)。$M_A$ を直線 $BC$ に関して折り返した点は、垂線の足 $K$ から反対向きに同じ長さだけ進んだ点なので
$$ \vec f_A=\vec k-(\vec m_A-\vec k)=2\vec k-\vec m_A=\vec b+\vec c-\vec m_A $$
である。$F_B$、$F_C$ も同じである。$\square$

次の補題が証明の鍵である。外心 $O$ を原点にとると、垂心は $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ と書ける(三角形の垂心)。同じ形の式が内心にもある。

内心は弧の中点の三角形の垂心
  1. 直線 $M_BM_C$ は線分 $AI$ の垂直二等分線である。特に $AI\perp M_BM_C$ で、$A$ は $I$ を直線 $M_BM_C$ に関して折り返した点である。
  2. 外心 $O$ を原点にとると $\vec i=\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C$ である。
等距離の点を 2 つ見つける

段 1((1))。Eulerの三角形の定理 の補題を頂点 $B$ に使うと $M_BC=M_BA=M_BI$、頂点 $C$ に使うと $M_CA=M_CB=M_CI$ である。よって $M_B$ と $M_C$ はどちらも 2 点 $A$、$I$ から等距離にある。$A\ne I$ なので、2 点から等距離の点の集まりは線分 $AI$ の垂直二等分線で(三角形の外心)、$M_B$、$M_C$ はその上にある。$M_B\ne M_C$($\Gamma$ の上の異なる弧の中点)なので、直線 $M_BM_C$ は線分 $AI$ の垂直二等分線そのものである。
段 2(垂線)。直線 $AI$ は $M_A$ を通るので、段 1 から、直線 $M_AI$ は $M_BM_C$ に垂直である。つまり $I$ は三角形 $M_AM_BM_C$ の $M_A$ からの垂線の上にある。頂点の名前を回して同じ議論をすると、$I$ は $M_B$ からの垂線、$M_C$ からの垂線の上にもある。よって $I$ は三角形 $M_AM_BM_C$ の垂心である。
段 3((2))。三角形 $M_AM_BM_C$ も $\Gamma$ に内接するので、外心は $O$ である。$O$ を原点にとると、三角形の垂心 の定理「外心を原点にしたときの垂心」により、三角形 $M_AM_BM_C$ の垂心は $\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C$ である。段 2 より、これが $\vec i$ である。$\square$

弧の中点を結ぶ青い三角形の 3 本の垂線は、各頂点と向かいの弧の中点を結ぶ角の二等分線で、内心 I で交わる。緑の破線の円は MB を中心とし、A と I と C を通る 弧の中点を結ぶ青い三角形の 3 本の垂線は、各頂点と向かいの弧の中点を結ぶ角の二等分線で、内心 I で交わる。緑の破線の円は MB を中心とし、A と I と C を通る

補題を例で確かめる

ex-fuh-start で外心 $O\left(\dfrac{21}2,\dfrac83\right)$ から見たベクトルは
$$ \overrightarrow{OM_A}=\left(0,-\frac{65}6\right),\qquad \overrightarrow{OM_B}=\left(\frac{13}2,\frac{26}3\right),\qquad \overrightarrow{OM_C}=\left(-10,\frac{25}6\right) $$
で、和は $\left(-\dfrac72,\ 2\right)$ である。これは $\overrightarrow{OI}=\left(7-\dfrac{21}2,\ \dfrac{14}3-\dfrac83\right)=\left(-\dfrac72,\ 2\right)$ に等しい。また $\overrightarrow{AI}=\left(2,-\dfrac{22}3\right)$ と $\overrightarrow{M_CM_B}=\left(\dfrac{33}2,\dfrac92\right)$ の内積は $33-33=0$ で、$AI\perp M_BM_C$ である。

主定理:Fuhrmann の円の直径は $HN_a$

Fuhrmann の円

三角形 $ABC$ は正三角形でないとし、垂心を $H$、Nagel 点を $N_a$ とする。このとき次が成り立つ。
(1) 5 つの点 $F_A$、$F_B$、$F_C$、$H$、$N_a$ は、線分 $HN_a$ の中点を中心とし、半径が $OI$ の円の上にある。
(2) $F_A$、$F_B$、$F_C$ は相異なり、Fuhrmann の円は (1) の円である。したがって Fuhrmann の円は垂心 $H$ と Nagel 点 $N_a$ を通り、線分 $HN_a$ はその直径で、半径は $OI$ である。

外心を原点にとって距離を比べる

方針:外心 $O$ を原点にとり、$H$、$N_a$、$F_A$ を $\vec a,\vec b,\vec c,\vec m_A,\vec m_B,\vec m_C$ で書く。中心の候補 $\vec q=\vec h-\vec i$ から各点までの距離が $\lvert\vec i\rvert=OI$ になることを示す。
段 1($H$ と $N_a$)。$O$ を原点にとると $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$(三角形の垂心)、$\vec g=\dfrac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\dfrac{\vec h}3$ である。$N_a=3G-2I$ から
$$ \vec n_a=3\vec g-2\vec i=\vec h-2\vec i $$
である。$\vec q=\vec h-\vec i$ とおくと、$\dfrac{\vec h+\vec n_a}2=\vec h-\vec i=\vec q$ なので、$Q$ は線分 $HN_a$ の中点で、
$$ \vec h-\vec q=\vec i,\qquad \vec n_a-\vec q=-\vec i $$
より $QH=QN_a=\lvert\vec i\rvert=OI$ である。
段 2($F_A$ を中心から見る)。lem-fuh-reflect と lem-fuh-incenter (2) を使うと
$$ \vec f_A-\vec q=(\vec b+\vec c-\vec m_A)-(\vec a+\vec b+\vec c)+(\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C)=\vec m_B+\vec m_C-\vec a $$
である。$\vec s=\vec m_B+\vec m_C$ とおくと、示したいのは $\lvert\vec s-\vec a\rvert=\lvert\vec i\rvert=\lvert\vec s+\vec m_A\rvert$ である。
段 3(2 乗の差)。$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec m_A\rvert=R$ なので
$$ \lvert\vec s-\vec a\rvert^2-\lvert\vec s+\vec m_A\rvert^2=\bigl(\lvert\vec s\rvert^2-2\vec s\cdot\vec a+R^2\bigr)-\bigl(\lvert\vec s\rvert^2+2\vec s\cdot\vec m_A+R^2\bigr)=-2\,\vec s\cdot(\vec a+\vec m_A) $$
である。あとは $\vec s\cdot(\vec a+\vec m_A)=0$ を示せばよい。
段 4(垂直の組み合わせ)。長さの等しい 2 つのベクトル $\vec u$、$\vec v$ について $(\vec u+\vec v)\cdot(\vec u-\vec v)=\lvert\vec u\rvert^2-\lvert\vec v\rvert^2=0$ なので、$\vec u+\vec v\perp\vec u-\vec v$ である。これを 2 回使う。

  • $\lvert\vec m_B\rvert=\lvert\vec m_C\rvert$ から、$\vec s=\vec m_B+\vec m_C$ は $\vec m_C-\vec m_B$ に垂直である。
  • $\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec m_A\rvert$ から、$\vec a+\vec m_A$ は $\vec a-\vec m_A$ に垂直である。
    一方、$A$、$I$、$M_A$ は一直線上にあるので $\vec a-\vec m_A$ は直線 $AI$ の向きで、lem-fuh-incenter (1) から $\vec m_C-\vec m_B$ に垂直である。平面で、$\vec 0$ でない同じベクトル $\vec a-\vec m_A$ に垂直な 2 つのベクトル $\vec a+\vec m_A$ と $\vec m_C-\vec m_B$ は平行なので、$\vec a+\vec m_A=t(\vec m_C-\vec m_B)$ と書ける($\vec m_C-\vec m_B\ne\vec 0$)。よって
    $$ \vec s\cdot(\vec a+\vec m_A)=t\,\vec s\cdot(\vec m_C-\vec m_B)=0 $$
    である。段 3 から $\lvert\vec f_A-\vec q\rvert=\lvert\vec i\rvert=OI$ である。
    段 5($F_B$、$F_C$)。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回すと、$\vec f_B-\vec q=\vec m_C+\vec m_A-\vec b$、$\vec f_C-\vec q=\vec m_A+\vec m_B-\vec c$ で、段 2〜段 4 と同じ議論から長さはどちらも $OI$ である。これで (1) が示された。
    段 6((2))。$O=I$ なら $IA=IB=IC$ で、$IA=\dfrac r{\sin\frac A2}$ などから $\sin\dfrac A2=\sin\dfrac B2=\sin\dfrac C2$、つまり $A=B=C$ となる。正三角形でないので $O\ne I$ で、(1) の円の半径 $OI$ は正である。次に、$F_A$、$F_B$、$F_C$ は相異なる。
    詳細($F_B\ne F_C$ の確かめ)

    段 5 の式から、$F_B=F_C$ は $\vec m_C+\vec m_A-\vec b=\vec m_A+\vec m_B-\vec c$、つまり $\vec b+\vec m_B=\vec c+\vec m_C$ と同じである。$\dfrac{\vec b+\vec m_B}2$ は弦 $BM_B$ の中点で、この弦は直線 $BI$ の上にある。(i) $\vec b+\vec m_B=\vec c+\vec m_C\ne\vec 0$ なら、2 本の弦 $BM_B$、$CM_C$ は中点 $L$ を共有し、どちらも $OL$ に垂直なので(弦の中点と中心を結ぶ直線は弦に垂直)、同じ直線の上にある。すると直線 $BI$ と直線 $CI$ が一致し、$I$ が直線 $BC$ の上にあることになって矛盾する。(ii) $\vec b+\vec m_B=\vec c+\vec m_C=\vec 0$ なら、弦 $BM_B$、$CM_C$ はどちらも直径で $O$ を通るので、$O$ は直線 $BI$ と直線 $CI$ の交点 $I$ に一致し、$O\ne I$ に反する。よって $F_B\ne F_C$ で、同じく $F_C\ne F_A$、$F_A\ne F_B$ である。

    円の上の相異なる 3 点は一直線上にないので三角形を作り、その外接円(3 点を通るただ 1 つの円)は (1) の円である。$\square$

証明の段 1 から、中心 $Q$ は $\overrightarrow{OQ}=\overrightarrow{OH}-\overrightarrow{OI}$ で決まり、$\overrightarrow{HN_a}=-2\overrightarrow{OI}$ なので、直径 $HN_a$ は線分 $OI$ と平行で、長さはその 2 倍である。ex-fuh-start では $\overrightarrow{OI}=\left(-\dfrac72,2\right)$、$\overrightarrow{HN_a}=\left(7,-4\right)$ で、確かに $-2$ 倍になっている。

半径を $R$ と $r$ で書く

正三角形でない三角形 $ABC$ の Fuhrmann の円の半径 $\rho$ は $\rho^2=R^2-2Rr$ を満たす。

Euler の三角形の定理を使う

thm-fuh-main により $\rho=OI$ であり、Eulerの三角形の定理 により $OI^2=R^2-2Rr$ である。$\square$

ex-fuh-start では $R=\dfrac{65}6$、$r=\dfrac{14}3$ で、$R^2-2Rr=\dfrac{4225}{36}-\dfrac{3640}{36}=\dfrac{585}{36}=\dfrac{65}4$ となり、(4) で求めた半径の 2 乗と一致する。

Fuhrmann 三角形の垂心は内心

正三角形でない三角形 $ABC$ の Fuhrmann 三角形 $F_AF_BF_C$ の垂心は、三角形 $ABC$ の内心 $I$ である。

中心をずらして垂心の公式を使う

三角形 $F_AF_BF_C$ の外心は $Q$ である(thm-fuh-main)。$Q$ を原点にとれば垂心は 3 頂点の位置ベクトルの和になる(三角形の垂心)ので、$O$ を原点にとった位置ベクトルでは、垂心は
$$ \vec q+(\vec f_A-\vec q)+(\vec f_B-\vec q)+(\vec f_C-\vec q)=\vec f_A+\vec f_B+\vec f_C-2\vec q $$
である。lem-fuh-reflect から $\vec f_A+\vec f_B+\vec f_C=2(\vec a+\vec b+\vec c)-(\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C)=2\vec h-\vec i$ で、$\vec q=\vec h-\vec i$ なので、垂心は $2\vec h-\vec i-2\vec h+2\vec i=\vec i$ である。$\square$

ex-fuh-start では $F_A+F_B+F_C-2Q=\left(\dfrac{21}2+9+\dfrac92-17,\ \dfrac{49}6+\dfrac23+\dfrac{31}6-\dfrac{28}3\right)=\left(7,\dfrac{14}3\right)=I$ である。

3 つの円を比べる

外接円・九点円(九点円)・Fuhrmann の円を、外心 $O$ を原点にとった位置ベクトルで並べる。

外接円九点円Fuhrmann の円
中心$O$($\vec 0$)$OH$ の中点($\frac12\vec h$)$HN_a$ の中点($\vec h-\vec i$)
半径$R$$\frac R2$$OI=\sqrt{R^2-2Rr}$
通る点$A$、$B$、$C$、$M_A$、$M_B$、$M_C$辺の中点、垂線の足など 9 点$F_A$、$F_B$、$F_C$、$H$、$N_a$
ex-fuh-start の中心$\left(\frac{21}2,\frac83\right)$$\left(\frac{31}4,\frac{14}3\right)$$\left(\frac{17}2,\frac{14}3\right)$
ex-fuh-start の半径$\frac{65}6$$\frac{65}{12}$$\frac{\sqrt{65}}2$

九点円は垂心 $H$ と外心 $O$ を結ぶ線分の中点を中心とし、Fuhrmann の円は垂心 $H$ と Nagel 点 $N_a$ を結ぶ線分の中点を中心とする。どちらも「$H$ と、もう 1 つの点を結ぶ線分」から中心が決まる。

例と反例

thm-fuh-main で使った条件を外すと何が崩れるかを並べる。三角形は ex-fuh-start と同じである。

外す条件反例成り立たなくなること
$A$ を含まない弧の中点を折り返す$A$ を含む弧の中点を折り返す円が $H$、$N_a$ を通る
弧の中点を折り返す辺の中点をとる(折り返しても動かない)円が $H$、$N_a$ を通る
正三角形でない正三角形3 点 $F_A$、$F_B$、$F_C$ が円を決める
反例:もう一方の弧の中点を折り返す

$A$ を含む方の弧 $BC$ の中点は、$M_A$ の外接円の中心 $O$ に関する反対側の点 $M_A'=2O-M_A=\left(\dfrac{21}2,\dfrac{27}2\right)$ である。これを辺 $BC$ で折り返すと $\left(\dfrac{21}2,-\dfrac{27}2\right)$ である。同じく $M_B'=2O-M_B$、$M_C'=2O-M_C$ を辺 $CA$、$AB$ で折り返すと、$(22,18)$、$\left(-\dfrac{31}2,\dfrac{27}2\right)$ になる。この 3 点を通る円の中心はおよそ $(4.35,\ 6.59)$、半径はおよそ $21.0$ である。中心から $H\left(5,\dfrac{20}3\right)$ までの距離はおよそ $0.66$、$N_a\left(12,\dfrac83\right)$ までの距離はおよそ $8.60$ で、どちらも半径と違う。$H$ も $N_a$ もこの円の上にない。
prf-fuh-main で効いていたのは、$M_A$ が直線 $AI$ の上にあること(lem-fuh-incenter)だった。$M_A'$ は直線 $AI$ の上になく、段 4 の垂直の関係が成り立たない。

反例:辺の中点では九点円になる

弧の中点の代わりに辺の中点をとると、辺に関して折り返しても同じ点のままである。3 辺の中点 $\left(\dfrac{21}2,0\right)$、$\left(13,6\right)$、$\left(\dfrac52,6\right)$ を通る円は九点円で、中心 $\left(\dfrac{31}4,\dfrac{14}3\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{4225}{144}$ である。垂心までの距離の 2 乗は $\left(\dfrac{11}4\right)^2+2^2=\dfrac{1665}{144}$、Nagel 点までの距離の 2 乗は $\left(\dfrac{17}4\right)^2+2^2=\dfrac{3177}{144}$ で、どちらも $\dfrac{4225}{144}$ と違う。$H$ も $N_a$ も九点円の上にない。

A を含む方の弧の中点を折り返した 3 点を通る青い円は、H も Na も通らない A を含む方の弧の中点を折り返した 3 点を通る青い円は、H も Na も通らない
辺の中点を通る九点円(青)は、H も Na も通らない 辺の中点を通る九点円(青)は、H も Na も通らない
反例:正三角形では 1 点につぶれる

正三角形では、外心・内心・垂心・重心・Nagel 点がすべて中心 $O$ に一致する。$A(0,2)$、$B(-\sqrt3,-1)$、$C(\sqrt3,-1)$ とすると $O=I=(0,0)$ で、$M_A=(0,-2)$ を直線 $BC:\ y=-1$ で折り返すと $F_A=(0,0)$ である。$F_B$、$F_C$ も $O$ になり、Fuhrmann 三角形は 1 点につぶれて円が決まらない。thm-fuh-main の (1) の円も、半径 $OI=0$ の「円」になる。

大学数学で見る:円の上のほかの点と複素数の置き方

MathWorld の「Fuhrmann Circle」の頁(Wei26a)は、Fuhrmann の円の上に、$H$、$N_a$ のほかにも注目すべき点が少なくとも 6 つあることを述べ、そのうちの 3 つとして次の点を挙げている:各頂点から向かいの辺へ下ろした垂線の上で、頂点から距離 $2r$ の点。この記事では証明しないが、ex-fuh-start で確かめる。

垂線の上で頂点から $2r$ の点

ex-fuh-start では $r=\dfrac{14}3$、$2r=\dfrac{28}3$ である。$A(5,12)$ からの垂線は直線 $x=5$ で、下向きに $\dfrac{28}3$ 進んだ点は $T_A\left(5,\dfrac83\right)$ である。中心 $Q\left(\dfrac{17}2,\dfrac{14}3\right)$ からの距離の 2 乗は $\left(-\dfrac72\right)^2+(-2)^2=\dfrac{65}4$ で、Fuhrmann の円の上にある。同じく $B$、$C$ からの垂線の上の点は $T_B\left(\dfrac{28}5,\dfrac{112}{15}\right)$、$T_C\left(\dfrac{161}{13},\dfrac{140}{39}\right)$ で、どちらも $Q$ からの距離の 2 乗が $\dfrac{65}4$ になる。

$T_B$ の計算を開く

$B$ から辺 $CA$ への垂線の向きは、$\overrightarrow{CA}=(-16,12)$ に垂直で $CA$ に向かう単位ベクトル $\left(\dfrac35,\dfrac45\right)$ である。$T_B=B+\dfrac{28}3\left(\dfrac35,\dfrac45\right)=\left(\dfrac{28}5,\dfrac{112}{15}\right)$。$\overrightarrow{QT_B}=\left(\dfrac{28}5-\dfrac{17}2,\ \dfrac{112}{15}-\dfrac{14}3\right)=\left(-\dfrac{29}{10},\dfrac{42}{15}\right)$ で、$\dfrac{841}{100}+\dfrac{1764}{225}=\dfrac{7569+7056}{900}=\dfrac{14625}{900}=\dfrac{65}4$ である。

Fuhrmann の円(青)は、垂線(破線)の上で頂点から 2r の距離にある 3 点 TA、TB、TC も通る Fuhrmann の円(青)は、垂線(破線)の上で頂点から 2r の距離にある 3 点 TA、TB、TC も通る
この記事では外心を原点にとったベクトルで計算した。同じ計算は複素数平面でもでき(複素数平面と図形)、外接円を単位円にとって $A=x^2$、$B=y^2$、$C=z^2$ と置くと、弧の中点を $-yz$、$-zx$、$-xy$、内心を $-(xy+yz+zx)$ と書ける置き方がある(平方根 $x$、$y$、$z$ の符号の選び方に注意が要る。この記事では証明しない)。lem-fuh-incenter (2) の $\vec i=\vec m_A+\vec m_B+\vec m_C$ は、この式の $-(xy+yz+zx)=(-yz)+(-zx)+(-xy)$ にあたる。弧の中点を平方根で表す置き方は、角の二等分線を含む問題を代数の計算に直すための道具である。

さらに先へ

  • MathWorld の「Fuhrmann Triangle」の頁(Wei26b)は、Fuhrmann 三角形を弧の中点を辺で折り返して定め、その垂心が内心であること(cor-fuh-orthocenter)などを述べている。Fuhrmann の円の中心は、C. Kimberling の三角形の中心の一覧で $X(355)$ と番号づけられている(Wei26a)。
  • 内心 $I$ と Nagel 点 $N_a$ を結ぶ線分の中点は Spieker 中心である(Spieker中心、Gergonne点とNagel点)。外心を原点にとると、その位置ベクトルは $\dfrac{\vec i+\vec n_a}2=\dfrac{\vec h-\vec i}2$ で、Fuhrmann の円の中心 $\vec h-\vec i$ のちょうど半分である。つまり Spieker 中心は、外心と Fuhrmann の円の中心を結ぶ線分の中点である。
  • 内心と Nagel 点をめぐる次の定理として、内接円と九点円が接するという Feuerbachの定理 がある。
  • 外心から作る点の定理は Kosnitaの定理、垂心を通る直線の定理は Droz-Farnyの直線定理 にある。

関連項目

参考文献

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