接線・法線と曲線の凹凸

同義語:tangent lines, normal lines and concavity

概要

接線・法線と曲線の凹凸(tangent lines, normal lines and concavity)とは、微分可能な $f$ のグラフの点 $(a,f(a))$ での接線 $y=f(a)+f'(a)(x-a)$、それに垂直な法線、第 2 次導関数で調べる凹凸をグラフの形で捉え直す主題である。接線は共有点の個数ではなく、差が $x-a$ より速く $0$ に近づく唯一の直線(最良の 1 次近似)と特徴づけられる。開区間で $f''\ge0$ ならグラフはどの接線より上にあり、どの接線より上にある微分可能な関数はグラフが弦の下にある(下に凸)。$e^x\ge1+x$ などはここから従う。$f''$ の符号が変わる変曲点では曲線が接線を横切るが、$f''(a)=0$ だけでは変曲点とは限らない($x^4$)。曲率は $\frac{|f''|}{(1+f'^2)^{3/2}}$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 微分係数と導関数の定義(高校数学), 平均値の定理, 指数関数, 対数関数, 三角関数

高校での出発点:接線の方程式と凹凸

高校の数学 II・III では、曲線 $y=f(x)$ 上の点 $(a,f(a))$ における接線の方程式を $y=f(a)+f'(a)(x-a)$ と習う。接線に垂直な直線が法線である。また、第 2 次導関数 $f''(x)$ の符号で曲線の凹凸を調べ、凹凸が入れ替わる点を変曲点と呼ぶ。

例 1:放物線の接線と法線

$f(x)=x^2$ の点 $(1,1)$ での接線と法線を求める。$f'(x)=2x$ なので $f'(1)=2$ で、接線は
$$ y=1+2(x-1)=2x-1 $$
である。法線は $(1,1)$ を通り、傾きが $-\frac12$(接線の傾き $2$ との積が $-1$)の直線なので
$$ y=1-\frac12(x-1)=-\frac12x+\frac32 $$
である。

例 2:曲線の外の点から引く接線

点 $(0,-4)$ から放物線 $y=x^2$ に引いた接線を求める。接点を $(t,t^2)$ とすると、接線は $y=2t(x-t)+t^2=2tx-t^2$ である。これが $(0,-4)$ を通るので $-4=-t^2$、すなわち $t=\pm2$ である。接線は $y=4x-4$ と $y=-4x-4$ の 2 本になる。
図1 の左は ex-tnc-parabola の接線と法線、右はこの例の 2 本の接線(接点 $(2,4)$ と $(-2,4)$)を描いたものである。

左は放物線 y=x² の点 (1,1) での接線(実線)と法線(破線)、右は点 (0,−4) から引いた 2 本の接線を見る図 左は放物線 y=x² の点 (1,1) での接線(実線)と法線(破線)、右は点 (0,−4) から引いた 2 本の接線を見る図

例 3:3 次関数の凹凸と変曲点

$f(x)=x^3-3x$ とする。$f'(x)=3x^2-3=3(x-1)(x+1)$、$f''(x)=6x$ である。

$x$$\cdots$$-1$$\cdots$$0$$\cdots$$1$$\cdots$
$f'(x)$$+$$0$$-$$-3$$-$$0$$+$
$f''(x)$$-$$-6$$-$$0$$+$$6$$+$
$f(x)$増加・上に凸$2$減少・上に凸$0$減少・下に凸$-2$増加・下に凸

$x=0$ の前後で $f''$ の符号が変わるので、点 $(0,0)$ が変曲点である。

これらの計算の裏には、次の 4 つの疑問がある。

  1. 接線とはどんな直線か。「曲線と 1 点だけを共有する直線」ではだめなのか。→ ex-tnc-not-one-point、prop-tnc-best-linear
  2. $f''>0$ のとき、曲線の形について正確には何が言えるか。→ thm-tnc-above-tangent、thm-tnc-tangent-chord
  3. 変曲点で、曲線と接線はどういう位置関係にあるか。→ prop-tnc-inflection-cross
  4. 曲がり具合そのものを数で表せるか。→ def-tnc-curvature
    高校での計算大学での言葉本記事の箇所
    接線の方程式最良の 1 次近似prop-tnc-best-linear
    $f''>0$ の区間で下に凸凸関数(弦の下にある)、接線の上にあるdef-tnc-convex、thm-tnc-above-tangent
    $e^x\ge1+x$ などの不等式接線による下からの評価ex-tnc-tangent-inequalities
    変曲点曲線が接線を横切る点prop-tnc-inflection-cross
    曲線外の点から引く接線の本数接点を未知数とする方程式の実数解の個数ex-tnc-cubic-tangents
    「曲がり方が急」曲率・曲率半径def-tnc-curvature

接線と法線

以下、$f$ は実数の区間で定義された実数値関数とする。

接線と法線

$f$ が $x=a$ で微分可能なとき、直線
$$ y=f(a)+f'(a)(x-a) $$
を、曲線 $y=f(x)$ の点 $(a,f(a))$ における接線という。点 $(a,f(a))$ を通り接線に垂直な直線を法線という。法線は、$f'(a)\ne0$ なら $y=f(a)-\dfrac1{f'(a)}(x-a)$、$f'(a)=0$ なら $x=a$ である。

放物線と直線が接する条件を判別式で書く方法は 2次方程式の判別式の正体 で扱う。
高校では、接線を「曲線に接する直線」と絵で覚えることが多い。しかし「曲線と 1 点だけを共有する直線」と言い換えると、正しくない。

反例:接線は 1 点だけを共有する直線ではない

$y=x^3$ の $x=1$ での接線は $y=1+3(x-1)=3x-2$ である。曲線との共有点は $x^3=3x-2$ の解で、
$$ x^3-3x+2=(x-1)^2(x+2)=0 $$
より $x=1$ と $x=-2$ の 2 つある。接線でも、離れたところで曲線ともう一度交わりうる。
逆に、放物線 $y=x^2$ と $y$ 軸(直線 $x=0$)は原点の 1 点だけを共有するが、$y$ 軸は原点での接線ではない(接線は $y=0$)。
1 つ目の例から、接線でも共有点が 1 つとは限らない。つまり「共有点が 1 つ」は接線であるための必要条件ではない。2 つ目の例から、共有点が 1 つでも接線とは限らない。つまり「共有点が 1 つ」は接線であるための十分条件でもない。

接線を特徴づけるのは、共有点の個数ではなく、接点の近くでの近さである。

接線は最良の 1 次近似

$f$ が $x=a$ で微分可能とし、$m$ を実数、$\ell_m(x)=f(a)+m(x-a)$ を点 $(a,f(a))$ を通る傾き $m$ の直線とする。このとき
$$ \lim_{x\to a}\frac{f(x)-\ell_m(x)}{x-a}=0 $$
となるのは $m=f'(a)$ のとき、そのときに限る。

差を差分商で書く

$x\ne a$ のとき、$\ell_m$ の式を代入すると
$$ \frac{f(x)-\ell_m(x)}{x-a}=\frac{f(x)-f(a)-m(x-a)}{x-a}=\frac{f(x)-f(a)}{x-a}-m $$
である。右辺の第 1 項は微分係数の定義により $x\to a$ で $f'(a)$ に近づく。よって左辺は $f'(a)-m$ に近づく。これが $0$ になるのは $m=f'(a)$ のときだけである。$\square$

言い換えると、接線との差 $f(x)-\ell(x)$ は、$x-a$ よりも速く $0$ に近づく。傾きの違う直線との差は、$x-a$ と同じ程度にしか小さくならない。

例 4:平方根を接線で近似する

$f(x)=\sqrt x$ の $x=4$ での接線は、$f'(x)=\frac1{2\sqrt x}$ から $f'(4)=\frac14$ なので $y=2+\frac14(x-4)$ である。

$x$接線の値$\sqrt x$差差 $\mathbin{÷}(x-4)$
$5$$2.25$$2.23607$$0.0139$$0.0139$
$4.1$$2.025$$2.024846$$0.000154$$0.00154$
$4.01$$2.0025$$2.0024984$$0.0000016$$0.00016$

$x$ を $4$ に $10$ 分の $1$ ずつ近づけると、差 $\mathbin{÷}(x-4)$ もほぼ $10$ 分の $1$ ずつ小さくなり、$0$ に近づく。これが prop-tnc-best-linear の主張である。

凹凸と接線

接線の不等式と、相加相乗平均の不等式とのつながりは 曲線の凹凸と接線 で扱う。

凹凸の定義

高校の教科書では「$f''(x)>0$ となる区間で曲線は下に凸」と習う。ここでは凹凸を、第 2 次導関数を使わずに、グラフの形で定義する。

下に凸・上に凸

$I$ を区間とする。$I$ 上の関数 $f$ が、$I$ の任意の 2 点 $x< y$ と $0< t<1$ を満たす任意の $t$ について
$$ f\bigl((1-t)x+ty\bigr)\le(1-t)f(x)+tf(y) $$
を満たすとき、$f$ は $I$ で下に凸であるという。$-f$ が下に凸のとき、$f$ は上に凸であるという。

左辺は $x$ と $y$ を $t:(1-t)$ に内分する点での $f$ の値、右辺は 2 点 $(x,f(x))$、$(y,f(y))$ を結ぶ線分(弦)の同じ位置での高さである。つまり「下に凸」とは、グラフが弦の下にあることである。

例 5:放物線は下に凸

$f(x)=x^2$ で、$x=0$、$y=2$、$t=\frac12$ とすると、左辺は $f(1)=1$、右辺は $\frac12\cdot0+\frac12\cdot4=2$ で、確かに $1\le2$ である。
一般の $x$、$y$、$t$ でも、右辺から左辺を引いて展開すると
$$ (1-t)x^2+ty^2-\bigl((1-t)x+ty\bigr)^2=t(1-t)(x-y)^2\ge0 $$
となる($(1-t)-(1-t)^2=t(1-t)$、$t-t^2=t(1-t)$ を使って整理する)。よって $x^2$ は実数全体で下に凸である。

第 2 次導関数と接線

証明には次の定理を使う。

前提とする定理

平均値の定理:$a< b$ とし、$f$ が $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能ならば、$f(b)-f(a)=f'(c)(b-a)$ となる $c\in(a,b)$ がある(Leb26 Theorem 4.2.4、p. 164。本記事では証明しない)。

第 2 次導関数の符号と導関数の増減

$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で 2 回微分可能とする。$I$ で $f''\ge0$ ならば、$I$ の 2 点 $u< v$ について $f'(u)\le f'(v)$ である。$I$ で $f''>0$ ならば $f'(u)< f'(v)$ である。

導関数に平均値の定理を使う

$f'$ は $I$ で微分可能なので、$[u,v]$ で連続、$(u,v)$ で微分可能である。rem-tnc-premises の平均値の定理を $f'$ に使うと、$f'(v)-f'(u)=f''(c)(v-u)$ となる $c\in(u,v)$ がある。$v-u>0$ なので、$f''(c)\ge0$ なら $f'(v)-f'(u)\ge0$、$f''(c)>0$ なら $f'(v)-f'(u)>0$ である。$\square$

第 2 次導関数が 0 以上ならグラフは接線の上にある

$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で 2 回微分可能で、$I$ で $f''\ge0$ とする。このとき、$I$ の任意の 2 点 $a$、$x$ について
$$ f(x)\ge f(a)+f'(a)(x-a) $$
が成り立つ。$I$ で $f''>0$ ならば、$x\ne a$ のとき不等号は $>$ になる。

接線との差に平均値の定理を使う

方針:接線との差 $g(x)=f(x)-f(a)-f'(a)(x-a)$ が $0$ 以上であることを示す。$g(a)=0$、$g'(x)=f'(x)-f'(a)$ である。
段 1($x>a$ のとき)。$g$ は $[a,x]$ で連続、$(a,x)$ で微分可能なので、平均値の定理(rem-tnc-premises)により $g(x)=g(x)-g(a)=g'(c)(x-a)=\bigl(f'(c)-f'(a)\bigr)(x-a)$ となる $c\in(a,x)$ がある。$a< c$ なので lem-tnc-monotone により $f'(c)-f'(a)\ge0$ で、$x-a>0$ だから $g(x)\ge0$ である。
段 2($x< a$ のとき)。同じく $g(a)-g(x)=\bigl(f'(c)-f'(a)\bigr)(a-x)$ となる $c\in(x,a)$ がある。$c< a$ なので $f'(c)-f'(a)\le0$、$a-x>0$ だから $g(a)-g(x)\le0$、すなわち $g(x)\ge g(a)=0$ である。
段 3($f''>0$ のとき)。段 1・段 2 で lem-tnc-monotone の後半を使うと、$f'(c)-f'(a)$ は段 1 で正、段 2 で負になる。よって $x\ne a$ で $g(x)>0$ である。$\square$

e^x のグラフが、x=−1.2、0、1 の 3 点で引いた接線(実線)のどれよりも上にあり、x=±1.5 の 2 点を結ぶ弦(破線)の下にあることを見る図 e^x のグラフが、x=−1.2、0、1 の 3 点で引いた接線(実線)のどれよりも上にあり、x=±1.5 の 2 点を結ぶ弦(破線)の下にあることを見る図

例 6:接線から得られる不等式
  1. $f(x)=e^x$ は $f''(x)=e^x>0$ である。$a=0$ での接線は $y=1+x$ なので、thm-tnc-above-tangent により、すべての実数 $x$ で $e^x\ge1+x$(等号は $x=0$ のときだけ)。$x=0.5$ なら $e^{0.5}=1.6487\ldots\ge1.5$ である。図2 は、$x=-1.2$、$0$、$1$ での接線($x=0$ での接線が $y=1+x$)と、$x=\pm1.5$ の 2 点を結ぶ弦を描いたもので、グラフはどの接線よりも上にある(弦については ex-tnc-chord-exp で見る)。
  2. $f(x)=-\log x$($x>0$)は $f''(x)=\frac1{x^2}>0$ である。$a=1$ での接線は $y=-(x-1)$ なので $-\log x\ge-(x-1)$、すなわち $\log x\le x-1$(等号は $x=1$ のときだけ)。$x=2$ なら $\log2=0.6931\ldots\le1$ である。
  3. $f(x)=-\sin x$ は開区間 $(0,\pi)$ で $f''(x)=\sin x>0$ である。区間の端 $a=0$ では thm-tnc-above-tangent を直接使えないので、接点 $a$ を $0$ に近づける。$0< a< x<\pi$ なら定理により $-\sin x\ge-\sin a-\cos a\,(x-a)$、すなわち $\sin x\le\sin a+\cos a\,(x-a)$ が成り立ち、$a\to0$ とすると $\sin x\le x$ となる。$x\ge\pi$ では $\sin x\le1< x$ なので、$x\ge0$ のすべてで $\sin x\le x$ である。$x=1$ なら $\sin1=0.8414\ldots\le1$ である。

次の定理は、「接線の上にある」ことから「弦の下にある」ことを導く。

接線の上にあれば弦の下にある

$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で微分可能とする。$I$ の任意の 2 点 $a$、$x$ について $f(x)\ge f(a)+f'(a)(x-a)$ が成り立つならば、$f$ は $I$ で下に凸である。

内分点での接線を 2 回使う

方針:弦の上の点の真下にある点 $z$ での接線を使い、両端の値を下から押さえて足し合わせる。
$x< y$ を $I$ の 2 点、$0< t<1$ とし、$z=(1-t)x+ty$ とおく。$z$ は $x$ と $y$ の間にあるので $I$ に属する。仮定を $a=z$ として、点 $x$ と点 $y$ に使うと
$$ f(x)\ge f(z)+f'(z)(x-z),\qquad f(y)\ge f(z)+f'(z)(y-z) $$
である。1 つ目の式に $1-t>0$、2 つ目の式に $t>0$ を掛けて足すと
$$ (1-t)f(x)+tf(y)\ge f(z)+f'(z)\bigl((1-t)(x-z)+t(y-z)\bigr) $$
となる。最後の括弧の中は $(1-t)x+ty-z=0$ なので、右辺は $f(z)$ である。よって $(1-t)f(x)+tf(y)\ge f\bigl((1-t)x+ty\bigr)$ で、def-tnc-convex により $f$ は下に凸である。$\square$

例 7:内分点での接線で弦の下を確かめる
  1. 手で計算できる例として、$f(x)=x^2$、$x=0$、$y=2$、$t=\frac12$ で証明の手順をたどる。内分点は $z=1$ で、$z$ での接線は ex-tnc-parabola の $y=2x-1$ である。接線の上にあることから $f(0)=0\ge2\cdot0-1=-1$、$f(2)=4\ge2\cdot2-1=3$ である。それぞれに $\frac12$ を掛けて足すと、$\frac12\cdot0+\frac12\cdot4=2\ge\frac12\cdot(-1)+\frac12\cdot3=1=f(1)$ となる。右辺がちょうど $f(z)$ になるのが、証明の最後の括弧が $0$ になることに当たる。
  2. $f(x)=e^x$ は ex-tnc-tangent-inequalities のとおりどの接線よりも上にあるので、thm-tnc-tangent-chord により下に凸である。図2 の弦の両端 $x=-1.5$、$y=1.5$ で確かめる。$e^{-1.5}=0.22313\ldots$、$e^{1.5}=4.48168\ldots$ である。$t=\frac12$ なら内分点は $0$ で、$e^0=1\le\frac{e^{-1.5}+e^{1.5}}2=2.35240\ldots$ である。$t=\frac14$ なら内分点は $\frac34\cdot(-1.5)+\frac14\cdot1.5=-0.75$ で、$e^{-0.75}=0.47236\ldots\le\frac34e^{-1.5}+\frac14e^{1.5}=1.28776\ldots$ である。どちらも、グラフが弦(図2 の破線)の下にあることを表している。

thm-tnc-above-tangent と thm-tnc-tangent-chord を合わせると、「開区間で $f''\ge0$ ならば、$f$ は下に凸で、グラフはどの接線よりも上にある」ことが分かる。高校で習う凹凸の判定法は、これを使っている。

変曲点

変曲点

$f$ が $a$ を含む開区間 $J$ で微分可能で、$f'$ が $J$ で連続であるとする。ある $\delta>0$ があって、$f$ が $(a-\delta,a)$ と $(a,a+\delta)$ で 2 回微分可能であり、一方の区間で $f''>0$、他方の区間で $f''<0$ となるとき、点 $(a,f(a))$ を曲線 $y=f(x)$ の変曲点という。

この定義で使うのは「$a$ の前後で $f''$ の符号が変わる」ことだけで、$f''(a)=0$ は条件に入れていない。$f''(a)=0$ でも変曲点にならない例は ex-tnc-x4 で見る。また、$f''(a)$ が存在することも要求していない。その理由は ex-tnc-x-abs-x で見る。

例 8:変曲点での接線
  1. ex-tnc-cubic-table の $f(x)=x^3-3x$ の変曲点 $(0,0)$ での接線は $y=-3x$ である。$f(x)-(-3x)=x^3$ は $x<0$ で負、$x>0$ で正なので、曲線は接線を下から上へ横切る(図3)。
  2. $f(x)=\dfrac1{1+x^2}=(1+x^2)^{-1}$ とする。微分すると $f'(x)=-2x(1+x^2)^{-2}$ で、もう一度積の微分を使うと
    $$ f''(x)=-2(1+x^2)^{-2}+(-2x)\cdot(-2)(1+x^2)^{-3}\cdot2x=\frac{-2(1+x^2)+8x^2}{(1+x^2)^3}=\frac{2(3x^2-1)}{(1+x^2)^3} $$
    である。分母は正なので、$f''$ の符号は $3x^2-1$ の符号と同じで、$x=\pm\frac1{\sqrt3}$ の前後で変わる。$x=\frac1{\sqrt3}$ では $1+x^2=\frac43$ なので、$f\left(\frac1{\sqrt3}\right)=\frac34$、$f'\left(\frac1{\sqrt3}\right)=-\frac2{\sqrt3}\cdot\frac9{16}=-\frac{3\sqrt3}8$ である。よって変曲点 $\left(\frac1{\sqrt3},\frac34\right)$ での接線は $y=\frac34-\frac{3\sqrt3}8\left(x-\frac1{\sqrt3}\right)=-\frac{3\sqrt3}8x+\frac98$ である。曲線と接線の差は、通分すると
    $$ f(x)-\left(-\frac{3\sqrt3}8x+\frac98\right)=\frac{8-(1+x^2)(9-3\sqrt3x)}{8(1+x^2)} $$
    で、分子を展開すると $8-9+3\sqrt3x-9x^2+3\sqrt3x^3=3\sqrt3x^3-9x^2+3\sqrt3x-1$ となる。これは $(\sqrt3x-1)^3=(\sqrt3x)^3-3(\sqrt3x)^2+3\sqrt3x-1$ に等しいので
    $$ f(x)-\left(-\frac{3\sqrt3}8x+\frac98\right)=\frac{(\sqrt3x-1)^3}{8(1+x^2)} $$
    である。右辺は $x=\frac1{\sqrt3}$ の前後で符号が変わるので、ここでも曲線は接線を横切る。

y=x³−3x が変曲点 (0,0) で接線 y=−3x を横切り、左側で上に凸、右側で下に凸になることを見る図 y=x³−3x が変曲点 (0,0) で接線 y=−3x を横切り、左側で上に凸、右側で下に凸になることを見る図

変曲点では曲線が接線を横切る

点 $(a,f(a))$ が def-tnc-inflection の意味の変曲点で、$\delta$ はその定義のものとする。$g(x)=f(x)-f(a)-f'(a)(x-a)$ とおくと、$g(x)$ は $a-\delta< x< a$ と $a< x< a+\delta$ とで符号が逆になる(どちらの側でも $0$ にならない)。さらに、$f''(a)$ が存在して $f''$ が $a$ で連続ならば、$f''(a)=0$ である。

両側で接線との差の増減を調べる

$(a-\delta,a)$ で $f''<0$、$(a,a+\delta)$ で $f''>0$ の場合を示す。逆の場合は $-f$ に同じ議論を使えばよい。
段 1($f'(x)>f'(a)$ を示す)。$a< x< a+\delta$ とする。$f'$ は $[a,x]$ で連続(定義の仮定)、$(a,x)$ で微分可能なので、平均値の定理により $f'(x)-f'(a)=f''(c)(x-a)$ となる $c\in(a,x)$ がある。$f''(c)>0$、$x-a>0$ なので $f'(x)>f'(a)$ である。$a-\delta< x< a$ のときも同様に $f'(a)-f'(x)=f''(c)(a-x)$、$c\in(x,a)$ で $f''(c)<0$ なので $f'(x)>f'(a)$ である。
段 2($g$ の符号)。$g'(x)=f'(x)-f'(a)$ は、段 1 により $a$ 以外で正である。$a< x< a+\delta$ なら、平均値の定理により $g(x)=g(x)-g(a)=g'(c)(x-a)$、$c\in(a,x)$ で、$g'(c)>0$ なので $g(x)>0$ である。$a-\delta< x< a$ なら $g(a)-g(x)=g'(c)(a-x)>0$ なので $g(x)<0$ である。
段 3($f''(a)=0$)。$f''$ が $a$ で連続なら、$f''(a)=\lim_{x\to a-0}f''(x)$ で、負の値の極限なので $f''(a)\le0$ である。同様に $f''(a)=\lim_{x\to a+0}f''(x)\ge0$ である。よって $f''(a)=0$ である。$\square$

接線の本数と変曲点

曲線の外の点から引ける接線の本数は、接点の $x$ 座標 $t$ についての方程式の実数解の個数で決まる。3 次関数では、この本数が変曲点での接線と関係する。

例 9:3 次関数に引ける接線の本数

$f(x)=x^3-3x$ とし、点 $(p,q)$ から曲線 $y=f(x)$ に引ける接線の本数を調べる。
段 1(接線の式)。接点を $(t,f(t))$ とすると、$f'(t)=3t^2-3$ なので接線は
$$ y=(3t^2-3)(x-t)+t^3-3t=(3t^2-3)x-2t^3 $$
である。これが $(p,q)$ を通る条件は $q=(3t^2-3)p-2t^3$、すなわち
$$ h(t)=2t^3-3pt^2+3p+q=0 $$
である。
段 2(接点が違えば接線も違う)。$s\ne t$ の 2 つの接点で接線が一致したとすると、傾きから $3s^2-3=3t^2-3$、よって $s=-t$($t\ne0$)で、$y$ 切片から $-2s^3=-2t^3$、よって $s=t$ となり矛盾する。したがって、接線の本数は $h(t)=0$ の異なる実数解の個数に等しい。
段 3(実数解の個数)。$h'(t)=6t^2-6pt=6t(t-p)$ である。$p\ne0$ なら $h$ は $t=0$ と $t=p$ で極値をとり、$h(0)=3p+q$、$h(p)=-p^3+3p+q$ である。3 次関数 $h$ が異なる 3 つの実数解をもつのは、2 つの極値が異符号のとき、すなわち $h(0)h(p)<0$ のときである。これを書き直すと、$q$ が $-3p$ と $p^3-3p$ の間にある(両端を含まない)ことになる。
$y=-3x$ は変曲点 $(0,0)$ での接線、$y=p^3-3p$ は曲線そのものの高さである。したがって、曲線と変曲点での接線とに挟まれた部分(図 4 の色の部分)の点からは 3 本、それ以外の点($p=0$ の点を含む)からは 1 本または 2 本の接線が引ける。
たとえば $(p,q)=(2,0)$ では $-6<0<2$ なので 3 本引ける。$h(t)=2t^3-6t^2+6=0$ の解は $t=-0.8794$、$1.3473$、$2.5321$(小数第 5 位を四捨五入)で、接線の傾きはそれぞれ $-0.680$、$2.446$、$16.234$ である。接点は $(-0.8794,\,1.9581)$、$(1.3473,\,-1.5963)$、$(2.5321,\,8.6382)$ で、図4 の 3 つの色の点である。

色の部分(y=x³−3x と変曲点での接線 y=−3x に挟まれた部分)の点、たとえば (2,0) から 3 本の接線(色の点が接点)が引けることを見る図 色の部分(y=x³−3x と変曲点での接線 y=−3x に挟まれた部分)の点、たとえば (2,0) から 3 本の接線(色の点が接点)が引けることを見る図
3 次方程式の実数解の個数を判別式で判定する話は 3次方程式と多項式の判別式 で扱う。

曲がり具合:曲率(紹介)

凹凸は曲がる向きを表す。曲がり方の強さは、同じように曲がる円の半径で測れる。本節は大学の微分幾何学への入口として、定義と計算例だけを述べる。

曲率と曲率半径

$f$ が 2 回微分可能なとき、曲線 $y=f(x)$ の点 $(x,f(x))$ における曲率を
$$ \kappa(x)=\frac{|f''(x)|}{\bigl(1+f'(x)^2\bigr)^{3/2}} $$
と定める。$\kappa(x)>0$ のとき、$\frac1{\kappa(x)}$ を曲率半径といい、その点で曲線に接し、曲線の凹んだ側に中心をもつ半径 $\frac1{\kappa(x)}$ の円を曲率円という。

分母の $(1+f'^2)^{3/2}$ は、グラフが傾いているときの補正である。定義が「円の曲率は半径の逆数」と合うことを確かめる。

例 10:円の曲率は半径の逆数

半径 $r$ の円の下半分 $f(x)=-\sqrt{r^2-x^2}$($-r< x< r$)を考える。微分すると
$$ f'(x)=\frac{x}{\sqrt{r^2-x^2}},\qquad f''(x)=\frac{r^2}{(r^2-x^2)^{3/2}} $$
である($f''$ は $f'$ を商の微分で計算し、分子 $\sqrt{r^2-x^2}+\frac{x^2}{\sqrt{r^2-x^2}}=\frac{r^2}{\sqrt{r^2-x^2}}$ をまとめる)。また $1+f'(x)^2=\frac{r^2-x^2+x^2}{r^2-x^2}=\frac{r^2}{r^2-x^2}$ なので、$(1+f'^2)^{3/2}=\frac{r^3}{(r^2-x^2)^{3/2}}$ である。よって
$$ \kappa(x)=\frac{r^2}{(r^2-x^2)^{3/2}}\cdot\frac{(r^2-x^2)^{3/2}}{r^3}=\frac1r $$
となり、円のどの点でも曲率は $\frac1r$、曲率半径は $r$ である。

例 11:放物線と 3 次関数の曲率
  1. $f(x)=x^2$ では $f'=2x$、$f''=2$ である。$x=0$ で $\kappa=\frac2{1}=2$、曲率半径 $\frac12$ で、曲率円は中心 $\left(0,\frac12\right)$ の円である(図5 の小さな円)。$x=1$ では $\kappa=\frac2{5^{3/2}}=\frac{2\sqrt5}{25}=0.1789\ldots$、曲率半径 $\frac{5\sqrt5}2=5.590\ldots$ で、曲率円の中心は $(-4,\frac72)$ である(中心から $(1,1)$ までの距離は $\sqrt{25+\frac{25}4}=\frac{5\sqrt5}2$。図5 の大きな破線の円)。頂点から離れると、放物線はゆるやかに曲がる。
  2. $f(x)=x^3-3x$ では、変曲点 $x=0$ で $f''(0)=0$ なので $\kappa=0$ である。曲がる向きが入れ替わる点では、曲がり方の強さが $0$ になる。

放物線 y=x² の曲率円。頂点では半径 1/2 の小さな円、点 (1,1) では半径 5√5/2 の大きな円が曲線に沿うことを見る図 放物線 y=x² の曲率円。頂点では半径 1/2 の小さな円、点 (1,1) では半径 5√5/2 の大きな円が曲線に沿うことを見る図

曲率の公式の意味

接線が $x$ 軸となす角を $\theta$、曲線に沿って測った長さを $s$ とすると、曲率は $\left|\frac{d\theta}{ds}\right|$、すなわち「長さ 1 進むあいだに接線の向きが変わる割合」であり、def-tnc-curvature の式はこれを $x$ で書き直したものである。また曲率円は、曲線上の近い 3 点を通る円の極限になる。本記事ではこれらを証明しない(doC16 Chapter 1, §1-5。前者は 曲率(高校数学) で証明する)。曲線の長さは 媒介変数表示と曲線の長さ で扱う。

数学オリンピックの問題から

接線でグラフを下から押さえる考え方は、不等式の問題で「接線の技法」と呼ばれる。

日本数学オリンピック本選(1997 年)第 2 問

正の実数 $a$、$b$、$c$ について
$$ \frac{(b+c-a)^2}{(b+c)^2+a^2}+\frac{(c+a-b)^2}{(c+a)^2+b^2}+\frac{(a+b-c)^2}{(a+b)^2+c^2}\ge\frac35 $$
が成り立つことを証明し、等号が成り立つ条件を求めよ。
(出典:1997 年第 7 回日本数学オリンピック本選 第 2 問。問題文は本記事の言葉で述べた。Oly97)

高校数学で解く

段 1(和を 3 にそろえる)。左辺の各項は、$a$、$b$、$c$ を同じ正の数倍しても変わらない(分子・分母とも 2 次式)。そこで $a+b+c=3$ としてよい。このとき $b+c=3-a$ なので、第 1 項は
$$ f(a)=\frac{(3-2a)^2}{(3-a)^2+a^2}=\frac{4a^2-12a+9}{2a^2-6a+9} $$
で、第 2 項・第 3 項は $f(b)$、$f(c)$ である。示すことは $f(a)+f(b)+f(c)\ge\frac35$ である。
段 2(等号の候補での接線)。$a=b=c=1$ で等号になると予想し、$f$ の $a=1$ での接線を求める。分子を $N=4a^2-12a+9$、分母を $D=2a^2-6a+9$ とおくと、$N'=8a-12$、$D'=4a-6$ である。$a=1$ では $N=1$、$D=5$ なので $f(1)=\frac15$ である。商の微分により
$$ f'(a)=\frac{N'D-ND'}{D^2}=\frac{(8a-12)(2a^2-6a+9)-(4a^2-12a+9)(4a-6)}{(2a^2-6a+9)^2} $$
で、$a=1$ では $N'=-4$、$D'=-2$ なので、分子は $(-4)\cdot5-1\cdot(-2)=-18$、分母は $5^2=25$ である。よって $f'(1)=-\frac{18}{25}$ で、接線は $L(a)=\frac15-\frac{18}{25}(a-1)=\frac{5-18a+18}{25}=\frac{23-18a}{25}$ である。
段 3(グラフが接線の上にある)。$f(a)=\frac ND$ と $L(a)=\frac{23-18a}{25}$ を通分すると
$$ f(a)-L(a)=\frac{25(4a^2-12a+9)-(23-18a)D}{25D} $$
である。分子の 2 つの部分を展開する。
$$ (23-18a)(2a^2-6a+9)=46a^2-138a+207-36a^3+108a^2-162a=-36a^3+154a^2-300a+207 $$
$$ 25(4a^2-12a+9)=100a^2-300a+225 $$
なので、分子は $(100a^2-300a+225)-(-36a^3+154a^2-300a+207)=36a^3-54a^2+18=18(2a^3-3a^2+1)$ である。
$2a^3-3a^2+1$ は $a=1$ で $2-3+1=0$ になる。$a=1$ は接点で $f(1)=L(1)$ だからである。よって $a-1$ で割り切れ、割り算をすると $2a^3-3a^2+1=(a-1)(2a^2-a-1)$ となる。さらに $2a^2-a-1$ も $a=1$ で $0$ になる。これは、$a=1$ では値だけでなく傾きも $f'(1)=L'(1)$ と一致し、曲線と接線が $a=1$ で「2 重に」接しているためである。$2a^2-a-1=(a-1)(2a+1)$ と因数分解できるので
$$ 2a^3-3a^2+1=(a-1)^2(2a+1) $$
で、分子は $18(a-1)^2(2a+1)$ である。$D=2\left(a-\frac32\right)^2+\frac92>0$ なので、$a>0$ で
$$ f(a)-L(a)=\frac{18(a-1)^2(2a+1)}{25D}\ge0 $$
であり、等号は $a=1$ のときだけである。
段 4(足す)。$f(a)\ge L(a)$、$f(b)\ge L(b)$、$f(c)\ge L(c)$ を足すと
$$ f(a)+f(b)+f(c)\ge\frac35-\frac{18}{25}(a+b+c-3)=\frac35 $$
となる。等号は $a=b=c=1$ のとき、元の変数では $a=b=c$ のときに限る。$\square$

大学数学で見ると

$f(a)+f(b)+f(c)$ の最小を示すには、$f$ が下に凸なら Jensen の不等式(相加平均・相乗平均と凸関数)が使える。しかし $f$ は $(0,3)$ 全体では下に凸でない。実際、prf-tnc-olympiad-1997 の段 2 の $f'(a)$ の分子を展開して整理すると $36a-54=18(2a-3)$ になるので、$f'(a)=\dfrac{18(2a-3)}{D^2}$($D=2a^2-6a+9$)である。もう一度商の微分を使うと
$$ f''(a)=\frac{36D^2-18(2a-3)\cdot2D\cdot D'}{D^4}=\frac{36D-36(2a-3)(4a-6)}{D^3}=\frac{36(2a^2-6a+9)-72(2a-3)^2}{D^3} $$
$$ =\frac{(72a^2-216a+324)-(288a^2-864a+648)}{D^3}=\frac{-216a^2+648a-324}{D^3}=-\frac{108(2a^2-6a+3)}{D^3} $$
となる($D'=4a-6=2(2a-3)$ を使った)。$2a^2-6a+3=0$ の解は $a=\frac{3\pm\sqrt3}2$ なので、$f''$ は $0< a<\frac{3-\sqrt3}2$ と $\frac{3+\sqrt3}2< a<3$ で負になる(図 6 の色の部分)。
それでも証明が通ったのは、thm-tnc-tangent-chord の証明で使ったのが「すべての点での接線」ではなく「弦の内分点 $z$ での接線」だけだったのと同じ理由である。ここでは和 $a+b+c=3$ が一定なので、平均の点 $a=1$ での接線 1 本だけでグラフを下から押さえれば足りる。凸性は十分条件にすぎない。この証明で使ったのは、等号の点での接線より上にある($f\ge L$ が $(0,3)$ で成り立つ)ことだけである。

関数 f(a) は色の部分で上に凸になるが、それでも a=1 での接線(破線)より上にあることを見る図 関数 f(a) は色の部分で上に凸になるが、それでも a=1 での接線(破線)より上にあることを見る図

例と反例

外した仮定・条件崩れる主張ボックス
接点の近くでの近さ(共有点の個数ではない)「共有点が 1 つの直線が接線」ex-tnc-not-one-point
$f''$ の符号が前後で変わる「$f''(a)=0$ なら変曲点」ex-tnc-x4
$f''(a)$ が存在し $a$ で連続「変曲点では $f''(a)=0$」ex-tnc-x-abs-x
定義域が区間「$f''>0$ ならグラフは接線の上」ex-tnc-not-interval
反例:第 2 次導関数が 0 でも変曲点とは限らない

$f(x)=x^4$ では $f''(x)=12x^2$ で、$f''(0)=0$ である。しかし $x\ne0$ では $f''(x)>0$ で、$0$ の前後で符号が変わらないので、原点は変曲点ではない。実際、原点での接線は $y=0$ で、$x^4\ge0$ なので曲線は接線の上にあり、横切らない(thm-tnc-above-tangent のとおり)。$f''(a)=0$ は変曲点であるための十分条件ではない。

反例:第 2 次導関数がない変曲点

$f(x)=x|x|$ とする。$x\ge0$ で $x^2$、$x<0$ で $-x^2$ なので、$f'(x)=2|x|$($x=0$ でも差分商 $\frac{h|h|}h=|h|\to0$ から $f'(0)=0$)で、$f'$ は連続である。$x>0$ で $f''=2$、$x<0$ で $f''=-2$ なので、原点は def-tnc-inflection の意味の変曲点である。しかし $f'(x)=2|x|$ は $x=0$ で微分できず、$f''(0)$ は存在しない。prop-tnc-inflection-cross の後半の仮定($f''(a)$ が存在して連続)を外すと、「変曲点では $f''(a)=0$」は成り立たない。それでも前半の結論は成り立ち、$f(x)-0=x|x|$ は原点の前後で符号を変える。

反例:定義域が区間でないとき

$f(x)=\dfrac1{x^2}$($x\ne0$)では $f''(x)=\dfrac6{x^4}>0$ が定義域のすべての点で成り立つ。点 $(1,1)$ での接線は $f'(1)=-2$ から $y=3-2x$ である。ところが $x=-2$ では $f(-2)=\frac14$、接線の値は $7$ で、グラフは接線の下にある。thm-tnc-above-tangent の証明の段 2 は、$a$ と $x$ の間の点すべてで $f''\ge0$ であることを使うが、$-2$ と $1$ の間には定義されない点 $0$ がある。

さらに先へ

  • 凸関数。def-tnc-convex の「下に凸」は、大学では凸関数と呼ぶ。凸関数は微分できなくてもよく(例:$|x|$)、そのときは接線の代わりに「グラフの下にあって 1 点で接する直線」(支持直線)を使う。重み付きの平均に対する Jensen の不等式と、相加平均・相乗平均の不等式への応用は 相加平均・相乗平均と凸関数、一般論は 凸関数 で扱う。
  • 多変数。2 変数関数のグラフ(曲面)では、接線の代わりに接平面を考え、第 2 次導関数の代わりに第 2 次偏導関数を並べた行列(Hesse行列)で凹凸を判定する。
  • 曲線の曲率。rem-tnc-curvature-meaning の見方は、媒介変数表示された平面曲線や空間曲線にもそのまま広がり、曲線の形は曲率(空間ではさらに捩率)でほぼ決まる(doC16 Chapter 1)。

関連項目

参考文献

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