接線・法線と曲線の凹凸(tangent lines, normal lines and concavity)とは、微分可能な $f$ のグラフの点 $(a,f(a))$ での接線 $y=f(a)+f'(a)(x-a)$、それに垂直な法線、第 2 次導関数で調べる凹凸をグラフの形で捉え直す主題である。接線は共有点の個数ではなく、差が $x-a$ より速く $0$ に近づく唯一の直線(最良の 1 次近似)と特徴づけられる。開区間で $f''\ge0$ ならグラフはどの接線より上にあり、どの接線より上にある微分可能な関数はグラフが弦の下にある(下に凸)。$e^x\ge1+x$ などはここから従う。$f''$ の符号が変わる変曲点では曲線が接線を横切るが、$f''(a)=0$ だけでは変曲点とは限らない($x^4$)。曲率は $\frac{|f''|}{(1+f'^2)^{3/2}}$ である。
前提知識: 微分係数と導関数の定義(高校数学), 平均値の定理, 指数関数, 対数関数, 三角関数
高校の数学 II・III では、曲線 $y=f(x)$ 上の点 $(a,f(a))$ における接線の方程式を $y=f(a)+f'(a)(x-a)$ と習う。接線に垂直な直線が法線である。また、第 2 次導関数 $f''(x)$ の符号で曲線の凹凸を調べ、凹凸が入れ替わる点を変曲点と呼ぶ。
$f(x)=x^2$ の点 $(1,1)$ での接線と法線を求める。$f'(x)=2x$ なので $f'(1)=2$ で、接線は
$$
y=1+2(x-1)=2x-1
$$
である。法線は $(1,1)$ を通り、傾きが $-\frac12$(接線の傾き $2$ との積が $-1$)の直線なので
$$
y=1-\frac12(x-1)=-\frac12x+\frac32
$$
である。
点 $(0,-4)$ から放物線 $y=x^2$ に引いた接線を求める。接点を $(t,t^2)$ とすると、接線は $y=2t(x-t)+t^2=2tx-t^2$ である。これが $(0,-4)$ を通るので $-4=-t^2$、すなわち $t=\pm2$ である。接線は $y=4x-4$ と $y=-4x-4$ の 2 本になる。
図1 の左は ex-tnc-parabola の接線と法線、右はこの例の 2 本の接線(接点 $(2,4)$ と $(-2,4)$)を描いたものである。
左は放物線 y=x² の点 (1,1) での接線(実線)と法線(破線)、右は点 (0,−4) から引いた 2 本の接線を見る図
$f(x)=x^3-3x$ とする。$f'(x)=3x^2-3=3(x-1)(x+1)$、$f''(x)=6x$ である。
| $x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $-3$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f''(x)$ | $-$ | $-6$ | $-$ | $0$ | $+$ | $6$ | $+$ |
| $f(x)$ | 増加・上に凸 | $2$ | 減少・上に凸 | $0$ | 減少・下に凸 | $-2$ | 増加・下に凸 |
$x=0$ の前後で $f''$ の符号が変わるので、点 $(0,0)$ が変曲点である。
これらの計算の裏には、次の 4 つの疑問がある。
| 高校での計算 | 大学での言葉 | 本記事の箇所 |
|---|---|---|
| 接線の方程式 | 最良の 1 次近似 | prop-tnc-best-linear |
| $f''>0$ の区間で下に凸 | 凸関数(弦の下にある)、接線の上にある | def-tnc-convex、thm-tnc-above-tangent |
| $e^x\ge1+x$ などの不等式 | 接線による下からの評価 | ex-tnc-tangent-inequalities |
| 変曲点 | 曲線が接線を横切る点 | prop-tnc-inflection-cross |
| 曲線外の点から引く接線の本数 | 接点を未知数とする方程式の実数解の個数 | ex-tnc-cubic-tangents |
| 「曲がり方が急」 | 曲率・曲率半径 | def-tnc-curvature |
以下、$f$ は実数の区間で定義された実数値関数とする。
$f$ が $x=a$ で微分可能なとき、直線
$$
y=f(a)+f'(a)(x-a)
$$
を、曲線 $y=f(x)$ の点 $(a,f(a))$ における接線という。点 $(a,f(a))$ を通り接線に垂直な直線を法線という。法線は、$f'(a)\ne0$ なら $y=f(a)-\dfrac1{f'(a)}(x-a)$、$f'(a)=0$ なら $x=a$ である。
放物線と直線が接する条件を判別式で書く方法は 2次方程式の判別式の正体 で扱う。
高校では、接線を「曲線に接する直線」と絵で覚えることが多い。しかし「曲線と 1 点だけを共有する直線」と言い換えると、正しくない。
$y=x^3$ の $x=1$ での接線は $y=1+3(x-1)=3x-2$ である。曲線との共有点は $x^3=3x-2$ の解で、
$$
x^3-3x+2=(x-1)^2(x+2)=0
$$
より $x=1$ と $x=-2$ の 2 つある。接線でも、離れたところで曲線ともう一度交わりうる。
逆に、放物線 $y=x^2$ と $y$ 軸(直線 $x=0$)は原点の 1 点だけを共有するが、$y$ 軸は原点での接線ではない(接線は $y=0$)。
1 つ目の例から、接線でも共有点が 1 つとは限らない。つまり「共有点が 1 つ」は接線であるための必要条件ではない。2 つ目の例から、共有点が 1 つでも接線とは限らない。つまり「共有点が 1 つ」は接線であるための十分条件でもない。
接線を特徴づけるのは、共有点の個数ではなく、接点の近くでの近さである。
$f$ が $x=a$ で微分可能とし、$m$ を実数、$\ell_m(x)=f(a)+m(x-a)$ を点 $(a,f(a))$ を通る傾き $m$ の直線とする。このとき
$$
\lim_{x\to a}\frac{f(x)-\ell_m(x)}{x-a}=0
$$
となるのは $m=f'(a)$ のとき、そのときに限る。
$x\ne a$ のとき、$\ell_m$ の式を代入すると
$$
\frac{f(x)-\ell_m(x)}{x-a}=\frac{f(x)-f(a)-m(x-a)}{x-a}=\frac{f(x)-f(a)}{x-a}-m
$$
である。右辺の第 1 項は微分係数の定義により $x\to a$ で $f'(a)$ に近づく。よって左辺は $f'(a)-m$ に近づく。これが $0$ になるのは $m=f'(a)$ のときだけである。$\square$
言い換えると、接線との差 $f(x)-\ell(x)$ は、$x-a$ よりも速く $0$ に近づく。傾きの違う直線との差は、$x-a$ と同じ程度にしか小さくならない。
$f(x)=\sqrt x$ の $x=4$ での接線は、$f'(x)=\frac1{2\sqrt x}$ から $f'(4)=\frac14$ なので $y=2+\frac14(x-4)$ である。
| $x$ | 接線の値 | $\sqrt x$ | 差 | 差 $\mathbin{÷}(x-4)$ |
|---|---|---|---|---|
| $5$ | $2.25$ | $2.23607$ | $0.0139$ | $0.0139$ |
| $4.1$ | $2.025$ | $2.024846$ | $0.000154$ | $0.00154$ |
| $4.01$ | $2.0025$ | $2.0024984$ | $0.0000016$ | $0.00016$ |
$x$ を $4$ に $10$ 分の $1$ ずつ近づけると、差 $\mathbin{÷}(x-4)$ もほぼ $10$ 分の $1$ ずつ小さくなり、$0$ に近づく。これが prop-tnc-best-linear の主張である。
接線の不等式と、相加相乗平均の不等式とのつながりは 曲線の凹凸と接線 で扱う。
高校の教科書では「$f''(x)>0$ となる区間で曲線は下に凸」と習う。ここでは凹凸を、第 2 次導関数を使わずに、グラフの形で定義する。
$I$ を区間とする。$I$ 上の関数 $f$ が、$I$ の任意の 2 点 $x< y$ と $0< t<1$ を満たす任意の $t$ について
$$
f\bigl((1-t)x+ty\bigr)\le(1-t)f(x)+tf(y)
$$
を満たすとき、$f$ は $I$ で下に凸であるという。$-f$ が下に凸のとき、$f$ は上に凸であるという。
左辺は $x$ と $y$ を $t:(1-t)$ に内分する点での $f$ の値、右辺は 2 点 $(x,f(x))$、$(y,f(y))$ を結ぶ線分(弦)の同じ位置での高さである。つまり「下に凸」とは、グラフが弦の下にあることである。
$f(x)=x^2$ で、$x=0$、$y=2$、$t=\frac12$ とすると、左辺は $f(1)=1$、右辺は $\frac12\cdot0+\frac12\cdot4=2$ で、確かに $1\le2$ である。
一般の $x$、$y$、$t$ でも、右辺から左辺を引いて展開すると
$$
(1-t)x^2+ty^2-\bigl((1-t)x+ty\bigr)^2=t(1-t)(x-y)^2\ge0
$$
となる($(1-t)-(1-t)^2=t(1-t)$、$t-t^2=t(1-t)$ を使って整理する)。よって $x^2$ は実数全体で下に凸である。
証明には次の定理を使う。
平均値の定理:$a< b$ とし、$f$ が $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能ならば、$f(b)-f(a)=f'(c)(b-a)$ となる $c\in(a,b)$ がある(Leb26 Theorem 4.2.4、p. 164。本記事では証明しない)。
$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で 2 回微分可能とする。$I$ で $f''\ge0$ ならば、$I$ の 2 点 $u< v$ について $f'(u)\le f'(v)$ である。$I$ で $f''>0$ ならば $f'(u)< f'(v)$ である。
$f'$ は $I$ で微分可能なので、$[u,v]$ で連続、$(u,v)$ で微分可能である。rem-tnc-premises の平均値の定理を $f'$ に使うと、$f'(v)-f'(u)=f''(c)(v-u)$ となる $c\in(u,v)$ がある。$v-u>0$ なので、$f''(c)\ge0$ なら $f'(v)-f'(u)\ge0$、$f''(c)>0$ なら $f'(v)-f'(u)>0$ である。$\square$
$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で 2 回微分可能で、$I$ で $f''\ge0$ とする。このとき、$I$ の任意の 2 点 $a$、$x$ について
$$
f(x)\ge f(a)+f'(a)(x-a)
$$
が成り立つ。$I$ で $f''>0$ ならば、$x\ne a$ のとき不等号は $>$ になる。
方針:接線との差 $g(x)=f(x)-f(a)-f'(a)(x-a)$ が $0$ 以上であることを示す。$g(a)=0$、$g'(x)=f'(x)-f'(a)$ である。
段 1($x>a$ のとき)。$g$ は $[a,x]$ で連続、$(a,x)$ で微分可能なので、平均値の定理(rem-tnc-premises)により $g(x)=g(x)-g(a)=g'(c)(x-a)=\bigl(f'(c)-f'(a)\bigr)(x-a)$ となる $c\in(a,x)$ がある。$a< c$ なので lem-tnc-monotone により $f'(c)-f'(a)\ge0$ で、$x-a>0$ だから $g(x)\ge0$ である。
段 2($x< a$ のとき)。同じく $g(a)-g(x)=\bigl(f'(c)-f'(a)\bigr)(a-x)$ となる $c\in(x,a)$ がある。$c< a$ なので $f'(c)-f'(a)\le0$、$a-x>0$ だから $g(a)-g(x)\le0$、すなわち $g(x)\ge g(a)=0$ である。
段 3($f''>0$ のとき)。段 1・段 2 で lem-tnc-monotone の後半を使うと、$f'(c)-f'(a)$ は段 1 で正、段 2 で負になる。よって $x\ne a$ で $g(x)>0$ である。$\square$
e^x のグラフが、x=−1.2、0、1 の 3 点で引いた接線(実線)のどれよりも上にあり、x=±1.5 の 2 点を結ぶ弦(破線)の下にあることを見る図
次の定理は、「接線の上にある」ことから「弦の下にある」ことを導く。
$I$ を開区間とし、$f$ は $I$ で微分可能とする。$I$ の任意の 2 点 $a$、$x$ について $f(x)\ge f(a)+f'(a)(x-a)$ が成り立つならば、$f$ は $I$ で下に凸である。
方針:弦の上の点の真下にある点 $z$ での接線を使い、両端の値を下から押さえて足し合わせる。
$x< y$ を $I$ の 2 点、$0< t<1$ とし、$z=(1-t)x+ty$ とおく。$z$ は $x$ と $y$ の間にあるので $I$ に属する。仮定を $a=z$ として、点 $x$ と点 $y$ に使うと
$$
f(x)\ge f(z)+f'(z)(x-z),\qquad f(y)\ge f(z)+f'(z)(y-z)
$$
である。1 つ目の式に $1-t>0$、2 つ目の式に $t>0$ を掛けて足すと
$$
(1-t)f(x)+tf(y)\ge f(z)+f'(z)\bigl((1-t)(x-z)+t(y-z)\bigr)
$$
となる。最後の括弧の中は $(1-t)x+ty-z=0$ なので、右辺は $f(z)$ である。よって $(1-t)f(x)+tf(y)\ge f\bigl((1-t)x+ty\bigr)$ で、def-tnc-convex により $f$ は下に凸である。$\square$
thm-tnc-above-tangent と thm-tnc-tangent-chord を合わせると、「開区間で $f''\ge0$ ならば、$f$ は下に凸で、グラフはどの接線よりも上にある」ことが分かる。高校で習う凹凸の判定法は、これを使っている。
$f$ が $a$ を含む開区間 $J$ で微分可能で、$f'$ が $J$ で連続であるとする。ある $\delta>0$ があって、$f$ が $(a-\delta,a)$ と $(a,a+\delta)$ で 2 回微分可能であり、一方の区間で $f''>0$、他方の区間で $f''<0$ となるとき、点 $(a,f(a))$ を曲線 $y=f(x)$ の変曲点という。
この定義で使うのは「$a$ の前後で $f''$ の符号が変わる」ことだけで、$f''(a)=0$ は条件に入れていない。$f''(a)=0$ でも変曲点にならない例は ex-tnc-x4 で見る。また、$f''(a)$ が存在することも要求していない。その理由は ex-tnc-x-abs-x で見る。
y=x³−3x が変曲点 (0,0) で接線 y=−3x を横切り、左側で上に凸、右側で下に凸になることを見る図
点 $(a,f(a))$ が def-tnc-inflection の意味の変曲点で、$\delta$ はその定義のものとする。$g(x)=f(x)-f(a)-f'(a)(x-a)$ とおくと、$g(x)$ は $a-\delta< x< a$ と $a< x< a+\delta$ とで符号が逆になる(どちらの側でも $0$ にならない)。さらに、$f''(a)$ が存在して $f''$ が $a$ で連続ならば、$f''(a)=0$ である。
$(a-\delta,a)$ で $f''<0$、$(a,a+\delta)$ で $f''>0$ の場合を示す。逆の場合は $-f$ に同じ議論を使えばよい。
段 1($f'(x)>f'(a)$ を示す)。$a< x< a+\delta$ とする。$f'$ は $[a,x]$ で連続(定義の仮定)、$(a,x)$ で微分可能なので、平均値の定理により $f'(x)-f'(a)=f''(c)(x-a)$ となる $c\in(a,x)$ がある。$f''(c)>0$、$x-a>0$ なので $f'(x)>f'(a)$ である。$a-\delta< x< a$ のときも同様に $f'(a)-f'(x)=f''(c)(a-x)$、$c\in(x,a)$ で $f''(c)<0$ なので $f'(x)>f'(a)$ である。
段 2($g$ の符号)。$g'(x)=f'(x)-f'(a)$ は、段 1 により $a$ 以外で正である。$a< x< a+\delta$ なら、平均値の定理により $g(x)=g(x)-g(a)=g'(c)(x-a)$、$c\in(a,x)$ で、$g'(c)>0$ なので $g(x)>0$ である。$a-\delta< x< a$ なら $g(a)-g(x)=g'(c)(a-x)>0$ なので $g(x)<0$ である。
段 3($f''(a)=0$)。$f''$ が $a$ で連続なら、$f''(a)=\lim_{x\to a-0}f''(x)$ で、負の値の極限なので $f''(a)\le0$ である。同様に $f''(a)=\lim_{x\to a+0}f''(x)\ge0$ である。よって $f''(a)=0$ である。$\square$
曲線の外の点から引ける接線の本数は、接点の $x$ 座標 $t$ についての方程式の実数解の個数で決まる。3 次関数では、この本数が変曲点での接線と関係する。
$f(x)=x^3-3x$ とし、点 $(p,q)$ から曲線 $y=f(x)$ に引ける接線の本数を調べる。
段 1(接線の式)。接点を $(t,f(t))$ とすると、$f'(t)=3t^2-3$ なので接線は
$$
y=(3t^2-3)(x-t)+t^3-3t=(3t^2-3)x-2t^3
$$
である。これが $(p,q)$ を通る条件は $q=(3t^2-3)p-2t^3$、すなわち
$$
h(t)=2t^3-3pt^2+3p+q=0
$$
である。
段 2(接点が違えば接線も違う)。$s\ne t$ の 2 つの接点で接線が一致したとすると、傾きから $3s^2-3=3t^2-3$、よって $s=-t$($t\ne0$)で、$y$ 切片から $-2s^3=-2t^3$、よって $s=t$ となり矛盾する。したがって、接線の本数は $h(t)=0$ の異なる実数解の個数に等しい。
段 3(実数解の個数)。$h'(t)=6t^2-6pt=6t(t-p)$ である。$p\ne0$ なら $h$ は $t=0$ と $t=p$ で極値をとり、$h(0)=3p+q$、$h(p)=-p^3+3p+q$ である。3 次関数 $h$ が異なる 3 つの実数解をもつのは、2 つの極値が異符号のとき、すなわち $h(0)h(p)<0$ のときである。これを書き直すと、$q$ が $-3p$ と $p^3-3p$ の間にある(両端を含まない)ことになる。
$y=-3x$ は変曲点 $(0,0)$ での接線、$y=p^3-3p$ は曲線そのものの高さである。したがって、曲線と変曲点での接線とに挟まれた部分(図 4 の色の部分)の点からは 3 本、それ以外の点($p=0$ の点を含む)からは 1 本または 2 本の接線が引ける。
たとえば $(p,q)=(2,0)$ では $-6<0<2$ なので 3 本引ける。$h(t)=2t^3-6t^2+6=0$ の解は $t=-0.8794$、$1.3473$、$2.5321$(小数第 5 位を四捨五入)で、接線の傾きはそれぞれ $-0.680$、$2.446$、$16.234$ である。接点は $(-0.8794,\,1.9581)$、$(1.3473,\,-1.5963)$、$(2.5321,\,8.6382)$ で、図4 の 3 つの色の点である。
色の部分(y=x³−3x と変曲点での接線 y=−3x に挟まれた部分)の点、たとえば (2,0) から 3 本の接線(色の点が接点)が引けることを見る図
3 次方程式の実数解の個数を判別式で判定する話は 3次方程式と多項式の判別式 で扱う。
凹凸は曲がる向きを表す。曲がり方の強さは、同じように曲がる円の半径で測れる。本節は大学の微分幾何学への入口として、定義と計算例だけを述べる。
$f$ が 2 回微分可能なとき、曲線 $y=f(x)$ の点 $(x,f(x))$ における曲率を
$$
\kappa(x)=\frac{|f''(x)|}{\bigl(1+f'(x)^2\bigr)^{3/2}}
$$
と定める。$\kappa(x)>0$ のとき、$\frac1{\kappa(x)}$ を曲率半径といい、その点で曲線に接し、曲線の凹んだ側に中心をもつ半径 $\frac1{\kappa(x)}$ の円を曲率円という。
分母の $(1+f'^2)^{3/2}$ は、グラフが傾いているときの補正である。定義が「円の曲率は半径の逆数」と合うことを確かめる。
半径 $r$ の円の下半分 $f(x)=-\sqrt{r^2-x^2}$($-r< x< r$)を考える。微分すると
$$
f'(x)=\frac{x}{\sqrt{r^2-x^2}},\qquad f''(x)=\frac{r^2}{(r^2-x^2)^{3/2}}
$$
である($f''$ は $f'$ を商の微分で計算し、分子 $\sqrt{r^2-x^2}+\frac{x^2}{\sqrt{r^2-x^2}}=\frac{r^2}{\sqrt{r^2-x^2}}$ をまとめる)。また $1+f'(x)^2=\frac{r^2-x^2+x^2}{r^2-x^2}=\frac{r^2}{r^2-x^2}$ なので、$(1+f'^2)^{3/2}=\frac{r^3}{(r^2-x^2)^{3/2}}$ である。よって
$$
\kappa(x)=\frac{r^2}{(r^2-x^2)^{3/2}}\cdot\frac{(r^2-x^2)^{3/2}}{r^3}=\frac1r
$$
となり、円のどの点でも曲率は $\frac1r$、曲率半径は $r$ である。
放物線 y=x² の曲率円。頂点では半径 1/2 の小さな円、点 (1,1) では半径 5√5/2 の大きな円が曲線に沿うことを見る図
接線が $x$ 軸となす角を $\theta$、曲線に沿って測った長さを $s$ とすると、曲率は $\left|\frac{d\theta}{ds}\right|$、すなわち「長さ 1 進むあいだに接線の向きが変わる割合」であり、def-tnc-curvature の式はこれを $x$ で書き直したものである。また曲率円は、曲線上の近い 3 点を通る円の極限になる。本記事ではこれらを証明しない(doC16 Chapter 1, §1-5。前者は 曲率(高校数学) で証明する)。曲線の長さは 媒介変数表示と曲線の長さ で扱う。
接線でグラフを下から押さえる考え方は、不等式の問題で「接線の技法」と呼ばれる。
正の実数 $a$、$b$、$c$ について
$$
\frac{(b+c-a)^2}{(b+c)^2+a^2}+\frac{(c+a-b)^2}{(c+a)^2+b^2}+\frac{(a+b-c)^2}{(a+b)^2+c^2}\ge\frac35
$$
が成り立つことを証明し、等号が成り立つ条件を求めよ。
(出典:1997 年第 7 回日本数学オリンピック本選 第 2 問。問題文は本記事の言葉で述べた。Oly97)
段 1(和を 3 にそろえる)。左辺の各項は、$a$、$b$、$c$ を同じ正の数倍しても変わらない(分子・分母とも 2 次式)。そこで $a+b+c=3$ としてよい。このとき $b+c=3-a$ なので、第 1 項は
$$
f(a)=\frac{(3-2a)^2}{(3-a)^2+a^2}=\frac{4a^2-12a+9}{2a^2-6a+9}
$$
で、第 2 項・第 3 項は $f(b)$、$f(c)$ である。示すことは $f(a)+f(b)+f(c)\ge\frac35$ である。
段 2(等号の候補での接線)。$a=b=c=1$ で等号になると予想し、$f$ の $a=1$ での接線を求める。分子を $N=4a^2-12a+9$、分母を $D=2a^2-6a+9$ とおくと、$N'=8a-12$、$D'=4a-6$ である。$a=1$ では $N=1$、$D=5$ なので $f(1)=\frac15$ である。商の微分により
$$
f'(a)=\frac{N'D-ND'}{D^2}=\frac{(8a-12)(2a^2-6a+9)-(4a^2-12a+9)(4a-6)}{(2a^2-6a+9)^2}
$$
で、$a=1$ では $N'=-4$、$D'=-2$ なので、分子は $(-4)\cdot5-1\cdot(-2)=-18$、分母は $5^2=25$ である。よって $f'(1)=-\frac{18}{25}$ で、接線は $L(a)=\frac15-\frac{18}{25}(a-1)=\frac{5-18a+18}{25}=\frac{23-18a}{25}$ である。
段 3(グラフが接線の上にある)。$f(a)=\frac ND$ と $L(a)=\frac{23-18a}{25}$ を通分すると
$$
f(a)-L(a)=\frac{25(4a^2-12a+9)-(23-18a)D}{25D}
$$
である。分子の 2 つの部分を展開する。
$$
(23-18a)(2a^2-6a+9)=46a^2-138a+207-36a^3+108a^2-162a=-36a^3+154a^2-300a+207
$$
$$
25(4a^2-12a+9)=100a^2-300a+225
$$
なので、分子は $(100a^2-300a+225)-(-36a^3+154a^2-300a+207)=36a^3-54a^2+18=18(2a^3-3a^2+1)$ である。
$2a^3-3a^2+1$ は $a=1$ で $2-3+1=0$ になる。$a=1$ は接点で $f(1)=L(1)$ だからである。よって $a-1$ で割り切れ、割り算をすると $2a^3-3a^2+1=(a-1)(2a^2-a-1)$ となる。さらに $2a^2-a-1$ も $a=1$ で $0$ になる。これは、$a=1$ では値だけでなく傾きも $f'(1)=L'(1)$ と一致し、曲線と接線が $a=1$ で「2 重に」接しているためである。$2a^2-a-1=(a-1)(2a+1)$ と因数分解できるので
$$
2a^3-3a^2+1=(a-1)^2(2a+1)
$$
で、分子は $18(a-1)^2(2a+1)$ である。$D=2\left(a-\frac32\right)^2+\frac92>0$ なので、$a>0$ で
$$
f(a)-L(a)=\frac{18(a-1)^2(2a+1)}{25D}\ge0
$$
であり、等号は $a=1$ のときだけである。
段 4(足す)。$f(a)\ge L(a)$、$f(b)\ge L(b)$、$f(c)\ge L(c)$ を足すと
$$
f(a)+f(b)+f(c)\ge\frac35-\frac{18}{25}(a+b+c-3)=\frac35
$$
となる。等号は $a=b=c=1$ のとき、元の変数では $a=b=c$ のときに限る。$\square$
$f(a)+f(b)+f(c)$ の最小を示すには、$f$ が下に凸なら Jensen の不等式(相加平均・相乗平均と凸関数)が使える。しかし $f$ は $(0,3)$ 全体では下に凸でない。実際、prf-tnc-olympiad-1997 の段 2 の $f'(a)$ の分子を展開して整理すると $36a-54=18(2a-3)$ になるので、$f'(a)=\dfrac{18(2a-3)}{D^2}$($D=2a^2-6a+9$)である。もう一度商の微分を使うと
$$
f''(a)=\frac{36D^2-18(2a-3)\cdot2D\cdot D'}{D^4}=\frac{36D-36(2a-3)(4a-6)}{D^3}=\frac{36(2a^2-6a+9)-72(2a-3)^2}{D^3}
$$
$$
=\frac{(72a^2-216a+324)-(288a^2-864a+648)}{D^3}=\frac{-216a^2+648a-324}{D^3}=-\frac{108(2a^2-6a+3)}{D^3}
$$
となる($D'=4a-6=2(2a-3)$ を使った)。$2a^2-6a+3=0$ の解は $a=\frac{3\pm\sqrt3}2$ なので、$f''$ は $0< a<\frac{3-\sqrt3}2$ と $\frac{3+\sqrt3}2< a<3$ で負になる(図 6 の色の部分)。
それでも証明が通ったのは、thm-tnc-tangent-chord の証明で使ったのが「すべての点での接線」ではなく「弦の内分点 $z$ での接線」だけだったのと同じ理由である。ここでは和 $a+b+c=3$ が一定なので、平均の点 $a=1$ での接線 1 本だけでグラフを下から押さえれば足りる。凸性は十分条件にすぎない。この証明で使ったのは、等号の点での接線より上にある($f\ge L$ が $(0,3)$ で成り立つ)ことだけである。
関数 f(a) は色の部分で上に凸になるが、それでも a=1 での接線(破線)より上にあることを見る図
| 外した仮定・条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 接点の近くでの近さ(共有点の個数ではない) | 「共有点が 1 つの直線が接線」 | ex-tnc-not-one-point |
| $f''$ の符号が前後で変わる | 「$f''(a)=0$ なら変曲点」 | ex-tnc-x4 |
| $f''(a)$ が存在し $a$ で連続 | 「変曲点では $f''(a)=0$」 | ex-tnc-x-abs-x |
| 定義域が区間 | 「$f''>0$ ならグラフは接線の上」 | ex-tnc-not-interval |
$f(x)=x^4$ では $f''(x)=12x^2$ で、$f''(0)=0$ である。しかし $x\ne0$ では $f''(x)>0$ で、$0$ の前後で符号が変わらないので、原点は変曲点ではない。実際、原点での接線は $y=0$ で、$x^4\ge0$ なので曲線は接線の上にあり、横切らない(thm-tnc-above-tangent のとおり)。$f''(a)=0$ は変曲点であるための十分条件ではない。
$f(x)=x|x|$ とする。$x\ge0$ で $x^2$、$x<0$ で $-x^2$ なので、$f'(x)=2|x|$($x=0$ でも差分商 $\frac{h|h|}h=|h|\to0$ から $f'(0)=0$)で、$f'$ は連続である。$x>0$ で $f''=2$、$x<0$ で $f''=-2$ なので、原点は def-tnc-inflection の意味の変曲点である。しかし $f'(x)=2|x|$ は $x=0$ で微分できず、$f''(0)$ は存在しない。prop-tnc-inflection-cross の後半の仮定($f''(a)$ が存在して連続)を外すと、「変曲点では $f''(a)=0$」は成り立たない。それでも前半の結論は成り立ち、$f(x)-0=x|x|$ は原点の前後で符号を変える。
$f(x)=\dfrac1{x^2}$($x\ne0$)では $f''(x)=\dfrac6{x^4}>0$ が定義域のすべての点で成り立つ。点 $(1,1)$ での接線は $f'(1)=-2$ から $y=3-2x$ である。ところが $x=-2$ では $f(-2)=\frac14$、接線の値は $7$ で、グラフは接線の下にある。thm-tnc-above-tangent の証明の段 2 は、$a$ と $x$ の間の点すべてで $f''\ge0$ であることを使うが、$-2$ と $1$ の間には定義されない点 $0$ がある。
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