Routhの定理

同義語:ラウスの定理Routh's theorem

概要

Routhの定理(Routh's theorem)とは、三角形 $ABC$ の辺 $BC,CA,AB$ 上の頂点と異なる点 $D,E,F$ について $x=\frac{BD}{DC}$, $y=\frac{CE}{EA}$, $z=\frac{AF}{FB}$ とすると、Ceva 線 $AD,BE,CF$ が囲む三角形の面積が $\triangle ABC$ の $\frac{(xyz-1)^2}{(xy+x+1)(yz+y+1)(zx+z+1)}$ 倍であるという定理である。辺の $1:2$ の分点と結ぶと $\frac17$ になる。高校では Menelaus の定理で角の三角形の面積を全体から引き、大学では交点の重心座標を並べた $3\times3$ の行列式として分子 $(xyz-1)^2$ が現れる。面積が $0$ になる $xyz=1$ の場合が Cevaの定理である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の面積比, Menelausの定理(高校数学), Cevaの定理(高校数学)

高校での出発点:1 点で交わらない 3 本の線

三角形の頂点と向かい合う辺の上の点を結ぶ 3 本の線分(Ceva 線)は、Cevaの定理(高校数学) の条件を満たすときだけ 1 点で交わる。条件を満たさないと、3 本の線分は真ん中に小さな三角形を囲む。その三角形の面積は、もとの三角形のどれだけか。まず座標で計算してみる。

辺を 1:2 に分ける点と結ぶ

三角形の重心(高校数学) の反例と同じく、$A(0,0)$、$B(3,0)$、$C(0,3)$ をとり、辺 $BC$、$CA$、$AB$ をそれぞれ $B$、$C$、$A$ の側から $1:2$ に分ける点を $D(2,1)$、$E(0,2)$、$F(1,0)$ とする。$\triangle ABC=\dfrac12\cdot3\cdot3=\dfrac92$ である。
(1) 直線の式。直線 $AD$ は $y=\dfrac12x$、直線 $BE$ は $B(3,0)$ と $E(0,2)$ を通るので $2x+3y=6$、直線 $CF$ は $C(0,3)$ と $F(1,0)$ を通るので $3x+y=3$ である。
(2) 交点。$AD$ と $BE$:$2x+\dfrac32x=6$ より $x=\dfrac{12}7$ で、$R\left(\dfrac{12}7,\dfrac67\right)$。$BE$ と $CF$:$y=3-3x$ を代入して $2x+9-9x=6$ より $x=\dfrac37$ で、$P\left(\dfrac37,\dfrac{12}7\right)$。$CF$ と $AD$:$3x+\dfrac12x=3$ より $x=\dfrac67$ で、$Q\left(\dfrac67,\dfrac37\right)$。
(3) 面積。$\overrightarrow{RP}=\left(-\dfrac97,\dfrac67\right)$、$\overrightarrow{RQ}=\left(-\dfrac67,-\dfrac37\right)$ なので、靴ひも公式(2 本のベクトルが張る三角形の面積 $\frac12\lvert u_1w_2-u_2w_1\rvert$)により
$$ \triangle PQR=\frac12\left\lvert\left(-\frac97\right)\left(-\frac37\right)-\frac67\cdot\left(-\frac67\right)\right\rvert=\frac12\cdot\frac{27+36}{49}=\frac9{14} $$
である。これは $\triangle ABC=\dfrac92$ のちょうど $\dfrac9{14}\mathbin{÷}\dfrac92=\dfrac17$ である。

辺を 1:2 に分ける点と頂点を結ぶ 3 本の線。3 つの色の三角形 ABR、BCP、CAQ はどれも △ABC の 2/7、真ん中の赤い三角形 PQR は 1/7 辺を 1:2 に分ける点と頂点を結ぶ 3 本の線。3 つの色の三角形 ABR、BCP、CAQ はどれも △ABC の 2/7、真ん中の赤い三角形 PQR は 1/7
$\dfrac17$ という簡単な値が出た。比を変えるとどうなるか、もう 1 つ計算する。

1 つの辺だけ 2:1 に分ける

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$($\triangle ABC=18$)で、$D$ は辺 $BC$ を $2:1$ に分ける点 $D(2,4)$、$E$、$F$ は辺 $CA$、$AB$ の中点 $E(0,3)$、$F(3,0)$ とする。$\dfrac{BD}{DC}=2$、$\dfrac{CE}{EA}=\dfrac{AF}{FB}=1$ である。
(1) 直線 $AD$ は $y=2x$、直線 $BE$ は $x+2y=6$、直線 $CF$ は $x+\dfrac12y=3$、つまり $2x+y=6$ である。
(2) $AD$ と $BE$:$x+4x=6$ より $R\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$。$BE$ と $CF$:2 式を引いて $x=y$、$3x=6$ より $P(2,2)$。$CF$ と $AD$:$2x+2x=6$ より $Q\left(\dfrac32,3\right)$。
(3) $\overrightarrow{PQ}=\left(-\dfrac12,1\right)$、$\overrightarrow{PR}=\left(-\dfrac45,\dfrac25\right)$ なので
$$ \triangle PQR=\frac12\left\lvert\left(-\frac12\right)\cdot\frac25-1\cdot\left(-\frac45\right)\right\rvert=\frac12\cdot\frac35=\frac3{10} $$
である。$\triangle ABC$ の $\dfrac{3/10}{18}=\dfrac1{60}$ である。

2 つの例の $\dfrac17$ と $\dfrac1{60}$ は、3 つの比だけから計算できる。その公式が Routhの定理 である。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 3 本の Ceva 線が囲む三角形の面積は、辺の比でどう書けるか。→ thm-routh-main
  2. その公式を、高校の道具(面積比と Menelaus の定理)で導けるか。→ lem-routh-corner、prop-routh-decomp
  3. Cevaの定理は、この公式のどんな特別な場合か。→ cor-routh-ceva
  4. 分母と分子に出てくる式は、大学数学では何か。→ prop-routh-det、prop-routh-bary
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    Menelaus の定理で線分の比を求める角の三角形 $ABR$ の面積交点の重心座標 $(xy:1:x)$
    面積を足し引きする4 つの三角形への分解符号付き面積の恒等式
    3 本が 1 点で交わる(Ceva)真ん中の三角形の面積が $0$行列式 $(xyz-1)^2=0$
    3 点が一直線上にある(Menelaus)三角形 $DEF$ の面積が $0$行列式 $1+xyz=0$

言葉の準備

Routh の定理の配置

三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上に、それぞれ頂点と異なる点 $D$、$E$、$F$ をとり、3 つの比を
$$ x=\frac{BD}{DC},\qquad y=\frac{CE}{EA},\qquad z=\frac{AF}{FB} $$
とおく(頂点を $A\to B\to C\to A$ と一周する向きに書く。$x,y,z>0$)。3 本の Ceva 線 $AD$、$BE$、$CF$ の交点を
$$ R=AD\cap BE,\qquad P=BE\cap CF,\qquad Q=CF\cap AD $$
とおく。2 本の Ceva 線は三角形の内部の 1 点で交わり、その点はどちらの線分の上にもあって端点と異なる(Cevaの定理(高校数学) の定理の証明の段 1)。3 本が 1 点で交わらないとき、$P$、$Q$、$R$ を頂点とする三角形を、3 本の Ceva 線が 囲む三角形 という。

ex-routh-start では $x=y=z=\dfrac12$、ex-routh-start2 では $x=2$、$y=z=1$ である。$R$ は辺 $AB$ をはさむ 2 本($A$ と $B$ から出る線)の交点、$P$ は辺 $BC$ をはさむ 2 本の交点、$Q$ は辺 $CA$ をはさむ 2 本の交点である。
面積の足し引きを符号まで込めて扱うために、三角形の面積比 の 符号付き面積 を使う。

3 点の符号付き面積

平面のベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec w=(w_1,w_2)$ に対して $\det(\vec u,\vec w)=u_1w_2-u_2w_1$ とおき、3 点 $X$、$Y$、$Z$ に対して
$$ [XYZ]=\frac12\det\bigl(\overrightarrow{XY},\overrightarrow{XZ}\bigr) $$
とおく。$\lvert[XYZ]\rvert$ は三角形 $XYZ$ の面積で、3 点が一直線上にあれば $[XYZ]=0$ である。符号は $X\to Y\to Z$ が反時計回りなら正、時計回りなら負である(三角形の面積比、符号付き面積)。

この記事では $\det$ の次の性質を使う。どれも成分で計算すれば確かめられ、三角形の面積比 で証明してある:(i) $\det(s\vec u+s'\vec u',\vec w)=s\det(\vec u,\vec w)+s'\det(\vec u',\vec w)$、2 本目についても同じ(双線形性)、(ii) $\det(\vec u,\vec u)=0$、$\det(\vec w,\vec u)=-\det(\vec u,\vec w)$(交代性)。

符号付き面積の計算

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ では $[ABC]=\dfrac12\det\bigl((6,0),(0,6)\bigr)=\dfrac12\cdot36=18$ で、反時計回りなので正である。ex-routh-start2 の $R\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$ では $[ABR]=\dfrac12\det\left((6,0),\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)\right)=\dfrac12\cdot6\cdot\dfrac{12}5=\dfrac{36}5$ である。順を入れかえた $[BAR]$ は $-\dfrac{36}5$ になる。

高校数学で解く:Menelaus の定理と面積比

角の三角形の面積

辺 $AB$ と 2 本の Ceva 線 $AD$、$BE$ で囲まれた三角形 $ABR$ の面積を、Menelaus の定理で求める。

三角形 $ABR$ の面積

def-routh-setup の配置で
$$ [ABR]=\frac{x}{xy+x+1}[ABC],\qquad \triangle ABR=\frac{x}{xy+x+1}\triangle ABC $$
である。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$、比を $x\to y\to z\to x$ と回すと、$[BCP]=\dfrac{y}{yz+y+1}[ABC]$、$[CAQ]=\dfrac{z}{zx+z+1}[ABC]$ である。

三角形 $ADC$ と横断線 $BE$

方針:三角形 $ADC$ と、それを横切る直線 $BE$ に Menelausの定理(高校数学) を使って $\dfrac{AR}{RD}$ を求める。あとは 2 回、底辺の比で面積を比べる。
段 1(Menelaus の定理を使う形)。三角形 $ADC$ を考える。直線 $BE$ は、辺 $DC$ を含む直線と $B$ で、辺 $CA$ と $E$ で、辺 $AD$ と $R$ で交わる。直線 $BE$ は $A$、$D$、$C$ のどれも通らない($E\ne A$、$E\ne C$ であり、$D$ や $C$ を通るなら直線 $BE$ は直線 $BC$ になって、$E$ が辺 $CA$ と直線 $BC$ の共有点 $C$ になってしまう)。また、3 直線 $DC$、$CA$、$AD$ とそれぞれ $B$、$E$、$R$ で交わるので、どれとも平行でない。よって直線 $BE$ は三角形 $ADC$ の横断線で、Menelaus の定理(Menelausの定理(高校数学)。頂点を $A\to D\to C\to A$ と一周する順に比を書く)により
$$ \frac{DB}{BC}\cdot\frac{CE}{EA}\cdot\frac{AR}{RD}=1 $$
である。
段 2($\dfrac{AR}{RD}$)。$\dfrac{BD}{DC}=x$ なので $BD=\dfrac{x}{x+1}BC$、つまり $\dfrac{DB}{BC}=\dfrac x{x+1}$ である。$\dfrac{CE}{EA}=y$ なので、段 1 から
$$ \frac{AR}{RD}=\frac{x+1}{x}\cdot\frac1y=\frac{x+1}{xy} $$
である。$R$ は線分 $AD$ の上にあるので(def-routh-setup)、$AD=AR+RD$ であり
$$ t:=\frac{AR}{AD}=\frac{AR}{AR+RD}=\frac{x+1}{(x+1)+xy}=\frac{x+1}{xy+x+1} $$
である(分母と分子を $RD$ で割った)。
段 3($[ABD]$)。$s:=\dfrac{BD}{BC}=\dfrac{x}{x+1}$ とおくと、$D$ は線分 $BC$ の上にあるので $\overrightarrow{AD}=(1-s)\overrightarrow{AB}+s\overrightarrow{AC}$ である(位置ベクトルと内分点)。$\det$ の双線形性と交代性により
$$ [ABD]=\frac12\det\bigl(\overrightarrow{AB},(1-s)\overrightarrow{AB}+s\overrightarrow{AC}\bigr)=\frac{1-s}2\det\bigl(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AB}\bigr)+\frac s2\det\bigl(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC}\bigr)=s[ABC] $$
である。
段 4($[ABR]$)。$R$ は線分 $AD$ の上にあるので $\overrightarrow{AR}=t\,\overrightarrow{AD}$ で、同じく
$$ [ABR]=\frac12\det\bigl(\overrightarrow{AB},t\,\overrightarrow{AD}\bigr)=t[ABD]=ts[ABC]=\frac{x+1}{xy+x+1}\cdot\frac x{x+1}[ABC]=\frac{x}{xy+x+1}[ABC] $$
である。係数は正なので、絶対値をとると面積の式 $\triangle ABR=\dfrac{x}{xy+x+1}\triangle ABC$ になる。
段 5(名前を回す)。段 1〜4 は、辺 $AB$ をはさむ 2 本の Ceva 線について成り立つ議論である。頂点を $B$、$C$、$A$、比を $y$、$z$、$x$ に置き換えると $[BCP]$ の式に、もう一度回すと $[CAQ]$ の式になる。$[BCA]=[CAB]=[ABC]$ であることは、定義の式を展開すれば確かめられる。$\square$

角の三角形を数値で確かめる
  1. ex-routh-start2($x=2$、$y=z=1$、$\triangle ABC=18$)では
    $$ \triangle ABR=\frac{2}{2+2+1}\cdot18=\frac{36}5,\qquad \triangle BCP=\frac{1}{1+1+1}\cdot18=6,\qquad \triangle CAQ=\frac{1}{2+1+1}\cdot18=\frac92 $$
    である。$\triangle ABR=\dfrac{36}5$ は ex-routh-signed で座標から計算した値と一致する。
  2. ex-routh-start($x=y=z=\dfrac12$)では、3 つとも $\dfrac{1/2}{1/4+1/2+1}=\dfrac{1/2}{7/4}=\dfrac27$ 倍である。図 1 の 3 つの色の三角形がこれである。

4 つの三角形に分ける

図 1 を見ると、三角形 $ABC$ は 3 つの角の三角形 $ABR$、$BCP$、$CAQ$ と、真ん中の三角形 $PQR$ にちょうど分かれている。図を見て「分かれている」と言うだけでは、比が変わって点の並び方が変わったときに正しいか分からない。そこで、符号付き面積の恒等式で確かめる。

4 点の符号付き面積の恒等式

平面のどの 4 点 $X$、$Y$、$Z$、$W$ についても
$$ [XYZ]=[WYZ]+[XWZ]+[XYW] $$
である。

原点からのベクトルで展開する

方針:$2[XYZ]$ を、原点を始点とする位置ベクトルの $\det$ の和で書くと、各点について対称な形になる。
段 1(書き直す)。点 $X$ の位置ベクトルも $X$ と書く。双線形性と交代性により
$$ 2[XYZ]=\det(Y-X,Z-X)=\det(Y,Z)-\det(Y,X)-\det(X,Z)+\det(X,X)=\det(X,Y)+\det(Y,Z)+\det(Z,X) $$
である。$-\det(Y,X)=\det(X,Y)$、$-\det(X,Z)=\det(Z,X)$、$\det(X,X)=0$ を使った。
段 2(右辺の 3 つ)。段 1 の式を、$X$ を $W$ に、$Y$ を $W$ に、$Z$ を $W$ に置き換えた 3 つに使うと
$$ \begin{aligned} 2[WYZ]&=\det(W,Y)+\det(Y,Z)+\det(Z,W),\\ 2[XWZ]&=\det(X,W)+\det(W,Z)+\det(Z,X),\\ 2[XYW]&=\det(X,Y)+\det(Y,W)+\det(W,X) \end{aligned} $$
である。
段 3(足す)。3 つを足すと、$W$ を含む項は $\det(W,Y)+\det(Y,W)$、$\det(Z,W)+\det(W,Z)$、$\det(X,W)+\det(W,X)$ の組になり、交代性によりどれも $0$ である。残りは $\det(X,Y)+\det(Y,Z)+\det(Z,X)=2[XYZ]$ である。$\square$

$W$ が三角形 $XYZ$ の内部にあれば、右辺の 3 つはどれも正で、これは「三角形を内部の 1 点で 3 つに分けると面積が足し算になる」ことである。$W$ が外にあると、右辺に負の項が現れて引き算になる。符号付き面積を使えば、場合分けがいらない。

4 つの三角形への分解

def-routh-setup の配置で
$$ [ABC]=[ABR]+[BCP]+[CAQ]+[PQR] $$
である。

一直線上の 3 点を 3 回使う

方針:lem-routh-four を 4 回使う。一直線上にある 3 点($B,P,R$ は直線 $BE$ の上、$A,Q,R$ は直線 $AD$ の上、$C,P,Q$ は直線 $CF$ の上)の符号付き面積が $0$ になることで、項が消える。
段 1($R$ で分ける)。lem-routh-four で $X=A$、$Y=B$、$Z=C$、$W=R$ とすると $[ABC]=[RBC]+[ARC]+[ABR]$ である。定義の式から $[RBC]=[BCR]$、$[ARC]=[CAR]$ である(3 点を順に回しても値は変わらない)。
段 2($[BCR]$ を $P$ で分ける)。$X=B$、$Y=C$、$Z=R$、$W=P$ とすると $[BCR]=[PCR]+[BPR]+[BCP]$ である。$B$、$P$、$R$ は直線 $BE$ の上にあるので $[BPR]=0$ で、$[BCR]=[PCR]+[BCP]$ である。
段 3($[CAR]$ を $Q$ で分ける)。$X=C$、$Y=A$、$Z=R$、$W=Q$ とすると $[CAR]=[QAR]+[CQR]+[CAQ]$ である。$Q$、$A$、$R$ は直線 $AD$ の上にあるので $[QAR]=0$ で、$[CAR]=[CQR]+[CAQ]$ である。
段 4(真ん中)。$X=P$、$Y=Q$、$Z=R$、$W=C$ とすると $[PQR]=[CQR]+[PCR]+[PQC]$ である。$P$、$Q$、$C$ は直線 $CF$ の上にあるので $[PQC]=0$ で、$[PQR]=[CQR]+[PCR]$ である。
段 5(合わせる)。段 1〜3 から $[ABC]=[ABR]+[BCP]+[CAQ]+[PCR]+[CQR]$ で、段 4 により最後の 2 項の和は $[PQR]$ である。$\square$

分解を数値で確かめる

ex-routh-start2 では $[ABR]+[BCP]+[CAQ]+[PQR]$ の面積は $\dfrac{36}5+6+\dfrac92+\dfrac3{10}=\dfrac{72+60+45+3}{10}=18$ で、$\triangle ABC=18$ と一致する(図 2)。ex-routh-start では $3\cdot\dfrac27+\dfrac17=1$ である。

BD/DC = 2、CE/EA = AF/FB = 1 のときの 4 つの三角形。面積は 36/5、6、9/2、3/10 で、合計は △ABC = 18 BD/DC = 2、CE/EA = AF/FB = 1 のときの 4 つの三角形。面積は 36/5、6、9/2、3/10 で、合計は △ABC = 18

主定理:Routh の定理

Routhの定理

三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上の頂点と異なる点 $D$、$E$、$F$ について、$x=\dfrac{BD}{DC}$、$y=\dfrac{CE}{EA}$、$z=\dfrac{AF}{FB}$ とする。3 本の Ceva 線 $AD$、$BE$、$CF$ の交点を $R=AD\cap BE$、$P=BE\cap CF$、$Q=CF\cap AD$ とすると
$$ \frac{\triangle PQR}{\triangle ABC}=\frac{(xyz-1)^2}{(xy+x+1)(yz+y+1)(zx+z+1)} $$
である。3 本が 1 点で交わるときは $P=Q=R$ で、左辺は $0$ と読む。

全体から 3 つの角の三角形を引く

方針:prop-routh-decomp に lem-routh-corner を代入して $[PQR]$ を求め、分子を展開して整理する。
段 1(代入)。$[ABC]=S$ とおく。prop-routh-decomp と lem-routh-corner から
$$ [PQR]=S\left(1-\frac{x}{xy+x+1}-\frac{y}{yz+y+1}-\frac{z}{zx+z+1}\right)=S\cdot\frac{N}{\Pi} $$
である。ここで $\Pi=(xy+x+1)(yz+y+1)(zx+z+1)$、
$$ N=\Pi-x(yz+y+1)(zx+z+1)-y(xy+x+1)(zx+z+1)-z(xy+x+1)(yz+y+1) $$
とおいた(通分した)。
段 2($\Pi$ を展開する)。
$$ \Pi=x^2y^2z^2+x^2y^2z+x^2yz^2+xy^2z^2+2x^2yz+2xy^2z+2xyz^2+4xyz+x^2z+xy^2+yz^2+2xy+2yz+2zx+x+y+z+1 $$
である。
段 3(引く 3 つを展開する)。
$$ \begin{aligned} x(yz+y+1)(zx+z+1)&=x^2yz^2+x^2yz+x^2z+xyz^2+2xyz+xy+zx+x,\\ y(xy+x+1)(zx+z+1)&=x^2y^2z+x^2yz+xy^2z+xy^2+2xyz+xy+yz+y,\\ z(xy+x+1)(yz+y+1)&=xy^2z^2+xy^2z+xyz^2+2xyz+zx+yz^2+yz+z \end{aligned} $$
である。3 つの和は
$$ x^2y^2z+x^2yz^2+xy^2z^2+2x^2yz+2xy^2z+2xyz^2+6xyz+x^2z+xy^2+yz^2+2xy+2yz+2zx+x+y+z $$
である。
段 4(引く)。段 2 の $\Pi$ から段 3 の和を引くと、$x^2y^2z^2$、$xyz$ の項、定数項 $1$ 以外は同じ係数で打ち消し合う。$xyz$ の係数は $4-6=-2$ なので
$$ N=x^2y^2z^2-2xyz+1=(xyz-1)^2 $$
である。
段 5(面積)。段 1 と段 4 から $[PQR]=S\cdot\dfrac{(xyz-1)^2}{\Pi}$ である。$x,y,z>0$ なので $\Pi>0$ で、右辺は $S$ と同じ符号をもつ。絶対値をとると $\triangle PQR=\triangle ABC\cdot\dfrac{(xyz-1)^2}{\Pi}$ である。$\square$

公式で 2 つの例を計算し直す
  1. ex-routh-start:$x=y=z=\dfrac12$ なので $xyz=\dfrac18$、分子は $\left(\dfrac18-1\right)^2=\dfrac{49}{64}$、分母の 3 つの因数はどれも $\dfrac14+\dfrac12+1=\dfrac74$ で積は $\dfrac{343}{64}$ である。比は $\dfrac{49}{343}=\dfrac17$ で、座標の計算と一致する。
  2. ex-routh-start2:$x=2$、$y=z=1$ なので分子は $(2-1)^2=1$、分母は $(2+2+1)(1+1+1)(2+1+1)=5\cdot3\cdot4=60$ で、比は $\dfrac1{60}$ である。
  3. $x=2$、$y=3$、$z=\dfrac12$ なら $xyz=3$、分子は $4$、分母は $(6+2+1)\left(\dfrac32+3+1\right)\left(1+\dfrac12+1\right)=9\cdot\dfrac{11}2\cdot\dfrac52=\dfrac{495}4$ で、比は $\dfrac{16}{495}$ である。$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ では $\triangle PQR=18\cdot\dfrac{16}{495}=\dfrac{32}{55}$ で、座標で求めた交点 $R\left(\dfrac23,\dfrac43\right)$、$P\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{12}{11}\right)$、$Q\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$ から計算した面積と一致する。

3 つの比がすべて同じ値 $t$ のときは、分子が $(t^3-1)^2=(t-1)^2(t^2+t+1)^2$、分母が $(t^2+t+1)^3$ なので、約分して
$$ \frac{\triangle PQR}{\triangle ABC}=\frac{(t-1)^2}{t^2+t+1} $$
になる。

3 つの比が同じとき
  1. $t=2$ と $t=\dfrac12$ はどちらも $\dfrac{1}{4+2+1}=\dfrac{\frac14}{\frac14+\frac12+1}=\dfrac17$ である。
  2. $t=3$ なら $\dfrac{4}{9+3+1}=\dfrac4{13}$ である。
  3. $t=1$(3 本の中線)なら $0$ で、3 本は重心で交わる(三角形の重心(高校数学))。
    一般に $t$ を $\dfrac1t$ に替えても値は変わらない:$\dfrac{(1/t-1)^2}{1/t^2+1/t+1}$ の分母と分子に $t^2$ を掛けると $\dfrac{(1-t)^2}{1+t+t^2}$ である。

3 つの比がすべて t のときの面積の比 (t − 1)²/(t² + t + 1)。t = 1 で 0、t = 2 と 1/2 で 1/7、t が 0 や ∞ に近づくと 1 に近づく 3 つの比がすべて t のときの面積の比 (t − 1)²/(t² + t + 1)。t = 1 で 0、t = 2 と 1/2 で 1/7、t が 0 や ∞ に近づくと 1 に近づく

Ceva の定理は面積が 0 の場合

Cevaの定理とその逆をRouthの定理から導く

def-routh-setup の配置で、3 本の Ceva 線 $AD$、$BE$、$CF$ が 1 点で交わるための必要十分条件は $xyz=1$ である。

面積 0 の三角形は 1 点につぶれる

方針:thm-routh-main の分子が $0$ になることと、$P$、$Q$、$R$ が 1 点に集まることが同値であることを示す。
段 1(1 点で交わるなら)。3 本が 1 点で交わるなら、その点が $R$ で、$P$、$Q$ も同じ点なので $[PQR]=0$ である。prf-routh-main の段 5 の式 $[PQR]=S\cdot\dfrac{(xyz-1)^2}{\Pi}$ で $S\ne0$、$\Pi>0$ なので $(xyz-1)^2=0$、つまり $xyz=1$ である。
段 2($xyz=1$ なら)。$xyz=1$ なら同じ式から $[PQR]=0$ で、$P$、$Q$、$R$ は一直線上にある。もし $Q\ne R$ なら、$Q$、$R$ はどちらも直線 $AD$ の上にあるので、その直線は $AD$ であり、$P$ も直線 $AD$ の上にある。$P$ は直線 $BE$ の上にもあるので、$P$ は $AD$ と $BE$ の交点 $R$ に等しい。すると $R=P$ は直線 $CF$ の上にあるので、$R$ は $CF$ と $AD$ の交点 $Q$ に等しく、$Q\ne R$ に反する。よって $Q=R$ である。すると $R=Q$ は直線 $CF$ の上にあるので、$R$ は $BE$ と $CF$ の交点 $P$ に等しい。$P=Q=R$ なので、3 本は 1 点で交わる。$\square$

この証明は Cevaの定理(高校数学) を使っていない(使ったのは Menelaus の定理と面積だけである)。Routh の定理は、Cevaの定理とその逆を「面積 $0$」の場合として含んでいる。さらに、1 点で交わらないときに「どれだけずれているか」を面積で測っている。

Ceva の条件を満たす比

Cevaの定理(高校数学) の最初の例 $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$、$P(2,3)$ では、比は $x=\dfrac32$、$y=\dfrac13$、$z=2$ だった。$xyz=1$ なので分子は $0$ で、囲む三角形の面積は $0$ である。実際、3 本は $(2,3)$ で交わる。角の三角形の面積は $\dfrac{3/2}{1/2+3/2+1}\cdot18=9$、$\dfrac{1/3}{2/3+1/3+1}\cdot18=3$、$\dfrac{2}{3+2+1}\cdot18=6$ で、和は $18$ になり、Cevaの定理(高校数学)で求めた $\triangle ABP=9$、$\triangle BCP=3$、$\triangle CAP=6$ と一致する。

大学数学で見る:重心座標と $3\times3$ の行列式

prf-routh-main の段 2〜4 の展開は長い。分子が $(xyz-1)^2$ というきれいな形になる理由は、交点を 重心座標(重心座標)で表し、面積を $3\times3$ の 行列式 で書くと見えてくる。
点 $X$ が $X=\alpha A+\beta B+\gamma C$、$\alpha+\beta+\gamma=1$ と書けるとき、$(\alpha,\beta,\gamma)$ を三角形 $ABC$ に関する $X$ の重心座標という(Cevaの定理(高校数学) で存在と一意性を証明した)。比だけを考えて $(\alpha:\beta:\gamma)$ とも書く。

面積の比は重心座標の行列式

3 点 $X_i=\alpha_iA+\beta_iB+\gamma_iC$($\alpha_i+\beta_i+\gamma_i=1$、$i=1,2,3$)について
$$ [X_1X_2X_3]=\det\begin{pmatrix}\alpha_1&\beta_1&\gamma_1\\ \alpha_2&\beta_2&\gamma_2\\ \alpha_3&\beta_3&\gamma_3\end{pmatrix}[ABC] $$
である。

座標に 1 を付け足した行列に分解する

方針:3 点の座標に第 3 成分 $1$ を付けて並べた $3\times3$ の行列式が、符号付き面積の 2 倍になることを示す。その行列は、重心座標の行列と、$A$、$B$、$C$ の行列の積である。
段 1(面積は $3\times3$ の行列式)。$X_i=(p_i,q_i)$ とする。第 3 列で展開すると
$$ \det\begin{pmatrix}p_1&q_1&1\\ p_2&q_2&1\\ p_3&q_3&1\end{pmatrix}=(p_2q_3-p_3q_2)-(p_1q_3-p_3q_1)+(p_1q_2-p_2q_1) $$
で、これは $\det(X_2,X_3)+\det(X_3,X_1)+\det(X_1,X_2)$ である。prf-routh-four の段 1 により、これは $2[X_1X_2X_3]$ に等しい。
段 2(行列の積)。$\alpha_i+\beta_i+\gamma_i=1$ なので、$(p_i,q_i,1)=\alpha_i(a_1,a_2,1)+\beta_i(b_1,b_2,1)+\gamma_i(c_1,c_2,1)$ である($A=(a_1,a_2)$ などとした)。行列で書くと
$$ \begin{pmatrix}p_1&q_1&1\\ p_2&q_2&1\\ p_3&q_3&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\alpha_1&\beta_1&\gamma_1\\ \alpha_2&\beta_2&\gamma_2\\ \alpha_3&\beta_3&\gamma_3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_1&a_2&1\\ b_1&b_2&1\\ c_1&c_2&1\end{pmatrix} $$
である。
段 3(行列式の積)。行列の積の行列式は行列式の積である(行列式 の基本性質。ここでは証明しない。$2\times2$ の場合は 1次変換と行列式:面積の拡大率 で扱う)。段 1 を両辺に使うと $2[X_1X_2X_3]=\det M\cdot2[ABC]$ である($M$ は重心座標の行列)。$\square$

3 つの交点の重心座標

def-routh-setup の配置で、交点の重心座標は
$$ R=\frac{xy\,A+B+x\,C}{xy+x+1},\qquad P=\frac{y\,A+yz\,B+C}{yz+y+1},\qquad Q=\frac{A+z\,B+zx\,C}{zx+z+1} $$
である。

2 本の直線の上にあることを確かめる

方針:右辺の点が 2 本の Ceva 線の両方に乗ることを、分子の並べかえで確かめる。
段 1(足の位置)。$\dfrac{BD}{DC}=x$ なので $D=\dfrac{B+xC}{1+x}$、つまり $(1+x)D=B+xC$ である(位置ベクトルと内分点)。同じく $(1+y)E=C+yA$ である。
段 2($R$ は $AD$ の上)。$xy\,A+B+x\,C=xy\,A+(1+x)D$ なので、右辺の点は $\dfrac{xy}{xy+x+1}A+\dfrac{1+x}{xy+x+1}D$ で、係数の和が $1$ だから直線 $AD$ の上にある。
段 3($R$ は $BE$ の上)。$xy\,A+B+x\,C=B+x(yA+C)=B+x(1+y)E$ なので、右辺の点は $\dfrac{1}{xy+x+1}B+\dfrac{x(1+y)}{xy+x+1}E$ で、係数の和は $\dfrac{1+x+xy}{xy+x+1}=1$ だから直線 $BE$ の上にある。
段 4(まとめ)。直線 $AD$ と $BE$ の交点はただ 1 つなので、それが $R$ である。頂点と比の名前を $A\to B\to C\to A$、$x\to y\to z\to x$ と回すと $P$ と $Q$ の式になる。$\square$

$R$ の重心座標の $C$ の成分 $\dfrac{x}{xy+x+1}$ は、lem-routh-corner の $\dfrac{[ABR]}{[ABC]}$ そのものである(重心座標の成分は面積の比。Cevaの定理(高校数学))。高校の証明で Menelaus の定理を使って求めたのは、交点の重心座標だったことになる。

行列式で Routh の定理を導く

prop-routh-det と prop-routh-bary により
$$ \frac{[PQR]}{[ABC]}=\frac1{\Pi}\det\begin{pmatrix}y&yz&1\\ 1&z&zx\\ xy&1&x\end{pmatrix} $$
である(行は $P$、$Q$、$R$ の順。$\Pi=(xy+x+1)(yz+y+1)(zx+z+1)$)。Sarrus の方法で計算すると
$$ yzx+yz\cdot zx\cdot xy+1\cdot1\cdot1-1\cdot z\cdot xy-yz\cdot1\cdot x-y\cdot zx\cdot1=x^2y^2z^2-2xyz+1=(xyz-1)^2 $$
である。$[PQR]/[ABC]=(xyz-1)^2/\Pi$ が、展開の打ち消し合いなしに出る。
$x=2$、$y=z=1$ なら行列は $\begin{pmatrix}1&1&1\\ 1&1&2\\ 2&1&2\end{pmatrix}$ で、行列式は $2+4+1-2-2-2=1$、$\Pi=60$ なので比は $\dfrac1{60}$ である(ex-routh-start2)。

符号つきの比でも同じ式

prf-routh-det と prf-routh-bary は、$x,y,z$ が正であることを使っていない。そこで、$D$、$E$、$F$ が辺の延長の上にあるときも、Cevaの定理(高校数学) の 符号つきの比 $x=\dfrac{\overline{BD}}{\overline{DC}}$ などを使えば、分母が $0$ にならない限り(2 本の直線が平行にならない限り)
$$ \frac{[PQR]}{[ABC]}=\frac{(xyz-1)^2}{(xy+x+1)(yz+y+1)(zx+z+1)} $$
が符号付き面積の等式として成り立つ。この場合、右辺は負になることも、$1$ より大きくなることもある(ex-routh-cx-outside)。

同じ道具で、Ceva 線の足 $D$、$E$、$F$ を頂点とする三角形の面積も求まる。$D=\dfrac{B+xC}{1+x}$ などから重心座標の行列は $\begin{pmatrix}0&1&x\\ y&0&1\\ 1&z&0\end{pmatrix}$ の各行をそれぞれ $1+x$、$1+y$、$1+z$ で割ったもので、行列式は $1+xyz$ なので
$$ \frac{[DEF]}{[ABC]}=\frac{1+xyz}{(1+x)(1+y)(1+z)} $$
である。$x=y=z=\dfrac12$ なら $\dfrac{9/8}{27/8}=\dfrac13$ で、三角形の面積比 で面積の足し引きから求めた値と一致する。符号つきの比では、$[DEF]=0$、つまり $D$、$E$、$F$ が一直線上にあることは $xyz=-1$ と同値で、これは符号つきの Menelausの定理(高校数学) である。3 本の直線が 1 点で交わる条件(Ceva)は $(xyz-1)^2=0$、3 点が一直線上に並ぶ条件(Menelaus)は $1+xyz=0$ と、どちらも $3\times3$ の行列式が $0$ になる条件として並ぶ。

例と反例

どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。

外した仮定崩れる主張ボックス
3 本が 1 点で交わらない($xyz\ne1$)3 本が三角形を囲む(面積が正)ex-routh-ceva
3 つの比を一周する同じ向きに書く公式の値ex-routh-cx-order
$D$、$E$、$F$ が辺の内部にある長さの比で書いた公式ex-routh-cx-outside
囲む三角形を 3 本の Ceva 線の交点でつくる面積の比が $\dfrac{(xyz-1)^2}{\Pi}$ex-routh-cx-def
反例:比を逆向きに書く

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ で $x=\dfrac{BD}{DC}=2$、$y=\dfrac{CE}{EA}=3$、$z=\dfrac{AF}{FB}=\dfrac12$ とする。ex-routh-formula (3) のとおり、正しい比は $\dfrac{16}{495}$ で、$\triangle PQR=\dfrac{32}{55}$ である。
ここで比を逆向き($\dfrac{DC}{BD}$、$\dfrac{EA}{CE}$、$\dfrac{FB}{AF}$)に書いて $\dfrac12$、$\dfrac13$、$2$ を公式に入れると、$xyz=\dfrac13$ で分子は $\dfrac49$、分母は $\left(\dfrac16+\dfrac12+1\right)\left(\dfrac23+\dfrac13+1\right)(1+2+1)=\dfrac53\cdot2\cdot4=\dfrac{40}3$ なので、$\dfrac{4/9}{40/3}=\dfrac1{30}$ になり、正しい値と違う。分母の 3 つの因数は、比の向きを変えると別の式になる。

反例:辺の延長の上の点では長さの比の公式が崩れる

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ で、$D$ を辺 $BC$ の $C$ を越えた延長の上の点 $D(-3,9)$ とし、$E$、$F$ は中点 $E(0,3)$、$F(3,0)$ とする。$BD=9\sqrt2$、$DC=3\sqrt2$ なので長さの比は $\dfrac{BD}{DC}=3$、符号つきの比は $\overrightarrow{BD}=(-9,9)=-3\,(3,-3)=-3\,\overrightarrow{DC}$ より $-3$ である。
座標で交点を求めると、$AD$($y=-3x$)と $BE$($x+2y=6$)の交点は $R\left(-\dfrac65,\dfrac{18}5\right)$、$BE$ と $CF$($2x+y=6$)の交点は $P(2,2)$、$CF$ と $AD$ の交点は $Q(-6,18)$ で、$\overrightarrow{PQ}=(-8,16)$、$\overrightarrow{PR}=\left(-\dfrac{16}5,\dfrac85\right)$ から
$$ \triangle PQR=\frac12\left\lvert(-8)\cdot\frac85-16\cdot\left(-\frac{16}5\right)\right\rvert=\frac12\cdot\frac{-64+256}5=\frac{96}5 $$
である。$\triangle ABC=18$ より大きい。
長さの比 $x=3$、$y=z=1$ を公式に入れると $\dfrac{(3-1)^2}{7\cdot3\cdot5}\cdot18=\dfrac{24}{35}$ で、まったく違う。符号つきの比 $x=-3$ を入れると $\dfrac{(-3-1)^2}{(-3-3+1)(1+1+1)(-3+1+1)}\cdot18=\dfrac{16}{15}\cdot18=\dfrac{96}5$ で一致する(rem-routh-signed)。lem-routh-corner の証明は $R$ が線分 $AD$ の上にあることを使っていたが、ここでは $R$ も $Q$ も三角形の外にある。

反例:足を結んだ三角形とは違う

ex-routh-start の配置($x=y=z=\dfrac12$)で、Ceva 線の足を結んだ三角形 $DEF$ の面積は $\triangle ABC$ の $\dfrac13$ である(三角形の面積比)。3 本の Ceva 線が囲む三角形 $PQR$ の $\dfrac17$ とは違う。Routh の定理の三角形は、Ceva 線どうしの交点を頂点とする三角形である。$DEF$ の面積は、上で求めた別の式 $\dfrac{1+xyz}{(1+x)(1+y)(1+z)}$ で与えられる。

さらに先へ

  • 3 つの比がすべて $n$($n=1,2,3,\ldots$)のときの値 $0,\dfrac17,\dfrac4{13},\ldots$ や、公式そのものは、Wei26 にもまとめられている。公式の名は、イギリスの数学者 E. J. Routh による。
  • 面積の比は、1 次変換と平行移動(アフィン変換)で変わらない(三角形の面積比、1次変換と行列式:面積の拡大率)。そのため、Routh の定理を確かめるには、この記事の例のように $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ のような計算しやすい三角形を使ってよい。
  • 角の比で 1 点で交わる条件を書いたものが 三角関数形のCevaの定理 である。ex-routh-start の 3 本では、角の正弦の比の積は辺の比の積と同じ $\dfrac18$ になる。
  • 3 点が一直線上にある条件(Menelausの定理(高校数学))を 3 つの円に使うと、Mongeの定理 が得られる。
  • 重心座標と行列式による見方は、四面体の体積(四面体の体積と行列式)や $n$ 次元の単体に同じ形で広がる(重心座標)。

関連項目

参考文献

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