Serreファイブレーション

同義語:Serre fibration

概要

Serreファイブレーション(Serre fibration)とは、立方体 $I^n$($n\ge0$)をパラメータにもつホモトピーを、始点を指定して全空間へ持ち上げられる連続写像のことで、Hurewicz ファイブレーションの持ち上げ性質を立方体に限ったものである。立方体についての持ち上げから、すべての CW 対についての相対的な持ち上げが従う。底空間に仮定をおかずにすべてのファイバー束がその例になり、ファイバー・全空間・底空間のホモトピー群は長完全列で結ばれる。一方、Hurewicz ファイブレーションと違って、同じ弧状連結成分の上のファイバーがホモトピー同値になるとは限らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Hurewiczファイブレーション, 相対ホモトピー群, CW複体, ファイバー束

Serreファイブレーション(Serre fibration)とは、立方体 $I^n$($n\ge0$)をパラメータにもつホモトピーを、始点を指定して全空間へ持ち上げられる連続写像のことである。Hurewiczファイブレーション がすべての位相空間について課す持ち上げ性質を、立方体に限って課したものであり、Hurewicz ファイブレーションは Serre ファイブレーションである。立方体についての持ち上げから、すべての CW 対についての相対的な持ち上げが従う。
条件が弱い分、例は多い。底空間に何の仮定もおかずに、すべてのファイバー束が Serre ファイブレーションになる(Hurewicz ファイブレーションであることは、局所自明化をもつ開集合の被覆が numerable のときに示される)。一方で、ファイバーを結ぶホモトピー同値は一般には得られない。それでもホモトピー群の計算には十分で、ファイバー・全空間・底空間のホモトピー群は長完全列で結ばれる。この記事では、CW 対についての持ち上げ、ファイバー束であること、長完全列を証明し、Serre ファイブレーションだが Hurewicz ファイブレーションでない写像の例を示す。

定義

$I:=[0,1]$、$I^n:=[0,1]^n$ とし、$I^0$ は一点とする。$\partial I^n$ は $I^n$ の境界($\partial I^0=\emptyset$)であり、
$$ Q_n:=I^n\times I,\qquad V_n:=(I^n\times\{0\})\cup(\partial I^n\times I)\subset Q_n $$
とおく。$V_n$ は $Q_n$ の底面と側面の和である。

Serre ファイブレーション

連続写像 $p\colon E\to B$ が Serre ファイブレーションであるとは、すべての $n\ge0$ について次が成り立つことをいう。連続写像 $f\colon I^n\to E$ と $h\colon I^n\times I\to B$ が $h(y,0)=p(f(y))$ を満たすなら、連続写像 $H\colon I^n\times I\to E$ で
$$ H(y,0)=f(y),\qquad p\circ H=h $$
を満たすものがある。$E$ を全空間、$B$ を底空間、$b\in B$ について $F_b:=p^{-1}(b)$ を $b$ 上のファイバーという。

$I^n$ と円板 $D^n$ は同相なので、立方体の代わりに円板 $D^n$ についての持ち上げで定義しても同じである。Hurewiczファイブレーション の定義「Hurewicz ファイブレーション」は同じ条件を任意の位相空間 $Y$($I^n$ の代わり)について課すので、Hurewicz ファイブレーションは Serre ファイブレーションである。$n=0$ の場合は、底空間の道を、始点を指定して全空間の道に持ち上げられることである。

流儀の違い

May99 Chapter 7 §1(p. 49)は Hurewicz ファイブレーションの定義に $p$ が全射であることを含め、Serre ファイブレーションをその試験空間を立方体に限ったものとして述べる。この記事では全射を課さない(Hurewiczファイブレーション と同じ)。$n=0$ の持ち上げにより、$p$ の像と交わる弧状連結成分は $p$ の像に含まれる。

引き戻しと合成
  1. $p\colon E\to B$ が Serre ファイブレーション、$g\colon A\to B$ が連続写像なら、引き戻し $A\times_BE:=\{(a,e)\mid g(a)=p(e)\}$ から $A$ への射影は Serre ファイブレーションである。
  2. Serre ファイブレーションの合成は Serre ファイブレーションである。
  3. Serre ファイブレーション $p\colon E\to B$ と部分集合 $U\subset B$ について、制限 $p^{-1}(U)\to U$ は Serre ファイブレーションである。

要点:Hurewiczファイブレーション の命題「引き戻しと合成」の証明は、持ち上げの試験空間を取り替えずに使うので、$Y$ を立方体に限ってもそのまま通る。

証明を開く

1:$f=(f_A,f_E)\colon I^n\to A\times_BE$ と $h\colon I^n\times I\to A$、$h(y,0)=f_A(y)$ をとる。$g\circ h$ を $f_E$ を始点として $p$ で持ち上げた $H_E$ について、$(h,H_E)$ が持ち上げである。2:$q\circ p$ のホモトピーを、まず $q$ で $p\circ f$ を始点に持ち上げ、次に $p$ で $f$ を始点に持ち上げる。3:包含 $U\to B$ に沿った引き戻しは $e\mapsto(p(e),e)$ によって $p^{-1}(U)\to U$ と同一視できるので、1 から従う。$\square$

CW 対についての持ち上げ

まず、立方体の底面だけでなく側面でも値を指定して持ち上げられることを示す。

立方体の相対持ち上げ

$p\colon E\to B$ を Serre ファイブレーション、$n\ge0$ とする。連続写像 $G\colon V_n\to E$ と $K\colon Q_n\to B$ が $p\circ G=K|_{V_n}$ を満たすなら、連続写像 $\Lambda\colon Q_n\to E$ で $\Lambda|_{V_n}=G$、$p\circ\Lambda=K$ を満たすものがある。

要点:点 $c:=(\frac12,\dots,\frac12,2)$ からの中心射影 $r\colon Q_n\to V_n$ をとり、$r(q)$ から $q$ への線分に沿った $K$ の道を、$q$ と $r(q)$ の距離の時間だけ持ち上げる。持ち上げる対象は $Q_n\cong I^{n+1}$ をパラメータにもつホモトピーなので、Serre ファイブレーションの定義が使える。

証明を開く

レトラクション.$q=(x,t)\in Q_n$($x\in I^n$、$t\in I$)について、$\|x-\tfrac12\|_\infty:=\max_i|x_i-\tfrac12|$($n=0$ では $0$)とし、$$\lambda(q):=\Bigl(\max\bigl(\tfrac{2-t}2,\ 2\|x-\tfrac12\|_\infty\bigr)\Bigr)^{-1},\qquad r(q):=c+\lambda(q)(q-c)$$とおく。分母は $\frac12$ 以上なので $\lambda$ は連続で、$\frac{2-t}2\le1$、$2\|x-\frac12\|_\infty\le1$ から $\lambda\ge1$ である。$r(q)$ の第 $i$ 成分は $\frac12+\lambda(x_i-\frac12)$、最後の成分は $2+\lambda(t-2)$ である。$\lambda\le\frac2{2-t}$ から最後の成分は $0$ 以上で、$\lambda\ge1$ から $t$ 以下である。$\lambda\|x-\frac12\|_\infty\le\frac12$ から $r(q)$ の $x$ 成分は $I^n$ に入る。最大が $\frac{2-t}2$ で実現されれば最後の成分は $0$、$2\|x-\frac12\|_\infty$ で実現されれば $x$ 成分は $\partial I^n$ に入るので、$r(Q_n)\subset V_n$ である。$q\in V_n$ なら $t=0$ か $2\|x-\frac12\|_\infty=1$ なので $\lambda(q)=1$、$r(q)=q$ である。逆に $\lambda(q)=1$ なら $q\in V_n$ である。

持ち上げるホモトピー.$d(q):=\min(1,|q-r(q)|)$($|\cdot|$ は Euclid ノルム)は連続で、$d(q)=0$ と $q\in V_n$ は同値である。$\sigma_q(\theta):=(1-\theta)r(q)+\theta q$ は $Q_n$ の凸性から $Q_n$ に値をとる。$d(q)>0$ なら $\Psi(q,\theta):=K\bigl(\sigma_q(\min(\theta/d(q),1))\bigr)$、$d(q)=0$ なら $\Psi(q,\theta):=K(q)$ とおく。$\Psi$ は $d>0$ の範囲で連続である。$q_0\in V_n$ では、$|\sigma_q(\theta')-q_0|\le|r(q)-q|+|q-q_0|$ が $\theta'$ によらず $q\to q_0$ で $0$ に近づくので、$K$ の $q_0$ での連続性から、$q$ が $q_0$ に近ければすべての $\theta$ で $\Psi(q,\theta)$ は $K(q_0)=\Psi(q_0,\theta)$ に近い。よって $\Psi\colon Q_n\times I\to B$ は連続である。

持ち上げ.$\Psi(q,0)=K(r(q))=p(G(r(q)))$ なので、$Q_n\cong I^{n+1}$ に def-sf-main を当てると、連続写像 $L\colon Q_n\times I\to E$ で $L(q,0)=G(r(q))$、$p\circ L=\Psi$ となるものがある。$\Lambda(q):=L(q,d(q))$ とおくと $\Lambda$ は連続である。$q\in V_n$ なら $d(q)=0$ で $\Lambda(q)=G(r(q))=G(q)$ である。$p(\Lambda(q))=\Psi(q,d(q))$ は、$d(q)>0$ なら $K(\sigma_q(1))=K(q)$、$d(q)=0$ なら $K(q)$ である。$\square$

CW 対 $(X,A)$ とは CW 複体 $X$ とその部分複体 $A$(空でもよい)の組である。$I$ は局所コンパクトなので、$X\times I$ は $X$ の胞体 $e$ と $I$ の胞体の積を胞体とする CW 複体であり、$e$ の特性写像 $\Phi_e$ について $\Phi_e\times\mathrm{id}_I$ が $e\times(0,1)$ の特性写像になる(Hat02 Appendix Theorem A.6、p. 524。この記事では証明しない)。

CW 対についての持ち上げ

$p\colon E\to B$ を Serre ファイブレーション、$(X,A)$ を CW 対とする。連続写像 $G\colon(X\times\{0\})\cup(A\times I)\to E$ と $K\colon X\times I\to B$ が $p\circ G=K|_{(X\times\{0\})\cup(A\times I)}$ を満たすなら、連続写像 $\Lambda\colon X\times I\to E$ で $G$ を延長し $p\circ\Lambda=K$ を満たすものがある。とくに $p$ はすべての CW 複体についてホモトピー持ち上げ性質をもつ。逆に、すべての CW 複体についてホモトピー持ち上げ性質をもつ写像は Serre ファイブレーションである。

要点:$A$ に属さない胞体ごとに次元の順で持ち上げを延ばす。各胞体では、特性写像で引き戻すと lem-sf-relative の状況になる。

証明を開く

$Y_n:=X^n\cup A$($Y_{-1}:=A$)とおき、$p\circ\Lambda_n=K$ を満たし $G$ と $(X\times\{0\})\cap(Y_n\times I)$ の上で一致する連続写像 $\Lambda_n\colon Y_n\times I\to E$ を、$\Lambda_n$ が $\Lambda_{n-1}$ を延長するように作る。$\Lambda_{-1}:=G|_{A\times I}$ とする。

$n\ge0$ とし、$e_\alpha$ を $A$ に属さない $n$ 胞体、$\Phi_\alpha\colon D^n\to X$ をその特性写像とする。$(D^n,\partial D^n)$ を $(I^n,\partial I^n)$ と同相写像で同一視し、$V_n$ の上で $G_\alpha(x,0):=G(\Phi_\alpha(x),0)$、$x\in\partial I^n$ について $G_\alpha(x,t):=\Lambda_{n-1}(\Phi_\alpha(x),t)$ とおく。$\Phi_\alpha(\partial I^n)\subset X^{n-1}\subset Y_{n-1}$ なので後者は意味をもち、$\partial I^n\times\{0\}$ の上で両式は一致する。$K_\alpha:=K\circ(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)$ について $p\circ G_\alpha=K_\alpha|_{V_n}$ なので、lem-sf-relative から $\Lambda_\alpha\colon Q_n\to E$ が得られる。$Y_n\times I$ の点は $Y_{n-1}\times I$ にあるか、ただ 1 つの $\alpha$ について $\Phi_\alpha\times\mathrm{id}$ の内部の像にあり、$\Phi_\alpha$ は内部で単射なので、$Y_{n-1}\times I$ では $\Lambda_{n-1}$、$\Phi_\alpha(x)$ では $\Lambda_\alpha(x,t)$ を値とする写像 $\Lambda_n$ が矛盾なく定まる。$Y_n\times I$ は $X\times I$ の部分複体であり、$\Lambda_n$ の連続性は次の段落と同じ判定で確かめられる。

境界の点では $\Lambda_n(\Phi_\alpha(x),t)=\Lambda_{n-1}(\Phi_\alpha(x),t)=G_\alpha(x,t)=\Lambda_\alpha(x,t)$ なので、$\Lambda_n\circ(\Phi_\alpha\times\mathrm{id}_I)=\Lambda_\alpha$ である。すべての $\Lambda_n$ の和を $\Lambda\colon X\times I\to E$ とする。$X\times I$ の各胞体の特性写像は $\Phi_e\times\{0\}$、$\Phi_e\times\{1\}$、$\Phi_e\times\mathrm{id}_I$ の形であり、$\Lambda\circ(\Phi_e\times\mathrm{id}_I)$ は $e\subset A$ なら $G\circ(\Phi_e\times\mathrm{id}_I)$、そうでなければ $\Lambda_\alpha$ なので連続である。CW複体 の定理「胞体ごとの判定」により $\Lambda$ は連続であり、作り方から $G$ を延長し $p\circ\Lambda=K$ を満たす。$A=\emptyset$ とすれば最後の前半の主張になる。逆は $I^n$ が CW 複体であることから従う。$\square$

例

基本的な例
  1. Hurewicz ファイブレーションは Serre ファイブレーションである。とくに積の射影 $U\times F\to U$、被覆写像、道の空間の終点への写像 $B^I\to B$ はそうである(Hurewiczファイブレーション の例「基本的な例」)。
  2. $E$ が任意の空間なら、一点への写像 $E\to\{\ast\}$ は Serre ファイブレーションである(定値のホモトピー $H(y,t):=f(y)$ が持ち上げになる)。
  3. Kan ファイブレーションの幾何学的実現は Serre ファイブレーションである(Kanファイブレーション の注意「実現の側と長完全列」)。
ファイバー束は Serre ファイブレーション

ファイバー束 $p\colon E\to B$ は Serre ファイブレーションである。底空間 $B$ には何も仮定しない。

要点:持ち上げるホモトピーの定義域 $I^n\times I$ を、各小立方体が局所自明化をもつ開集合に写るまで細かく分け、時間の区間ごとに、小立方体の面を次元の順に lem-sf-relative で持ち上げる。各面の上では $p$ は積の射影と同一視できる。

証明を開く

$f\colon I^n\to E$、$h\colon I^n\times I\to B$、$h(y,0)=p(f(y))$ とする。局所自明化 $\phi_U\colon p^{-1}(U)\cong U\times F$ をもつ開集合 $U$ の全体について $\{h^{-1}(U)\}$ はコンパクト距離空間 $I^n\times I$ の開被覆なので、Lebesgue 数をとると、整数 $N\ge1$ で、辺の長さ $\frac1N$ の格子立方体 $C$ と $J_j:=[\frac{j-1}N,\frac jN]$($1\le j\le N$)について $h(C\times J_j)$ がいずれかの $U$ に含まれるものがある。格子立方体の面(各座標を $[\frac{i-1}N,\frac iN]$ か一点 $\{\frac iN\}$ に制限した集合)の全体を考える。$k$ 次元の面 $\sigma$ は $I^k$ とアフィン同相で、その境界 $\partial\sigma$ は $(k-1)$ 次元の面の和である。

$j$ についての帰納法で、$I^n\times[0,\frac{j-1}N]$ の上の持ち上げ $H$($H(y,0)=f(y)$、$p\circ H=h$)を $I^n\times[0,\frac jN]$ へ延ばす($j=1$ では $I^n\times\{0\}$ の上の $f$ から始める)。$k=0,1,\dots,n$ の順に、$k$ 次元の面 $\sigma$ ごとに $\sigma\times J_j$ の上へ延ばす。$\sigma$ を含む格子立方体 $C$ について $h(C\times J_j)\subset U$ とすると、$\sigma\times\{\frac{j-1}N\}\cup\partial\sigma\times J_j$ の上では $H$ はすでに定まっていて、$p\circ H=h$ から値は $p^{-1}(U)$ にある。$p^{-1}(U)\to U$ は $\phi_U$ によって射影 $U\times F\to U$ と同一視でき、ex-sf-basic の 1 により Serre ファイブレーションである。$(\sigma\times J_j,\ \sigma\times\{\frac{j-1}N\}\cup\partial\sigma\times J_j)$ は $(Q_k,V_k)$ とアフィン同相なので、lem-sf-relative により $H$ は $\sigma\times J_j$ の上へ、$p\circ H=h$ を保って延びる。異なる $k$ 次元の面は $(k-1)$ 次元以下の面でしか交わらず、そこでは値がすでに定まっているので、有限個の閉集合の上の連続写像を貼り合わせて $H$ は連続である。$k=n$ まで進めると $I^n\times[0,\frac jN]$ の上の持ち上げが得られる。$\square$

Hurewicz ファイブレーションであることは、局所自明化をもつ開集合からなる numerable な開被覆があるとき(とくに $B$ がパラコンパクト Hausdorff のとき)に示される(Hurewiczファイブレーション の系「ファイバー束はファイブレーション」)。thm-sf-bundle はこの仮定を使わない。Hat02 Proposition 4.48(p. 379)は、ファイバー束がすべての CW 対についてホモトピー持ち上げ性質をもつことを、同じ細分の議論で示している。たとえば Hopfファイブレーション $S^3\to S^2$ や被覆写像は Serre ファイブレーションである。

Hurewicz ファイブレーションとの違い

Serre ファイブレーションだが Hurewicz ファイブレーションでない写像

平面 $I\times\mathbb R$ の部分空間
$$ D:=\{(t,-t)\mid t\in I\},\qquad L_m:=I\times\{\tfrac1m\}\ (m\ge1),\qquad E:=D\cup\bigcup_{m\ge1}L_m $$
と、第 1 成分への射影 $p\colon E\to I$ を考える。$0$ 上のファイバー $F_0=\{(0,0)\}\cup\{(0,\frac1m)\mid m\ge1\}$ は収束列とその極限であり、$1$ 上のファイバー $F_1=\{(1,-1)\}\cup\{(1,\frac1m)\mid m\ge1\}$ は可算な離散空間である。このとき $p$ は Serre ファイブレーションであるが、Hurewicz ファイブレーションではない。

弧状連結成分. $L_m=E\cap(I\times\{\frac1m\})$ は $E$ の閉集合であり、$\frac1m$ を中心に他の $\frac1{m'}$ と $0$ 以下の値を含まない開区間 $O$ をとると $L_m=E\cap(I\times O)$ なので開集合でもある。$E$ の道 $\gamma$ について $\{s\mid\gamma(s)\in L_m\}$ は $I$ の開かつ閉な集合なので、空か $I$ 全体である。よって $E$ の弧状連結成分は $L_m$($m\ge1$)と $D$ であり($D$ と $L_m$ はそれぞれ線分と同相で弧状連結)、どの成分 $P$ についても $p|_P\colon P\to I$ は同相写像である(逆写像は $t\mapsto(t,-t)$ または $t\mapsto(t,\frac1m)$)。
Serre ファイブレーションであること. $f\colon I^n\to E$、$h\colon I^n\times I\to I$、$h(y,0)=p(f(y))$ とする。$f(I^n)$ は弧状連結なので 1 つの成分 $P$ に含まれる。$\tau_P:=(p|_P)^{-1}$ とし $H:=\tau_P\circ h$ とおくと、$H$ は連続で、$H(y,0)=\tau_P(p(f(y)))=f(y)$、$p\circ H=h$ である。
Hurewicz ファイブレーションでないこと. $Y:=F_0$、$f$ を包含、$h(y,s):=s$ とし、持ち上げ $H\colon F_0\times I\to E$ があったとする。各 $y$ について $s\mapsto H(y,s)$ は $y$ から始まる道なので、$y$ と同じ成分にとどまる。よって $H((0,0),1)\in D\cap F_1=\{(1,-1)\}$、$H((0,\frac1m),1)\in L_m\cap F_1=\{(1,\frac1m)\}$ である。$F_0$ の中で $(0,\frac1m)\to(0,0)$ だが、$(1,\frac1m)\to(1,0)\neq(1,-1)$ なので、$H(\cdot,1)$ は連続でない。これは矛盾である。$\square$

この例で $F_0$ と $F_1$ はホモトピー同値でない。コンパクトな $F_0$ から離散空間 $F_1$ への連続写像の像は有限なので、$F_1\to F_0\to F_1$ の合成の像も有限であり、離散空間の上では恒等写像にホモトピックな写像は恒等写像に限るからである。Hurewicz ファイブレーションでは、底空間の同じ弧状連結成分の上のファイバーはホモトピー同値になる(Hurewiczファイブレーション の定理「ファイバーの輸送」)。その証明はファイバーそのものを持ち上げの試験空間に使うので、Serre ファイブレーションには当てはまらない。

ホモトピー群の長完全列

$p\colon E\to B$、$b_0\in B$、$F:=p^{-1}(b_0)$、$x_0\in F$ とする。相対ホモトピー群 $\pi_n(E,F,x_0)$、底面 $I^{n-1}$、残りの面の和 $J^{n-1}$ は 相対ホモトピー群 の定義「相対ホモトピー群」のとおりとする。$p$ は三つ組の写像 $(E,F,x_0)\to(B,\{b_0\},b_0)$ なので写像 $p_*\colon\pi_n(E,F,x_0)\to\pi_n(B,\{b_0\},b_0)=\pi_n(B,b_0)$ を誘導する(相対ホモトピー群 の命題「絶対ホモトピー群との関係と関手性」)。

相対ホモトピー群と底空間のホモトピー群

$p\colon E\to B$ が Serre ファイブレーションなら、すべての $n\ge1$ について $p_*\colon\pi_n(E,F,x_0)\to\pi_n(B,b_0)$ は全単射であり、$n\ge2$ では群の同型である。

要点:$J^{n-1}$ を $x_0$ に写す持ち上げを lem-sf-relative で作る。全射性は $I^n$ の上で、単射性は $I^n\times I$ の上で、座標を入れ替えて $J$ の形の集合を $V$ に合わせる。

証明を開く

$I^n=I^{n-1}\times I$ の点を $(s',s_n)$ と書き、$\rho(s',s_n):=(s',1-s_n)$ とおくと $\rho(J^{n-1})=V_{n-1}$ である($J^{n-1}=\partial I^{n-1}\times I\cup I^{n-1}\times\{1\}$)。

全射.$f\colon(I^n,\partial I^n)\to(B,b_0)$ をとる。$V_{n-1}$ の上の定値写像 $x_0$ と $K:=f\circ\rho$ に lem-sf-relative を当てて $\Lambda$ を得、$\tilde f:=\Lambda\circ\rho$ とおく。$\tilde f(J^{n-1})=\{x_0\}$、$p\circ\tilde f=f$ であり、$f(\partial I^n)=\{b_0\}$ から $\tilde f(\partial I^n)\subset F$ である。よって $\tilde f$ は $(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(E,F,x_0)$ の写像で、$p_*[\tilde f]=[f]$ である。

単射.$f_0,f_1\colon(I^n,\partial I^n,J^{n-1})\to(E,F,x_0)$ について $p\circ f_0$ と $p\circ f_1$ がホモトピック、すなわち $g\colon I^n\times I\to B$ で $g(\cdot,0)=p\circ f_0$、$g(\cdot,1)=p\circ f_1$、$g(\partial I^n\times I)=\{b_0\}$ となるものがあるとする。$P:=I^n\times\{0,1\}\cup J^{n-1}\times I$ の上で $f_0$、$f_1$、定値写像 $x_0$ を並べた写像 $G$ は、交わりでは $f_u(J^{n-1})=\{x_0\}$ なので連続で、$p\circ G=g|_P$ である。$\tau(s',u,v):=(s',1-v,u)$ は $I^{n-1}\times I\times I$ から $I^n\times I$ への同相写像で、$(s',u)\in I^{n-1}\times I=I^n$ と $v\in I$ に分けると $\tau^{-1}(P)=\partial I^n\times I\cup I^n\times\{0\}=V_n$ である($u\in\{0,1\}$ または $s'\in\partial I^{n-1}$ の点と $v=0$ の点)。$G\circ\tau$ と $g\circ\tau$ に lem-sf-relative を当てた $\Lambda$ について $\tilde g:=\Lambda\circ\tau^{-1}$ は $P$ の上で $G$ に一致し、$p\circ\tilde g=g$ である。$g(\partial I^n\times I)=\{b_0\}$ から $\tilde g(\partial I^n\times I)\subset F$、$\tilde g(J^{n-1}\times I)=\{x_0\}$ なので、$\tilde g$ は $f_0$ から $f_1$ への相対ホモトピー群の意味のホモトピーであり、$[f_0]=[f_1]$ である。

$n\ge2$ では $p_*$ は群の準同型(和は第 1 座標の貼り合わせで、$p$ との合成と可換)なので、全単射な準同型として同型である。$\square$

主張と証明の筋は Hat02 Theorem 4.41(p. 376)にある。同書は円板についての持ち上げ性質を仮定し、対 $(D^k\times I,D^k\times\{0\})$ と $(D^k\times I,D^k\times\{0\}\cup\partial D^k\times I)$ が同相であることから相対的な持ち上げを得ている(p. 376)。上の証明では、その同相の代わりに lem-sf-relative を使う。

ホモトピー群の長完全列

$p\colon E\to B$ を Serre ファイブレーション、$i\colon F\to E$ を包含とし、$\partial_B:=\partial\circ p_*^{-1}\colon\pi_n(B,b_0)\to\pi_{n-1}(F,x_0)$($n\ge1$。$\partial$ は対 $(E,F)$ の連結写像)とおく。列
$$ \cdots\to\pi_n(F,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_n(E,x_0)\xrightarrow{p_*}\pi_n(B,b_0)\xrightarrow{\partial_B}\pi_{n-1}(F,x_0)\to\cdots\to\pi_0(F,x_0)\xrightarrow{i_*}\pi_0(E,x_0)\xrightarrow{p_*}\pi_0(B,b_0) $$
は完全である。$B$ が弧状連結なら、$i_*\colon\pi_0(F,x_0)\to\pi_0(E,x_0)$ は全射である。

対 $(E,F)$ の長完全列(相対ホモトピー群 の定理「対の長完全列」)で $\pi_n(E,F,x_0)$ を thm-sf-relative-iso の全単射 $p_*$ で $\pi_n(B,b_0)$ に取り替える。$j\colon\pi_n(E,x_0)\to\pi_n(E,F,x_0)$ との合成 $p_*\circ j$ は $p_*\colon\pi_n(E,x_0)\to\pi_n(B,b_0)$ そのものなので、$\pi_0(E,x_0)$ より左の完全性はこれで従う。$\pi_0(E,x_0)$ での完全性:$i_*$ の像の成分は $F$ と交わるので $p_*$ で $b_0$ の成分に写る。逆に $p(e)$ が $b_0$ と道 $\beta$ で結ばれるなら、$\beta$ を $e$ を始点として持ち上げた道(def-sf-main の $n=0$)の終点は $F$ にあるので、$e$ の成分は $i_*$ の像に入る。$B$ が弧状連結なら後半の主張になる。$\square$

Hopf ファイブレーションと被覆写像
  1. Hopfファイブレーション $S^1\to S^3\to S^2$ は thm-sf-bundle により Serre ファイブレーションである。普遍被覆 $\mathbb R\to S^1$ と cor-sf-exact から $n\ge2$ で $\pi_n(S^1)=0$ であり、$\pi_1(S^3)=\pi_2(S^3)=0$(ホモトピー群 の例「球面の次元未満の群 $\pi_k(S^n)=0\ (1\leq k< n)$」)と合わせて、列から $\pi_2(S^2)\cong\pi_1(S^1)\cong\mathbb Z$、$n\ge3$ で $\pi_n(S^3)\cong\pi_n(S^2)$ を得る。
  2. 被覆写像 $p\colon E\to B$ ではファイバーが離散なので、$n\ge2$ で $p_*\colon\pi_n(E)\to\pi_n(B)$ は同型である。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
thm-sf-relative-iso で $p$ が Serre ファイブレーションであること連続な全単射 $p\colon[0,1)\to S^1$、$p(t)=e^{2\pi it}$、$b_0=1$、$x_0=0$$p_*\colon\pi_1(E,F,x_0)\to\pi_1(B,b_0)$ が全射であること
thm-sf-bundle で $p$ が局所自明であること$\{(x,y)\mid y=0\text{ または }x=0,\ 0\le x,y\le1\}$ から第 1 成分への射影$p$ が Serre ファイブレーションであること
thm-sf-cw で $X$ が CW 複体であることex-sf-not-hurewicz の $p$、$X=F_0$、$A=\emptyset$持ち上げが存在すること
表の確かめ

要点:1 行目は $E$ が可縮でファイバーが一点、2 行目は道の持ち上げがないこと、3 行目は prf-sf-not-hurewicz の後半による。

確かめを開く

1 行目:$F=p^{-1}(1)=\{0\}$ であり、$\pi_1(E,F,x_0)$ の元は $0$ から $0$ への $[0,1)$ の中の道の類である。線分のホモトピー $(s,u)\mapsto(1-u)\gamma(s)$ は端点を $0$ に止めるので、$\pi_1(E,F,x_0)$ は一点からなる。一方 $\pi_1(S^1,1)\cong\mathbb Z$ である。実際 $p$ は Serre ファイブレーションでない。道 $s\mapsto e^{-2\pi is}$ の $0$ を始点とする持ち上げ $L$ があれば、$0< s< 1$ では $p(L(s))=e^{-2\pi is}$ から $L(s)=1-s$ であり、$s\to0$ で $L(s)\to1\notin[0,1)$ となって連続性に反する。

2 行目:$0$ 上のファイバーは線分、$t>0$ 上のファイバーは一点なので局所自明でない。$(0,1)$ を始点とする道 $t\mapsto t$ の持ち上げ $L$ があれば、$t>0$ で $L(t)=(t,0)$ なので $L(0)=(0,0)\ne(0,1)$ となる(Hurewiczファイブレーション の例「ファイブレーションのファイバー」の 3)。これは $n=0$ の持ち上げなので、$p$ は Serre ファイブレーションでない。

3 行目:$F_0$ は収束列とその極限で、極限点が孤立点でないので離散でない。1 次元以上の胞体をもつ CW 複体は線分と同相な部分集合を含み非可算なので、可算な $F_0$ に CW 構造があれば $0$ 胞体だけからなり離散になるが、そうではない。持ち上げがないことは prf-sf-not-hurewicz の後半で示した。

補足

  • Serre スペクトル系列.ファイブレーションの(コ)ホモロジーの計算に使う Serreスペクトル系列 は、Serre ファイブレーションについて述べられる(Serreスペクトル系列 の定理「Serre スペクトル系列の存在と性質」)。
  • 特異単体的集合.Serre ファイブレーション $p$ の $\operatorname{Sing}p$ は Kan ファイブレーションである(Kanファイブレーション の定理「Serre ファイブレーションの特異単体的集合」)。コンパクト生成空間の圏には、Serre ファイブレーションをファイブレーション、弱ホモトピー同値を弱同値とするモデル構造があり、単体的集合の Kan–Quillenモデル構造 とこのモデル構造は、幾何学的実現と特異単体的集合の随伴によって Quillen 同値になる(Kan–Quillenモデル構造 の節「7 主定理の証明」の最後の段落。この記事では証明しない)。

関連項目

参考文献

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