Cliffordの円定理

同義語:クリフォードの円定理Clifford's circle theorem

概要

Cliffordの円定理(Clifford's circle theorem)とは、点 $P$ を通る 4 つの円 $C_1,\dots,C_4$ が一般の位置にある(どの 2 つも $P$ で接せず、どの 3 つも $P$ 以外の共有点をもたず、後で定める円 $C_{ijk}$ がどれも $P$ を通らない)とき、$C_i$ と $C_j$ の $P$ 以外の交点を $P_{ij}$、3 点 $P_{ij},P_{ik},P_{jk}$ を通る円を $C_{ijk}$ とすると、4 つの円 $C_{234},C_{134},C_{124},C_{123}$ が 1 点を共有するという定理である。$P$ を中心に反転すると 4 つの円は完全四辺形をなす 4 本の直線に移り、Miquel の定理に帰着する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 円に関する反転, Miquelの定理, 円周角の定理(高校数学)

高校での出発点:1 点を通る円を直線に変える

Pappusの円鎖 では、2 つの円が接する点を中心に反転して、円を直線に変えた。同じ考え方は、何個かの円が 1 点を通るときにも使える。反転の中心をその点にとると、そこを通る円はすべて直線に移る(円に関する反転 の定理「直線と円の移り方」)。

原点を通る円を直線に移す

原点 $P$ を中心とし、半径の 2 乗が $10$ の反転を $\iota$ とする。座標で書くと、原点以外の点 $(x,y)$ は $\left(\dfrac{10x}{x^2+y^2},\dfrac{10y}{x^2+y^2}\right)$ に移る。円 $C_1:\ x^2+y^2=10y$(中心 $(0,5)$、半径 $5$)は原点を通る。$C_1$ の上の点 $(5,5)$ は $\left(\dfrac{50}{50},\dfrac{50}{50}\right)=(1,1)$ に、点 $(4,2)$ は $\left(\dfrac{40}{20},\dfrac{20}{20}\right)=(2,1)$ に、点 $(-3,1)$ は $\left(\dfrac{-30}{10},\dfrac{10}{10}\right)=(-3,1)$ に移る。像はどれも直線 $y=1$ の上にある。一般に $C_1$ の点 $(x,y)$ の像の $y$ 座標は $\dfrac{10y}{x^2+y^2}=\dfrac{10y}{10y}=1$ である。

同じ計算で、原点を通る円 $x^2+y^2=10(ax+by)/c$ は直線 $ax+by=c$ に移る。この記事では、次の 4 つの円を使う。

円方程式中心と半径反転の像
$C_1$$x^2+y^2=10y$$(0,5)$、$5$直線 $\ell_1:\ y=1$
$C_2$$x^2+y^2=10x$$(5,0)$、$5$直線 $\ell_2:\ x=1$
$C_3$$x^2+y^2+10x+20y=0$$(-5,-10)$、$5\sqrt5$直線 $\ell_3:\ x+2y=-1$
$C_4$$x^2+y^2-10x+10y=0$$(5,-5)$、$5\sqrt2$直線 $\ell_4:\ x-y=1$

4 本の直線は、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない。つまり完全四辺形である(Miquelの定理 の定義「完全四辺形」)。Miquelの定理 によれば、完全四辺形の 4 つの三角形の外接円は 1 点を共有する。この事実を反転でもとの図に戻すと、何が言えるだろうか。この記事の問いは次の 2 つである。

  1. 1 点を通る 4 つの円から作った 4 つの円は、1 点を共有するか。→ thm-clf-four
  2. 円が輪のようにつながった 4 つの円の交点で、同じ円の上に乗る 4 点はどう決まるか。→ thm-clf-ring
    反転の前反転の後
    $P$ を通る円 $C_i$$P$ を通らない直線 $\ell_i$
    $C_i$ と $C_j$ の $P$ 以外の交点 $P_{ij}$$\ell_i$ と $\ell_j$ の交点 $Q_{ij}$
    3 点 $P_{ij},P_{ik},P_{jk}$ を通る円 $C_{ijk}$3 直線が作る三角形の外接円
    4 つの円 $C_{ijk}$ の共有点 $P_{1234}$完全四辺形の Miquel 点 $M$

主定理 1:Clifford の円定理

1 点を通る一般の位置にある 4 つの円

点 $P$ を通る 4 つの円 $C_1,C_2,C_3,C_4$ が次の 3 条件を満たすとき、$P$ を通る一般の位置にある 4 つの円 という。
(R1) どの 2 つも $P$ で接しない(したがって $C_i$ と $C_j$ は $P$ のほかにもう 1 点 $P_{ij}$ で交わる)。
(R1) どの 3 つも、$P$ 以外の共有点をもたない。
(R1) 下で決める円 $C_{ijk}$ は、どれも $P$ を通らない。
ここで $i,j,k$ が相異なるとき、3 点 $P_{ij},P_{ik},P_{jk}$ を通る円を $C_{ijk}$ とする(条件 (ii) から 3 点は異なる。3 点が一直線上にあると円 $C_{ijk}$ は作れないので、条件 (iii) は $C_{ijk}$ が円として決まることも含めて述べている。下の補題の 3 のとおり、3 点が一直線上にあるのは反転の像の三角形の外接円が $P$ を通るときである)。

条件を直線の言葉にする

$P$ を中心とする反転 $\iota$ で、$P$ を通る円 $C_i$ は $P$ を通らない直線 $\ell_i$ に移る。$P$ を通る 4 つの円について、

  1. 条件 (i) は「どの 2 本の $\ell_i$ も平行でない」ことと同じで、このとき $P_{ij}$ は $\ell_i$ と $\ell_j$ の交点 $Q_{ij}$ に移る。
  2. 条件 (i)(ii) を合わせたものは「4 本の直線が完全四辺形である」ことと同じである。
  3. 条件 (iii) は「完全四辺形の 4 つの三角形の外接円が、どれも $P$ を通らない」ことと同じで、このとき $C_{ijk}$ は 3 直線 $\ell_i,\ell_j,\ell_k$ が作る三角形の外接円に移る。

$\iota$ は $P$ 以外の点を 1 対 1 に移し、2 回続けるともとに戻る。したがって、$P$ 以外の共有点の個数は、像どうしの共有点の個数と等しい。

  1. $C_i$ と $C_j$ は $P$ を共有する異なる 2 円なので、共有点は $P$ だけ($P$ で接する)か、$P$ と $P_{ij}$ の 2 点である。$P$ 以外の共有点がないことは、$\ell_i$ と $\ell_j$ が共有点をもたない、つまり平行であることと同じである。よって (i) は「どの 2 本も平行でない」ことと同じで、そのとき $P_{ij}$ の像は 2 直線のただ 1 つの交点 $Q_{ij}$ である。
  2. 3 つの円 $C_i,C_j,C_k$ が $P$ 以外の共有点をもつことは、3 本の直線が 1 点で交わることと同じである。よって (ii) は「どの 3 本も 1 点で交わらない」ことと同じで、(i) と合わせて完全四辺形の条件になる。
  3. 完全四辺形では 3 点 $Q_{ij},Q_{ik},Q_{jk}$ は三角形の頂点で、外接円 $K_{ijk}$ がある。$K_{ijk}$ が $P$ を通らなければ、$\iota$ で円に移り(円に関する反転 の定理「直線と円の移り方」)、その円は 3 点 $P_{ij},P_{ik},P_{jk}$ を通るので $C_{ijk}$ である。$K_{ijk}$ が $P$ を通れば、像は直線になり、3 点 $P_{ij},P_{ik},P_{jk}$ は一直線上にあって円 $C_{ijk}$ が作れない。逆に、$C_{ijk}$ が円として決まって $P$ を通らなければ、その像は 3 点 $Q_{ij},Q_{ik},Q_{jk}$ を通る円、つまり $K_{ijk}$ で、$K_{ijk}$ は $P$ を通らない。よって (iii) は「$K_{ijk}$ が $P$ を通らない」ことと同じである。$\square$
Clifford の円定理(4 つの円)

点 $P$ を通る一般の位置にある 4 つの円 $C_1,C_2,C_3,C_4$ について、4 つの円 $C_{234}$、$C_{134}$、$C_{124}$、$C_{123}$ は 1 点を共有する。この点を $P_{1234}$ と書く。

主張の述べ方は MathWorld の頁「Clifford's Circle Theorem」(Wei26)にならった。

方針:$P$ を中心に反転して Miquelの定理 に帰着し、反転で戻す。
段 1(反転する)。$P$ を中心とする反転 $\iota$ をとる。lem-clf-dictionary の 2 により、像の 4 本の直線 $\ell_1,\ell_2,\ell_3,\ell_4$ は完全四辺形である。
段 2(Miquel の定理)。完全四辺形の 4 つの三角形の外接円 $K_{234},K_{134},K_{124},K_{123}$ は 1 点 $M$ を共有する(Miquelの定理 の定理「Miquel の定理(完全四辺形の形)」)。
段 3($M$ は $P$ でない)。lem-clf-dictionary の 3 により、どの $K_{ijk}$ も $P$ を通らない。$M$ は $K_{123}$ の上にあるので $M\ne P$ である。
段 4(戻す)。$\iota$ は $K_{ijk}$ を $C_{ijk}$ に移す(lem-clf-dictionary の 3)。$M$ は 4 つの $K_{ijk}$ のすべての上にあり $P$ でないので、その像 $\iota(M)$ は 4 つの $C_{ijk}$ のすべての上にある。$P_{1234}=\iota(M)$ とおけばよい。$\square$

図 1 は ex-clf-start の 4 つの円で描いた図、図 2 はその反転の像である。点線の 4 つの円が、図 1 では $P_{1234}$ で、図 2 では Miquel 点 $M$ で 1 点を共有している。
原点 P を通る 4 つの円 C1〜C4(色の実線)と、交点 P_ij を 3 つずつ通る 4 つの円(灰色の破線)。破線の 4 つの円は点 P1234=(8,−1) を共有する 原点 P を通る 4 つの円 C1〜C4(色の実線)と、交点 P_ij を 3 つずつ通る 4 つの円(灰色の破線)。破線の 4 つの円は点 P1234=(8,−1) を共有する
上の図を P を中心に反転した図。4 つの円は 4 本の直線になり、破線の 4 つの円は 3 本ずつの直線が作る三角形の外接円で、Miquel 点 M を共有する 上の図を P を中心に反転した図。4 つの円は 4 本の直線になり、破線の 4 つの円は 3 本ずつの直線が作る三角形の外接円で、Miquel 点 M を共有する

4 つの円の共有点を座標で確かめる

ex-clf-start の 4 つの円で計算する。まず直線どうしの交点を求める。たとえば $\ell_1:\ y=1$ と $\ell_3:\ x+2y=-1$ の交点は $Q_{13}=(-3,1)$ である。6 つの交点は
$$ Q_{12}=(1,1),\ Q_{13}=(-3,1),\ Q_{14}=(2,1),\ Q_{23}=(1,-1),\ Q_{24}=(1,0),\ Q_{34}=\left(\tfrac13,-\tfrac23\right) $$
である。$Q_{34}$ を反転すると、$x^2+y^2=\frac19+\frac49=\frac59$ なので $P_{34}=\left(\dfrac{10}3\cdot\dfrac95,\ -\dfrac{20}3\cdot\dfrac95\right)=(6,-12)$ となる。同じ計算で
$$ P_{12}=(5,5),\ P_{13}=(-3,1),\ P_{14}=(4,2),\ P_{23}=(5,-5),\ P_{24}=(10,0),\ P_{34}=(6,-12) $$
を得る。3 点ずつを通る円の方程式は、$x^2+y^2+ax+by+c=0$ に 3 点を代入した連立方程式を解いて
$$ C_{123}:\ x^2+y^2-5x-25=0,\qquad C_{124}:\ x^2+y^2-15x-5y+50=0, $$
$$ C_{134}:\ x^2+y^2-3x+11y-30=0,\qquad C_{234}:\ x^2+y^2-25x+15y+150=0 $$
である。点 $(8,-1)$ を代入すると、$x^2+y^2=65$ なので
$$ 65-40-25=0,\quad 65-120+5+50=0,\quad 65-24-11-30=0,\quad 65-200-15+150=0 $$
で、4 つとも $0$ になる。よって $P_{1234}=(8,-1)$ である。これを反転すると $\left(\dfrac{80}{65},-\dfrac{10}{65}\right)=\left(\dfrac{16}{13},-\dfrac2{13}\right)$ で、これが図 2 の Miquel 点 $M$ である。

条件 (iii) の確認として、図 2 の 4 つの外接円の方程式の定数項($x=y=0$ を代入した値)は $-4$、$2$、$-\frac{10}3$、$\frac23$ で、どれも $0$ でない。つまりどの外接円も原点 $P$ を通らない。

主定理 2:4 つの円の輪

主定理 1 では 4 つの円が 1 点 $P$ を共有していた。次は、4 つの円が輪のように隣どうしで交わる配置を考える。ここでは Simson線 の定義「直線の有向角」の記号 $\measuredangle XYZ$(直線 $YX$ から直線 $YZ$ への角を $180^\circ$ の整数倍の違いを除いて測ったもの)を使う。有向角を使うと、点の並び方による場合分けをせずに済む。使う事実は次の 2 つだけである。

  • $\measuredangle(\ell,m)+\measuredangle(m,n)=\measuredangle(\ell,n)$、$\measuredangle(\ell,m)=-\measuredangle(m,\ell)$(定義から)。
  • 異なる 2 点 $W,X$ と、直線 $WX$ の上にない 2 点 $Y,Z$ について、4 点が同一円周上にあることと $\measuredangle WYX=\measuredangle WZX$ は同値である(Simson線 の補題「有向角による共円の判定」)。
4 つの円の輪

4 つの円 $\omega_1,\omega_2,\omega_3,\omega_4$ があり、$\omega_4$ と $\omega_1$ は 2 点 $A,A'$ で、$\omega_1$ と $\omega_2$ は 2 点 $B,B'$ で、$\omega_2$ と $\omega_3$ は 2 点 $C,C'$ で、$\omega_3$ と $\omega_4$ は 2 点 $D,D'$ で交わるとする。8 点 $A,B,C,D,A',B',C',D'$ は相異なり、$A,B,C,D$ のどの 3 点も、$A',B',C',D'$ のどの 3 点も一直線上にないとする。このとき
$$ A,B,C,D\ \text{が同一円周上にある}\iff A',B',C',D'\ \text{が同一円周上にある} $$
である。

方針:$\measuredangle A'B'C'$ と $\measuredangle A'D'C'$ をそれぞれ 2 つの円の円周角に分け、その差が $A,B,C,D$ の共円の条件になることを示す。
段 1($B'$ での角)。直線 $B'B$ をはさんで分けると $\measuredangle A'B'C'=\measuredangle A'B'B+\measuredangle BB'C'$ である。4 点 $A,A',B,B'$ は $\omega_1$ の上にあり、直線 $A'B$ の上にない(3 点が同一直線上なら円と直線の共有点が 3 つになる)ので、共円の判定から $\measuredangle A'B'B=\measuredangle A'AB$ である。同じく 4 点 $B,B',C,C'$ は $\omega_2$ の上にあるので $\measuredangle BB'C'=\measuredangle BCC'$ である。よって
$$ \measuredangle A'B'C'=\measuredangle A'AB+\measuredangle BCC'. $$
段 2($D'$ での角)。同じく $\omega_4$ の上の $A,A',D,D'$ と、$\omega_3$ の上の $C,C',D,D'$ を使うと
$$ \measuredangle A'D'C'=\measuredangle A'D'D+\measuredangle DD'C'=\measuredangle A'AD+\measuredangle DCC'. $$
段 3(差をとる)。段 1 から段 2 を引く。有向角の性質から $\measuredangle A'AB-\measuredangle A'AD=\measuredangle DAB$、$\measuredangle BCC'-\measuredangle DCC'=\measuredangle BCC'+\measuredangle C'CD=\measuredangle BCD$ なので
$$ \measuredangle A'B'C'-\measuredangle A'D'C'=\measuredangle DAB+\measuredangle BCD=\measuredangle DAB-\measuredangle DCB. $$
段 4(結論)。共円の判定を 2 回使う。$A',B',C',D'$ が同一円周上にあることは、左辺が $0$ であることと同値である($W=A'$、$X=C'$、$Y=B'$、$Z=D'$)。$A,B,C,D$ が同一円周上にあることは、右辺が $0$ であることと同値である($W=D$、$X=B$、$Y=A$、$Z=C$)。左辺と右辺は等しいので、2 つは同値である。$\square$

輪の定理を座標で確かめる

円 $x^2+y^2=25$ の上の 4 点 $A(5,0)$、$B(3,4)$、$C(-4,3)$、$D(0,-5)$ をとる。円を次のようにとる。

円通る点中心半径の 2 乗
$\omega_1$$A,B$$(4,2)$$5$
$\omega_2$$B,C$$\left(-\frac12,\frac72\right)$$\frac{25}2$
$\omega_3$$C,D$$\left(1,\frac12\right)$$\frac{125}4$
$\omega_4$$D,A$$(4,-4)$$17$

たとえば $\omega_1$ は $A$ まで $(5-4)^2+(0-2)^2=5$、$B$ まで $(3-4)^2+(4-2)^2=5$ である。もう 1 つの交点は、2 つの円の方程式を引いてできる直線(共通弦)と円の交点として求まり、
$$ A'=(3,0),\quad B'=(2,1),\quad C'=(2,6),\quad D'=\left(\tfrac{84}{13},-\tfrac9{13}\right) $$
である。$A',B',C'$ を通る円は中心 $\left(\frac{11}2,\frac72\right)$、半径の 2 乗 $\frac{37}2$ で、$D'$ までの距離の 2 乗は
$$ \left(\frac{84}{13}-\frac{11}2\right)^2+\left(-\frac9{13}-\frac72\right)^2=\frac{25^2+109^2}{26^2}=\frac{12506}{676}=\frac{37}2 $$
となる。よって $A',B',C',D'$ も同一円周上にある(図 3)。

円の上の 4 点 A, B, C, D(黒の実線の円)と、隣どうしを通る 4 つの円 ω1〜ω4。もう 1 つの交点 A′, B′, C′, D′ も 1 つの円(黒の破線)の上にある 円の上の 4 点 A, B, C, D(黒の実線の円)と、隣どうしを通る 4 つの円 ω1〜ω4。もう 1 つの交点 A′, B′, C′, D′ も 1 つの円(黒の破線)の上にある

輪の定理を反転で見る

主定理 2 を $A$ を中心とする反転で見ると、$A$ を通る $\omega_1$、$\omega_4$ と、$A$ を通る円 $ABCD$ は直線に移り、$\omega_2$、$\omega_3$ は円のまま残る。像の図は、2 本の直線と 1 本の直線が作る三角形と、その辺の上の点を通る円の組になり、Miquelの定理 の三角形の形と同じ型の図になる。主定理 1 と主定理 2 は、どちらも「反転すると Miquel の定理になる」図である。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
2 つの円が $P$ で接しない(条件 (i))$C_1$ を $P$ で $C_2$ に接する円に替える一緒に $P_{12}$ がなくなり、円 $C_{123}$、$C_{124}$ が作れない
4 つの円が 1 点を通る1 点を共有しない 4 つの円反転で 4 本の直線にならず、4 つの円 $C_{ijk}$ は一般に 1 点を共有しない
主定理 2 で $A,B,C,D$ が同一円周上にある$D$ を円の外にずらす$A',B',C',D'$ も同一円周上にない
反例:$P$ で接する 2 つの円

$C_2$ を、原点で $C_1:\ x^2+y^2=10y$ に接する円 $x^2+y^2=4y$(中心 $(0,2)$、半径 $2$)に替える。2 つの方程式を引くと $6y=0$ で、共有点は $y=0$ のとき $x=0$、つまり原点だけである。反転の像は平行な 2 直線 $y=1$ と $y=\frac52$ で、交点 $P_{12}$ がない。$C_{123}$、$C_{124}$ が定まらないので、主定理 1 の主張自体が意味をもたない。

反例:1 点を共有しない 4 つの円

ex-clf-start の $C_4$ を、中心 $(5,-5)$ のまま半径の 2 乗を $50$ から $40$ に替えた円 $C_4^*$ にすると、$C_4^*$ は原点を通らない。$C_1$ と $C_4^*$ の交点のうち原点に近い方を $P_{14}^*$ とし(数値でおよそ $(1.4,\ 0.2)$)、$P_{24}^*\approx(0.101,\ -1)$、$P_{34}^*\approx(0.687,\ -0.374)$ も同様にとって 4 つの円 $C_{ijk}$ を作る。$C_{123}$ と $C_{124}$ の共有点は $P_{12}=(5,5)$ と、およそ $(-2.341,\ -2.795)$ の 2 点である。この 2 点から $C_{134}$、$C_{234}$ の中心までの距離の 2 乗と半径の 2 乗の差を数値で計算すると、前者では $33.7$ と $56.7$、後者では $18.5$ と $15.2$ で、どれも $0$ にならない。よって 4 つの円 $C_{ijk}$ は 1 点を共有しない。共有点が出たのは、4 つの円が 1 点を通り、反転で 4 本の直線に移ったからである。

反例:$A,B,C,D$ が同一円周上にない

ex-clf-ring-check の $D$ を円の外の点 $D^*=(0,-6)$ に替え、$\omega_3$ を 3 点 $C,D^*,(6,-2)$ を通る円、$\omega_4$ を 3 点 $D^*,A,(3,0)$ を通る円に取り替える($\omega_1$、$\omega_2$ はそのまま)。数値で計算すると $A'=(3,0)$、$B'=(2,1)$、$C'\approx(2.756,\ 4.877)$、$D'\approx(6.241,\ -0.503)$ で、$A',B',C'$ を通る円の中心から $D'$ までの距離は、半径よりおよそ $0.54$ 長い。$A',B',C',D'$ は同一円周上にない。主定理 2 の「同値」は、片方が崩れればもう片方も崩れることを含んでいる。

大学数学で見る

円の数を増やす

MathWorld の頁「Clifford's Circle Theorem」は、主定理 1 の 4 つの円に、$P$ を通る 5 つ目の円 $C_5$ を加えると、4 つずつ選んで作った 5 つの点 $P_{2345},P_{1345},P_{1245},P_{1235},P_{1234}$ が 1 つの円 $C_{12345}$ の上にあり、以下同様に続くと述べている(Wei26。この記事では証明しない)。反転すると、これは「5 本の直線から 4 本ずつ選んだ 5 つの完全四辺形の Miquel 点が、1 つの円の上にある」という主張になる(Miquelの定理 の注意「円の中心と Clifford の列」で紹介されている)。円と直線を区別せずに同じ仲間として扱い、反転や 1 次分数変換で移り合うものとして調べる見方は、Möbius変換 へ続く。

さらに先へ

  • 反転の中心を、三角形の頂点までの距離が特別な比になる点にとると、三角形そのものを正三角形に移せる。これが次の 等力点 の主題である。
  • 2 円の共通弦は、2 つの円の方程式を引いてできる直線で、根軸と根心 で扱う根軸の特別な場合である。ex-clf-ring-check の交点もこの方法で求めた。
  • 円に内接する四角形の性質は 円周角の定理(高校数学)、4 点の距離の関係は Ptolemyの定理 で扱う。

関連項目

参考文献

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