三角級数(trigonometric series)とは、複素数の列 $(c_n)_{n\in\mathbb Z}$ から作る形式的な和 $\sum_nc_ne^{inx}$ のことで、対称な部分和 $\sum_{|n|\le N}c_ne^{inx}$ の極限として収束を考える。積分可能な周期関数の Fourier 係数を並べた Fourier 級数はその代表例である。区間の各点で収束する三角級数の係数は $0$ に近づく(Cantor–Lebesgue の定理)。一方、$\sum_{n\ge2}\sin nx/\log n$ のようにすべての点で収束するのに積分可能な関数の Fourier 級数でない三角級数があり、その和は積分可能でない。
前提知識: Fourier級数, Lebesgue積分, Fejérの定理, Baireのカテゴリー定理
三角級数(trigonometric series)とは、複素数の列 $(c_n)_{n\in\mathbb Z}$ から作る形式的な和 $\sum_{n\in\mathbb Z}c_ne^{inx}$ のことで、部分和を $\sum_{|n|\le N}c_ne^{inx}$ として収束を考える。積分可能な周期関数 $g$ の Fourier 係数 $\hat g(n)$ を並べたもの(Fourier級数)は三角級数の代表例だが、三角級数の係数は任意の数列でよいので、Fourier 級数でない三角級数がたくさんある。
この記事では、まず係数が $0$ に近づく単調な列なら級数が収束すること(Abel の級数変形法による)を確かめる。次に、逆向きの必要条件として、区間の各点で収束する三角級数の係数は $0$ に近づくこと(Cantor–Lebesgue の定理)を Baire のカテゴリー定理で証明する。最後に、すべての点で収束するのに Fourier 級数でない三角級数を 2 つ挙げる。$\sum_n\frac{\sin nx}{\sqrt n}$ は 2 乗可積分な関数の Fourier 級数でなく、$\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ は積分可能な関数の Fourier 級数でない。後者の和は Lebesgue 積分可能ですらない。
Fourier 級数そのものの収束・発散(どんな関数の Fourier 級数がどの点で収束するか)は Fourier級数の収束 で、積分可能な関数の Fourier 級数がすべての点で発散しうることは Kolmogorovの発散するFourier級数 で扱う。
$\mathbb T:=\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ とし、$\mathbb T$ 上の関数を $2\pi$ 周期の関数と同一視する。$[-\pi,\pi]$ 上で Lebesgue 積分可能な $2\pi$ 周期の可測関数の全体を $L^1(\mathbb T)$ と書き、$\|g\|_1:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|g|$ とおく。$p=2$ についても同様に $L^2(\mathbb T)$ を定める(Fejérの定理 の「定義」の節と同じ規約)。$g\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 係数と部分和は
$$
\hat g(n):=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}g(x)e^{-inx}\,dx,\qquad s_N(g;x):=\sum_{n=-N}^{N}\hat g(n)e^{inx}
$$
である(Fourier級数 の定義「Fourier 係数と Fourier 級数」と同じ式)。
複素数の列 $(c_n)_{n\in\mathbb Z}$ に対する形式的な和
$$
\sum_{n\in\mathbb Z}c_ne^{inx}
$$
を三角級数という。$N\ge0$ について $S_N(x):=\sum_{n=-N}^{N}c_ne^{inx}$ をその第 $N$ 部分和とし、点 $x$ で $\lim_{N\to\infty}S_N(x)$ が存在するとき、三角級数は $x$ で収束するという。ある $g\in L^1(\mathbb T)$ についてすべての $n$ で $c_n=\hat g(n)$ となるとき、三角級数は $g$ の Fourier 級数であるという。
実数の列 $(a_n)_{n\ge0}$、$(b_n)_{n\ge1}$ による実数の形
$$
\frac{a_0}2+\sum_{n=1}^{\infty}\bigl(a_n\cos nx+b_n\sin nx\bigr)
$$
は、$c_0=\frac{a_0}2$、$c_{\pm n}=\frac12(a_n\mp ib_n)$($n\ge1$)とおいた三角級数であり、第 $N$ 部分和は $\frac{a_0}2+\sum_{n=1}^{N}(a_n\cos nx+b_n\sin nx)$ に一致する(Fourier級数 の命題「2 つの形の対応」と同じ対応)。とくに正弦級数 $\sum_{n\ge1}b_n\sin nx$ は $c_0=0$、$c_{\pm n}=\mp\frac i2b_n$ の三角級数である。
部分和を対称にとることに注意する。$\sum_{n\ge0}c_ne^{inx}$ と $\sum_{n<0}c_ne^{inx}$ がそれぞれ収束すれば対称な部分和も収束するが、逆は成り立たない($c_n=1$、$c_{-n}=-1$($n\ge1$)、$c_0=0$ なら $x=0$ で $S_N(0)=0$ だが、片側の和は発散する)。
Fourier 級数は係数から関数をほとんど至るところ決める:$g,h\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 係数がすべて等しければ $g=h$ がほとんど至るところ成り立つ(Fejérの定理 の系「Fourier 係数による関数の決定」)。したがって「三角級数が $g$ の Fourier 級数である」とき、$g$ はほとんど至るところの違いを除いて一つに決まる。
$g\in L^1(\mathbb T)$ なら $|n|\to\infty$ で $\hat g(n)\to0$ である。
要点:$x$ を $x+\frac\pi n$ にずらすと $e^{-inx}$ の符号が変わることから $\hat g(n)=\frac1{4\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\bigl(g(x)-g(x+\frac\pi n)\bigr)e^{-inx}\,dx$ と書け、平行移動の連続性から右辺は $0$ に近づく。
$n\ne0$ とする。$e^{-in(x+\pi/n)}=-e^{-inx}$ と周期性から $\hat g(n)=-\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}g(x+\frac\pi n)e^{-inx}\,dx$ であり、もとの式と平均すると $|\hat g(n)|\le\frac12\|g-g(\cdot+\frac\pi n)\|_1$ である。$G:=g\,1_{[-2\pi,2\pi]}\in L^1(\mathbb R)$ とおくと、$|t|\le\pi$、$x\in[-\pi,\pi]$ で $g(x+t)=G(x+t)$、$g(x)=G(x)$ なので $\|g-g(\cdot+t)\|_1\le\frac1{2\pi}\int_{\mathbb R}|G(y+t)-G(y)|\,dy$ であり、右辺は 軟化子 の補題「平行移動の連続性」により $t\to0$ で $0$ に近づく。$\square$
Fourier級数 の系「Riemann–Lebesgue の補題」は Riemann 積分可能な関数についての同じ主張である。
$(b_n)_{n\ge1}$ を $0$ に収束する単調減少の実数列とする。
$x\notin2\pi\mathbb Z$ なら、等比数列の和から
$$
\Bigl|\sum_{n=1}^{N}e^{inx}\Bigr|=\Bigl|\frac{e^{ix}(e^{iNx}-1)}{e^{ix}-1}\Bigr|\le\frac2{|e^{ix}-1|}=\frac1{|\sin(x/2)|}
$$
であり、実部・虚部の部分和も同じ数で抑えられる。Abelの級数変形法とその応用 の定理「Dirichlet の判定法とその評価」を $a_n=b_n$ と $e^{inx}$・$\cos nx$・$\sin nx$ に使うと、2 と 3 が従う($\delta\le x\le2\pi-\delta$ では $|\sin(x/2)|\ge\sin(\delta/2)$)。$x\in2\pi\mathbb Z$ では $\sin nx=0$ なので 1 は自明である。$\square$
$\sum_{n\ge1}b_n\cos nx$ は $x=0$ で $\sum b_n$ となり、たとえば $b_n=\frac1n$ なら発散する。$b_n$ の単調性を外すと 1 も崩れる(「反例」の節)。
Fourier 係数は lem-ts-riemann-lebesgue により $0$ に近づく。Fourier 係数とは限らない三角級数でも、区間の各点で収束していれば係数は $0$ に近づく。
$(c_n)_{n\in\mathbb Z}$ を複素数の列とし、空でない開区間 $I\subset\mathbb R$ の各点 $x$ で
$$
T_n(x):=c_ne^{inx}+c_{-n}e^{-inx}\longrightarrow0\qquad(n\to\infty)
$$
が成り立つとする。このとき $|n|\to\infty$ で $c_n\to0$ である。とくに、三角級数が $I$ の各点で収束すれば、係数は $0$ に近づく。実数の形では $a_n\to0$、$b_n\to0$ である。
要点:Baire のカテゴリー定理で、$|T_n|$ が $n$ によらずに抑えられる小区間 $J$ を見つけ、有界収束定理で $\int_J|T_n|^2\to0$ を得る。展開すると交差項は $\frac1n$ 程度に小さいので、$\int_J|T_n|^2$ は $|c_n|^2+|c_{-n}|^2$ の定数倍以上である。
小区間を見つける.$I$ に含まれる正の長さの閉区間 $I_0$ をとる。$k=1,2,\dots$ について $E_k:=\{x\in I_0\mid$ すべての $n\ge1$ で $|T_n(x)|\le k\}$ とおく。各 $T_n$ は連続なので $E_k$ は閉集合である。各 $x\in I_0$ で数列 $T_n(x)$ は収束するので有界であり、$I_0=\bigcup_kE_k$ である。$I_0$ は空でない完備距離空間なので、Baireのカテゴリー定理 の系「閉集合による可算被覆」から、ある $E_k$ は $I_0$ の中で内点をもつ。したがって正の長さ $\ell:=b-a$ の閉区間 $J=[a,b]\subset E_k$ がある。
積分の評価.$J$ 上で $|T_n|^2\le k^2$ かつ各点で $|T_n|^2\to0$ なので、優収束定理 の系「有界収束定理」から $\int_J|T_n(x)|^2dx\to0$ である。一方
$$|T_n(x)|^2=|c_n|^2+|c_{-n}|^2+2\operatorname{Re}\bigl(c_n\overline{c_{-n}}e^{2inx}\bigr),\qquad\Bigl|\int_Je^{2inx}dx\Bigr|=\Bigl|\frac{e^{2inb}-e^{2ina}}{2in}\Bigr|\le\frac1n$$
と $2|c_nc_{-n}|\le|c_n|^2+|c_{-n}|^2$ から
$$\int_J|T_n|^2\ge\Bigl(\ell-\frac1n\Bigr)\bigl(|c_n|^2+|c_{-n}|^2\bigr)$$
である。$n\ge2/\ell$ では右辺は $\frac\ell2(|c_n|^2+|c_{-n}|^2)$ 以上なので、$|c_n|^2+|c_{-n}|^2\to0$ である。
部分和の収束から.三角級数が $x$ で収束すれば $T_n(x)=S_n(x)-S_{n-1}(x)\to0$ である。実数の形では $a_n=c_n+c_{-n}$、$b_n=i(c_n-c_{-n})$ なので、これらも $0$ に近づく。$\square$
この定理は係数が Fourier 係数であることも、和が可積分であることも仮定しない。区間の代わりに稠密な集合の各点での収束を仮定しただけでは結論は成り立たない(「反例」の節の 1 行目)。
すべての点で収束する三角級数が Fourier 級数かどうかは、係数の大きさだけでは決まらない。ここでは 2 種類の障害を示す。
$\sum_{n\in\mathbb Z}|c_n|^2=\infty$ なら、三角級数 $\sum c_ne^{inx}$ はどの $g\in L^2(\mathbb T)$ の Fourier 級数でもない。とくに $0<\alpha\le\frac12$ について、$\sum_{n\ge1}\frac{\sin nx}{n^\alpha}$ はすべての点で収束するが、$L^2(\mathbb T)$ の関数の Fourier 級数でなく、したがって $[-\pi,\pi]$ 上 Riemann 積分可能な周期関数の Fourier 級数でもない。
$L^2(\mathbb T)$ に内積 $\langle u,v\rangle:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}u\overline v$ を入れると、$\{e^{inx}\}_{n\in\mathbb Z}$ は正規直交系であり(Fourier級数 の命題「三角関数系の直交性」)、$g\in L^2(\mathbb T)\subset L^1(\mathbb T)$ の第 $n$ 係数は $\langle g,e^{in\cdot}\rangle=\hat g(n)$ である。Besselの不等式 の定理「Besselの不等式」から $\sum_n|\hat g(n)|^2\le\|g\|_2^2<\infty$ なので、$\sum|c_n|^2=\infty$ の列は $g$ の Fourier 係数になりえない。
$\sum_{n\ge1}\frac{\sin nx}{n^\alpha}$ は $c_{\pm n}=\mp\frac i2n^{-\alpha}$ の三角級数で、$n^{-\alpha}$ は単調に $0$ に近づくので prop-ts-abel の 1 からすべての点で収束する。$2\alpha\le1$ なので $\sum_n|c_n|^2=\frac12\sum_{n\ge1}n^{-2\alpha}\ge\frac12\sum_{n\ge1}\frac1n=\infty$ である。Riemann 積分可能な関数は有界な可測関数なので $L^2(\mathbb T)$ に属する。$\square$
$L^1(\mathbb T)$ の関数の Fourier 係数の 2 乗の和は無限大でもよいので、thm-ts-not-l2 の議論は使えない。代わりに、原始関数が連続になることを使う。
$g\in L^1(\mathbb T)$ が $\hat g(0)=0$ を満たすとし、$G(x):=\int_0^xg(t)\,dt$($x<0$ では $-\int_x^0g$)とおく。このとき $G$ は連続な $2\pi$ 周期関数であり、$n\ne0$ について $\hat G(n)=\dfrac{\hat g(n)}{in}$ である。
$G(x+2\pi)-G(x)=\int_x^{x+2\pi}g=2\pi\hat g(0)=0$ なので $G$ は $2\pi$ 周期である。連続性は 絶対連続関数 の補題「積分の絶対連続性」による。係数は、周期性から $[0,2\pi]$ で計算し、Fubiniの定理 で積分の順序を入れ替える($|g(t)|$ は三角形 $0\le t\le x\le2\pi$ 上で可積分)と
$$
2\pi\hat G(n)=\int_0^{2\pi}\Bigl(\int_0^xg(t)\,dt\Bigr)e^{-inx}dx=\int_0^{2\pi}g(t)\Bigl(\int_t^{2\pi}e^{-inx}dx\Bigr)dt=\int_0^{2\pi}g(t)\frac{e^{-int}-1}{in}\,dt=\frac{2\pi\bigl(\hat g(n)-\hat g(0)\bigr)}{in}
$$
であり、$\hat g(0)=0$ から主張を得る。$\square$
$b_n\ge0$($n\ge1$)が $\sum_{n\ge1}\frac{b_n}n=\infty$ を満たすなら、正弦級数 $\sum_{n\ge1}b_n\sin nx$ はどの $g\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 級数でもない。とくに $\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ はすべての点で収束するが、$L^1(\mathbb T)$ の関数の Fourier 級数ではない。
要点:$g$ の Fourier 級数だとすると、原始関数 $G$ は連続で、その Fourier 級数は $\hat G(0)-\sum_n\frac{b_n}n\cos nx$ である。連続関数の Fejér 平均は収束するのに、点 $0$ での Fejér 平均は $-\infty$ に発散してしまう。
$g\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 級数だとすると、$\hat g(0)=0$、$\hat g(\pm n)=\mp\frac i2b_n$($n\ge1$)である。lem-ts-primitive の $G$ は連続な周期関数で、$\hat G(\pm n)=\frac{\mp ib_n/2}{\pm in}=-\frac{b_n}{2n}$ である。Fejérの定理 の定義「Fejér 平均と Fejér 核」の式から、$K\le N$ について
$$\sigma_N(G;0)=\hat G(0)-\sum_{n=1}^{N}\Bigl(1-\frac n{N+1}\Bigr)\frac{b_n}n\le\hat G(0)-\Bigl(1-\frac K{N+1}\Bigr)\sum_{n=1}^{K}\frac{b_n}n$$
である($b_n\ge0$ を使って $n>K$ の項を捨てた)。$N\to\infty$ とすると $\limsup_N\sigma_N(G;0)\le\hat G(0)-\sum_{n\le K}\frac{b_n}n$ であり、$K$ は任意なので $\sigma_N(G;0)\to-\infty$ となる。一方 Fejérの定理 の定理「Fejér の定理」の 2 から $\sigma_N(G;0)\to G(0)=0$ であり、矛盾する。
例については、$b_1:=0$、$b_n:=\frac1{\log n}$($n\ge2$)とする。$n\ge2$ で $\frac1{\log n}$ は単調に $0$ に近づくので prop-ts-abel の 1 からすべての点で収束する(添字を $2$ から始めても同じ)。$k\ge1$ と $2^k< n\le2^{k+1}$ では $n\log n\le2^{k+1}(k+1)\log2$ なので、この $2^k$ 個の項の $\frac1{n\log n}$ の和は $\frac1{2(k+1)\log2}$ 以上であり、$k$ について足すと発散する。よって $\sum_n\frac{b_n}n=\infty$ である。$\square$
$b_n$ の符号を仮定しなくても、$\sum_{n\ge1}b_n\sin nx$ が $L^1(\mathbb T)$ の関数 $g$ の Fourier 級数なら $\sum_{n\ge1}\frac{b_n}n$ は収束する。lem-ts-primitive の $G$ は各有界閉区間で絶対連続なので有界変動であり、Fourier級数の収束 の定理「Dirichlet–Jordan の判定法」から $G$ の Fourier 級数は点 $0$ で $G(0)=0$ に収束する。点 $0$ での部分和は $\hat G(0)-\sum_{n\le N}\frac{b_n}n$ なので、$\sum\frac{b_n}n$ は収束する。
thm-ts-not-l1 は「どの $L^1$ の関数の Fourier 級数でもない」ことを述べるが、級数の和 $f(x):=\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ という関数自体についても、Lebesgue 積分可能でないことが言える。Fourier 級数の和と関数の関係は次の定理で決まる。
$g\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 級数がほとんどすべての点で収束し、その和を $v(x)$ とすると、ほとんど至るところ $v=g$ である。
$g$ を $\mathbb R$ 上の局所可積分関数とみると、Hardy–Littlewoodの極大関数 の定理「Lebesgue の微分定理」から、ほとんどすべての点は $g$ の Lebesgue 点である。Fourier 級数が収束し、かつ Lebesgue 点である点 $x$ では、Fejérの定理 の系「部分和が収束するときの極限」から $v(x)=g(x)$ である。そのような点の補集合は 2 つの零集合の和なので零集合である。$\square$
$f(x):=\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$(すべての $x$ で収束する)は $(0,\pi)$ 上で Lebesgue 積分可能でない。
要点:$H(x):=\sum_{n\ge2}\frac{\cos nx}{n\log n}$ は $(0,2\pi)$ で微分可能で $H'=-f$ である。$f$ が $(0,\pi)$ で積分可能なら $H(a)=H(\pi)+\int_a^\pi f$ は $a\to+0$ で有界にとどまるはずだが、$H(a)\to+\infty$ となる。
微分.$0<\delta<\pi$ とする。$\frac1{n\log n}$ と $\frac1{\log n}$($n\ge2$)は単調に $0$ に近づくので、prop-ts-abel の 3 から $\sum_{n\ge2}\frac{\cos nx}{n\log n}$ とその項別微分 $-\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ は $[\delta,2\pi-\delta]$ で一様に収束する。一様収束 の定理「一様収束と微分の交換」から $H$ は $(\delta,2\pi-\delta)$ で微分可能で $H'=-f$ であり、$f$ は連続関数の一様極限なので連続である(同じ記事の定理「連続関数の一様極限の連続性」)。$\delta$ は任意なので $(0,2\pi)$ で同じことが成り立ち、$0< a<\pi$ について $H(a)-H(\pi)=\int_a^\pi f$ である。
積分可能だとすると.$f\in L^1(0,\pi)$ なら、絶対連続関数 の補題「積分の絶対連続性」から $\int_a^\pi f\to\int_0^\pi f$($a\to+0$)であり、$H(a)$ は $a\to+0$ で有界にとどまる。
$H(a)\to+\infty$.$0< a\le\frac12$ とし、$p:=\lfloor1/a\rfloor+1$ とおく($p\ge3$、$ap>1$)。$2\le n< p$ では $na\le1$ なので $\cos na\ge\cos1>\frac12$ である。$n\ge p$ の部分には prop-ts-abel の 3($M=p-1$)と $\sin\frac a2\ge\frac a\pi$ を使うと、その和の絶対値は $\frac{2}{p\log p}\cdot\frac\pi a<\frac{2\pi}{\log p}\le\frac{2\pi}{\log3}$ 以下である。よって
$$H(a)\ge\frac12\sum_{2\le n\le1/a}\frac1{n\log n}-\frac{2\pi}{\log3}$$
であり、右辺は prf-ts-not-l1 で見たとおり $a\to+0$ で $+\infty$ に発散する。これは前段と矛盾する。$\square$
thm-ts-sum-equals と合わせると、thm-ts-not-l1 の後半の別証明が得られる:$\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ が $g\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 級数なら、すべての点で収束するので和 $f$ はほとんど至るところ $g$ に等しく、$f$ は積分可能になってしまう。
一方、$\sum_{n\ge1}\frac{\sin nx}{\sqrt n}$ については $\sum\frac{n^{-1/2}}n<\infty$ なので thm-ts-not-l1 の障害はない。この級数が除外されるのは $L^2$ の段階(thm-ts-not-l2)である。
この記事の定理の仮定を 1 つずつ外すと、次のように結論が崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-ts-cantor-lebesgue の「開区間の各点で」(稠密な集合の各点に弱める) | $\sum_{k\ge1}\sin(k!\,x)$ | 係数が $0$ に近づくこと |
| prop-ts-abel の「$b_n$ が単調」 | $b_n=\frac1n$($n\equiv1\pmod4$)、それ以外の $n$ で $b_n=0$ | 点 $x=\frac\pi2$ での $\sum b_n\sin nx$ の収束 |
| thm-ts-sum-equals の「$g$ の Fourier 級数である」(すべての点で収束する三角級数に広げる) | $\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ | 和が積分可能であること |
1 行目:$c_{\pm k!}=\mp\frac i2$($k\ge1$)、ほかの $c_n=0$ の三角級数である($1!=1$、$2!=2$ と添字は相異なる)。$x=2\pi\frac pq$($p,q$ は整数、$q\ge1$)なら、$k\ge q$ で $k!\,x\in2\pi\mathbb Z$ なので $\sin(k!\,x)=0$ であり、部分和は $N\ge q!$ で一定になって収束する。このような $x$ の全体は稠密である。しかし係数 $|c_{k!}|=\frac12$ は $0$ に近づかない。thm-ts-cantor-lebesgue から、この級数はどの開区間の上でも、収束しない点をもつ。
2 行目:$b_n\to0$ だが単調でない。$x=\frac\pi2$ では $\sin\frac{n\pi}2=1$($n\equiv1\pmod4$)なので、級数は $\sum_{j\ge0}\frac1{4j+1}$ となり、$\frac1{4j+1}\ge\frac1{4(j+1)}$ から発散する。
3 行目:thm-ts-sum-not-integrable による。この級数はすべての点で収束するが、和は $(0,\pi)$ で積分可能でない。
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