領域を使った最大・最小

同義語:extrema over regions

概要

領域を使った最大・最小(extrema over regions)とは、領域 $D$ の上で関数 $f(x,y)$ の最大・最小を、$f(x,y)=k$ とおいた図形(等高線)が $D$ と共有点をもつ $k$ の範囲として求める方法である。$k$ が値としてとられることと等高線が $D$ と共有点をもつことは同値なので、図形の問題に変わる。円の周と内部 $(x-a)^2+(y-b)^2\le r^2$ では、1 次式 $px+qy$($(p,q)\ne(0,0)$)の値の範囲は中心での値から $r\sqrt{p^2+q^2}$ だけ上下した閉区間で、端の値は直線が円に接する点でとる。領域が円の一部なら、接点が領域に入るかを確かめ、入らなければ境界の端の点などを調べる。領域に穴がある場合、有界でない場合、境界を含まない場合には、接するときの $k$ が最大値・最小値にならないことがある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 直線の方程式と点と直線の距離, 円と直線の位置関係

高校での出発点:値を $k$ とおいて図形を動かす

不等式の表す領域と線形計画法 では、直線で囲まれた領域の上で 1 次式の最大値・最小値を求めた。1 次式の値を $k$ とおくと、$k$ を変えるにつれて直線が平行に動き、領域に最後に触れる点が頂点になった。この記事では、領域の境界に円が含まれる場合や、値を $k$ とおいた図形が直線でない場合を扱う。

円の内部での $2x+y$ の最大・最小

不等式 $x^2+y^2\le5$ の表す領域(原点を中心とする半径 $\sqrt5$ の円の周と内部)で、$2x+y$ の最大値と最小値を求める(図 1)。
$2x+y=k$ とおくと、これは傾き $-2$、$y$ 切片 $k$ の直線である。この直線が領域と共有点をもつような $k$ の範囲を求めればよい。直線と円の周・内部が共有点をもつのは、円の中心 $(0,0)$ と直線 $2x+y-k=0$ の距離が半径 $\sqrt5$ 以下のときである。距離は $\dfrac{|-k|}{\sqrt{2^2+1^2}}=\dfrac{|k|}{\sqrt5}$ なので、条件は
$$ \frac{|k|}{\sqrt5}\le\sqrt5\iff|k|\le5\iff-5\le k\le5 $$
である。最大値は $5$、最小値は $-5$ である。$k=5$ のとき直線 $2x+y=5$ は円に接し、接点は中心から直線に下ろした垂線の足 $(2,1)$ である($2\cdot2+1=5$、$2^2+1^2=5$)。最小値の点は $(-2,-1)$ である。

円板 !FORMULA[26][1343234362][0] と直線 !FORMULA[27][-1073917378][0](!FORMULA[28][2055651724][0])。直線は !FORMULA[29][-1216904562][0] の向きに平行に動き、!FORMULA[30][625061138][0] で円に接する 円板 $x^2+y^2\le5$ と直線 $2x+y=k$($k=-5,-4,\dots,5$)。直線は $(2,1)$ の向きに平行に動き、$k=\pm5$ で円に接する

半円の上での $x+2y$ の最大・最小

今度は、$x^2+y^2\le5$ と $y\ge0$ を同時に満たす領域(半円の周と内部)で、$x+2y$ の最大値と最小値を求める(図 2)。
$x+2y=k$ とおく。円全体で考えると、ex-eor-hs-disk と同じ計算で $-5\le k\le5$ であり、$k=5$ の接点は $(1,2)$、$k=-5$ の接点は $(-1,-2)$ である。$(1,2)$ は $y\ge0$ を満たすので、半円でも最大値は $5$ である。ところが $(-1,-2)$ は $y<0$ で半円の外にあり、$k=-5$ の直線は半円と共有点をもたない。$k$ を $-5$ から大きくしていくと、直線が半円に初めて触れるのは端の点 $(-\sqrt5,0)$ で、そのとき $k=-\sqrt5$ である。最小値は $-\sqrt5$ になる(この答えの証明は ex-eor-halfdisk で与える)。

半円板 !FORMULA[52][1343234362][0]、!FORMULA[53][1142652409][0] と直線 !FORMULA[54][-1276181832][0]。最大値 !FORMULA[55][36275][0] は接点 !FORMULA[56][-1217827122][0] でとる。円全体での最小の接点 !FORMULA[57][-1218068604][0] は領域の外にあり、最小値 !FORMULA[58][-375585182][0] は端の点 !FORMULA[59][-2124307903][0] でとる 半円板 $x^2+y^2\le5$、$y\ge0$ と直線 $x+2y=k$。最大値 $5$ は接点 $(1,2)$ でとる。円全体での最小の接点 $(-1,-2)$ は領域の外にあり、最小値 $-\sqrt5$ は端の点 $(-\sqrt5,0)$ でとる
2 つの例は同じ手順で解いているのに、答えの形が違う。この記事では次の問いに答える。

  1. 「値を $k$ とおいて図形が領域と共有点をもつ範囲を求める」方法は、なぜ正しいのか。→ thm-eor-level
  2. 円の周と内部で 1 次式の最大・最小を求める一般の式はあるか。→ thm-eor-disk
  3. 接点が領域の外にあるときは、どうすればよいか。→ prop-eor-subset、ex-eor-halfdisk
  4. $k$ とおいた図形が直線でないとき(原点を通る直線、円、双曲線)はどうなるか。→ ex-eor-slope、ex-eor-distance、ex-eor-hyperbola
  5. 「接するとき最大」はいつでも正しいか。→ ex-eor-annulus、ex-eor-unbounded
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $f(x,y)=k$ とおいた図形値 $k$ の等高線(def-eor-level)等位集合
    図形が領域と共有点をもつ $k$ の範囲領域の上での $f$ の値の範囲(thm-eor-level)像 $f(D)$
    直線が円に接するとき最大中心と直線の距離が半径に等しい(thm-eor-disk)支持関数(rem-eor-support)
    接点が領域の外なら端の点を調べる大きい領域での最大点が小さい領域に入るか(prop-eor-subset)制約の付いた最適化
    接する点では向きがそろう等高線と境界の法線ベクトルが平行(rem-eor-gradient)Lagrangeの未定乗数法

取り出す構造:等高線と、値の範囲

地図の等高線が「標高が同じ地点を結んだ線」であるのと同じように、関数の値が同じ点を集めた図形を考える。

等高線と値の範囲

平面の点の集合 $D$ と、$D$ の各点 $P=(x,y)$ で値 $f(P)=f(x,y)$ が決まっている関数 $f$ を考える。実数 $k$ に対して
$$ C_k:=\{(x,y): f(x,y)=k\} $$
を $f$ の値 $k$ の 等高線 という。また、$D$ の点での $f$ の値全体の集合
$$ f(D):=\{f(P): P\text{ は }D\text{ の点}\} $$
を、$D$ の上での $f$ の 値の範囲 という。

等高線は「線」とは限らない。点 1 つだけのことも、空集合のこともある。

等高線を描く
  1. $f(x,y)=2x+y$ の等高線 $C_k$ は直線 $2x+y=k$ である。$k$ を変えると、法線ベクトル $(2,1)$ の向きに平行に動く(直線の方程式と点と直線の距離 の図 2 と同じ見方)。
  2. $f(x,y)=x^2+y^2$ の等高線は、$k>0$ なら原点を中心とする半径 $\sqrt k$ の円、$k=0$ なら原点 1 点、$k<0$ なら空集合である。
  3. $x\ne0$ の点で $f(x,y)=\dfrac yx$ とすると、等高線 $C_k$ は直線 $y=kx$ から原点を除いたものである。$\dfrac yx$ は原点と点 $(x,y)$ を結ぶ直線の傾きなので、等高線は「傾きが $k$ の、原点を通る直線」になる。
  4. $f(x,y)=xy$ の等高線は、$k\ne0$ なら双曲線 $y=\dfrac kx$、$k=0$ なら 2 本の座標軸の和集合である。

「値を $k$ とおいて、図形が領域と共有点をもつ $k$ の範囲を求める」方法の根拠は、次の定理である。

値の範囲は、等高線が領域と共有点をもつ $k$ の範囲

$D$ と $f$ を def-eor-level のとおりとする。

  1. 実数 $k$ が $f(D)$ に含まれることと、等高線 $C_k$ と $D$ が共有点をもつことは同値である。
  2. 実数 $M$ が $D$ の上での $f$ の最大値であることは、次の 2 つが両方成り立つことと同値である:$C_M$ と $D$ が共有点をもつ。$M$ より大きいどの $k$ についても、$C_k$ と $D$ は共有点をもたない。
  3. 最小値についても、2 の「大きい」を「小さい」に替えた主張が成り立つ。
定義を言いかえる

方針:「値 $k$ をとる点がある」ことを、等高線の言葉に書きかえる。2 は 1 を最大値の定義に当てはめる。
段 1(1 の証明)。$k\in f(D)$ とは、$D$ の点 $P$ で $f(P)=k$ となるものがあることである。$f(P)=k$ は $P\in C_k$ と同じ意味なので、これは「$D$ と $C_k$ の両方に含まれる点 $P$ がある」、つまり $C_k$ と $D$ が共有点をもつことと同じである。
段 2(2 の証明)。$M$ が最大値であるとは、(a) $D$ の点 $P_0$ で $f(P_0)=M$ となるものがあり、(b) $D$ のすべての点 $P$ で $f(P)\le M$ であることである。(a) は段 1 により「$C_M$ と $D$ が共有点をもつ」ことと同じである。(b) は「$D$ の点で $f(P)>M$ となるものはない」、つまり「$M$ より大きいどの $k$ も $f(D)$ に含まれない」ことと同じで、段 1 により「$M$ より大きいどの $k$ についても $C_k$ と $D$ は共有点をもたない」ことと同じである。
段 3(3 の証明)。不等号の向きを逆にして段 2 と同じように言いかえる。$\square$

定理そのものは定義の言いかえにすぎない。しかし、この言いかえによって、2 つの変数の関数の最大・最小という問題が「$k$ を変えて動く図形 $C_k$ が、領域 $D$ と共有点をもつのはいつか」という図形の問題に変わる。共有点をもつ条件は、直線と円なら距離と半径で(円と直線の位置関係)、直線と放物線なら判別式で(判別式(高校数学))判定できる。「点を固定して、$k$ についての条件を読む」という同じ考え方は、通過領域と包絡線 で直線の族が通る範囲を求めるときにも使った。
この定理は定義の言いかえなので、$D$ がつながっていることも、境界を含むことも仮定していない。ただし、「$k$ を動かして最初に触れる $k$ と最後に触れる $k$ の間の値は、すべてとられる」とは限らない。$D$ が 2 つに分かれているときは、値の範囲も分かれることがある。

分かれた領域では値の範囲が 1 つの区間にならない

$D$ を 2 つの離れた円板 $(x+3)^2+y^2\le1$ と $(x-3)^2+y^2\le1$ を合わせたものとし、$f=x$ を考える。左の円板の点では $-4\le x\le-2$、右の円板の点では $2\le x\le4$ で、どちらの範囲の値も(たとえば $y=0$ の点で)とられる。よって値の範囲は $-4\le k\le-2$ と $2\le k\le4$ の 2 つに分かれ、間の $k=0$ はとられない。直線 $x=0$ は 2 つの円板の間を通り、$D$ と共有点をもたない。

主定理:円の周と内部での 1 次式の最大・最小

以下、中心 $(a,b)$、半径 $r>0$ の円の周と内部を 円板 と呼び、
$$ B:=\{(x,y): (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\} $$
と書く。

円板の上での 1 次式の値の範囲

円板 $B$ と、1 次式 $f(x,y)=px+qy$($(p,q)\ne(0,0)$)を考える。$c:=pa+qb$(中心での $f$ の値)、$s:=\sqrt{p^2+q^2}$ とおく。

  1. $B$ の上での $f$ の値の範囲は、$c-rs\le k\le c+rs$ を満たす $k$ 全体である。
  2. 最大値 $c+rs$ をとる点は $P_+:=(a,b)+\dfrac rs(p,q)$ ただ 1 つ、最小値 $c-rs$ をとる点は $P_-:=(a,b)-\dfrac rs(p,q)$ ただ 1 つである。
  3. $k=c\pm rs$ のとき、直線 $f(x,y)=k$ は円 $(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$ に $P_\pm$ で接する。

証明を 2 通り与える。1 つ目は thm-eor-level と点と直線の距離を使う高校の方法、2 つ目は Cauchy–Schwarz の不等式で直接上から抑える方法である。

高校数学で解く:中心と直線の距離を半径と比べる

方針:thm-eor-level により、直線 $\ell_k$:$px+qy-k=0$ が $B$ と共有点をもつ $k$ の範囲を求めればよい。その条件を、中心から $\ell_k$ に下ろした垂線の足を使って距離で書く。
段 1(垂線の足が最も近い点)。中心を $O'=(a,b)$、$O'$ から $\ell_k$ に下ろした垂線の足を $H_k$、$O'$ と $\ell_k$ の距離を $d_k=O'H_k$ とする。直線の方程式と点と直線の距離 の定理(点と直線の距離の公式)により
$$ d_k=\frac{|pa+qb-k|}{\sqrt{p^2+q^2}}=\frac{|c-k|}{s} $$
であり、$\ell_k$ 上のすべての点 $Q$ について $O'Q^2=d_k^2+H_kQ^2$ が成り立つ。
段 2(共有点をもつ条件)。$\ell_k$ 上の点 $Q$ が $B$ に含まれることは $O'Q\le r$ と同じである。段 1 の式から $O'Q\ge d_k$ で、$Q=H_k$ のとき $O'Q=d_k$ となる。したがって、$\ell_k$ と $B$ が共有点をもつことは $d_k\le r$ と同値である($d_k\le r$ なら $H_k$ が共有点、$d_k>r$ ならどの $Q$ でも $O'Q\ge d_k>r$)。
段 3(1 の証明)。$d_k\le r$ は $|c-k|\le rs$、つまり $c-rs\le k\le c+rs$ と同値である。thm-eor-level の 1 により、これが値の範囲である。
段 4(2・3 の証明)。$k=c+rs$ のとき $d_k=r$ である。$\ell_k$ 上の点 $Q$ が $B$ に含まれるには $O'Q^2=r^2+H_kQ^2\le r^2$、つまり $H_kQ=0$ が必要なので、共有点は $H_k$ ただ 1 つである。直線と円の共有点がただ 1 つなので、$\ell_k$ は円に $H_k$ で接する。$H_k$ の座標は、直線の方程式と点と直線の距離 の垂線の足の式(点から法線ベクトルの向きに、「直線の式の左辺に点を代入した値」を「法線ベクトルの長さの 2 乗」で割った数だけ戻る)を、点 $O'$、直線 $px+qy-k=0$、法線ベクトル $(p,q)$ に使って
$$ H_k=(a,b)-\frac{c-k}{s^2}(p,q)=(a,b)-\frac{-rs}{s^2}(p,q)=(a,b)+\frac rs(p,q)=P_+ $$
である。$k=c-rs$ のときも同じで、$\dfrac{c-k}{s^2}=\dfrac{rs}{s^2}$ から $H_k=P_-$ となる。$\square$

大学数学で見る:Cauchy–Schwarz の不等式で上から抑える

方針:$f(P)-c$ を、ベクトル $(p,q)$ と中心から $P$ へのベクトルの内積とみて、2 次元の Cauchy–Schwarz の不等式を使う。値の範囲全体は、中心を通る線分の上で $f$ が 1 次関数になることから得る。
段 1(上からと下からの評価)。$P=(x,y)$ を $B$ の点とし、$v:=(x-a,y-b)$ とおくと $|v|\le r$ である。
$$ f(P)-c=p(x-a)+q(y-b)=(p,q)\cdot v $$
で、Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) により $|(p,q)\cdot v|\le s\,|v|\le rs$ である。よって $c-rs\le f(P)\le c+rs$ である。
段 2(等号の場合)。$f(P)=c+rs$ なら、段 1 の 2 つの不等号がどちらも等号なので、$|v|=r$ で、$(p,q)\cdot v=s|v|$ である。2 次元では $s^2|v|^2-\bigl((p,q)\cdot v\bigr)^2=\bigl(p(y-b)-q(x-a)\bigr)^2$ なので(展開して確かめられる)、$p(y-b)-q(x-a)=0$、つまり $v$ は $(p,q)$ の実数倍 $v=t(p,q)$ である。$(p,q)\cdot v=ts^2=s|v|\ge0$ から $t\ge0$、$|v|=|t|s=r$ から $t=\dfrac rs$ で、$P=P_+$ である。最小値も同様に $P=P_-$ だけである。
段 3(範囲全体)。$0\le\lambda\le1$ に対して $P_\lambda:=(1-\lambda)P_-+\lambda P_+$ とおくと、$P_\lambda$ は中心を通る直径 $P_-P_+$ の上の点で $B$ に含まれ、$f(P_\lambda)=(1-\lambda)(c-rs)+\lambda(c+rs)$ である($f$ は 1 次式なので、重み付き平均の値は値の重み付き平均になる)。$\lambda$ が $0$ から $1$ まで動くと、この値は $c-rs$ から $c+rs$ までのすべての値をとる。$\square$

2 つ目の証明の段 1 は、直線の方程式と点と直線の距離 で分母 $\sqrt{a^2+b^2}$ を「1 次式の大きさ」と読んだのと同じ計算である。円板の上で 1 次式 $px+qy$ は、中心での値 $c$ から、半径 $r$ と係数ベクトルの長さ $s$ の積だけ上下に動ける。

円板の上の 1 次式を定理で求める
  1. ex-eor-hs-disk:$(a,b)=(0,0)$、$r=\sqrt5$、$(p,q)=(2,1)$ なので $c=0$、$s=\sqrt5$、$rs=5$ で、値の範囲は $-5\le k\le5$ である。最大の点は $P_+=\dfrac{\sqrt5}{\sqrt5}(2,1)=(2,1)$ である。
  2. $(x-1)^2+(y+2)^2\le4$ で $3x-4y$ を考える。$c=3\cdot1-4\cdot(-2)=11$、$s=\sqrt{9+16}=5$、$r=2$ なので、値の範囲は $11-10\le k\le11+10$、つまり $1\le k\le21$ である。最大の点は
    $$ P_+=(1,-2)+\frac25(3,-4)=\left(\frac{11}5,\ -\frac{18}5\right) $$
    で、$3\cdot\dfrac{11}5-4\cdot\left(-\dfrac{18}5\right)=\dfrac{33+72}5=21$ である。$\left(\dfrac{11}5-1\right)^2+\left(-\dfrac{18}5+2\right)^2=\dfrac{36+64}{25}=4$ で、確かに円の周の上にある。

境界に円と線分があるとき:接点が領域に入っているか

ex-eor-hs-halfdisk のように、領域が円板の一部であるときは、まず円板全体で thm-eor-disk を使い、接点が領域に入っているかを確かめる。根拠は次の命題である。

大きい領域での最大点が小さい領域に入っていれば

$D\subset E$ とし、$E$ の上で $f$ が最大値 $M$ を点 $P_0$ でとるとする。$P_0$ が $D$ に含まれるならば、$D$ の上での $f$ の最大値も $M$ で、$P_0$ でとる。最小値についても同じである。

小さい領域の点は大きい領域の点

方針:最大値の定義の 2 つの条件を $D$ について確かめる。
段 1。$D$ のどの点 $P$ も $E$ の点なので、$f(P)\le M$ である。
段 2。$P_0$ は $D$ の点で、$f(P_0)=M$ である。段 1 と合わせて、$M$ は $D$ の上での最大値である。最小値も不等号を逆にして同じように示せる。$\square$

$P_0$ が $D$ に入っていないときは、この命題は何も言わない。そのときは $D$ の境界の別の部分(線分や、境界の端の点)を調べる。

半円の上での最小値を示す

ex-eor-hs-halfdisk の領域 $D$:$x^2+y^2\le5$、$y\ge0$ と $f=x+2y$ を考える。
段 1(最大値)。円板 $x^2+y^2\le5$ での最大値は、thm-eor-disk により $5$ で、点 $(1,2)$ でとる。$(1,2)$ は $y\ge0$ を満たすので $D$ の点であり、prop-eor-subset により $D$ での最大値も $5$ である。
段 2(最小値の候補)。円板での最小の点 $(-1,-2)$ は $D$ に含まれないので、prop-eor-subset は使えない。図 2 では、直線 $x+2y=k$ を $k$ が小さくなる向きに動かすと、最後に $D$ に触れるのは端の点 $(-\sqrt5,0)$ に見える。そこで $-\sqrt5$ が最小値であることを不等式で示す。
段 3(下からの評価)。$D$ の点では $y\ge0$ なので $x+2y\ge x$ である。また $x^2\le x^2+y^2\le5$ なので $x\ge-\sqrt5$ である。合わせて $x+2y\ge-\sqrt5$ である。
段 4(等号)。$(-\sqrt5,0)$ は $x^2+y^2=5\le5$、$y=0\ge0$ を満たすので $D$ の点で、$f=-\sqrt5$ である。よって最小値は $-\sqrt5$ である。

最小値をとる点 $(-\sqrt5,0)$ では、直線 $x+2y=-\sqrt5$ は円に接していない。円の周と線分 $y=0$ がぶつかる角の点で、直線は領域の「角」に触れている。この点で何が起きているかは rem-eor-cone で見る。

弓形の上での最大・最小

領域 $D$:$x^2+y^2\le4$、$x+y\ge2$ を考える。円の周と、弦 $x+y=2$(両端 $(2,0)$、$(0,2)$)で囲まれた弓形である。
(1) $x+y$ の最大値。円板 $x^2+y^2\le4$ での最大の点は、thm-eor-disk により $\dfrac2{\sqrt2}(1,1)=(\sqrt2,\sqrt2)$ で、値は $2\sqrt2$ である。$\sqrt2+\sqrt2=2\sqrt2\ge2$ なので $D$ の点であり、prop-eor-subset により $D$ での最大値も $2\sqrt2$ である。
(2) $x+y$ の最小値。$D$ の点では $x+y\ge2$ で、弦の上の点、たとえば $(1,1)$($1+1\le4$)で $2$ になる。最小値は $2$ で、弦 $x+y=2$ の上のすべての点($0\le x\le2$)でとる。等高線 $x+y=2$ が境界の線分と重なるので、最小値をとる点は 1 つではない。
(3) $x-y$ の最大値。円板での最大の点は $(\sqrt2,-\sqrt2)$ で、$x+y=0<2$ なので $D$ の外である。$D$ の点では $-y\le x-2$($x+y\ge2$ から)なので $x-y\le2x-2$ であり、$x^2\le4$ から $x\le2$ なので $x-y\le2$ である。等号は $x=2$ のときで、$x^2+y^2\le4$ から $y=0$ となる。最大値は $2$ で、弦の端の点 $(2,0)$ でとる。

いろいろな等高線

$k$ とおいた図形が平行な直線でない場合も、thm-eor-level の考え方はそのまま使える。等高線の形に応じて、共有点をもつ条件の判定法を選ぶ。

原点を通る直線:$y/x$ の最大・最小

領域 $D$:$(x-2)^2+y^2\le1$ で、$\dfrac yx$ の最大値と最小値を求める(図 3)。$D$ の点では $1\le x\le3$ なので $x\ne0$ である。
段 1(等高線)。$\dfrac yx=k$ となる点は、原点を通る直線 $y=kx$ の上の、原点以外の点である。原点は $D$ に含まれないので、$C_k$ と $D$ が共有点をもつことは、直線 $kx-y=0$ と $D$ が共有点をもつことと同じである。
段 2(距離の条件)。prf-eor-disk-distance の段 2 と同じく、直線と円板が共有点をもつのは、中心 $(2,0)$ と直線の距離が半径 $1$ 以下のときである。
$$ \frac{|2k-0|}{\sqrt{k^2+1}}\le1\iff4k^2\le k^2+1\iff k^2\le\frac13\iff-\frac1{\sqrt3}\le k\le\frac1{\sqrt3} $$
(1 つ目の同値は、両辺が $0$ 以上なので 2 乗して分母を払った)。最大値は $\dfrac1{\sqrt3}$、最小値は $-\dfrac1{\sqrt3}$ である。
段 3(最大の点)。$k=\dfrac1{\sqrt3}$ の直線 $y=\dfrac1{\sqrt3}x$ に中心 $(2,0)$ から下ろした垂線の足は $\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ である。$\left(\dfrac32-2\right)^2+\dfrac34=1$ で円の周の上にあり、$\dfrac{\sqrt3/2}{3/2}=\dfrac1{\sqrt3}$ である。原点からこの円に引いた接線の傾きが、最大値と最小値になっている。
同じように、$\dfrac{y-b}{x-a}$ は点 $(a,b)$ と点 $(x,y)$ を結ぶ直線の傾きなので、等高線は点 $(a,b)$ を通る直線になる。

円板 !FORMULA[437][1693226466][0] と、原点を通る直線 !FORMULA[438][1144319311][0]。!FORMULA[439][197825292][0] のとき円に接し、接点は !FORMULA[440][-1905465036][0] 円板 $(x-2)^2+y^2\le1$ と、原点を通る直線 $y=kx$。$k=\pm1/\sqrt3$ のとき円に接し、接点は $(3/2,\pm\sqrt3/2)$

円の等高線:定点からの距離の 2 乗

領域 $D$:$x^2+y^2\le1$ で、$f=(x-3)^2+(y-4)^2$ の最大値と最小値を求める。$f$ の等高線は、点 $A(3,4)$ を中心とする半径 $\sqrt k$ の円である($k>0$ のとき)。$f(P)$ は $A$ と $P$ の距離 $AP$ の 2 乗である。
段 1(三角形の不等式)。$O$ を原点とすると $OA=\sqrt{9+16}=5$ である。$D$ の点 $P$ では $OP\le1$ なので、3 点 $O$、$P$、$A$ についての三角形の不等式(長さの三角不等式。Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の系「長さの三角不等式と角」)から
$$ AP\ge OA-OP\ge5-1=4,\qquad AP\le OA+OP\le5+1=6 $$
である。
段 2(等号)。$P=\left(\dfrac35,\dfrac45\right)$(線分 $OA$ 上で $OP=1$)では $AP=5-1=4$、$P=\left(-\dfrac35,-\dfrac45\right)$ では $AP=5+1=6$ である。どちらも $D$ の点である。
よって最小値は $4^2=16$、最大値は $6^2=36$ である。等高線の言葉では、$A$ を中心とする円が単位円に外から接するとき(半径 $4$)と、単位円を内側に含んで接するとき(半径 $6$)である。

双曲線の等高線:$xy$ の最大値

領域 $D$:$x\ge0$、$y\ge0$、$x+2y\le4$(三角形)で、$xy$ の最大値を求める(図 4)。
段 1(接する $k$ を判別式で探す)。$k>0$ の等高線は双曲線 $xy=k$ である。図 4 で $k$ を大きくしていくと、双曲線は右上へ動き、最後に辺 $x+2y=4$ に触れそうに見える。辺の直線の上で $x=4-2y$ を代入すると $(4-2y)y=k$、つまり
$$ 2y^2-4y+k=0 $$
である。この 2 次方程式の判別式を $\Delta$ とすると $\dfrac\Delta4=4-2k$ で、$k=2$ のとき重解 $y=1$ をもつ。このとき $x=4-2=2$ で、双曲線 $xy=2$ は直線 $x+2y=4$ に点 $(2,1)$ で接する。$(2,1)$ は $x\ge0$、$y\ge0$ を満たすので辺の上にある。
段 2(最大値であることの証明)。$D$ の点では $x\ge0$、$2y\ge0$ なので、2 数 $x$、$2y$ の相加平均と相乗平均の関係 $x\cdot2y\le\left(\dfrac{x+2y}2\right)^2$(相加平均と相乗平均。差が $\dfrac{(x-2y)^2}4\ge0$ であることから出る)と $x+2y\le4$ を使うと
$$ xy=\frac12\cdot x\cdot2y\le\frac12\left(\frac{x+2y}2\right)^2\le\frac12\cdot\left(\frac42\right)^2=2 $$
である。$(2,1)$ で $xy=2$ なので、最大値は $2$ である。
段 1 は「どこで接するか」を見つけ、段 2 は「それが本当に最大か」を示している。段 1 だけでは、双曲線が $D$ の別の場所で $D$ と交わっていないことは分からない。最小値は、座標軸の上の点(たとえば原点)での $0$ である。

三角形 !FORMULA[513][1114023258][0]、!FORMULA[514][1142652409][0]、!FORMULA[515][1978629159][0] と双曲線 !FORMULA[516][1145138641][0](!FORMULA[517][-1651627823][0])。!FORMULA[518][36494600][0] のとき辺 !FORMULA[519][-1276183537][0] に点 !FORMULA[520][-1216904562][0] で接する 三角形 $x\ge0$、$y\ge0$、$x+2y\le4$ と双曲線 $xy=k$($k=0.5,1,2,3$)。$k=2$ のとき辺 $x+2y=4$ に点 $(2,1)$ で接する

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
円板全体での接点が領域に含まれる円板全体で接するときの $k$ が、領域での最大値・最小値であるex-eor-halfdisk
領域が穴のない円板である境界の円に接する直線の $k$ は、最大値か最小値であるex-eor-annulus
領域が有界である接するときの $k$ の反対側にも最大値(最小値)があるex-eor-unbounded
領域が境界を含む(不等号に等号がつく)接するときの $k$ が最大値としてとられるex-eor-open

1 行目の反例は ex-eor-halfdisk で扱った。円板 $x^2+y^2\le5$ で $x+2y$ が最小になる点 $(-1,-2)$ は半円の外にあり、半円での最小値は $-5$ ではなく $-\sqrt5$ だった。

反例:穴のあいた領域では接しても最大でない

領域 $D$:$1\le x^2+y^2\le4$(2 つの円の間の円環)で、$f=x$ を考える(図 5)。
直線 $x=1$ は内側の円 $x^2+y^2=1$ に点 $(1,0)$ で接し、$(1,0)$ は $D$ の点である。しかし $k=1$ は最大値ではない。$(2,0)$ も $D$ の点で、$f=2>1$ だからである。実際、$D$ の点では $x\le\sqrt{x^2+y^2}\le2$ なので、最大値は外側の円に接する $x=2$ のときの $2$ である。
満たさない仮定:領域が穴のない円板であること。崩れる主張:境界の円に接する直線の $k$ は最大値か最小値であること。thm-eor-disk の 3 で「接するときが最大・最小」と言えたのは、円板が接線の片側だけにあるからである。円環は内側の円の接線 $x=1$ の両側にまたがっている。

円環 !FORMULA[548][-1064801041][0] と直線 !FORMULA[549][36883650][0]。!FORMULA[550][36881852][0] は内側の円に接するが領域の両側にまたがり、!FORMULA[551][38352][0] の最大値は外側の円に接する !FORMULA[552][36881883][0] でとる 円環 $1\le x^2+y^2\le4$ と直線 $x=k$。$x=1$ は内側の円に接するが領域の両側にまたがり、$x$ の最大値は外側の円に接する $x=2$ でとる

反例:有界でない領域では片側にしか値の端がない

領域 $D$:$y\ge x^2$(放物線とその上側)で、$f=y-2x$ を考える。
段 1(接する直線)。等高線は直線 $y=2x+k$ である。放物線 $y=x^2$ と連立すると $x^2-2x-k=0$ で、判別式を $\Delta$ とすると $\dfrac\Delta4=1+k$ である。$k=-1$ のとき重解 $x=1$ をもち、直線 $y=2x-1$ は放物線に点 $(1,1)$ で接する。
段 2(最小値)。$D$ の点では $y\ge x^2$ なので $y-2x\ge x^2-2x=(x-1)^2-1\ge-1$ で、$(1,1)$ で等号が成り立つ。最小値は $-1$ である。
段 3(最大値はない)。点 $(0,t)$($t\ge0$)は $D$ の点で、$f=t$ である。$t$ はいくらでも大きくできるので、最大値はない。
満たさない仮定:領域が有界であること。崩れる主張:接する $k$ の反対側にも最大値があること。ex-eor-hs-disk では直線を動かすと 2 か所で接したが、ここでは接する位置が 1 か所しかない。

反例:境界を含まない領域では最大値がない

領域 $D$:$x^2+y^2<5$(円の内部だけで、周を含まない)で $2x+y$ を考える。prf-eor-disk-cs の段 1 と同じ計算で、$D$ の点では $2x+y\le\sqrt5\sqrt{x^2+y^2}<\sqrt5\cdot\sqrt5=5$ である。一方、$0< t<1$ として点 $(2t,t)$ は $4t^2+t^2=5t^2<5$ なので $D$ の点で、値は $5t$ である。$t$ を $1$ に近づけると $5t$ は $5$ にいくらでも近づくので、$5$ 未満のどんな数 $m$ についても、$m$ より大きい値がある。$D$ での最大値 $M$ があるとすると、$M$ も $D$ の点での値なので $M<5$ だが、$M$ より大きい値があることになり矛盾する。よって最大値はない。
満たさない仮定:領域が境界を含むこと。崩れる主張:接するときの $k=5$ が最大値としてとられること。接点 $(2,1)$ は周の上にあり、$D$ から除かれている。

大学数学で見る:接する点での法線の向き

接点では 2 つの法線がそろう

thm-eor-disk の最大の点 $P_+=(a,b)+\dfrac rs(p,q)$ を読みかえる。中心から $P_+$ へのベクトルは $\dfrac rs(p,q)$ で、これは円の $P_+$ での 外向きの法線ベクトル(円の外へ向かう、接線に垂直なベクトル)である。一方、$(p,q)$ は等高線 $px+qy=k$ の法線ベクトルで、$f$ の値が増える向きを指す。つまり最大の点では、「$f$ が増える向き」と「領域の外へ出る向き」が同じ向きにそろっている。

最大の点での法線の条件

領域 $D=\{g(x,y)\le0\}$ の境界 $g=0$ がなめらかな曲線で、その上の点 $P_0$ で $f$ が $D$ での最大値をとるとする。$f$ と $g$ の偏導関数が連続で、$P_0$ で $(g_x,g_y)\ne(0,0)$ ならば、次が成り立つ。
$$ (f\text{ の値が最も速く増える向き})=\lambda\cdot(\text{境界の外向きの法線ベクトル}),\qquad\lambda\ge0 $$
成分で書くと、$f$ と $g$ の偏微分を並べたベクトル(勾配)について $(f_x,f_y)=\lambda\,(g_x,g_y)$、$\lambda\ge0$ である。この記事の例で確かめる。

  • ex-eor-hs-disk:$f=2x+y$、$g=x^2+y^2-5$ で、$(f_x,f_y)=(2,1)$、$(g_x,g_y)=(2x,2y)$ である。最大の点 $(2,1)$ では $(2,1)=\dfrac12(4,2)$ で $\lambda=\dfrac12\ge0$ である。最小の点 $(-2,-1)$ では $(2,1)=-\dfrac12(-4,-2)$ で、係数は負になる(最小値では向きが逆にそろう)。
  • ex-eor-hyperbola:最大の点 $(2,1)$ で、$f=xy$ の勾配は $(y,x)=(1,2)$、辺 $x+2y\le4$ を $g=x+2y-4\le0$ と書くと $(g_x,g_y)=(1,2)$ で、$\lambda=1$ である。
    この条件は、大学では $g$ が複数ある場合も含めて Karush–Kuhn–Tucker 条件(KKT 条件)としてまとめられる(BV04 の §5.5.3、p. 243。そこでは最小化の形で、強双対性を仮定した必要条件として述べられている)。条件が 1 つのこの場合は、次のように直接示せる。$u:=(g_x,g_y)(P_0)\ne(0,0)$、$v:=(f_x,f_y)(P_0)$ とおく。$u\cdot d<0$ となる向き $d$ へ小さく動くと、$g(P_0+sd)=s\,u\cdot d+o(s)<0$ なので点は $D$ に入る。もし $v$ が $u$ の実数倍でなければ、$u$ と $v$ は 1 次独立なので $u\cdot d=-1$、$v\cdot d=1$ となる $d$ がとれ、$P_0+sd$($s>0$ が小さい)は $D$ の点で $f(P_0+sd)=f(P_0)+s+o(s)>f(P_0)$ となり、$P_0$ が最大の点であることに反する。よって $v=\lambda u$ である。さらに $d=-u$ に動くと $P_0-su\in D$ で $f(P_0-su)=f(P_0)-s\lambda|u|^2+o(s)\le f(P_0)$ なので $\lambda\ge0$ である。複数の条件がある一般の場合はこの記事では証明しない。$(g_x,g_y)\ne(0,0)$ の仮定は外せない。条件付きの最大・最小 の $g=x^3-y^2$ の例の符号を替えて $g=y^2-x^3$、$D=\{g\le0\}$ とする。$D$ の点は $x^3\ge y^2\ge0$ を満たすので $x\ge0$ であり、$f=-x$ は原点で $D$ での最大値 $0$ をとる。しかし原点では $(g_x,g_y)=(-3x^2,2y)=(0,0)$ で、$(f_x,f_y)=(-1,0)$ はその実数倍にならない(原点で境界はとがっていて、なめらかな曲線ではない)。境界の上だけで考える「$g=0$ のもとでの最大・最小」は 条件付きの最大・最小 で扱い、そこでは $\lambda$ の符号の条件がなくなる(Lagrangeの未定乗数法)。

角の点では、法線の組合せになる

ex-eor-halfdisk の最小の点 $(-\sqrt5,0)$ は、境界がなめらかでない角の点である。

角の点での法線の組合せ

$x+2y$ の最小は、$-x-2y$ の最大と同じである。$-x-2y$ の値が増える向き $(-1,-2)$ を、点 $(-\sqrt5,0)$ で効いている 2 つの境界の外向きの法線ベクトル、つまり円の $(-1,0)$(中心から $(-\sqrt5,0)$ への向き)と、$y\ge0$ の境界 $y=0$ の $(0,-1)$ で表すと
$$ (-1,-2)=1\cdot(-1,0)+2\cdot(0,-1) $$
で、係数 $1$、$2$ はどちらも $0$ 以上である。ex-eor-lens (3) の点 $(2,0)$ でも、$x-y$ の増える向き $(1,-1)$ は、円の外向きの法線 $(1,0)$ と、$x+y\ge2$ の境界の外向きの法線 $(-1,-1)$ を使って $(1,-1)=2\cdot(1,0)+1\cdot(-1,-1)$ と、$0$ 以上の係数で表せる。
これは、不等式の表す領域と線形計画法 で最適な頂点について見た「目的の向きが、効いている条件の外向きの法線に $0$ 以上の係数を掛けた和になる」という形と同じである。なめらかな境界の点では効いている条件が 1 つなので、rem-eor-gradient の「平行」になる。

円板の支持関数

有界で境界を含む領域 $D$ を固定し、係数ベクトル $(p,q)$ ごとに 1 次式 $px+qy$ の $D$ での最大値を $h_D(p,q)$ と書くと、$(p,q)$ の関数 $h_D$ ができる。これを $D$ の 支持関数 という($D$ が有界で境界を含むので、最大値はいつもある)。ex-eor-unbounded や ex-eor-open のように最大値がない $D$ では、大学では最大値の代わりに上限を使い、値が無限大になる $(p,q)$ も許して定める。thm-eor-disk は、円板 $B$ の支持関数が
$$ h_B(p,q)=pa+qb+r\sqrt{p^2+q^2} $$
であることを言っている。支持関数は、有界で境界を含むどんな $D$ についても $(p,q)$ の凸関数になる(BV04 の Example 3.7、p. 81。1 次関数の族の最大値として凸になる)。また、境界を含む 2 つの凸な集合は、支持関数が等しければ一致する(BV04 の演習問題 2.26、p. 63。この記事では証明しない)。支持関数は、凸な図形の性質を関数の性質として調べる道具になる。

さらに先へ

  • 境界の上だけで最大・最小を考えると、条件が等式 $g(x,y)=0$ になる。文字の消去・判別式・不等式・図形の 4 つの方法を比べる話は、次に読む 条件付きの最大・最小 で扱う。
  • 空間の球の周と内部 $(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2\le R^2$ での 1 次式 $px+qy+rz$ の最大値も、prf-eor-disk-cs と同じ計算で、中心での値に $R\sqrt{p^2+q^2+r^2}$ を足したものになる。等高線の代わりに平面 $px+qy+rz=k$(空間の平面と法線ベクトル)が球に接するときである。
  • 直線で囲まれた領域での 1 次式の最大・最小(頂点でとる)は 不等式の表す領域と線形計画法 で扱った。凸な領域と凸な関数についての最大・最小をまとめて扱う分野は凸最適化と呼ばれる。

関連項目

参考文献

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