領域を使った最大・最小(extrema over regions)とは、領域 $D$ の上で関数 $f(x,y)$ の最大・最小を、$f(x,y)=k$ とおいた図形(等高線)が $D$ と共有点をもつ $k$ の範囲として求める方法である。$k$ が値としてとられることと等高線が $D$ と共有点をもつことは同値なので、図形の問題に変わる。円の周と内部 $(x-a)^2+(y-b)^2\le r^2$ では、1 次式 $px+qy$($(p,q)\ne(0,0)$)の値の範囲は中心での値から $r\sqrt{p^2+q^2}$ だけ上下した閉区間で、端の値は直線が円に接する点でとる。領域が円の一部なら、接点が領域に入るかを確かめ、入らなければ境界の端の点などを調べる。領域に穴がある場合、有界でない場合、境界を含まない場合には、接するときの $k$ が最大値・最小値にならないことがある。
前提知識: 直線の方程式と点と直線の距離, 円と直線の位置関係
不等式の表す領域と線形計画法 では、直線で囲まれた領域の上で 1 次式の最大値・最小値を求めた。1 次式の値を $k$ とおくと、$k$ を変えるにつれて直線が平行に動き、領域に最後に触れる点が頂点になった。この記事では、領域の境界に円が含まれる場合や、値を $k$ とおいた図形が直線でない場合を扱う。
不等式 $x^2+y^2\le5$ の表す領域(原点を中心とする半径 $\sqrt5$ の円の周と内部)で、$2x+y$ の最大値と最小値を求める(図 1)。
$2x+y=k$ とおくと、これは傾き $-2$、$y$ 切片 $k$ の直線である。この直線が領域と共有点をもつような $k$ の範囲を求めればよい。直線と円の周・内部が共有点をもつのは、円の中心 $(0,0)$ と直線 $2x+y-k=0$ の距離が半径 $\sqrt5$ 以下のときである。距離は $\dfrac{|-k|}{\sqrt{2^2+1^2}}=\dfrac{|k|}{\sqrt5}$ なので、条件は
$$
\frac{|k|}{\sqrt5}\le\sqrt5\iff|k|\le5\iff-5\le k\le5
$$
である。最大値は $5$、最小値は $-5$ である。$k=5$ のとき直線 $2x+y=5$ は円に接し、接点は中心から直線に下ろした垂線の足 $(2,1)$ である($2\cdot2+1=5$、$2^2+1^2=5$)。最小値の点は $(-2,-1)$ である。
円板 $x^2+y^2\le5$ と直線 $2x+y=k$($k=-5,-4,\dots,5$)。直線は $(2,1)$ の向きに平行に動き、$k=\pm5$ で円に接する
今度は、$x^2+y^2\le5$ と $y\ge0$ を同時に満たす領域(半円の周と内部)で、$x+2y$ の最大値と最小値を求める(図 2)。
$x+2y=k$ とおく。円全体で考えると、ex-eor-hs-disk と同じ計算で $-5\le k\le5$ であり、$k=5$ の接点は $(1,2)$、$k=-5$ の接点は $(-1,-2)$ である。$(1,2)$ は $y\ge0$ を満たすので、半円でも最大値は $5$ である。ところが $(-1,-2)$ は $y<0$ で半円の外にあり、$k=-5$ の直線は半円と共有点をもたない。$k$ を $-5$ から大きくしていくと、直線が半円に初めて触れるのは端の点 $(-\sqrt5,0)$ で、そのとき $k=-\sqrt5$ である。最小値は $-\sqrt5$ になる(この答えの証明は ex-eor-halfdisk で与える)。
半円板 $x^2+y^2\le5$、$y\ge0$ と直線 $x+2y=k$。最大値 $5$ は接点 $(1,2)$ でとる。円全体での最小の接点 $(-1,-2)$ は領域の外にあり、最小値 $-\sqrt5$ は端の点 $(-\sqrt5,0)$ でとる
2 つの例は同じ手順で解いているのに、答えの形が違う。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $f(x,y)=k$ とおいた図形 | 値 $k$ の等高線(def-eor-level) | 等位集合 |
| 図形が領域と共有点をもつ $k$ の範囲 | 領域の上での $f$ の値の範囲(thm-eor-level) | 像 $f(D)$ |
| 直線が円に接するとき最大 | 中心と直線の距離が半径に等しい(thm-eor-disk) | 支持関数(rem-eor-support) |
| 接点が領域の外なら端の点を調べる | 大きい領域での最大点が小さい領域に入るか(prop-eor-subset) | 制約の付いた最適化 |
| 接する点では向きがそろう | 等高線と境界の法線ベクトルが平行(rem-eor-gradient) | Lagrangeの未定乗数法 |
地図の等高線が「標高が同じ地点を結んだ線」であるのと同じように、関数の値が同じ点を集めた図形を考える。
平面の点の集合 $D$ と、$D$ の各点 $P=(x,y)$ で値 $f(P)=f(x,y)$ が決まっている関数 $f$ を考える。実数 $k$ に対して
$$
C_k:=\{(x,y): f(x,y)=k\}
$$
を $f$ の値 $k$ の 等高線 という。また、$D$ の点での $f$ の値全体の集合
$$
f(D):=\{f(P): P\text{ は }D\text{ の点}\}
$$
を、$D$ の上での $f$ の 値の範囲 という。
等高線は「線」とは限らない。点 1 つだけのことも、空集合のこともある。
「値を $k$ とおいて、図形が領域と共有点をもつ $k$ の範囲を求める」方法の根拠は、次の定理である。
$D$ と $f$ を def-eor-level のとおりとする。
方針:「値 $k$ をとる点がある」ことを、等高線の言葉に書きかえる。2 は 1 を最大値の定義に当てはめる。
段 1(1 の証明)。$k\in f(D)$ とは、$D$ の点 $P$ で $f(P)=k$ となるものがあることである。$f(P)=k$ は $P\in C_k$ と同じ意味なので、これは「$D$ と $C_k$ の両方に含まれる点 $P$ がある」、つまり $C_k$ と $D$ が共有点をもつことと同じである。
段 2(2 の証明)。$M$ が最大値であるとは、(a) $D$ の点 $P_0$ で $f(P_0)=M$ となるものがあり、(b) $D$ のすべての点 $P$ で $f(P)\le M$ であることである。(a) は段 1 により「$C_M$ と $D$ が共有点をもつ」ことと同じである。(b) は「$D$ の点で $f(P)>M$ となるものはない」、つまり「$M$ より大きいどの $k$ も $f(D)$ に含まれない」ことと同じで、段 1 により「$M$ より大きいどの $k$ についても $C_k$ と $D$ は共有点をもたない」ことと同じである。
段 3(3 の証明)。不等号の向きを逆にして段 2 と同じように言いかえる。$\square$
定理そのものは定義の言いかえにすぎない。しかし、この言いかえによって、2 つの変数の関数の最大・最小という問題が「$k$ を変えて動く図形 $C_k$ が、領域 $D$ と共有点をもつのはいつか」という図形の問題に変わる。共有点をもつ条件は、直線と円なら距離と半径で(円と直線の位置関係)、直線と放物線なら判別式で(判別式(高校数学))判定できる。「点を固定して、$k$ についての条件を読む」という同じ考え方は、通過領域と包絡線 で直線の族が通る範囲を求めるときにも使った。
この定理は定義の言いかえなので、$D$ がつながっていることも、境界を含むことも仮定していない。ただし、「$k$ を動かして最初に触れる $k$ と最後に触れる $k$ の間の値は、すべてとられる」とは限らない。$D$ が 2 つに分かれているときは、値の範囲も分かれることがある。
$D$ を 2 つの離れた円板 $(x+3)^2+y^2\le1$ と $(x-3)^2+y^2\le1$ を合わせたものとし、$f=x$ を考える。左の円板の点では $-4\le x\le-2$、右の円板の点では $2\le x\le4$ で、どちらの範囲の値も(たとえば $y=0$ の点で)とられる。よって値の範囲は $-4\le k\le-2$ と $2\le k\le4$ の 2 つに分かれ、間の $k=0$ はとられない。直線 $x=0$ は 2 つの円板の間を通り、$D$ と共有点をもたない。
以下、中心 $(a,b)$、半径 $r>0$ の円の周と内部を 円板 と呼び、
$$
B:=\{(x,y): (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\}
$$
と書く。
円板 $B$ と、1 次式 $f(x,y)=px+qy$($(p,q)\ne(0,0)$)を考える。$c:=pa+qb$(中心での $f$ の値)、$s:=\sqrt{p^2+q^2}$ とおく。
証明を 2 通り与える。1 つ目は thm-eor-level と点と直線の距離を使う高校の方法、2 つ目は Cauchy–Schwarz の不等式で直接上から抑える方法である。
方針:thm-eor-level により、直線 $\ell_k$:$px+qy-k=0$ が $B$ と共有点をもつ $k$ の範囲を求めればよい。その条件を、中心から $\ell_k$ に下ろした垂線の足を使って距離で書く。
段 1(垂線の足が最も近い点)。中心を $O'=(a,b)$、$O'$ から $\ell_k$ に下ろした垂線の足を $H_k$、$O'$ と $\ell_k$ の距離を $d_k=O'H_k$ とする。直線の方程式と点と直線の距離 の定理(点と直線の距離の公式)により
$$
d_k=\frac{|pa+qb-k|}{\sqrt{p^2+q^2}}=\frac{|c-k|}{s}
$$
であり、$\ell_k$ 上のすべての点 $Q$ について $O'Q^2=d_k^2+H_kQ^2$ が成り立つ。
段 2(共有点をもつ条件)。$\ell_k$ 上の点 $Q$ が $B$ に含まれることは $O'Q\le r$ と同じである。段 1 の式から $O'Q\ge d_k$ で、$Q=H_k$ のとき $O'Q=d_k$ となる。したがって、$\ell_k$ と $B$ が共有点をもつことは $d_k\le r$ と同値である($d_k\le r$ なら $H_k$ が共有点、$d_k>r$ ならどの $Q$ でも $O'Q\ge d_k>r$)。
段 3(1 の証明)。$d_k\le r$ は $|c-k|\le rs$、つまり $c-rs\le k\le c+rs$ と同値である。thm-eor-level の 1 により、これが値の範囲である。
段 4(2・3 の証明)。$k=c+rs$ のとき $d_k=r$ である。$\ell_k$ 上の点 $Q$ が $B$ に含まれるには $O'Q^2=r^2+H_kQ^2\le r^2$、つまり $H_kQ=0$ が必要なので、共有点は $H_k$ ただ 1 つである。直線と円の共有点がただ 1 つなので、$\ell_k$ は円に $H_k$ で接する。$H_k$ の座標は、直線の方程式と点と直線の距離 の垂線の足の式(点から法線ベクトルの向きに、「直線の式の左辺に点を代入した値」を「法線ベクトルの長さの 2 乗」で割った数だけ戻る)を、点 $O'$、直線 $px+qy-k=0$、法線ベクトル $(p,q)$ に使って
$$
H_k=(a,b)-\frac{c-k}{s^2}(p,q)=(a,b)-\frac{-rs}{s^2}(p,q)=(a,b)+\frac rs(p,q)=P_+
$$
である。$k=c-rs$ のときも同じで、$\dfrac{c-k}{s^2}=\dfrac{rs}{s^2}$ から $H_k=P_-$ となる。$\square$
方針:$f(P)-c$ を、ベクトル $(p,q)$ と中心から $P$ へのベクトルの内積とみて、2 次元の Cauchy–Schwarz の不等式を使う。値の範囲全体は、中心を通る線分の上で $f$ が 1 次関数になることから得る。
段 1(上からと下からの評価)。$P=(x,y)$ を $B$ の点とし、$v:=(x-a,y-b)$ とおくと $|v|\le r$ である。
$$
f(P)-c=p(x-a)+q(y-b)=(p,q)\cdot v
$$
で、Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) により $|(p,q)\cdot v|\le s\,|v|\le rs$ である。よって $c-rs\le f(P)\le c+rs$ である。
段 2(等号の場合)。$f(P)=c+rs$ なら、段 1 の 2 つの不等号がどちらも等号なので、$|v|=r$ で、$(p,q)\cdot v=s|v|$ である。2 次元では $s^2|v|^2-\bigl((p,q)\cdot v\bigr)^2=\bigl(p(y-b)-q(x-a)\bigr)^2$ なので(展開して確かめられる)、$p(y-b)-q(x-a)=0$、つまり $v$ は $(p,q)$ の実数倍 $v=t(p,q)$ である。$(p,q)\cdot v=ts^2=s|v|\ge0$ から $t\ge0$、$|v|=|t|s=r$ から $t=\dfrac rs$ で、$P=P_+$ である。最小値も同様に $P=P_-$ だけである。
段 3(範囲全体)。$0\le\lambda\le1$ に対して $P_\lambda:=(1-\lambda)P_-+\lambda P_+$ とおくと、$P_\lambda$ は中心を通る直径 $P_-P_+$ の上の点で $B$ に含まれ、$f(P_\lambda)=(1-\lambda)(c-rs)+\lambda(c+rs)$ である($f$ は 1 次式なので、重み付き平均の値は値の重み付き平均になる)。$\lambda$ が $0$ から $1$ まで動くと、この値は $c-rs$ から $c+rs$ までのすべての値をとる。$\square$
2 つ目の証明の段 1 は、直線の方程式と点と直線の距離 で分母 $\sqrt{a^2+b^2}$ を「1 次式の大きさ」と読んだのと同じ計算である。円板の上で 1 次式 $px+qy$ は、中心での値 $c$ から、半径 $r$ と係数ベクトルの長さ $s$ の積だけ上下に動ける。
ex-eor-hs-halfdisk のように、領域が円板の一部であるときは、まず円板全体で thm-eor-disk を使い、接点が領域に入っているかを確かめる。根拠は次の命題である。
$D\subset E$ とし、$E$ の上で $f$ が最大値 $M$ を点 $P_0$ でとるとする。$P_0$ が $D$ に含まれるならば、$D$ の上での $f$ の最大値も $M$ で、$P_0$ でとる。最小値についても同じである。
方針:最大値の定義の 2 つの条件を $D$ について確かめる。
段 1。$D$ のどの点 $P$ も $E$ の点なので、$f(P)\le M$ である。
段 2。$P_0$ は $D$ の点で、$f(P_0)=M$ である。段 1 と合わせて、$M$ は $D$ の上での最大値である。最小値も不等号を逆にして同じように示せる。$\square$
$P_0$ が $D$ に入っていないときは、この命題は何も言わない。そのときは $D$ の境界の別の部分(線分や、境界の端の点)を調べる。
ex-eor-hs-halfdisk の領域 $D$:$x^2+y^2\le5$、$y\ge0$ と $f=x+2y$ を考える。
段 1(最大値)。円板 $x^2+y^2\le5$ での最大値は、thm-eor-disk により $5$ で、点 $(1,2)$ でとる。$(1,2)$ は $y\ge0$ を満たすので $D$ の点であり、prop-eor-subset により $D$ での最大値も $5$ である。
段 2(最小値の候補)。円板での最小の点 $(-1,-2)$ は $D$ に含まれないので、prop-eor-subset は使えない。図 2 では、直線 $x+2y=k$ を $k$ が小さくなる向きに動かすと、最後に $D$ に触れるのは端の点 $(-\sqrt5,0)$ に見える。そこで $-\sqrt5$ が最小値であることを不等式で示す。
段 3(下からの評価)。$D$ の点では $y\ge0$ なので $x+2y\ge x$ である。また $x^2\le x^2+y^2\le5$ なので $x\ge-\sqrt5$ である。合わせて $x+2y\ge-\sqrt5$ である。
段 4(等号)。$(-\sqrt5,0)$ は $x^2+y^2=5\le5$、$y=0\ge0$ を満たすので $D$ の点で、$f=-\sqrt5$ である。よって最小値は $-\sqrt5$ である。
最小値をとる点 $(-\sqrt5,0)$ では、直線 $x+2y=-\sqrt5$ は円に接していない。円の周と線分 $y=0$ がぶつかる角の点で、直線は領域の「角」に触れている。この点で何が起きているかは rem-eor-cone で見る。
領域 $D$:$x^2+y^2\le4$、$x+y\ge2$ を考える。円の周と、弦 $x+y=2$(両端 $(2,0)$、$(0,2)$)で囲まれた弓形である。
(1) $x+y$ の最大値。円板 $x^2+y^2\le4$ での最大の点は、thm-eor-disk により $\dfrac2{\sqrt2}(1,1)=(\sqrt2,\sqrt2)$ で、値は $2\sqrt2$ である。$\sqrt2+\sqrt2=2\sqrt2\ge2$ なので $D$ の点であり、prop-eor-subset により $D$ での最大値も $2\sqrt2$ である。
(2) $x+y$ の最小値。$D$ の点では $x+y\ge2$ で、弦の上の点、たとえば $(1,1)$($1+1\le4$)で $2$ になる。最小値は $2$ で、弦 $x+y=2$ の上のすべての点($0\le x\le2$)でとる。等高線 $x+y=2$ が境界の線分と重なるので、最小値をとる点は 1 つではない。
(3) $x-y$ の最大値。円板での最大の点は $(\sqrt2,-\sqrt2)$ で、$x+y=0<2$ なので $D$ の外である。$D$ の点では $-y\le x-2$($x+y\ge2$ から)なので $x-y\le2x-2$ であり、$x^2\le4$ から $x\le2$ なので $x-y\le2$ である。等号は $x=2$ のときで、$x^2+y^2\le4$ から $y=0$ となる。最大値は $2$ で、弦の端の点 $(2,0)$ でとる。
$k$ とおいた図形が平行な直線でない場合も、thm-eor-level の考え方はそのまま使える。等高線の形に応じて、共有点をもつ条件の判定法を選ぶ。
領域 $D$:$(x-2)^2+y^2\le1$ で、$\dfrac yx$ の最大値と最小値を求める(図 3)。$D$ の点では $1\le x\le3$ なので $x\ne0$ である。
段 1(等高線)。$\dfrac yx=k$ となる点は、原点を通る直線 $y=kx$ の上の、原点以外の点である。原点は $D$ に含まれないので、$C_k$ と $D$ が共有点をもつことは、直線 $kx-y=0$ と $D$ が共有点をもつことと同じである。
段 2(距離の条件)。prf-eor-disk-distance の段 2 と同じく、直線と円板が共有点をもつのは、中心 $(2,0)$ と直線の距離が半径 $1$ 以下のときである。
$$
\frac{|2k-0|}{\sqrt{k^2+1}}\le1\iff4k^2\le k^2+1\iff k^2\le\frac13\iff-\frac1{\sqrt3}\le k\le\frac1{\sqrt3}
$$
(1 つ目の同値は、両辺が $0$ 以上なので 2 乗して分母を払った)。最大値は $\dfrac1{\sqrt3}$、最小値は $-\dfrac1{\sqrt3}$ である。
段 3(最大の点)。$k=\dfrac1{\sqrt3}$ の直線 $y=\dfrac1{\sqrt3}x$ に中心 $(2,0)$ から下ろした垂線の足は $\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ である。$\left(\dfrac32-2\right)^2+\dfrac34=1$ で円の周の上にあり、$\dfrac{\sqrt3/2}{3/2}=\dfrac1{\sqrt3}$ である。原点からこの円に引いた接線の傾きが、最大値と最小値になっている。
同じように、$\dfrac{y-b}{x-a}$ は点 $(a,b)$ と点 $(x,y)$ を結ぶ直線の傾きなので、等高線は点 $(a,b)$ を通る直線になる。
円板 $(x-2)^2+y^2\le1$ と、原点を通る直線 $y=kx$。$k=\pm1/\sqrt3$ のとき円に接し、接点は $(3/2,\pm\sqrt3/2)$
領域 $D$:$x^2+y^2\le1$ で、$f=(x-3)^2+(y-4)^2$ の最大値と最小値を求める。$f$ の等高線は、点 $A(3,4)$ を中心とする半径 $\sqrt k$ の円である($k>0$ のとき)。$f(P)$ は $A$ と $P$ の距離 $AP$ の 2 乗である。
段 1(三角形の不等式)。$O$ を原点とすると $OA=\sqrt{9+16}=5$ である。$D$ の点 $P$ では $OP\le1$ なので、3 点 $O$、$P$、$A$ についての三角形の不等式(長さの三角不等式。Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の系「長さの三角不等式と角」)から
$$
AP\ge OA-OP\ge5-1=4,\qquad AP\le OA+OP\le5+1=6
$$
である。
段 2(等号)。$P=\left(\dfrac35,\dfrac45\right)$(線分 $OA$ 上で $OP=1$)では $AP=5-1=4$、$P=\left(-\dfrac35,-\dfrac45\right)$ では $AP=5+1=6$ である。どちらも $D$ の点である。
よって最小値は $4^2=16$、最大値は $6^2=36$ である。等高線の言葉では、$A$ を中心とする円が単位円に外から接するとき(半径 $4$)と、単位円を内側に含んで接するとき(半径 $6$)である。
領域 $D$:$x\ge0$、$y\ge0$、$x+2y\le4$(三角形)で、$xy$ の最大値を求める(図 4)。
段 1(接する $k$ を判別式で探す)。$k>0$ の等高線は双曲線 $xy=k$ である。図 4 で $k$ を大きくしていくと、双曲線は右上へ動き、最後に辺 $x+2y=4$ に触れそうに見える。辺の直線の上で $x=4-2y$ を代入すると $(4-2y)y=k$、つまり
$$
2y^2-4y+k=0
$$
である。この 2 次方程式の判別式を $\Delta$ とすると $\dfrac\Delta4=4-2k$ で、$k=2$ のとき重解 $y=1$ をもつ。このとき $x=4-2=2$ で、双曲線 $xy=2$ は直線 $x+2y=4$ に点 $(2,1)$ で接する。$(2,1)$ は $x\ge0$、$y\ge0$ を満たすので辺の上にある。
段 2(最大値であることの証明)。$D$ の点では $x\ge0$、$2y\ge0$ なので、2 数 $x$、$2y$ の相加平均と相乗平均の関係 $x\cdot2y\le\left(\dfrac{x+2y}2\right)^2$(相加平均と相乗平均。差が $\dfrac{(x-2y)^2}4\ge0$ であることから出る)と $x+2y\le4$ を使うと
$$
xy=\frac12\cdot x\cdot2y\le\frac12\left(\frac{x+2y}2\right)^2\le\frac12\cdot\left(\frac42\right)^2=2
$$
である。$(2,1)$ で $xy=2$ なので、最大値は $2$ である。
段 1 は「どこで接するか」を見つけ、段 2 は「それが本当に最大か」を示している。段 1 だけでは、双曲線が $D$ の別の場所で $D$ と交わっていないことは分からない。最小値は、座標軸の上の点(たとえば原点)での $0$ である。
三角形 $x\ge0$、$y\ge0$、$x+2y\le4$ と双曲線 $xy=k$($k=0.5,1,2,3$)。$k=2$ のとき辺 $x+2y=4$ に点 $(2,1)$ で接する
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 円板全体での接点が領域に含まれる | 円板全体で接するときの $k$ が、領域での最大値・最小値である | ex-eor-halfdisk |
| 領域が穴のない円板である | 境界の円に接する直線の $k$ は、最大値か最小値である | ex-eor-annulus |
| 領域が有界である | 接するときの $k$ の反対側にも最大値(最小値)がある | ex-eor-unbounded |
| 領域が境界を含む(不等号に等号がつく) | 接するときの $k$ が最大値としてとられる | ex-eor-open |
1 行目の反例は ex-eor-halfdisk で扱った。円板 $x^2+y^2\le5$ で $x+2y$ が最小になる点 $(-1,-2)$ は半円の外にあり、半円での最小値は $-5$ ではなく $-\sqrt5$ だった。
領域 $D$:$1\le x^2+y^2\le4$(2 つの円の間の円環)で、$f=x$ を考える(図 5)。
直線 $x=1$ は内側の円 $x^2+y^2=1$ に点 $(1,0)$ で接し、$(1,0)$ は $D$ の点である。しかし $k=1$ は最大値ではない。$(2,0)$ も $D$ の点で、$f=2>1$ だからである。実際、$D$ の点では $x\le\sqrt{x^2+y^2}\le2$ なので、最大値は外側の円に接する $x=2$ のときの $2$ である。
満たさない仮定:領域が穴のない円板であること。崩れる主張:境界の円に接する直線の $k$ は最大値か最小値であること。thm-eor-disk の 3 で「接するときが最大・最小」と言えたのは、円板が接線の片側だけにあるからである。円環は内側の円の接線 $x=1$ の両側にまたがっている。
円環 $1\le x^2+y^2\le4$ と直線 $x=k$。$x=1$ は内側の円に接するが領域の両側にまたがり、$x$ の最大値は外側の円に接する $x=2$ でとる
領域 $D$:$y\ge x^2$(放物線とその上側)で、$f=y-2x$ を考える。
段 1(接する直線)。等高線は直線 $y=2x+k$ である。放物線 $y=x^2$ と連立すると $x^2-2x-k=0$ で、判別式を $\Delta$ とすると $\dfrac\Delta4=1+k$ である。$k=-1$ のとき重解 $x=1$ をもち、直線 $y=2x-1$ は放物線に点 $(1,1)$ で接する。
段 2(最小値)。$D$ の点では $y\ge x^2$ なので $y-2x\ge x^2-2x=(x-1)^2-1\ge-1$ で、$(1,1)$ で等号が成り立つ。最小値は $-1$ である。
段 3(最大値はない)。点 $(0,t)$($t\ge0$)は $D$ の点で、$f=t$ である。$t$ はいくらでも大きくできるので、最大値はない。
満たさない仮定:領域が有界であること。崩れる主張:接する $k$ の反対側にも最大値があること。ex-eor-hs-disk では直線を動かすと 2 か所で接したが、ここでは接する位置が 1 か所しかない。
領域 $D$:$x^2+y^2<5$(円の内部だけで、周を含まない)で $2x+y$ を考える。prf-eor-disk-cs の段 1 と同じ計算で、$D$ の点では $2x+y\le\sqrt5\sqrt{x^2+y^2}<\sqrt5\cdot\sqrt5=5$ である。一方、$0< t<1$ として点 $(2t,t)$ は $4t^2+t^2=5t^2<5$ なので $D$ の点で、値は $5t$ である。$t$ を $1$ に近づけると $5t$ は $5$ にいくらでも近づくので、$5$ 未満のどんな数 $m$ についても、$m$ より大きい値がある。$D$ での最大値 $M$ があるとすると、$M$ も $D$ の点での値なので $M<5$ だが、$M$ より大きい値があることになり矛盾する。よって最大値はない。
満たさない仮定:領域が境界を含むこと。崩れる主張:接するときの $k=5$ が最大値としてとられること。接点 $(2,1)$ は周の上にあり、$D$ から除かれている。
thm-eor-disk の最大の点 $P_+=(a,b)+\dfrac rs(p,q)$ を読みかえる。中心から $P_+$ へのベクトルは $\dfrac rs(p,q)$ で、これは円の $P_+$ での 外向きの法線ベクトル(円の外へ向かう、接線に垂直なベクトル)である。一方、$(p,q)$ は等高線 $px+qy=k$ の法線ベクトルで、$f$ の値が増える向きを指す。つまり最大の点では、「$f$ が増える向き」と「領域の外へ出る向き」が同じ向きにそろっている。
領域 $D=\{g(x,y)\le0\}$ の境界 $g=0$ がなめらかな曲線で、その上の点 $P_0$ で $f$ が $D$ での最大値をとるとする。$f$ と $g$ の偏導関数が連続で、$P_0$ で $(g_x,g_y)\ne(0,0)$ ならば、次が成り立つ。
$$
(f\text{ の値が最も速く増える向き})=\lambda\cdot(\text{境界の外向きの法線ベクトル}),\qquad\lambda\ge0
$$
成分で書くと、$f$ と $g$ の偏微分を並べたベクトル(勾配)について $(f_x,f_y)=\lambda\,(g_x,g_y)$、$\lambda\ge0$ である。この記事の例で確かめる。
ex-eor-halfdisk の最小の点 $(-\sqrt5,0)$ は、境界がなめらかでない角の点である。
$x+2y$ の最小は、$-x-2y$ の最大と同じである。$-x-2y$ の値が増える向き $(-1,-2)$ を、点 $(-\sqrt5,0)$ で効いている 2 つの境界の外向きの法線ベクトル、つまり円の $(-1,0)$(中心から $(-\sqrt5,0)$ への向き)と、$y\ge0$ の境界 $y=0$ の $(0,-1)$ で表すと
$$
(-1,-2)=1\cdot(-1,0)+2\cdot(0,-1)
$$
で、係数 $1$、$2$ はどちらも $0$ 以上である。ex-eor-lens (3) の点 $(2,0)$ でも、$x-y$ の増える向き $(1,-1)$ は、円の外向きの法線 $(1,0)$ と、$x+y\ge2$ の境界の外向きの法線 $(-1,-1)$ を使って $(1,-1)=2\cdot(1,0)+1\cdot(-1,-1)$ と、$0$ 以上の係数で表せる。
これは、不等式の表す領域と線形計画法 で最適な頂点について見た「目的の向きが、効いている条件の外向きの法線に $0$ 以上の係数を掛けた和になる」という形と同じである。なめらかな境界の点では効いている条件が 1 つなので、rem-eor-gradient の「平行」になる。
有界で境界を含む領域 $D$ を固定し、係数ベクトル $(p,q)$ ごとに 1 次式 $px+qy$ の $D$ での最大値を $h_D(p,q)$ と書くと、$(p,q)$ の関数 $h_D$ ができる。これを $D$ の 支持関数 という($D$ が有界で境界を含むので、最大値はいつもある)。ex-eor-unbounded や ex-eor-open のように最大値がない $D$ では、大学では最大値の代わりに上限を使い、値が無限大になる $(p,q)$ も許して定める。thm-eor-disk は、円板 $B$ の支持関数が
$$
h_B(p,q)=pa+qb+r\sqrt{p^2+q^2}
$$
であることを言っている。支持関数は、有界で境界を含むどんな $D$ についても $(p,q)$ の凸関数になる(BV04 の Example 3.7、p. 81。1 次関数の族の最大値として凸になる)。また、境界を含む 2 つの凸な集合は、支持関数が等しければ一致する(BV04 の演習問題 2.26、p. 63。この記事では証明しない)。支持関数は、凸な図形の性質を関数の性質として調べる道具になる。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する