Riemann–Lebesgueの補題

同義語:Riemann-Lebesgueの補題リーマン・ルベーグの補題Riemann–Lebesgue lemmaRiemann–Lebesgueの定理

概要

Riemann–Lebesgueの補題(Riemann–Lebesgue lemma)とは、積分可能な関数の Fourier 係数・Fourier 変換が無限遠で $0$ に近づくという補題である。$f\in L^1(\mathbb R^n)$ なら $|\widehat f(\xi)|$ は $f$ と半周期だけ平行移動した関数の差の $L^1$ ノルムの半分以下で、平行移動の連続性から $0$ に近づく。なめらかな関数ほど速く減衰するが、連続関数全体に共通の速さはなく、有界な周期関数 $g$ について $\int f(x)g(\lambda x)\,dx$ は $g$ の平均と $f$ の積分の積に近づく。重みを測度に替えると成り立たず、跳びのない Cantor 関数でも Fourier–Stieltjes 係数は $0$ に近づかない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Lebesgue積分, Lp空間, Fourier級数, Fourier変換

Riemann–Lebesgueの補題(Riemann–Lebesgue lemma)は、積分可能な関数に速く振動する指数関数を掛けて積分すると、振動が速くなるにつれて積分が $0$ に近づくことを述べる。円周上では Fourier 係数が $\hat f(n)\to0$($|n|\to\infty$)となり、$\mathbb R^n$ 上では Fourier 変換が無限遠で $0$ に近づく。直観的には、周期の短い $e^{-inx}$ の正と負の部分が、$f$ がほぼ一定とみなせる短い区間ごとに打ち消し合う。
この記事では、平行移動を使う一つの証明で円周・$\mathbb R^n$・区間の場合をまとめて示し、なめらかな関数ほど速く減衰することと、連続関数すべてに共通の減衰の速さはないことを確かめる。さらに、指数関数を任意の有界な周期関数に替えた一般化を証明する。最後に、関数を測度に替えると補題が成り立たないことを、跳びのある関数と Cantor 関数の Fourier–Stieltjes 係数で示す。

記号と主張

関数は複素数値とする。円周 $\mathbb T$ は $[-\pi,\pi)$ とみなし、$f\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 係数を $\hat f(n):=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)e^{-inx}\,dx$、$\|f\|_{L^1(\mathbb T)}:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|f|$ とする(Fourier級数 と同じ正規化。$f$ は周期 $2\pi$ で延ばして考える)。$f\in L^1(\mathbb R^n)$ の Fourier 変換は $\widehat f(\xi):=\int_{\mathbb R^n}f(x)e^{-2\pi ix\cdot\xi}\,dx$ とし(Fourier変換 と同じ正規化)、平行移動を $\tau_hf(x):=f(x-h)$ と書く。

Riemann–Lebesgueの補題
  1. (Euclid 空間)$f\in L^1(\mathbb R^n)$ なら、$\xi\ne0$ について $h:=\xi/(2|\xi|^2)$ とおくと
    $$ |\widehat f(\xi)|\le\frac12\|f-\tau_hf\|_1 $$
    であり、$|\xi|\to\infty$ のとき $\widehat f(\xi)\to0$ である。
  2. (円周)$f\in L^1(\mathbb T)$ なら、$n\ne0$ について $|\hat f(n)|\le\frac12\|f-f(\cdot+\frac\pi n)\|_{L^1(\mathbb T)}$ であり、$|n|\to\infty$ のとき $\hat f(n)\to0$ である。
  3. (区間)$-\infty\le a< b\le\infty$、$f\in L^1(a,b)$ なら、実数 $\lambda\to\pm\infty$ のとき
    $$ \int_a^bf(x)e^{-i\lambda x}\,dx\to0,\qquad\int_a^bf(x)\cos\lambda x\,dx\to0,\qquad\int_a^bf(x)\sin\lambda x\,dx\to0. $$

1. $h\cdot\xi=\frac12$ なので $e^{-2\pi ih\cdot\xi}=-1$ である。変数を $x=y-h$ と置き換えると
$$ \widehat f(\xi)=\int f(y-h)e^{-2\pi i(y-h)\cdot\xi}\,dy=-\int\tau_hf(y)\,e^{-2\pi iy\cdot\xi}\,dy $$
となる。もとの式と平均すると $\widehat f(\xi)=\frac12\int\bigl(f-\tau_hf\bigr)(x)e^{-2\pi ix\cdot\xi}\,dx$ であり、評価が従う。$|h|=1/(2|\xi|)\to0$ なので、右辺は 軟化子 の補題「平行移動の連続性」($p=1$)により $0$ に近づく。
2. $e^{-in(x+\pi/n)}=-e^{-inx}$ と周期性から、1 と同じく $\hat f(n)=\frac1{4\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\bigl(f(x)-f(x+\frac\pi n)\bigr)e^{-inx}\,dx$ である。$G:=f1_{[-2\pi,2\pi]}\in L^1(\mathbb R)$ とおくと、$|t|\le\pi$、$x\in[-\pi,\pi]$ で $f(x+t)=G(x+t)$、$f(x)=G(x)$ なので $\|f-f(\cdot+t)\|_{L^1(\mathbb T)}\le\frac1{2\pi}\|G-\tau_{-t}G\|_{L^1(\mathbb R)}$ であり、1 と同じ補題で $t\to0$ のとき $0$ に近づく。
3. $f$ を $(a,b)$ の外で $0$ として $F\in L^1(\mathbb R)$ を作ると、$\int_a^bf(x)e^{-i\lambda x}dx=\widehat F(\lambda/2\pi)$ なので、1 を 1 次元で使えば $0$ に近づく。$\cos\lambda x=\frac12(e^{i\lambda x}+e^{-i\lambda x})$、$\sin\lambda x=\frac1{2i}(e^{i\lambda x}-e^{-i\lambda x})$ により、残りの二つも従う。$\square$

円周の 2 は 三角級数 の補題「Riemann–Lebesgue の補題」と同じ証明であり、1 はそれを $\mathbb R^n$ に移したものである。$[-\pi,\pi]$ で Riemann 積分可能な関数は Lebesgue 積分可能なので、Fourier級数 の系「Riemann–Lebesgue の補題」(Bessel の不等式からの証明)も 2 に含まれる。ほかにも、$C_c^1$ 関数で近似して部分積分する証明(Fourier変換 の命題「有界性・連続性・無限遠での減衰」)や、Gauss 関数による近似単位元を使う証明(Kna16b Theorem 8.3、p. 418)がある。$\widehat f$ が連続であることと合わせると、$\mathcal F$ は $L^1(\mathbb R^n)$ から無限遠で $0$ に近づく連続関数の空間 $C_0(\mathbb R^n)$ への有界線形写像である。

減衰の速さ

thm-rl-main の評価は、減衰の速さを $f$ の「$L^1$ での連続性の度合い」で表している。$f\in L^1(\mathbb T)$ について
$$ \omega_1(f;\delta):=\sup_{0<|t|\le\delta}\|f-f(\cdot+t)\|_{L^1(\mathbb T)} $$
とおくと、$|\hat f(n)|\le\frac12\omega_1(f;\pi/|n|)$ である。

Hölder 連続な関数の係数

$0<\alpha\le1$、$K\ge0$ とし、周期 $2\pi$ の関数 $f$ がすべての $x,y$ で $|f(x)-f(y)|\le K|x-y|^\alpha$ を満たすとする。このとき $n\ne0$ について $|\hat f(n)|\le\frac K2\bigl(\frac\pi{|n|}\bigr)^\alpha$ である。

$|f(x)-f(x+t)|\le K|t|^\alpha$ がすべての $x$ で成り立つので $\omega_1(f;\delta)\le K\delta^\alpha$ であり、$\delta=\pi/|n|$ として上の評価に代入すればよい。$\square$

逆に、なめらかさを仮定しなければ、減衰はいくらでも遅くなりうる。

共通の減衰の速さはない

$(\varepsilon_n)_{n\ge1}$ を $\varepsilon_n\to0$ となる正の数の列とする。このとき周期 $2\pi$ の連続関数 $f$ で、$\hat f(n)\ge0$(すべての $n$)かつ
$$ \limsup_{n\to\infty}\frac{\hat f(n)}{\varepsilon_n}=\infty $$
となるものがある。

$\varepsilon_n\to0$ なので、帰納的に $m_1< m_2<\cdots$ を $\varepsilon_{m_k}\le4^{-k}$ となるようにとれる。$f(x):=\sum_{k\ge1}2^{-k}e^{im_kx}$ とおくと、項の絶対値の和が収束するので級数は一様に収束し、$f$ は連続である。一様収束なので項別に積分でき、Fourier級数 の命題「三角関数系の直交性」から $\hat f(m_k)=2^{-k}$、$m_k$ の形でない $n$ では $\hat f(n)=0$ である。よって $\hat f(m_k)/\varepsilon_{m_k}\ge2^{-k}4^k=2^k\to\infty$ である。$\square$

$f\in L^1(\mathbb T)$ の係数の列は、$0$ に近づく数列の全体 $c_0(\mathbb Z)$ に入るが、$c_0(\mathbb Z)$ の数列がすべて係数の列になるわけではない。すべての点で収束する $\sum_{n\ge2}\frac{\sin nx}{\log n}$ は、係数が $0$ に近づくのに $L^1(\mathbb T)$ の関数の Fourier 級数ではない(三角級数 の定理「積分可能な関数の Fourier 級数でない正弦級数」)。開写像定理を使って、Dirichlet 核の $L^1$ ノルムが発散することから同じ結論を導く方法もある(Kna16b p. 597 の例)。$\mathbb R$ 上の Fourier 変換についても、像は $C_0(\mathbb R)$ 全体でない(Fourier変換 の命題「$L^1$ の変換の像は $C_0$ 全体でない」)。

一般化:速く振動する周期関数との積

$e^{-i\lambda x}$ の平均が $0$ であることだけを使うと、次の形に一般化できる。

周期関数との積の極限

$f\in L^1(\mathbb R)$ とし、$g\colon\mathbb R\to\mathbb C$ を周期 $T>0$ の有界な可測関数、$\bar g:=\frac1T\int_0^Tg(y)\,dy$ をその平均とする。このとき $\lambda\to\infty$ で
$$ \int_{\mathbb R}f(x)\,g(\lambda x)\,dx\to\bar g\int_{\mathbb R}f(x)\,dx $$
である。

$\|g\|_\infty:=\sup|g|$ とし、$\lambda>0$ について区間 $I_k:=[kT/\lambda,(k+1)T/\lambda)$($k\in\mathbb Z$)とその左端 $x_k:=kT/\lambda$ を考える。$y=\lambda x$ と置き換えると、周期性から $\int_{I_k}g(\lambda x)\,dx=\frac1\lambda\int_{kT}^{(k+1)T}g=\frac T\lambda\bar g$ である。
連続でコンパクトな台をもつ関数の場合。 $w$ を連続で $[-R,R]$ の外で $0$ の関数とし、$\omega(\delta):=\sup\{|w(x)-w(y)|\mid|x-y|\le\delta\}$ とおく。$w$ は一様連続なので $\omega(\delta)\to0$($\delta\to0$)である。$I_k$ が $[-R,R]$ と交わらなければ $I_k$ の上で $w$ も $w(x_k)$ も $0$ なので、和は $[-R,R]$ と交わる有限個の $k$ についてとればよく、それらの $I_k$ の長さの合計は $2R+2T/\lambda$ 以下である。$\int_{I_k}w(x_k)g(\lambda x)\,dx=w(x_k)\frac T\lambda\bar g=\bar g\int_{I_k}w(x_k)\,dx$ だから
$$ \int w(x)g(\lambda x)\,dx-\bar g\int w\,dx=\sum_k\int_{I_k}\bigl(w(x)-w(x_k)\bigr)g(\lambda x)\,dx-\bar g\sum_k\int_{I_k}\bigl(w(x)-w(x_k)\bigr)\,dx $$
であり、$|\bar g|\le\|g\|_\infty$ から、絶対値は $2\|g\|_\infty\,\omega(T/\lambda)\,(2R+2T/\lambda)$ 以下で、$\lambda\to\infty$ で $0$ に近づく。
一般の場合。 $\eta>0$ に対し $\|f-w\|_1<\eta$ となる上の形の $w$ をとる(軟化子 の命題「連続でコンパクトな台をもつ関数の稠密性」)。$\bigl|\int(f-w)(x)g(\lambda x)\,dx\bigr|\le\|g\|_\infty\eta$、$|\bar g|\,\bigl|\int(f-w)\bigr|\le\|g\|_\infty\eta$ なので、$\limsup_{\lambda\to\infty}\bigl|\int fg(\lambda\cdot)-\bar g\int f\bigr|\le2\|g\|_\infty\eta$ であり、$\eta$ は任意である。$\square$

$g(y)=e^{-iy}$($T=2\pi$、$\bar g=0$)とすると thm-rl-main の 3 に戻る。平均が $0$ でない周期関数では、極限は $0$ ではなく「$f$ の積分 × $g$ の平均」になる。

振動の平均をとる例
  1. $g(y)=|\sin y|$ は周期 $\pi$ で、$\bar g=\frac1\pi\int_0^\pi\sin y\,dy=\frac2\pi$ である。よって $f\in L^1(\mathbb R)$ について $\int f(x)|\sin\lambda x|\,dx\to\frac2\pi\int f$ である。
  2. $g(y)=\sin^2y=\frac12(1-\cos2y)$ は $\bar g=\frac12$ なので $\int f(x)\sin^2\lambda x\,dx\to\frac12\int f$ である。これは thm-rl-main の 3 を $\cos2\lambda x$ に当てても得られる。
  3. $g$ を周期 $1$ で、$[0,\frac12)$ で $1$、$[\frac12,1)$ で $-1$ の関数(矩形波)とすると $\bar g=0$ であり、$\int f(x)g(\lambda x)\,dx\to0$ である。指数関数でない振動でも、平均が $0$ なら打ち消し合いが起きる。

測度に替えると成り立たない

補題は「$f\,dx$」という形の重みについての主張である。重みを一般の単調関数の増分に替えると成り立たない。ここでは周期を $1$ に直し、$[0,1]$ 上の単調非減少な関数 $F$ について
$$ \check F(n):=\int_0^1e^{-2\pi inx}\,dF(x)\qquad(n\in\mathbb Z) $$
を考える(Riemann–Stieltjes積分。複素数値の被積分関数は実部と虚部に分けて積分する。単調関数は有界変動なので、Riemann–Stieltjes積分 の定理「連続関数の有界変動関数による積分」により積分は存在する)。これを $F$ の Fourier–Stieltjes 係数 という。$F$ が $C^1$ 級で $F'=f$ なら $dF=f(x)\,dx$ であり(同じ記事の定理「滑らかな積分関数」)、$\check F(n)=\int_0^1f(x)e^{-2\pi inx}dx$ は thm-rl-main の 3 により $0$ に近づく。
跳びのある関数。 $F:=1_{[1/2,1]}$ とすると、Riemann–Stieltjes積分 の定理「階段関数による積分は跳びの和」により $\check F(n)=e^{-\pi in}=(-1)^n$ であり、$0$ に近づかない。これは $\frac12$ に置いた点の重さに当たる。
跳びがなくても成り立たない。Cantor関数 $F$ は連続で単調非減少だが、増分がすべて測度 $0$ の Cantor集合 の上に集まっている。記号はその記事にそろえ、$a\in\{0,2\}^K$ について $t_a=\sum_{k< K}a_k3^{-(k+1)}$、$I_a=[t_a,t_a+3^{-K}]$ とする。

Cantor 関数の Fourier–Stieltjes 係数

Cantor 関数 $F$ について、すべての整数 $n$ で
$$ |\check F(n)|=\lim_{K\to\infty}\prod_{k=1}^{K}\Bigl|\cos\frac{2\pi n}{3^k}\Bigr| $$
である。とくにすべての $m\ge0$ で $|\check F(3^m)|\ge\frac12e^{-\pi^2/18}>0$ であり、$\check F(n)$ は $|n|\to\infty$ で $0$ に近づかない。

段 1(Stieltjes 和)。 $K\ge1$ とし、$2^K$ 個の区間 $I_a$ の端点を分点とし、さらにそのすき間($C_K$ の補集合の各成分の閉包)を長さ $3^{-K}$ 以下に細かく分けた分割 $P_K$ をとる。すき間は取り除いた開区間の閉包の和集合なので、そこで $F$ は定数であり(Cantor関数 の定理「Cantor関数の基本性質」の 3)、すき間の小区間の増分は $0$ である。$I_a$ の両端は $\varphi(s,0,0,\dots)$ と $\varphi(s,1,1,\dots)$($s=a/2\in\{0,1\}^K$)なので、同じ定理の 1 から増分は $\sum_{j\ge K}2^{-(j+1)}=2^{-K}$ である。$I_a$ の代表点を左端 $t_a$ にとると、連続関数 $u$ について Stieltjes 和は $\sum_{a}2^{-K}u(t_a)$ であり、$|P_K|\le3^{-K}\to0$ なので、Riemann–Stieltjes積分 の定理「連続関数の有界変動関数による積分」の評価から $\int_0^1u\,dF=\lim_K\sum_a2^{-K}u(t_a)$ である。
段 2(積への分解)。 $u(x)=e^{-2\pi inx}$ とすると、$t_a$ の各桁は独立に $0$ か $2$ をとるので
$$ \sum_{a\in\{0,2\}^K}2^{-K}e^{-2\pi int_a}=\prod_{k=1}^{K}\frac{1+e^{-4\pi in/3^k}}2 $$
である。$\bigl|\frac{1+e^{-i\theta}}2\bigr|=\bigl|\cos\frac\theta2\bigr|$ なので主張の式を得る。
段 3($n=3^m$)。 $k\le m$ の因子は $\cos(2\pi3^{m-k})=1$ であり、$k=m+j$($j\ge1$)の因子は $\cos(2\pi/3^j)$ である。$\cos\frac{2\pi}3=-\frac12$ で、$j\ge2$ なら $0<2\pi/3^j\le2\pi/9<\frac\pi2$ である。$0\le t\le0.8$ で $\cos t\ge1-\frac{t^2}2\ge e^{-t^2}$ が成り立つ(後半は $\psi(t):=1-\frac{t^2}2-e^{-t^2}$ が $\psi(0)=0$、$\psi'(t)=t(2e^{-t^2}-1)\ge0$ を満たすことによる。$t^2\le0.64<\log2$)。$2\pi/9<0.8$ なので
$$ \prod_{j=2}^{J}\cos\frac{2\pi}{3^j}\ge\exp\Bigl(-\sum_{j\ge2}\frac{4\pi^2}{9^j}\Bigr)=\exp\Bigl(-\frac{4\pi^2}{72}\Bigr)=e^{-\pi^2/18} $$
であり、$|\check F(3^m)|\ge\frac12e^{-\pi^2/18}$ を得る。$\square$

$F$ は連続なので、どの点にも重さはない。それでも係数が減らないのは、増分が測度 $0$ の集合に集まっていて、$F$ が積分可能な関数の不定積分にならないからである。実際 $F(x)=\int_0^xf$($f\in L^1$)なら、Lebesgueの微分定理 の系「不定積分の微分」からほとんど至るところ $f=F'$ であり、Cantor関数 の定理「Cantor関数の基本性質」の 4 から $F'=0$ がほとんど至るところ成り立つので、$F(1)=\int_0^1f=0$ となって $F(1)=1$ に反する。跳びがないだけでは Riemann–Lebesgue の補題の結論は保証されず、補題が使っているのは、重みが積分可能な密度をもつことである。

使われ方

  • 局所化。 Fourier 級数の部分和を Dirichlet 核で積分の形に書くと、点 $x$ から離れたところの寄与は $\int u(t)\sin(N+\frac12)t\,dt$ の形になり、thm-rl-main の 3 で $0$ に近づく。これにより、収束するかどうかが $x$ の近くの値だけで決まる(Fourier級数の収束 の定理「局所化原理」)。同じ考え方で Dini の判定法(同じ記事の定理「Dini の判定法」)も示される。
  • 連続性と合わせた像。 thm-rl-main の 1 と $\widehat f$ の連続性から、Fourier 変換は $L^1(\mathbb R^n)$ を $C_0(\mathbb R^n)$ に写す。$L^p$($1< p\le2$)では、減衰の代わりに積分の大きさの評価が Hausdorff–Youngの不等式 で与えられる。

反例:条件を外したとき

外す条件反例成り立たなくなること
重みが積分可能な密度 $f\,dx$(跳びを許す)$F=1_{[1/2,1]}$$\check F(n)\to0$
重みが積分可能な密度 $f\,dx$(跳びはないが特異)Cantor 関数(prop-rl-cantor)$\check F(n)\to0$
$f$ が可積分(各 $\lambda$ での積分は存在する)$(0,1]$ 上の $f(x)=1/x$$\int_0^1f(x)\sin\lambda x\,dx\to0$
$f$ がなめらか(cor-rl-holder)欠項級数(thm-rl-no-rate)決まった速さでの減衰
表の 3 行目の確かめ

$f(x)=1/x$ は $(0,1]$ で可積分でない。一方 $\lambda>0$ について、$u=\lambda x$ と置くと $\int_0^1\frac{\sin\lambda x}x\,dx=\int_0^\lambda\frac{\sin u}u\,du$ であり($u\to0$ で被積分関数は $1$ に近づくので、ふつうの積分である)、この値は $\lambda\to\infty$ で $0$ に近づかない。実際、$A_k:=\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}\frac{|\sin u|}u\,du$ とおくと、$A_{k+1}=\int_{k\pi}^{(k+1)\pi}\frac{|\sin u|}{u+\pi}\,du< A_k$ である。$K\pi\le\lambda<(K+1)\pi$($K\ge1$)なら
$$ \int_0^\lambda\frac{\sin u}u\,du=A_0-A_1+A_2-\cdots+(-1)^{K-1}A_{K-1}+(-1)^Kr,\qquad0\le r\le A_K $$
であり、項の絶対値が減っていく交代和なので、その値は $A_0-A_1$ 以上である。$A_0-A_1>0$ だから、$\lambda\ge\pi$ で積分は正の定数 $A_0-A_1$ 以上にとどまる。

関連項目

参考文献

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