商多様体(quotient manifold)とは、多様体 $M$ に群 $G$ が作用するとき、軌道空間 $M/G$ に商写像が滑らかな沈め込みになるように入れた多様体の構造である。Lie 群が滑らかに、自由に、固有に作用するなら、$M/G$ は $\dim M-\dim G$ 次元の多様体になり、その滑らかな構造はただ 1 つに決まる(商多様体定理)。離散群の場合には商写像は被覆写像になり、群が保つ計量は商に降りる。トーラス・実射影空間・レンズ空間・複素射影空間はこうして得られ、自由性や固有性を外すと軌道空間は多様体にならないことがある。
商多様体(quotient manifold)は、多様体 $M$ に群 $G$ が作用しているとき、各軌道を 1 点につぶした軌道空間 $M/G$ に入る多様体の構造である。トーラス $\mathbb R^n/\mathbb Z^n$、実射影空間 $S^n/\{\pm1\}$、レンズ空間、複素射影空間 $S^{2n+1}/S^1$ はどれもこの形で得られる。ただし軌道空間はいつも多様体になるわけではなく、固定点があると角や境界のような点ができ、作用が「固有」でないと Hausdorff 性が崩れる。
この記事では、Lie 群が多様体に自由かつ固有に作用するなら軌道空間が商写像を沈め込みとするただ 1 つの多様体の構造をもつこと(商多様体定理)を証明する。離散群の場合には商写像は被覆写像になり、群が計量を保てば計量も商に降りる。最後に、自由性・固有性を外すと結論が成り立たなくなる例を挙げる。
以下、多様体は Hausdorff で第 2 可算な $C^\infty$ 級多様体とし、$M$ を $m$ 次元の多様体、$G$ を $k$ 次元の Lie群($0$ 次元なら可算な離散群)とする。$G$ が $M$ に左から滑らかに作用しているとし(群作用)、$g\in G$、$x\in M$ の作用を $g\cdot x$、$x$ の軌道を $G\cdot x$、軌道の全体に商位相を入れた空間を $M/G$、商写像を $\pi\colon M\to M/G$ と書く。
作用が自由であるとは、$g\cdot x=x$ となる $x$ があれば $g=e$ であることをいう。作用が固有であるとは、写像
$$
\Theta\colon G\times M\to M\times M,\qquad\Theta(g,x):=(g\cdot x,\,x)
$$
が固有写像(コンパクト集合の逆像がコンパクト)であることをいう。
軌道空間 $M/G$ が位相多様体であり、$\pi\colon M\to M/G$ が滑らかな沈め込みになる滑らかな構造をもつとき、この多様体を $M$ の $G$ による商多様体という。
$\pi$ は開写像である。実際、開集合 $A\subset M$ について $\pi^{-1}(\pi(A))=\bigcup_{g\in G}g\cdot A$ は開集合なので、商位相の定義から $\pi(A)$ は開集合である。とくに $M$ の可算な開基の像は $M/G$ の可算な開基であり、$M/G$ は第 2 可算である。
2 の条件は 基本領域 の定義「固有不連続な作用」と同じである。$G$ がコンパクトなら 1 の条件は自明に成り立つので、コンパクト Lie 群の作用はつねに固有であり、有限群の作用もつねに固有である。
多様体の積 $G\times M$ は距離づけ可能なので、その部分集合がコンパクトであることと点列コンパクトであることは同値である。
1.固有とし、$x_i\to x$、$g_i\cdot x_i\to y$ とする。$x$、$y$ のコンパクトな近傍 $K$、$K'$ をとると、十分大きい $i$ で $(g_i,x_i)\in\Theta^{-1}(K'\times K)$ であり、これはコンパクトなので $(g_i)$ は収束する部分列をもつ。逆に点列の条件を仮定し、$L\subset M\times M$ をコンパクトとする。$\Theta^{-1}(L)$ は閉集合である。$(g_i,x_i)\in\Theta^{-1}(L)$ なら $(g_i\cdot x_i,x_i)\in L$ は収束する部分列をもち、その部分列で仮定から $(g_i)$ がさらに収束する部分列をもつ。よって $\Theta^{-1}(L)$ は点列コンパクト、したがってコンパクトである。
2.$\Gamma_K$ は $\Theta^{-1}(K\times K)$ の $G$ への射影の像である。固有ならこれはコンパクトで、離散空間のコンパクト集合は有限である。逆に条件を仮定し、$L\subset M\times M$ をコンパクト、$K$ を $L$ の 2 つの射影の像の和とすると、$\Theta^{-1}(L)$ は $\Gamma_K\times K$(有限集合とコンパクト集合の積)の閉部分集合なのでコンパクトである。$\square$
Lie 群 $G$ が $m$ 次元の多様体 $M$ に滑らかに、自由に、固有に作用しているとする。このとき次が成り立つ。
証明の中心は 3 のスライスの構成である。軌道の方向と補い合う部分多様体を $p$ でとると、逆関数定理で $\Phi$ は $(e,p)$ の近くで微分同相になる。作用の同変性でこれを $G\times S$ 全体に広げ、単射性を固有性と自由性から導く。スライスが軌道空間の座標を与える。
段 1(Hausdorff 性). $x,y\in M$ が異なる軌道にあるのに $\pi(x)$ と $\pi(y)$ が開集合で分離できないとする。$x$、$y$ の可算な近傍基 $U_1\supset U_2\supset\cdots$、$V_1\supset V_2\supset\cdots$ をとると、開集合 $\pi(U_i)$ と $\pi(V_i)$ は交わるので、$x_i\in U_i$ と $g_i\in G$ で $g_i\cdot x_i\in V_i$ となるものがある。$x_i\to x$、$g_i\cdot x_i\to y$ なので、lem-qm-proper の 1 から部分列で $g_i\to g$ となり、$g\cdot x=y$ が従って矛盾する。よって $M/G$ は Hausdorff で、上で見たように第 2 可算である。
段 2(軌道写像の微分). $\mathfrak g=T_eG$ を Lie 環、$\exp$ を Lie 群の指数写像とし、$X\in\mathfrak g$ に対して $M$ のベクトル場 $\hat X_x:=\frac{d}{dt}\big|_{t=0}\exp(tX)\cdot x$ を定める。$p\in M$ の軌道写像 $g\mapsto g\cdot p$ の $e$ での微分は $X\mapsto\hat X_p$ である。これが単射であることを示す。$c(t):=\exp(tX)\cdot p$ とおくと、$\exp((t+s)X)=\exp(sX)\exp(tX)$ から $\dot c(t)=\hat X_{c(t)}$ であり、$c$ は $\hat X$ の積分曲線である。$\hat X_p=0$ なら定値曲線 $p$ も $p$ を通る積分曲線なので、積分曲線の一意性から $c(t)=p$、すなわち $\exp(tX)\cdot p=p$ がすべての $t$ で成り立つ。作用は自由なので $\exp(tX)=e$ で、$t=0$ で微分して $X=0$ である。
段 3(局所微分同相). 段 2 の像を $E_p:=\{\hat X_p\mid X\in\mathfrak g\}$($k$ 次元)とする。$p$ のまわりの座標 $\psi$($\psi(p)=0$)と、$d\psi_p(E_p)$ と補い合う $\mathbb R^m$ の $m-k$ 次元部分空間 $E'$ をとり、$S_0:=\psi^{-1}(E')$ とおく。$S_0$ は $p$ を通る $m-k$ 次元の部分多様体で、$T_pM=E_p\oplus T_pS_0$ である。$\Phi(g,s)=g\cdot s$ の $(e,p)$ での微分は $(X,w)\mapsto\hat X_p+w$ で、段 2 と $E_p\cap T_pS_0=0$ から同型である。左移動を $L_h$、$h$ の作用を $\theta_h$ と書くと $\Phi\circ(L_h\times\mathrm{id})=\theta_h\circ\Phi$ であり、$L_h$、$\theta_h$ は微分同相なので、$d\Phi_{(h,s)}$ が同型であることと $d\Phi_{(e,s)}$ が同型であることは同値である。後者は $s$ についての開条件なので、$p$ の $S_0$ での開近傍 $S_1$ があって、逆関数定理により $\Phi$ は $G\times S_1$ の各点で局所微分同相である。
段 4(単射性). $p$ の $S_1$ での開近傍 $S$ で、$\Phi|_{G\times S}$ が単射になるものがあることを示す。そうでないとすると、$p$ の可算な近傍基 $S^{(1)}\supset S^{(2)}\supset\cdots$($S_1$ の中)について、$\Phi(g_i,s_i)=\Phi(g_i',s_i')$、$(g_i,s_i)\ne(g_i',s_i')$、$s_i,s_i'\in S^{(i)}$ となるものがある。$h_i:=g_i'^{-1}g_i$ とおくと $h_i\cdot s_i=s_i'$ である。$s_i=s_i'$ なら自由性から $h_i=e$ となり $(g_i,s_i)=(g_i',s_i')$ に反するので、$s_i\ne s_i'$ である。$s_i\to p$、$h_i\cdot s_i=s_i'\to p$ なので、lem-qm-proper の 1 から部分列で $h_i\to h$ となり、$h\cdot p=p$、自由性から $h=e$ である。$\Phi$ は $(e,p)$ のある近傍 $N$ の上で単射(段 3)なので、十分大きい $i$ で $(h_i,s_i),(e,s_i')\in N$ と $\Phi(h_i,s_i)=s_i'=\Phi(e,s_i')$ から $s_i=s_i'$ となり、矛盾する。
単射な局所微分同相は像の上への微分同相で、像は開集合なので、$\Phi\colon G\times S\to\Omega:=G\cdot S$ は開集合への微分同相である。
段 5(座標). $\sigma:=\pi|_S\colon S\to\pi(\Omega)$ とおく。$\pi(\Omega)$ は開集合である。$\pi(g\cdot s)=\pi(s)$ から $\sigma$ は全射で、$\pi(s)=\pi(s')$ なら $s'=g\cdot s$ となる $g$ があり、$\Phi(g,s)=\Phi(e,s')$ から $s=s'$ なので単射である。$S$ の開集合 $A$ について $\pi^{-1}(\sigma(A))=\Phi(G\times A)$ は開集合なので $\sigma(A)$ は開集合であり、$\sigma$ は同相写像である。よって $M/G$ は $m-k$ 次元の位相多様体で、$S$ の座標を $\sigma$ で移したものが座標近傍になる。
別のスライス $S'$($\Omega'=G\cdot S'$、$\sigma'=\pi|_{S'}$)との座標変換を調べる。$\Omega'$ は軌道の和なので、$s\in S$ について $\pi(s)\in\pi(\Omega')$ なら $s\in\Omega'$ で、$\Phi'^{-1}(s)=(g,s')$ と書くと $\pi(s)=\pi(s')$ である。よって
$$
\sigma'^{-1}\circ\sigma=\mathrm{pr}_{S'}\circ\Phi'^{-1}\big|_{S\cap\Omega'}
$$
であり、滑らかである。こうして $M/G$ に滑らかな構造が入る。$\Omega$ の上で $\pi\circ\Phi(g,s)=\sigma(s)$ なので、$\Phi$ による座標で $\pi$ は射影 $(g,s)\mapsto s$ に $\sigma$ を合成したものであり、滑らかな沈め込みである。
段 6(2 と一意性). $F\circ\pi$ が滑らかなら、$\pi(\Omega)$ の上で $F=(F\circ\pi)\circ\sigma^{-1}$ であり、$\sigma^{-1}\colon\pi(\Omega)\to S\subset M$ は滑らかなので $F$ は滑らかである。逆は合成である。$M/G$ に別の滑らかな構造があって $\pi$ がそれについても滑らかな沈め込みなら、その構造でも $\pi$ の滑らかな局所切断が各点のまわりにあり(Lee13 Theorem 4.26、p. 88)、同じ議論で 2 が成り立つ(Lee13 Theorem 4.29、p. 90)。恒等写像に両方向から 2 を当てはめると、2 つの構造の間の恒等写像は両方向に滑らかである。$\square$
この定理の 1 は Lee13 Theorem 21.10(p. 544)であり、2 は同書 Theorem 4.29(p. 90)から従う。同書は軌道を葉とする葉層構造の平坦な座標から出発し、上の証明は段 3 のスライスから直接座標を作る。
$G$ が離散群($k=0$)のときは、スライス $S$ は $p$ の開近傍であり、thm-qm-main の 3 は「$g\cdot S$($g\in G$)が互いに交わらない」ことを意味する。
可算な離散群 $\Gamma$ が $m$ 次元の多様体 $M$ に滑らかに、自由に、固有に作用しているとする。このとき $M/\Gamma$ は $m$ 次元の多様体で、$\pi$ は滑らかな被覆写像(被覆空間)かつ局所微分同相であり、$M/\Gamma$ の滑らかな構造はこの性質でただ 1 つに決まる。
thm-qm-main を $k=0$ で使う。$p\in M$ のスライス $S$ は $p$ の開近傍で、$\Phi\colon\Gamma\times S\to\Gamma\cdot S$ が微分同相なので、$\pi^{-1}(\pi(S))=\Gamma\cdot S$ は互いに交わらない開集合 $\gamma\cdot S$ の和である。$\pi|_S\colon S\to\pi(S)$ は微分同相で(定理の 3)、$\pi|_{\gamma\cdot S}=\pi|_S\circ\gamma^{-1}$ も微分同相である。よって $\pi(S)$ は均一に被覆される開集合で、$\pi$ は滑らかな被覆写像、とくに局所微分同相である。局所微分同相は沈め込みなので、一意性は定理の 1 から従う。$\square$
$\gamma\cdot S\cap S=\emptyset$($\gamma\ne e$)という条件だけなら、被覆空間 の命題「自由で固有不連続な作用から得られる被覆」により $\pi$ は被覆写像になる。しかしその条件だけでは $M/\Gamma$ が Hausdorff になるとは限らない(ex-qm-counterexamples の 2 行目)。固有性は、異なる軌道を分離する段 1 で効いている。
cor-qm-discrete の状況で、$g$ を $M$ のリーマン計量または擬リーマン計量(リーマン多様体、擬リーマン多様体)とし、各 $\gamma\in\Gamma$ が $g$ を保つ($\gamma^*g=g$)とする。このとき $M/\Gamma$ の計量 $\bar g$ で $\pi^*\bar g=g$ となるものがただ 1 つある。とくに $\pi$ は局所等長写像である。
スライス $S$ の上で $\bar g|_{\pi(S)}:=((\pi|_S)^{-1})^*g$ と定める。2 つのスライス $S$、$S'$ について、$\pi(S)\cap\pi(S')$ の点 $\pi(s)=\pi(s')$($s\in S$、$s'\in S'$)をとると $s'=\gamma\cdot s$ となる $\gamma$ があり、$s$ の近くで $(\pi|_{S'})^{-1}\circ\pi|_S=\gamma$ である(どちらも $\pi$ の局所的な逆を与え、$\pi\circ\gamma=\pi$)。$\gamma^*g=g$ なので 2 つの定義は一致し、$\bar g$ は $M/\Gamma$ の計量として定まる。$\pi\circ\pi|_S^{-1}=\mathrm{id}$ から $S$ の上で $\pi^*\bar g=g$、$\gamma\cdot S$ の上でも $\gamma^*g=g$ から同じである。一意性は、$\pi$ が局所微分同相なので $\pi^*\bar g$ から $\bar g$ が決まることによる。$\square$
円周 $S^1=\{\lambda\in\mathbb C\mid|\lambda|=1\}$ を $S^{2n+1}\subset\mathbb C^{n+1}$ にスカラー倍で作用させる。$\lambda z=z$($z\ne0$)なら $\lambda=1$ なので自由であり、$S^1$ はコンパクトなので固有である。thm-qm-main により $S^{2n+1}/S^1$ は $(2n+1)-1=2n$ 次元の多様体である。$\mathbb C^{n+1}$ の原点を通る複素直線は $S^{2n+1}$ とちょうど 1 つの軌道で交わるので、この商は複素直線の全体、すなわち複素射影空間 $\mathbb{CP}^n$ と 1 対 1 に対応する。$n=1$ の商写像 $S^3\to\mathbb{CP}^1$ は Hopfファイブレーション である。
$H$ を Lie 群 $G$ の閉部分群とし、$H$ を $G$ に $h\cdot g:=gh^{-1}$ で作用させる。$gh^{-1}=g$ なら $h=e$ なので自由である。$g_i\to x$、$g_ih_i^{-1}\to y$ なら $h_i^{-1}=g_i^{-1}(g_ih_i^{-1})\to x^{-1}y$ で、$H$ は閉なので極限は $H$ に属し、lem-qm-proper の 1 から固有である。軌道は剰余類 $gH$ なので、thm-qm-main により $G/H$ は $\dim G-\dim H$ 次元の多様体である(閉部分群は埋め込まれた Lie 部分群なので $H$ は Lie 群である。Lie群 の定理「閉部分群定理(Cartan)」)。これは 等質空間 の定理「剰余類多様体」と同じ結論である。
時空 の例「反例:時間的向き付け不可能なLorentz多様体」は、$\mathbb Z$ を $\mathbb R^2$ に $(t,x)\mapsto(t,x+2n)$ で作用させた商(自由で固有)に、平行移動で保たれる Lorentz 計量を prop-qm-metric で降ろしたものである。
cor-qm-discrete の証明で、商の座標変換はスライスどうしを結ぶ $\gamma$ の制限である(prop-qm-metric の証明)。したがって $M$ が複素多様体で $\Gamma$ が双正則写像として自由かつ固有に作用するなら、同じ座標で $M/\Gamma$ は複素多様体になり、$\pi$ は正則な被覆写像になる。代数多様体に有限群が自由に作用するときの商は、代数多様体としての商の構成が別に必要であり、重複ファイバー の命題「楕円曲線と曲線の積の商による構成」でその使い方を見ることができる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 自由 | $\{\pm1\}$ が $\mathbb R$ に $x\mapsto\pm x$ で作用 | $M/G$ が $m-k=1$ 次元の位相多様体 |
| 固有 | $\mathbb Z$ が $\mathbb R^2\setminus\{0\}$ に $(x,y)\mapsto(2^nx,2^{-n}y)$ で作用 | $M/G$ が Hausdorff |
| 固有 | $\mathbb R$ が $T^2$ に無理数の傾きの直線に沿って作用 | $M/G$ が Hausdorff |
| 計量が $\Gamma$ で不変 | $\mathbb Z$ が $\mathbb R$ に平行移動で作用し、計量は $(1+x^2)\,dx^2$ | $\pi^*\bar g=g$ となる計量 $\bar g$ がある |
1 行目:$\{\pm1\}$ は有限なので固有だが、$-0=0$ なので自由でない。$x\mapsto|x|$ は $\mathbb R/\{\pm1\}$ から $[0,\infty)$ への同相を与える(連続な全単射で、逆写像 $t\mapsto\pi(t)$ も連続)。$[0,\infty)$ は $0$ で 1 次元の位相多様体でない。実際、$0$ の開近傍 $W$ と開集合 $O\subset\mathbb R$ への同相 $h$ があれば、$h(0)$ を含む開区間 $J\subset h(W)$ がとれ、$h^{-1}(J)$ は $0$ の連結な開近傍、すなわちある $[0,\delta')$ である。$[0,\delta')$ から $0$ を除いても連結だが、$J$ から $h(0)$ を除くと連結でないので矛盾する。
2 行目:$(2^nx,2^{-n}y)=(x,y)$($n\ne0$)なら $x=y=0$ なので自由である。$p=(1,0)$、$q=(0,1)$ は異なる軌道にある($p$ の軌道は $x$ 軸上)。$p$、$q$ の任意の近傍 $U$、$V$ について、$n$ が大きければ $(1,2^{-n})\in U$ で、その像 $(2^{-n},1)$($-n$ の作用)は $V$ に入る。よって $\pi(U)\cap\pi(V)\ne\emptyset$ で、$\pi(p)$ と $\pi(q)$ は分離できない。一方、$x_0\ne0$ の点では $\{|x-x_0|<|x_0|/4\}$、$y_0\ne0$ の点では $\{|y-y_0|<|y_0|/4\}$ が $\gamma\cdot U\cap U=\emptyset$($\gamma\ne0$)を満たすので、$\pi$ は被覆写像である。
3 行目:$t\cdot(z,w):=(e^{2\pi it}z,e^{2\pi i\alpha t}w)$($\alpha$ は無理数)とする。$t\cdot(z,w)=(z,w)$ なら $t\in\mathbb Z$ かつ $\alpha t\in\mathbb Z$ なので $t=0$ で、作用は自由である。各軌道は $T^2$ で稠密なので(等質空間 の例「表の反例の確かめ」の 1 行目)、空でない開集合 $V\subset M/G$ について $\pi^{-1}(V)$ はすべての軌道と交わり、$V=M/G$ である。よって $M/G$ の開集合は $\emptyset$ と全体だけで、2 点以上あるので Hausdorff でない。
4 行目:$\tau(x)=x+1$ とすると $\tau^*g=(1+(x+1)^2)\,dx^2\ne g$ である。$\pi^*\bar g=g$ となる $\bar g$ があれば、$\pi\circ\tau=\pi$ から $\tau^*g=\tau^*\pi^*\bar g=(\pi\circ\tau)^*\bar g=g$ となって矛盾する。
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