収束(Convergence)とは、数列、関数列、あるいは位相空間内の点列などが、ある特定の値や状態(極限)に限りなく近づいていく現象を指す数学の基盤的概念である。解析学においてはイプシロン・デルタ論法などを用いて厳密に定義され、微積分学の基礎を成す。また、位相空間論においては、近傍系を用いてより一般的に定義され、空間の位相的構造(開集合の配置や分離公理など)を決定・判定するための重要な道具となる。
数学における収束の定義は、扱う対象(数列、級数、関数列)や舞台となる空間(距離空間、位相空間)によって段階的に抽象化される。ここでは最も包括的な位相空間における定義を主軸とする。
位相空間 $(X, \mathcal{O})$ において、点列 $\{x_n\}_{n=1}^{\infty}$ が点 $x \in X$ に収束する(converge)とは、以下の条件を満たすことをいう。
$x$ の任意の近傍 $V$ に対して、ある自然数 $N$ が存在し、$N$ 以上のすべての $n$ について $x_n \in V$ が成り立つ。
$$\forall V \in \mathcal{V}_x, \exists N \in \mathbb{N} \text{ s.t. } n \ge N \implies x_n \in V$$
このとき、$x$ をこの点列の極限(limit)と呼び、$x_n \to x$ あるいは $\lim_{n \to \infty} x_n = x$ と記述する。
収束の概念は、空間が持つ「近さ」の尺度によってその様相を変える。
距離空間 $(X, d)$ においては、近傍は「距離 $\epsilon$ 未満の範囲」として具体化されるため、解析学で馴染み深い以下の定義と一致する。
$$x_n \to x \iff \lim_{n \to \infty} d(x_n, x) = 0$$
すなわち、「目標 $x$ との誤差が、十分先に行けばいくらでも小さくなる」ことを意味する。
位相空間論的な定義は、これを「距離」という数値を使わずに「近傍という『あみ』の中に、点列の尻尾(ある番号以降すべて)が捕らえられる」という包含関係で表現し直したものである。
特に関数空間においては、「どのような基準で近づくか」によって複数の収束概念が存在し、その区別が解析学の核心となる。
定義域 $D$ 上の関数列 $\{f_n\}$ が関数 $f$ に収束するとき:
一様収束は各点収束よりも強い条件であり、連続性や積分可能性などの性質を極限関数に保存するために必要となる重要な概念である。
収束の振る舞いは、空間の位相的性質(特に分離公理)に強く依存する。
Hausdorff空間($T_2$ 空間)において、収束する点列の極限はただ一つである。
逆に、Hausdorffでない空間では、一つの点列が同時に複数の異なる点に収束しうる。
「収束」の直感を深めるためには、直感に反する例(病的な例)を知ることが有効である。
密着空間(開集合が全体と空集合のみ)を考える。
任意の点 $x$ の近傍は空間全体 $X$ のみである。したがって、どのような点列 $\{x_n\}$ であっても、任意の点 $x \in X$ の近傍($X$)に含まれる。
つまり、どんな点列も、空間内の「すべての点」に同時に収束する。これは極限の一意性が崩れる極端な例である。
点列(可算な列)による収束の定義は、第1可算公理を満たさない一般の位相空間では不十分となることがある(点列では極限点に到達できない場合がある)。これを克服するために、より一般化された収束概念が用いられる。
これらを用いることで、任意の位相空間における閉包やコンパクト性などを完全に特徴付けることが可能になる。