Rademacher関数

同義語:ラーデマッハー関数Rademacher functionsRademacher系Rademacher system

概要

Rademacher関数(Rademacher functions)とは、区間 $[0,1)$ 上で $r_n(t)=(-1)^{\lfloor 2^nt\rfloor}$ と定める関数で、$n\ge1$ なら $t$ の 2 進展開の第 $n$ 桁に応じて $\pm1$ をとる。$(r_n)_{n\ge0}$ は $L^2(0,1)$ の正規直交系をなすが、$r_1r_2$ がすべての $r_n$ に直交するので完全ではない。$1\le p< \infty$ のとき $r_n$ は $L^p(0,1)$ で $0$ に弱収束するがノルムはつねに $1$ で、どの部分列もノルムでもほとんど至る所でも収束せず、弱収束とノルム収束の違いを示す典型例になる。平均 $\frac1N\sum_{n=1}^Nr_n$ はほとんど至る所で $0$ に収束する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Lp空間, Hilbert空間, 弱位相(関数解析)

2 進の桁で符号を決める関数

区間 $[0,1)$ の点 $t$ を 2 進展開したとき、第 $n$ 桁が $0$ なら $+1$、$1$ なら $-1$ を返す関数が Rademacher 関数 $r_n$ である。グラフは、区間を $2^n$ 等分した小区間の上で $+1$ と $-1$ を交互にとる矩形波になる。

  • 番号が $1$ 以上の相異なる $r_n$ をいくつか掛けた積の積分は $0$ である。とくに $(r_n)$ は $L^2(0,1)$ の正規直交系であるが、完全ではない($r_1r_2$ がすべての $r_n$ に直交する)。積をすべて加えると完全な系 Walsh関数 になる。
  • $r_n$ は $L^p(0,1)$($1\le p<\infty$)で $0$ に弱収束するが、ノルムはつねに $1$ であり、どの部分列もノルムでもほとんど至る所でも収束しない。弱収束からノルム収束を導く定理の仮定を確かめるときの典型例である。
  • 桁は「独立」にふるまうので、平均 $\frac1N\sum_{n\le N}r_n(t)$ はほとんどすべての $t$ で $0$ に収束する。
    Lipschitz 関数がほとんど至る所微分可能であるという「Rademacher の定理」とは別の話題である。この記事では実数値または複素数値の関数を扱い、$L^p(0,1)$ は Lebesgue 測度 $\lambda$ に関する空間とする。

定義

Rademacher関数

整数 $n\ge0$ について、$[0,1)$ 上の関数
$$ r_n(t):=(-1)^{\lfloor 2^nt\rfloor} $$
を第 $n$ の Rademacher 関数という。$(r_n)_{n\ge0}$ を Rademacher 系という。

$r_0=1$ である。$n\ge1$ のとき、$t$ が開区間 $(k2^{-n},(k+1)2^{-n})$ にあれば $\lfloor2^nt\rfloor=k$ であり、$\sin(2^n\pi t)$ の符号も $(-1)^k$ なので、2 進有理数を除いて $r_n(t)=\operatorname{sign}\sin(2^n\pi t)$ である。$L^p$ の元としては、測度 $0$ の集合での値は問題にならない。文献によっては $n\ge1$ だけを Rademacher 系とよぶ。
2 進の桁との関係を述べるために記号を用意する。$m\ge0$、$0\le k<2^m$ について 2 進区間 $I_{m,k}:=[k2^{-m},(k+1)2^{-m})$ をとり、各 $I_{m,k}$ の上で定数である関数の全体を $D_m$ と書く。$D_m$ は次元 $2^m$ の線形空間で、$D_0\subset D_1\subset\cdots$ である。$D_m$ の元を(第 $m$ 段の)2 進階段関数という。$t\in[0,1)$ と $j\ge1$ について
$$ t_j:=\lfloor2^jt\rfloor-2\lfloor2^{j-1}t\rfloor\in\{0,1\} $$
を $t$ の第 $j$ 桁とする。$t=\sum_{j\ge1}t_j2^{-j}$ であり、この展開は $1$ が無限に続く形にはならない。

桁による表示
  1. $n\ge1$ のとき $r_n(t)=(-1)^{t_n}$ である。
  2. $m\ge1$、$0\le k<2^m$ とする。$t\in I_{m,k}$ なら、$t$ の第 $1$ 桁から第 $m$ 桁は $k=\sum_{j=1}^mt_j2^{m-j}$ を満たし、$k$ だけで決まる。$k\mapsto(t_1,\ldots,t_m)$ は $\{0,\ldots,2^m-1\}$ から $\{0,1\}^m$ への全単射である。
  3. $1\le n\le m$ なら $r_n\in D_m$ である。

1 は $\lfloor2^nt\rfloor\equiv t_n\pmod 2$ から従う。2:整数 $N\ge1$ と実数 $x$ について $\lfloor x/N\rfloor=\lfloor\lfloor x\rfloor/N\rfloor$ なので、$t\in I_{m,k}$、$j\le m$ のとき $\lfloor2^jt\rfloor=\lfloor k/2^{m-j}\rfloor$ である。よって $t_j$ は $k$ の 2 進表示の下から第 $m-j$ 桁(最下位を第 $0$ 桁とする)であり、$k=\sum_{j=1}^mt_j2^{m-j}$ となる。これは $k$ の 2 進表示そのものなので全単射である。3 は 1 と 2 から従う。$\square$

積の積分と独立性

Rademacher 関数のもっとも基本的な性質は、相異なる番号の値が互いに影響しないことである。

符号の組の測度

$1\le n_1<\cdots< n_k$ と $\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_k\in\{1,-1\}$ について
$$ \lambda\bigl(\{t\in[0,1):r_{n_1}(t)=\varepsilon_1,\ \ldots,\ r_{n_k}(t)=\varepsilon_k\}\bigr)=2^{-k} $$
である。したがって $k\ge1$ なら
$$ \int_0^1r_{n_1}(t)\cdots r_{n_k}(t)\,dt=0 $$
である。

$m:=n_k$ とおく。lem-rad-digits により、左辺の集合は、第 $n_1,\ldots,n_k$ 桁が指定された値($\varepsilon_j=1$ なら $0$、$-1$ なら $1$)をとる $i$ に対する $I_{m,i}$ の和集合である。$\{0,1\}^m$ のうち $k$ 個の座標を指定した元は $2^{m-k}$ 個あり、各 $I_{m,i}$ の長さは $2^{-m}$ なので、測度は $2^{m-k}\cdot2^{-m}=2^{-k}$ である。
積 $r_{n_1}\cdots r_{n_k}$ は、上の集合の上で値 $\varepsilon_1\cdots\varepsilon_k$ をとる。よって
$$ \int_0^1r_{n_1}\cdots r_{n_k}\,dt=\sum_{\varepsilon\in\{\pm1\}^k}\varepsilon_1\cdots\varepsilon_k\,2^{-k}=2^{-k}\prod_{j=1}^k\bigl(1+(-1)\bigr)=0 $$
である。$\square$

確率の言葉では、$[0,1)$ に Lebesgue 測度を入れた確率空間の上で、$r_1,r_2,\ldots$ は独立で、それぞれ確率 $1/2$ ずつで $\pm1$ をとる確率変数である(独立性(確率論))。公正な硬貨を投げ続ける試行を、1 点 $t$ の 2 進の桁で表したものといえる。

正規直交系であって完全でない

Rademacher系の正規直交性と不完全性
  1. $(r_n)_{n\ge0}$ は $L^2(0,1)$ の正規直交系である。
  2. $u:=r_1r_2$ は $0$ でなく、すべての $n\ge0$ について $\langle u,r_n\rangle=0$ である。したがって $(r_n)$ は完全正規直交系ではない。
  3. さらに $\{r_ir_j:1\le i< j\}$ は正規直交系で、そのどの元もすべての $r_n$ に直交する。$(r_n)$ の閉線形包の直交補空間は無限次元である。

$|r_n|=1$ なので $\|r_n\|_2=1$ である。$1\le m< n$ なら prop-rad-independent の $k=2$ の場合で $\langle r_m,r_n\rangle=\int r_mr_n=0$、$r_0=1$ との内積は $k=1$ の場合で $\int r_n=0$ である。これで 1 が示された。
2:$|u|=1$ なので $u\ne0$ である。$\langle u,r_0\rangle=\int r_1r_2=0$、$\langle u,r_1\rangle=\int r_1^2r_2=\int r_2=0$、$\langle u,r_2\rangle=\int r_1=0$ であり、$n\ge3$ なら $\langle u,r_n\rangle=\int r_1r_2r_n=0$ である(いずれも prop-rad-independent)。$u$ が $(r_n)$ の閉線形包 $R$ に入れば $u$ は自分自身に直交して $u=0$ となるので、$R\ne L^2(0,1)$ であり、$(r_n)$ は完全でない(Hilbert空間 の記事の定理「完全正規直交系の特徴づけとParsevalの等式」)。
3:$|r_ir_j|=1$ である。$\{i,j\}\ne\{i',j'\}$ なら $r_ir_jr_{i'}r_{j'}$ は $r^2=1$ で約分すると 2 個または 4 個の相異なる $r_n$($n\ge1$)の積になり、積分は $0$ である。$r_ir_j$ と $r_n$ の内積も、$n=0$ なら $\int r_ir_j$、$n\ge1$ なら約分して 1 個または 3 個の相異なる $r$ の積の積分なので $0$ である。正規直交系 $\{r_ir_j\}$ は無限個の元をもつので、$R^\perp$ は無限次元である。$\square$

$R^\perp$ に入る関数を積で作れるということは、逆に、すべての有限積を加えれば完全になるかもしれないことを示唆する。実際そうなっていることが Walsh関数 の記事の主定理である。

弱収束とノルム

まず、2 進階段関数が十分に多いことを確かめる。

2進階段関数の稠密性

$1\le p<\infty$ とする。$\bigcup_mD_m$ は $L^p(0,1)$ で稠密である。

証明を開く

コンパクトな台をもつ $(0,1)$ 上の連続関数の全体は $L^p(0,1)$ で稠密である(Bre11 Corollary 4.23、p. 109。そこでは実数値の関数について $C_c^\infty$ の稠密性が示されている。複素数値の関数は実部と虚部を別々に近似すればよい)。そのような $g$ を $[0,1]$ 上の連続関数とみると一様連続なので、$\varepsilon>0$ に対し $m$ を大きくとれば、$|s-t|\le2^{-m}$ で $|g(s)-g(t)|<\varepsilon$ となる。$I_{m,k}$ の上で値 $g(k2^{-m})$ をとる $s\in D_m$ は $\sup|g-s|\le\varepsilon$ を満たし、区間の長さが $1$ なので $\|g-s\|_p\le\varepsilon$ である。$\square$

弱収束するがノルムは保たれる
  1. すべての $g\in L^1(0,1)$ について $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^1r_n(t)g(t)\,dt=0$ である。
  2. したがって $1\le p<\infty$ なら $L^p(0,1)$ で $r_n\rightharpoonup0$(弱収束)であり、$L^\infty(0,1)$ では弱スター位相 $\sigma(L^\infty,L^1)$ で $r_n\to0$ である。
  3. $1\le p<\infty$ と $n\ne n'$($n,n'\ge0$)について $\|r_n\|_p=1$、$\|r_n-r_{n'}\|_p=2^{1-1/p}$ である。
  4. $(r_n)$ のどの部分列も、$L^p(0,1)$($1\le p\le\infty$)のノルムでは収束せず、ほとんど至る所でも収束しない。

1:$s\in D_m$ と $n>m$ をとる。各 $I_{m,k}$ は長さ $2^{-n}$ の 2 進区間 $2^{n-m}$ 個(偶数個)に分かれ、$r_n$ はそこで $1$ と $-1$ を交互にとるので $\int_{I_{m,k}}r_n=0$ であり、$s$ は $I_{m,k}$ の上で定数だから $\int r_ns=0$ である。$g\in L^1$ と $\varepsilon>0$ について、lem-rad-dense により $\|g-s\|_1<\varepsilon$ となる $s\in D_m$ がある。$n>m$ なら
$$ \Bigl|\int_0^1r_ng\Bigr|\le\Bigl|\int_0^1r_ns\Bigr|+\int_0^1|r_n||g-s|<\varepsilon $$
である。
2:$1\le p<\infty$ のとき、$L^p(0,1)$ 上の連続線形汎関数はある $g\in L^{p'}(0,1)$ による $f\mapsto\int fg$ で表される(Lp空間の双対 の定理「$L^p$ の双対の表現定理($1< p<\infty$)」と定理「$L^1$ の双対の表現定理」。$p'$ は共役指数)。区間の長さが有限なので $L^{p'}(0,1)\subset L^1(0,1)$ であり、1 から弱収束が従う。引いた表現定理は実数値の関数についてのものである。複素数値の $L^p(0,1)$ 上の連続線形汎関数 $\Phi$ については、実数値の関数に制限した $\operatorname{Re}\Phi$ と $\operatorname{Im}\Phi$ が実数値の $L^p(0,1)$ 上の連続線形汎関数なので、実数値の $g_1,g_2\in L^{p'}(0,1)$ で表され、$r_n$ は実数値だから $\Phi(r_n)=\int r_ng_1+i\int r_ng_2\to0$ である。$L^\infty$ の弱スター位相での収束は 1 そのものである。
3:$|r_n|=1$ から $\|r_n\|_p=1$ である。$n>n'$ とすると、prop-rad-independent($n'\ge1$ のとき $k=2$、$n'=0$ のとき $k=1$)により $r_n\ne r_{n'}$ となる集合の測度は $1/2$ で、そこで $|r_n-r_{n'}|=2$、ほかで $0$ である。よって $\|r_n-r_{n'}\|_p^p=2^p/2$ である。
4:3 により、どの部分列も $L^p$($p<\infty$)の Cauchy 列でない。$\|r_n-r_{n'}\|_\infty=2$ なので $p=\infty$ でも同じである。部分列 $r_{n_l}$ がほとんど至る所である関数 $f$ に収束したとすると、$|r_{n_l}|\le1$ なので優収束定理により $L^1$ で $f$ に収束し(優収束定理)、3 に反する。$\square$

$r_n$ を作る操作 $t\mapsto2^nt$ の小数部分をとることは、1 周期の矩形波を $2^n$ 倍に縮めて繰り返すことである。周期関数を細かく繰り返した列が平均値に弱収束する現象の、もっとも単純な例である(弱位相(関数解析) の例「振動する関数と非線形な操作」の $\sin nt$ と同じ現象)。非線形な操作は弱極限と交換しない:$r_n^2=1$ は $1$ に収束するが、弱極限 $0$ の 2 乗は $0$ である。
$\{r_n\}$ は $|r_n|=1$ なので一様可積分である(一様可積分性 の例「一様可積分だがノルム位相で相対コンパクトでない族」)。それでも $L^1$ で収束しないことは、Vitaliの収束定理 の「ほとんど至る所の収束」を弱収束に置き換えられないことを示す(同記事の例「反例の確認」の 3、Dunford–Pettisの定理 の例「反例の確認」の 4)。

平均はほとんど至る所 0 に近づく

$r_n$ 自身はほとんど至る所では収束しないが、平均をとると収束する。鍵になるのは 4 次の積分の計算である。

4次の積分の評価

実数 $a_1,\ldots,a_N$ について、$f:=\sum_{n=1}^Na_nr_n$ とおくと
$$ \int_0^1f^4\,dt=\sum_{n=1}^Na_n^4+3\sum_{i\ne j}a_i^2a_j^2\le3\Bigl(\sum_{n=1}^Na_n^2\Bigr)^2=3\Bigl(\int_0^1f^2\,dt\Bigr)^2 $$
である。すなわち $\|f\|_4\le3^{1/4}\|f\|_2$ である。

展開すると $\int f^4=\sum_{i,j,k,l}a_ia_ja_ka_l\int r_ir_jr_kr_l$ である。$r_n^2=1$ で約分すると、積 $r_ir_jr_kr_l$ は、4 つの番号のうち奇数回現れるものについての相異なる $r$ の積になる。そのような番号があれば prop-rad-independent により積分は $0$ であり、なければ積は $1$ である。すべての番号が偶数回現れるのは、4 つが等しいとき(寄与 $\sum_na_n^4$)と、2 つずつ相異なる値に分かれるときである。後者は、4 つの位置を 2 組に分ける方法が 3 通りあり、各組に相異なる値 $i\ne j$ を順序をつけて割り当てるので、寄与は $3\sum_{i\ne j}a_i^2a_j^2$ である。$(\sum a_n^2)^2=\sum a_n^4+\sum_{i\ne j}a_i^2a_j^2$ と $a_n^4\le3a_n^4$ から不等式が従う。最後の等号は thm-rad-onb の正規直交性による。$\square$

桁の平均のほとんど至る所収束

ほとんどすべての $t\in[0,1)$ について
$$ \lim_{N\to\infty}\frac1N\sum_{n=1}^Nr_n(t)=0 $$
である。言い換えると、ほとんどすべての $t$ について、2 進展開の最初の $N$ 桁に現れる $1$ の割合は $N\to\infty$ で $1/2$ に近づく。

$S_N:=\sum_{n=1}^Nr_n$ とおく。prop-rad-fourth で $a_n=1$ とすると $\int S_N^4=N+3N(N-1)\le3N^2$ である。よって
$$ \int_0^1\sum_{N=1}^\infty\Bigl(\frac{S_N}N\Bigr)^4dt=\sum_{N=1}^\infty\int_0^1\Bigl(\frac{S_N}N\Bigr)^4dt\le\sum_{N=1}^\infty\frac3{N^2}<\infty $$
である(非負の関数の級数なので、項別積分は 単調収束定理 による)。左辺の被積分関数はほとんど至る所で有限なので、その項 $(S_N/N)^4$ はほとんど至る所で $0$ に収束する。後半は、lem-rad-digits の 1 により $\frac1N\#\{n\le N:t_n=1\}=\frac12-\frac{S_N(t)}{2N}$ となることから従う。$\square$

これは、独立に $\pm1$ を等確率でとる確率変数の平均についての大数の強法則を、この場合に直接示したものである(弱法則は 大数の法則)。thm-rad-weak の 4 と並べると、$r_n$ 自身は振動し続けるが、平均の振動は消えることがわかる。

反例の表

弱収束やノルムに関する定理のうち、Rademacher 系が仮定を 1 つだけ破る例になるものを挙げる。

外す条件反例成り立たなくなること
Vitali の収束定理の「ほとんど至る所の収束」(一様可積分性は保ち、弱収束だけにする)$L^1(0,1)$ の $r_n$$L^1$ でのノルム収束
Hilbert 空間で「弱収束かつノルムの収束ならノルム収束」のうち、ノルムの収束 $\Vert u_n\Vert\to\Vert u\Vert$$L^2(0,1)$ の $r_n$、$u=0$ノルム収束
有限次元であること(有限次元では弱収束とノルム収束が一致する)無限次元の $L^2(0,1)$ の $r_n$弱収束列がノルム収束すること
正規直交系の完全性(Parseval の等式の仮定)系 $(r_n)$ と $u=r_1r_2$$\Vert u\Vert_2^2=\sum_n\lvert\langle u,r_n\rangle\rvert^2$
反例の確認
  1. $|r_n|=1$ なので $\{r_n\}$ は一様可積分であり、thm-rad-weak の 2 により $L^1$ で $0$ に弱収束するが、$\|r_n\|_1=1$ である。ほとんど至る所の収束だけが欠けている(Vitaliの収束定理)。
  2. Hilbert 空間で $u_n\rightharpoonup u$ かつ $\|u_n\|\to\|u\|$ なら、$\|u_n-u\|^2=\|u_n\|^2-2\operatorname{Re}\langle u_n,u\rangle+\|u\|^2\to0$ である。$r_n\rightharpoonup0$ であるが $\|r_n\|_2=1\not\to0$ である。
  3. 有限次元のノルム空間では弱位相とノルム位相が一致する(弱位相(関数解析) の命題「有限次元の場合」)。$L^2(0,1)$ は無限次元で、$r_n\rightharpoonup0$ だがノルム収束しない(thm-rad-weak)。
  4. thm-rad-onb の 2 により左辺は $1$、右辺は $0$ である。

文献

文献

Rademacher 系の定義($r_i(t)=(-1)^{[2^it]}$、$i\ge0$)と、それが正規直交系であること・基底かどうかを問う演習は Bre11 Exercise 5.32(pp. 155–156)にある。周期関数 $f$ から作る $u_n(x)=f(nx)$ の弱収束と、その例としての Rademacher 関数は同書 Exercise 4.18(pp. 123–124)にある。いずれも演習として置かれており、この記事の証明は記事内で完結させた。$C_c^\infty$ の稠密性は同書 Corollary 4.23(p. 109)、$L^p$ と $L^1$ の双対の表現は同書 Theorem 4.11(p. 97)・Theorem 4.14(p. 99)である。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Exercise 5.32(pp. 155–156、Rademacher 系と Walsh 基底)、Exercise 4.18(pp. 123–124、周期関数の縮小と Rademacher 関数)、Corollary 4.23(p. 109)、Theorem 4.11(p. 97)、Theorem 4.14(p. 99)

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