分離公理(separation axioms)とは、位相空間の点や集合を開集合や連続関数によってどこまで分離できるかを表す一連の条件である。点を分離する $T_0$〜$T_2$(Hausdorff)・$T_{2.5}$、点と閉集合を分離する正則性・完全正則性($T_1$ を加えて $T_3$・$T_{3.5}$)、閉集合どうしを分離する正規性($T_1$ を加えて $T_4$)、さらに遺伝正規の $T_5$・完全正規の $T_6$ が代表的で、$T_6$ から $T_0$ へ向かう含意の階層をなすが逆は一般に成り立たない。距離空間は $T_6$ であり、スキームの基礎位相空間は Sober 性により $T_0$ だが一般には $T_1$ ではない。
分離公理は、位相空間の点や集合を開集合、または連続関数で分離できる条件である。以下では、正則性条件に $T_1$ を含めない。完全正則性条件にも $T_1$ を含めない。正規性条件にも $T_1$ を含めない。$T_3$、$T_{3.5}$、$T_4$ では、それぞれの条件に $T_1$ を加える。$T_5$ を遺伝正規、$T_6$ を完全正規と呼ぶ。文献を読む際は、番号だけでなく分離条件と $T_1$ の有無を照合する。
| 名称 | 分離する対象 | 本記事での条件 |
|---|---|---|
| $T_0$ | 異なる二点 | 少なくとも片方を開集合で区別する |
| $T_1$ | 異なる二点 | 双方をそれぞれ開集合で区別する |
| $T_2$(Hausdorff) | 異なる二点 | 互いに素な開近傍を持つ |
| $T_{2.5}$(Urysohn) | 異なる二点 | 閉包も交わらない開近傍を持つ |
| $T_3$ | 点と閉集合 | 正則性条件と $T_1$ |
| $T_{3.5}$(Tychonoff) | 点と閉集合 | 連続関数による分離と $T_1$ |
| $T_4$ | 互いに素な閉集合 | 正規性条件と $T_1$ |
この表は定義の見取り図である。とくに正則性・完全正則性・正規性条件だけには $T_1$ を含めず、番号付きの $T_3,T_{3.5},T_4$ で加える。含意は後の「含意とその証明」で確認する。
位相空間 $X$ が $T_0$ であるとは、異なる二点 $x,y$ のうち一方だけを含む開集合が存在することをいう。
位相空間 $X$ が $T_1$ であるとは、異なる二点 $x,y$ に対して、$x\in U$、$y\notin U$、$y\in V$、$x\notin V$ を満たす開集合 $U,V$ が存在することをいう。
位相空間が $T_1$ であることと、その任意の一点集合が閉であることは同値である。
$X$ を $T_1$ とし、$x\in X$ を固定する。$x$ を含まない開集合をすべて合併すると、$T_1$ の条件によって $X\setminus\{x\}$ になる。したがって $\{x\}$ は閉である。逆に一点集合がすべて閉なら、$x\ne y$ に対して $U=X\setminus\{y\}$ と $V=X\setminus\{x\}$ が要求を満たす。
位相空間 $X$ が $T_2$ であるとは、異なる二点 $x,y$ に対して、$x\in U$、$y\in V$、$U\cap V=\emptyset$ を満たす開集合 $U,V$ が存在することをいう。
位相空間 $X$ が $T_{2.5}$ であるとは、異なる二点 $x,y$ に対して、$x\in U$、$y\in V$、$\overline U\cap\overline V=\emptyset$ を満たす開集合 $U,V$ が存在することをいう。閉包は $X$ で取る。
Hausdorff 空間では収束するネットの極限は一意である。実際、異なる二つの極限を互いに素な開近傍に入れると、ネットは最終的に両方の近傍へ入り、矛盾する。点列は自然数を添字とするネットなので、収束する点列にも同じ結論が成り立つ。
$X$ が正則性条件を満たすとは、閉集合 $F\subset X$ と $x\in X\setminus F$ に対し、$x\in U$、$F\subset V$、$U\cap V=\emptyset$ を満たす開集合 $U,V$ が存在することをいう。正則性条件を満たす $T_1$ 空間を $T_3$ 空間という。
$X$ が完全正則性条件を満たすとは、閉集合 $F\subset X$ と $x\in X\setminus F$ に対し、$f(x)=0$ かつすべての $z\in F$ で $f(z)=1$ となる連続関数 $f:X\to[0,1]$ が存在することをいう。完全正則性条件を満たす $T_1$ 空間を $T_{3.5}$ 空間、または Tychonoff 空間という。$F=\emptyset$ の場合も定義に含み、この場合は定数関数 $f=0$ を使える。
正則性条件は、任意の開集合 $O$ と $x\in O$ に対し、$x\in U\subset\overline U\subset O$ となる開集合 $U$ が存在することと同値である。したがって正則性条件を満たす空間では、各点の閉近傍全体が基本近傍系になる。
正則性を $x$ と $X\setminus O$ に適用し、互いに素な開集合 $U,V$ で分離する。このとき $\overline U\subset X\setminus V\subset O$ である。逆に縮小条件を仮定し、閉集合 $F$ と $x\notin F$ に対して $O=X\setminus F$ と置く。得られる $U$ と $X\setminus\overline U$ は、$x$ と $F$ を分離する開集合である。任意の近傍は点を含む開集合を含むので、その中に得られる $\overline U$ が閉近傍系の主張を与える。
$X$ が正規性条件を満たすとは、互いに素な閉集合 $A,B$ に対し、$A\subset U$、$B\subset V$、$U\cap V=\emptyset$ を満たす開集合 $U,V$ が存在することをいう。正規性条件を満たす $T_1$ 空間を $T_4$ 空間という。
部分集合 $A,B\subset X$ が分離されているとは、$\overline A\cap B=\emptyset$ かつ $A\cap\overline B=\emptyset$ であることをいう。任意の分離された二集合が互いに素な開集合に含まれるとき、$X$ は遺伝正規性条件を満たすという。この条件を満たす $T_1$ 空間を $T_5$ 空間という。
正規性条件を満たし、任意の閉集合が可算個の開集合の共通部分であるとき、$X$ は完全正規性条件を満たすという。この条件を満たす $T_1$ 空間を $T_6$ 空間という。可算個の開集合の共通部分を $G_\delta$ 集合と呼ぶ。
二点以上の集合 $X$ に、開集合を $\emptyset,X$ のみとする密着位相を入れる。異なる二点を区別する開集合がないので、この空間は $T_0$ ではない。点を含まない閉集合は空集合だけなので、$U=X,V=\emptyset$ が正則性条件を満たす。完全正則性条件も定数関数 $0$ で満たされる。互いに素な閉集合の少なくとも一方は空集合なので、正規性条件も満たされる。したがって、正則性条件から $T_1$ は従わない。完全正則性条件からも $T_1$ は従わない。正規性条件からも $T_1$ は従わない。
$T_4$ 空間は $T_3$ 空間である。$T_3$ 空間は $T_2$ 空間である。$T_2$ 空間は $T_1$ 空間である。$T_1$ 空間は $T_0$ 空間である。
$T_4$ 空間で $x\notin F$、$F$ が閉であれば、$T_1$ により $\{x\}$ も閉である。正規性を $\{x\},F$ に適用すると正則性条件を得る。$T_3$ 空間では、異なる二点 $x,y$ に対し、正則性を $x,\{y\}$ に適用すると互いに素な開近傍を得る。$T_2$ の分離開近傍は、それぞれ他方の点を含まないため $T_1$ の条件を満たす。$T_1$ の条件の一方を使えば $T_0$ の条件になる。
正則性条件を満たす $T_0$ 空間は $T_3$ である。
異なる二点を $x,y$ とする。$T_0$ により、必要なら点の名前を交換して、$x\in O$、$y\notin O$ となる開集合 $O$ がある。正則性を $x,X\setminus O$ に適用すると、$x$ と $y$ の互いに素な開近傍が得られる。したがって $T_2$ であり、基本的な含意によって $T_1$ でもある。
$T_3$ 空間は $T_{2.5}$ 空間である。
$T_3$ 空間の異なる二点 $x,y$ を、互いに素な開集合 $U,V$ で分離する。閉近傍の特徴づけを $x\in U$ に適用して、$x\in W\subset\overline W\subset U$ となる開集合 $W$ を取る。同じ特徴づけを $y\in V$ に適用して、$y\in W'\subset\overline{W'}\subset V$ となる開集合 $W'$ を取る。$U\cap V=\emptyset$ なので $\overline W\cap\overline{W'}=\emptyset$ である。
$T_4$ 空間は $T_{3.5}$ 空間である。$T_{3.5}$ 空間は $T_3$ 空間である。
$T_4$ 空間では、点 $x$ とそれを含まない閉集合 $F$ に対して、閉集合 $\{x\},F$ を 第2可算公理 の lem-second-countable-urysohn によって連続関数で分離できる。この Urysohn の補題自体に第2可算性の仮定はない。完全正則性条件を満たす空間では、分離関数 $f$ に対して $U=f^{-1}([0,1/3))$ と $V=f^{-1}((2/3,1])$ が点と閉集合を分離する開集合になる。$T_1$ を合わせれば、それぞれの結論を得る。
位相空間 $X$ が $T_5$ であることと、すべての部分空間が $T_4$ であることは同値である。
$X$ を $T_5$ とし、$Y\subset X$ の互いに素な閉集合 $A,B$ を取る。$\overline A^{\,X}\cap Y=A$、$\overline B^{\,X}\cap Y=B$ なので、$A,B$ は $X$ で分離されている。$X$ の分離開集合を $Y$ と交わらせると、$Y$ の正規性条件が従う。一点集合の閉性も部分空間へ制限できるので $Y$ は $T_4$ である。逆にすべての部分空間が $T_4$ とし、$X$ で分離された $A,B$ を取る。$Y=X\setminus(\overline A\cap\overline B)$ は $A\cup B$ を含む開部分空間である。$Y$ の閉集合 $\overline A\cap Y$ と $\overline B\cap Y$ は互いに素なので、$Y$ の正規性によって分離できる。$Y$ が開であるため、得られる開集合は $X$ でも開である。また $Y=X$ の場合の仮定から $X$ は $T_1$ であり、結論を得る。
$T_6$ 空間は $T_5$ 空間である。
$T_6$ 空間 $X$ で分離された集合 $A,B$ を取る。開集合 $X\setminus\overline B$ は可算閉集合の和 $\bigcup_{n\ge1}F_n$ と書け、$X\setminus\overline A$ も $\bigcup_{n\ge1}G_n$ と書ける。正規性から、閉集合をそれを含む開集合の中で縮小できる。すなわち閉集合 $F\subset O$ に対し、$F$ と $X\setminus O$ を分離すれば、$F\subset U\subset\overline U\subset O$ を得る。これを用い、$F_n\subset U_n\subset\overline U_n\subset X\setminus\overline B$ および $G_n\subset V_n\subset\overline V_n\subset X\setminus\overline A$ を満たす開集合を取る。この可算個の選択には可算選択を用いる。次の二つの開集合を考える。
$$
U=\bigcup_{n\ge1}\left(U_n\setminus\bigcup_{k\le n}\overline V_k\right),\qquad
V=\bigcup_{n\ge1}\left(V_n\setminus\bigcup_{k\le n}\overline U_k\right).
$$
すべての $\overline V_k$ は $A$ を避けるので $A\subset U$ である。すべての $\overline U_k$ は $B$ を避けるので $B\subset V$ である。$U$ の第 $n$ 項と $V$ の第 $m$ 項について、$m\le n$ なら前者が $\overline V_m$ を避け、$n\le m$ なら後者が $\overline U_n$ を避ける。したがって $U\cap V=\emptyset$ である。
$T_6$ 空間の閉集合 $F$ は、ある連続関数 $f:X\to[0,1]$ の零点集合である。
$F=\bigcap_{n\ge1}O_n$ と書き、Urysohn の補題により $f_n|_F=0$、$f_n|_{X\setminus O_n}=1$ となる連続関数 $f_n:X\to[0,1]$ を取る。この可算個の関数の選択には可算選択を用いる。$f=\sum_{n\ge1}2^{-n}f_n$ は一様収束する連続関数の級数だから連続である。各項が非負なので、$f(x)=0$ はすべての $f_n(x)=0$ と同値である。$F$ 上ではすべての項が零であり、$x\notin F$ ならある $n$ について $x\notin O_n$ なので $f_n(x)=1$ である。したがって $f^{-1}(0)=F$ となる。$F=\emptyset$ には定数関数 $1$、$F=X$ には定数関数 $0$ も使える。
以上により、次の含意が成り立つ。
$$
\xymatrix{
T_6 \ar[r] & T_5 \ar[r] & T_4 \ar[r] & T_{3.5} \ar[r] & T_3 \ar[dl] \\
T_0 & T_1 \ar[l] & T_2 \ar[l] & T_{2.5} \ar[l] &
}
$$
矢印は左上から右へ進み、$T_3$ から左下の $T_{2.5}$ へ折り返し、下段を左へ進む。各矢印は始点の条件が終点の条件を含意することを表す。$T_{2.5}\Rightarrow T_2$ は開集合がその閉包に含まれることから従う。
距離位相を入れた距離空間は $T_4$ である。
異なる二点 $x,y$ の距離の三分の一を半径とする開球は、三角不等式によって交わらない。したがって距離空間は $T_2$ であり、$T_1$ でもある。空でない部分集合 $S$ に対し、$d(x,S)=\inf_{s\in S}d(x,s)$ と置く。三角不等式から $|d(x,S)-d(y,S)|\le d(x,y)$ であり、この距離関数は連続である。さらに $S$ が閉なら、$d(x,S)=0$ と $x\in S$ は同値である。逆向きの確認には、距離が零なら任意の開球が $S$ と交わることを使う。互いに素な空でない閉集合 $A,B$ に対し、
$$
U=\{x:d(x,A)< d(x,B)\},\qquad V=\{x:d(x,B)< d(x,A)\}
$$
は互いに素な開集合である。$A$ 上では $d(x,A)=0< d(x,B)$ なので $A\subset U$ である。同様に $B\subset V$ である。$A=\emptyset$ なら $U=\emptyset,V=X$、$B=\emptyset$ なら $U=X,V=\emptyset$ を使えばよい。
距離空間はさらに $T_6$ である。空でない閉集合 $F$ については、連続性と零点の特徴づけから
$$
F=\bigcap_{n\ge1}\{x:d(x,F)<1/n\}
$$
が成り立つ。空集合は開集合 $\emptyset$ の可算共通部分として書ける。したがってすべての閉集合が $G_\delta$ であり、先の $T_4$ 性と合わせて結論を得る。通常の位相の実数直線も、この議論を適用できる例である。
$T_0$ 空間の部分空間は $T_0$ である。$T_1$ 空間の部分空間は $T_1$ である。$T_2$ 空間の部分空間は $T_2$ である。$T_3$ 空間の部分空間は $T_3$ である。
$Y\subset X$ とする。$T_0$ の分離開集合を $Y$ と交わらせれば、$Y$ の異なる二点を区別できる。$T_1$ の二つの分離開集合を $Y$ と交わらせれば、それぞれ他方の点を含まない条件が保たれる。$T_2$ の互いに素な開集合を $Y$ と交わらせれば、互いに素な開集合のままである。正則性について、$Y$ の閉集合 $F'$ と $y\in Y\setminus F'$ を取る。$F'=F\cap Y$ となる $X$ の閉集合 $F$ があり、$y\in Y$ と $y\notin F'$ から $y\notin F$ である。$X$ で $y,F$ を分離する開集合を $Y$ と交わらせると、$y,F'$ を分離できる。$T_1$ 性も遺伝するため $T_3$ の主張を得る。
次の表は積位相を用いた直積について述べる。○はその公理が保存されること、×は保存されない例があることを表す。
| 公理 | 部分空間 | 直積 | 閉部分空間 |
|---|---|---|---|
| $T_0$ | ○ | ○ | ○ |
| $T_1$ | ○ | ○ | ○ |
| $T_2$ | ○ | ○ | ○ |
| $T_3$ | ○ | ○ | ○ |
| $T_{3.5}$ | ○ | ○ | ○ |
| $T_4$ | × | × | ○ |
| $T_5$ | ○ | × | ○ |
| $T_6$ | ○ | × | ○ |
$T_0$ の積の保存性は、異なる二点が異なる座標で、その二点を区別する開集合を射影で引き戻して確かめる。$T_1$ の積の保存性は、同じ座標でそれぞれ他方を避ける二つの開集合を引き戻して確かめる。$T_2$ の積の保存性は、同じ座標で互いに素な開近傍を引き戻して確かめる。正則性の積の保存性は、点を含む有限座標の基本開集合を取り、各座標で閉近傍へ縮小して確かめる。得られた基本開集合の閉包は各座標の閉包の逆像の共通部分に含まれ、元の基本開集合の中に入る。この証明で選ぶ座標は有限個だけである。$T_{3.5}$ の部分空間への遺伝性は、外側の閉集合と点を分離する連続関数の制限で得られる。$T_{3.5}$ の積の保存性は、有限座標の基本開集合の各座標で分離関数を取り、その引き戻しの最大値を使って得られる。閉集合が空のときは定数関数を使い、制約座標が零個のときも定数関数を使う。この二つの構成は Tychonoff空間 の prop-tychonoff-subspace と prop-tychonoff-product に対応する。$T_4$ 空間の閉部分空間については、その閉集合は元の空間でも閉なので、元の正規性条件を適用できる。$T_5$ の部分空間への遺伝性は、すべての部分空間が $T_4$ であるという特徴づけから従う。$T_6$ 空間の部分空間は $T_5$ の遺伝性により正規であり、相対閉集合を元の空間の閉集合と交わらせて表すことで $G_\delta$ 条件も得られる。空の積は一点空間であり、上記の公理をすべて満たす。空の因子がある積は空空間であり、上記の公理をすべて満たす。非空の因子だけからなる積が非空であるという別の主張には、一般には選択公理を要する。
$\omega_1$ を最小非可算順序数とし、順序位相による
$$
T=[0,\omega_1]\times[0,\omega],\qquad
P=T\setminus\{(\omega_1,\omega)\}
$$
を考える。$T$ は閉じた Tychonoffの板である。$P$ はその隅を除いた 穴あきTychonoffの板である。閉順序区間のコンパクト性と Hausdorff 性を用いると、$T$ はコンパクト Hausdorff 空間なので $T_4$ である。ここでの閉順序区間の性質は順序位相の基本定理として用いる。コンパクト Hausdorff 空間の正規性は コンパクト空間 の prop-compact-hausdorff-normal による。$P$ の閉集合
$$
A=\{\omega_1\}\times[0,\omega),\qquad
B=[0,\omega_1)\times\{\omega\}
$$
は互いに素である。もし $A\subset U$、$B\subset V$ となる互いに素な $P$ の開集合があれば、各 $n<\omega$ について $(\alpha_n,\omega_1]\times\{n\}\subset U$ となる $\alpha_n<\omega_1$ を取れる。可算選択と、可算個の可算順序数の上限が $\omega_1$ 未満であることを使い、$\sup_n\alpha_n<\beta<\omega_1$ を取る。$V$ は $(\beta,\omega)$ の近傍なので、十分大きい有限順序数 $n$ に対して $(\beta,n)\in V$ である。この点は $U$ にも属するため矛盾する。よって $P$ は $T_4$ ではない。一方、$T$ は $T_4$ なので $T_3$ であり、その部分空間 $P$ も $T_3$ である。この例では $T_3\Rightarrow T_4$ が破れ、$T_4$ の部分空間への遺伝性も破れる。また $T$ は $T_5$ ではなく、$T_4\Rightarrow T_5$ も破れる。
$X=\{0,1\}$ に $\{\emptyset,\{0\},X\}$ を開集合系として入れた Sierpinski空間 を考える。ここでは $0$ が開点、$1$ が閉点である。開集合 $\{0\}$ が二点を区別するので $T_0$ である。$1$ を含む開集合は $X$ だけなので、$1$ を含み $0$ を含まない開集合は存在しない。したがって $T_1$ ではない。閉集合は $\emptyset,\{1\},X$ であり、互いに素な閉集合の少なくとも一方は空なので正規性条件は満たす。しかし点 $0$ と閉集合 $\{1\}$ を互いに素な開集合で分離できず、正則性条件は満たさない。この空間を $T_4$ の例とすることはできない。
無限集合に補有限位相を入れると、すべての一点集合は閉なので $T_1$ である。二つの非空開集合はそれぞれ有限個の点しか除かないため交わり、異なる二点を互いに素な開集合で分離できない。したがって $T_2$ ではない。非空開集合どうしが交わる議論は、補有限位相の prf-cofinite-topology にも示されている。有限集合上の補有限位相は離散位相なので、無限という条件を外してはならない。
$K=\{1/n:n\ge1\}\subset\mathbb R$ とする。通常の開区間と、それらから $K$ を除いた集合を開基とする空間を $\mathbb R_K$ と呼ぶ。これは K位相を入れた実数直線である。
二つの指定された開基候補の交わりは、開区間か、開区間から $K$ を除いた集合であり、候補は $\mathbb R$ を覆うので開基を定める。通常の開区間がすべて開なので、通常の実数直線の Hausdorff 分離が使える。$\mathbb R\setminus K$ は $(a,b)\setminus K$ の合併なので開であり、$K$ は閉である。$U$ を $0$ の開近傍、$V$ を $K$ を含む開集合とする。ある $\varepsilon>0$ に対して $(-\varepsilon,\varepsilon)\setminus K\subset U$ となる。$0<1/n<\varepsilon$ となる $n$ を取る。$1/n\in K$ を含む開基の元は通常の開区間なので、$1/n$ の小さな開区間 $I$ を $V\cap(-\varepsilon,\varepsilon)$ に入れられる。$I$ 内の無理数は $K$ に属さず、$U\cap V$ に属する。よって $0$ と $K$ を分離できず、正則性条件が破れる。したがって $\mathbb R_K$ は $T_2$ だが $T_3$ ではない。
Sorgenfrey直線の自分自身との積が Sorgenfrey平面である。直線の半開区間 $[a,b)$ は開かつ閉である。したがって平面にも開かつ閉な矩形からなる開基がある。点を含む開かつ閉な基底元の外側を $1$、内側を $0$ とする関数は連続なので、平面は完全正則性条件を満たす。平面は Hausdorff でもあるから $T_{3.5}$ である。一方、Sorgenfrey平面の prf-sorgenfrey-not-normal は、反対角線が連続体濃度の閉離散集合であることと可分性を用い、正規性に矛盾することを示す。したがって平面は $T_4$ ではなく、$T_{3.5}\Rightarrow T_4$ が破れる。特に $T_3\Rightarrow T_4$ も破れる。直線の $T_6$ 性は prop-sorgenfrey-line-perfectly-normal とその証明による。したがってこの積は、$T_4$ の積による保存性を破る。$T_5$ の積による保存性も破る。$T_6$ の積による保存性も破る。
コゼロ集合の prop-cozero-set-completely-regular は、完全正則性条件を「コゼロ集合が開基となること」によって特徴づける。この条件だけでは $T_1$ は要請されない。Tychonoff 空間という空間のクラスと、コンパクト空間の積を扱う Tychonoffの定理 は別の概念である。Tychonoff 空間はコンパクト Hausdorff 空間の部分空間として実現できる。また、そのような部分空間は Tychonoff 空間である。この特徴づけと Stone–Čech コンパクト化の構成は Tychonoff空間 の prop-tychonoff-compact-embedding で扱う。ここではこの特徴づけを採用し、評価写像とコンパクト化の構成は展開しない。コンパクト Hausdorff 空間の任意の積は、Tychonoff の積定理によってコンパクトであり、積の Hausdorff 性と合わせて $T_4$ である。積のコンパクト性には選択公理を用いる。Hausdorff 空間の商が Hausdorff になるとは限らない。例えば二本の実数直線の非交和で原点以外の対応する点だけを同一視すると、二重原点直線を得る。二つの原点のどの開近傍も共通の非零の点を含む。商の二点を分離できないこの例は、商空間の分離公理 の rem-quotient-line-two-origins で扱う。
コンパクト空間の prop-compact-basic は、Hausdorff 空間のコンパクト部分集合が閉であることを示す。したがってコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続全単射 $f$ は同相写像である。実際、定義域の閉集合はコンパクトであり、その像はコンパクトであるから値域で閉である。よって $f$ は閉写像となり、全単射なので逆写像が連続になる。コンパクト部分集合の閉性という結論では、周囲の空間の Hausdorff の仮定を $T_1$ に弱めることはできない。例えば無限補有限空間の真の無限部分集合は、誘導される補有限位相によってコンパクトだが閉でない。コンパクト空間の prop-compact-hausdorff-normal により、コンパクト Hausdorff 空間は $T_4$ である。Lindelöf空間の prop-lindelof-regular-normal により、正則な Lindelöf 空間は正規性条件を満たす。これに $T_1$ を加えれば $T_4$ である。第2可算公理の prop-second-countable-metric-construction は、第2可算な $T_3$ 空間の距離化を与える。
正規性条件を満たす空間 $X$ の閉部分集合 $A$ と連続関数 $f:A\to\mathbb R$ に対し、$f$ を延長する連続関数 $X\to\mathbb R$ が存在する。閉区間 $[0,1]$ に値を取る場合は、延長も $[0,1]$ に値を取るようにできる。ここではこの Tietze の拡張定理を用い、証明は MathlibTietze に譲る。定義域の部分集合が閉であるという仮定を省くことはできない。例えば $(0,1]\subset[0,1]$ 上の $f(x)=1/x$ は、実数値の連続関数として $[0,1]$ へ延長できない。
パラコンパクト空間では、任意の開被覆に局所有限な開細分が存在するという条件を使う。この条件と Hausdorff 性を満たす空間は $T_4$ である。ここでは AndreParacompact の Theorem 19.4 を採用し、その証明は展開しない。Hausdorff かつ第2可算な局所 Euclid 空間という流儀の位相多様体では、局所 Euclid 性と Hausdorff 性から正則性が得られ、第2可算距離化定理によって距離化できる。この流儀の多様体は、したがって $T_6$ である。多様体の定義から Hausdorff 性を外した対象に、この結論をそのまま適用してはならない。
CW複体の $T_1$ 性と正規性は、HatcherAppendix の Proposition A.3 を用いる。さらに任意の閉集合 $A$ が連続関数の零点集合となることを、骨格に沿って確かめられる。$0$ 骨格は離散空間なので、$A$ 上で $0$、その外で $1$ となる関数 $f_0$ を取る。$n-1$ 骨格で $f_{n-1}:X^{n-1}\to[0,1]$ が連続で、零点集合が $A\cap X^{n-1}$ であるとする。$n$ 胞体の特性写像 $\phi:D^n\to X^n$ に対して $E=\phi^{-1}(A)$ と置く。円板の閉集合 $H=\partial D^n\cup E$ 上で、境界には $f_{n-1}\circ\phi$、$E$ 上には $0$ を指定する。重なる部分では両指定が $0$ で一致するので、閉集合上の貼り合わせによって連続関数を得る。円板に Tietze の拡張定理を使い、その指定を $g:D^n\to[0,1]$ へ延長する。$n\ge1$ では $H$ は空でなく閉なので、$h(z)=\min(1,g(z)+d(z,H))$ は連続である。$H$ 上では $h=g$ なので境界の指定を保つ。$E$ 上では $h=0$ である。円板の内部で $E$ に属さない点では $d(z,H)>0$ なので $h>0$ である。境界では既に $A$ の逆像だけが零点であるから、$h^{-1}(0)=E$ となる。各胞体でこの構成を行うと、境界の値が $f_{n-1}$ と一致するため $f_n:X^n\to[0,1]$ に貼り合わされる。各骨格で延長を続けて得る関数 $f:X\to[0,1]$ は、特性写像との合成がすべて連続であるため、CW 複体の弱位相により連続である。この構成で各胞体の延長を選び、骨格の帰納を続けるために選択公理を用いる。零点集合はちょうど $A$ なので、$A=\bigcap_{m\ge1}f^{-1}([0,1/m))$ と書ける。先の $T_1$ 性と正規性を合わせれば、CW 複体は $T_6$ である。
Tychonoffのコルク抜きは $T_3$ であり、完全正則性条件を満たさない。ここでは SS78 の Example 90 を採用し、構成と証明は同例に譲る。したがって $T_3\Rightarrow T_{3.5}$ は成り立たない。同書の Urysohn という語は連続実数値関数による二点分離を指すので、本記事の閉近傍による $T_{2.5}$ と読み替えてはならない。Niemytzki平面は $T_{3.5}$ であるが、正規性条件を満たさない。ここでは上半平面の内点には通常の Euclid 近傍を、境界点にはその点と内接円板の和を近傍とする位相を用いる。この性質の証明は SS78 の Example 82 の第1項から第3項を用いる。この例でも $T_{3.5}\Rightarrow T_4$ が破れる。
空でない閉部分集合 $C$ が既約であるとは、$C$ を二つの真の相対閉部分集合の和に書けないことをいう。$\overline{\{\eta\}}=C$ を満たす点 $\eta$ を $C$ の生成点という。任意の空でない既約閉集合がただ一つの生成点を持つとき、$X$ は Sober 空間であるという。この定義は StacksSoberDefinition の流儀に合わせ、既約集合に非空を課す。
Sober 空間は $T_0$ である。
任意の点 $x$ の閉包 $\overline{\{x\}}$ は空でない既約閉集合である。実際、その閉包を二つの相対閉集合で覆うと、一方は $x$ を含み、閉性によって $\overline{\{x\}}$ 全体を含む。異なる二点 $x,y$ の閉包が等しければ、その既約閉集合が二つの生成点を持つことになるので、Sober 性に反する。閉包が異なるなら、一方の点を含み他方を含まない閉集合が存在する。その補集合を使えば二点を開集合で区別でき、$T_0$ を得る。
空でない既約空間では、二つの非空開集合は必ず交わる。交わらない二つの非空開集合があれば、その補集合が空間を二つの真の閉集合で覆うためである。したがって二点以上を持つ既約空間は Hausdorff ではない。一点空間は既約であり、同時に Hausdorff でもある。例えば体 $k$ のスキーム $\operatorname{Spec}(k)$ は一点空間である。任意のスキームの基礎位相空間は Sober であることが StacksSober の Lemma 26.11.1 で証明されている。したがってスキームの基礎位相空間は $T_0$ である。生成点 $\eta$ の閉包が二点以上を含むときに限って、$\{\eta\}$ は閉でない。例えば $\operatorname{Spec}(\mathbb Z)$ の点 $(0)$ の閉包は $V((0))=\operatorname{Spec}(\mathbb Z)$ である。このスペクトルには $(0)$ と $(2)$ という異なる点があるので、$T_1$ ではない。「スキームではどの二点も開集合で区別できない」という説明は $T_0$ 性と相容れない。Sober 性は $T_1$ 性の否定を意味せず、一点スキームの例も排除しない。
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