Hilbert次元

同義語:Hilbert dimensionヒルベルト次元直交次元orthogonal dimension

概要

Hilbert次元(Hilbert dimension)とは、Hilbert 空間の完全正規直交系(正規直交基底)の濃度のことである。Zorn の補題により正規直交基底は必ず存在し、その濃度は基底の選び方によらず、有限次元では線形代数の次元と一致する。係数体が同じ Hilbert 空間は、Hilbert 次元が等しいときに限り内積を保つ線形同型で移り合い、正規直交基底を $(e_i)_{i\in I}$ とすれば $\ell^2(I)$ と同型である。無限次元の Hilbert 空間では Hilbert 次元は稠密部分集合の濃度の最小値に等しく、可分であることは Hilbert 次元が $\aleph_0$ であること、すなわち $\ell^2$ と同型であることと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Hilbert空間, Hilbert直和, 濃度, Zornの補題

Hilbert 次元(Hilbert dimension)とは、Hilbert 空間の完全正規直交系(正規直交基底)の元の個数、すなわちその濃度のことである。有限次元の内積空間では、正規直交基底の元の個数は線形代数の次元に等しい。無限次元の Hilbert 空間では、正規直交基底は線形代数の意味の基底ではなく、ベクトルは基底の無限和で表される。それでも、正規直交基底の濃度は基底の選び方によらず空間だけで決まる。この数が Hilbert 次元である。
Hilbert 次元は Hilbert 空間を完全に分類する。係数体が同じ二つの Hilbert 空間は、Hilbert 次元が等しいときに限り、内積を保つ線形同型で移り合う。とくに無限次元の可分な Hilbert 空間はすべて数列空間 $\ell^2$ と同型であり、関数の空間 $L^2(0,1)$ も、内積の構造だけを見れば $\ell^2$ と区別がつかない。ただし同型で移すと、微分や掛け算のような自然な作用素の形は一般に見えにくくなるので、具体的な関数空間を使う意味は失われない。
この記事では、正規直交基底の存在と、濃度が一つに決まることを証明し、Hilbert 次元による分類と、可分性(稠密部分集合の大きさ)との関係を示す。

定義

以下、$F$ は $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$、$H$ は $F$ 上の Hilbert空間 とする。内積は第 1 変数について線形とし、$\|x\|=\sqrt{\langle x,x\rangle}$ とおく。集合論は選択公理を含む ZFC を仮定する。
部分集合 $B\subset H$ が 正規直交系 であるとは、各 $b\in B$ が $\|b\|=1$ をみたし、相異なる $b,b'\in B$ が $\langle b,b'\rangle=0$ をみたすことをいう。正規直交系 $B$ が 完全 であるとは、すべての $b\in B$ と直交する $H$ の元が $0$ だけであることをいう。完全正規直交系を 正規直交基底(Hilbert 基底)ともいう。添字付きの族 $(e_i)_{i\in I}$ で書くときは、$i\mapsto e_i$ が単射であるとする。
正規直交系 $B$ について、$B^\perp$ は $B$ の有限線形結合の全体の閉包の直交補空間に等しい。よって Hilbert空間 の系「稠密な部分空間の判定」により、$B$ が完全であることと、$B$ の有限線形結合の全体が $H$ で稠密であることは同値である。Hilbert直和 の言葉では、$H=\widehat{\bigoplus}_{b\in B}Fb$ であることと同値である(Hilbert直和 の例「正規直交基底と $\ell^2(I)$」)。

Hilbert次元

$H$ の正規直交基底 $B$ の濃度 $|B|$ を、$H$ の Hilbert 次元 といい、$\dim_{\mathrm H}H$ などと書く。$H=\{0\}$ のときは空集合が正規直交基底であり、$\dim_{\mathrm H}H=0$ である。

この定義が意味をもつためには、正規直交基底が存在し(thm-hdim-existence)、その濃度が基底の選び方によらない(thm-hdim-invariance)ことが要る。

正規直交基底の存在

正規直交基底の存在

$H$ の任意の正規直交系 $S$ は、ある正規直交基底 $B\supset S$ に含まれる。とくに、すべての Hilbert 空間は正規直交基底をもつ。

極大な正規直交系は完全である

$\mathcal{P}$ を、$S$ を含む $H$ の正規直交系の全体とし、包含関係で順序を入れる。$S\in\mathcal{P}$ なので $\mathcal{P}$ は空でない。$\mathcal{C}\subset\mathcal{P}$ を空でない鎖とし、$B_0:=\bigcup\mathcal{C}$ とおく。$b,b'\in B_0$ が相異なるとき、$b\in C$、$b'\in C'$($C,C'\in\mathcal{C}$)とすると、$\mathcal{C}$ は鎖なので $C\subset C'$ または $C'\subset C$ であり、$b,b'$ は一つの正規直交系に属するから $\langle b,b'\rangle=0$ である。各元のノルムは $1$ なので $B_0\in\mathcal{P}$ であり、これは $\mathcal{C}$ の上界である。空の鎖は $S$ を上界にもつ。Zornの補題 により $\mathcal{P}$ は極大元 $B$ をもつ。
$B$ が完全でないとすると、$0$ でない $x\in B^\perp$ がある。$B\cup\{x/\|x\|\}$ は $S$ を含む正規直交系で、$B$ より真に大きく、極大性に反する。よって $B$ は正規直交基底である。$S=\emptyset$ とすれば後半を得る。$\square$

$H$ が 可分空間 なら、Zorn の補題を使わずに、稠密な列に Gram–Schmidt の直交化を施して有限または可算の正規直交基底が得られる(Hilbert空間 の注意「完全正規直交系の存在」、Bre11 Theorem 5.11、pp. 143–144)。一般の場合の存在と、極大な正規直交系が基底であることは Axl20 8.74・8.75(p. 249)にもある。

主定理:正規直交基底の濃度は一つに決まる

正規直交基底の濃度

$B$ と $B'$ を $H$ の正規直交基底とすると、$|B|=|B'|$ である。さらに、$B$ が有限なら $H$ は有限次元で、$|B|$ は線形代数の意味の次元 $\dim H$ に等しい。

有限の場合は次元、無限の場合は可算個の係数

正規直交系は線形独立である。実際、$\sum_{k=1}^n c_kb_k=0$($b_k$ は相異なる元)と $b_j$ の内積をとると $c_j=0$ である。
$B$ が有限の場合:$B$ の線形結合の全体 $L$ は有限次元の部分空間なので閉であり(Hilbert直和 の命題「直交する閉部分空間の有限和」を直線 $Fb$($b\in B$)たちに使えばよい)、$B$ の完全性から $H$ で稠密である。よって $H=L$ であり、$B$ は線形独立だから $L$ の基底で、$\dim H=|B|$ である。$B'$ も線形独立なので $|B'|\le\dim H$ であり、$B'$ は有限である。同じ議論を $B'$ に使えば $\dim H=|B'|$ となり、$|B|=|B'|$ を得る。$B'$ が有限の場合も同様である。
$B$ と $B'$ がともに無限の場合:$b\in B$ について
$$ N(b):=\{b'\in B'\mid\langle b,b'\rangle\ne0\} $$
とおく。Besselの不等式 の定理「Besselの不等式」の 2 を $x=b$ と正規直交系 $B'$ に使うと、$N(b)$ は高々可算である。一方、どの $b'\in B'$ も $0$ でないので、$B$ の完全性から $b'$ はある $b\in B$ と直交しない。すなわち $B'=\bigcup_{b\in B}N(b)$ である。各 $N(b)$ から $\mathbb{N}$ への単射を一つずつ選べば、$b'\in B'$ に「$b'\in N(b)$ となる $b$ を一つ選び、その $b$ と $N(b)$ の中での番号」の組を対応させる写像 $B'\to B\times\mathbb{N}$ は単射である。よって
$$ |B'|\le|B|\cdot\aleph_0=|B| $$
であり、最後の等号は $|B|$ が無限であることによる(濃度 の命題「無限基数の和と積」)。$B$ と $B'$ の役割を入れ替えれば $|B|\le|B'|$ であり、濃度 の定理「Cantor–Bernstein の定理:単射の往復から全単射」により $|B|=|B'|$ である。$\square$

一方が有限なら他方も有限なので、上の 2 つの場合で尽くされている。有限次元では Hilbert 次元は線形代数の次元と一致するので、Hilbert 次元が新しい情報をもつのは無限次元の場合である。無限次元では、正規直交基底は線形代数の意味の基底(Hamel 基底)ではない。実際、無限次元の Banach 空間の Hamel 基底は非可算である(Hamel基底 の定理「Banach 空間の Hamel 基底は非可算」)が、$\ell^2$ の Hilbert 次元は $\aleph_0$ である(ex-hdim-examples)。

Hilbert 次元による分類

$H_1,H_2$ を $F$ 上の Hilbert 空間とする。線形な全単射 $U\colon H_1\to H_2$ で、すべての $x,y$ について $\langle Ux,Uy\rangle=\langle x,y\rangle$ をみたすものを ユニタリ同型 という。このとき $U^{-1}$ も内積を保つ。

Hilbert次元による分類
  1. $(e_i)_{i\in I}$ が $H$ の正規直交基底なら、$Ux:=(\langle x,e_i\rangle)_{i\in I}$ は $H$ から $\ell^2(I)$ へのユニタリ同型である。
  2. 任意の集合 $I$ について、$\ell^2(I)$ の Hilbert 次元は $|I|$ である。
  3. $F$ 上の Hilbert 空間 $H_1,H_2$ がユニタリ同型であるための必要十分条件は、$\dim_{\mathrm H}H_1=\dim_{\mathrm H}H_2$ である。
正規直交基底はユニタリ同型で正規直交基底に移る

1:$H=\widehat{\bigoplus}_iFe_i$ であり、Hilbert直和 の命題「族の Hilbert 直和は Hilbert 空間である」の 3 から、$x\mapsto(P_ix)_{i\in I}=(\langle x,e_i\rangle e_i)_{i\in I}$ は $H$ から族 $(Fe_i)_{i\in I}$ の Hilbert 直和へのユニタリ同型である。$Fe_i$ を $c\mapsto ce_i$ で $F$ と同一視すれば、これは $U$ にほかならない。
2:$\delta_j\in\ell^2(I)$ を、第 $j$ 成分だけが $1$ の族とする。$\{\delta_j\}_{j\in I}$ は正規直交系であり、$x\in\ell^2(I)$ がすべての $\delta_j$ と直交すれば $x_j=\langle x,\delta_j\rangle=0$ なので $x=0$ である。よってこれは $|I|$ 個の元からなる正規直交基底である。
3:$U\colon H_1\to H_2$ をユニタリ同型、$B$ を $H_1$ の正規直交基底とする。$U(B)$ は正規直交系であり、$y\in H_2$ が $U(B)$ と直交すれば $U^{-1}y$ は $B$ と直交するので、$U^{-1}y=0$、$y=0$ である。$U$ は単射なので、$U(B)$ は $|B|$ 個の元からなる $H_2$ の正規直交基底であり、thm-hdim-invariance から次元は等しい。逆に、$H_k$ の正規直交基底 $(e^{(k)}_i)_{i\in I_k}$($k=1,2$)で $|I_1|=|I_2|$ なら、全単射 $\sigma\colon I_1\to I_2$ がとれ、$(a_i)_{i\in I_2}\mapsto(a_{\sigma(i)})_{i\in I_1}$ は $\ell^2(I_2)$ から $\ell^2(I_1)$ へのユニタリ同型である。1 のユニタリ同型と合成すれば、$H_1$ と $H_2$ はユニタリ同型である。$\square$

ユニタリ同型 $U$ の下で、$H$ の元 $x$ は係数の族 $(\langle x,e_i\rangle)$ に、内積は係数どうしの内積 $\sum_i\langle x,e_i\rangle\overline{\langle y,e_i\rangle}$ に移る。$I=\{1,2,\dots\}$ の場合は Bre11 Corollary 5.10(p. 143)であり、$\ell^2(I)$ の定義と標準的な正規直交基底は Axl20 Example 8.51(p. 237)にある。

可分性との関係

Hilbert次元と稠密部分集合の濃度

$H$ を無限次元の Hilbert 空間とし、$\kappa:=\dim_{\mathrm H}H$ とおく。

  1. $H$ の稠密な部分集合の濃度は $\kappa$ 以上である。
  2. 濃度 $\kappa$ の稠密な部分集合が存在する。
    とくに、$H$ が可分であることと $\dim_{\mathrm H}H=\aleph_0$ であることは同値であり、無限次元の可分な Hilbert 空間はすべて $\ell^2$ とユニタリ同型である。
基底の元は互いに $\sqrt2$ だけ離れている

$B$ を正規直交基底とする。thm-hdim-invariance により $B$ は無限集合で、$|B|=\kappa$ である。
1:相異なる $b,b'\in B$ について $\|b-b'\|^2=\|b\|^2+\|b'\|^2=2$ である。$D$ を稠密な部分集合とし、各 $b\in B$ について $\|b-d_b\|<\frac{\sqrt2}2$ となる $d_b\in D$ を一つ選ぶ。$d_b=d_{b'}$ なら $\|b-b'\|\le\|b-d_b\|+\|d_{b'}-b'\|<\sqrt2$ なので $b=b'$ である。よって $b\mapsto d_b$ は単射で、$|D|\ge\kappa$ である。
2:$F_0$ を $F=\mathbb{R}$ なら $\mathbb{Q}$、$F=\mathbb{C}$ なら $\mathbb{Q}+i\mathbb{Q}$ とし、$D_0$ を $F_0$ の係数による $B$ の有限線形結合の全体とする。$B$ の有限線形結合 $\sum_{k=1}^nc_kb_k$ と $\varepsilon>0$ について、$|c_k-c'_k|<\varepsilon/n$ となる $c'_k\in F_0$ をとれば $\|\sum_k(c_k-c'_k)b_k\|<\varepsilon$ なので、$D_0$ は $B$ の有限線形結合の全体の中で稠密であり、したがって $H$ で稠密である。$D_0$ の元は、ある $n\ge1$ について $(F_0\times B)^n$ の元から作られるので、
$$ |D_0|\le\sum_{n\ge1}(\aleph_0\cdot\kappa)^n=\sum_{n\ge1}\kappa=\aleph_0\cdot\kappa=\kappa $$
である(濃度 の定理「無限基数の平方」と命題「無限基数の和と積」を使った)。1 から $|D_0|\ge\kappa$ なので $|D_0|=\kappa$ である。
最後の主張:可分なら 1 から $\kappa\le\aleph_0$ であり、$\kappa$ は無限なので $\kappa=\aleph_0$ である。逆に $\kappa=\aleph_0$ なら 2 から可分である。このとき thm-hdim-classification から $H$ は $\ell^2(\{1,2,\dots\})=\ell^2$ とユニタリ同型である。$\square$

無限次元の可分な Hilbert 空間が $\ell^2$ と同型であることは Bre11 Remark 10(p. 144)で述べられている。そこでは同じ箇所で、多くの自然な作用素は基底で書くと扱いにくい形になるので、$L^2$ や Sobolev 空間などの具体的な空間を使い続ける意味があると注意している。無限次元という仮定は外せない。有限次元の Hilbert 空間 $F^d$ も可分だが、$\ell^2$ とは同型でない(ex-hdim-counterexamples)。

部分空間と直和

閉部分空間と Hilbert 直和の Hilbert 次元
  1. $E\subset H$ が閉部分空間なら、$\dim_{\mathrm H}E\le\dim_{\mathrm H}H$ である。
  2. Hilbert 空間の族 $(H_i)_{i\in I}$ について、$\dim_{\mathrm H}\widehat{\bigoplus}_{i\in I}H_i=\sum_{i\in I}\dim_{\mathrm H}H_i$(基数の和)である。
証明を開く

1:$E$ は Hilbert 空間なので正規直交基底 $S$ をもつ。$S$ は $H$ の正規直交系なので、thm-hdim-existence により $H$ の正規直交基底 $B\supset S$ に含まれ、$|S|\le|B|$ である。

2:$K:=\widehat{\bigoplus}_iH_i$ とし、$\iota_i\colon H_i\to K$ を Hilbert直和 の定義「族から作る Hilbert直和」の写像とする。各 $H_i$ の正規直交基底 $B_i$ をとり、$B:=\bigcup_i\iota_i(B_i)$ とおく。$\iota_i$ は内積を保つ単射で、$i\ne j$ なら $\iota_i(H_i)\perp\iota_j(H_j)$ なので、$B$ は正規直交系であり、和集合は互いに素で $|B|=\sum_i|B_i|$ である。$x=(x_i)\in K$ が $B$ と直交すれば、各 $i$ と $b\in B_i$ について $\langle x_i,b\rangle=\langle x,\iota_i(b)\rangle=0$ なので、$B_i$ の完全性から $x_i=0$ であり、$x=0$ である。よって $B$ は $K$ の正規直交基底である。$\square$

1 で、真の閉部分空間でも Hilbert 次元は等しくなりうる。たとえば $\ell^2$ の偶数番目の座標だけをもつ数列の部分空間は、真の閉部分空間だが Hilbert 次元は $\aleph_0$ である。有限次元の場合と違い、次元の比較だけでは部分空間が全体と一致するかどうかは判定できない。

例

Hilbert 次元の例
  1. $F^n$ に標準内積を入れた空間の Hilbert 次元は $n$ である(thm-hdim-invariance の後半)。
  2. $\ell^2$ の Hilbert 次元は $\aleph_0$ である(thm-hdim-classification の 2 で $I=\{1,2,\dots\}$)。
  3. $\Omega\subset\mathbb{R}^N$ を空でない開集合とすると、$L^2(\Omega)$ の Hilbert 次元は $\aleph_0$ であり、$L^2(\Omega)$ は $\ell^2$ とユニタリ同型である。実際、$L^2(\Omega)$ は可分であり(Bre11 Theorem 4.13 とその直後の注意、pp. 98–99)、$\Omega$ の中の互いに交わらない閉球 $\overline{B}_1,\overline{B}_2,\dots$ の特性関数は互いに直交する $0$ でない元なので、無限次元である。thm-hdim-density からわかる。周期関数の場合は、$e^{int}$($n\in\mathbb{Z}$)が $L^2$ の可算な正規直交基底を具体的に与える(Hilbert空間 の例「完全正規直交系の例」)。
  4. $\ell^2(\mathbb{R})$(実数で添字付けた 2 乗総和可能な族の空間)の Hilbert 次元は連続体濃度 $2^{\aleph_0}$ である。これは非可算なので、$\ell^2(\mathbb{R})$ は可分でなく、$\ell^2$ とは同型でない。
係数体を取り替えると Hilbert 次元は変わる

複素 Hilbert 空間 $H$ は、内積の実部 $\operatorname{Re}\langle x,y\rangle$ を内積として実 Hilbert 空間ともみなせる(ノルムは同じである)。$\mathbb{C}^n$ の標準基底 $e_1,\dots,e_n$ について、$e_1,ie_1,\dots,e_n,ie_n$ はこの実内積に関する正規直交基底なので、$\mathbb{C}^n$ の Hilbert 次元は複素数体上で $n$、実数体上で $2n$ である。Hilbert 次元を比べるときは、係数体をそろえる必要がある。

正規直交基底であることの確かめ

$\operatorname{Re}\langle e_j,ie_j\rangle=\operatorname{Re}(-i)=0$ であり、$j\ne k$ なら $e_j,ie_j$ と $e_k,ie_k$ の内積はすべて $0$ である。各元のノルムは $1$ である。$x=(x_1,\dots,x_n)$ がこれらすべてと実内積で直交すれば、$\operatorname{Re}x_j=\operatorname{Re}\langle x,e_j\rangle=0$、$\operatorname{Im}x_j=\operatorname{Re}\langle x,ie_j\rangle$($\langle x,ie_j\rangle=-i\,x_j$ の実部は $\operatorname{Im}x_j$)$=0$ なので $x=0$ である。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
空間の完備性有限個を除いて $0$ である数列の空間 $c_{00}$ と $e_1,e_2,\dots$可算な完全正規直交系をもてば $\ell^2$ とユニタリ同型
無限次元$F^d$($d$ は有限)可分なら $\ell^2$ とユニタリ同型
可分性$\ell^2(\mathbb{R})$無限次元なら $\ell^2$ とユニタリ同型
表の反例の確かめ
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1 行目:$c_{00}$ は $\ell^2$ の内積をもつ内積空間で、$e_n$ たちは正規直交系である。$x\in c_{00}$ がすべての $e_n$ と直交すれば $x=0$ なので、$c_{00}$ の中で完全である。$c_{00}$ は完備でない(Hilbert空間 の例「反例:完備でない内積空間 $c_{00}$」)ので、完備な $\ell^2$ とは内積を保つ全単射で移り合わない(そのような全単射は Cauchy 列と収束列を互いに移す)。

2 行目:$F^d$ は有限次元なので可分である。$\ell^2$ は無限次元なので、線形な全単射 $F^d\to\ell^2$ は存在しない。

3 行目:$\ell^2(\mathbb{R})$ は無限次元で、ex-hdim-examples の 4 から可分でない。thm-hdim-classification の 3 から $\ell^2$(Hilbert 次元 $\aleph_0$)とはユニタリ同型でない。

関連項目

参考文献

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