ホモトピー

同義語:homotopy

概要

ホモトピー(homotopy)とは、二つの連続写像 $f,g\colon X\to Y$ に対し、$H(x,0)=f(x)$、$H(x,1)=g(x)$ を満たす連続写像 $H\colon X\times[0,1]\to Y$ のことであり、$f$ を時刻 $t$ に沿って連続的に変形して $g$ に移すものである。ホモトピーが存在する写像はホモトピックであるといい、この関係は同値関係で、同値類の集合 $[X,Y]$ をホモトピー集合という。互いにホモトピー逆写像をもつ写像がホモトピー同値写像であり、位相空間を同相より粗い基準で分類する。基本群・ホモトピー群・ホモロジー・コホモロジーはいずれもホモトピー不変量であり、ホモトピーの非存在や空間の非同値を代数的に判定する道具になる。部分集合や基点を固定した相対ホモトピー、空間対の間のホモトピーもここで定義される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 連続写像, 直積位相, 同値関係

定義

以下、$[0,1]$ は実数の閉区間に通常の位相を入れたものとし、$X\times[0,1]$ には直積位相を入れる。

ホモトピーとホモトピック

$X,Y$ を位相空間、$f,g\colon X\to Y$ を連続写像とする。連続写像
$$ H\colon X\times[0,1]\to Y,\qquad H(x,0)=f(x),\quad H(x,1)=g(x)\qquad(x\in X) $$
を $f$ から $g$ へのホモトピー(homotopy)という。$f$ から $g$ へのホモトピーが存在するとき、$f$ と $g$ はホモトピック(homotopic)であるといい、$f\simeq g$ と書く。ホモトピー $H$ を明示したいときは $H\colon f\simeq g$ と書く。各 $t\in[0,1]$ に対し $H_t\colon X\to Y$、$H_t(x):=H(x,t)$ とおくと、$H_t$ は連続写像であり、$H_0=f$、$H_1=g$ である。

$H_t$ は「時刻 $t$ における途中の写像」であり、ホモトピーとは連続写像の 1 径数族 $(H_t)_{t\in[0,1]}$ であって、$(x,t)\mapsto H_t(x)$ が同時に連続なもののことである。$X$ から $Y$ への連続写像全体の集合を $C(X,Y)$ と書くと、$\simeq$ は $C(X,Y)$ 上の同値関係である(homotopy-prop-equivalence-relation)。

ホモトピー集合

連続写像 $f\colon X\to Y$ の $\simeq$ による同値類を $f$ のホモトピー類(homotopy class)といい $[f]$ と書く。ホモトピー類全体の集合
$$ [X,Y]:=C(X,Y)/{\simeq} $$
を $X$ から $Y$ へのホモトピー集合という。定値写像とホモトピックな連続写像を零ホモトピック(null-homotopic)という。

部分集合を固定したホモトピー

$A\subset X$ を部分集合とし、$f,g\colon X\to Y$ が $A$ 上で一致する($f(a)=g(a)$、$a\in A$)とする。$f$ から $g$ へのホモトピー $H$ で、さらに
$$ H(a,t)=f(a)=g(a)\qquad(a\in A,\ t\in[0,1]) $$
を満たすものを $A$ を固定したホモトピー(homotopy relative to $A$、$A$ に関する相対ホモトピー)といい、その存在を $f\simeq g\ \mathrm{rel}\ A$ と書く。$A=\emptyset$ のときは通常のホモトピーに戻る。区別を強調するとき、何も固定しない通常のホモトピーをフリーホモトピー(自由ホモトピー)ということがある。

$A$ を固定したホモトピーの最も重要な場合は、道 $\gamma\colon[0,1]\to X$ の間の端点 $\{0,1\}$ を固定したホモトピー(道のホモトピー)であり、基本群の定義に用いる。基点付き空間(点付き空間)$(X,x_0)$、$(Y,y_0)$ の間の基点を保つ連続写像 $f,g$($f(x_0)=g(x_0)=y_0$)については、$\{x_0\}$ を固定したホモトピーを基点付きホモトピーといい、その類の集合を $[(X,x_0),(Y,y_0)]$ または $[X,Y]_*$ と書く。ホモトピー群 $\pi_n(X,x_0)=[(S^n,s_0),(X,x_0)]$ はこの形の集合である。

空間対の写像とホモトピー

位相空間 $X$ とその部分空間 $A\subset X$ の組 $(X,A)$ を空間対(pair of spaces)という。空間対の間の連続写像 $f\colon(X,A)\to(Y,B)$ とは、連続写像 $f\colon X\to Y$ で $f(A)\subset B$ を満たすもののことである。二つの空間対の写像 $f,g\colon(X,A)\to(Y,B)$ が空間対としてホモトピックであるとは、$f$ から $g$ へのホモトピー $H\colon X\times[0,1]\to Y$ で、すべての $t\in[0,1]$ について $H_t(A)\subset B$ を満たすものが存在することをいう。この関係も同値関係であり(証明は homotopy-prop-equivalence-relation と同じ)、類の集合を $[(X,A),(Y,B)]$ と書く。

$A=\{x_0\}$、$B=\{y_0\}$ のとき、空間対の写像 $(X,\{x_0\})\to(Y,\{y_0\})$ は基点を保つ写像 $(X,x_0)\to(Y,y_0)$ にほかならず、空間対としてのホモトピーは $H_t(x_0)\in\{y_0\}$、すなわち基点付きホモトピーにほかならない。三つ組 $(X,A,A')$($A'\subset A\subset X$)の間の写像とホモトピーも、$f(A)\subset B$、$f(A')\subset B'$ の両方を保つ形で同様に定義される。

ホモトピー同値

連続写像 $f\colon X\to Y$ がホモトピー同値写像(homotopy equivalence)であるとは、連続写像 $g\colon Y\to X$ で
$$ g\circ f\simeq\operatorname{id}_X,\qquad f\circ g\simeq\operatorname{id}_Y $$
を満たすものが存在することをいう。この $g$ を $f$ のホモトピー逆写像という。ホモトピー同値写像 $X\to Y$ が存在するとき $X$ と $Y$ はホモトピー同値(homotopy equivalent)である、または同じホモトピー型(homotopy type)をもつといい、$X\simeq Y$ と書く。

直感

ホモトピーは「連続写像 $f$ を、時刻 $t=0$ から $t=1$ にかけて連続的に変形して $g$ に移す」という直感を厳密にしたものである。同相写像で移り合うかどうかよりずっと粗い基準で写像や空間を分類するので、区別できる情報は減るが、その代わりに基本群・ホモトピー群・ホモロジー群(特異ホモロジー)・コホモロジーのような計算可能な不変量がすべてこの粗い分類だけに依存する(homotopy-prop-category)。二つの写像がホモトピックであることを示すには具体的なホモトピーを一つ構成すればよいが、ホモトピックでないことを示すにはすべてのホモトピーの非存在を言わなければならず、そこでホモトピー不変量が本領を発揮する(homotopy-rem-not-homotopic)。
注意すべきは、ホモトピーが写像の変形であって、途中の写像 $H_t$ が単射や同相写像であることを何も要求しない点である。各時刻の $H_t$ が埋め込みであることまで要求した変形がイソトピーであり、結び目の分類のように埋め込み方を問題にする文脈では、単にホモトピックであるだけでは何も言えない。

例

直線ホモトピー

$Y\subset\mathbb{R}^n$ を凸集合とし、$f,g\colon X\to Y$ を任意の連続写像とする。
$$ H(x,t):=(1-t)f(x)+t\,g(x) $$
は $\mathbb{R}^n$ の加法とスカラー倍の連続性から連続であり、$Y$ の凸性から $Y$ に値をとり、$H_0=f$、$H_1=g$ である。よって凸集合への任意の二つの連続写像はホモトピックであり、$[X,Y]$ は一点集合である。この $H$ を直線ホモトピーという。とくに $X=Y=[0,1]$、$f(x)=x$、$g(x)=0$ のとき $H(x,t)=(1-t)x$ であり、$[0,1]$ の恒等写像は零ホモトピックである。同様に $\mathbb{R}^n$ や閉円板 $D^n$ の恒等写像も零ホモトピックであり、これらは可縮(可縮空間)である。

円周の回転

$S^1:=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x^2+y^2=1\}$ を単位円周とし、$f(x,y):=(x,y)$(恒等写像)、$h(x,y):=(-x,-y)$(対蹠写像)とする。$f$ と $h$ はホモトピックである。実際、
$$ H((x,y),t):=(x\cos\pi t-y\sin\pi t,\ x\sin\pi t+y\cos\pi t) $$
は角 $\pi t$ の回転であり、$S^1$ を $S^1$ に写す連続写像で、$H_0=f$、$H_1=h$ である。同じ式で、任意の回転が恒等写像とホモトピックであることも分かる。

全射でない球面への写像

$n\ge0$ とし、$S^n=\{y\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\|y\|=1\}$ を $n$ 次元球面とする。連続写像 $f\colon X\to S^n$ が全射でなければ、$f$ は零ホモトピックである。実際、$p\in S^n\setminus f(X)$ をとり
$$ H(x,t):=\frac{(1-t)f(x)-tp}{\|(1-t)f(x)-tp\|} $$
とおく。分母が $0$ になるのは $(1-t)f(x)=tp$ のときであるが、両辺のノルムをとると $1-t=t$、すなわち $t=1/2$ となり、このとき $f(x)=p$ となって $p$ の取り方に反する。よって $H$ は $X\times[0,1]$ 上で定義された連続写像で $S^n$ に値をとり、$H_0=f$、$H_1$ は値 $-p$ の定値写像である。この事実は、球面への写像のホモトピー類を調べるとき、まず写像を全射でないものに取り替える(あるいは取り替えられないことを示す)という標準的な議論の出発点である。

可縮空間との間の写像

$X$ が可縮ならば、任意の位相空間 $Y$ について $[Y,X]$ は一点集合であり、また $X$ から任意の空間への連続写像は零ホモトピックである。これは可縮空間の記事の命題「ホモトピー類による特徴づけ」が証明付きで与える。逆向き、すなわち可縮な $X$ から $Y$ への二つの写像が互いにホモトピックであるとは限らないことも、同記事の注意「向きを変えたときの注意」にある($Y$ が 2 点離散空間のとき、二つの定値写像は $Y$ が弧状連結でないのでホモトピックでない)。

反例:ホモトピックでない写像

恒等写像 $f=\operatorname{id}_{S^1}$ と鏡映 $g(x,y):=(x,-y)$ はともに $S^1$ の同相写像(しかも等長写像)であるが、ホモトピックでない。満たす性質は「$S^1$ から $S^1$ への同相写像であること」、満たさない性質は「互いにホモトピックであること」であり、破れる含意は「同じ空間の間の二つの同相写像は互いにホモトピック」である。証明には不変量を使う。基本群の記事の定理「円周の基本群」により $\pi_1(S^1,(1,0))\cong\mathbb{Z}$ であり、同型は回転数 $[\gamma]\mapsto\deg\gamma$ で与えられる。ループ $\omega(s)=(\cos2\pi s,\sin2\pi s)$ について $f\circ\omega=\omega$ は回転数 $1$、$g\circ\omega=\bar\omega$ は回転数 $-1$ なので $f_*\ne g_*$ である。他方、基点付きホモトピックな写像は同じ誘導準同型をもつので(基本群の記事の命題「ホモトピー不変性」。$f,g$ はともに基点 $(1,0)$ を止める)、$f\simeq g\ \mathrm{rel}\ \{(1,0)\}$ は成り立たない。フリーホモトピー $F\colon f\simeq g$ があったとしても、同記事の同じ命題により $g_*$ は $f_*$ と基点の軌跡による同型の合成になるが、$\pi_1(S^1)$ はアーベル群なのでその同型は恒等写像であり、やはり $f_*=g_*$ となって矛盾する。よって $f\not\simeq g$ である。同じ理由で $\operatorname{id}_{S^1}$ は零ホモトピックでなく、$S^1$ は可縮でない。homotopy-ex-rotation の $h$ が恒等写像とホモトピックであるのと対照的に、$g$ は「向きを逆にする」写像であり、この差をホモトピー不変量が検出している。

反例:フリーホモトピックだが基点付きホモトピックでない写像

基点付き写像が基点を止めずにホモトピックでも、基点付きホモトピックとは限らない。$Y=S^1\vee S^1$(8 の字、ウェッジ和)とし、基点 $y_0$ を貼り合わせ点とする。Van Kampenの定理の記事の例「円周のウェッジ和」により $\pi_1(Y,y_0)$ は $a,b$ を生成元とする自由群 $F_2$ である。ループ $b$ と $aba^{-1}$ を $S^1\to Y$ の基点付き写像とみなす。基本群の記事の命題「ホモトピー不変性」の後半により、基点 $y_0$ のループ $\gamma$ とその共役 $\bar C\cdot\gamma\cdot C$($C$ は $y_0$ のループ)は、基点を $C$ に沿って動かすフリーホモトピーで結ばれるので、$b$ と $aba^{-1}$ はフリーホモトピックである。しかし $F_2$ において $b\ne aba^{-1}$ なので、基点付きホモトピックではない。満たす性質は「フリーホモトピックであること」、満たさない性質は「基点付きホモトピックであること」であり、破れる含意は「フリーホモトピック $\Rightarrow$ 基点付きホモトピック」である。一般に、$X$ が弧状連結なら $[S^1,X]$ は $\pi_1(X,x_0)$ の共役類の集合と一対一に対応し、基点付きの集合 $[S^1,X]_*=\pi_1(X,x_0)$ から共役類への射影がこの対応を与える(Hat02 §1.1 Exercise 6)。

性質

ホモトピー関係は同値関係

$X,Y$ を位相空間、$A\subset X$ とする。$A$ 上で一致する連続写像 $X\to Y$ の全体において、「$A$ を固定してホモトピックである」という関係は同値関係である。とくに($A=\emptyset$ として)$C(X,Y)$ 上の $\simeq$ は同値関係である。

反射律:$H(x,t):=f(x)$ は $X\times[0,1]\to X\to Y$(射影と $f$ の合成)なので連続であり、$H_0=H_1=f$、$A$ 上では $t$ によらず $f(a)$ をとる。
対称律:$H\colon f\simeq g\ \mathrm{rel}\ A$ に対し $H'(x,t):=H(x,1-t)$ とおく。$(x,t)\mapsto(x,1-t)$ は $X\times[0,1]$ の同相写像なので $H'$ は連続であり、$H'_0=H_1=g$、$H'_1=H_0=f$、$a\in A$ では $H'(a,t)=H(a,1-t)=f(a)$ である。
推移律:$H\colon f\simeq g\ \mathrm{rel}\ A$、$G\colon g\simeq h\ \mathrm{rel}\ A$ に対し
$$ K(x,t):=\begin{cases}H(x,2t)&(0\le t\le1/2)\\ G(x,2t-1)&(1/2\le t\le1)\end{cases} $$
とおく。$X\times[0,1/2]$ と $X\times[1/2,1]$ は $X\times[0,1]$ の閉集合で、その和は全体であり、共通部分 $X\times\{1/2\}$ の上で二つの式は $H(x,1)=g(x)=G(x,0)$ と一致する。よって貼り合わせの補題(Mun00 §18 Theorem 18.3)により $K$ は連続である。$K_0=H_0=f$、$K_1=G_1=h$ であり、$a\in A$ では両方の式が $f(a)$ をとる。$\square$

合成との整合性

$f_1,f_2\colon X\to Y$、$g_1,g_2\colon Y\to Z$ を連続写像とする。$f_1\simeq f_2$ かつ $g_1\simeq g_2$ ならば $g_1\circ f_1\simeq g_2\circ f_2$ である。さらに $f_1\simeq f_2\ \mathrm{rel}\ A$ ならば $g_1\circ f_1\simeq g_1\circ f_2\ \mathrm{rel}\ A$ であり、$g_1\simeq g_2\ \mathrm{rel}\ B$($B\subset Y$)ならば $g_1\circ f_1\simeq g_2\circ f_1\ \mathrm{rel}\ f_1^{-1}(B)$ である。

$H\colon f_1\simeq f_2$ とすると、$g_1\circ H\colon X\times[0,1]\to Z$ は連続写像の合成として連続で、$(g_1\circ H)_0=g_1\circ f_1$、$(g_1\circ H)_1=g_1\circ f_2$ である。$H$ が $A$ を固定すれば $g_1\circ H$ も $A$ を固定する。次に $G\colon g_1\simeq g_2$ とすると、$G\circ(f_1\times\operatorname{id}_{[0,1]})\colon(x,t)\mapsto G(f_1(x),t)$ は連続で、$t=0,1$ でそれぞれ $g_1\circ f_1$、$g_2\circ f_1$ をとる。$G$ が $B$ を固定すれば、$f_1(x)\in B$ となる $x$、すなわち $x\in f_1^{-1}(B)$ でこのホモトピーは $t$ によらない。最後に $g_1\circ f_1\simeq g_1\circ f_2\simeq g_2\circ f_2$ を homotopy-prop-equivalence-relation の推移律でつなぐ。$\square$

ホモトピー同値の基本性質
  1. 同相写像はホモトピー同値写像である。とくに同相な空間はホモトピー同値である。
  2. ホモトピー同値写像の合成はホモトピー同値写像である。
  3. 「ホモトピー同値である」という位相空間の間の関係は反射的・対称的・推移的である。
  4. $f\simeq f'$ で $f$ がホモトピー同値写像ならば $f'$ もホモトピー同値写像である。
  1. $f$ が同相写像なら $g:=f^{-1}$ について $g\circ f=\operatorname{id}_X$、$f\circ g=\operatorname{id}_Y$ が等号で成り立ち、homotopy-prop-equivalence-relation の反射律によりホモトピックでもある。
  2. $f\colon X\to Y$、$f'\colon Y\to Z$ をホモトピー同値写像、$g$、$g'$ をそれぞれのホモトピー逆写像とする。homotopy-prop-composition を繰り返し使うと
    $$ (g\circ g')\circ(f'\circ f)=g\circ(g'\circ f')\circ f\simeq g\circ\operatorname{id}_Y\circ f=g\circ f\simeq\operatorname{id}_X $$
    であり、同様に $(f'\circ f)\circ(g\circ g')\simeq\operatorname{id}_Z$ である。よって $g\circ g'$ が $f'\circ f$ のホモトピー逆写像である。
  3. 反射性は (1) を $\operatorname{id}_X$ に適用すればよい。対称性は定義が $f$ と $g$ について対称であることによる。推移性は (2) による。
  4. $g$ を $f$ のホモトピー逆写像とすると、homotopy-prop-composition により $g\circ f'\simeq g\circ f\simeq\operatorname{id}_X$、$f'\circ g\simeq f\circ g\simeq\operatorname{id}_Y$ である。$\square$
ホモトピーの圏とホモトピー不変量
  1. 位相空間を対象とし、$X$ から $Y$ への射をホモトピー集合 $[X,Y]$ の元とし、合成を $[g]\circ[f]:=[g\circ f]$ で定めると、これは圏をなす。この圏を位相空間のホモトピー圏(ホモトピー圏(位相空間))といい、$\mathrm{hTop}$ と書く。連続写像 $f$ にその類 $[f]$ を対応させる対応は、位相空間の圏 $\mathrm{Top}$ から $\mathrm{hTop}$ への関手である。
  2. 連続写像 $f\colon X\to Y$ がホモトピー同値写像であることと、$[f]$ が $\mathrm{hTop}$ の同型射であることは同値である。
  3. $F$ を $\mathrm{Top}$ から任意の圏 $\mathcal{C}$ への関手で、$f\simeq g$ ならば $F(f)=F(g)$ を満たすものとする(このような $F$ の値をホモトピー不変量という)。このとき $F$ は $\mathrm{hTop}$ からの関手を経由し、$f$ がホモトピー同値写像ならば $F(f)$ は $\mathcal{C}$ の同型射である。とくにホモトピー同値な空間で $F$ の値は同型である。
  1. 合成が代表元の取り方によらないことは homotopy-prop-composition そのものである。結合律 $([h]\circ[g])\circ[f]=[h\circ g\circ f]=[h]\circ([g]\circ[f])$ と、恒等射 $[\operatorname{id}_X]$ が単位であることは、写像の合成の結合律と恒等写像の性質から代表元の段階で成り立つ。$f\mapsto[f]$ が合成と恒等射を保つことは合成の定義そのものである。
  2. $g$ が $f$ のホモトピー逆写像であることは $[g]\circ[f]=[\operatorname{id}_X]$、$[f]\circ[g]=[\operatorname{id}_Y]$ と同値であり、これは $[g]$ が $[f]$ の逆射であることにほかならない。
  3. $F(f)$ が $[f]$ にしかよらないので、$[f]\mapsto F(f)$ は $\mathrm{hTop}$ 上で矛盾なく定義され、$F$ が関手であることから合成と恒等射を保つ。$g$ を $f$ のホモトピー逆写像とすると $F(g)\circ F(f)=F(g\circ f)=F(\operatorname{id}_X)=\operatorname{id}_{F(X)}$、同様に $F(f)\circ F(g)=\operatorname{id}_{F(Y)}$ なので $F(f)$ は同型射である。$\square$
直積とホモトピー

$f_i,g_i\colon X_i\to Y_i$($i=1,2$)を連続写像とし、$Y_1\times Y_2$ に直積位相を入れる。$f_1\simeq g_1$ かつ $f_2\simeq g_2$ ならば $f_1\times f_2\simeq g_1\times g_2$ である。また、射影 $p_i\colon Y_1\times Y_2\to Y_i$ が誘導する写像
$$ [X,Y_1\times Y_2]\to[X,Y_1]\times[X,Y_2],\qquad[h]\mapsto([p_1\circ h],[p_2\circ h]) $$
は全単射である。

$H_i\colon f_i\simeq g_i$ に対し $H(x_1,x_2,t):=(H_1(x_1,t),H_2(x_2,t))$ とおく。各成分は連続写像と射影の合成なので連続であり、直積位相の普遍性により $H$ は連続で、$H_0=f_1\times f_2$、$H_1=g_1\times g_2$ である。
後半:写像が矛盾なく定義されることは homotopy-prop-composition による。全射性:$[h_1]\in[X,Y_1]$、$[h_2]\in[X,Y_2]$ に対し $h:=(h_1,h_2)\colon X\to Y_1\times Y_2$ は直積位相の普遍性により連続で、$p_i\circ h=h_i$ である。単射性:$p_1\circ h\simeq p_1\circ h'$ と $p_2\circ h\simeq p_2\circ h'$ を与えるホモトピーを $K_1,K_2$ とし、$K(x,t):=(K_1(x,t),K_2(x,t))$ とおくと、$K$ は連続で $K_0=(p_1\circ h,p_2\circ h)=h$、$K_1=h'$ である。$\square$

定値写像の間のホモトピーと弧状連結成分

$Y$ を位相空間、$y_0,y_1\in Y$ とし、$c_{y_0},c_{y_1}\colon X\to Y$ を定値写像とする($X\ne\emptyset$)。$c_{y_0}\simeq c_{y_1}$ であることと、$y_0$ と $y_1$ が $Y$ の同じ弧状連結成分(弧状連結空間)に属することは同値である。したがって $X$ が可縮なら $[X,Y]$ は $Y$ の弧状連結成分の集合 $\pi_0(Y)$ と一対一に対応する。

$H\colon c_{y_0}\simeq c_{y_1}$ とすると、$x\in X$ を一つ固定して $\gamma(t):=H(x,t)$ とおけば $\gamma$ は $y_0$ から $y_1$ への道である。逆に道 $\gamma$ があれば $H(x,t):=\gamma(t)$ が求めるホモトピーである。後半:$X$ が可縮なら任意の $h\colon X\to Y$ はある定値写像 $c_{y}$ とホモトピックであり(homotopy-ex-contractible)、$[c_y]$ は $y$ の成分だけで決まる。よって $[h]\mapsto$($y$ の属する成分)は矛盾なく定義された全射であり、前半により単射である。$\square$

補足

ホモトピー不変量の例

homotopy-prop-category (3) の意味でのホモトピー不変量の代表例を挙げる。いずれも本記事の外で定義され、そのホモトピー不変性はそれぞれの記事または文献が扱う。

  • 弧状連結成分の集合 $\pi_0(X)$(弧状連結空間の記事の命題「弧状連結成分のホモトピー不変性」)。
  • 基本群 $\pi_1(X,x_0)$ とホモトピー群 $\pi_n(X,x_0)$:基点付き空間の圏から群の圏への関手であり、基点付きホモトピックな写像は同じ準同型を誘導する。基点を止めないホモトピー同値も同型を誘導するが、その証明には基点の移送が要る(ホモトピー群の記事の証明「基点を動かすホモトピー同値の場合」)。
  • ホモロジー群 $H_n(X)$(特異ホモロジー)はホモトピー圏からアーベル群の圏への関手、コホモロジー群 $H^n(X)$ は反変関手である(Hat02 Theorem 2.10、§3.1)。
    これらを使うと、「二つの写像がホモトピックでない」「二つの空間がホモトピー同値でない」という否定的な主張を、群の準同型や同型の非存在に帰着して証明できる(homotopy-rem-not-homotopic)。逆に、ホモトピー不変量がすべて一致しても空間がホモトピー同値とは限らず、CW複体の間ではすべてのホモトピー群の同型を誘導する写像がホモトピー同値写像になる(Whitehead の定理、Hat02 Theorem 4.5)。
ホモトピー集合の位相

$C(X,Y)$ にコンパクト開位相を入れた空間を $\mathrm{Map}(X,Y)$ と書く。$X$ が局所コンパクト空間かつHausdorff空間のとき、連続写像 $X\times[0,1]\to Y$ と連続写像 $[0,1]\to\mathrm{Map}(X,Y)$ は一対一に対応し、この対応のもとでホモトピーは $\mathrm{Map}(X,Y)$ の道にほかならない。この対応はコンパクト開位相の記事の定理「指数法則」($Z=[0,1]$ の場合)と、その系「ホモトピーと写像空間の道」が証明付きで与える(Hat02 Appendix の compact-open topology の節、Mun00 §46 も参照)。したがって $[X,Y]$ は $\mathrm{Map}(X,Y)$ の弧状連結成分の集合 $\pi_0(\mathrm{Map}(X,Y))$ と同一視され、$[X,Y]$ に商位相(商空間)を入れて位相空間として扱うことができる。

分野ごとの使われ方
  • 位相幾何学・代数的位相幾何学では、空間を同相よりも粗いホモトピー同値で分類し、ホモトピー不変量(homotopy-rem-invariants)で空間や写像を区別する。可縮空間・変位レトラクト・レトラクト・錐(位相)はホモトピーの言葉で定義される基本的な構成である。
  • 微分トポロジーでは、多様体の間の滑らかな写像に対し、ホモトピー $H$ にも滑らかさを課した滑らかなホモトピー(Mil97 §4)を用い、写像度や交叉数のような不変量が滑らかなホモトピーで不変であることを示す。
  • 結び目理論・低次元トポロジーでは、埋め込みの分類には各時刻の写像が埋め込みであるイソトピー、あるいは全空間の同相写像の族で動かすアンビエントイソトピーが必要であり、ホモトピーでは結び目の情報がすべて消えてしまう(任意の結び目 $S^1\to\mathbb{R}^3$ は $\mathbb{R}^3$ が凸なので零ホモトピック、homotopy-ex-straight-line)。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, Chapter 0(homotopy・homotopy equivalence)、§1.1 Exercise 6($[S^1,X]$ と共役類)、Theorem 2.10(ホモロジーのホモトピー不変性)、§3.1、Theorem 4.5(Whitehead の定理)、Appendix(compact-open topology)
[2]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §18 Theorem 18.3(貼り合わせの補題)、§46(コンパクト開位相と指数法則)、§51(ホモトピーと道のホモトピー)

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