Borsukの問題(Borsuk's problem)とは、直径 $d$ の図形を、直径が $d$ より小さい部分に分けるには何個あれば足りるかを問う問題である。平面の有限個の点(2 個以上)の集まりは、向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形に収まり(向きを $60^\circ$ 回すと符号が変わる量に中間値の定理を使う)、その正六角形を中心と 1 つおきの辺の中点を結ぶ線分で 3 つの五角形に切ると、各部分の直径は $\frac{\sqrt{3}}{2}d$ 以下になる。したがって 3 つに分ければ足りる。1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点、正五角形の頂点、円板は 2 つには分けられない。$n$ 次元の空間で $n+1$ 個に分けられるという Borsuk 予想には、次元が高いと反例がある。
前提知識: Jungの定理, 定幅図形, 中間値の定理(高校数学), ベクトルの内積, 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く
点の集まりの 直径 とは、2 点の距離の最大値のことだった(Jungの定理)。直径 $d$ の点の集まりを、いくつかの部分に分けて、どの部分も直径が $d$ より小さくなるようにしたい。何個に分ければよいだろうか。
左は正方形の 4 頂点を 2 つに分けると各部分の直径が 1 になる様子、右は正三角形の 3 頂点を 2 つに分けると同じ部分に入った 2 頂点の距離が直径のまま残る様子
正三角形では 3 つ要った。では、平面のどんな点の集まりでも 3 つに分ければ足りるだろうか。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 2 点の距離の最大 | 直径、直径を小さくする分け方 | Borsuk 数 |
| $x\cos\theta+y\sin\theta$ の最大・最小 | 支持線と幅 | 支持関数 |
| 中間値の定理 | 3 本の帯の中心線が 1 点で交わる向き | 連続関数の零点、位相的な方法 |
| 正六角形の対角線の長さ | 各部分の直径 $\dfrac{\sqrt3}2d$ | 被覆による評価 |
この記事では、平面の 有限個の点(2 個以上)の集まりを扱う。円板のような無限個の点からなる図形は ex-bor-disc と「大学数学で見る」で触れる。
平面の有限個の点(2 個以上)の集まり $S$ の直径を $d$ とする。$S$ の各点をちょうど 1 つの部分に入れて $S$ を $k$ 個の部分 $S_1,\dots,S_k$ に分けたとき、どの部分の直径も $d$ より小さいなら、この分け方を 直径を小さくする分け方 という。ただし、1 点だけの部分と空の部分の直径は $0$ とする。直径を小さくする分け方ができる最小の $k$ を、$S$ の Borsuk 数 とよぶことにする。
各点を 1 点ずつの部分にすれば直径はすべて $0$ なので、Borsuk 数は点の個数以下である。$S$ 全体の直径は $d$ なので、Borsuk 数は $2$ 以上である。ex-bor-start の正方形の 4 頂点の Borsuk 数は $2$、正三角形の 3 頂点の Borsuk 数は $3$ である。
分け方を探す道具として、定幅図形 の支持線と幅を、有限個の点の集まりについて使う。
角 $\theta$ に対して単位ベクトル $\vec u_\theta=(\cos\theta,\sin\theta)$ をとり、$S$ について
$$
h(\theta)=\max_{P\in S}\,\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}
$$
とおく($O$ は原点)。直線 $\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}=h(\theta)$ を向き $\theta$ の 支持線 という。$S$ はすべてこの直線の片側($\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}\le h(\theta)$ の側)にあり、直線の上に $S$ の点がある。向き $\theta$ と $\theta+180^\circ$ の支持線は平行で、その間隔 $w(\theta)=h(\theta)+h(\theta+180^\circ)$ を向き $\theta$ の 幅 という。2 本の支持線のちょうど真ん中の直線
$$
\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}=m(\theta),\qquad m(\theta)=\frac{h(\theta)-h(\theta+180^\circ)}2
$$
を、向き $\theta$ の 中心線 とよぶ。
$\vec u_{\theta+180^\circ}=-\vec u_\theta$ なので、$h(\theta+180^\circ)=\max_{P\in S}(-\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP})=-\min_{P\in S}\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}$ である。したがって幅は「$\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}$ の最大値 $-$ 最小値」で、中心線の値 $m(\theta)$ は「最大値と最小値の平均」である。
$S=\{A(0,0),\,B(6,0),\,C(2,4),\,D(3,2)\}$(Jungの定理 の例と同じ 4 点、直径 $d=AB=6$)。
(1) $\theta=0^\circ$、$\vec u=(1,0)$:$\vec u\cdot\overrightarrow{OP}$ は $P$ の $x$ 座標で、$A:0$、$B:6$、$C:2$、$D:3$。最大 $6$、最小 $0$ なので、$h(0^\circ)=6$、幅 $w(0^\circ)=6$、中心線は $x=m(0^\circ)=3$ である。
(2) $\theta=60^\circ$、$\vec u=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$:$A:0$、$B:3$、$C:1+2\sqrt3\approx4.46$、$D:\dfrac32+\sqrt3\approx3.23$。最大 $1+2\sqrt3$、最小 $0$ で、幅は $1+2\sqrt3\approx4.46$、$m(60^\circ)=\dfrac{1+2\sqrt3}2$ である。
(3) $\theta=120^\circ$、$\vec u=\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$:$A:0$、$B:-3$、$C:-1+2\sqrt3\approx2.46$、$D:-\dfrac32+\sqrt3\approx0.23$。最大 $2\sqrt3-1$、最小 $-3$ で、幅は $2\sqrt3+2\approx5.46$、$m(120^\circ)=\dfrac{(2\sqrt3-1)+(-3)}2=\sqrt3-2$ である。
どの向きでも幅は直径 $6$ 以下になっている。
4 点 A, B, C, D について、向き 60 度の 2 本の支持線(実線)と中心線(破線)を描いたもの。2 本の支持線の間隔が幅で、4 点はすべてその間にある
直径 $d$ の $S$ について、どの向き $\theta$ でも $w(\theta)\le d$ である。したがって $S$ は、中心線から両側に $\dfrac d2$ ずつの幅 $d$ の帯
$$
\left\lvert\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}-m(\theta)\right\rvert\le\frac d2
$$
に収まる。
$\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}$ が最大になる点を $P$、最小になる点を $Q$ とすると、$w(\theta)=\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}-\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OQ}=\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{QP}$ である。内積と長さの関係 $\vec u\cdot\vec v\le\lvert\vec u\rvert\lvert\vec v\rvert$(ベクトルの内積)と $\lvert\vec u_\theta\rvert=1$ から
$$
w(\theta)\le\lvert\overrightarrow{QP}\rvert=PQ\le d
$$
である。$S$ の点 $X$ について、$\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}$ は最小値と最大値の間にあり、それらの平均が $m(\theta)$ なので、$\left\lvert\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OX}-m(\theta)\right\rvert\le\dfrac{w(\theta)}2\le\dfrac d2$ である。$\square$
平面の有限個の点(2 個以上)の集まり $S$ の直径を $d$ とする。このとき $S$ は、どの部分の直径も $\dfrac{\sqrt3}2d$ 以下(したがって $d$ より小さい)である 3 つの部分に分けられる。また、1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点は、直径を小さくする 2 つの部分には分けられない。つまり、平面の有限個の点の Borsuk 数は $3$ 以下で、$3$ になる集まりがある。
証明は 2 段に分かれる。まず $S$ を「向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形」に収め(lem-bor-hex)、次にその正六角形を直径の小さい 3 つの五角形に切る(prop-bor-split)。
直径 $d$ の $S$ は、向かい合う辺の間隔がどれも $d$ である正六角形に収まる。
方針:prop-bor-width により、$S$ はどの向きでも中心線を真ん中とする幅 $d$ の帯に収まる。向きが $60^\circ$ ずつ違う 3 本の帯の共通部分は、3 本の中心線が 1 点で交わるなら正六角形になる。そこで、中心線が 1 点で交わる向きを中間値の定理で見つける。
lem-bor-hex を示す。def-bor-width の記号を使い、$\vec u_\theta=(\cos\theta,\sin\theta)$、中心線の値を $m(\theta)$ とする。
段 1(3 本の帯).どの $\theta$ についても、向き $\theta$、$\theta+60^\circ$、$\theta+120^\circ$ の 3 本の帯(中心線から両側に $\dfrac d2$)はどれも $S$ を含む(prop-bor-width)。
段 2(中心線が 1 点で交わる条件).和積の公式(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)から
$$
\cos\theta+\cos(\theta+120^\circ)=2\cos(\theta+60^\circ)\cos60^\circ=\cos(\theta+60^\circ)
$$
で、$\sin$ についても同じなので、$\vec u_{\theta+60^\circ}=\vec u_\theta+\vec u_{\theta+120^\circ}$ である。向き $\theta$ と $\theta+120^\circ$ の中心線は平行でないので、ただ 1 点 $Z$ で交わる。$Z$ では $\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OZ}=m(\theta)$、$\vec u_{\theta+120^\circ}\cdot\overrightarrow{OZ}=m(\theta+120^\circ)$ なので
$$
\vec u_{\theta+60^\circ}\cdot\overrightarrow{OZ}=\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OZ}+\vec u_{\theta+120^\circ}\cdot\overrightarrow{OZ}=m(\theta)+m(\theta+120^\circ)
$$
である。したがって、$Z$ が向き $\theta+60^\circ$ の中心線の上にある(3 本の中心線が 1 点で交わる)ことは、
$$
g(\theta)=m(\theta+60^\circ)-m(\theta)-m(\theta+120^\circ)
$$
が $0$ になることと同じである。
段 3($60^\circ$ 回すと符号が変わる).$\vec u_{\theta+180^\circ}=-\vec u_\theta$ なので、向き $\theta+180^\circ$ の最大値・最小値は向き $\theta$ の最小値・最大値に $-1$ を掛けたものになり、$m(\theta+180^\circ)=-m(\theta)$ である。これを使うと
$$
g(\theta+60^\circ)=m(\theta+120^\circ)-m(\theta+60^\circ)-\underbrace{m(\theta+180^\circ)}_{=-m(\theta)}=-g(\theta)
$$
である。
段 4(中間値の定理).$g$ は $\theta$ の連続関数である(下の「詳細」)。$g(0^\circ)=0$ なら $\theta_0=0^\circ$ とする。そうでなければ、段 3 から $g(0^\circ)$ と $g(60^\circ)=-g(0^\circ)$ は符号が異なるので、中間値の定理(高校数学) により $0^\circ<\theta_0<60^\circ$ で $g(\theta_0)=0$ となる $\theta_0$ がある。
$S$ の各点 $P(p_1,p_2)$ について $\vec u_\theta\cdot\overrightarrow{OP}=p_1\cos\theta+p_2\sin\theta$ は $\theta$ の連続関数である。2 つの連続関数 $f_1,f_2$ の大きい方は $\max(f_1,f_2)=\dfrac{f_1+f_2+\lvert f_1-f_2\rvert}2$ と書けるので連続で、これをくり返すと有限個の連続関数の最大値も連続である。最小値は $-\max(-f_1,\dots,-f_n)$ なので連続である。したがって $m(\theta)$ は連続で、$g(\theta)$ も連続である。
ex-bor-width の 4 点($d=6$)で、$m(0^\circ)=3$、$m(60^\circ)=\dfrac{1+2\sqrt3}2$、$m(120^\circ)=\sqrt3-2$ だったので
$$
g(0^\circ)=\frac{1+2\sqrt3}2-3-(\sqrt3-2)=\frac12+\sqrt3-3-\sqrt3+2=-\frac12
$$
である。段 3 から $g(60^\circ)=\dfrac12$ で、符号が変わる。$g$ を数値で調べると $g(10^\circ)\approx0.306>0$ で、$\theta_0$ は $0^\circ$ と $10^\circ$ の間にある。区間を半分にしていく計算(二分法)で $\theta_0\approx6.21^\circ$、3 本の中心線の交点は $Z\approx(2.872,\,1.174)$ である。4 点は $Z$ を中心とする、向かい合う辺の間隔 $6$ の正六角形に収まる。
4 点 A, B, C, D について、向き θ₀、θ₀+60 度、θ₀+120 度の幅 6 の帯を重ねると、3 本の中心線が 1 点 Z で交わり、帯の共通部分が正六角形になる
次に、正六角形を 3 つに分ける。以下、中心を $Z$ とし、頂点を反時計回りに $V_1,\dots,V_6$、辺 $V_6V_1$、$V_2V_3$、$V_4V_5$ の中点を $M_1$、$M_2$、$M_3$ とする。向かい合う辺の間隔が $d$ なので、$Z$ から各辺までの距離は $\dfrac d2$、$Z$ から各頂点までの距離(外接円の半径)は $\dfrac d2\mathbin{÷}\cos30^\circ=\dfrac d{\sqrt3}$、1 辺の長さも $\dfrac d{\sqrt3}$ である。
向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形を、3 本の線分 $ZM_1$、$ZM_2$、$ZM_3$ で 3 つの五角形
$$
ZM_1V_1V_2M_2,\qquad ZM_2V_3V_4M_3,\qquad ZM_3V_5V_6M_1
$$
に切る。どの五角形の直径も $\dfrac{\sqrt3}2d\approx0.866d$ である。
3 つの五角形は $Z$ のまわりの $120^\circ$ の回転で互いに移り合うので、$ZM_1V_1V_2M_2$ だけ調べればよい。$Z$ を原点とし、$\overrightarrow{ZM_1}$ の向きを $30^\circ$ にとると、5 つの頂点の向きと $Z$ からの距離は次のとおりである。
$$
M_1:\ 30^\circ,\ \frac d2\qquad V_1:\ 60^\circ,\ \frac d{\sqrt3}\qquad V_2:\ 120^\circ,\ \frac d{\sqrt3}\qquad M_2:\ 150^\circ,\ \frac d2
$$
2 頂点の距離を、$Z$ からの距離となす角を使って余弦定理で求める(余弦定理(高校数学))。
凸多角形(周と内部)の 2 点の距離は、頂点どうしの距離の最大値以下である。
要点:1 点 $Y$ を固定すると、線分 $PQ$ の上の点 $X$ までの距離 $YX$ は端 $P$ か $Q$ で最大になる。凸多角形の点は、1 つの頂点と辺の上の点を結ぶ線分の上にあるので、これを 2 回使って距離を頂点まで押しやる。
段 1(線分の上).$X=P+t\,\overrightarrow{PQ}$($0\le t\le1$)とすると、$YX^2=\lvert\overrightarrow{YP}+t\,\overrightarrow{PQ}\rvert^2=PQ^2t^2+2(\overrightarrow{YP}\cdot\overrightarrow{PQ})t+YP^2$ は $t^2$ の係数が正の 2 次関数で、グラフは下に凸なので、区間 $0\le t\le1$ での最大は端 $t=0$ か $t=1$ でとる。したがって $YX\le\max(YP,YQ)$ である。
段 2(多角形の上).凸多角形の 1 つの頂点 $V$ から対角線を引くと、多角形は $V$ を頂点にもつ三角形に分かれる。多角形の点 $X$ はそのどれかの三角形 $VWW'$ に入り、$X$ は $V$ と辺 $WW'$ の上の点 $X'$ を結ぶ線分の上にある。段 1 を 2 回使うと $YX\le\max(YV,YX')\le\max(YV,YW,YW')$ で、$YX$ はある頂点までの距離以下である。
段 3(2 点とも動かす).多角形の 2 点 $X$、$Y$ について、段 2 で $YX\le YV$ となる頂点 $V$ がある。もう一度段 2 を(固定する点を $V$ にして)使うと、$VY\le VV'$ となる頂点 $V'$ がある。したがって $XY\le VV'$ である。
正六角形を中心 Z と 1 つおきの辺の中点 M₁、M₂、M₃ を結ぶ 3 本の線分で 3 つの五角形に切ると、各五角形で最も遠い 2 点は 2 つの中点で、その距離は直径の 0.866 倍
これで主定理が示せる。
thm-bor を示す。lem-bor-hex により、$S$ は向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形に収まる。この正六角形を prop-bor-split の 3 つの五角形に切り、$S$ の各点を、それを含む五角形のうち番号の最も小さいものの部分に入れる(切り口の上の点は 2 つの五角形に含まれるが、1 つだけに入れる)。各部分は 1 つの五角形に含まれるので、部分の 2 点の距離は五角形の直径 $\dfrac{\sqrt3}2d$ 以下であり、$\dfrac{\sqrt3}2<1$ なので $d$ より小さい。
後半は ex-bor-start (2) である。1 辺 $d$ の正三角形の 3 頂点を 2 つの部分に分けると、鳩の巣原理 によりある部分に 2 頂点が入り、その部分の直径は $d$ である。$\square$
ex-bor-hex の正六角形($Z\approx(2.872,1.174)$、$\theta_0\approx6.21^\circ$)を 3 つの五角形に切ると、4 点は $\{C,D\}$、$\{A\}$、$\{B\}$ に分かれる(数値計算による)。各部分の直径は $CD=\sqrt5\approx2.24$、$0$、$0$ で、どれも $\dfrac{\sqrt3}2\cdot6=3\sqrt3\approx5.20$ 以下である。
この 4 点は、実は 2 つにも分けられる。直径 $6$ を与える組は $A$ と $B$ だけなので、$\{A,C,D\}$ と $\{B\}$ に分けると、$AC=\sqrt{20}\approx4.47$、$AD=\sqrt{13}$、$CD=\sqrt5$ で、各部分の直径は $6$ より小さい。この 4 点の Borsuk 数は $2$ である。thm-bor は「3 つで必ず足りる」ことを主張しており、2 つで足りる集まりも多い。
Jungの定理 により、$S$ は半径 $\dfrac d{\sqrt3}$ の円にも収まる。しかしこの円を中心から $120^\circ$ ずつの 3 つの扇形に切ると、各扇形の弧の両端の距離は $2\cdot\dfrac d{\sqrt3}\sin60^\circ=d$ で、扇形の直径は $d$ になり、「$d$ より小さい」が保証されない。正六角形は円より角が削れているので、切った五角形の直径を $\dfrac{\sqrt3}2d$ まで下げられる。
外接円の半径を $R$ とし、頂点を $P_0,\dots,P_{n-1}$ とする(添字は $n$ で割った余りで考える)。$P_i$ と $P_j$ の距離は、中心角 $\dfrac{360^\circ}n\times(\text{添字の差})$ の弦の長さで、中心角が $180^\circ$ に近いほど長い。
$n$ が偶数のとき:直径は向かい合う頂点の距離 $2R$ である。続けて並んだ $\dfrac n2$ 頂点ずつの 2 つに分けると、各部分の中心角の最大は $\left(\dfrac n2-1\right)\dfrac{360^\circ}n=180^\circ-\dfrac{360^\circ}n<180^\circ$ なので、各部分の直径は $2R$ より小さい。
$n=2k+1$ が奇数のとき:中心角が $180^\circ$ に最も近いのは添字の差が $k$ または $k+1$ のときで、直径 $d$ を与える組は $P_i$ と $P_{i+k}$($i=0,\dots,n-1$)である。$P_0\to P_k\to P_{2k}\to\cdots$ と添字を $k$ ずつ進めると、$k$ と $2k+1$ は互いに素なので $n$ 回でちょうどすべての頂点を 1 回ずつ通って $P_0$ にもどり、隣どうしの距離がどれも $d$ である $n$ 頂点の輪ができる。2 つの部分に分けて各部分の直径を $d$ より小さくするには、輪の隣どうしを別の部分に入れる必要があり、部分は輪に沿って交互に入れ替わる。輪の長さ $n$ は奇数なので、1 周してもどったとき $P_0$ の部分が食い違う。したがって 2 つでは足りず、Borsuk 数は $3$ である。$n=5$ では輪は $P_0\to P_2\to P_4\to P_1\to P_3\to P_0$(星形)である。
直径 $d$ の円板(周と内部、無限個の点)を考える。無限個の点の集まりの直径は、2 点の距離の上限(最小の上界)とする。
(1) 3 つで足りる。円板は、同じ中心で向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形に収まる(円はその正六角形の内接円)。prop-bor-split の 3 つの五角形に切れば、各部分の直径は $\dfrac{\sqrt3}2d$ 以下である。
(2) 2 つでは足りない。円板を 2 つの部分 $K_1$、$K_2$ に分け、直径がどちらも $d$ より小さい $d_1$、$d_2$ だったとする。周に内接する正 $(2k+1)$ 角形の最長の対角線は $d\cos\dfrac{90^\circ}{2k+1}$ で、$k$ を大きくすると $d$ に近づくので、$d\cos\dfrac{90^\circ}{2k+1}>\max(d_1,d_2)$ となる $k$ がある(例えば $d_1,d_2\le0.99d$ なら $2k+1=11$ で $d\cos\dfrac{90^\circ}{11}\approx0.9898d$ は足りず、$2k+1=21$ で $\approx0.9972d$ が足りる)。この正多角形の頂点は $K_1$、$K_2$ に分かれ、各部分の 2 頂点の距離は $d_1$ か $d_2$ 以下なので最長の対角線より短い。これは頂点の集まりを直径を小さくする 2 つの部分に分けたことになり、ex-bor-polygon の奇数の場合に反する。
左は正五角形の頂点で、直径を与える 5 本の対角線が星形の輪を作る。右は正六角形の頂点を、続けて並んだ 3 頂点ずつの 2 つに分けた様子
| 図形 | Borsuk 数 | 分け方・理由 |
|---|---|---|
| 正方形・長方形の 4 頂点 | $2$ | 対角線の両端を別の部分に(ex-bor-start) |
| 正六角形の 6 頂点 | $2$ | 続けて並んだ 3 頂点ずつ(ex-bor-polygon) |
| ex-bor-width の 4 点 | $2$ | $\{A,C,D\}$ と $\{B\}$(ex-bor-split) |
| 正三角形の 3 頂点 | $3$ | 2 つでは 2 頂点が同居(ex-bor-start) |
| 正五角形・正奇数角形の頂点 | $3$ | 直径の組が奇数の長さの輪(ex-bor-polygon) |
| 円板 | $3$ | 内接する正奇数角形(ex-bor-disc) |
| Reuleaux の三角形 | $3$ | 3 頂点を含むので 2 つでは足りない |
Reuleaux の三角形(定幅図形)は、幅 $w$ で直径も $w$ で、もとの正三角形の 3 頂点を含むので 2 つでは足りない。3 つで足りることは、円板と同じく正六角形に収めて示せる(有限個でない図形なので、この記事では細部を省く)。
| 外す条件・取り違え | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 3 つを 2 つにする | 正三角形・正五角形の頂点 | 同じ部分に距離 $d$ の 2 点が入る → ex-bor-start、ex-bor-polygon |
| 正六角形を中心と 1 つおきの頂点を結んで切る | 3 つのひし形 | 各部分の直径が $d$ になり、「$d$ より小さい」が示せない → ex-bor-cx-rhombus |
| 五角形の直径を辺の長さだけで測る | 五角形 $ZM_1V_1V_2M_2$ | 辺の最大 $\dfrac d{\sqrt3}\approx0.577d$ を直径と取り違える(本当は $\dfrac{\sqrt3}2d$)→ ex-bor-cx-side |
向かい合う辺の間隔が $d$ の正六角形を、$ZV_1$、$ZV_3$、$ZV_5$ で 3 つのひし形 $ZV_1V_2V_3$、$ZV_3V_4V_5$、$ZV_5V_6V_1$ に切る。ひし形 $ZV_1V_2V_3$ の対角線 $V_1V_3$ は、$Z$ からの距離 $\dfrac d{\sqrt3}$ の 2 点でなす角が $120^\circ$ なので
$$
V_1V_3^2=\frac{d^2}3+\frac{d^2}3-2\cdot\frac{d^2}3\cos120^\circ=d^2
$$
で、$V_1V_3=d$ である。各ひし形の直径は $d$ で、prf-bor の「各部分の直径は $d$ より小さい」が言えない。切る線を辺の中点に向けた prop-bor-split では、最も遠い 2 点が中点どうし($Z$ からの距離 $\dfrac d2$)になり、$\dfrac{\sqrt3}2d$ まで下がる。
五角形 $ZM_1V_1V_2M_2$ の 5 本の辺の長さは $\dfrac d2$、$\dfrac d{2\sqrt3}$、$\dfrac d{\sqrt3}$、$\dfrac d{2\sqrt3}$、$\dfrac d2$ で、最大は $\dfrac d{\sqrt3}\approx0.577d$ である。しかし prf-bor-split のとおり、対角線 $M_1M_2$ は $\dfrac{\sqrt3}2d\approx0.866d$ で、辺より長い。多角形の直径は辺ではなく、対角線も含めたすべての頂点の組で測る(lem-bor-poly)。
$n$ 次元の空間の、直径 $d$ の有界な集合を、直径が $d$ より小さい部分に分けるには何個あれば足りるか、という問いを Borsuk の問題 という。$n$ 次元の正単体(平面の正三角形、空間の正四面体)の $n+1$ 個の頂点は、どの 2 頂点の距離も等しいので、ex-bor-start (2) と同じ鳩の巣原理で $n$ 個には分けられない。そこで「$n+1$ 個でいつも足りる」という予想が立てられ、Borsuk 予想 とよばれた。
MathWorld の Borsuk 予想の項(Wei26)によれば、予想は $n=2$ と $n=3$ では正しく、境界がなめらかな集合でも正しい。平面の場合は、この記事の thm-bor を有界な集合に広げたものに当たる(最大を上限に変えれば同じ筋で示せるが、この記事では細部を省く)。
一方、Kahn と Kalai は 1993 年に、次元 $n$ が大きいときには $n+1$ 個では足りない集合があることを示した(KK93)。論文の要旨によれば、直径 $1$ の集合を直径が $1$ より小さい部分に分けるのに必要な個数の最大を $f(n)$ とすると、$n$ が十分大きければ $f(n)\ge(1.2)^{\sqrt n}$ であり、これは $n+1$ よりはるかに大きい。Kahn と Kalai の構成は、1325 次元と、2014 次元より大きいすべての次元で反例を与える(KK93)。Wei26 は、反例のある次元が 2014 年の Jenrich–Brouwer の例で 64 次元まで下がり、さらに 2026 年に 63 次元の例が arXiv のプレプリントとして発表されたことを伝えている。反例がある最小の次元がさらに下がるかどうかは、Wei26 の記述の時点で分かっていない。
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