正則素数(regular prime)とは、奇素数 $p$ であって、円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類数を割らないもののことで、正則でない奇素数を非正則素数という。Kummer の判定法により、$p$ が正則であることは $p$ が $B_2,B_4,\dots,B_{p-3}$ のどの分子も割らないことと同値であり、$37$ は $B_{32}$ の分子を割るので最小の非正則素数である。正則素数 $p$ については、$x^p+y^p=z^p$ を $\mathbb Z[\zeta_p]$ で分解し、イデアルの $p$ 乗根が単項になることと単数の構造を使って、Fermat の最終定理の第一の場合($p\nmid xyz$)が証明できる。非正則素数は無限に多いが、正則素数が無限に多いかは知られていない。
前提知識: 円分体, イデアル類群, Dedekind整域, Bernoulli数
正則素数(regular prime)とは、奇素数 $p$ であって、円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類数を割らないもののことである。ここで $\zeta_p=e^{2\pi i/p}$ である。正則でない奇素数を 非正則素数(irregular prime)という。
Kummer は、Fermat の方程式 $x^p+y^p=z^p$ を $\mathbb Z[\zeta_p]$ で $\prod_{i=0}^{p-1}(x+\zeta_p^iy)=z^p$ と分解する方法が、$\mathbb Z[\zeta_p]$ で素因数分解が一意でなくても、$p$ が類数を割らなければうまくいくことに気づいた。そのうえで、類数を計算しなくても $p$ が正則かどうかを Bernoulli数 の分子で判定できることを示した(Kummer の判定法):$p$ が正則であることと、$p$ が $B_2,B_4,\dots,B_{p-3}$ のどの分子も割らないことは同値である。
$100$ 未満の奇素数のうち非正則なのは $37,59,67$ だけで、非正則素数は無限に多い(Kummerの合同式 の定理「非正則素数の無限性」)。一方、正則素数が無限に多いかどうかは知られていない。
この記事では、(1) Kummer の判定法を使って $37$ が最小の非正則素数であることを計算で確かめ、(2) 正則素数 $p$ について Fermat の最終定理の第一の場合($p\nmid xyz$)を完全に証明する。第二の場合($p\mid xyz$)は所在を示して引用する。
$p$ を奇素数、$K:=\mathbb Q(\zeta)$($\zeta:=\zeta_p$)とし、$\mathcal O:=\mathcal O_K$ を整数環、$h_p$ を $K$ の類数とする(イデアル類群 の定義「イデアル類群と類数」)。円分体 の命題「素数冪の円分体」により $\mathcal O=\mathbb Z[\zeta]$ である。
奇素数 $p$ が $h_p$ を割らないとき $p$ を 正則素数、割るとき 非正則素数 という。
奇素数 $p$ について、次は同値である。
この記事ではこの定理を証明しない。$K$ の最大実部分体 $K^+=\mathbb Q(\zeta+\zeta^{-1})$ の類数を $h_p^+$、$h_p^-:=h_p/h_p^+$ を相対類数とすると、$p\mid h_p^-$ と 2 が成り立たないことの同値性は、相対類数を一般化 Bernoulli 数の積で表す公式から導かれる(Was82 Theorem 5.16、p. 61。一般化Bernoulli数)。さらに $p\mid h_p^+$ なら $p\mid h_p^-$ であり(同 Theorem 5.34、p. 78)、合わせて定理が得られる。文献によっては 2 を正則素数の定義とする(HW60 Chapter XIII の注、p. 202)。
$p=3$ では 2 の番号の範囲は空なので $3$ は正則で、$p=5$ では $B_2$ だけを調べればよい。番号の上限は $p-3$ で、$p-1$ で割り切れる番号は分母に $p$ が現れるので調べない(von Staudt–Clausen の定理)。
$B_2$ から $B_{28}$ までの分子を素因数分解すると次のとおりである(有限計算)。
| $k$ | $2$〜$8$ | $10$ | $12$ | $14$ | $16$ | $18$ | $20$ | $22$ | $24$ | $26$ | $28$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 分子の絶対値 | $1$ | $5$ | $691$ | $7$ | $3617$ | $43867$ | $283\cdot617$ | $11\cdot131\cdot593$ | $103\cdot2294797$ | $13\cdot657931$ | $7\cdot9349\cdot362903$ |
$31$ 以下の素数で分子に現れるのは $5$($k=10$)、$7$($k=14,28$)、$11$($k=22$)、$13$($k=26$)だけで、どれも $k>p-3$ である。例えば $7$ で調べる範囲は $B_2,B_4$ だけである。したがって thm-rgp-kummer-criterion により、$3,5,7,\dots,31$ はすべて正則である。
一方 $131\mid B_{22}$ の分子、$103\mid B_{24}$ の分子で、$22\le128$、$24\le100$ なので $131$ と $103$ は非正則である。$691\mid B_{12}$ の分子から $691$ も非正則で、$691$ は $\mathbb Q(\zeta_{691})$ の類数を割る(Was82 p. 7)。
$37$ は $B_{32}$ の分子を割る。したがって $37$ は非正則素数で、非正則素数のうち最小である。
直接の計算.漸化式(Bernoulli数 の命題「漸化式・奇数番目・大きさ」)で計算すると
$$
B_{32}=-\frac{7709321041217}{510},\qquad 7709321041217=37\times208360028141
$$
である(有限計算。右の等式は掛け算で確かめられる)。
合同式による計算.大きな数を使わずに確かめる。$p=37$、$k=32$ は $36\nmid32$ をみたし、$a=2$ は法 $37$ の原始根である($2^{18}\equiv-1$、$2^{12}\equiv26\not\equiv1\pmod{37}$)。Kummerの合同式 の定理「$B_k/k$ の法 $p$ での表示」により
$$
(2^{32}-1)\frac{B_{32}}{32}\equiv2^{31}\,T,\qquad T:=\sum_{j=1}^{36}j^{31}\Bigl\lfloor\frac{2j}{37}\Bigr\rfloor\pmod{37}
$$
で、$2^{32}-1$ は $37$ と互いに素である。$\lfloor2j/37\rfloor$ は $j\ge19$ で $1$、$j\le18$ で $0$ なので $T=\sum_{j=19}^{36}j^{31}$ である。$j=37-i$($1\le i\le18$)と書くと、$i^{36}\equiv1$ から $j^{31}\equiv(-i)^{31}\equiv-i^{-5}\pmod{37}$ で、$T\equiv-\sum_{i=1}^{18}i^{-5}$ である。$i^{-5}$ の法 $37$ での剰余は $i=1,\dots,18$ の順に
$$
1,22,30,3,24,31,33,29,12,10,11,16,18,23,17,9,2,5
$$
で、和は $296=8\times37$ である。よって $T\equiv0$、$\frac{B_{32}}{32}\equiv0\pmod{37}$ で、$37\nmid32$ なので $37$ は $B_{32}$ の分子を割る。
$32\le37-3$ なので thm-rgp-kummer-criterion により $37$ は非正則である。ex-rgp-small により $31$ 以下の奇素数は正則なので、$37$ は最小の非正則素数である。$\square$
$37$ が最小の非正則素数であることは Was82(p. 7)にある。実際、$\mathbb Q(\zeta_{37})$ の類数は $37$ である(同 表 §3、pp. 352–353:$h_{37}^-=37$、$h_{37}^+=1$)。$200$ 未満の非正則素数と、分子を割られる番号 $k$($2\le k\le p-3$)は次のとおりである(有限計算。Was82 p. 7 の一覧と一致する)。
| $p$ | $37$ | $59$ | $67$ | $101$ | $103$ | $131$ | $149$ | $157$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $k$ | $32$ | $44$ | $58$ | $68$ | $24$ | $22$ | $130$ | $62,110$ |
$157$ は 2 つの番号の分子を割る。$B_k$ の分子が「でたらめに」$p$ で割り切れると考えると、正則素数の割合は $e^{-1/2}\approx61\%$ と予想され、数値計算とよく合う(Was82 pp. 62–63)。$\mathbb Z[\zeta_p]$ で素因数分解が一意になる($h_p=1$)のは $p\le19$ のときに限る(Was82 p. 7、Montgomery と内田による)。
$\lambda:=1-\zeta$ とおく。円分体 の命題「素数冪の円分体」により、$\lambda\mathcal O$ は素イデアルで $\mathcal O/\lambda\mathcal O\cong\mathbb F_p$、$p\mathcal O=(\lambda\mathcal O)^{p-1}$ である。特に $\lambda\mathcal O$ は極大イデアルで、$\lambda\mathcal O\cap\mathbb Z=p\mathbb Z$ である。
1.$\frac{1-\zeta^k}{1-\zeta}=1+\zeta+\dots+\zeta^{k-1}\in\mathcal O$ である。$kk'\equiv1\pmod p$ となる $k'>0$ をとると $\zeta=(\zeta^k)^{k'}$ なので、同様に $\frac{1-\zeta}{1-\zeta^k}\in\mathcal O$ である。
2.$\zeta$ の最小多項式 $1+X+\dots+X^{p-1}$ はモニックで次数 $p-1$ なので、$1,\zeta,\dots,\zeta^{p-2}$ は $\mathcal O=\mathbb Z[\zeta]$ の $\mathbb Z$ 基底である。$\zeta^j$ を除いた $p-1$ 個は、$\zeta^j=-\sum_{i\neq j}\zeta^i$ から $\mathcal O$ を生成する。$\mathbb Z^{p-1}$ から $\mathbb Z^{p-1}$ への全射な準同型は、$\mathbb Q$ 上に延ばすと全射な線形写像、したがって単射なので、それ自身も単射である。よってこの $p-1$ 個も基底である。$a_j=0$ なら $\alpha$ はこの基底で係数 $a_i$($i\neq j$)をもつ。$\alpha=n\gamma$、$\gamma=\sum_{i\neq j}c_i\zeta^i$ と書くと、基底の係数を比べて $a_i=nc_i$ である。
3.$\beta=\sum_ic_i\zeta^i$($c_i\in\mathbb Z$)と書く。$\mathcal O/p\mathcal O$ は標数 $p$ の環なので $p$ 乗は加法的で、$\beta^p\equiv\sum_ic_i^p\zeta^{ip}=\sum_ic_i^p\pmod{p\mathcal O}$ である。
4.$K\subset\mathbb C$ で、複素共役は $\zeta$ を $\bar\zeta=\zeta^{-1}\in K$ に移すので $K$ の自己同型 $\sigma_{-1}$ を引き起こし、$\mathcal O=\mathbb Z[\zeta]$ と $p\mathcal O$ を保つ。$\operatorname{Gal}(K/\mathbb Q)\cong(\mathbb Z/p\mathbb Z)^\times$ は可換なので $\sigma\sigma_{-1}=\sigma_{-1}\sigma$ である。$\square$
$L\subset\mathbb C$ を $\mathbb Q$ の有限次 Galois 拡大とし、$\alpha$ を $L$ の代数的整数とする。すべての $\sigma\in\operatorname{Gal}(L/\mathbb Q)$ について $\lvert\sigma(\alpha)\rvert=1$ なら、$\alpha$ は $1$ の冪根である。
$d:=[L:\mathbb Q]$ とする。正の整数 $k$ について $P_k(X):=\prod_{\sigma}(X-\sigma(\alpha)^k)$ は $\alpha^k$ の最小多項式の $[L:\mathbb Q(\alpha^k)]$ 乗で、$\alpha^k$ は代数的整数なので 代数的整数 の命題「最小多項式による判定」により $P_k\in\mathbb Z[X]$ である。根の絶対値はすべて $1$ なので、$X^{d-i}$ の係数の絶対値は $\binom di$ 以下である。そのような次数 $d$ の整数係数多項式は有限個しかなく、その根も有限個なので、$\alpha,\alpha^2,\alpha^3,\dots$ の中に等しいもの $\alpha^k=\alpha^l$($k< l$)がある。$\alpha\neq0$ なので $\alpha^{l-k}=1$ である。$\square$
1.$\eta\in K$ を $1$ の冪根とする。$-\zeta$ と $\eta$ が生成する $\mathbb C^\times$ の有限部分群は巡回群で(1の冪根 の命題「複素数の乗法群の有限部分群」)、その位数 $M$ は $-\zeta$ の位数 $2p$ の倍数である。生成元は $K$ に属する原始 $M$ 乗根なので、円分体 の定義の直後の段落により $\varphi(M)=[\mathbb Q(\zeta_M):\mathbb Q]\le[K:\mathbb Q]=p-1$ である。$M$ が $p^2$、$4$、$p$ 以外の奇素数 $q$ のどれかで割り切れれば、$\varphi$ の乗法性により $\varphi(M)$ は $p(p-1)$、$2(p-1)$、$(p-1)(q-1)$ のどれか以上になり、$p-1$ を超える。よって $M=2p$ で、$\eta$ は $-\zeta$ の冪、すなわち $\pm\zeta^a$ である。
2.$\bar\varepsilon$ も単元なので $\alpha:=\varepsilon/\bar\varepsilon\in\mathcal O$ である。lem-rgp-basic の 4 により $\lvert\sigma(\alpha)\rvert=\lvert\sigma(\varepsilon)\rvert/\lvert\overline{\sigma(\varepsilon)}\rvert=1$ なので、lem-rgp-kronecker と 1 により $\alpha=\pm\zeta^a$ である。
符号が $+$ であることを示す。$\varepsilon=\sum_ib_i\zeta^i$($b_i\in\mathbb Z$)と書くと、$\zeta\equiv1\pmod{\lambda}$ から $\varepsilon\equiv\sum_ib_i$、$\bar\varepsilon=\sum_ib_i\zeta^{-i}\equiv\sum_ib_i\pmod\lambda$ で、$\varepsilon\equiv\bar\varepsilon\pmod\lambda$ である。$\alpha=-\zeta^a$ なら $\varepsilon=-\zeta^a\bar\varepsilon\equiv-\varepsilon\pmod\lambda$、すなわち $2\varepsilon\in\lambda\mathcal O$ である。$\lambda\mathcal O$ は素イデアルで、$2\notin\lambda\mathcal O$($\lambda\mathcal O\cap\mathbb Z=p\mathbb Z$、$p$ は奇数)なので $\varepsilon\in\lambda\mathcal O$ となり、$\varepsilon$ が単元であることに反する。
よって $\alpha=\zeta^a$ である。$2r\equiv a\pmod p$ となる整数 $r$ をとり $\varepsilon_1:=\zeta^{-r}\varepsilon$ とおくと、$\bar\varepsilon_1=\zeta^r\bar\varepsilon=\zeta^{r-a}\varepsilon=\zeta^{-r}\varepsilon=\varepsilon_1$ である。$\square$
lem-rgp-kronecker と prop-rgp-units は Was82 の Lemma 1.6(p. 4)と Proposition 1.5(p. 3、証明 p. 4)である。
$p$ を正則素数とする。$x^p+y^p=z^p$ かつ $p\nmid xyz$ をみたす整数 $x,y,z$ は存在しない。
解 $(x,y,z)$ があるとして矛盾を導く。
段 0(整理).$g:=\gcd(x,y)$ とすると $g^p\mid z^p$ から $g\mid z$ で、$(x/g,y/g,z/g)$ も $p\nmid xyz$ をみたす解である。よって $\gcd(x,y)=1$ としてよい。このとき $x,z$ に共通の素因数 $q$ があれば $q\mid y^p$ となるので $\gcd(x,z)=1$ である。
$p=3$ のとき:$3\nmid x$ なら $x\equiv\pm1,\pm2,\pm4\pmod9$ で、$x^3\equiv\pm1\pmod9$ である。よって $x^3+y^3\equiv-2,0,2$、$z^3\equiv\pm1\pmod9$ となり、等式は成り立たない。
以下 $p\ge5$ とする。Fermatの小定理 により $x^p\equiv x$ などが成り立ち、$x+y\equiv z\pmod p$ である。$x\equiv y\equiv-z\pmod p$ なら $-2z\equiv z$、すなわち $p\mid3z$ となり矛盾する。$x\equiv y\pmod p$ なら $x\not\equiv-z$ なので、$p$ が奇数であることを使って等式を $x^p+(-z)^p=(-y)^p$ と書き直し、$(x,y,z)$ を $(x,-z,-y)$ に取り替える。以上から $\gcd(x,y)=1$、$x\not\equiv y\pmod p$ と仮定してよい。
段 1(イデアルが互いに素).$X^p+1=\prod_{i=0}^{p-1}(X+\zeta^i)$(右辺の根 $-\zeta^i$ は $X^p+1$ の相異なる根)から
$$
\prod_{i=0}^{p-1}(x+\zeta^iy)=x^p+y^p=z^p
$$
である。$0\le i< j\le p-1$ とし、素イデアル $\mathfrak P$ が $x+\zeta^iy$ と $x+\zeta^jy$ をともに含むとする。$\mathfrak P$ は
$$
(x+\zeta^iy)-(x+\zeta^jy)=\zeta^i(1-\zeta^{j-i})\,y,\qquad \zeta^j(x+\zeta^iy)-\zeta^i(x+\zeta^jy)=\zeta^i(\zeta^{j-i}-1)\,x
$$
を含み、lem-rgp-basic の 1 によりこれらは $\lambda y$、$\lambda x$ の単元倍である。$\lambda\notin\mathfrak P$ なら $x,y\in\mathfrak P$ で、$\gcd(x,y)=1$ から $1\in\mathfrak P$ となり矛盾する。よって $\lambda\in\mathfrak P$ で、$\lambda\mathcal O$ は極大なので $\mathfrak P=\lambda\mathcal O$ である。$\zeta\equiv1\pmod\lambda$ から $x+y\equiv x+\zeta^iy\equiv0\pmod\lambda$ で、$x+y\in\lambda\mathcal O\cap\mathbb Z=p\mathbb Z$ である。すると $z\equiv z^p=x^p+y^p\equiv x+y\equiv0\pmod p$ となり、$p\nmid z$ に反する。したがって、単項イデアル $(x+\zeta^iy)$ たちはどの 2 つも共通の素イデアルをもたない。
段 2(類数を使う).$\mathcal O$ は Dedekind 整域で、$0$ でないイデアルは素イデアルの積にただ 1 通りに分解する(Dedekind整域)。各素イデアル $\mathfrak P$ について $\sum_iv_{\mathfrak P}(x+\zeta^iy)=p\,v_{\mathfrak P}(z)$ で、段 1 により左辺の項のうち $0$ でないのは高々 1 つなので、各 $v_{\mathfrak P}(x+\zeta^iy)$ は $p$ の倍数である。よって $(x+\zeta y)=\mathfrak A^p$ となるイデアル $\mathfrak A$ がある。イデアル類群で $[\mathfrak A]^p=1$ であり、$[\mathfrak A]$ の位数は $p$ と $h_p$ の両方を割る。$p$ は正則なので $p\nmid h_p$ で、$[\mathfrak A]=1$、すなわち $\mathfrak A=(\beta)$ は単項である。したがって $x+\zeta y=\varepsilon\beta^p$ となる単元 $\varepsilon$ がある。
段 3(複素共役と比べる).prop-rgp-units により $\varepsilon=\zeta^r\varepsilon_1$、$\bar\varepsilon_1=\varepsilon_1$ と書け、lem-rgp-basic の 3 により $\beta^p\equiv b\pmod{p\mathcal O}$ となる $b\in\mathbb Z$ がある。よって
$$
x+\zeta y\equiv\zeta^r\varepsilon_1b\pmod{p\mathcal O}
$$
である。複素共役をとると(lem-rgp-basic の 4)$x+\zeta^{-1}y\equiv\zeta^{-r}\varepsilon_1b\pmod{p\mathcal O}$ である。2 式から $\zeta^{-r}(x+\zeta y)\equiv\varepsilon_1b\equiv\zeta^r(x+\zeta^{-1}y)$ で、$\zeta^r$ を掛けて
$$
\alpha:=x+\zeta y-\zeta^{2r}x-\zeta^{2r-1}y\in p\mathcal O\qquad(*)
$$
を得る。
段 4(係数を調べる).$\zeta$ の指数を法 $p$ で見る。$\alpha$ は指数 $0,1,2r,2r-1$ の 4 項の和で、$0\not\equiv1$、$2r\not\equiv2r-1$ である。$p\ge5$ なので、どの場合も $\alpha$ を $\sum_{i=0}^{p-1}a_i\zeta^i$ と書いたとき $0$ になる係数がある。lem-rgp-basic の 2 を $n=p$ で使い、$(*)$ から $p$ がすべての $a_i$ を割ることを使う。
この証明は Was82 Theorem 1.1(p. 1、証明 pp. 4–6)と同じ筋道で、Kummer による(同 p. 7)。段 2 が類数の仮定を使う唯一の場所で、$\mathbb Z[\zeta]$ で素因数分解が一意なら当然成り立つ主張を、類数が $p$ と互いに素という弱い仮定で得ている。
$p$ を正則素数とすると、$x^p+y^p=z^p$ をみたす $0$ でない整数 $x,y,z$ は存在しない。
$p\nmid xyz$ の場合は thm-rgp-flt-first である。$p$ が $x,y,z$ のどれかを割る第二の場合はこの記事では証明しない。単数についてのより詳しい情報(Kummer の補題)が要り、Was82 Theorem 9.3(p. 173、Chapter 9 の議論は pp. 167–173)が証明している。Kummer はこの定理を 1850 年に証明した(HW60 Chapter XIII の注、p. 202)。
指数が $4$ の倍数の場合は ピタゴラス数と円の有理点 の系「指数が 4 の倍数の Fermat の最終定理」で示されている。$n\ge3$ の指数は $4$ か奇素数で割り切れるので、正則素数の倍数と $4$ の倍数の指数については、これらを合わせて Fermat の方程式に正の整数解がないことがわかる。$n=3$ の場合の別の証明は HW60 Theorem 227(p. 193)にある。一般の指数の場合については Fermatの最終定理 を参照。
| 外す条件・替える条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 指数が奇素数 | 指数 $2$、$(3,4,5)$ | $x^n+y^n=z^n$ に正の整数解がない |
| 正則を「$h_p=1$」に替える | $p=23$ | 正則なら $\mathbb Z[\zeta_p]$ で素因数分解が一意 |
| 番号の範囲 $k\le p-3$ | $p=7$、$B_{14}=\frac76$ | $p$ が $B_k$ の分子を割れば $p$ は非正則 |
| $\alpha$ が代数的整数 | $\alpha=\frac{3+4i}5\in\mathbb Q(i)$ | 共役の絶対値がすべて $1$ なら $1$ の冪根 |
| 類数を使う(法 $p^2$ の合同式だけ) | $p=7$、$1^7+30^7\equiv31^7\pmod{49}$ | 法 $p^2$ の合同式で第一の場合の解を排除できる |
| 係数のどれかが $0$ | $1+\zeta+\dots+\zeta^{p-1}=0$ | $n\mid\alpha$ なら $n$ がすべての係数を割る |
各行を確かめる。
1 行目:$9+16=25$ である。第一の場合の主張($2\nmid xyz$)自体は、奇数の平方の和が $2$ を法として $0$、$z^2$ が $1$ なので成り立つ。
2 行目:ex-rgp-small の表により $23$ は $B_2,\dots,B_{20}$ のどの分子も割らないので正則だが、$h_{23}=3$ で(Was82 表 §3、pp. 352–353:$h_{23}^-=3$、$h_{23}^+=1$)、$\mathbb Z[\zeta_{23}]$ には単項でないイデアルがある(同 p. 7 は $2$ の上の素イデアルが単項でないことを示している)。正則性は素因数分解の一意性より弱く、その分だけ段 2 の議論が要る。
3 行目:$7$ は $B_{14}$ の分子を割るが、$14>7-3$ である。$7$ は正則である(ex-rgp-small)。
4 行目:$\alpha$ と共役 $\frac{3-4i}5$ の絶対値は $1$ だが、$\alpha$ の最小多項式は $X^2-\frac65X+1$ で整数係数でないので代数的整数でなく、$1$ の冪根(代数的整数)でもない。証明では係数が整数であることを多項式の有限性に使った。
5 行目:$1+30^7-31^7$ は $49$ で割り切れ(有限計算)、$7\nmid1\cdot30\cdot31$ である。$p=3$ の法 $9$ の議論はこのように一般の $p$ には延びず、イデアルの議論が要る(Was82 p. 5)。
6 行目:$\alpha=0$ はすべての整数 $n$ で割り切れるが、係数はすべて $1$ である。係数のどれかが $0$ でないと、表し方が一意でない。
注意を 2 つ挙げる。
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