同じものを含む順列と多項定理

同義語:同じものを含む順列permutations of a multiset

概要

同じものを含む順列と多項定理(permutations of a multiset and the multinomial theorem)とは、$m$ 種類の文字をそれぞれ $k_1,\dots,k_m$ 個(合計 $n$ 個、同じ文字は区別しない)すべて並べる方法が多項係数 $\frac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ 通りであることと、$(a_1+\cdots+a_m)^n$ の展開で $a_1^{k_1}\cdots a_m^{k_m}$ の係数が同じ多項係数になることである。前者は、同じ文字に番号を付けた $n!$ 通りの並べ方が番号を消すと $k_1!\cdots k_m!$ 個ずつ同じになることから示せる。後者は展開の各項を文字列とみれば前者に帰着し、掛け算の順序の入れ替えを使う。$m=2$ が二項定理であり、確率では多項分布になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 順列, 階乗, 二項係数

高校での出発点:同じ文字を含む並べ方

異なる 3 文字 A, B, C の並べ方は $3!=6$ 通りある。では、A, A, B の 3 文字の並べ方は何通りか。2 つの A は区別できないので、並べ方は次の 3 通りしかない。

A, A, B の並べ方

A, A, B を一列に並べる方法を書き出すと
$$ AAB,\qquad ABA,\qquad BAA $$
の $3$ 通りである。B の位置(1 番目・2 番目・3 番目)を決めれば、残りの 2 か所には A が入るので、並べ方は B の位置の選び方 $3$ 通りと同じ数になる。

高校では、同じものを含む順列の数を次の式で求めると習う。$n$ 個のもののうち、$a$ が $p$ 個、$b$ が $q$ 個、$c$ が $r$ 個($p+q+r=n$)のとき、これらを一列に並べる方法は
$$ \frac{n!}{p!\,q!\,r!} $$
通りである。

MISSISSIPPI の並べ方

MISSISSIPPI の 11 文字は、M が $1$ 個、I が $4$ 個、S が $4$ 個、P が $2$ 個である($1+4+4+2=11$)。これらを一列に並べる方法は
$$ \frac{11!}{1!\,4!\,4!\,2!}=\frac{39916800}{1\cdot24\cdot24\cdot2}=\frac{39916800}{1152}=34650 $$
通りである。

同じ式は、展開の係数にも現れる。

$(x+y+z)^5$ の係数

$(x+y+z)^5$ を展開したときの $x^2yz^2$ の係数を求める。$(x+y+z)^5$ は 5 個の因数 $(x+y+z)$ の積である。各因数から $x,y,z$ のどれか 1 つを選んで掛けたものを全部足すと、展開した式になる。$x^2yz^2$ ができるのは、5 個の因数のうち 2 個から $x$、1 個から $y$、2 個から $z$ を選んだときである。「どの因数から何を選ぶか」は、$x,x,y,z,z$ の 5 文字を因数の番号順に並べることと同じなので、その数は
$$ \frac{5!}{2!\,1!\,2!}=\frac{120}{4}=30 $$
である。よって係数は $30$ である。

この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. $n!$ を $p!\,q!\,r!$ で割ってよいのはなぜか。→ lem-mc-fiber、thm-mc-count
  2. 「場所を選ぶ」数え方と「割る」数え方は、なぜ同じ答えになるのか。→ prf-mc-count-choose、prf-mc-count-divide
  3. $(a+b+c)^n$ の展開の係数が同じ式になるのはなぜか。→ thm-mc-multinomial
  4. 組分けで「部屋を区別しない」とき、いつ割ってよいのか。→ ex-mc-rooms、ex-mc-rooms-unequal
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    同じものを含む順列 $\dfrac{n!}{p!\,q!\,r!}$多項係数多重集合の順列
    同じものに番号を付けて区別し、あとで割る番号を消すと $p!\,q!\,r!$ 個ずつ同じになる対称群 の作用の軌道と 剰余類
    並べる場所を順に選ぶ $\dbinom np\dbinom{n-p}q$多項係数は二項係数の積二項係数への分解
    $(a+b+c)^n$ の展開の係数多項定理多項定理、多項分布
    係数の和 $3^n$多項係数の和は $m^n$長さ $n$ の文字列の総数

多項係数を定義する

以下では、文字の種類を $m$ 個とし、$1$ 番目の文字を $k_1$ 個、$2$ 番目の文字を $k_2$ 個、…、$m$ 番目の文字を $k_m$ 個用意する。$k_1,\dots,k_m$ は $0$ 以上の整数で、合計を $n=k_1+k_2+\cdots+k_m$ とする。$0!=1$ と約束する。

同じものを含む順列と多項係数

$m$ 種類の文字が、それぞれ $k_1,k_2,\dots,k_m$ 個ある($n=k_1+\cdots+k_m$)。これらをすべて使って一列に並べたもの、つまり、$1$ 番目の文字をちょうど $k_1$ 個、…、$m$ 番目の文字をちょうど $k_m$ 個含む長さ $n$ の文字列を、同じものを含む順列 という。同じ文字どうしは区別しない。
また、数
$$ \binom{n}{k_1,k_2,\dots,k_m}:=\frac{n!}{k_1!\,k_2!\cdots k_m!} $$
を 多項係数 という。

$m=2$ のときは、$k_2=n-k_1$ なので
$$ \binom{n}{k_1,k_2}=\frac{n!}{k_1!\,(n-k_1)!}=\binom{n}{k_1} $$
であり、多項係数は 二項係数 と同じものになる。

多項係数を計算する
  1. $\dbinom{4}{2,1,1}=\dfrac{4!}{2!\,1!\,1!}=\dfrac{24}{2}=12$。
  2. $\dbinom{5}{2,3}=\dfrac{5!}{2!\,3!}=10=\dbinom52$。
  3. $\dbinom{6}{2,2,2}=\dfrac{720}{2\cdot2\cdot2}=90$。
  4. $\dbinom{3}{3,0,0}=\dfrac{3!}{3!\,0!\,0!}=1$。$0$ 個の文字は並べ方に影響しないので、$A,A,A$ の並べ方 $1$ 通りと一致する。

多項係数が本当に整数になることは、定義からはすぐには分からない。次の定理で、それが同じものを含む順列の個数であることを示すと、整数であることも分かる。

主定理 1:同じものを含む順列の数

同じものを含む順列の数

$m$ 種類の文字が、それぞれ $k_1,\dots,k_m$ 個あるとき($n=k_1+\cdots+k_m$)、同じものを含む順列の数は
$$ \binom{n}{k_1,k_2,\dots,k_m}=\frac{n!}{k_1!\,k_2!\cdots k_m!} $$
である。

証明を 2 つ与える。1 つめは、高校で習う「場所を選ぶ」数え方である。

高校数学で解く:場所を順に選ぶ

証明の前に、同じ計算を小さな例で行う。

A, A, B, B, B の並べ方を場所で数える

A を 2 個、B を 3 個並べる。5 か所のうち A を置く 2 か所を選べば、残りの 3 か所は B で埋まる。よって並べ方は
$$ \binom52=10 $$
通りである。定理の式 $\dfrac{5!}{2!\,3!}=\dfrac{120}{12}=10$ と一致する。

A, A, B, C の並べ方を場所で数える

A を 2 個、B と C を 1 個ずつ並べる。4 か所から A の 2 か所を選ぶ方法が $\dbinom42=6$ 通り、残り 2 か所から B の 1 か所を選ぶ方法が $\dbinom21=2$ 通り、最後の 1 か所は C である。よって $6\times2=12$ 通りで、$\dfrac{4!}{2!\,1!\,1!}=12$ と一致する。

場所を順に選ぶ

方針:$1$ 番目の文字を置く場所、$2$ 番目の文字を置く場所、…と順に選び、積の法則で掛け合わせる。最後に、二項係数の積が多項係数になることを式変形で確かめる。
段 1(並べ方と場所の選び方の対応)。並べ方を 1 つ決めると、「$1$ 番目の文字がある $k_1$ か所」「$2$ 番目の文字がある $k_2$ か所」…「$m$ 番目の文字がある $k_m$ か所」が決まる。逆に、$n$ か所をこのように $m$ 組に分ければ、各組に対応する文字を置くことで並べ方が 1 つ決まる。同じ文字どうしは区別しないので、組が同じなら並べ方も同じである。よって、並べ方の数は「$n$ か所を、大きさ $k_1,\dots,k_m$ の $m$ 組(組には番号が付いている)に分ける方法」の数に等しい。
段 2(積の法則)。まず $n$ か所から $1$ 番目の文字の $k_1$ か所を選ぶ。選び方は $\dbinom{n}{k_1}$ 通りである。次に残りの $n-k_1$ か所から $2$ 番目の文字の $k_2$ か所を選ぶ。選び方は $\dbinom{n-k_1}{k_2}$ 通りである。これを続け、$j$ 番目の文字の場所は、残りの $n-k_1-\cdots-k_{j-1}$ か所から $k_j$ か所を選ぶ。どの段階の選び方の数も、それまでに何を選んだかによらない。よって積の法則により、並べ方の数は
$$ \binom{n}{k_1}\binom{n-k_1}{k_2}\binom{n-k_1-k_2}{k_3}\cdots\binom{n-k_1-\cdots-k_{m-1}}{k_m} $$
である。
段 3(式変形)。$N_j:=n-k_1-\cdots-k_{j-1}$ とおく($N_1=n$)。$N_{j+1}=N_j-k_j$ であり、最後は $N_{m+1}=n-(k_1+\cdots+k_m)=0$ である。二項係数の公式 $\dbinom{N}{k}=\dfrac{N!}{k!\,(N-k)!}$ により
$$ \binom{N_j}{k_j}=\frac{N_j!}{k_j!\,N_{j+1}!} $$
である。これを $j=1,\dots,m$ について掛けると、$j$ 番目の分母の $N_{j+1}!$ と $j+1$ 番目の分子の $N_{j+1}!$ が約分され、
$$ \frac{N_1!}{k_1!\,N_2!}\cdot\frac{N_2!}{k_2!\,N_3!}\cdots\frac{N_m!}{k_m!\,N_{m+1}!} =\frac{N_1!}{k_1!\,k_2!\cdots k_m!\,N_{m+1}!} =\frac{n!}{k_1!\,k_2!\cdots k_m!\cdot0!} $$
となる。$0!=1$ なので、これは $\dfrac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ である。$\square$

この証明から、多項係数は二項係数の積なので整数であることも分かる。

大学数学で見る:番号を付けてから割る

2 つめの証明は、同じ文字に番号を付けて区別し、あとで番号を消す方法である。まず小さな例を見る。

番号を付けた A, A, B

2 つの A に番号を付けて $A_1,A_2$ とすると、$A_1,A_2,B$ は異なる 3 文字なので、並べ方は $3!=6$ 通りある。
$$ A_1A_2B,\quad A_2A_1B,\quad A_1BA_2,\quad A_2BA_1,\quad BA_1A_2,\quad BA_2A_1 $$
番号を消すと、はじめの 2 つは $AAB$、次の 2 つは $ABA$、最後の 2 つは $BAA$ になる(図 1)。番号を消した並べ方 1 つにつき、番号を付けた並べ方がちょうど $2!=2$ 個ずつあるので、番号を消した並べ方は $6\mathbin{÷}2=3$ 通りである。これは ex-mc-aab の答えと一致する。

A₁, A₂, B の 6 通りの並べ方は、番号を消すと 2 通りずつ同じ並べ方になり、3 通りに減ることを見る図 A₁, A₂, B の 6 通りの並べ方は、番号を消すと 2 通りずつ同じ並べ方になり、3 通りに減ることを見る図
一般の場合に、「番号を消すと何個ずつ同じになるか」を数えるのが次の補題である。

番号を消すと何個ずつ重なるか

$j$ 番目の文字の $k_j$ 個に番号を付けて区別すると、全部で $n$ 個の異なるものになる。これらの並べ方($n!$ 通り)から番号を消す。このとき、同じものを含む順列 $w$ を 1 つ決めると、番号を消して $w$ になる番号付きの並べ方は、ちょうど $k_1!\,k_2!\cdots k_m!$ 個ある。

番号の付け方を数える

方針:$w$ を固定し、「番号を消すと $w$ になる並べ方」を作る手順を数える。
段 1(何を決めればよいか)。番号を消すと $w$ になる並べ方では、$w$ で $j$ 番目の文字がある $k_j$ か所に、番号付きの $j$ 番目の文字 $k_j$ 個が 1 つずつ入っている。どの場所にどの番号の文字が入るかを決めれば、並べ方が 1 つ決まり、逆に並べ方が決まればこの入れ方も決まる。
段 2(文字の種類ごとに数える)。$j$ 番目の文字の $k_j$ か所に、番号付きの $k_j$ 個を 1 つずつ入れる方法は、$k_j$ 個の異なるものの順列なので $k_j!$ 通りある。種類ごとの入れ方は互いに影響しない。
段 3(積の法則)。よって、番号を消して $w$ になる並べ方は $k_1!\times k_2!\times\cdots\times k_m!$ 個ある。$\square$

番号を付けてから割る

方針:$n!$ 通りの番号付きの並べ方を、「番号を消すと同じになるもの」ごとのかたまりに分け、かたまりの個数を数える。
段 1(かたまりに分ける)。番号付きの並べ方は、番号を消したときにできる同じものを含む順列がどれか、によってかたまりに分かれる。どの番号付きの並べ方も、番号を消した結果はちょうど 1 つなので、ちょうど 1 つのかたまりに入る。かたまりの個数は、同じものを含む順列の個数 $q$ である。
段 2(かたまりの大きさ)。lem-mc-fiber により、どのかたまりもちょうど $k_1!\cdots k_m!$ 個の並べ方からなる。
段 3(割る)。番号付きの並べ方は全部で $n!$ 通りなので、$n!=q\times k_1!\cdots k_m!$ である。よって $q=\dfrac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ である。$\square$

「全体を同じ大きさのかたまりに分けると、かたまりの個数は全体÷かたまりの大きさ」という考え方は、円順列とじゅず順列 で円順列の数 $(n-1)!=\dfrac{n!}{n}$ を求めるときにも使う。同じものを含む順列では、かたまりの大きさは $n$ ではなく $k_1!\cdots k_m!$ である。

同じものを含む順列の数の表

小さな例で、番号付きの並べ方 $n!$、かたまりの大きさ $k_1!\cdots k_m!$、同じものを含む順列の数を比べる。

文字$n!$かたまりの大きさ並べ方の数
A A B$6$$2!=2$$3$
A A B B$24$$2!\,2!=4$$6$
A A B C$24$$2!=2$$12$
A A B B B$120$$2!\,3!=12$$10$
MISSISSIPPI$11!$$1!\,4!\,4!\,2!=1152$$34650$

A A B B の 6 通りは $AABB$、$ABAB$、$ABBA$、$BAAB$、$BABA$、$BBAA$ である。表の数は、すべて全部の並べ方を書き出して確かめた。

主定理 2:多項定理

ex-mc-xyz5 で見たように、展開の係数は並べ方の数として数えられる。これを一般の形で述べたものが多項定理である。$m=2$ の場合が 二項定理と組合せの恒等式 で扱う二項定理である。

多項定理(展開の係数)

$n$ を $0$ 以上の整数、$m$ を正の整数とし、$a_1,\dots,a_m$ を実数(または、掛け算の順序を入れ替えてよい文字)とする。このとき
$$ (a_1+a_2+\cdots+a_m)^n=\sum\binom{n}{k_1,k_2,\dots,k_m}a_1^{k_1}a_2^{k_2}\cdots a_m^{k_m} $$
が成り立つ。右辺の和は、$k_1+k_2+\cdots+k_m=n$ をみたす $0$ 以上の整数の組 $(k_1,\dots,k_m)$ のすべてにわたってとる。

証明の前に、$n=2$、$m=3$ で同じ計算をしてみる。

$(a+b+c)^2$ を展開の仕組みで計算する

$(a+b+c)^2=(a+b+c)(a+b+c)$ を分配法則で展開すると、1 つめの因数から 1 文字、2 つめの因数から 1 文字を選んで掛けた $3\times3=9$ 個の項の和になる。選んだ文字を順に書くと
$$ aa,\ ab,\ ac,\ ba,\ bb,\ bc,\ ca,\ cb,\ cc $$
である。掛け算の順序は入れ替えてよいので、$ab$ と $ba$ はどちらも $ab$ になる。$ab$ になるのは、$a,b$ の 2 文字の並べ方の数 $\dbinom{2}{1,1,0}=2$ 個である。$a^2$ になるのは $aa$ の $\dbinom{2}{2,0,0}=1$ 個である。まとめると
$$ (a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca $$
で、よく知られた公式になる。係数の和は $1+1+1+2+2+2=9=3^2$ である。

高校数学で解く:展開した項を並べ方と対応させる

展開の各項を文字列とみる

方針:展開した式の各項を、「各因数から選んだ文字を順に並べた文字列」と対応させ、同じ単項式になる文字列の個数を thm-mc-count で数える。
段 1(分配法則)。$(a_1+\cdots+a_m)^n$ は $n$ 個の因数 $(a_1+\cdots+a_m)$ の積である。分配法則をくり返し使うと、この積は、各因数から $a_1,\dots,a_m$ のどれか 1 つを選んで掛けた積を、選び方すべてについて足したものになる。$1$ 番目の因数から $a_{i_1}$、$2$ 番目の因数から $a_{i_2}$、…、$n$ 番目の因数から $a_{i_n}$ を選ぶことを、長さ $n$ の文字列 $a_{i_1}a_{i_2}\cdots a_{i_n}$ で表す。選び方と文字列は 1 対 1 に対応し、全部で $m^n$ 個ある。
段 2(同じ単項式にまとめる)。掛け算の順序は入れ替えてよいので、文字列 $a_{i_1}\cdots a_{i_n}$ の積は、その中に $a_1$ が $k_1$ 個、…、$a_m$ が $k_m$ 個あるとき $a_1^{k_1}\cdots a_m^{k_m}$ に等しい。ここで $k_1+\cdots+k_m=n$ である。
段 3(個数を数える)。$a_1$ を $k_1$ 個、…、$a_m$ を $k_m$ 個含む長さ $n$ の文字列は、def-mc-multinomial の同じものを含む順列そのものである。thm-mc-count により、その個数は $\dbinom{n}{k_1,\dots,k_m}$ である。
段 4(まとめる)。段 1 の和を、段 2 の単項式 $a_1^{k_1}\cdots a_m^{k_m}$ ごとにまとめると、その単項式は段 3 の個数だけ現れるので、係数は $\dbinom{n}{k_1,\dots,k_m}$ である。$k_1+\cdots+k_m=n$ をみたすどの組 $(k_1,\dots,k_m)$ についても、その組をもつ文字列は少なくとも 1 つある($a_1$ を $k_1$ 個並べ、続けて $a_2$ を $k_2$ 個並べ、…とすればよい)ので、右辺の和はちょうどこれらの組にわたる。$\square$

この証明の段 2 で、掛け算の順序を入れ替えてよいことを使った。この仮定が外れると定理は成り立たない(ex-mc-matrix)。

もう 1 つの証明:二項定理をくり返す

高校では、3 項の場合を二項定理を 2 回使って示すことも多い。$m=3$ の場合に書く。一般の $m$ でも、同じ議論を $m$ についての 数学的帰納法 でくり返せばよい。

二項定理を 2 回使う($m=3$)

方針:$a+b+c=(a+b)+c$ とみて二項定理を使い、出てきた $(a+b)^{n-k}$ にもう一度二項定理を使う。係数の積が多項係数になることを式変形で確かめる。
段 1(1 回目)。二項定理により
$$ (a+b+c)^n=\bigl((a+b)+c\bigr)^n=\sum_{k=0}^{n}\binom nk(a+b)^{n-k}c^k $$
である。
段 2(2 回目)。各 $k$ について、二項定理により
$$ (a+b)^{n-k}=\sum_{i=0}^{n-k}\binom{n-k}{i}a^{i}b^{n-k-i} $$
である。これを段 1 に代入すると
$$ (a+b+c)^n=\sum_{k=0}^{n}\sum_{i=0}^{n-k}\binom nk\binom{n-k}{i}a^{i}b^{n-k-i}c^{k} $$
となる。
段 3(係数の計算)。$j:=n-k-i$ とおくと、$i+j+k=n$ で、
$$ \binom nk\binom{n-k}{i}=\frac{n!}{k!\,(n-k)!}\cdot\frac{(n-k)!}{i!\,(n-k-i)!}=\frac{n!}{k!\,i!\,j!} $$
である($(n-k)!$ が約分される)。これは $\dbinom{n}{i,j,k}$ である。
段 4(組の対応)。段 2 の二重和で $(k,i)$ が $0\le k\le n$、$0\le i\le n-k$ を動くとき、$(i,j,k)=(i,\,n-k-i,\,k)$ は $i+j+k=n$ をみたす $0$ 以上の整数の組をちょうど 1 回ずつ動く。逆に、そのような組 $(i,j,k)$ からは $k$ と $i$ が決まり、$0\le k\le n$、$0\le i\le n-k$ をみたすからである。よって
$$ (a+b+c)^n=\sum_{i+j+k=n}\binom{n}{i,j,k}a^ib^jc^k $$
である。$\square$

段 3 の約分は、prf-mc-count-choose の段 3 と同じ計算である。展開の式で係数を追うことと、場所を順に選ぶことが、同じ計算になっている。

$(a+b+c)^3$ の係数

$n=3$ のとき、$i+j+k=3$ をみたす組は 10 個ある。係数は

  • $a^3,b^3,c^3$:$\dbinom{3}{3,0,0}=1$
  • $a^2b,a^2c,ab^2,b^2c,ac^2,bc^2$:$\dbinom{3}{2,1,0}=\dfrac{6}{2}=3$
  • $abc$:$\dbinom{3}{1,1,1}=6$
    である。よって
    $$ (a+b+c)^3=a^3+b^3+c^3+3(a^2b+a^2c+ab^2+b^2c+ac^2+bc^2)+6abc $$
    である。係数の和は $3\times1+6\times3+6=27=3^3$ である。係数を三角形に並べると図 2 のようになる。
    展開の項の個数、つまり $k_1+\cdots+k_m=n$ をみたす $0$ 以上の整数の組の個数は、$m$ 種類から重複を許して $n$ 個選ぶ 重複組合せ の数 ${}_m\mathrm{H}_n=\dbinom{n+m-1}{n}$ である(場合の数の数え方の体系)。$(a+b+c)^3$ では ${}_3\mathrm{H}_3=\dbinom{5}{3}=10$ で、上の「組は 10 個」と一致する。

(a+b+c)³ の展開の 10 個の係数を、上から a の次数が 3, 2, 1, 0 の順に三角形に並べた図 (a+b+c)³ の展開の 10 個の係数を、上から a の次数が 3, 2, 1, 0 の順に三角形に並べた図

図 2 の段と二項定理

図 2 の各段は、$a$ の次数が $3,2,1,0$ の項である。$a$ の次数が $3-s$ の段には、$\dbinom{3}{s}\times(b+c)^s$ の展開の係数が並ぶ。たとえば下から 2 段目($s=2$)は $3\times(1,2,1)=(3,6,3)$ である。これは prf-mc-multinomial-binomial の段 1・段 2 と同じ構造である。

係数を求める計算

係数に数が掛かる場合

$(2x-y+z)^4$ の展開における $x^2yz$ の係数を求める。多項定理で $a_1=2x$、$a_2=-y$、$a_3=z$ とすると、$(2x)^2(-y)^1z^1$ の項の係数は
$$ \binom{4}{2,1,1}\cdot2^2\cdot(-1)^1\cdot1^1=12\cdot4\cdot(-1)=-48 $$
である。$x^2yz$ になる項はこの 1 つだけなので、係数は $-48$ である。

同じ次数になる項が複数ある場合

$(1+x+x^2)^4$ の展開における $x^3$ の係数を求める。多項定理で $a_1=1$、$a_2=x$、$a_3=x^2$ とすると、項は $\dbinom{4}{k_1,k_2,k_3}x^{k_2+2k_3}$ である。$x^3$ になるのは
$$ k_1+k_2+k_3=4,\qquad k_2+2k_3=3 $$
をみたす組である。$k_3=0$ なら $k_2=3$、$k_1=1$。$k_3=1$ なら $k_2=1$、$k_1=2$。$k_3\ge2$ では $k_2+2k_3\ge4$ となって合わない。よって
$$ \binom{4}{1,3,0}+\binom{4}{2,1,1}=4+12=16 $$
である。1 つの組だけを見て $4$ や $12$ と答えると誤りになる。

係数の和

多項定理で $a_1=\cdots=a_m=1$ とすると、左辺は $m^n$、右辺は多項係数の和なので
$$ \sum_{k_1+\cdots+k_m=n}\binom{n}{k_1,\dots,k_m}=m^n $$
である。$m=3$、$n=2$ では ex-mc-abc2 の $1+1+1+2+2+2=9$、$n=3$ では ex-mc-abc3 の $27$ である。数え上げで読むと、長さ $n$ の文字列($m$ 種類の文字、同じ文字を何回使ってもよい)は全部で $m^n$ 個あり(場合の数の数え方の体系 の重複順列)、それを文字ごとの個数で分けて数えた式である。

多項係数の漸化式

二項係数には Pascal の関係 $\dbinom nk=\dbinom{n-1}{k-1}+\dbinom{n-1}{k}$ がある(二項定理と組合せの恒等式)。多項係数にも同じ形の関係がある。

多項係数の漸化式

$n\ge1$ とし、$k_1,\dots,k_m$ を $0$ 以上の整数で $k_1+\cdots+k_m=n$ とする。このとき
$$ \binom{n}{k_1,\dots,k_m}=\sum_{i:\,k_i\ge1}\binom{n-1}{k_1,\dots,k_i-1,\dots,k_m} $$
が成り立つ。右辺の和は、$k_i\ge1$ となる $i$ すべてにわたってとり、各項は $k_i$ だけを $1$ 減らした多項係数である。

最後の文字で分ける

方針:同じものを含む順列を、最後($n$ 番目)の文字が何かで分けて数える。
段 1(分ける)。$1$ 番目の文字を $k_1$ 個、…、$m$ 番目の文字を $k_m$ 個含む長さ $n$ の文字列を考える。最後の文字は、$k_i\ge1$ となる $i$ 番目の文字のどれかである。最後の文字が何かで、文字列全体は互いに重ならない組に分かれる。
段 2(各組を数える)。最後の文字が $i$ 番目の文字である文字列から最後の文字を取り除くと、$i$ 番目の文字を $k_i-1$ 個、それ以外の文字を $k_j$ 個含む長さ $n-1$ の文字列になる。逆に、そのような長さ $n-1$ の文字列の後ろに $i$ 番目の文字を付ければ、元の組の文字列に戻る。この 2 つの操作は互いに逆なので、この組の文字列は長さ $n-1$ の文字列と 1 対 1 に対応する。thm-mc-count により、その個数は $\dbinom{n-1}{k_1,\dots,k_i-1,\dots,k_m}$ である。
段 3(足す)。段 1 の組の個数を足すと、左辺の $\dbinom{n}{k_1,\dots,k_m}$ になる(和の法則)。$\square$

漸化式を確かめる
  1. $\dbinom{4}{2,1,1}=12$ を最後の文字で分けると
    $$ \binom{3}{1,1,1}+\binom{3}{2,0,1}+\binom{3}{2,1,0}=6+3+3=12 $$
    である。A, A, B, C の並べ方のうち、最後が A のものが 6 通り(前の 3 文字 A, B, C の並べ方)、最後が B のものが 3 通り(A, A, C の並べ方)、最後が C のものが 3 通り(A, A, B の並べ方)である。
  2. $m=2$ では、$\dbinom{n}{k,\,n-k}=\dbinom{n-1}{k-1,\,n-k}+\dbinom{n-1}{k,\,n-k-1}$($1\le k\le n-1$)となり、Pascal の関係 $\dbinom nk=\dbinom{n-1}{k-1}+\dbinom{n-1}{k}$ そのものである。

同じ関係は、最短経路の数え上げと鏡像原理 で格子上の経路の数を「最後の 1 歩が右か上か」で分けて数えるときにも現れる。

組分けへの応用

人を部屋に分ける問題は、同じものを含む順列の言い換えである。人に番号 $1,\dots,n$ を付け、$i$ 番の人が入る部屋の名前を $i$ 番目に書くと、部屋の割り当てが 1 つの文字列になる。

6 人を 2 人ずつ 3 部屋に分ける

6 人を 2 人ずつ部屋 A, B, C に分ける。人 $1,\dots,6$ の入る部屋を順に書くと、A, B, C をちょうど 2 個ずつ含む長さ 6 の文字列になり、逆にそのような文字列から割り当てが 1 つ決まる。よって分け方は
$$ \binom{6}{2,2,2}=\frac{720}{8}=90 $$
通りである。
部屋に名前がなく、「どの 2 人が同じ部屋か」だけを考えるときは、2 人組 3 つへの分け方を数える。2 人組 3 つへの分け方を 1 つ決めると、3 つの組に部屋の名前 A, B, C を付ける方法が $3!=6$ 通りあり、どれも異なる割り当てになる(3 つの組は互いに異なる 2 人組なので、名前の付け方が違えば割り当ても違う)。よって、部屋を区別しない分け方は $90\mathbin{÷}6=15$ 通りである。全部の分け方を書き出しても $15$ 通りになる。

組の大きさがそろわないとき
  1. 6 人を 1 人・2 人・3 人の 3 組に分ける。組の大きさがすべて違うので、「1 人の組」「2 人の組」「3 人の組」は大きさで区別できる。部屋に名前を付けても付けなくても分け方は同じで、
    $$ \binom{6}{1,2,3}=\frac{720}{1\cdot2\cdot6}=60 $$
    通りである。ここで $3!$ で割ると $10$ になり、誤りである。
  2. 6 人を 1 人・1 人・4 人の 3 組に分ける。名前の付いた部屋 A(1 人)、B(1 人)、C(4 人)への割り当ては $\dbinom{6}{1,1,4}=30$ 通りある。部屋に名前がないときは、1 人の組 2 つだけが入れ替え可能で、4 人の組は大きさで区別できる。よって $30\mathbin{÷}2!=15$ 通りである。
    どちらの数も、全部の分け方を書き出して確かめた。割る数は「大きさが等しい組どうしの入れ替えの数」であり、組の数の階乗とは限らない。

6 人を名前のない 3 組(どの組も 1 人以上、大きさは自由)に分ける方法は、組の大きさで分けると、4 人・1 人・1 人が $15$ 通り(ex-mc-rooms-unequal (2))、3 人・2 人・1 人が $60$ 通り(同 (1))、2 人・2 人・2 人が $15$ 通り(ex-mc-rooms)で、合計 $15+60+15=90$ 通りである。これは 場合の数の数え方の体系 の組分けの例で、第 2 種 Stirling 数 $S(6,3)=90$ として現れる。この $90$ は、ex-mc-rooms の $\dbinom{6}{2,2,2}=90$(名前のある部屋に 2 人ずつ)とは別のものを数えた数であり、値が一致するのは偶然である。

大学数学で見る

対称群の作用として

lem-mc-fiber は、大学の言葉では次のように言い直せる。

並べかえの群の作用

長さ $n$ の文字列の場所を並べかえる操作(場所 $1,\dots,n$ の置換)は全部で $n!$ 個あり、対称群 $S_n$ をなす。$S_n$ は文字列の集合に働き(群作用)、文字列 $w$ を場所の並べかえで移せる文字列の全体($w$ の 軌道)は、$w$ と同じ文字を同じ個数ずつ含む文字列の全体、つまり同じものを含む順列の全体である。
$w$ を変えない並べかえは、$1$ 番目の文字がある $k_1$ か所の中での並べかえ、…、$m$ 番目の文字がある $k_m$ か所の中での並べかえを組み合わせたものであり、ちょうど $k_1!\cdots k_m!$ 個ある(prf-mc-fiber の段 2 と同じ数え方)。軌道の大きさと「動かさない操作の個数」の積が群の要素の個数に等しい、という関係(軌道・安定化群の関係。証明は 期待値の線形性と数え上げ)を使うと、軌道の大きさは $\dfrac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ になる。これは thm-mc-count の 3 つめの見方である。動かさない操作の全体は $S_n$ の部分群であり、軌道の要素はこの部分群による 剰余類 と 1 対 1 に対応する。

円順列とじゅず順列 では、並べかえの群のかわりに回転の群(要素 $n$ 個)が働き、異なるものを並べるときはどの軌道も大きさ $n$ になる。同じものを含む順列では、群は $S_n$ 全体で、軌道はただ 1 つ(同じ文字の個数が決まった文字列の全体)である。

多項分布

多項定理は、確率の計算にも現れる。1 回の試行で結果 $1,\dots,m$ がそれぞれ確率 $p_1,\dots,p_m$($p_1+\cdots+p_m=1$)で起こるとし、この試行を独立に $n$ 回くり返す。

多項分布の確率

上の状況で、結果 $1$ がちょうど $k_1$ 回、…、結果 $m$ がちょうど $k_m$ 回起こる確率($k_1+\cdots+k_m=n$)は
$$ \binom{n}{k_1,\dots,k_m}p_1^{k_1}\cdots p_m^{k_m} $$
である。また、これを $k_1+\cdots+k_m=n$ となるすべての組について足すと $1$ になる。

起こり方を文字列で数える

方針:$n$ 回の結果を長さ $n$ の文字列で表し、1 つの文字列が起こる確率と、条件をみたす文字列の個数を掛ける。
段 1(1 つの起こり方の確率)。$n$ 回の結果を順に書いた文字列を 1 つ決める。試行は独立なので、その文字列が起こる確率は各回の確率の積である。結果 $i$ が $k_i$ 回現れる文字列なら、積は $p_1^{k_1}\cdots p_m^{k_m}$ で、文字列の並び方によらない。
段 2(起こり方の個数)。結果 $1$ を $k_1$ 回、…、結果 $m$ を $k_m$ 回含む文字列の個数は、thm-mc-count により $\dbinom{n}{k_1,\dots,k_m}$ である。これらの起こり方は同時には起こらないので、確率は段 1 の値のこの個数倍である。
段 3(和が 1)。thm-mc-multinomial で $a_i=p_i$ とすると、確率の和は $(p_1+\cdots+p_m)^n=1^n=1$ である。$\square$

多項分布の確率を計算する
  1. さいころを 6 回投げて、1 から 6 の目がちょうど 1 回ずつ出る確率は、$p_1=\cdots=p_6=\dfrac16$、$k_1=\cdots=k_6=1$ として
    $$ \binom{6}{1,1,1,1,1,1}\Bigl(\frac16\Bigr)^6=\frac{720}{46656}=\frac{5}{324}\approx0.0154 $$
    である。
  2. 赤玉 3 個、白玉 2 個、青玉 1 個が入った袋から、1 個取り出して色を見て戻すことを 6 回くり返す。赤がちょうど 3 回、白が 2 回、青が 1 回出る確率は、$p=\dfrac12,\dfrac13,\dfrac16$ として
    $$ \binom{6}{3,2,1}\Bigl(\frac12\Bigr)^3\Bigl(\frac13\Bigr)^2\frac16=60\cdot\frac18\cdot\frac19\cdot\frac16=\frac{60}{432}=\frac{5}{36} $$
    である。

結果が 2 通り($m=2$)の場合が 二項分布 で、二項分布から正規分布へ で詳しく扱う。

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
同じ文字どうしは区別しない並べ方は $\dfrac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ 通りex-mc-distinct
掛け算の順序を入れ替えてよい多項定理ex-mc-matrix
目的の単項式になる組 $(k_1,\dots,k_m)$ が 1 つだけ係数は多項係数 1 つex-mc-poly
組の大きさがすべて等しい部屋を区別しないときは組の数の階乗で割るex-mc-rooms-unequal
反例:区別できる玉

赤玉 2 個と白玉・青玉を 1 個ずつ並べる。赤玉 2 個が区別できないなら $\dbinom{4}{2,1,1}=12$ 通りである。しかし、2 個の赤玉に番号が書いてあって区別できるなら、4 個はすべて異なるので $4!=24$ 通りである。lem-mc-fiber で「番号を消す」操作が、ちょうど「区別しない」ことにあたる。何を同じとみなすかは問題の状況で決まり、それによって答えが変わる。

反例:掛け算の順序を入れ替えられないとき

2 次の正方行列
$$ A=\begin{pmatrix}0&1\\ 0&0\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}0&0\\ 1&0\end{pmatrix} $$
を考える。行列の積を計算すると
$$ AB=\begin{pmatrix}1&0\\ 0&0\end{pmatrix},\qquad BA=\begin{pmatrix}0&0\\ 0&1\end{pmatrix},\qquad A^2=B^2=\begin{pmatrix}0&0\\ 0&0\end{pmatrix} $$
である。よって
$$ (A+B)^2=A^2+AB+BA+B^2=\begin{pmatrix}1&0\\ 0&1\end{pmatrix} $$
であるが、多項定理($m=2$、$n=2$)の形の右辺は
$$ A^2+2AB+B^2=\begin{pmatrix}2&0\\ 0&0\end{pmatrix} $$
で、両者は等しくない。prf-mc-multinomial-words の段 2 で「$ab$ と $ba$ はどちらも $ab$」とまとめたところが、$AB\ne BA$ のために成り立たない。展開そのもの(段 1 の、長さ $n$ の文字列すべての和)は正しいが、同じ単項式にまとめることができない。

ex-mc-poly では、$x^3$ になる組が 2 つあった。$a_1,\dots,a_m$ が互いに関係のない文字なら、単項式 $a_1^{k_1}\cdots a_m^{k_m}$ は組ごとに異なるので係数は多項係数 1 つである。$1,x,x^2$ のように同じ文字の冪を代入すると、異なる組が同じ単項式になり、係数はそれらの和になる。

さらに先へ

  • 多項係数と多項定理は、KT17 §2.7(pp. 29–31、Theorem 2.33 と Example 2.32・2.34)と Bog17 §3.2.2 の Problem 148・151(pp. 60–61)にある。Bogart は多項係数を「$k$ 個の要素に $n$ 種類のラベルを、ラベル $i$ をちょうど $j_i$ 回使って付ける方法の数」として導入しており、これは ex-mc-rooms の読み方と同じである。
  • 指数関数の積 $e^{a_1x}\cdots e^{a_mx}=e^{(a_1+\cdots+a_m)x}$ の両辺を $x$ の冪級数に展開し、$x^n$ の係数を比べて $n!$ を掛けると、多項定理がもう一度出てくる。この見方は 母関数 の記事の指数型母関数につながる(高校数学での母関数の入口は 母関数:数列を関数として扱う)。
  • 大学向けの用語解説としては 多項係数、多項定理、多項分布 がある。多項分布は、さいころの目の出方が偏っていないかを調べる検定など、統計でも使われる。

関連項目

参考文献

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