三角形の等周問題(isoperimetric problem for triangles)とは、周の長さを決めた三角形のうち面積が最大のものを求める問題である。周の長さが $2s$ の三角形の面積 $S$ は $S\le\frac{s^2}{3\sqrt3}$(周を $L$ として $L^2\ge12\sqrt3\,S$)を満たし、等号は正三角形のときに限る。証明は、Heron の公式の正の因数 $s-a$、$s-b$、$s-c$ の和が $s$ であることと、相加・相乗平均の不等式による。1 辺と周を決めると頂点は楕円の上を動き、面積は二等辺三角形で最大になる。面積を決めると周は正三角形で最小になり、系として Weitzenböck の不等式 $a^2+b^2+c^2\ge4\sqrt3\,S$ が出る。2 辺を決めると最大は間の角が直角のときで、周を決めても面積が最小の三角形はない。
前提知識: 三角形の面積の公式, 相加平均と相乗平均, 2次曲線の焦点と準線
長さ $12$ の紐を輪にして、3 本の画びょうに掛けて三角形を作る。画びょうの位置を変えると、周の長さは $12$ のまま、三角形の形と面積が変わる。面積がいちばん大きくなるのはどんな三角形だろうか。
3 辺が分かっている三角形の面積は、Heron の公式で計算できる(三角形の面積の公式)。3 辺を $a,b,c$、周の長さの半分を $s=\dfrac{a+b+c}2$ とすると、面積 $S$ は
$$
S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
$$
である。周の長さが $12$ なら $s=6$ である。
$s=6$ として Heron の公式で計算する。
(1) 3 辺 $3,4,5$:$S^2=6\cdot3\cdot2\cdot1=36$ で $S=6$ である(直角三角形なので $\dfrac12\cdot3\cdot4=6$ とも一致する)。
(2) 3 辺 $2,5,5$:$S^2=6\cdot4\cdot1\cdot1=24$ で $S=2\sqrt6=4.89\ldots$ である。
(3) 3 辺 $3,\dfrac92,\dfrac92$:$S^2=6\cdot3\cdot\dfrac32\cdot\dfrac32=\dfrac{81}2$ で $S=\dfrac{9\sqrt2}2=6.36\ldots$ である。
(4) 3 辺 $4,4,4$(正三角形):$S^2=6\cdot2\cdot2\cdot2=48$ で $S=4\sqrt3=6.92\ldots$ である。
4 つの中では正三角形がいちばん広い。
ex-tip-start の 4 つの中では正三角形が最大だった。しかし、ほかの無数の三角形と比べたわけではない。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| Heron の公式の $s-a$、$s-b$、$s-c$ | 和が $s$ の 3 つの正の数 | 条件付きの最大問題の変数 |
| 相加平均と相乗平均の不等式 | 等号は正三角形 | Lagrange の未定乗数法 |
| 2 点からの距離の和が一定の点 | 頂点は楕円の上を動く | 1 つの変数を固定した最大化 |
| 周の長さと面積の比べ方 | 三角形の等周不等式 $L^2\ge12\sqrt3\,S$ | 等周不等式の多角形版 |
まず、決めるものを 1 つ増やす。底辺 $BC$ の長さ $a$ と周の長さ $2s$ を決めると、残りの 2 辺の和 $b+c=2s-a$ が決まる。
$B(-2,0)$、$C(2,0)$ として、$AB+AC=12-4=8$ となる頂点 $A$ をいくつかとる。
(1) $A(-2,3)$:$AB=3$、$AC=\sqrt{4^2+3^2}=5$ で、$AB+AC=8$ である。高さは $3$ なので $S=\dfrac12\cdot4\cdot3=6$ である(ex-tip-start (1) の $3,4,5$)。
(2) $A\left(-1,\dfrac{3\sqrt5}2\right)$:$AB^2=1+\dfrac{45}4=\dfrac{49}4$、$AC^2=9+\dfrac{45}4=\dfrac{81}4$ で、$AB+AC=\dfrac72+\dfrac92=8$ である。$S=\dfrac12\cdot4\cdot\dfrac{3\sqrt5}2=3\sqrt5=6.70\ldots$ である。
(3) $A(0,2\sqrt3)$:$AB=AC=\sqrt{4+12}=4$ で、正三角形である。$S=\dfrac12\cdot4\cdot2\sqrt3=4\sqrt3=6.92\ldots$ である。
底辺が同じなので、面積は高さ($A$ の $y$ 座標)だけで決まる。3 つの中では (3) の二等辺三角形が最も高い。
2 点 $B$、$C$ からの距離の和が一定の点の集まりは、$B$、$C$ を焦点とする楕円である(2次曲線の焦点と準線)。頂点 $A$ はこの楕円の上を動き、面積が最大になるのは楕円の最も高い点、つまり $AB=AC$ のときである。これを式で確かめる。
$0< a< s$ とする。辺 $BC$ の長さが $a$、周の長さが $2s$ の三角形 $ABC$ の面積は
$$
S\le\frac a2\sqrt{s(s-a)}
$$
を満たし、等号は $AB=AC$ のときに限る。$AB=AC=s-\dfrac a2$ の二等辺三角形は実際にあり、面積は右辺に等しい。
方針:Heron の公式の 4 つの因数のうち、$s$ と $s-a$ は決まっている。残りの 2 つの和が一定であることを使い、2 つの数の相加平均と相乗平均の不等式を当てる。
段 1(2 つの因数の和)。$x=s-b$、$y=s-c$ とおく。三角形の成立条件 $b< c+a$ の両辺に $b$ を足すと $2b< a+b+c=2s$ なので、$x=s-b>0$ である。同じく $y>0$ である。和は
$$
x+y=2s-(b+c)=(a+b+c)-(b+c)=a
$$
で、決まった値である。
段 2(相加平均と相乗平均)。$x,y>0$ なので 相加平均と相乗平均 により $\sqrt{xy}\le\dfrac{x+y}2=\dfrac a2$、つまり $xy\le\dfrac{a^2}4$ であり、等号は $x=y$ のときに限る。
段 3(面積)。Heron の公式から
$$
S^2=s(s-a)\,xy\le s(s-a)\cdot\frac{a^2}4
$$
である。$s(s-a)>0$ を掛けても不等号の向きは変わらない。両辺の正の平方根をとって $S\le\dfrac a2\sqrt{s(s-a)}$ を得る。等号は $x=y$、つまり $s-b=s-c$、$b=c$ のときに限る。
段 4(二等辺三角形があること)。$b=c=s-\dfrac a2$ とおく。$b+c=2s-a>a$($s>a$ による)であり、$a+b>c$、$c+a>b$ は $a>0$ から成り立つので、3 辺 $a,b,c$ の三角形がある。その面積は段 3 の等号の場合なので、右辺に等しい。$\square$
楕円で見ると、面積の最大値の意味が分かる。$B\left(-\dfrac a2,0\right)$、$C\left(\dfrac a2,0\right)$ とおくと、$AB+AC=2s-a$ を満たす点 $A$ は、長半径 $p=s-\dfrac a2$、焦点までの距離 $\dfrac a2$ の楕円
$$
\frac{x^2}{p^2}+\frac{y^2}{q^2}=1,\qquad q^2=p^2-\left(\frac a2\right)^2=\left(s-\frac a2\right)^2-\frac{a^2}4=s^2-sa=s(s-a)
$$
の上にある(2次曲線の焦点と準線)。楕円の上の点では $\lvert y\rvert\le q$ で、等号は短軸の端 $(0,\pm q)$、つまり $AB=AC$ の点である。三角形の高さは $\lvert y\rvert$ なので、面積は $\dfrac12\cdot a\cdot\lvert y\rvert\le\dfrac a2\sqrt{s(s-a)}$ となり、prop-tip-ellipse と同じ結論になる。
底辺 BC を 4、周を 12 に固定すると、頂点 A は B と C を焦点とする破線の楕円の上を動き、面積は楕円の最も高い点で最大の 4√3 になる
図 1 の 4 つの三角形は、左から 2 辺が $\dfrac52,\dfrac{11}2$(面積 $\sqrt{21}$)、$3,5$(面積 $6$)、$\dfrac72,\dfrac92$(面積 $3\sqrt5$)、$4,4$(面積 $4\sqrt3$)である。頂点が楕円の上を高くなるほど面積が大きい。
prop-tip-ellipse を使うと、二等辺三角形でない三角形は、周の長さを変えずに面積を大きくできる。1 辺を残し、他の 2 辺をその平均の長さにそろえればよい。周 $12$ の三角形 $4,\dfrac92,\dfrac72$(面積 $3\sqrt5=6.70\ldots$)から始めて、これを繰り返す。
(1) 辺 $\dfrac92$ を残し、他の 2 辺 $4$、$\dfrac72$ を平均の $\dfrac{4+\frac72}2=\dfrac{15}4$ にそろえる:3 辺 $\dfrac92,\dfrac{15}4,\dfrac{15}4$ で、$S^2=6\cdot\dfrac32\cdot\dfrac94\cdot\dfrac94=\dfrac{729}{16}$、$S=\dfrac{27}4=6.75$ である。
(2) 辺 $\dfrac{15}4$ を 1 本残し、他の 2 辺を $\dfrac{\frac92+\frac{15}4}2=\dfrac{33}8$ にそろえる:3 辺 $\dfrac{15}4,\dfrac{33}8,\dfrac{33}8$ で、$S^2=6\cdot\dfrac94\cdot\dfrac{15}8\cdot\dfrac{15}8=\dfrac{6075}{128}$、$S=\dfrac{45\sqrt6}{16}=6.88\ldots$ である。
面積は $6.70\ldots\to6.75\to6.88\ldots$ と増え、正三角形の $4\sqrt3=6.92\ldots$ に近づく。ただし、この手順を何回繰り返しても 3 辺はちょうどそろわない(残した 1 辺と他の 2 辺の差は $\dfrac34$、$\dfrac38$、…と、1 回ごとに半分になるだけである)。
ex-tip-steps から、「面積が最大の三角形があるなら、それはどの 2 辺も等しい、つまり正三角形である」ことが分かる。二等辺でない 2 辺があれば、prop-tip-ellipse で面積をもっと大きくできるからである。しかし、この論法だけでは 最大の三角形があること は示せていない。最大があることを別に確かめないと、この論法は結論を出せない(ex-tip-cx-nonequilateral、rem-tip-existence)。次の節では、最大の存在を仮定せずに、正三角形が最大であることを直接示す。
周の長さが $2s$ の三角形の面積 $S$ は
$$
S\le\frac{s^2}{3\sqrt3}
$$
を満たし、等号は正三角形のときに限る。周の長さを $L=2s$ で書くと
$$
L^2\ge12\sqrt3\,S
$$
である。
方針:Heron の公式の 3 つの因数 $s-a$、$s-b$、$s-c$ の和が $s$ で一定であることを使い、3 つの数の相加平均と相乗平均の不等式を当てる。
段 1(3 つの因数は正)。$x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$ とおく。三角形の成立条件 $a< b+c$ の両辺に $a$ を足すと $2a< a+b+c=2s$ なので $x>0$ である。同じく $y>0$、$z>0$ である。
段 2(和は $s$)。
$$
x+y+z=3s-(a+b+c)=3s-2s=s
$$
である。
段 3(相加平均と相乗平均)。$x,y,z>0$ なので、3 つの数の相加平均と相乗平均の不等式(相加平均と相乗平均)により
$$
xyz\le\left(\frac{x+y+z}3\right)^3=\frac{s^3}{27}
$$
であり、等号は $x=y=z$ のときに限る。
段 4(面積)。Heron の公式と段 3 から
$$
S^2=s\,xyz\le s\cdot\frac{s^3}{27}=\frac{s^4}{27}
$$
である。両辺の正の平方根をとると、$\sqrt{27}=3\sqrt3$ なので $S\le\dfrac{s^2}{3\sqrt3}$ を得る。
段 5(等号)。等号は段 3 で等号が成り立つとき、つまり $s-a=s-b=s-c$、$a=b=c$ のときに限る。逆に 1 辺 $\dfrac{2s}3$ の正三角形の面積は
$$
\frac{\sqrt3}4\left(\frac{2s}3\right)^2=\frac{\sqrt3\,s^2}9=\frac{s^2}{3\sqrt3}
$$
で、右辺に等しい($\dfrac{\sqrt3}9=\dfrac{\sqrt3}{9}\cdot\dfrac{\sqrt3}{\sqrt3}=\dfrac3{9\sqrt3}=\dfrac1{3\sqrt3}$)。
段 6($L$ で書く)。$s=\dfrac L2$ を代入すると $S\le\dfrac{L^2}{4\cdot3\sqrt3}=\dfrac{L^2}{12\sqrt3}$ で、両辺に $12\sqrt3$ を掛けて $L^2\ge12\sqrt3\,S$ となる。$\square$
この証明は「最大の三角形がある」ことを仮定していない。周が $2s$ のどの三角形についても面積が $\dfrac{s^2}{3\sqrt3}$ 以下であることを直接示し、その値を正三角形が実際にとることを確かめた。これで最大が存在し、それが正三角形であることが同時に分かる。
$x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$ から $a=y+z$、$b=z+x$、$c=x+y$ と逆に書ける。三角形の 3 辺を 3 つの正の数 $x,y,z$ で表すこの書き方を Ravi 置換 という(Ravi置換)。$x,y,z$ は内接円の接点で辺が分けられる長さでもある(三角形の面積の公式)。Ravi 置換を使うと、三角形の成立条件は「$x,y,z$ が正」だけになり、条件のない 3 つの正の数の問題になる。これが証明の段 1・段 2 でしたことである。
(3) 周 $30$ の三角形 $5,12,13$ は直角三角形で $S=30$、正三角形 $10,10,10$ は $S=25\sqrt3=43.3\ldots$ である。上限は $s=15$ で $\dfrac{225}{3\sqrt3}=25\sqrt3$ となり、正三角形で等号になる。
和が 6 の 3 つの正の数 x、y、z を正三角形の中の点で表し、面積 S=√(6xyz) を濃淡で塗った図。中心の x=y=z=2(正三角形 4, 4, 4)で面積が最大になり、ふちに近づくほど三角形がつぶれて面積は 0 に近づく
図 2 の三角形の領域の各点が、周 $12$ の三角形 1 つに対応する(点につけた 3 つの数は辺の長さ $a,b,c$ である)。領域の辺の上では $x,y,z$ のどれかが $0$ で、三角形がつぶれて線分になる。面積の等高線は中心を囲む閉じた曲線になり、中心で面積が最大になる。
内接円の半径を $r$ とする。内心から各辺に下ろした垂線の足で辺を分けると、頂点 $A$ から接点までの長さは $s-a$ で、直角三角形の辺の比から $s-a=r\cot\dfrac A2$ である($\cot\theta=\dfrac1{\tan\theta}$。三角形の内心と傍心)。同じく $s-b=r\cot\dfrac B2$、$s-c=r\cot\dfrac C2$ である。3 つを足すと、段 2 の $x+y+z=s$ から
$$s=r\left(\cot\frac A2+\cot\frac B2+\cot\frac C2\right)$$
である。面積は $S=rs$(内心で 3 つの三角形に分ける)なので、$r=\dfrac sT$($T$ は括弧の中の和)を代入して $S=\dfrac{s^2}T$ となる。
$\dfrac A2,\dfrac B2,\dfrac C2$ は和が $\dfrac\pi2$ の、$0$ と $\dfrac\pi2$ の間の角である。関数 $\cot\theta$ は $0<\theta<\dfrac\pi2$ で下に凸(2 階導関数は $\dfrac{2\cos\theta}{\sin^3\theta}>0$)なので、Jensenの不等式(高校数学) により
$$T\ge3\cot\left(\frac13\cdot\frac\pi2\right)=3\cot\frac\pi6=3\sqrt3$$
で、等号は $A=B=C$ のときに限る。よって $S=\dfrac{s^2}T\le\dfrac{s^2}{3\sqrt3}$ である。
たとえば $3,4,5$ の三角形では $r=\dfrac Ss=1$ で、$\cot\dfrac A2,\cot\dfrac B2,\cot\dfrac C2$ は $s-a=3$、$s-b=2$、$s-c=1$ に等しく、$T=6$、$S=\dfrac{36}6=6$ となる。この証明は、内接円をもつ多角形に同じ形で広がる(多角形の等周問題)。
thm-tip-main の不等式 $L^2\ge12\sqrt3\,S$ は、周の長さ $L$ と面積 $S$ について対称な形をしている。周を決めれば面積の上限が、面積を決めれば周の下限が読みとれる。
面積が $S$ の三角形の周の長さ $L$ は
$$
L\ge\sqrt{12\sqrt3\,S}
$$
を満たし、等号は正三角形のときに限る。
thm-tip-main により $L^2\ge12\sqrt3\,S$ である。$L>0$ なので両辺の正の平方根をとると $L\ge\sqrt{12\sqrt3\,S}$ となる。等号は $L^2=12\sqrt3\,S$ のときで、thm-tip-main によりそれは正三角形のときに限る。逆に、面積 $S$ の正三角形は 1 辺 $t$ が $\dfrac{\sqrt3}4t^2=S$ を満たすものとしてあり、その周で等号が成り立つ。$\square$
同じ主定理から、辺の 2 乗の和と面積の不等式も出る。
三角形の 3 辺を $a,b,c$、面積を $S$ とすると
$$
a^2+b^2+c^2\ge4\sqrt3\,S
$$
であり、等号は正三角形のときに限る。
段 1(和の 2 乗)。展開して整理すると
$$
3(a^2+b^2+c^2)-(a+b+c)^2=2a^2+2b^2+2c^2-2ab-2bc-2ca=(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\ge0
$$
なので、$(a+b+c)^2\le3(a^2+b^2+c^2)$ である。等号は $a=b=c$ のときに限る。
段 2(主定理と合わせる)。$L=a+b+c$ として thm-tip-main と段 1 を続けて使うと
$$
12\sqrt3\,S\le L^2\le3(a^2+b^2+c^2)
$$
である。両端を $3$ で割って $4\sqrt3\,S\le a^2+b^2+c^2$ を得る。等号が成り立つなら 2 つの不等式がどちらも等号なので、正三角形である。逆に正三角形なら両方とも等号になる。$\square$
(3) $2,3,4$:$s=\dfrac92$、$S^2=\dfrac92\cdot\dfrac52\cdot\dfrac32\cdot\dfrac12=\dfrac{135}{16}$、$S=\dfrac{3\sqrt{15}}4=2.90\ldots$ で、$4\sqrt3\,S=3\sqrt{45}=9\sqrt5=20.1\ldots$、$a^2+b^2+c^2=29$ である。
Weitzenböck の不等式は、余弦定理(高校数学) で余弦定理と面積の公式を組み合わせて直接証明されている。ここでは、それが三角形の等周不等式から段 1 の不等式 1 つで出ることを見た。面積の上限として比べると、等周不等式の $\dfrac{L^2}{12\sqrt3}$ は、$L^2\le3(a^2+b^2+c^2)$ により Weitzenböck の不等式の $\dfrac{a^2+b^2+c^2}{4\sqrt3}$ 以下である。$3,4,5$ では前者が $\dfrac{144}{12\sqrt3}=4\sqrt3=6.92\ldots$、後者が $\dfrac{50}{4\sqrt3}=7.21\ldots$ で(実際の面積は $6$)、等周不等式の方が面積をきつく抑えている。
「面積が最大の三角形」は、何を決めて比べるかで答えが変わる。
| 決めるもの | 面積が最大(周が最小)の三角形 | 最大の面積(最小の周) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 周の長さ $2s$ | 正三角形 | $\dfrac{s^2}{3\sqrt3}$ | thm-tip-main |
| 周の長さ $2s$ と 1 辺 $a$ | $a$ を底辺とする二等辺三角形 | $\dfrac a2\sqrt{s(s-a)}$ | prop-tip-ellipse |
| 2 辺 $b,c$ | 2 辺の間の角が直角 | $\dfrac{bc}2$ | ex-tip-cx-two-sides |
| 1 辺 $a$ と向かいの角 $A$ | $a$ を底辺とする二等辺三角形 | $\dfrac{a^2}{4\tan\frac A2}$ | ex-tip-angle |
| 面積 $S$(周を最小にする) | 正三角形 | 周 $\sqrt{12\sqrt3\,S}$ | cor-tip-dual |
辺 $BC=a$ と角 $A$ を決めると、円周角の定理 により頂点 $A$ は $B$、$C$ を通る円の弧の上を動く。面積は底辺 $a$ と高さで決まるので、高さが最大になる弧の真ん中の点、つまり $AB=AC$ のときに最大である。このとき $A$ から $BC$ に下ろした垂線は角 $A$ を 2 等分し、底辺を 2 等分するので、高さは $\dfrac{a/2}{\tan\frac A2}$、面積は $\dfrac12\cdot a\cdot\dfrac{a}{2\tan\frac A2}=\dfrac{a^2}{4\tan\frac A2}$ である。
$a=2$、$A=60^\circ$ なら $\tan30^\circ=\dfrac1{\sqrt3}$ から最大の面積は $\dfrac{4}{4/\sqrt3}=\sqrt3$ で、1 辺 $2$ の正三角形の面積 $\dfrac{\sqrt3}4\cdot4=\sqrt3$ と一致する。$a=2$、$A=90^\circ$ なら $\tan45^\circ=1$ から $1$ で、直角二等辺三角形(斜辺 $2$、他の 2 辺 $\sqrt2$)の面積 $\dfrac12\cdot\sqrt2\cdot\sqrt2=1$ と一致する。
表の 5 行のうち 4 行で答えは二等辺三角形か正三角形で、対称な形が最大になる。例外の 2 辺を決めた場合は、面積の公式 $S=\dfrac12bc\sin A$ の $\sin A$ だけが動くので、直角のときに最大になる。
thm-tip-main の結論「周を決めると、面積が最大の三角形があり、それは正三角形である」の条件を外すと、次のように崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 周の長さを決める(2 辺を決めることに替える) | 2 辺が $2,2$ の三角形 | 正三角形の面積が最大である |
| 面積の最大を問う(最小に替える) | 周 $12$ で底辺を $6$ に近づける二等辺三角形 | 面積が最小の三角形がある |
| 比べる三角形に正三角形を含める | 周 $12$ の、正三角形でない三角形 | 面積が最大の三角形がある |
2 辺を $b=c=2$ に決め、間の角 $A$ を動かす。面積は $S=\dfrac12\cdot2\cdot2\cdot\sin A=2\sin A$ である(三角形の面積の公式)。
周 $12$ の二等辺三角形で、底辺 $a$ を $6$ に近づける。prop-tip-ellipse の等号の場合なので、面積は $S=\dfrac a2\sqrt{6(6-a)}$ である。
周 $12$ の三角形のうち、正三角形でないものだけを比べる。3 辺 $4+2t,\ 4-t,\ 4-t$($0< t<1$)の二等辺三角形は正三角形でなく、Heron の公式で
$$
S^2=6\cdot(2-2t)(2+t)(2+t)
$$
である。$t=\dfrac1{10}$ なら $S^2=6\cdot\dfrac95\cdot\dfrac{21}{10}\cdot\dfrac{21}{10}=47.628$、$t=\dfrac1{100}$ なら $S^2=47.996\ldots$ で、$t\to0$ のとき $S^2\to48$ である。しかし thm-tip-main の等号の条件により、正三角形でない三角形の面積は $4\sqrt3$($S^2=48$)より小さい。$48$ にいくらでも近づくが届かないので、この中に面積が最大のものはない。
このとき、ex-tip-steps の「取り替え」はちゃんと働いていて、正三角形でない三角形は、正三角形でない、面積のもっと大きい三角形に取り替えられる。
どちらも prop-tip-ellipse により面積は増える。
2 辺を 2、2 に決めて間の角を 60°、90°、120° と変えると、面積は √3、2、√3 で、直角のときが最大になる
周を 12 に保って底辺を 4、5、11/2、59/10 と 6 に近づけた二等辺三角形。平たくなり、面積は 0 に近づくが 0 にはならない
主定理の証明は、「和が $s$ の 3 つの正の数 $x,y,z$ の積 $xyz$ を最大にする」という条件付きの最大問題を解いたことになる(条件付きの最大・最小)。大学では、このような問題を Lagrange の未定乗数法 で扱う(Lagrangeの未定乗数法)。
$f(x,y,z)=xyz$、$g(x,y,z)=x+y+z$ とする。$g=s$ のもとで $f$ が $x,y,z>0$ の点で最大になるなら、その点で 2 つの関数の偏導関数の組が比例する:ある数 $\lambda$ があって
$$
(yz,\ zx,\ xy)=\lambda\,(1,\ 1,\ 1)
$$
となる(この法則は証明しない)。$yz=zx$ と $z>0$ から $x=y$、$zx=xy$ と $x>0$ から $y=z$ である。よって候補は $x=y=z=\dfrac s3$ の 1 点で、thm-tip-main の等号の場合と一致する。
ただし、未定乗数法が与えるのは「最大の点があるなら、そこはこの候補である」という必要条件である。候補が本当に最大であることは、別に確かめる必要がある。
ex-tip-cx-nonequilateral で見たとおり、「最大があれば正三角形」という論法は、最大があることを別に知っていなければ結論を出せない。この記事の主定理では、相加平均と相乗平均の不等式で上限を直接示したので、この問題は起こらなかった。
大学数学では、存在を次のように保証する。$x,y,z\ge0$、$x+y+z=s$ を満たす点 $(x,y,z)$ の集まりは、図 2 の三角形の領域(ふちを含む)で、ふちを含み(閉じている)、どこまでも広がってはいない(有界である)。このような集合の上の連続関数は最大値と最小値をとる(1 変数の場合は 最大値・最小値の定理(高校数学)、一般の場合は コンパクト空間 の性質として証明される。この記事では証明しない)。
関数 $h(x,y,z)=s\,xyz$ は、この閉じた有界な領域で最大値をとる。ふちの上では $x,y,z$ のどれかが $0$ で $h=0$ だが、内部には $h>0$ の点があるので、最大値はふちではなく内部の点でとられる。内部の点は本物の三角形に対応する(Ravi 置換)。こうして「周 $2s$ の三角形の中に面積が最大のものがある」ことが、計算をせずに分かる。そのうえで ex-tip-steps の論法を使えば、最大の三角形は正三角形である。
最小値の方は、ふちの上の $h=0$ でとられる。ふちの点はつぶれた三角形(線分)なので、本物の三角形だけで比べると最小はない(ex-tip-cx-min)。また、正三角形を除いた集合は、中心の 1 点を取り除いたために「閉じている」が成り立たず、最大がない(ex-tip-cx-nonequilateral)。
prop-tip-ellipse は、周を変えずに三角形を「左右対称」に近づけると面積が増える、という主張だった。面積を変えずに周を短くする向きに読みかえることもできる。底辺 $BC$ と高さを変えずに、頂点 $A$ を $BC$ の垂直二等分線の上に移すと、面積は同じで、$AB+AC$ は短くなる($A$ が動く水平な直線に関して $C$ を折り返した点 $C'$ をとると $AB+AC=AB+AC'\ge BC'$ で、等号は $A$ が線分 $BC'$ の上、つまり $BC$ の垂直二等分線の上にあるときである。折り返しの考え方は 対称点と折れ線の最短 で扱う)。
凸な図形でも、ある直線に垂直な弦を 1 本ずつその直線の上に中心がくるようにずらすと、面積は変わらず、周は長くならない(この記事では証明しない)。これを Steiner の対称化 という。
19 世紀の Steiner は、これを使って「周が同じ図形の中で最も広いのは円である」ことを論じたが、その議論は最大の図形があることを仮定していた。この穴は後に埋められた(等周不等式(高校数学) は Fourier 級数を使う別の方法で証明している)。
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