一意化定理(Riemann面)(uniformization theorem)とは、単連結な Riemann 面が Riemann 球面・複素平面・単位円板のちょうど 1 つと双正則であるという定理で、1907 年に Koebe と Poincaré が証明した。コンパクトな場合は正則 1 形式がないことと Riemann–Roch の定理から球面になり、コンパクトでない場合は Green 関数と正規族の議論による。普遍被覆に当てはめると、どの Riemann 面も 3 つの模型の 1 つを不動点のない自己同型の群で割った商になる。球面に覆われるのは球面だけ、平面に覆われるのは平面・穴あき平面・複素トーラスだけで、残りは円板に覆われる双曲型の面であり、3 点を除いた球面が双曲型であることから Picard の小定理が従う。
前提知識: Riemann面, 普遍被覆, 被覆変換群, Riemannの写像定理
一意化定理(uniformization theorem)は、単連結なRiemann面が、双正則同値を除いて Riemann 球面 $\hat{\mathbb{C}}$・複素平面 $\mathbb{C}$・単位円板 $\mathbb{D}$ の 3 つしかないことを主張する定理である。1907 年に Koebe と Poincaré がそれぞれ証明した。平面の単連結な領域についての Riemannの写像定理 を、平面に入っているとは限らない曲面へ広げたものにあたる。
どの Riemann 面 $X$ も普遍被覆 $\tilde X$ をもち、$\tilde X$ は単連結な Riemann 面になる。一意化定理により $\tilde X$ は 3 つの模型のどれかであり、$X$ はその模型を、不動点のない自己同型の群で割ったものになる。$\hat{\mathbb{C}}$ に覆われるのは $\hat{\mathbb{C}}$ 自身だけ、$\mathbb{C}$ に覆われるのは $\mathbb{C}$・$\mathbb{C}^\times$・複素トーラスだけで、残りの Riemann 面はすべて円板に覆われる。この記事では、コンパクトな場合の証明、この分類、Picard の小定理への応用を述べ、コンパクトでない場合の証明は引用にする。
この記事の Riemann 面は、Riemann面 の記事の定義「Riemann面」に従い、連結で Hausdorff な第 2 可算空間に複素構造を与えたものとする。$\hat{\mathbb{C}}=\mathbb{C}\cup\{\infty\}$ は Riemann球面、$\mathbb{D}:=\{z\in\mathbb{C}\mid\lvert z\rvert<1\}$ は単位円板、$\mathbb{H}:=\{z\in\mathbb{C}\mid\operatorname{Im}z>0\}$ は上半平面である。Riemann 面 $X$ からそれ自身への双正則写像の群を $\operatorname{Aut}(X)$ と書く。
単連結な Riemann 面は、$\hat{\mathbb{C}}$・$\mathbb{C}$・$\mathbb{D}$ のどれか 1 つとだけ双正則である。より詳しく、単連結な Riemann 面 $X$ について次が成り立つ。
「どれか 1 つとだけ」は prop-unif-models-distinct で、1 は thm-unif-compact で証明する。2 は次の thm-unif-noncompact から従う:$X$ が領域 $U\subset\mathbb{C}$ と双正則なら、$U$ は $X$ と同相なので単連結であり、$U\neq\mathbb{C}$ なら Riemannの写像定理 の定理「Riemann の写像定理」により $U$ は $\mathbb{D}$ と双正則である。
コンパクトでない単連結な Riemann 面は、$\mathbb{C}$ のある領域と双正則である。
これは AS21 Theorem 1(p. 2)で、同論文が全体を証明している。この記事では証明しない。同論文は第 2 可算性を仮定せずに議論し、どの Riemann 面も第 2 可算であること(Radó の定理、同 Theorem 7、p. 4)も導いている。
点 $x_0\in X$ を固定し、$X$ を、境界が空でなく連結で滑らかな、コンパクトで単連結な部分曲面 $K_0\subset K_1\subset\cdots$ で尽くす(AS21 Theorem 12、p. 8)。各 $K_n$ の上で、$x_0$ に対数的な極をもち境界で $0$ になる調和関数(Green 関数)を Perron の方法(Dirichlet問題)で作り(同 Proposition 9、p. 5)、そこから $K_n$ の内部を円板の上へ写す双正則写像を作る(同 Theorem 10、p. 6)。これを $x_0\mapsto0$、$x_0$ での微分係数が $1$ となるように正規化した正則な単射の列は、正規族の議論により部分列が $X$ 全体の上で広義一様収束し、極限が $X$ から $\mathbb{C}$ への正則な単射になる(同 §7、pp. 10–11)。
3 つの模型はどれも単連結である($\hat{\mathbb{C}}$ は球面と同相、$\mathbb{C}$ と $\mathbb{D}$ は可縮。単連結空間 の命題「球面の単連結性」「可縮ならば単連結」)。
$\hat{\mathbb{C}}$・$\mathbb{C}$・$\mathbb{D}$ のどの 2 つも双正則でない。
$\hat{\mathbb{C}}$ はコンパクトで、$\mathbb{C}$ と $\mathbb{D}$ はコンパクトでないので、$\hat{\mathbb{C}}$ はほかの 2 つと同相でさえない。$\mathbb{C}$ と $\mathbb{D}$ は同相だが、Riemann面 の記事の命題「平面と円板は双正則でない」により双正則でない($\mathbb{C}$ から $\mathbb{D}$ への正則写像は有界な整関数なので、Liouvilleの定理 により定数である)。$\square$
分類の議論では、自己同型が不動点をもつかどうかが要になる。
| 模型 | コンパクト | 自己同型 | 不動点のない自己同型の例 |
|---|---|---|---|
| $\hat{\mathbb{C}}$ | はい | Möbius 変換 | 恒等写像だけ |
| $\mathbb{C}$ | いいえ | $\alpha z+\beta$ | 平行移動 |
| $\mathbb{D}\cong\mathbb{H}$ | いいえ | prop-unif-automorphisms の 3 | $\mathbb{H}$ で見て $z\mapsto z+1$、$z\mapsto2z$ |
$\mathbb{H}$ と $\mathbb{D}$ は Cayley 変換 $z\mapsto\frac{z-i}{z+i}$ で双正則である(Möbius変換 の例「Cayley 変換」)。
正則 1 形式は、各正則座標 $z$ で $h(z)\,dz$($h$ は正則)と書ける 1 形式である(Riemann面上の微分形式 の定義「正則1形式」)。正則関数 $F$ の微分 $dF$ は局所的に $F'(z)\,dz$ である。
$X$ を単連結な Riemann 面、$\omega$ を $X$ 上の正則 1 形式とする。$X$ 上の正則関数 $f$ で $df=\omega$ となるものが存在する。
要点:局所的な原始関数の芽の全体は、ファイバーが $\mathbb{C}$ の被覆空間をなす。単連結な底の上の連結な被覆は同相なので、大域的な切断がとれる。
局所的な原始関数.座標で円板と双正則に写る連結な開集合 $U$ を座標円板と呼ぶ。座標円板 $U$ の上で $\omega=h(z)\,dz$ と書くと、$h$ は円板上の正則関数なので原始関数 $H$ をもつ(Cauchyの積分定理 の命題「円板上の原始関数の存在」)。$F_0:=H\circ z$ は $U$ 上で $dF_0=\omega$ を満たす。連結な開集合の上で $dF_1=dF_2=\omega$ なら、$F_1-F_2$ は定数である。
芽のなす被覆.点 $x\in X$ と、$x$ の近傍で $dF=\omega$ を満たす正則関数 $F$ の $x$ での芽 $[F]_x$ との組の全体を $E$ とし、$p(x,[F]_x):=x$ とおく。開集合 $V$ とその上で $dF=\omega$ を満たす $F$ について $N(V,F):=\{(y,[F]_y)\mid y\in V\}$ を開基として $E$ に位相を入れる。座標円板 $U$ とその上の原始関数 $F_0$ をとると、$U$ の点の芽はどれも $F_0+c$($c\in\mathbb{C}$)の芽であり、$c\neq c'$ なら値がどの点でも違うので芽も違う。よって $p^{-1}(U)$ は $N(U,F_0+c)$($c\in\mathbb{C}$)の交わらない和で、各 $N(U,F_0+c)$ は $p$ により $U$ と同相に写る。したがって $p$ は被覆写像である。$E$ は Hausdorff である:同じ点の上の 2 点は交わらない $N(U,F_0+c)$ と $N(U,F_0+c')$ で、違う点の上の 2 点は $X$ の交わらない近傍の逆像で分かれる。
大域的な原始関数.$E$ の弧状連結成分 $E_0$ を 1 つとる。$X$ は局所弧状連結なので、弧状連結な均一被覆近傍のシートは $E_0$ に含まれるか交わらず、$p|_{E_0}\colon E_0\to X$ も被覆写像である。$X$ は単連結なので恒等写像 $X\to X$ は普遍被覆であり、普遍被覆 の定理「普遍被覆の普遍性」により、被覆写像(とくに全射)$s\colon X\to E_0$ で $p\circ s=\mathrm{id}_X$ を満たすものがある。よって $p|_{E_0}$ は全単射の被覆写像、すなわち同相写像である。$f(x)$ を芽 $s(x)$ の $x$ での値と定める。座標円板 $U$ の上で $s(U)$ は連結なので 1 つのシート $N(U,F_0+c)$ に含まれ、$U$ 上で $f=F_0+c$ である。よって $f$ は正則で $df=\omega$ である。$\square$
コンパクトな Riemann 面 $X$ の因子 $D$ について、$L(D)$ を $\operatorname{div}(\varphi)+D\geq0$ となる有理型関数 $\varphi$ と $0$ のなす空間、$\ell(D):=\dim_{\mathbb{C}}L(D)$ とし、$K=\operatorname{div}(\eta)$ を、恒等的に $0$ でない有理型 1 形式 $\eta$ の定める標準因子とする(標準因子)。$X$ の種数を $g$ とすると、Riemann–Roch の定理 $\ell(D)-\ell(K-D)=\deg D+1-g$ が成り立つ(Riemann–Rochの定理 の定理「Riemann–Rochの定理」。この記事では証明しない)。
単連結でコンパクトな Riemann 面 $X$ は $\hat{\mathbb{C}}$ と双正則である。
$\ell(K)=0$. $\varphi\mapsto\varphi\eta$ は $L(K)$ から $X$ 上の正則 1 形式の空間への線形な全単射である。実際、$\operatorname{div}(\varphi\eta)=\operatorname{div}(\varphi)+K$ なので、$\varphi\in L(K)$ であることと $\varphi\eta$ が正則であることは同値であり、正則 1 形式 $\omega$ は有理型関数 $\omega/\eta$(局所的に係数の比)により $\omega=(\omega/\eta)\,\eta$ と書ける。一方、lem-unif-exact により正則 1 形式は $\omega=df$($f$ は $X$ 上の正則関数)と書け、$X$ はコンパクトなので $f$ は定数である(Riemann面 の命題「コンパクトな面からの正則写像」)。よって $\omega=0$ で、$\ell(K)=0$ である。
$g=0$. コンパクトな面の上の正則関数は定数なので $\ell(0)=1$ である。Riemann–Roch の定理を $D=0$ に使うと $1-\ell(K)=1-g$ となり、$g=0$ を得る。
次数 $1$ の関数. 点 $x_0\in X$ をとり、$D=x_0$ に使うと $\ell(x_0)\geq2$ である。よって $L(x_0)$ は定数でない元 $f$ を含む。$f$ は $x_0$ の外で正則で $x_0$ で高々 1 位の極をもち、$x_0$ でも正則なら定数になるので、$x_0$ にちょうど 1 位の極をもつ。$f$ を $X$ から $\hat{\mathbb{C}}$ への定数でない正則写像とみると、$\infty$ の逆像は $x_0$ だけで、そこでの局所次数は $1$ である。被覆次数 の命題「局所次数の和」により $\deg f=1$ であり、同記事の命題「次数 $1$ の写像は双正則」により $f$ は双正則である。$\square$
この証明は、種数が $0$ であることを曲面の分類を使わずに導いている。Riemann–Roch の定理の証明は一意化定理を使わないので、議論は循環しない。
$X$ を Riemann 面、$p\colon\tilde X\to X$ を普遍被覆、$G$ をその被覆変換群とする。
要点:複素構造は被覆の局所的な逆で引き戻し・押し出しする。被覆変換は局所的に $p$ の局所的な逆どうしの合成なので正則である。
1:複素構造は 被覆空間 の命題「被覆によるRiemann面構造の持ち上げ」による。$\tilde X$ は普遍被覆なので連結であり、Hausdorff でもある(同じ点の上の 2 点は交わらない 2 つのシートで、違う点の上の 2 点は $X$ の交わらない近傍の逆像で分かれる)。第 2 可算性は、$\tilde X$ がコンパクトなら有限個の座標近傍で覆われるので明らかである。コンパクトでなければ、AS21 Theorem 1 は第 2 可算性を仮定しないので $\tilde X$ に使え、$\tilde X$ が $\mathbb{C}$ の領域と双正則になることから従う。
2:$\sigma\in G$ は $p\circ\sigma=p$ を満たすので、シート $V$ の上で $\sigma|_V=(p|_{\sigma(V)})^{-1}\circ p|_V$ と書け、正則である。$\sigma^{-1}\in G$ も同様なので $\sigma$ は自己同型である。作用が被覆空間作用であることは 被覆変換群 の命題「被覆変換群の作用は被覆空間作用」による。被覆空間作用では、単位元以外の元 $\sigma$ は各点に $\sigma W\cap W=\emptyset$ となる近傍 $W$ をもつので、不動点をもたない。
3:普遍被覆は正則被覆なので(被覆変換群 の系「普遍被覆の被覆変換群」)、$\tilde X/G\to X$ が同相写像であることは同記事の命題「被覆変換群の作用は被覆空間作用」の後半による。$\tilde X/G$ の座標は商写像のシートへの制限の逆と $\tilde X$ の座標の合成で、座標変換は $G$ の元と $\tilde X$ の座標変換の合成なので正則である。誘導される写像はこの座標で $p$ のシートへの制限なので局所双正則であり、全単射なので双正則である。$\square$
$\Gamma\subset\mathbb{C}$ を加法部分群とし、ある $\varepsilon>0$ について $\Gamma\cap\{\lvert z\rvert< \varepsilon\}=\{0\}$ とする。このとき $\Gamma$ は $\{0\}$、ある $\omega\neq0$ による $\mathbb{Z}\omega$、格子(複素トーラス の定義「格子」)のどれかである。
要点:絶対値が最小の元 $\omega_1$ と、$\mathbb{R}\omega_1$ の外で絶対値が最小の元 $\omega_2$ をとると、$\Gamma$ はこの 2 つで生成される。
$\Gamma$ の相異なる 2 元の差は絶対値が $\varepsilon$ 以上なので、有界な集合に含まれる $\Gamma$ の元は有限個である。$\Gamma\neq\{0\}$ とし、$\Gamma\setminus\{0\}$ の元で絶対値が最小のもの $\omega_1$ をとる。$t\omega_1\in\Gamma$ とし、$n$ を $t$ に最も近い整数とすると $(t-n)\omega_1\in\Gamma$ で $\lvert t-n\rvert\le1/2$ なので、最小性から $t=n$ である。よって $\Gamma\cap\mathbb{R}\omega_1=\mathbb{Z}\omega_1$ で、$\Gamma\subset\mathbb{R}\omega_1$ なら $\Gamma=\mathbb{Z}\omega_1$ である。
そうでないとき、$\Gamma\setminus\mathbb{R}\omega_1$ の元で絶対値が最小のもの $\omega_2$ をとる。$\gamma\in\Gamma$ を $\gamma=a\omega_1+b\omega_2$($a,b\in\mathbb{R}$)と書き、$a,b$ に最も近い整数 $m,n$ について $\gamma':=\gamma-m\omega_1-n\omega_2=a'\omega_1+b'\omega_2$($\lvert a'\rvert,\lvert b'\rvert\le1/2$)とおく。$b'\neq0$ とすると $\gamma'\notin\mathbb{R}\omega_1$ である。$a'\neq0$ なら $a'\omega_1$ と $b'\omega_2$ は正の実数倍で結ばれないので $\lvert\gamma'\rvert< \lvert a'\rvert\lvert\omega_1\rvert+\lvert b'\rvert\lvert\omega_2\rvert\le\lvert\omega_2\rvert$、$a'=0$ なら $\lvert\gamma'\rvert\le\lvert\omega_2\rvert/2$ で、どちらも $\omega_2$ の最小性に反する。よって $b'=0$ で、$\gamma'\in\mathbb{Z}\omega_1$ と $\lvert a'\rvert\le1/2$ から $a'=0$ である。したがって $\Gamma=\mathbb{Z}\omega_1+\mathbb{Z}\omega_2$ である。$\square$
$X$ を Riemann 面とする。普遍被覆 $\tilde X$ は $\hat{\mathbb{C}}$・$\mathbb{C}$・$\mathbb{D}$ のちょうど 1 つと双正則であり、それに応じて次が成り立つ。
prop-unif-universal-cover の 1 と thm-unif-main により $\tilde X$ は模型のどれかと双正則で、普遍被覆は同型を除いて一意なので(普遍被覆 の系「普遍被覆の一意性と特徴づけ」)、prop-unif-models-distinct によりどの模型かは $X$ だけで決まる。$G$ を被覆変換群とすると、prop-unif-universal-cover の 2・3 により $X\cong\tilde X/G$ で、$G$ の単位元以外の元は不動点をもたない。
1:prop-unif-automorphisms の 1 により $G$ は自明な群で、$X\cong\hat{\mathbb{C}}$ である。
2:prop-unif-automorphisms の 2 により $G$ の元は平行移動 $z\mapsto z+\gamma$ で、$\Gamma:=\{\gamma\mid(z\mapsto z+\gamma)\in G\}$ は加法部分群である。被覆空間作用なので、$0$ の近傍 $W$ で $\gamma\neq0$ について $(W+\gamma)\cap W=\emptyset$ となるものがある。$W\supset\{\lvert z\rvert< \varepsilon\}$ とすると、$0< \lvert\gamma\rvert< \varepsilon$ なら $\gamma\in W\cap(W+\gamma)$ なので $\gamma\notin\Gamma$ である。lem-unif-discrete-subgroups により $\Gamma$ は $\{0\}$、$\mathbb{Z}\omega$、格子のどれかで、$\{0\}$ なら $X\cong\mathbb{C}$、格子なら $X\cong\mathbb{C}/\Lambda$ である。$\Gamma=\mathbb{Z}\omega$ なら、$z\mapsto e^{2\pi iz/\omega}$ は $\mathbb{C}$ から $\mathbb{C}^\times$ への全射で、2 点の像が等しいのは差が $\mathbb{Z}\omega$ に入るときに限り、導関数は $0$ にならない。よってこの写像は双正則写像 $\mathbb{C}/\mathbb{Z}\omega\to\mathbb{C}^\times$ を誘導する。
3:$G\subset\operatorname{Aut}(\mathbb{D})$ で、単位元以外の元は不動点をもたない。$\square$
| 型 | 普遍被覆 | Riemann 面の例 |
|---|---|---|
| 楕円型 | $\hat{\mathbb{C}}$ | $\hat{\mathbb{C}}$ だけ |
| 放物型 | $\mathbb{C}$ | $\mathbb{C}$、$\mathbb{C}^\times$、複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ |
| 双曲型 | $\mathbb{D}$ | $\mathbb{D}$、$\mathbb{H}$、穴あき円板、円環、$\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$、種数 $2$ 以上のコンパクト Riemann 面 |
放物型の 3 種は互いに双正則でない($\mathbb{C}$ は単連結、$\mathbb{C}^\times$ は単連結でもコンパクトでもなく、トーラスはコンパクト)。トーラスどうしが双正則になるのは格子が相似なときに限る(複素トーラス の系「複素トーラスが双正則になる条件」)。双曲型の例は cor-unif-two-points と cor-unif-compact-genus で確かめる。同じ形の分類は Mil91 Lemma 2.1(p. 2-1)とその後の場合分けにもある。
$Y:=\mathbb{C}\setminus\{0,1\}$ は双曲型である。
要点:$Y$ が $\mathbb{C}$ か $\mathbb{C}^\times$ と双正則なら、その双正則写像は $\hat{\mathbb{C}}$ の自己同型に延び、除かれた点の個数 $3$ が保たれてしまう。
$Y$ はコンパクトでないので楕円型でない。放物型なら thm-unif-classification の 2 により $Y$ は $\mathbb{C}$・$\mathbb{C}^\times$・複素トーラスのどれかと双正則で、トーラスはコンパクトなので除かれる。$Z\in\{\mathbb{C},\mathbb{C}^\times\}$ と双正則写像 $\varphi\colon Y\to Z$ があったとして矛盾を導く。
$\hat{\mathbb{C}}$ への延長:$\varphi$ は $0$ と $1$ のまわりの穴あき円板の上で単射なので、Casorati–Weierstrassの定理 の命題「単射な関数は真性特異点をもたない」により、$0$ と $1$ は除去可能特異点か 1 位の極である。$w\mapsto\varphi(1/w)$ に同じ命題を使うと $\infty$ も同様である。よって $\varphi$ は正則写像 $\Phi\colon\hat{\mathbb{C}}\to\hat{\mathbb{C}}$ に延びる。
3 点の行き先:$a\in\{0,1,\infty\}$ について $\Phi(a)=\varphi(x)$($x\in Y$)とする。$a$ の連結な近傍 $U_a$ で $0,1,\infty$ のうち $a$ しか含まないものと、$x$ の近傍 $U_x\subset Y$ を交わらないようにとる。$\varphi(U_x)$ は $\Phi(a)$ の開近傍(開写像定理(複素解析))で、$\Phi(U_a\setminus\{a\})$ は $\Phi(a)$ にいくらでも近い点を含むので、$\varphi(u)=\varphi(v)$ となる $u\in U_a\setminus\{a\}$、$v\in U_x$ がある。$u\neq v$ なので単射性に反する。よって $\Phi^{-1}(Z)=Y$ である。
次数:$y\in Y$ について $\Phi^{-1}(\varphi(y))=\{y\}$ で、$\varphi$ は双正則なので局所次数は $1$ である。被覆次数 の命題「局所次数の和」により $\deg\Phi=1$ で、同記事の命題「次数 $1$ の写像は双正則」により $\Phi$ は $\hat{\mathbb{C}}$ の自己同型である。すると $\hat{\mathbb{C}}\setminus Z=\Phi(\{0,1,\infty\})$ はちょうど $3$ 点だが、$\hat{\mathbb{C}}\setminus\mathbb{C}=\{\infty\}$、$\hat{\mathbb{C}}\setminus\mathbb{C}^\times=\{0,\infty\}$ なので矛盾する。$\square$
整関数 $f$ が相異なる 2 つの複素数 $a,b$ をどちらも値にとらないなら、$f$ は定数である。
$g:=(f-a)/(b-a)$ は $0$ と $1$ を値にとらない整関数で、$g\colon\mathbb{C}\to Y$ とみなせる。prop-unif-thrice-punctured により $Y$ の普遍被覆 $\pi\colon\mathbb{D}\to Y$ がある。$\mathbb{C}$ は単連結で局所弧状連結なので、$g$ は連続な持ち上げ $\tilde g\colon\mathbb{C}\to\mathbb{D}$($\pi\circ\tilde g=g$)をもつ(被覆変換群 の補題「持ち上げの判定法」)。シートの上で $\tilde g=(\pi|_V)^{-1}\circ g$ なので $\tilde g$ は正則であり、$\lvert\tilde g\rvert<1$ の整関数だから Liouvilleの定理 により定数である。よって $f$ は定数である。$\square$
これが Picardの小定理 である。この筋は Mil91 2.3(p. 2-2)による。同書は $Y$ が双曲型であることを基本群が可換でないことから導くが、上では単射な正則写像の特異点の性質から導いた。Picardの小定理 の記事の証明は Bloch 型の補題による別の方法で、一意化定理を使わない。
$U\subset\mathbb{C}$ を領域とし、$\mathbb{C}\setminus U$ が 2 点以上を含むとする。$U$ は双曲型である。とくに穴あき円板 $\mathbb{D}\setminus\{0\}$ と円環 $\{1< \lvert z\rvert<2\}$ は双曲型である。
$U$ は $\mathbb{C}$ の空でない開集合で $\mathbb{C}$ と異なるので、$\mathbb{C}$ の連結性から閉集合でなく、コンパクトでない。よって楕円型でない。放物型なら普遍被覆 $\pi\colon\mathbb{C}\to U$ は $\mathbb{C}\setminus U$ の 2 点を値にとらない整関数なので、cor-unif-picard により定数となり、被覆写像が全射であることに反する。$\square$
単位円板の双曲計量 $\lambda_{\mathbb{D}}(z)\lvert dz\rvert$($\lambda_{\mathbb{D}}(z)=1/(1-\lvert z\rvert^2)$、曲率 $-4$)は、双曲型の面に降りてくる。
$X=\mathbb{D}/G$ を thm-unif-classification の 3 の形の双曲型の面とし、$\pi\colon\mathbb{D}\to X$ を商写像とする。$X$ 上の Riemann 計量で、$\pi$ が局所的に等長になるものがただ 1 つあり、その Gauss 曲率は $-4$ である。
要点:$G$ の元は双曲計量を保つので、$\pi$ の局所的な逆による引き戻しは逆の選び方によらない。
$x\in X$ の連結な均一被覆近傍 $U$ と、その上の $\pi$ の局所的な逆 $s\colon U\to\mathbb{D}$ をとり、$U$ の上の計量を $s$ による $\lambda_{\mathbb{D}}\lvert dz\rvert$ の引き戻しと定める。別の局所的な逆 $s'$ は、ある $\gamma\in G$ によって $s'=\gamma\circ s$ と書ける。$\gamma$ は回転と $T_a(z)=(z-a)/(1-\bar az)$ の合成で、どちらも $\lambda_{\mathbb{D}}(\gamma(z))\lvert\gamma'(z)\rvert=\lambda_{\mathbb{D}}(z)$ を満たす(双曲計量 の命題「円板自己同型による不変性」。回転では明らか)ので、$s'$ から作った計量は $s$ から作ったものと一致する。$\pi$ を局所等長にする計量はこの形しかない。曲率は局所的な量で双正則写像による引き戻しで保たれるので、同記事の命題「双曲計量の曲率は $-4$」から $-4$ である。$\square$
コンパクトな Riemann 面 $X$ の種数を $g$ とする。$g=0$ なら楕円型、$g=1$ なら放物型(複素トーラス)、$g\geq2$ なら双曲型である。
$g=0$ なら $X$ は球面と同相なので単連結であり、thm-unif-compact により $X\cong\hat{\mathbb{C}}$ である。各型の種数を調べる。楕円型なら $X\cong\hat{\mathbb{C}}$ で $g=0$ である。放物型ならコンパクトなので複素トーラスで、$g=1$ である(複素トーラス の例「次元 1 の複素トーラスは種数 1 のリーマン面」)。双曲型なら、prop-unif-hyperbolic-metric の計量に Gauss–Bonnetの定理 の定理「Gauss–Bonnet の定理(境界なし)」を使うと $2\pi\chi(X)=-4\operatorname{Area}(X)<0$ となり、種数 の系「種数のEuler標数による式」から $g=1-\chi(X)/2>1$ である。種数は $X$ だけで決まるので、$g=1$ なら放物型、$g\geq2$ なら双曲型である。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 単連結(thm-unif-main) | $\mathbb{C}^\times$ | 3 つの模型のどれとも双正則でない |
| 複素次元が $1$(thm-unif-main) | $\mathbb{C}^2$ の単位球 $B_2$ と双円板 $\mathbb{D}^2$ | どちらも単連結だが、互いに双正則でない |
| 作用が被覆空間作用(thm-unif-classification の 2) | $\mathbb{Z}+\sqrt2\,\mathbb{Z}$ の平行移動による $\mathbb{C}$ の商 | 商が Hausdorff でなく、Riemann 面にならない |
| 単位元以外は不動点をもたない(thm-unif-classification の 3) | $z\mapsto-z$ で $\mathbb{D}$ に作用する位数 $2$ の群 $G$ | 商写像 $\mathbb{D}\to\mathbb{D}/G$ が被覆写像でない |
1 行目:$\mathbb{C}^\times$ の基本群は $\mathbb{Z}$ と同型で(回転数 の命題「基本群との関係」)、単連結でない。模型は単連結で、単連結性は同相で保たれるので、$\mathbb{C}^\times$ はどの模型とも同相でさえない。
2 行目:$B_2$ と $\mathbb{D}^2$ は凸集合なので可縮で、単連結である。双正則写像は固有写像だが、$\mathbb{D}^2$ から $B_2$ への固有な正則写像は存在しない(Rothstein の定理、Leb26t Theorem 1.4.4、p. 33)。
3 行目:$\mathbb{Z}+\sqrt2\,\mathbb{Z}$ は $\mathbb{R}$ で稠密なので、$0$ の近傍 $W$ をどうとっても $(W+\gamma)\cap W\neq\emptyset$ となる $\gamma\neq0$ がある。商が Hausdorff でないことは 複素トーラス の例「反例:離散でない部分群による商」にある。
4 行目:$z\mapsto-z$ は $0$ を固定する。$z\mapsto z^2$ は同相写像 $\mathbb{D}/G\to\mathbb{D}$ を誘導し、商写像はこれを通して $z\mapsto z^2$ にあたる。$0$ の上の逆像は 1 点、ほかの点の上では 2 点なので、被覆写像でない(分岐被覆)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する