単調収束定理

同義語:単調有界数列の収束定理

概要

単調収束定理(monotone convergence theorem)とは、単調増加で上に有界な実数列は収束し、その極限は項全体の上限に等しいという定理である(単調減少で下に有界なら下限に収束する)。極限の値を前もって知らなくても収束が示せるので、漸化式で定まる数列、正の項の級数、ネイピア数 $e$ の定義などで極限の存在を保証する。実数の上限性質を数列の言葉で言い換えたもので、順序体の上では上限性質と同値であり、有理数の中では成り立たない。Lebesgue 積分の単調収束定理とは別の定理である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 上限と下限, 数列の極限

$a_0=0$、$a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}$ で定まる数列は $0,\ \sqrt2\approx1.414,\ 1.848,\ 1.962,\ 1.990,\dots$ と増えていき、$2$ に近づいていくように見える。もし極限 $L$ があるなら、漸化式の両辺で極限をとって $L=\sqrt{2+L}$、つまり $L=2$ と分かる。しかしこの計算は「極限があるなら値は $2$」と言っているだけで、極限があること自体は示していない。実際、$b_0=2$、$b_{n+1}=b_n^2$ で同じ計算をすると $L=L^2$ から $L=0$ または $1$ が出てくるが、$b_n=2,4,16,256,\dots$ はどちらにも近づかない。極限の値を知る前に、極限があることを示す道具が要る。
単調収束定理はその道具である。数列が一方向にしか動かず(単調)、しかも越えられない壁がある(有界)ならば、数列は収束し、その極限は壁の候補のうち最もきつい値、つまり項全体の上限になる。証明で使う実数の性質は「上に有界な空でない集合は上限をもつ」(上限性質)ただ 1 つであり、逆にこの定理から上限性質を導くこともできる。単調収束定理は、実数に「隙間がない」ことを数列の言葉で言い表した定理である。

同じ名前で呼ばれる別の定理

測度論で単調収束定理と呼ばれるのは、非負の可測関数の単調増加列について極限と積分の順序を交換できるという定理であり(Lebesgue積分 の記事の定理「単調収束定理」)、この記事の定理とは主張が違う。この記事で単調収束定理というときは、つねに実数列についての定理を指す。
2 つの定理には次の関係がある。Lebesgue 積分の単調収束定理の証明では、積分の値 $\int f_1\,d\mu\le\int f_2\,d\mu\le\cdots$ が単調増加な列なので $[0,\infty]$ の中に極限をもつ、という形でこの記事の定理(prop-mct-extended)が使われる。また、$\mathbb{N}$ 上の数え上げ測度では、非負関数 $f\colon\mathbb{N}\to[0,\infty)$ の積分は非負項級数の和 $\sum_{k}f(k)$、すなわち部分和の単調増加列の極限になる(Lebesgue積分 の記事の例「数え上げ測度による積分と級数」)。この場合、Lebesgue 積分の単調収束定理は「$\mathbb{N}$ 上の非負関数の列 $f_1\le f_2\le\cdots$ が各 $k$ で $f_n(k)\to f(k)$ を満たすなら $\sum_kf_n(k)\to\sum_kf(k)$(値 $+\infty$ も許す)」という級数の主張になる。

定義と主張

以下、数列の番号は $0$ から始め($\mathbb{N}$ は $0$ を含む)、数列はすべて実数列とする。

単調な数列と有界な数列

実数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}$ について、次のように定める。

  1. すべての $n$ で $a_n\le a_{n+1}$ が成り立つとき単調増加、$a_n< a_{n+1}$ が成り立つとき狭義単調増加という。不等号を逆にして単調減少・狭義単調減少を定める。単調増加か単調減少のどちらかであるとき単調という。
  2. ある実数 $M$ があってすべての $n$ で $a_n\le M$ となるとき上に有界といい、$M$ を上界という。$a_n\ge m$ となる $m$ があるとき下に有界という。上にも下にも有界であるとき有界という。これは、ある $M$ についてすべての $n$ で $\lvert a_n\rvert\le M$ となることと同値である。

「単調増加」は等号を許す意味で使う(「非減少」と呼ぶ文献もある)。定数列は単調増加かつ単調減少である。単調増加な数列は $a_0\le a_1\le\cdots$ なので、つねに $a_0$ で下から押さえられる。したがって、単調増加な数列が有界であることは、上に有界であることと同値であり、単調減少な数列では下に有界であることと同値である。

単調収束定理
  1. 単調増加で上に有界な実数列 $(a_n)$ は収束し、その極限は項全体の上限である:
    $$ \lim_{n\to\infty}a_n=\sup\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}. $$
  2. 単調減少で下に有界な実数列 $(a_n)$ は収束し、その極限は項全体の下限 $\inf\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ である。
  3. 単調な実数列については、有界であることと収束することは同値である。

1:項全体の集合 $A:=\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ は空でなく、仮定により上に有界である。実数の上限性質(実数 の記事の定義「上限性質」)により、上限 $s:=\sup A$ が存在する。
$a_n\to s$ を示す。$\varepsilon>0$ を任意にとる。$s$ は $A$ の上界のうち最小のものなので、$s-\varepsilon$ は $A$ の上界ではない(上限と下限 の記事の命題「実数における上限と下限の $\varepsilon$ 特徴づけ」)。したがって $a_N>s-\varepsilon$ となる番号 $N$ がある。$n\ge N$ ならば、単調増加性 $a_N\le a_{N+1}\le\cdots\le a_n$($n-N$ に関する帰納法)により $a_N\le a_n$ であり、また $s$ は上界なので $a_n\le s$ である。まとめると
$$ s-\varepsilon< a_N\le a_n\le s\qquad(n\ge N) $$
となり、$\lvert a_n-s\rvert<\varepsilon$ である。よって $(a_n)$ は $s$ に収束する。
2:$b_n:=-a_n$ とおく。$(b_n)$ は単調増加であり、$(a_n)$ の下界 $m$ に対して $-m$ が $(b_n)$ の上界になる。1 により $b_n\to\sup\{-a_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ である。ここで $\sup\{-a_n\}=-\inf\{a_n\}$ である($u$ が $\{-a_n\}$ の上界であることと $-u$ が $\{a_n\}$ の下界であることは同値なので、最小の上界は最大の下界の符号を変えたものである)。極限と定数倍の関係(数列の極限 の記事の命題「極限の四則演算」)により $a_n=-b_n\to\inf\{a_n\}$ である。
3:単調な数列が有界ならば、単調増加のときは上に有界、単調減少のときは下に有界なので、1・2 により収束する。逆に、収束する数列は(単調かどうかによらず)有界である(数列の極限 の記事の命題「収束列の有界性」)。$\square$

証明の中で実数に特有の性質を使ったのは、上限 $s$ の存在を言うところだけである。そこから先は、上限の最小性、単調性、極限の定義しか使っていない。このため、上限性質を満たさない数の範囲、たとえば有理数の中では、この定理は成り立たない(ex-mct-counterexamples)。
証明から次のことも分かる。狭義単調増加な数列の極限 $s$ は、どの項よりも真に大きい。実際、$a_n< a_{n+1}\le s$ である。つまり狭義単調な数列は極限に到達しないが、極限は存在する。
左は a_0=0, a_(n+1)=√(2+a_n) の点が上限 2 の破線に下から近づく様子、右は x_0=2 から始まる Newton 法の点が下限 √2 の破線に上から近づく様子 左は a_0=0, a_(n+1)=√(2+a_n) の点が上限 2 の破線に下から近づく様子、右は x_0=2 から始まる Newton 法の点が下限 √2 の破線に上から近づく様子
図の左は冒頭の数列、右は $\sqrt2$ を求める Newton 法の数列(ex-mct-newton)である。左の数列は単調増加で、点は破線の高さ $2$(項全体の上限)を越えずに下から近づく。右の数列は単調減少で、点は破線の高さ $\sqrt2$(項全体の下限)に上から近づく。どちらの場合も、極限は項全体の上限・下限という「壁のいちばんきつい位置」である。

例

単調収束定理を使うときの手順は、(a) 単調であることを示す、(b) 上界(または下界)を 1 つ見つける、(c) 定理で極限の存在を得る、(d) 必要なら漸化式などに極限を代入して値を決める、の 4 段である。(c) より前に (d) を行うと、冒頭の $b_{n+1}=b_n^2$ のような誤りが起きる。

$1-\frac1n$

$a_n:=1-\frac1n$($n\ge1$)は $\frac1n>\frac1{n+1}$ から狭義単調増加で、$1$ が上界である。定理により収束し、極限は $\sup\{a_n\}$ である。この上限は $1$ である。実際、$u<1$ が上界だとすると、すべての $n$ で $\frac1n\ge1-u>0$ となるが、Archimedes の性質(実数 の記事の定理「Archimedes性」)により $n>\frac1{1-u}$ となる $n$ があって矛盾する。よって $1-\frac1n\to1$ である。上限 $1$ はどの項とも等しくない。

漸化式 $a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}$

$a_0=0$、$a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}$ とする。すべての $n$ で
$$ 0\le a_n<2\quad\text{かつ}\quad a_n< a_{n+1} $$
であることを帰納法で示す。$0\le a_n<2$ ならば $a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}<\sqrt4=2$ であり、$a_{n+1}\ge0$ である。また
$$ a_{n+1}^2-a_n^2=2+a_n-a_n^2=(2-a_n)(1+a_n)>0 $$
で、$a_n,a_{n+1}\ge0$ なので $a_{n+1}>a_n$ である。したがって $(a_n)$ は狭義単調増加で $2$ を上界にもち、定理により極限 $L$ をもつ。$L\ge a_1=\sqrt2>0$ である。漸化式を $a_{n+1}^2=2+a_n$ と書いて $n\to\infty$ とすると(数列の極限 の記事の命題「極限の四則演算」)、$L^2=2+L$、すなわち $(L-2)(L+1)=0$ となり、$L>0$ から $L=2$ である。
差 $2-a_n$ は $2,\ 0.586,\ 0.152,\ 0.038,\ 0.0096,\dots$ で、1 歩ごとにおよそ $\frac14$ 倍になる。

一般項を開く

$0\le\theta\le\pi$ のとき半角の公式から $2\cos\frac\theta2=\sqrt{2+2\cos\theta}$ である($\cos\frac\theta2\ge0$ なので正の平方根をとる)。これを使うと帰納法で $a_n=2\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}$ が分かる:$n=0$ では $2\cos\frac\pi2=0=a_0$ であり、$a_n=2\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}$ なら $a_{n+1}=\sqrt{2+2\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}}=2\cos\frac{\pi}{2^{n+2}}$ である。$1-\cos x=2\sin^2\frac x2$ から $2-a_n=4\sin^2\frac{\pi}{2^{n+2}}$ となり、比 $\frac{2-a_{n+1}}{2-a_n}$ は $\frac14$ に近づく。

Newton 法による $\sqrt2$ の近似

$x_0=2$、$x_{n+1}=\frac12\bigl(x_n+\frac2{x_n}\bigr)$ とする。$x_n>0$ ならば $x_{n+1}>0$ なので、すべての項は正で漸化式は意味をもつ。展開して整理すると
$$ x_{n+1}^2-2=\Bigl(\frac{x_n^2-2}{2x_n}\Bigr)^2\ge0,\qquad x_n-x_{n+1}=\frac{x_n^2-2}{2x_n} $$
である。1 つ目の式と $x_0^2=4$ からすべての $n$ で $x_n^2\ge2$、2 つ目の式から $x_n\ge x_{n+1}$ が分かる。よって $(x_n)$ は単調減少で $0$ を下界にもち、定理により極限 $L$ をもつ。$x_n^2\ge2>1$ と $x_n>0$ から $x_n\ge1$ なので $L\ge1$ であり、漸化式で $n\to\infty$ とすると $L=\frac12\bigl(L+\frac2L\bigr)$、すなわち $L^2=2$、$L=\sqrt2$ である。
項は $2,\ \frac32,\ \frac{17}{12},\ \frac{577}{408},\ \frac{665857}{470832},\dots$ で、$x_n^2-2$ は $2,\ \frac14,\ \frac1{144},\ \frac1{166464},\ \frac1{221682772224}$ と、1 つ目の式のとおり 1 歩ごとにおよそ 2 乗の速さで小さくなる。すべての項が有理数であることは、次の節の反例で使う。

平方の逆数の和

部分和 $S_N:=\sum_{n=1}^N\frac1{n^2}$ は項が正なので単調増加である。$n\ge2$ で $\frac1{n^2}<\frac1{(n-1)n}=\frac1{n-1}-\frac1n$ だから
$$ S_N\le1+\sum_{n=2}^N\Bigl(\frac1{n-1}-\frac1n\Bigr)=2-\frac1N<2 $$
であり、$(S_N)$ は上に有界である。定理により級数 $\sum_{n\ge1}\frac1{n^2}$ は収束し、和は $2$ 以下である。和が $\frac{\pi^2}6$ であることは Basel問題 の記事の定理「平方数の逆数の和」で証明されている。収束することと誤差の評価は同じ記事の命題「平方の逆数の和の収束と誤差」にある。値を知らなくても、単調性と上界だけで和の存在が先に分かる。

ネイピア数と連分数
  1. $a_n=\bigl(1+\frac1n\bigr)^n$ は狭義単調増加で $3$ を上界にもつ((1+1/n)^nの極限 の記事の定理「$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$ の単調性と有界性」)。単調収束定理によりこの数列は収束し、その極限をネイピア数 $e$ と定義する。$e$ という数の存在そのものが、この定理に支えられている。
  2. $\sqrt2$ の連分数展開 $[1;2,2,2,\dots]$ の近似分数は $1,\ \frac32,\ \frac75,\ \frac{17}{12},\ \frac{41}{29},\ \frac{99}{70},\dots$ で、偶数番目 $1<\frac75<\frac{41}{29}<\cdots$ は単調増加、奇数番目 $\frac32>\frac{17}{12}>\frac{99}{70}>\cdots$ は単調減少であり、どの偶数番目もどの奇数番目より小さい。したがって両方とも単調収束定理で極限をもつ。2 つの極限が一致することは、隣り合う近似分数の差が $0$ に近づくことから分かる(一般の無限単純連分数について 連分数 の記事の定理「無限単純連分数の収束」)。

性質と応用

正の項の級数

級数の部分和は、項が $0$ 以上なら単調増加な数列である。したがって単調収束定理はそのまま級数の収束判定になる。

正の項の級数の収束

すべての $n$ で $c_n\ge0$ とし、部分和を $S_N:=\sum_{n=0}^Nc_n$ とおく。級数 $\sum_{n=0}^\infty c_n$ が収束することと、$(S_N)$ が上に有界であることは同値であり、そのとき和は $\sup_NS_N$ に等しい。

$S_{N+1}-S_N=c_{N+1}\ge0$ なので $(S_N)$ は単調増加である。級数の収束は部分和の収束のことなので、thm-mct-main の 3 と 1 からただちに従う。$\square$

同じ主張は 無限級数の和と収束判定 の記事の命題「正の項の級数と部分和の有界性」にもあり、同じ記事の定理「比較判定法」はこの命題から導かれる。ex-mct-basel はこの命題の使用例である。項が負になりうる級数では部分和は単調でないので、この命題は使えない。

拡大実数での言い方

有界でない単調な数列も、$\pm\infty$ まで含めれば「極限」をもつ。$+\infty$ に発散することの定義は 数列の極限 の記事の定義「無限大への発散」に従う。

単調な数列はつねに極限をもつ

単調増加な実数列 $(a_n)$ が上に有界でなければ $a_n\to+\infty$ であり、単調減少な実数列が下に有界でなければ $a_n\to-\infty$ である。したがって、上に有界でない集合の上限を $+\infty$、下に有界でない集合の下限を $-\infty$ と約束すれば、どの単調増加な実数列も $\lim_{n\to\infty}a_n=\sup_na_n\in(-\infty,+\infty]$ を満たし、どの単調減少な実数列も $\lim_{n\to\infty}a_n=\inf_na_n\in[-\infty,+\infty)$ を満たす。

$(a_n)$ を単調増加で上に有界でないとする。任意の実数 $K$ は上界でないので $a_N>K$ となる $N$ があり、$n\ge N$ では $a_n\ge a_N>K$ である。これは $a_n\to+\infty$ ということである。減少の場合は $-a_n$ を考えればよい。後半は、有界な場合の thm-mct-main と合わせたものである。$\square$

この言い方では、拡大実数 $[-\infty,+\infty]$ の中で「単調な数列はつねに極限をもち、極限は上限(下限)である」と一文で言える(上限と下限 の記事の節「拡張実数における約束」)。正の項の級数の和を「収束するかどうかにかかわらず $\sum c_n\in[0,+\infty]$」と書けるのも、この命題による。単調でない数列ではこうはいかず、$(-1)^n$ は $[-\infty,+\infty]$ の中でも極限をもたない。

単調な部分列

単調でない数列にも、単調収束定理を当てられる場面がある。どんな数列からも単調な部分列を取り出せるからである。数列 $(a_n)$ の部分列とは、狭義単調増加な番号の列 $n_0< n_1< n_2<\cdots$ をとって並べた $(a_{n_k})_{k\in\mathbb{N}}$ のことである(点列 の記事の定義「部分列の定義」)。

単調な部分列の存在

任意の実数列は単調な部分列をもつ。

要点:「その先のどの項よりも真に大きい項」(峰)が無限個あれば峰を並べると狭義単調減少な部分列になり、有限個しかなければ最後の峰より先で、各項のあとにそれ以上の項が必ずあるので単調増加な部分列が作れる。

詳しい証明を開く

$(a_n)$ を実数列とする。番号 $n$ が峰であるとは、すべての $m>n$ について $a_m< a_n$ が成り立つことをいう。

峰が無限個ある場合:峰を小さい順に $n_0< n_1< n_2<\cdots$ と並べる。$n_k$ は峰で $n_{k+1}>n_k$ なので $a_{n_{k+1}}< a_{n_k}$ であり、$(a_{n_k})$ は狭義単調減少な部分列である。

峰が有限個しかない場合:すべての峰より大きい番号 $n_0$ をとる(峰がなければ $n_0=0$)。$n_0$ は峰でないので、$a_m\ge a_{n_0}$ となる $m>n_0$ がある。そのような $m$ のうち最小のものを $n_1$ とする。$n_1>n_0$ も峰でないので、同様に $a_m\ge a_{n_1}$ となる最小の $m>n_1$ を $n_2$ とする。これを繰り返すと、各段階で番号が 1 通りに決まり(選択を使わない)、$n_0< n_1< n_2<\cdots$ かつ $a_{n_0}\le a_{n_1}\le a_{n_2}\le\cdots$ となる。これは単調増加な部分列である。$\square$

この補題の証明は大小関係しか使っておらず、実数の上限性質を使わない。同じ補題と証明は 点列 の記事の命題「単調な部分列の存在」にもある。単調収束定理と組み合わせると、次の系が得られる。

有界な数列は収束する部分列をもつ

有界な実数列は収束する部分列をもつ。

lem-mct-monotone-subsequence により単調な部分列をとる。部分列の項はもとの数列の項なので部分列も有界であり、thm-mct-main の 3 により収束する。$\square$

この系は Bolzano–Weierstrassの定理と呼ばれ、単調でない数列についての議論(Cauchy 列の収束、有界閉区間上の連続関数の最大値の存在など)を単調収束定理につなぐ役目をする。

実数の連続性との関係

thm-mct-main は上限性質から導かれた。逆に、単調収束定理を認めれば上限性質が導かれる。この意味で、単調収束定理は上限性質の言い換えである。実数の「隙間のなさ」(連続性・完備性)を表す性質はほかにもいくつかあり、順序体の上でそれらを比べると次の表のようになる。表の「Archimedes の性質」は、どの元 $x$ に対しても $n>x$ となる自然数 $n$ があること(実数 の記事の定理「Archimedes性」)である。

性質(順序体 $K$ の上で)主張上限性質から導く上限性質を導く
単調収束定理単調で有界な数列は $K$ の中で収束するthm-mct-main極限とε-δ の記事の定理「単調有界数列の収束から上限公理へ」
Bolzano–Weierstrass の定理有界な数列は $K$ の中で収束する部分列をもつcor-mct-bounded-subsequencethm-mct-equivalences
区間縮小法と Archimedes の性質閉区間の減少列には共通の点がある区間 の記事の定理「区間縮小法」と 実数 の記事の定理「Archimedes性」thm-mct-equivalences
Cauchy 列の収束と Archimedes の性質Cauchy 列は $K$ の中で収束するCauchy列 の記事の定理「実数列の Cauchy判定法」と 実数 の記事の定理「Archimedes性」thm-mct-equivalences

順序体 $K$ の中でも、絶対値 $\lvert x\rvert:=\max\{x,-x\}$ を使って、数列の収束・有界性・Cauchy 列を実数の場合と同じ式で定める($\varepsilon$ は $K$ の正の元を動く)。

単調収束定理と同値な性質

$K$ を順序体とする。次の 5 条件は同値である。
(R1) $K$ は上限性質をもつ(上に有界な空でない部分集合は $K$ の中に上限をもつ)。
(R2) $K$ の単調増加で上に有界な数列は、$K$ の中で収束する。
(R3) $K$ の有界な数列は、$K$ の中で収束する部分列をもつ。
(R4) $K$ は Archimedes の性質をもち、$K$ の閉区間の減少列 $[a_0,b_0]\supset[a_1,b_1]\supset\cdots$ にはすべてに共通な点がある。
(R5) $K$ は Archimedes の性質をもち、$K$ の Cauchy 列は $K$ の中で収束する。

要点:条件 (i) と (ii) の同値は thm-mct-main の証明とその逆(極限とε-δ の記事の定理「単調有界数列の収束から上限公理へ」)による。残りは (ii) を中心に、(ii) と (iii) を単調な部分列の補題で、(ii) と (iv) を区間の 2 分法で、(ii) と (v) を「単調有界な数列は Cauchy 列になる」ことで結ぶ。

詳しい証明を開く

以下で繰り返し使う事実:(*) $K$ の数列 $c_m\to c$ で、すべての $m$ について $c_m\le d$ ならば $c\le d$ である。実際 $c>d$ なら $\varepsilon:=c-d>0$ について、十分大きい $m$ で $c_m>c-\varepsilon=d$ となり矛盾する。

(i)⇒(ii):thm-mct-main の 1 の証明は、上限の存在と順序体の性質しか使っていないので、$K$ でもそのまま成り立つ。

(ii)⇒(i):極限とε-δ の記事の定理「単調有界数列の収束から上限公理へ」は一般の順序体について証明されている。

(ii)⇒(iii):lem-mct-monotone-subsequence の証明は大小関係しか使わないので、$K$ の有界な数列は単調な部分列をもつ。単調増加なら (ii) により収束し、単調減少なら符号を変えた数列に (ii) を当てて収束する。

(iii)⇒(ii):$(a_n)$ を単調増加で上に有界とする。$a_0$ が下界なので有界であり、(iii) により部分列 $a_{n_k}\to L$ がある。各 $n$ について、$n_k\ge n$ となる $k$ では $a_n\le a_{n_k}$ なので、(*) により $a_n\le L$ である。$\varepsilon>0$ に対して $a_{n_k}>L-\varepsilon$ となる $k$ をとると、$n\ge n_k$ で $L-\varepsilon< a_{n_k}\le a_n\le L$ であり、$a_n\to L$ である。

(ii)⇒(iv):自然数全体が上に有界なら、数列 $0,1,2,\dots$ は単調増加で上に有界なので (ii) により極限 $L$ をもつ。$\lvert n-L\rvert<\frac12$ が $n\ge N$ で成り立つとすると $1=\lvert(N+1)-N\rvert<\frac12+\frac12=1$ となり矛盾する。よって Archimedes の性質が成り立つ。次に閉区間の減少列 $[a_n,b_n]$ について、$(a_n)$ は単調増加で $b_0$ 以下、$(b_n)$ は単調減少で $a_0$ 以上なので、(ii)(減少列は符号を変えて当てる)によりそれぞれ極限 $\alpha,\beta$ をもつ。任意の $m,n$ について $k:=\max\{m,n\}$ とおくと $a_m\le a_k\le b_k\le b_n$ である。$m\to\infty$ として (*) から $\alpha\le b_n$ がすべての $n$ で成り立つ。また $(a_n)$ は単調増加なので、(iii)⇒(ii) の証明と同じく $a_n\le\alpha$ である。よって $\alpha$ はすべての $[a_n,b_n]$ に属する。

(iv)⇒(ii):$(a_n)$ を単調増加とし、$b$ を上界とする。$c_0:=a_0-1$、$d_0:=b$ から始め、$m:=\frac{c_k+d_k}2$ が $\{a_n\}$ の上界なら $[c_{k+1},d_{k+1}]:=[c_k,m]$、そうでなければ $[c_{k+1},d_{k+1}]:=[m,d_k]$ と定める。すると閉区間の減少列ができ、各 $d_k$ は上界、各 $c_k$ は上界でなく、$d_k-c_k=\frac{d_0-c_0}{2^k}\le\frac{d_0-c_0}{k}$($2^k\ge k$ は帰納法で分かる)である。(iv) により共通の点 $L$ がある。$\varepsilon>0$ に対し、Archimedes の性質により $k>\frac{d_0-c_0}\varepsilon$ となる $k\ge1$ をとると $d_k-c_k<\varepsilon$ である。$c_k$ は上界でないので $a_N>c_k$ となる $N$ があり、$n\ge N$ で $c_k< a_n\le d_k$ である。$L$ も $[c_k,d_k]$ に属するので $\lvert a_n-L\rvert\le d_k-c_k<\varepsilon$ となり、$a_n\to L$ である。

(ii)⇒(v):Archimedes の性質は (ii)⇒(iv) で示した。$(a_n)$ を Cauchy 列とする。$\varepsilon=1$ に対する $N$ をとると $n\ge N$ で $\lvert a_n\rvert<\lvert a_N\rvert+1$ なので、$(a_n)$ は有界である。(ii)⇒(iii) により部分列 $a_{n_k}\to L$ がある。$\varepsilon>0$ に対し、$m,n\ge M$ で $\lvert a_m-a_n\rvert<\frac\varepsilon2$ となる $M$ をとり、$n_k\ge M$ かつ $\lvert a_{n_k}-L\rvert<\frac\varepsilon2$ となる $k$ をとる($n_k\ge k$ なので $k$ を大きくすればよい)。$n\ge M$ なら $\lvert a_n-L\rvert\le\lvert a_n-a_{n_k}\rvert+\lvert a_{n_k}-L\rvert<\varepsilon$ である。

(v)⇒(ii):$(a_n)$ を単調増加とし、$b$ を上界とする。$(a_n)$ が Cauchy 列でないと仮定すると、ある $\varepsilon>0$ について、どの $N$ に対しても $m\ge n\ge N$ かつ $a_m-a_n\ge\varepsilon$ となる $m,n$ があり、$a_n\ge a_N$ から $a_m\ge a_N+\varepsilon$ となる $m>N$ がある。$N_0:=0$ から始めて、$a_m\ge a_{N_j}+\varepsilon$ となる最小の $m$ を $N_{j+1}$ とすると、$a_{N_j}\ge a_0+j\varepsilon$ である。Archimedes の性質により $j>\frac{b-a_0}\varepsilon$ となる $j$ をとると $a_{N_j}>b$ となり、$b$ が上界であることに反する。よって $(a_n)$ は Cauchy 列であり、(v) により収束する。$\square$

条件 (ii) と (iii) は、Archimedes の性質を仮定に含めなくても、それ自身から Archimedes の性質を導く(証明の中で示した)。条件 (iv) と (v) では、区間の長さや数列の増え方を自然数と比べるところで Archimedes の性質を使っている。実数は上限性質をもつ順序体として定義されるので、実数についてはこの 4 つの性質がすべて成り立ち、どれを出発点に選んでもほかを定理として導ける。高校の教科書のように「単調で有界な数列は収束する」を実数の性質として認めて出発する流儀((1+1/n)^nの極限 の記事の公理「実数の連続性」)は、この同値を背景にしている。
これらの性質の同値は、実数の構成や集合についての強い道具を自由に使える通常の数学の中での同値である。どれだけ弱い公理系で証明できるかをさらに細かく測る研究が逆数学であり、有界な実数列が収束する部分列をもつという主張の強さがそこで調べられている(逆数学 の記事の例「有界実数列の収束部分列」)。

反例:仮定を外すと何が崩れるか

thm-mct-main の仮定は「実数の中で考える」「単調」「有界」の 3 つである。どれを外しても結論は成り立たない。

外す条件反例成り立たなくなること
実数の上限性質(有理数の中で考える)Newton 法の数列 $x_{n+1}=\frac12\bigl(x_n+\frac2{x_n}\bigr)$、$x_0=2$有理数の単調減少で下に有界な数列だが、有理数の中に極限がない
有界性調和級数の部分和 $H_n=1+\frac12+\cdots+\frac1n$単調増加だが収束しない($+\infty$ に発散する)
単調性$(-1)^n$有界だが収束しない
反例の確認
  1. 有理数の中で考える:ex-mct-newton の漸化式は有理数を有理数に移すので、すべての $x_n$ は有理数であり、$(x_n)$ は有理数の中で単調減少で $1$ を下界にもつ。この数列が有理数 $r$ に収束したとすると、ex-mct-newton と同じ計算で $r\ge1$、$r^2=2$ となるが、$r^2=2$ となる有理数はない($r=\frac pq$ を既約分数とすると $p^2=2q^2$ から $p$ が偶数、次に $q$ も偶数となり矛盾する)。よって「単調で有界」を満たすが「有理数の中で収束する」を満たさず、上限性質のない数の範囲では定理の含意が破れる。$\sqrt2$ の小数近似 $1,\ 1.4,\ 1.41,\dots$ でも同じことが起きる(極限とε-δ の記事の例「反例:有理数では単調有界数列が収束しない」)。
  2. 有界性を外す:$H_n$ は単調増加であり、$H_{2^m}\ge1+\frac m2$ から上に有界でない(調和級数 の記事の定理「調和級数の発散」)。prop-mct-extended により $H_n\to+\infty$ である。「単調」を満たし「収束する」を満たさない。$H_n$ は $n=10^6$ でもおよそ $14.4$ にすぎず、有界でないことは数値を眺めても分からない。上界があるかどうかの判定には証明が要る(Leb26 Example 2.1.12 も同じ注意をしている)。
  3. 単調性を外す:$(-1)^n$ は $\lvert(-1)^n\rvert\le1$ で有界だが、$1$ と $-1$ を交互にとるので収束しない(点列 の記事の注意「反例:単調性と有界性の一方だけでは収束しない」)。「有界」を満たし「収束する」を満たさない。ただし cor-mct-bounded-subsequence のとおり、収束する部分列(たとえば偶数番目の $1,1,1,\dots$)はもつ。
反例:極限の方程式を解いても収束は示せない

$b_0=2$、$b_{n+1}=b_n^2$ とする。極限 $L$ があると仮定すれば $L=L^2$ から $L\in\{0,1\}$ となるが、$b_n=2^{2^n}$ は単調増加で上に有界でなく、$+\infty$ に発散する。「極限 $L$ があれば $L$ は方程式を満たす」は正しいが、その逆「方程式の解があれば数列はそこに収束する」は成り立たない。ex-mct-sqrt-recursion と ex-mct-newton では、先に単調収束定理で極限の存在を示してから方程式を解いたので、値まで決まった。

補足

名前と文献

この定理は「単調有界数列の収束定理」とも呼ばれる。Leb26 は Theorem 2.1.10(pdf p. 55)で「単調な数列は有界であることと収束することが同値で、極限は上限・下限」という形で述べ、thm-mct-main と同じく上限の存在から証明している。単調で有界でない数列の極限を $\pm\infty$ とする言い方(prop-mct-extended)は同書 Proposition 2.3.10(pdf p. 79)、正の項の級数への応用(prop-mct-positive-series)は Proposition 2.5.13(pdf p. 92)にある。単調な部分列の補題(lem-mct-monotone-subsequence)は同書では Exercise 2.3.10(pdf p. 81)である。
同じ主張は 上限と下限 の記事の定理「単調有界数列の収束」、点列 の記事の定理「単調有界列の収束」、極限とε-δ の記事の定理「単調有界数列の収束」、無限級数の和と収束判定 の記事の定理「単調有界数列の収束」にも、それぞれの記事の流れの中で現れる。

関連項目

参考文献

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