James簡約積(James reduced product)とは、基点付き空間 $X$ の点を文字とする有限の語の全体で、基点の文字を消してよいとした商空間 $J(X)$ である。$X$ が可算個の胞体をもつ CW 複体で基点が $0$ 胞体なら、語の連結を積として結合的な H空間になり、連結な CW 複体 $X$ では懸垂のループ空間 $\Omega\Sigma X$ と弱ホモトピー同値になる(James の定理)。$n\ge1$ の球面では $J(S^n)$ は $kn$ 次元の胞体を 1 つずつもち、整数係数のコホモロジー環は $n$ が偶数なら分割冪多項式環、奇数なら外積代数とのテンソル積になる。$2n$ 胞体の付着写像が零ホモトピックであることは、$S^n$ が H空間であることと同値である。
基点付き空間 $(X,e)$ の James 簡約積(James reduced product)$J(X)$ は、$X$ の点を文字とする有限の語 $x_1x_2\cdots x_k$ の全体で、基点 $e$ の文字は消してよいとしたものである。$X$ が可算個の胞体をもつ CW 複体で $e$ が $0$ 胞体のとき(たとえば $X=S^n$)、語を並べる操作を積とすると、$J(X)$ は $e$ を(空の語として)単位元にもつ結合的な H空間 になり、$X$ が「生成する自由な H 空間」とみなせる。I. M. James は、連結な CW 複体 $X$ について $J(X)$ が懸垂のループ空間 $\Omega\Sigma X$ と弱ホモトピー同値であることを示した。
球面の場合の $J(S^n)$ は、$0,n,2n,3n,\dots$ 次元に胞体を 1 つずつもつ CW 複体で、そのコホモロジー環は $n$ が偶数なら分割冪多項式環、奇数なら外積代数とのテンソル積になる(jrp-thm-cohomology)。この記事では、この計算を完全に証明し、さらに $2n$ 胞体の付着写像が $S^n$ の H 空間の構造の有無をちょうど判定することを示す(jrp-thm-hspace)。
$(X,e)$ を基点付き空間とし、$X^k$ を $X$ の $k$ 個の積(積位相)とする。直和 $\coprod_{k\ge1}X^k$ を、$x_i=e$ のとき
$$
(x_1,\dots,x_{i-1},x_i,x_{i+1},\dots,x_k)\sim(x_1,\dots,x_{i-1},x_{i+1},\dots,x_k)\qquad(k\ge2)
$$
とする同値関係で割った商空間を $J(X)$ と書き、$X$ の James 簡約積という。$(x_1,\dots,x_k)$ の類を語 $x_1x_2\cdots x_k$ と書く。$J(X)$ の点は、$e$ を含まない長さ $k\ge0$ の語と一対一に対応する(長さ $0$ の空の語は $(e)$ の類)。$X^m$ の像を $J_m(X)$ と書き、商写像を $q_m\colon X^m\to J_m(X)$ とする。$J_1(X)=X$、$J_2(X)=X\times X/(x,e)\sim(e,x)$ である。
語の連結 $(x_1\cdots x_k)(y_1\cdots y_l):=x_1\cdots x_ky_1\cdots y_l$ は結合的で、空の語を両側の単位元にもつ。$X$ が CW 複体で $e$ が $0$ 胞体のとき、$J_m(X)$ は $X^m$ の積胞体から CW 構造を受け継ぎ、$J(X)$ は部分複体の増大列 $J_1(X)\subset J_2(X)\subset\cdots$ の和集合として CW 複体になる(Hat02 §3.2, p. 224)。$J(S^n)$ では連結は連続で、$J(S^n)$ は結合的で厳密な単位元をもつ H 空間である(同 §3.C, p. 282)。
可換環 $R$ について、$\gamma_0=1,\gamma_1,\gamma_2,\dots$ を基底とする自由 $R$ 加群に
$$
\gamma_i\gamma_j:=\binom{i+j}{i}\gamma_{i+j}
$$
で積を入れた可換環を $\Gamma_R[\gamma]$ と書き、分割冪多項式環(divided polynomial algebra)という。$\gamma_1^k=k!\,\gamma_k$ なので、$\gamma_k$ は「$\gamma_1^k/k!$」にあたる元である。$\Gamma_{\mathbb{Z}}[\gamma]$ は $\gamma_k\mapsto x^k/k!$ により $\mathbb{Q}[x]$ の部分環と同一視でき、$\Gamma_{\mathbb{Q}}[\gamma]\cong\mathbb{Q}[\gamma_1]$ である。
「$x^k/k!$ にあたる元」を $k!$ で割らずに扱う発想は、可換環論の 分割冪構造 と同じである。
以下 $n\ge1$ とし、$S^n=e^0\cup e^n$($e$ が $0$ 胞体)の CW 構造を使う(CW複体 の命題「球面の 2 つの CW 構造」)。$(S^n)^m$ の胞体は、$\{1,\dots,m\}$ の部分集合 $I$ ごとに 1 つずつあり、$I$ の位置に $n$ 胞体、残りの位置に $e$ を置いた積胞体 $e_I$(次元 $n|I|$)である。
$J(S^n)$ は、各 $k\ge0$ について $kn$ 次元の胞体 $e^{kn}$ をちょうど 1 つもつ CW 複体であり、$J_m(S^n)$ は $mn$ 次元以下の胞体からなる部分複体である。商写像 $q_m\colon(S^n)^m\to J_m(S^n)$ は胞体写像で、各胞体 $e_I$ の内部を $e^{n|I|}$ の内部へ同相に写す。
この命題は Hat02 §3.2(p. 224)による。この記事では証明しない。胞体は語の長さで数えられ、長さ $k$ の語の全体が $e^{kn}$ の内部である。
$u\in H^n(S^n;\mathbb{Z})$ を生成元とし、$p_i\colon(S^n)^m\to S^n$ を第 $i$ 射影として $\alpha_i:=p_i^*u$ とおく。$I=\{i_1<\dots< i_k\}$ について $\alpha_I:=\alpha_{i_1}\cdots\alpha_{i_k}$($\alpha_\emptyset:=1$)と書く。コホモロジー環 の定理「Künneth の定理(環の形)」を繰り返し使うと、$H^*((S^n)^m;\mathbb{Z})$ は $\alpha_I$ を基底とする自由加群であり、$\alpha_i^2=p_i^*(u^2)=0$、$\alpha_i\alpha_j=(-1)^n\alpha_j\alpha_i$ である。
要点:$(S^n)^m$ の胞体鎖複体の境界は $0$ で、$q_m$ が誘導する胞体鎖写像は全射なので、$J_m(S^n)$ の胞体鎖複体の境界も $0$ になる。
胞体写像 $q_m$ は胞体鎖写像 $(q_m)_\sharp\colon C_\bullet^{\mathrm{CW}}((S^n)^m)\to C_\bullet^{\mathrm{CW}}(J_m(S^n))$ を誘導する(胞体ホモロジー の命題「胞体写像が誘導する鎖写像」)。$e_I$ の内部は $e^{n|I|}$ の内部へ同相に写り、$J_m$ には各次元に胞体が 1 つしかないので、骨格の商の球面の間の写像の写像度は $\pm1$ であり、$(q_m)_\sharp$ は各 $e_I$ の生成元を $e^{n|I|}$ の生成元の $\pm1$ 倍に写す。とくに $(q_m)_\sharp$ は全射である。
$(S^n)^m$ の胞体鎖複体の境界は $0$ である。$n\ge2$ なら、胞体は $n$ の倍数の次元にしかなく境界の行き先が $0$ だからである。$n=1$ なら、$C_k^{\mathrm{CW}}$ は階数 $\binom mk$ の自由加群で、$H^k((S^1)^m;\mathbb{Z})$ も(基底 $\alpha_I$、$|I|=k$ により)階数 $\binom mk$ の自由加群である。胞体コホモロジーは胞体鎖複体の双対のコホモロジーなので(Hat02 Theorem 3.5, p. 203)、境界のどれかが $0$ でなければ、ある次数でコホモロジーの階数が鎖の階数より小さくなり矛盾する。
よって $\partial\circ(q_m)_\sharp=(q_m)_\sharp\circ\partial=0$ で、$(q_m)_\sharp$ の全射性から $J_m(S^n)$ の境界も $0$ である。$J(S^n)$ の胞体鎖複体はこれらの和なので境界は $0$ で、胞体コホモロジーは各胞体の双対で生成される。これで 1 が出る。制限 $H^{kn}(J)\to H^{kn}(J_m)$ は、$J_m$ に含まれる胞体の双対を残す写像なので $m\ge k$ で同型である。$J_k(S^n)$ と $(S^n)^k$ の $kn$ 次元の胞体はどちらも 1 つで、$(q_k)_\sharp$ はその生成元を $\pm1$ 倍に写すので、$q_k^*$ は $kn$ 次で同型である。$\square$
jrp-lem-additive の 2 と $H^{kn}((S^n)^k)=\mathbb{Z}\,\alpha_{\{1,\dots,k\}}$ により、
$$
q_k^*(x_k|_{J_k(S^n)})=\alpha_1\alpha_2\cdots\alpha_k
$$
をみたす $x_k\in H^{kn}(J(S^n);\mathbb{Z})$ がただ 1 つある($x_0:=1$)。$x_k$ は $H^{kn}(J(S^n);\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ の生成元である。
$n\ge1$ とする。
段 1:$q_m^*$ による像。 $m\ge k$ とし、$x_k$ の $J_m(S^n)$ への制限も $x_k$ と書く。
$$
q_m^*(x_k)=\sum_{|I|=k}\alpha_I
$$
を示す。$I=\{i_1<\dots< i_k\}$ について、$\iota_I\colon(S^n)^k\to(S^n)^m$ を、第 $i_j$ 成分に $y_j$、残りに $e$ を置く写像とする。語として $q_m(\iota_I(y))=y_1\cdots y_k=q_k(y)$ なので、$q_m\circ\iota_I$ は $q_k$ と包含 $J_k\subset J_m$ の合成である。また $p_{i_j}\circ\iota_I$ は第 $j$ 射影で、$i\notin I$ なら $p_i\circ\iota_I$ は定値写像なので、$\iota_I^*\alpha_{i_j}=\alpha_j$、$\iota_I^*\alpha_i=0$ である。したがって $|I'|=k$ について $\iota_I^*\alpha_{I'}$ は $I'=I$ なら $\alpha_1\cdots\alpha_k$、そうでなければ $0$ である。$q_m^*(x_k)=\sum_{|I'|=k}c_{I'}\alpha_{I'}$ と基底で書いて $\iota_I^*$ を施すと、左辺は $q_k^*(x_k)=\alpha_1\cdots\alpha_k$ なので $c_I=1$ である。
段 2:$n$ が偶数。 $\alpha_i$ は互いに可換で $\alpha_i^2=0$ なので、$(S^n)^k$ で
$$
q_k^*(x_1^k)=(\alpha_1+\dots+\alpha_k)^k=k!\,\alpha_1\cdots\alpha_k=k!\,q_k^*(x_k)
$$
となる(展開で残るのは添字がすべて異なる $k!$ 個の項)。$q_k^*$ は $kn$ 次で同型なので $J_k$ で $x_1^k=k!\,x_k$ であり、制限が $kn$ 次で同型だから $J(S^n)$ でも成り立つ。すると $i!\,j!\,x_ix_j=x_1^{i+j}=(i+j)!\,x_{i+j}$ で、$H^{(i+j)n}\cong\mathbb{Z}$ は捩れをもたないので $x_ix_j=\binom{i+j}{i}x_{i+j}$ である。基底 $\gamma_k$ と $x_k$ が対応し、積の規則が一致するので 1 が従う。
段 3:$n$ が奇数。 $\alpha_i$ どうしは反可換である。$J_{2m+1}$ で段 1 を使うと
$$
q^*(x_1x_{2m})=\sum_{i=1}^{2m+1}\alpha_i\,\alpha_1\cdots\widehat{\alpha_i}\cdots\alpha_{2m+1}=\sum_{i=1}^{2m+1}(-1)^{i-1}\alpha_1\cdots\alpha_{2m+1}=\alpha_1\cdots\alpha_{2m+1}
$$
となる($\alpha_i$ を $i-1$ 個の元の後ろへ移すと符号 $(-1)^{i-1}$、交代和は $1$)。よって $x_1x_{2m}=x_{2m+1}$ である。$J_{2m}$ では、$i< j$ について $\alpha_i\alpha_j$ を残りの積の中の位置へ移す符号は $(-1)^{i-1}(-1)^{j-2}$ なので
$$
q^*(x_2x_{2m-2})=\Bigl(\sum_{i< j}(-1)^{i+j-3}\Bigr)\alpha_1\cdots\alpha_{2m}
$$
である。$i$ を固定すると $j=i+1,\dots,2m$ の $2m-i$ 項の交代和で、$i$ が奇数なら $1$、偶数なら $0$ になる。$1\le i\le 2m-1$ の奇数は $m$ 個なので、$x_2x_{2m-2}=m\,x_{2m}$ である。これを繰り返して $x_2^k=k!\,x_{2k}$ を得て、段 2 と同じく $x_{2i}x_{2j}=\binom{i+j}{i}x_{2i+2j}$ である。$x_1^2$ は次数付き可換性から $x_1^2=-x_1^2$ をみたし、$H^{2n}\cong\mathbb{Z}$ は捩れをもたないので $0$ である。最後に $x_{2k+1}=x_1x_{2k}$ なので、$x_1^\varepsilon\otimes\gamma_k\mapsto x_1^\varepsilon x_{2k}$($\varepsilon=0,1$)は基底を基底に写し、積も保つ($x_{2k+1}x_{2l+1}=\pm x_1^2x_{2k}x_{2l}=0$)。$\square$
有理数係数では、$\Gamma_{\mathbb{Q}}[\gamma]=\mathbb{Q}[\gamma_1]$ なので、$H^*(J(S^n);\mathbb{Q})$ は $n$ が偶数なら $\mathbb{Q}[x_1]$、奇数なら $\Lambda_{\mathbb{Q}}[x_1]\otimes\mathbb{Q}[x_2]$ である。これは H 空間 $J(S^n)$ について H空間 の定理「Hopf の定理」が述べる形と合っている。$\mathbb{Z}/p$ 係数では $\Gamma_{\mathbb{Z}/p}[\gamma]\cong\bigotimes_{i\ge0}(\mathbb{Z}/p)[\gamma_{p^i}]/(\gamma_{p^i}^p)$ となり、切り詰めた多項式環が現れる(Hat02 §3.C, pp. 286–287)。
$J_2(S^n)=S^n\cup e^{2n}$ である。$\Phi\colon D^n\to S^n$ を $n$ 胞体の特性写像とすると、$S^n\times S^n$ の $2n$ 胞体の特性写像は $\Phi\times\Phi\colon D^n\times D^n\to S^n\times S^n$ で、その境界 $\partial(D^n\times D^n)\cong S^{2n-1}$ は $S^n\vee S^n=S^n\times\{e\}\cup\{e\}\times S^n$ に写る。$q_2$ は $S^n\vee S^n$ の上では 2 つの $S^n$ を同一視する折りたたみ写像 $\nabla\colon S^n\vee S^n\to S^n$ なので、$J_2(S^n)$ の $2n$ 胞体の付着写像は
$$
\varphi:=\nabla\circ(\Phi\times\Phi)|_{\partial(D^n\times D^n)}\colon S^{2n-1}\to S^n
$$
であり、$J_2(S^n)$ は $S^n$ に $\varphi$ で $2n$ 次元の円板を貼った空間である。
$n\ge1$ とする。$S^n$ に H 空間の構造が入ることと、$J_2(S^n)$ の $2n$ 胞体の付着写像 $\varphi$ が零ホモトピックであることは同値である。
$\varphi$ が零ホモトピックだとする。このとき $\varphi$ は連続写像 $g\colon D^{2n}\to S^n$ に延びる。$S^n$ の上で恒等写像、円板の上で $g$ とすると、貼り付けた空間の商位相により連続写像 $r\colon J_2(S^n)\to S^n$ で $r|_{S^n}=\mathrm{id}$ となるものが得られる(CW複体 の定義「$n$ 胞体の貼り付け」)。$\mu:=r\circ q_2\colon S^n\times S^n\to S^n$ とおくと、$q_2(x,e)=q_2(e,x)=x$ なので $\mu(x,e)=\mu(e,x)=x$ であり、$(S^n,\mu,e)$ は厳密な単位元をもつ H 空間である。
逆に $S^n$ に H 空間の構造 $(\mu,e')$ があるとする。$e'$ を $e$ に写す $S^n$ の回転 $h$ をとり、$h$ と $h^{-1}$ で積を移せば(H空間 の命題「基点付きホモトピー同値で移ること」)単位元は $e$ としてよい。$S^n$ は有限 CW 複体で $e$ は $0$ 胞体なので、H空間 の命題「単位元の厳密化」により $\mu$ を $\mu(x,e)=\mu(e,x)=x$ をみたすものに取り替えられる。$q_2$ が同一視するのは $(x,e)$ と $(e,x)$ だけで、$\mu$ はそこで同じ値 $x$ をとるので、$\mu$ は商写像 $q_2$ を経由し、連続写像 $r\colon J_2(S^n)\to S^n$ で $r\circ q_2=\mu$、$r|_{S^n}=\mathrm{id}$ となるものが得られる。すると $r\circ q_2\circ(\Phi\times\Phi)\colon D^{2n}\cong D^n\times D^n\to S^n$ は、境界の上で $r\circ\varphi=\varphi$ に一致する。$\varphi$ が円板に延びたので、$\varphi$ は零ホモトピックである。$\square$
1:$S^1,S^3,S^7$ は H 空間なので(H空間 の例「位相群と単位球面」「7 次元球面と射影空間」)、jrp-thm-hspace による。零ホモトピックな写像で円板を貼った空間は $S^n\vee S^{2n}$ とホモトピー同値である(Hat02 Proposition 0.18, p. 16)。
2:$\varphi$ が零ホモトピックなら、前半の証明の $r$ があり、$r|_{S^n}=\mathrm{id}$ と制限 $H^n(J_2)\to H^n(S^n)$ が同型であることから $x_1=r^*u$ となる。すると $x_1^2=r^*(u^2)=0$ だが、jrp-thm-cohomology により $J_2$ で $x_1^2=2x_2\ne0$ であり矛盾する。$x_1^2=2x_2$ は、コホモロジー環 の定義「Hopf 不変量」で $\varphi$ の Hopf 不変量が $\pm2$ であることを意味する。$\square$
2 は、H空間 で余積を使って示した「偶数次元の球面は H 空間でない」の別証明になっている。また 1 から、$J(S^n)$ の各胞体の付着写像はいつも本質的とは限らない。$n$ が偶数なら $J(S^n)$ の有理コホモロジーは多項式環 $\mathbb{Q}[x_1]$ なので、$k\ge2$ の胞体 $e^{kn}$ はどれも $J_{k-1}(S^n)$ に本質的な写像で貼られている(零ホモトピックなら $J_k$ が $J_{k-1}\vee S^{kn}$ とホモトピー同値になり、$x_1^k\ne0$ に反する)。
$X$ を連結な CW 複体で $e$ を $0$ 胞体とし、$\Sigma X$ を被約懸垂とする(懸垂、スマッシュ積)。$x\in X$ に、$\Sigma X$ の中で $(x,t)$($0\le t\le1$)をたどるループ $\lambda(x)$ を対応させると、$S^n\to\Omega S^{n+1}$ のような写像 $X\to\Omega\Sigma X$ ができる。H 空間でない $X$ はこれでは $\Omega\Sigma X$ を近似できないので、語の連結を積にもつ $J(X)$ に延ばす($X$ が可算個の胞体をもつときは、$J(X)$ は $X$ が生成する自由な H 空間である)。基点でだけ $0$ になる連続関数 $d\colon X\to[0,1]$ を 1 つ固定し、各ループ $\lambda(x_i)$ をたどる時間を $d(x_i)$ に比例させてから全体を $[0,1]$ に正規化すると、連続写像 $\lambda\colon J(X)\to\Omega\Sigma X$、$x_1\cdots x_k\mapsto\lambda(x_1)\cdots\lambda(x_k)$ が定まる。
連結な CW 複体 $X$ について、$\lambda\colon J(X)\to\Omega\Sigma X$ は 弱ホモトピー同値 である。
これは Hat02 Theorem 4J.1(p. 471)であり、この記事では証明しない。証明は、$\Omega\Sigma X$ と $J(X)$ の体係数のホモロジーがともにテンソル代数 $T\tilde H_*(X)$ になることを示し、ホモロジーの同型から弱ホモトピー同値を導くものである。弱ホモトピー同値はコホモロジーの同型を誘導するので(同 Proposition 4.21, p. 356)、jrp-thm-cohomology は $\Omega S^{n+1}$ のコホモロジー環の計算でもある。たとえば $H^*(\Omega S^3;\mathbb{Z})\cong\Gamma_{\mathbb{Z}}[\gamma]$($|\gamma_k|=2k$)である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $n\ge1$ | $n=0$、$J(S^0)$ | $H^0(J(S^n);\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$(jrp-lem-additive の 1) |
| $n$ が偶数(jrp-thm-cohomology の 1) | $n=1$、$J(S^1)$ | $x_1^2=2x_2$ |
1 行目:$S^0=\{e,a\}$ では、$e$ を含まない語は $a^k$($k\ge0$)だけで、$J_m(S^0)$ は有限個の点の離散空間 $(S^0)^m$ の商なので離散であり、$J(S^0)$ はその和として離散空間 $\{a^k\mid k\ge0\}$ である(各点の逆像は各 $X^k$ で開かつ閉)。弧状連結成分が無限個あるので $H^0(J(S^0);\mathbb{Z})$ は $\mathbb{Z}$ の無限個の直積で、$\mathbb{Z}$ ではない。
2 行目:jrp-thm-cohomology の 2 により $x_1^2=0$ であり、$x_2$ は $H^2(J(S^1);\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ の生成元なので $2x_2\ne0$ である。これは jrp-cor-attaching の 1($J_2(S^1)\simeq S^1\vee S^2$)とも合う。
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