不定方程式の解法(techniques for solving Diophantine equations)とは、整数係数の方程式の整数解をすべて求めるか、解がないことを示すための技法である。主に 3 つの型を使う。(1) 積の形にする:$xy+ax+by=c$ は $(x+b)(y+a)=N$($N=c+ab$)と同値で、$N\ne0$ なら解は $N$ の約数(負の約数も含む)と対応して $2\,d(\lvert N\rvert)$ 組、$N=0$ なら無数にある。(2) 大小を仮定する:未知数の入れかえで変わらない式では $x\le y\le z$ と並べて範囲を絞り、最後に並べかえを戻す。(3) 余りで調べる:ある $n\ge2$ で合同式が解をもたなければ整数解はない。法 $3$・法 $4$ で解をもつ $x^2+y^2=21$ にも整数解はない。
前提知識: 整数の割り算と互除法, 合同式の計算規則, 約数の個数と約数の総和
$xy-2x-3y=0$ や $x^2-3y^2=2$ のように、未知数の個数より式の個数が少ない方程式を、解を整数に限って考えると、解がどれだけあるか・そもそもあるのかが問題になる。実数の範囲なら $xy-2x-3y=0$ の解は双曲線上の点全部で無数にあるが、整数に限ると $8$ 組しかない。この記事では、$1$ 次でない方程式の整数解を求めるときによく使う 3 つの型を、「なぜ効くか・使える条件・効かない例」に分けて調べる。
左辺に $6$ を足すと $xy-2x-3y+6=(x-3)(y-2)$ と因数分解できるので、方程式は
$$
(x-3)(y-2)=6
$$
と同じである。$x,y$ が整数なら $x-3$ と $y-2$ は掛けて $6$ になる整数の組なので、$6$ の約数の組に限られる。$(x-3,\,y-2)$ は
$$
(1,6),\ (2,3),\ (3,2),\ (6,1),\ (-1,-6),\ (-2,-3),\ (-3,-2),\ (-6,-1)
$$
の $8$ 通りで、$(x,y)=(4,8),(5,5),(6,4),(9,3),(2,-4),(1,-1),(0,0),(-3,1)$ である。たとえば $(x,y)=(5,5)$ では $25-10-15=0$ である。
正の整数 $x,y,z$ で $\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z=1$ となるものを探す。式は $x,y,z$ を入れかえても変わらないので、まず $x\le y\le z$ の解だけを探す。このとき $\dfrac1x$ が 3 つの中でいちばん大きいので
$$
1=\frac1x+\frac1y+\frac1z\le\frac1x+\frac1x+\frac1x=\frac3x
$$
となり、$x\le3$ である。$x$ の候補が $1,2,3$ の 3 つに絞れた。残りは prop-dio-egyptian で調べる。
整数 $x$ を $3$ で割った余りが $0,1,2$ のとき、$x^2$ を $3$ で割った余りはそれぞれ $0,1,1$ である($2^2=4=3+1$)。$3y^2$ は $3$ の倍数なので、$x^2-3y^2$ を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ で、$2$ にはならない。よって $x^2-3y^2=2$ には整数解がない。$x,y$ を 1 つも試さずに「解がない」と分かる。
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $(x-3)(y-2)=6$ と変形する | 積の形と約数の組(thm-dio-product) | 整数の約数、双曲線上の格子点 |
| $x\le y\le z$ として $x\le3$ | 大小の仮定による候補の絞り込み(prop-dio-egyptian) | 対称性で割る、有限の探索 |
| $3$ で割った余りを比べる | 法 $n$ で調べる(thm-dio-mod) | 局所的な障害、$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ への還元 |
| どの余りでも矛盾しない | 余りだけでは決まらない(ex-dio-counter-21) | 局所と大域、Hasse の原理 |
整数を係数とする多項式 $f(x_1,\dots,x_k)$ について、方程式 $f(x_1,\dots,x_k)=0$ を、解を整数(または正の整数)に限って考えるとき、不定方程式 という。$f(a_1,\dots,a_k)=0$ をみたす整数の組 $(a_1,\dots,a_k)$ を 整数解 という。分母を払うと多項式になる方程式($\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac16$ など)も、分母が $0$ でない解を考えることにして、同じように扱う。
不定方程式を解くとは、整数解を「すべて」求めること、または「ない」ことを示すことである。いくつか見つけただけでは解いたことにならない。この記事の 3 つの型は、どれも「調べる候補を有限個に絞る」か「解がないことを一度に示す」ための道具である。
ex-dio-start-product で解が $8$ 組に絞れたのは、$0$ でない整数 $N$ を 2 つの整数の積に分ける方法が有限個しかないからである。
$N$ を $0$ でない整数とする。$uv=N$ をみたす整数の組 $(u,v)$ は、$u$ が $N$ の約数(負の約数も含む)全体を動き $v=\dfrac Nu$ としたものに限られる。その個数は $2\,d(\lvert N\rvert)$ である。ここで $d(m)$ は正の整数 $m$ の正の約数の個数である。
要点:$uv=N$ なら $u$ は $N$ の約数で、$v=\dfrac Nu$ は $u$ から決まる。$\lvert N\rvert$ の正の約数 $e$ 1 つにつき $u=e$ と $u=-e$ の 2 つがあるので、組は $2\,d(\lvert N\rvert)$ 個である。
段 1($u$ は $N$ の約数)。$uv=N$ なら、$N$ は $u$ の $v$ 倍なので $u$ は $N$ を割る。$N\ne0$ なので $u\ne0$ であり、$v=\dfrac Nu$ と $u$ から決まる。逆に $u$ が $N$ の約数なら $v=\dfrac Nu$ は整数で、$uv=N$ である。
段 2(数える)。$u$ が $N$ の約数であることと、$\lvert u\rvert$ が $\lvert N\rvert$ の正の約数であることは同じである。正の約数 $e$ 1 つにつき $u=e$ と $u=-e$ の 2 つがあるので、$u$ の候補は $2\,d(\lvert N\rvert)$ 個である。$\square$
約数の個数 $d(m)$ は、$m=p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$ と素因数分解すると $(e_1+1)\cdots(e_k+1)$ である。この公式と証明は 約数の個数と約数の総和 で扱う。
$xy$ の項と $1$ 次の項だけをもつ方程式は、いつでも積の形に直せる。
$a,b,c$ を整数とし、$N:=c+ab$ とおく。方程式
$$
xy+ax+by=c
$$
は $(x+b)(y+a)=N$ と同じである。
方針:$ab$ を足して左辺を因数分解し、lem-dio-pairs を使う。
段 1(変形)。展開すると $(x+b)(y+a)=xy+ax+by+ab$ である。よって
$$
xy+ax+by=c\iff xy+ax+by+ab=c+ab\iff(x+b)(y+a)=N
$$
である。どの変形も両辺に同じ数を足しただけなので、逆向きにもたどれる。
段 2($N\ne0$)。$u:=x+b$、$v:=y+a$ とおくと、$x,y$ が整数であることと $u,v$ が整数であることは同じで、方程式は $uv=N$ になる。lem-dio-pairs により、$u$ は $N$ の約数全体を動き、$v=\dfrac Nu$ である。$x=u-b$、$y=v-a$ に戻すと 1 の形になる。$u$ が違えば $x$ が違うので、解の個数は $u$ の個数 $2\,d(\lvert N\rvert)$ に等しい。
段 3($N=0$)。$(x+b)(y+a)=0$ は「$x+b=0$ または $y+a=0$」と同じである(2 つの整数の積が $0$ なら、どちらかが $0$)。$x=-b$ なら $y$ が何でも式が成り立ち、$y=-a$ なら $x$ が何でも成り立つ。$\square$
双曲線 (x-3)(y-2)=6 と、その上の格子点 8 個(赤)。破線は漸近線 x=3 と y=2 で、格子点は漸近線から約数の分だけ離れた位置にある
図 1 は ex-dio-start-product の方程式のグラフである。実数の解は双曲線上の点全部だが、$x$ が大きくなると $y-2=\dfrac6{x-3}$ は $0$ と $1$ の間に入ってしまい、$y$ は整数になれない。格子点が漸近線の近くの有限個に限られるのは、このためである。$N=0$ の場合は、双曲線が 2 本の直線 $x=-b$、$y=-a$ につぶれ、直線上の格子点が無数にある。
(3) $xy+x+y=5$ は $a=b=1$、$c=5$ で、$N=5+1=6$、$(x+1)(y+1)=6$ である。$u=x+1$ が $1,2,3,6,-1,-2,-3,-6$ のとき
$$(x,y)=(0,5),\ (1,2),\ (2,1),\ (5,0),\ (-2,-7),\ (-3,-4),\ (-4,-3),\ (-7,-2)$$
の $8$ 組である。たとえば $(1,2)$ では $2+1+2=5$ である。
分数の形の方程式は、分母を払うと thm-dio-product の形になることが多い。
分母を払う(両辺に $6xy$ を掛ける)と $6y+6x=xy$、つまり $xy-6x-6y=0$ である。$36$ を足して
$$
(x-6)(y-6)=36
$$
となる。$x,y$ は正なので $\dfrac1x<\dfrac16$、つまり $x>6$ であり、同じく $y>6$ である。よって $x-6$ と $y-6$ は正の約数の組で、$36=2^2\cdot3^2$ の正の約数は $d(36)=3\cdot3=9$ 個あるから、解は $9$ 組である:
$$
(x,y)=(7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15),\ (12,12),\ (15,10),\ (18,9),\ (24,8),\ (42,7).
$$
たとえば $(10,15)$ では $\dfrac1{10}+\dfrac1{15}=\dfrac{3+2}{30}=\dfrac16$ である。負の約数の組が使えないことは、$x>6$ という大小の評価(型 2)から出ている。
$xy$ の係数が $1$ でないときは、両辺にその係数を掛けてから因数分解する。
(2) $2xy+x+y=7$。両辺に $2$ を掛けて $1$ を足すと $4xy+2x+2y+1=15$、つまり
$$(2x+1)(2y+1)=15$$
である。$15$ の約数 $u=\pm1,\pm3,\pm5,\pm15$ はどれも奇数なので、$x=\dfrac{u-1}2$ はいつも整数になり、解は $8$ 組ある:$(0,7),(1,2),(2,1),(7,0),(-1,-8),(-2,-3),(-3,-2),(-8,-1)$。(1) と違って、約数でふるう必要がない。
$x^2-y^2=(x-y)(x+y)$ なので、平方の差が一定の方程式も積の形になる。このとき $x-y$ と $x+y$ の和 $2x$ が偶数なので、2 つの因数の偶奇がそろうことが条件に加わる。
(2) $x^2=y^2+2y+13$ の整数解。$y^2+2y+13=(y+1)^2+12$ なので $x^2-(y+1)^2=12$、つまり
$$(x-y-1)(x+y+1)=12$$
である。2 つの因数の和は $2x$ で偶数なので、2 つとも偶数か 2 つとも奇数である。積 $12$ は偶数なので 2 つとも奇数ではありえず、2 つとも偶数である。$12$ を偶数 2 つの積に分けるのは $(2,6),(6,2),(-2,-6),(-6,-2)$ だけで、$(x,y)=(4,1),(4,-3),(-4,-3),(-4,1)$ の $4$ 組である。たとえば $(4,1)$ では $16=1+2+13$ である。
式が未知数の入れかえで変わらないとき、未知数を小さい順に並べた解だけを探し、最後に並べかえて戻せばよい。並べると「いちばん小さい未知数」の範囲が不等式で押さえられる。
正の整数 $x,y,z$ で $\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z=1$ をみたすものは、$x\le y\le z$ と並べると
$$
(x,y,z)=(3,3,3),\ (2,4,4),\ (2,3,6)
$$
の 3 つである。並べる前の順序を区別すると、全部で $1+3+6=10$ 組ある。
方針:ex-dio-start-order と同じ不等式で $x$ を絞り、$x$ を決めたあと同じ考え方で $y$ を絞る。$z$ は最後に式から決まる。
段 1(並べてよい理由)。式の左辺は $x,y,z$ を入れかえても同じ値なので、解 $(x,y,z)$ の 3 つの数を小さい順に並べかえたものも解である。よって、$x\le y\le z$ の解をすべて求め、それを並べかえたものを集めれば、解の全体になる。
段 2($x$ の範囲)。$x\le y\le z$ なので $\dfrac1x\ge\dfrac1y\ge\dfrac1z$ であり、
$$
1=\frac1x+\frac1y+\frac1z\le\frac3x
$$
から $x\le3$ である。また $x=1$ なら $\dfrac1y+\dfrac1z=0$ となるが、左辺は正なのでありえない。よって $x=2$ か $x=3$ である。
段 3($x=2$ のとき)。$\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac12$ である。$\dfrac1y<\dfrac12$ なので $y>2$、つまり $y\ge3$ である。$y\le z$ から $\dfrac12=\dfrac1y+\dfrac1z\le\dfrac2y$ なので $y\le4$ である。$y=3$ なら $\dfrac1z=\dfrac12-\dfrac13=\dfrac16$ で $z=6$、$y=4$ なら $\dfrac1z=\dfrac12-\dfrac14=\dfrac14$ で $z=4$ である。
段 4($x=3$ のとき)。$\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac23$ である。$y\ge x=3$ と $\dfrac23\le\dfrac2y$ から $y\le3$ なので $y=3$ で、$\dfrac1z=\dfrac23-\dfrac13=\dfrac13$ から $z=3$ である。
段 5(並べかえて戻す)。$(3,3,3)$ は並べかえても $1$ 通り、$(2,4,4)$ は $2$ の位置で $3$ 通り、$(2,3,6)$ は 3 つが異なるので $3!=6$ 通りある。合わせて $10$ 組である。$\square$
段 3 で「$\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac12$、$y\le z$」を解くのは、ex-dio-sixth と同じく積の形 $(y-2)(z-2)=4$ に直しても解ける。型 2 で候補を絞り、残りを型 1 で解くのは、よくある組み合わせである。
prf-dio-egyptian と同じく、小さい順に並べて最小の未知数を不等式で絞ると、(1) $\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac12$ の正の整数解は $(3,6),(6,3),(4,4)$ の $3$ 組、(2) $xyz=x+y+z$ の $x\le y\le z$ の正の整数解は $(1,2,3)$ だけである。
(1) 正の整数 $x\le y$ で $\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac12$。$\dfrac12\le\dfrac2x$ から $x\le4$、$\dfrac1x<\dfrac12$ から $x\ge3$ である。$x=3$ なら $y=6$、$x=4$ なら $y=4$ である。よって $(x,y)=(3,6),(4,4)$ で、並べかえを戻すと $(3,6),(6,3),(4,4)$ の $3$ 組である。
(2) 正の整数 $x\le y\le z$ で $xyz=x+y+z$。$z$ がいちばん大きいので $xyz=x+y+z\le3z$ で、両辺を $z$($>0$)で割って $xy\le3$ である。$x\le y$ なので $(x,y)=(1,1),(1,2),(1,3)$ に限られる。$(1,1)$ なら $z=2+z$ で解なし、$(1,2)$ なら $2z=3+z$ で $z=3$、$(1,3)$ なら $3z=4+z$ で $z=2$ となり $y\le z$ に反する。よって $(x,y,z)=(1,2,3)$ だけで、実際 $1\cdot2\cdot3=6=1+2+3$ である。
大小の評価は、未知数の範囲だけでなく「となり合う 2 つの平方数の間には平方数がない」という形でも使える。
$n\ge1$ なら
$$
n^2< n^2+n+1< n^2+2n+1=(n+1)^2
$$
である(左の不等号は $n+1>0$、右の不等号は $n>0$ による)。$n^2$ と $(n+1)^2$ はとなり合う平方数なので、その間にある $n^2+n+1$ は平方数ではない(図 2)。
$n\le-2$ のときも、$m:=-n-1$($\ge1$)とおくと $n^2+n+1=m^2+m+1$ となるので、前半により平方数ではない。
$n=-m-1$ を代入して展開すると $n^2+n+1=(m+1)^2-(m+1)+1=m^2+2m+1-m-1+1=m^2+m+1$ である。$n\le-2$ なら $m=-n-1\ge1$ なので、前半の $n\ge1$ の場合を $m$ に使える。
n=0,1,…,6 について n²(青)、n²+n+1(赤)、(n+1)²(緑)を並べた図。n が 1 以上では赤い点がいつも青と緑の間に入る
型 2 の要点は、方程式から「ある未知数が小さい」か「ある量が 2 つの値の間にある」ことを不等式で導き、候補を有限個にすることである。式が対称でないのに大小を仮定すると解を落とす(ex-dio-counter-symmetric)。
ex-dio-start-mod の論法を一般の形で述べる。合同式の記号 $a\equiv b\pmod n$($a-b$ が $n$ で割り切れること)と、その計算規則(足し算・引き算・掛け算は合同式のまま行える)は 合同式の計算規則 で扱う。
$f(x_1,\dots,x_k)$ を整数係数の多項式とし、$n\ge2$ を整数とする。
方針:1 は、方程式の解がそのまま合同式の解になることから出る。2 は、多項式が足し算と掛け算だけで作られていることと、合同式の計算規則から出る。
段 1(1 の証明)。$(a_1,\dots,a_k)$ を方程式の整数解とすると $f(a_1,\dots,a_k)=0$ である。$0$ は $n$ の倍数なので $f(a_1,\dots,a_k)\equiv0\pmod n$ であり、同じ組が合同式の解である。対偶は「合同式が解をもたない $\Rightarrow$ 方程式が整数解をもたない」である。
段 2(累乗)。$x\equiv x'\pmod n$ なら、掛け算の規則を $m-1$ 回使って $x^m\equiv x'^m\pmod n$ である。
段 3(項と和)。$f$ の各項は、整数の係数 $c$ と累乗の積 $c\,x_1^{m_1}\cdots x_k^{m_k}$ である。段 2 と掛け算の規則により、各項は $x_i$ を $x_i'$ に替えても法 $n$ で合同である。項どうしを足すときは足し算の規則を使えば、$f(x_1,\dots,x_k)\equiv f(x_1',\dots,x_k')$ である。
段 4(有限個で決まる)。どの整数 $x_i$ も、$n$ で割った余り $r_i\in\{0,1,\dots,n-1\}$ と法 $n$ で合同である。段 3 により $f(x_1,\dots,x_k)\equiv f(r_1,\dots,r_k)$ なので、合同式の解があれば余りの組の中にも解がある。余りの組は $n^k$ 通りである。$\square$
型 3 の使い方は、「うまい $n$ を選び、余りの組を全部調べて、どれも $f\equiv0$ にならないことを確かめる」である。調べる組の個数が有限なので、必ず終わる。ただし、結論が出るのは「解がない」ときだけである。どの $n$ でも解があっても、整数解があるとは限らない(ex-dio-counter-21)。
$2$ 乗や $3$ 乗を含む式では、累乗の余りの表をあらかじめ作っておくと、$n$ を選びやすい。
整数 $x$ について、次が成り立つ。
thm-dio-mod の 2 により、$x$ に $0,1,\dots,n-1$ を代入して調べればよい。法 $3$・法 $4$ では $2^2=4$、$3^2=9$ のように $x=0,\dots,n-1$ の平方を計算すればすぐ分かる(図 3 の表の法 $3$・法 $4$・法 $8$ の行)。
段 1(法 $3$)。$0^2=0$、$1^2=1$、$2^2=4\equiv1$。
段 2(法 $4$)。$0^2=0$、$1^2=1$、$2^2=4\equiv0$、$3^2=9\equiv1$。
段 3(法 $8$)。$x=0,1,\dots,7$ について $x^2=0,1,4,9,16,25,36,49$ で、$8$ で割った余りは $0,1,4,1,0,1,4,1$ である。
段 4(立方、法 $9$)。$x=0,1,\dots,8$ について $x^3=0,1,8,27,64,125,216,343,512$ で、$9$ で割った余りは $0,1,8,0,1,8,0,1,8$ である($64=63+1$、$125=117+8$、$343=342+1$、$512=504+8$)。$\square$
法 3 から法 10 までについて、余り 0,1,…,n−1 のうち平方数の余りとして現れるもの(赤)を並べた表。法 3・4 では 2 個、法 8 では 3 個しか現れない
図 3 のように、平方数の余りとして現れる数は、法によって多い少ないがあるが、全部の余りが現れることはない($x$ と $-x$ の平方は同じ余りになるので、法 $n\ge3$ では現れない余りが必ずある)。法 $6$ や法 $10$ のように半分を超える法もある。現れない余りが多い法ほど、型 3 で「解がない」と言える場面が多い。法 $4$ や法 $8$ がよく使われるのは、現れる余りが特に少ないからである。
(2) $x^2+y^2+z^2=8k+7$。$8$ で割った余りが $0,1,4$ の数を 3 つ足した余りは、$0,1,2,3,4,5,6$ のどれかで、$7$ にならない。よって $7,15,23,31,\dots$ は 3 つの平方数の和にならない。
(3) $x^2-y^2=2026$。$x^2-y^2$ を $4$ で割った余りは $0-0,\ 0-1,\ 1-0,\ 1-1$ から $0,3,1,0$ で、$2$ にならない。$2026=4\cdot506+2$ なので整数解はない。ex-dio-difference の偶奇の議論と同じことを、余りで一度に言っている。
(4) $x^3+y^3=2030$。lem-dio-squares の 2 により 2 つの立方数の和を $9$ で割った余りは $0+0,0+1,0+8,1+1,1+8,8+8$ から $0,1,8,2,0,7$ で、$\{0,1,2,7,8\}$ に限られる。$2030=9\cdot225+5$ なので、整数解はない。
$n$ の選び方の目安をまとめておく。係数に $3$ が付いた項($3y^2$ など)があれば法 $3$ でその項が消える。平方数の和・差には法 $4$ と法 $8$、立方数には法 $7$ か法 $9$ が効きやすい。定数項の余りが「現れない余り」になる法を探すのが基本である。
$x^2+y^2=3z^2$ には $(0,0,0)$ という解があるので、どの $n$ で調べても合同式には解がある。それでも、$0$ 以外の解がないことは余りと大小を組み合わせて示せる。
$x^2+y^2=3z^2$ をみたす整数の組は $(x,y,z)=(0,0,0)$ だけである。
方針:解があれば $x,y,z$ はすべて $3$ の倍数であることを示す。すると全部を $3$ で割っても解になり、$0$ でない解があれば、どこまでも小さくなる正の整数の列ができて矛盾する。
段 1($x,y$ は $3$ の倍数)。右辺は $3$ の倍数なので $x^2+y^2\equiv0\pmod3$ である。lem-dio-squares の 1 により $x^2,y^2$ の余りは $0$ か $1$ で、和の余りが $0$ になるのは 2 つとも $0$ のときだけである。$x^2\equiv0$ となるのは $x\equiv0$ のときだけなので($1^2\equiv2^2\equiv1$)、$x,y$ は $3$ の倍数である。
段 2($z$ も $3$ の倍数)。$x=3x_1$、$y=3y_1$ とおくと $9x_1^2+9y_1^2=3z^2$、つまり $z^2=3(x_1^2+y_1^2)$ である。$z^2$ が $3$ の倍数なので、段 1 と同じく $z$ は $3$ の倍数で、$z=3z_1$ と書ける。代入すると $9z_1^2=3(x_1^2+y_1^2)$、つまり $x_1^2+y_1^2=3z_1^2$ である。
段 3(降下)。$(0,0,0)$ でない解 $(x,y,z)$ があったとする。段 1・2 により $(x_1,y_1,z_1)=\left(\dfrac x3,\dfrac y3,\dfrac z3\right)$ も解で、$(0,0,0)$ でない。$\lvert x\rvert+\lvert y\rvert+\lvert z\rvert$ は正の整数で、$(x_1,y_1,z_1)$ に移ると $3$ 分の $1$ になる。これを繰り返すと、正の整数が $3$ 分の $1$ ずつ小さくなる列が限りなく続くが、正の整数はいくらでも小さくはなれない($1$ より小さい正の整数はない)ので矛盾である。$\square$
この論法を 無限降下法 という。「正の整数の集合には最小のものがある」(整列性)を使っていて、その根拠は 数学的帰納法と整列性 で扱う。同じ論法で $x^4+y^4=z^2$ に正の整数解がないことも示せる(ピタゴラス数と円の有理点)。prop-dio-descent は、円 $X^2+Y^2=3$ の上に有理数の座標の点が 1 つもないことと同じである($X=\dfrac xz$、$Y=\dfrac yz$)。
| 型 | いつ使うか | 例 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 1:積の形にする | $xy$ と 1 次の項だけ、平方の差、分母を払うとそうなる式 | ex-dio-start-product、ex-dio-sixth、ex-dio-difference | 右辺が $0$ になると無数の解(thm-dio-product の 2)。係数を掛けたら余りでふるう |
| 2:大小を仮定する | 対称な式、分数の和、積と和の比較、平方数ではさめる式 | prop-dio-egyptian、ex-dio-egyptian-two、ex-dio-squeeze | 対称でない式では仮定できない。最後に並べかえを戻す |
| 3:余りで調べる | 解がないことを示したいとき。平方・立方を含む式 | ex-dio-start-mod、ex-dio-mod-use | 解があることは示せない。$(0,0,0)$ のような解があると無限降下法が要る |
実際の問題では型を組み合わせる。ex-dio-coefficient の (1) は型 1 のあと型 3 でふるい、ex-dio-sixth は型 1 のあと型 2 で負の約数を除き、prop-dio-descent は型 3 と大小(型 2 の考え方)を組み合わせている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 式が未知数の入れかえで変わらない | $\dfrac2x+\dfrac1y=1$ で $x\le y$ と仮定する(ex-dio-counter-symmetric) | 大小を仮定しても解を落とさない |
| 最後に並べかえを戻す | $\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z=1$ の答を 3 組とする(ex-dio-counter-symmetric) | 解の全体を答える |
| 負の約数も数える | $(x-3)(y-2)=6$ で正の約数だけを使う(ex-dio-counter-negative) | 解の個数 $2\,d(\lvert N\rvert)$ |
| $N\ne0$ | $xy-2x-3y=-6$(ex-dio-product-use の (2)) | 解が有限個 |
| 「法 $n$ で解なし」の向き | $x^2+y^2=21$ は法 $3$・法 $4$ で解がある(ex-dio-counter-21) | 法 $n$ で解がある $\Rightarrow$ 整数解がある(これは一般には成り立たない) |
(2) prop-dio-egyptian で $x\le y\le z$ の 3 組 $(3,3,3),(2,4,4),(2,3,6)$ だけを答えると、たとえば $(4,2,4)$ や $(6,3,2)$ を落とす。求められているのが順序を区別した解なら、prf-dio-egyptian の段 5 のように並べかえを戻して $10$ 組と答える。
$(x-3)(y-2)=6$ で $x-3$ を正の約数 $1,2,3,6$ だけに限ると、$(x,y)=(4,8),(5,5),(6,4),(9,3)$ の $4$ 組しか出ない。$x-3=-3$ とすると $y-2=-2$ で $(x,y)=(0,0)$ が解になるように($0-0-0=0$)、負の約数からも解が出る。lem-dio-pairs で、正の約数 $e$ ごとに $u=\pm e$ の 2 つを数えたのはこのためである。正の約数だけでよいのは、ex-dio-sixth のように大小の評価で負の場合を除けたときに限る。
$x^2+y^2=21$ を考える。$\lvert x\rvert\le4$ なので $x^2=0,1,4,9,16$ を試すと、$y^2=21,20,17,12,5$ で、どれも平方数ではない。よって整数解はない。
ところが法 $4$ では $21\equiv1$ で、$x^2+y^2\equiv0+1$ と表せるので合同式は解をもつ($x=0$、$y=1$)。法 $3$ でも $21\equiv0$ で、$x\equiv y\equiv0$ が合同式の解である。この 2 つの法を調べただけでは「解がない」と言えない。$21$ は、4 で割った余りでは除けないのに 2 つの平方数の和にならない数の例として Cri24 Fact 13.1.2 に挙がっている。
法 $9$ では言える。平方数を $9$ で割った余りは $0,1,4,7$($x=0,\dots,8$ で $0,1,4,0,7,7,0,4,1$)で、2 つの和の余りは $0,1,2,4,5,7,8$ のどれかであり、$21\equiv3$ にならない。このように、解がないときでも、効く法を見つけるまで試す必要がある。
さらに、どの法でも合同式が解をもつのに整数解がない方程式もある(rem-dio-hasse)。thm-dio-mod の 1 の逆は成り立たない。
thm-dio-mod は、方程式を整数の世界 $\mathbb{Z}$ から有限の世界 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$($n$ で割った余りの世界。剰余環)へ移して調べる方法である。$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ で解がないことを、大学では 局所的な障害 と呼ぶ。整数解(大域的な解)があれば、どの $n$ でも合同式の解(局所的な解)と実数の解がある。
逆向きが成り立つかどうかが、大学の整数論の大きな問題の 1 つである。
$2$ 次形式(各項の次数がちょうど $2$ の整数係数の多項式、たとえば $x^2+y^2-3z^2$)については、逆が成り立つ。$2$ 次形式 $q$ について、$q=0$ が $(0,\dots,0)$ 以外の整数解をもつことは、実数の範囲で $(0,\dots,0)$ 以外の解をもち、かつすべての素数 $p$ とすべての正の整数 $k$ について、$p^k$ を法とする合同式 $q\equiv0$ が「成分のどれかが $p$ の倍数でない」解をもつことと同値である。これを Hasse–Minkowski の定理 といい、このように局所的な解から大域的な解が出ることを Hasse の原理 という(Cla25 Theorem 18.7。同書は「すべての正の整数 $n$ を法として自明でない解をもつ」と述べている。ここでは「自明でない」の意味をはっきりさせるため、素数の累乗を法とし、成分のどれかが $p$ の倍数でない解の形で述べた。本記事では証明しない)。prop-dio-descent の段 1・段 2 は、$x^2+y^2-3z^2\equiv0\pmod 9$ に「$x,y,z$ のどれかが $3$ の倍数でない」解がないことを示しており、これが整数解がない理由になっている。
$3$ 次以上では Hasse の原理は一般に成り立たない。Selmer の例 $3x^3+4y^3+5z^3=0$ は、$(0,0,0)$ 以外の実数の解をもち、上と同じ意味の合同式の解もすべての $p^k$ でもつが、$(0,0,0)$ 以外の整数解をもたない(Cla25 Theorem 18.9。証明しない)。
1 変数でも逆は成り立たない。$f(x)=(x^2-2)(x^2-17)(x^2-34)$ とすると、$f(x)=0$ の実数解は $\pm\sqrt2,\pm\sqrt{17},\pm\sqrt{34}$ で、どれも整数ではない。一方、どの $n\ge2$ でも $f(x)\equiv0\pmod n$ は解をもつことが知られている(素数の累乗 $p^k$ ごとに、$2$ か $17$ か $34$ のどれかが法 $p^k$ で平方数になることを確かめ、中国剰余定理(高校数学) で貼り合わせる。$p=2$ では $17\equiv1\pmod8$ から $17$ がどの $2^k$ を法としても平方数になる。$p=17$ では $2\equiv6^2$ を使う。ほかの素数 $p$ では、$2$ と $17$ がどちらも法 $p$ で平方数でなければ $34$ が平方数になることを使い、法 $p$ の解を法 $p^k$ の解へ持ち上げる。本記事では証明しない)。$2\le n\le3000$ のすべての $n$ で解があることは、計算機で確かめた。
3 つの型は、どれも「解が有限個」か「解がない」ときに効く。$x^2-2y^2=1$ のように解が無数にある 2 次の方程式は、別の道具で解く。$(3+2\sqrt2)^k=x_k+y_k\sqrt2$ と展開した係数 $(x_k,y_k)$ がすべての正の整数解を与え、$k=1,2,3$ で $(3,2),(17,12),(99,70)$ となる(Pell方程式。本記事では証明しない)。
たとえば $17^2-2\cdot12^2=289-288=1$ である。$x^2-3y^2=2$ に解がない(ex-dio-start-mod)のに、$x^2-3y^2=1$ には $(2,1),(7,4),\dots$ と無数に解がある。右辺の数が変わるだけで、答えの様子がまったく変わる。
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