Wuの公式(Stiefel–Whitney類)

同義語:Wu formula for Stiefel–Whitney classes

概要

Wuの公式(Stiefel–Whitney類)(Wu formula for Stiefel–Whitney classes)とは、パラコンパクト Hausdorff 空間上の実ベクトル束 $E$ について、Stiefel–Whitney 類の Steenrod 平方が $Sq^kw_m=\sum_{j=0}^{k}\binom{k-m}{j}w_{k-j}w_{m+j}$ と Stiefel–Whitney 類の多項式になるという公式である。二項係数は上の添字が負でも整数として定めて $2$ を法として還元し、分裂原理で直線束の直和に帰着させ、基本対称多項式の上で証明できる。系として、$w(E)\ne1$ なら $0$ でない正の次数の Stiefel–Whitney 類の最小の次数は $2$ の冪であり、閉多様体の Wu 類による表示 $w=Sq(v)$ とは別の主張である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Stiefel–Whitney類, Steenrod平方, 分裂原理, 二項係数

実ベクトル束 $E$ の Stiefel–Whitney類 $w_m(E)$ は $\mathbb Z/2$ 係数のコホモロジー類なので、Steenrod平方 $Sq^k$ を施すことができる。Wu の公式(Wu formula)は、その結果がふたたび Stiefel–Whitney 類の多項式
$$ Sq^k\,w_m=\sum_{j=0}^{k}\binom{k-m}{j}\,w_{k-j}\,w_{m+j} $$
になることを述べる公式で、Wu Wen-Tsün(呉文俊)による。右辺の二項係数は上の添字 $k-m$ が負になりうるので、整数として計算してから $2$ を法として還元する。Cartan の公式と合わせると、Stiefel–Whitney 類が生成する部分環は平方の作用で閉じており、その作用は普遍的な二項係数で決まる。
この記事では、二項係数の約束を定めたうえで、分裂原理 により直線束の直和に帰着し、基本対称多項式の上での計算として公式を完全に証明する。系として、$w(E)\ne1$ なら、$0$ でない正の次数の Stiefel–Whitney 類のうち次数が最小のものの次数は $2$ の冪であることを示す。閉多様体の接束を Wu 類 $v$ で $w=Sq(v)$ と表す定理(Wu の定理)も Wu の公式とよばれることがあるが、これはこの記事の公式とは別の主張である(rem-wu-class)。

設定と二項係数の約束

底空間はパラコンパクト Hausdorff 空間(パラコンパクト空間)とし、ベクトル束の階数は一定とする。コホモロジーの係数はすべて $\mathbb Z/2$ とし、$H^i(B)=H^i(B;\mathbb Z/2)$ と書く。Stiefel–Whitney 類は Stiefel–Whitney類 の定義「Stiefel–Whitney 類の公理」のもので、$i< 0$ では $w_i(E):=0$ とおく。$Sq^i$ は Steenrod平方 の定義「Steenrod 平方」をみたす族(同記事の定理「Steenrod 平方の存在」)である。
$\alpha\in H^d(B)$ について $i>d$ なら $Sq^i\alpha=0$ なので、全平方 $Sq(\alpha):=\sum_{i\ge0}Sq^i\alpha$ は有限和であり、斉次でない類にも加法的に延ばす。Cartan の公式(Steenrod平方 の命題「Cartan の公式」)により $Sq(\alpha\smile\beta)=Sq(\alpha)\smile Sq(\beta)$ であり、$Sq$ は環準同型 $H^*(B)\to\prod_iH^i(B)$ である。$x\in H^1(B)$ なら、平方の公理 5・6 により
$$ Sq(x)=x+x^2 $$
である(Steenrod平方 の命題「1 次と 2 次の類の冪」の証明と同じ)。

整数を上の添字にもつ二項係数

整数 $x$ と整数 $j$ について
$$ \binom{x}{j}:=\frac{x(x-1)\cdots(x-j+1)}{j!}\quad(j\ge0),\qquad\binom{x}{j}:=0\quad(j< 0) $$
とおく($j=0$ では空の積で $1$)。$\mathbb Z/2$ の元としての $\binom{x}{j}$ は、この整数を $2$ を法として還元したものとする。

$x\ge0$ ならこれは通常の二項係数で(二項係数)、$0\le x< j$ なら分子に $0$ が現れて $0$ になる。$x=-a$($a\ge1$)なら、分子の各因子の符号を外して
$$ \binom{-a}{j}=(-1)^j\,\frac{a(a+1)\cdots(a+j-1)}{j!}=(-1)^j\binom{a+j-1}{j} $$
であり、いずれの場合も整数である。たとえば $\binom{-1}{j}=(-1)^j$ で、すべての $j\ge0$ について奇数である。Steenrod平方 の定理「Steenrod 平方の Adem 関係式」などでは上の添字が負の二項係数を $0$ とする別の約束を使うが、この記事ではその約束をとらない(節「反例と注意」の 1 行目)。
すべての整数 $x$、$j$ について、Pascal の関係式
$$ \binom{x+1}{j}=\binom{x}{j}+\binom{x}{j-1} $$
が成り立つ。$j\le0$ なら両辺は $j=0$ で $1$、$j< 0$ で $0$ である。$j\ge1$ なら、右辺は
$$ \frac{x(x-1)\cdots(x-j+2)}{j!}\bigl((x-j+1)+j\bigr)=\frac{(x+1)x\cdots(x-j+2)}{j!}=\binom{x+1}{j} $$
である。

二項係数の偶奇
  1. $d\ge1$ なら $\binom{2d}{d}$ は偶数である。
  2. $s\ge0$、$0\le d< 2^s$ なら $\binom{d-2^s}{d}$ は奇数である。

1:Pascal の関係式と対称性 $\binom{2d-1}{d-1}=\binom{2d-1}{d}$ により $\binom{2d}{d}=\binom{2d-1}{d-1}+\binom{2d-1}{d}=2\binom{2d-1}{d}$ である。
2:$a:=2^s-d\ge1$ とおくと、上の負の添字の式により $\binom{d-2^s}{d}=\binom{-a}{d}=(-1)^d\binom{a+d-1}{d}=(-1)^d\binom{2^s-1}{d}$ である。Steenrod平方 の補題「2 の冪の二項係数」により、$0\le d\le2^s-1$ について $\binom{2^s-1}{d}$ は奇数である。$\square$

主定理

可換な $\mathbb Z/2$ 代数の元の列 $u=(u_0,u_1,u_2,\dots)$ で $u_0=1$ のものについて、$i< 0$ では $u_i:=0$ とし、整数 $k,m\ge0$ について
$$ P_{k,m}(u):=\sum_{j\in\mathbb Z}\binom{k-m}{j}u_{k-j}\,u_{m+j} $$
とおく。$j< 0$ の項は二項係数が、$j>k$ の項は $u_{k-j}$ が $0$ なので、和は $0\le j\le k$ の有限和である。$k< 0$ では $P_{k,m}(u):=0$ とする。
まず、$m=0$ の場合はどの列でも同じ値になる。

$m=0$ の場合

$u_0=1$ をみたす列 $u$ について、$P_{0,0}(u)=1$ であり、$k\ge1$ なら $P_{k,0}(u)=0$ である。

$P_{k,0}(u)=\sum_{j=0}^{k}\binom{k}{j}u_{k-j}u_j$ である。$k=0$ なら $1$ である。$k\ge1$ とすると、$j$ の項と $k-j$ の項は、二項係数の対称性と可換性により等しいので、$j\ne k-j$ の項は 2 つずつ組になって $\mathbb Z/2$ で消える。$k=2d$ が偶数なら $j=d$ の項 $\binom{2d}{d}u_d^2$ が残るが、lem-wu-parity の 1 によりこれも $0$ である。$\square$

次の補題が公式の代数的な中身である。$\mathbb Z/2[T_1,\dots,T_N]$($N\ge0$)の環の自己準同型 $S$ を $S(T_i):=T_i+T_i^2$ で定め、$d$ 次斉次の多項式 $f$ について $S(f)$ の $d+k$ 次の成分を $S^k(f)$ と書く($k< 0$ では $S^k:=0$)。$e_i=e_i(T_1,\dots,T_N)$ を基本対称多項式とし(対称多項式 の定義「基本対称多項式・完全対称多項式・冪和」。$e_0=1$、$i< 0$ または $i>N$ で $e_i=0$)、$e=(e_0,e_1,\dots)$ と書く。

基本対称多項式への作用

すべての $N\ge0$ と $k,m\ge0$ について、$\mathbb Z/2[T_1,\dots,T_N]$ において
$$ S^k(e_m)=P_{k,m}(e) $$
が成り立つ。

変数を 1 つずつ増やす帰納法

$m=0$ なら $e_0=1$、$S(1)=1$ なので左辺は $k=0$ で $1$、$k\ge1$ で $0$ であり、lem-wu-m-zero と一致する。以下 $m\ge1$ とし、$N$ についての帰納法で示す。
$N=0$ なら $e_m=0$ なので左辺は $0$ である。右辺の項 $\binom{k-m}{j}e_{k-j}e_{m+j}$ は、$e_{m+j}\ne0$ となるのが $m+j=0$ のときだけで、$m\ge1$、$j\ge0$ ではそうならないので $0$ である。
$N$ で成り立つとして、変数 $T:=T_{N+1}$ を加える。$N+1$ 変数の基本対称多項式を $e'_i$ と書くと、$i\in\mathbb Z$ について $e'_i=e_i+T\,e_{i-1}$ である($T$ を含まない項と含む項に分ける)。
左辺. $S$ は環準同型で $S(T)=T+T^2$ なので $S(e'_m)=S(e_m)+(T+T^2)\,S(e_{m-1})$ である。$e_m$ は $m$ 次、$e_{m-1}$ は $m-1$ 次なので、$m+k$ 次の成分を比べて
$$ S^k(e'_m)=S^k(e_m)+T\,S^k(e_{m-1})+T^2\,S^{k-1}(e_{m-1}) $$
である。$m\ge1$ なので $m-1\ge0$ であり、$N$ 変数での帰納法の仮定($m-1=0$ なら最初に示した $m=0$ の場合、$k-1< 0$ の項は $0$)を当てると、右辺は $P_{k,m}(e)+T\,P_{k,m-1}(e)+T^2\,P_{k-1,m-1}(e)$ になる。
右辺. $P_{k,m}(e')=\sum_j\binom{k-m}{j}(e_{k-j}+Te_{k-j-1})(e_{m+j}+Te_{m+j-1})$ を $T$ の次数で分ける。

  • $T$ を含まない部分は $P_{k,m}(e)$ である。
  • $T^2$ の係数は $\sum_j\binom{k-m}{j}e_{(k-1)-j}\,e_{(m-1)+j}$ である。$(k-1)-(m-1)=k-m$ なので、これは $P_{k-1,m-1}(e)$ である($k=0$ なら $e_{-1-j}=0$ で $0$)。
  • $T$ の係数は $\sum_j\binom{k-m}{j}e_{k-j-1}e_{m+j}+\sum_j\binom{k-m}{j}e_{k-j}e_{m+j-1}$ である。第 1 の和で $j$ を $j-1$ に置き換えると $\sum_j\binom{k-m}{j-1}e_{k-j}e_{m+j-1}$ となり、Pascal の関係式により 2 つの和の合計は
    $$ \sum_j\binom{k-m+1}{j}e_{k-j}\,e_{(m-1)+j}=P_{k,m-1}(e) $$
    である($k-(m-1)=k-m+1$)。
    よって $P_{k,m}(e')=P_{k,m}(e)+T\,P_{k,m-1}(e)+T^2\,P_{k-1,m-1}(e)$ であり、左辺の式と一致する。$\square$
Wu の公式

パラコンパクト Hausdorff 空間 $B$ 上の実ベクトル束 $E$ と整数 $k,m\ge0$ について、$H^{m+k}(B;\mathbb Z/2)$ において
$$ Sq^k\,w_m(E)=\sum_{j=0}^{k}\binom{k-m}{j}\,w_{k-j}(E)\,w_{m+j}(E) $$
が成り立つ。ここで二項係数は def-wu-binomial の整数を $2$ を法として還元したものである。

直線束の直和への帰着

右辺は $P_{k,m}(w(E))$、$w(E):=(w_0(E),w_1(E),\dots)$ である。$E$ の階数を $n$ とする。
$n=0$ なら $w(E)=(1,0,0,\dots)$ である。$m=0$ なら左辺は $Sq^k1$ で、$k=0$ で $1$、$k\ge1$ で $0$ であり、lem-wu-m-zero と一致する。$m\ge1$ なら左辺は $0$ で、右辺の各項は $w_{m+j}(E)=0$ を含むので $0$ である。
$n\ge1$ とする。分裂原理 の定理「分裂原理」により、連続写像 $p\colon Y\to B$ で、$p^*E\cong L_1\oplus\cdots\oplus L_n$($L_i$ は直線束)となり、$p^*\colon H^*(B)\to H^*(Y)$ が単射であるものがある。$t_i:=w_1(L_i)\in H^1(Y)$ とおく。直線束では $w(L_i)=1+t_i$ なので、Whitney の和公式と自然性により
$$ p^*w(E)=w(p^*E)=\prod_{i=1}^n(1+t_i),\qquad p^*w_m(E)=e_m(t_1,\dots,t_n) $$
である。$\varphi\colon\mathbb Z/2[T_1,\dots,T_n]\to H^*(Y)$ を $T_i\mapsto t_i$ で定まる環準同型とすると、$p^*w_m(E)=\varphi(e_m)$ である。
$Sq\circ\varphi$ と $\varphi\circ S$ はどちらも $\mathbb Z/2[T_1,\dots,T_n]$ から $\prod_iH^i(Y)$ への環準同型で、$T_i$ をともに $t_i+t_i^2$ に写す($Sq(t_i)=t_i+t_i^2$)。よって両者は一致する。$\varphi$ は $d$ 次斉次の多項式を $H^d(Y)$ に写すので、$d+k$ 次の成分を比べると $Sq^k\varphi(f)=\varphi(S^kf)$ である。平方は引き戻しと可換なので、lem-wu-polynomial により
$$ p^*Sq^kw_m(E)=Sq^k\varphi(e_m)=\varphi\bigl(S^k(e_m)\bigr)=\varphi\bigl(P_{k,m}(e)\bigr)=P_{k,m}\bigl(p^*w(E)\bigr)=p^*P_{k,m}\bigl(w(E)\bigr) $$
である。$p^*$ は単射なので $Sq^kw_m(E)=P_{k,m}(w(E))$ である。$\square$

これは MS74 Problem 8-A(p. 94)の公式である。同書は、直線束の外積 $\xi\times\gamma^1$ へ公式を受け継がせる帰納法を指示している。lem-wu-polynomial の帰納法は、その計算を多項式環の中で行ったものにあたる。

低い次数の平方

$m\ge1$ とする。

  1. $k=m$ なら $\binom{0}{j}=0$($j\ge1$)なので $Sq^mw_m=w_m^2$ で、平方の公理 5 と一致する。
  2. $k=1$ なら $\binom{1-m}{1}=1-m\equiv m+1$ なので $Sq^1w_m=w_1w_m+(m+1)\,w_{m+1}$ である。
  3. $k=2$ なら $\binom{2-m}{1}\equiv m$、$\binom{2-m}{2}=\frac{(m-1)(m-2)}{2}=\binom{m-1}{2}$ なので $Sq^2w_m=w_2w_m+m\,w_1w_{m+1}+\binom{m-1}{2}w_{m+2}$ である。
  4. $k>m$ なら左辺は $0$ なので、右辺の多項式 $P_{k,m}(w(E))$ もすべての実ベクトル束で $0$ になる。

最初の 0 でない Stiefel–Whitney 類

Wu の公式の右辺には、低い次数の類 $w_{k-j}$ と高い次数の類 $w_{m+j}$ の積が並ぶ。低い次数の類がほとんど消えている束では、右辺は最後の項 $\binom{k-m}{k}w_{m+k}$ だけになり、次数の制限が出てくる。

0 でない類の最小の次数

パラコンパクト Hausdorff 空間 $B$ 上の実ベクトル束 $E$ が $w(E)\ne1$ をみたすとし、$w_\ell(E)\ne0$ となる最小の正の整数を $\ell$ とする。このとき $\ell$ は $2$ の冪である。

$E$ の階数は有限なので $w(E)$ は有限和であり、$w(E)\ne1$ から $\ell$ が存在する。$\ell$ が $2$ の冪でないとすると、$2^s< \ell< 2^{s+1}$ となる $s\ge0$ があり、$d:=\ell-2^s$ は $0< d< 2^s$ をみたす。thm-wu-main を $m:=2^s$、$k:=d$ に当てる。$0< 2^s< \ell$ なので $w_{2^s}(E)=0$ であり、左辺は $Sq^d0=0$ である。右辺の $0\le j< d$ の項は $0< d-j\le d< \ell$ をみたす $w_{d-j}(E)=0$ を含むので $0$ である。残る $j=d$ の項は $\binom{d-2^s}{d}w_0(E)\,w_{\ell}(E)$ であり、lem-wu-parity の 2 により係数は奇数である。よって $0=w_\ell(E)$ となり、$\ell$ のとり方に反する。$\square$

これは MS74 Problem 8-B(p. 94)である。$\ell=1=2^0$ も許される。系は最小の次数だけについての主張で、それより高い次数の $0$ でない類の次数が $2$ の冪とは限らない(節「反例と注意」の 2 行目)。

実射影空間の接束での値

$n\ge1$ とし、$n+1=2^rq$($q$ は奇数)と書く。$H^*(\mathbb{RP}^n)=\mathbb Z/2[a]/(a^{n+1})$ で、$w(T\mathbb{RP}^n)=(1+a)^{n+1}$ である(Stiefel–Whitney類 の定理「実射影空間の Stiefel–Whitney 類」)。Steenrod平方 の補題「2 の冪の二項係数」により $(1+a)^{2^r}=1+a^{2^r}$ なので
$$ w(T\mathbb{RP}^n)=(1+a^{2^r})^q=1+q\,a^{2^r}+\cdots $$
であり、$0< i< 2^r$ で $w_i=0$、$w_{2^r}=a^{2^r}$ である($q$ は奇数)。$2^r\le n$、すなわち $n+1$ が $2$ の冪でないなら、最初の $0$ でない類は $w_{2^r}$ で、その次数は $2$ の冪である。$n+1$ が $2$ の冪なら $w(T\mathbb{RP}^n)=1$ である。たとえば $\mathbb{RP}^5$ では $w=(1+a^2)^3=1+a^2+a^4$ で、最初の $0$ でない類は $w_2$ である。

Wu 類による表示との違い

$M$ を $n$ 次元の閉多様体(コンパクトで境界のない滑らかな多様体)とすると、各 $k$ について $\langle v_k\smile x,[M]\rangle=\langle Sq^kx,[M]\rangle$ がすべての $x\in H^{n-k}(M)$ で成り立つ類 $v_k\in H^k(M)$ がただ 1 つあり、$v:=1+v_1+v_2+\cdots$ を Wu 類という。このとき接束について $w(TM)=Sq(v)$ が成り立つ(Wu の定理。MS74 Theorem 11.14、p. 132。この記事では証明しない)。これも Wu の公式とよばれることがあるが、閉多様体の接束についての主張で、Wu 類は $\mathbb Z/2$ コホモロジー環と平方の作用だけで決まる。したがって接束の Stiefel–Whitney 類はホモトピー型の不変量である(Stiefel–Whitney類 の節「Thom の公式」の末尾)。一方 thm-wu-main は任意の実ベクトル束について、すでに与えられた $w_m$ に平方を施した結果を述べる。2 つの公式は互いに独立した主張である。

反例と注意

外す条件反例成り立たなくなること
二項係数を def-wu-binomial の整数で計算する(上の添字が負なら $0$、とはしない)$k=1$、$m=3$、$E=T\mathbb{RP}^6$thm-wu-main:上の添字が負の二項係数をすべて $0$ とすると右辺は $0$ になるが、左辺 $Sq^1w_3$ は $0$ でない
cor-wu-power-of-two の「最小の」次数$E=T\mathbb{RP}^6$ の $w_3$$0$ でない Stiefel–Whitney 類の次数がすべて $2$ の冪であること
反例の確かめ

$\mathbb{RP}^6$ では $w(T\mathbb{RP}^6)=(1+a)^7$ で、$\binom{7}{i}$($0\le i\le6$)はすべて奇数なので $w_i=a^i$ である。
1 行目:Steenrod平方 の命題「1 次と 2 次の類の冪」の (1) により $Sq^1w_3=Sq^1(a^3)=\binom31a^4=a^4\ne0$ である。thm-wu-main の右辺は $\binom{-2}{0}w_1w_3+\binom{-2}{1}w_0w_4=a^4$($\binom{-2}{0}=1$、$\binom{-2}{1}=-2$ は偶数)で左辺と一致する。一方、上の添字が負の二項係数をすべて $0$ とすると $\binom{-2}{0}=\binom{-2}{1}=0$ なので右辺は $0$ になり、左辺と合わない。
2 行目:$w_3=a^3\ne0$ で、$3$ は $2$ の冪でない。最小の次数の類は $w_1=a$ で、次数 $1=2^0$ は cor-wu-power-of-two と合っている。

関連項目

参考文献

[1]
John W. Milnor, James D. Stasheff, Characteristic Classes, Annals of Mathematics Studies 76, Princeton University Press, 1974, Problem 8-A(Wu の公式、p. 94)、Problem 8-B(最初の 0 でない Stiefel–Whitney 類の次数、p. 94)、Theorem 11.14(Wu 類による表示、p. 132)

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