完全交叉

同義語:完全交差complete intersection

概要

完全交叉(complete intersection)とは、体 $k$ 上の射影空間 $\mathbb{P}^n$ の閉部分スキームで、正の次数の斉次多項式の正則列 $F_1,\dots,F_c$ によって $V_+(F_1,\dots,F_c)$ と切り出されるものをいう。斉次式が正則列をなすことはイデアルの高さが $c$ であることと同値で、このとき包含は余次元 $c$ の正則埋め込み、余法層は $\bigoplus_j\mathcal{O}(-d_j)$、各既約成分の次元は $n-c$ である。次元が $1$ 以上なら構造層のひねりの大域切断は斉次座標環で与えられ、中間のコホモロジーが消えて連結になり、算術種数も次数から計算できる。ねじれ 3 次曲線のように、局所的に完全交叉でも大域的にはそうでない曲線もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影空間, 斉次イデアル, 正則列, 正則埋め込み, 層コホモロジー

射影空間 $\mathbb{P}^n$ の中で、余次元 $c$ の部分スキームをちょうど $c$ 個の斉次式で切り出せるとき、それを完全交叉という。平面曲線、空間の 2 つの曲面の交わり、$\mathbb{P}^4$ の 5 次超曲面などがその例である。方程式の個数が余次元と一致するという条件は「方程式が正則列をなす」ことと同じであり、そこから構造層のコホモロジー、算術種数、余法層が方程式の次数だけで計算でき、次元が $1$ 以上なら連結であることも分かる。一方で、局所的には方程式で切り出せても、大域的には余次元個の方程式では切り出せない曲線がある(ねじれ 3 次曲線)。
この記事では、斉次式の正則列による定義を与え、正則列であることがイデアルの高さで判定できることを証明する。次に、完全交叉が余次元 $c$ の正則埋め込みで各成分の次元が $n-c$ であること、構造層のひねりの大域切断が斉次座標環で与えられ中間のコホモロジーが消えること、したがって正の次元の完全交叉は連結であることを証明し、算術種数を計算する。

定義

$k$ を体、$S=k[x_0,\dots,x_n]$、$\mathbb{P}^n=\mathbb{P}^n_k=\operatorname{Proj}S$、$\mathfrak m:=S_+=(x_0,\dots,x_n)$ とする。斉次イデアル $J\subset S$ に対し $V_+(J):=\operatorname{Proj}S/J$ を $\mathbb{P}^n$ の閉部分スキームとみる。

完全交叉

$\mathbb{P}^n$ の閉部分スキーム $Y$ が完全交叉(complete intersection)であるとは、正の次数 $d_1,\dots,d_c$ の斉次多項式 $F_1,\dots,F_c\in S$ で、$S$ の正則列をなし、
$$ Y=V_+(F_1,\dots,F_c) $$
(スキームとしての等号)となるものが存在することをいう。このとき $Y$ を余次元 $c$、次数 $(d_1,\dots,d_c)$ の完全交叉という。

$c=1$ のときは超曲面 $V_+(F)$($F\ne0$)であり、超曲面 はすべて完全交叉である。$c=n+1$ なら $Y$ は空である(thm-ci-height の後の注意)。アフィン空間 $\mathbb{A}^n_k$ の閉部分スキームについても、$k[x_1,\dots,x_n]$ の正則列で定義されるものを(アフィンの)完全交叉という。
関連する二つの言葉を区別する。$k$ 上局所有限型のスキーム $Y$ が局所完全交叉であるとは、すべての点の局所環 $\mathcal{O}_{Y,y}$ が完全交叉局所環であることをいい、これは $Y\to\operatorname{Spec}k$ が局所完全交叉射であることと同値である(局所完全交叉射 の系「体上の判定」)。$\mathbb{P}^n$ の閉集合が集合論的完全交叉であるとは、その台が余次元と同じ個数の超曲面の共通部分の台に等しいことをいう。完全交叉は局所完全交叉であり(thm-ci-regular-immersion)、その台は集合論的完全交叉である。

正則列と高さ

斉次な正則列と局所化

$F_1,\dots,F_c\in S$ を正の次数の斉次元とし、$R:=S_{\mathfrak m}$ とする。$F_1,\dots,F_c$ が $S$ の正則列であることと、その像が $R$ の正則列であることは同値である。

斉次な元に消される元

$M:=S/(F_1,\dots,F_{j-1})$ は次数付き $S$ 加群で、$M_{\mathfrak m}=R/(F_1,\dots,F_{j-1})R$ である。$F_j$ が $M$ の零因子なら、$F_ju=0$、$u\ne0$ となる $u\in M$ がある。$u$ の斉次成分 $u_e$ について $F_ju_e$ は $F_ju$ の斉次成分なので $0$ であり、$u_e\ne0$ となる $e$ をとれば $F_j$ は斉次元 $u_e\ne0$ を消す。$u_e$ の零化イデアルは斉次イデアル($au_e=0$ なら $a$ の各斉次成分も $u_e$ を消す)で $1$ を含まないから、次数 $0$ の成分 $S_0=k$ を含まず $\mathfrak m$ に含まれる。よって $M_{\mathfrak m}$ の中で $u_e/1\ne0$、$F_j(u_e/1)=0$ となり、$F_j$ は $M_{\mathfrak m}$ の零因子である。逆に $M$ 上の単射 $F_j\cdot$ は局所化しても単射である。最後の商 $S/(F)$ と $R/(F)R$ は、$(F)\subset\mathfrak m$ なのでどちらも零でない。$\square$

正則列と高さ

$F_1,\dots,F_c\in S$ を正の次数の斉次元、$J:=(F_1,\dots,F_c)$ とする。次は同値である。

  1. $F_1,\dots,F_c$ は $S$ の正則列である。
  2. $J$ のイデアルの高さは $c$ である。
    このとき $J$ の極小素イデアルはすべて斉次で高さがちょうど $c$ である。
Cohen–Macaulay 局所環への帰着

$J$ の極小素イデアル $P$ は斉次である。実際、$P$ に含まれる斉次元が生成するイデアルを $P^*$ とすると、斉次元 $a,b$ で $ab\in P^*$ なら $a\in P$ または $b\in P$、すなわち $a\in P^*$ または $b\in P^*$ なので、斉次イデアル の定理「斉次元だけによる素性判定」により $P^*$ は素イデアルであり、$J\subset P^*\subset P$ と極小性から $P=P^*$ である。斉次な真のイデアルは $\mathfrak m$ に含まれるので、$J$ の極小素イデアルは $R=S_{\mathfrak m}$ の $JR$ の極小素イデアルと 1 対 1 に対応し、高さも等しい。よって $\operatorname{ht}J=\operatorname{ht}JR$ である。
$R$ は $n+1$ 次元の正則局所環であり(Cohen–Macaulay環 の補題「体上の多項式環の素局所環」)、Cohen–Macaulay である。完全交叉局所環 の定理「CM局所環での高さと指定された列」により、$F$ の像が $R$ の正則列であることと $\operatorname{ht}JR=c$ は同値である。lem-ci-graded-local と合わせて 1 と 2 は同値である。
1 が成り立つとき、$R/JR$ は Cohen–Macaulay 局所環の正則列による商なので Cohen–Macaulay であり(Cohen–Macaulay環 の補題「正則元による深さ降下と CM 商」)、次元は $n+1-c$ である(完全交叉局所環 の系「有限正則列による次元低下」)。Cohen–Macaulay環 の定理「埋込素がなく、局所的に等次元」により、$JR$ の極小素イデアル $\mathfrak P$ はすべて $\dim R/\mathfrak P=n+1-c$、$\operatorname{ht}\mathfrak P=(n+1)-(n+1-c)=c$ をみたす。$\square$

$c\le n$ なら、正則列による $Y=V_+(J)$ は空でない。実際、$J$ の極小素イデアル $P$ は斉次で高さ $c< n+1=\operatorname{ht}\mathfrak m$ なので $P\ne\mathfrak m$、よって $P\not\supset S_+$ であり、$P$ は $V_+(J)$ の点である。$c=n+1$ なら $J$ の極小素イデアルは $\mathfrak m$ だけで、$V_+(J)$ は空である。
Har77 演習 I.2.17・II.8.4 では、$\mathbb{P}^n$ の閉部分スキーム $Y$ の斉次イデアルが $\operatorname{codim}(Y,\mathbb{P}^n)$ 個の元で生成されるとき完全交叉と呼ぶ。下の thm-ci-regular-immersion と thm-ci-cohomology により、この記事の意味の完全交叉で次元が $1$ 以上のものは、斉次イデアルが余次元と同じ個数の斉次式で生成されるという性質をもつ。

正則埋め込みとしての完全交叉

完全交叉は正則埋め込み

$Y=V_+(F_1,\dots,F_c)\subset\mathbb{P}^n$ を余次元 $c\le n$、次数 $(d_1,\dots,d_c)$ の完全交叉とする。

  1. 包含 $Y\to\mathbb{P}^n$ は余次元 $c$ の正則閉埋め込みであり、$\mathcal{C}_{Y/\mathbb{P}^n}\cong\bigoplus_{j=1}^c\mathcal{O}_Y(-d_j)$、$\mathcal{N}_{Y/\mathbb{P}^n}\cong\bigoplus_{j=1}^c\mathcal{O}_Y(d_j)$ である。
  2. $Y$ の既約成分の次元はすべて $n-c$ である。
  3. $Y$ の局所環はすべて完全交叉局所環であり、$Y$ は局所完全交叉である。
斉次化を外す
  1. $U_0=D_+(x_0)=\operatorname{Spec}A$、$A=S_{(x_0)}=k[x_1/x_0,\dots,x_n/x_0]$ とし、$f_j:=F_j/x_0^{d_j}\in A$ とおく。$Y\cap U_0$ のイデアルは $(f_1,\dots,f_c)$ である。$S_{x_0}=A[x_0,x_0^{-1}]$ であり、$F_j=x_0^{d_j}f_j$ で $x_0$ は可逆である。$S\to S_{x_0}$ は平坦なので、$F_j$ 倍は $S_{x_0}/(F_1,\dots,F_{j-1})=(A/(f_1,\dots,f_{j-1}))[x_0,x_0^{-1}]$ の上で単射であり、この環は $x_0^e$($e\in\mathbb{Z}$)を基底とする自由 $A/(f_1,\dots,f_{j-1})$ 加群で $f_j$ は係数ごとに作用するから、$f_j$ 倍は $A/(f_1,\dots,f_{j-1})$ の上で単射である。$Y\cap U_0$ の点 $y$ では最後の商 $\mathcal{O}_{Y,y}$ が零でないので、正則列 の命題「正則列の局所化」により $f_1,\dots,f_c$ は $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^n,y}$ の正則列である。$D_+(x_i)$ についても同じで、これらは $\mathbb{P}^n$ を覆う。
    余法層については、$Y$ のイデアル層は次数付き加群 $J=(F_1,\dots,F_c)$ に付随する層 $\widetilde J$ であり、$\mathcal{J}/\mathcal{J}^2=(J/J^2)^\sim$ である。正則埋め込み の補題「正則列の余法加群」により $J/J^2$ は $F_1,\dots,F_c$ の像を基底とする自由 $S/J$ 加群で、基底が斉次なので次数付き加群として $J/J^2\cong\bigoplus_j(S/J)(-d_j)$ である。$\sim$ をとれば $\mathcal{C}_{Y/\mathbb{P}^n}\cong\bigoplus_j\mathcal{O}_Y(-d_j)$ で、双対をとると $\mathcal{N}$ の式を得る。
  2. 既約成分 $Z$ の生成点 $\eta$ では $\dim\mathcal{O}_{Y,\eta}=0$ なので、正則埋め込み の命題「局所環の次元」により $\dim\mathcal{O}_{\mathbb{P}^n,\eta}=c$ である。$\eta\in D_+(x_i)\cong\mathbb{A}^n_k$ として、$\eta$ に対応する $k[x_1,\dots,x_n]$ の素イデアル $\mathfrak q$ は高さ $c$ で、$\dim Z=\dim k[x_1,\dots,x_n]/\mathfrak q=n-c$ である(Har77 定理 I.1.8A)。
  3. 1 の局所表示 $Y\cap D_+(x_i)\to\mathbb{A}^n_k$ が正則なので、局所完全交叉射 の系「体上の判定」による。$\square$

コホモロジーと連結性

$Y_j:=V_+(F_1,\dots,F_j)$($0\le j\le c$、$Y_0=\mathbb{P}^n$)とおく。正則列の初期部分も正則列なので、各 $Y_j$ は完全交叉である。prf-ci-regular-immersion の 1 と同じ計算で、$\mathcal{O}_{Y_{j-1}}$ 上の $F_j$ 倍は各アフィン開集合 $D_+(x_i)$ で単射なので、すべての $m\in\mathbb{Z}$ について層の完全列
$$ 0\to\mathcal{O}_{Y_{j-1}}(m-d_j)\xrightarrow{\ \cdot F_j\ }\mathcal{O}_{Y_{j-1}}(m)\to\mathcal{O}_{Y_j}(m)\to0 $$
がある。とくに $Y$ は Calabi–Yau多様体 の定義「完全交叉」の意味でも完全交叉であり、$c< n$ なら同じ記事の補題「完全交叉の構造層のコホモロジー」により、すべての $m$ と $0< i< n-j$ について $H^i(Y_j,\mathcal{O}_{Y_j}(m))=0$ である。

構造層のひねりのコホモロジー

$Y=V_+(F_1,\dots,F_c)\subset\mathbb{P}^n$ を完全交叉、$J=(F_1,\dots,F_c)$ とし、$r:=n-c\ge1$ とする。

  1. すべての $m\in\mathbb{Z}$ について、制限写像 $S_m\to H^0(Y,\mathcal{O}_Y(m))$ は全射で、核は $J_m$ である。すなわち $(S/J)_m\cong H^0(Y,\mathcal{O}_Y(m))$ であり、$Y$ の斉次イデアル $I(Y):=\ker\bigl(S\to\bigoplus_mH^0(Y,\mathcal{O}_Y(m))\bigr)$ は $J$ に等しい。
  2. すべての $m\in\mathbb{Z}$ と $0< i< r$ について $H^i(Y,\mathcal{O}_Y(m))=0$ である。
  3. $H^0(Y,\mathcal{O}_Y)=k$ であり、$Y$ は連結である。
超曲面で一つずつ切る

2 は上の段落の $j=c$ の場合である。1 を $j$ についての帰納法で $Y_j$($0\le j\le c$)に対して示す。$j=0$ は 層コホモロジー の定理「射影空間のコホモロジー」の 1 である。$1\le j\le c$ とし、$d=d_j$ とおく。上の完全列のコホモロジー長完全列の初めの部分
$$ 0\to H^0(Y_{j-1},\mathcal{O}(m-d))\xrightarrow{\cdot F_j}H^0(Y_{j-1},\mathcal{O}(m))\to H^0(Y_j,\mathcal{O}(m))\to H^1(Y_{j-1},\mathcal{O}(m-d)) $$
で、$j\le c=n-r\le n-1$ より $1< n-(j-1)$ なので右端は $0$ である($j=1$ では射影空間の事実、$j\ge2$ では上の段落)。帰納法の仮定により左の 2 項は $(S/J_{j-1})_{m-d}$ と $(S/J_{j-1})_m$($J_{j-1}:=(F_1,\dots,F_{j-1})$)で、間の写像は $F_j$ 倍である。よって $H^0(Y_j,\mathcal{O}(m))\cong(S/J_{j-1})_m/F_j(S/J_{j-1})_{m-d}=(S/J_j)_m$ であり、この同型は $S_m$ からの制限写像と両立する。
3:1 を $m=0$ で使うと、$J\subset S_+$ より $J_0=0$ なので $H^0(Y,\mathcal{O}_Y)=S_0=k$ である。$Y$ が空でない開かつ閉な 2 つの部分に分かれれば $H^0(Y,\mathcal{O}_Y)\supset k\times k$ となるので、$Y$ は連結である。$\square$

この定理は Har77 演習 III.5.5 の内容にあたる。3 の議論は代数閉包 $\bar k$ へ係数を広げても同じなので、正の次元の完全交叉は幾何学的にも連結である。次元 $0$ では連結とは限らない(下の反例の表の 2 行目)。

算術種数

thm-ci-cohomology の状況で、$Y$ の Hilbert 多項式 $P_Y$($S/I(Y)$ の Hilbert多項式)は
$$ P_Y(m)=\sum_{T\subset\{1,\dots,c\}}(-1)^{|T|}\binom{m-d_T+n}{n},\qquad d_T:=\sum_{j\in T}d_j $$
である(右辺の $\binom{x+n}{n}=(x+n)(x+n-1)\cdots(x+1)/n!$ は $x$ の多項式とみる)。とくに算術種数 $p_a(Y):=(-1)^r(P_Y(0)-1)$ は次のようになる。

  1. 次数 $d$ の平面曲線($n=2$、$c=1$):$p_a=\dfrac{(d-1)(d-2)}{2}$。
  2. $\mathbb{P}^3$ の次数 $d,e$ の 2 曲面の完全交叉曲線:$p_a=\dfrac{de(d+e-4)}{2}+1$。
Koszul 分解と次元の交代和

thm-ci-cohomology の 1 により $I(Y)=J$ である。$F_1,\dots,F_c$ は正則列なので、Koszul複体 の定理「正則列のKoszulホモロジー」により、次数をずらした Koszul 複体
$$ 0\to S(-d_{\{1,\dots,c\}})\to\cdots\to\bigoplus_{|T|=1}S(-d_T)\to S\to S/J\to0 $$
は完全である。各項の次数 $m$ の部分の次元をとって交代和をとると、$m\ge d_{\{1,\dots,c\}}$ では $\dim_k(S/J)_m$ が右辺の多項式に等しい($\dim_kS_m=\binom{m+n}{n}$)。1 は $\binom{m+2}{2}-\binom{m-d+2}{2}$ に $m=0$ を代入して $P_Y(0)=1-\frac{(d-1)(d-2)}{2}$、2 は $P_Y(0)=1-\binom{3-d}{3}-\binom{3-e}{3}+\binom{3-d-e}{3}$ を展開して得られる。$\square$

$c=1$ なら $p_a$ は $\mathbb{P}^n$ の次数 $d$ の超曲面について $\binom{d-1}{n}$ になる。これらの式は Har77 演習 I.7.2 の (b)–(d) と一致する。2 の式によれば、$\mathbb{P}^3$ の 2 つの 2 次曲面の完全交叉は種数 $1$ の曲線、2 次曲面と 3 次曲面の完全交叉は種数 $4$ の曲線である。

例

ねじれ 3 次曲線は完全交叉でない

$\varphi\colon S=k[x_0,x_1,x_2,x_3]\to k[s,t]$ を $x_i\mapsto s^{3-i}t^i$ とし、$I:=\ker\varphi$、$C:=V_+(I)\subset\mathbb{P}^3$ をねじれ 3 次曲線とする。射影多様体 の定理「ねじれ 3 次曲線の定義イデアル」により $I=(q_0,q_1,q_2)$($q_0=x_0x_2-x_1^2$、$q_1=x_0x_3-x_1x_2$、$q_2=x_1x_3-x_2^2$)は斉次素イデアルで、$C$ は $\mathbb{P}^1$ と同型な曲線である。$C$ は滑らかなので局所完全交叉だが、完全交叉ではない。
実際、$C=V_+(F,G)$ となる正則列 $F,G$ があったとする(余次元 $2$)。$F\in S_m$ が $H^0(C,\mathcal{O}_C(m))$ で $0$ になるなら、$D_+(x_0)$ 上で $(S/I)_{(x_0)}$ の中で $F/x_0^m=0$、すなわちある $N$ で $x_0^NF\in I$ であり、$x_0\notin I$ と $I$ が素であることから $F\in I$ である。よって $S\to\bigoplus_mH^0(C,\mathcal{O}_C(m))$ の核は $I$ であり、thm-ci-cohomology の 1 により $I=(F,G)$ となる。$\varphi$ は $S_1$ 上単射なので $I$ は次数 $1$ 以下の元を含まず、$F,G$ の次数は $2$ 以上で、$I_2$ は $F,G$ のうち次数 $2$ のものだけで張られ $\dim I_2\le2$ である。しかし $q_0,q_1,q_2$ は一次独立なので $\dim I_2=3$ であり、矛盾する。

$C$ は台としては 2 つの曲面の交わりとして書ける。実際、$G:=x_2^3-2x_1x_2x_3+x_0x_3^2$ とおくと、$G(s^3,s^2t,st^2,t^3)=s^3t^6-2s^3t^6+s^3t^6=0$ なので $G\in I$ であり、$V_+(q_0,G)$ の台は $C$ である。$D_+(x_0)$ の上では $q_0=0$ から $x_2=x_1^2$ で、このとき $G=(x_3-x_1^3)^2$ なので、$(q_0,G)$ の根基は $C\cap D_+(x_0)$ のイデアル $(x_2-x_1^2,\,x_3-x_1^3)$ に一致する。$x_0=0$ の上では $q_0$ から $x_1$、続いて $G$ から $x_2$ が根基に入り、点 $[0:0:0:1]\in C$ だけが残る(Har77 演習 I.2.17(c))。完全交叉であることは、局所的な条件ではなく、大域的に方程式の個数を数える条件である。

2 つの平面の和

$X=V(x,y)\cup V(z,w)\subset\mathbb{A}^4_k$ は原点だけで交わる 2 つの平面の和で、余次元 $2$ である。$X$ は 2 個の方程式では台としても切り出せない、すなわち集合論的完全交叉でない(Har77 演習 III.4.9。この記事では証明しない)。証明には、$\mathbb{A}^4$ から $X$ を除いた開集合の層コホモロジー $H^2$ が消えないことを Mayer–Vietoris 完全列で示し、2 個の方程式の場合には $D(f)\cup D(g)$ が 2 個のアフィン開集合で覆われて $H^2=0$ となることと比べる。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
斉次式が正則列であること$V_+(x_0x_2,\,x_1x_2)\subset\mathbb{P}^3$(平面 $x_2=0$ と直線 $x_0=x_1=0$ の和)既約成分の次元が $n-c=1$ にそろわず、正則埋め込みでない
次元 $r\ge1$(thm-ci-cohomology)$V_+(x_0x_1)\subset\mathbb{P}^1$(2 点)$H^0(Y,\mathcal{O}_Y)=k\times k\ne k=(S/J)_0$ で、$Y$ は連結でない
大域的に余次元個の方程式で切り出せること(局所完全交叉だけを仮定)ねじれ 3 次曲線 $C\subset\mathbb{P}^3$斉次イデアルが 2 元で生成されない

1 行目では $J=x_2(x_0,x_1)\subset(x_2)$ なので $\operatorname{ht}J=1\ne2$ であり、thm-ci-height により $x_0x_2,x_1x_2$ は正則列でない($x_1x_2$ は $S/(x_0x_2)$ で $x_0$ を消す零因子である)。平面の点では局所環の次元差が $1$ しかないので、正則埋め込み の命題「局所環の次元」により余次元 $2$ の正則埋め込みにはならない。2 行目では $x_0x_1$ は非零因子なので $Y$ は余次元 $1$ の完全交叉だが、$Y=\{[1:0]\}\sqcup\{[0:1]\}$ は 2 点からなる。

補足

標準層と添加公式

$k$ を代数閉体とし、$Y\subset\mathbb{P}^n$ を次数 $(d_1,\dots,d_c)$、$c< n$ の非特異な完全交叉とする。$Y$ は連結(thm-ci-cohomology)で局所環が整域なので既約であり、その標準層は
$$ \omega_Y\cong\mathcal{O}_Y\Bigl(\sum_jd_j-n-1\Bigr) $$
である。実際、非特異な部分多様体の添加公式 $\omega_Y\cong\omega_{\mathbb{P}^n}\otimes\wedge^c\mathcal{N}_{Y/\mathbb{P}^n}$(Har77 命題 II.8.20、p. 182)に、$\omega_{\mathbb{P}^n}\cong\mathcal{O}(-n-1)$(同 例 II.8.20.1)と thm-ci-regular-immersion の法層の式を入れればよい(この式は Har77 演習 II.8.4(e) でもある)。途中の $Y_j$ もすべて滑らかな場合の別の証明が Calabi–Yau多様体 の命題「完全交叉の標準層」にある。$\sum_jd_j=n+1$ のとき $\omega_Y\cong\mathcal{O}_Y$ となり、K3曲面や Calabi–Yau多様体 の基本的な例を与える。また完全交叉の局所環は完全交叉局所環なので Gorenstein かつ Cohen–Macaulay であり(完全交叉局所環 の定理「Gorenstein性とCohen–Macaulay性」)、次元 $1$ 以上の正規な完全交叉では斉次座標環 $S/J$ も正規になる(Har77 演習 II.8.4(b)。この記事では証明しない)。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, 定理 I.1.8A(p. 6)、演習 I.2.17(p. 14)、演習 I.7.2(p. 54)、命題 II.8.20・例 II.8.20.1(p. 182)、演習 II.8.4(p. 188)、演習 III.4.9(pp. 224–225)、演習 III.5.5(p. 231)

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