Brianchonの定理

同義語:ブリアンションの定理Brianchon's theorem

概要

Brianchonの定理(Brianchon's theorem)とは、円周上の相異なる 6 点 $T_1,\dots,T_6$ での接線を順に $t_1,\dots,t_6$ とし、となり合う接線の交点 $A=t_1\cap t_2$、…、$F=t_6\cap t_1$ で円に外接する六角形 $ABCDEF$ を作るとき、内接六角形 $T_1\cdots T_6$ の対辺が交わるならば、3 本の対角線 $AD$、$BE$、$CF$ は 1 点で交わるか 3 本とも平行であるという定理である(平行になるのは内接六角形の Pascal の直線が中心を通るとき)。円の極と極線を使うと、対角線は内接六角形の対辺の交点の極線になり、Pascal の定理から導かれる。交点は Pascal の直線の極である。楕円でも成り立つ。点と直線を入れかえる双対で、Pascal の定理と対になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 円の接線と極線, Pascalの定理, 円と直線の位置関係, 直線の方程式と点と直線の距離

高校での出発点:円に外接する六角形

円に 6 本の接線を引き、となり合う接線の交点を順に結ぶと、円に外接する六角形ができる。この六角形の向かい合う頂点を結ぶ 3 本の対角線を引くと、3 本は 1 点で交わる(3 本とも平行になる例外は ex-bri-parallel で見る)。これが Brianchonの定理 である。Charles-Julien Brianchon は École Polytechnique の学生のときの論文で、2 次曲線に接する 6 本の接線で作った六角形の 3 本の対角線が 1 点で交わることを示した(OR00)。まず座標で確かめる。

6 本の接線で作る六角形

円 $x^2+y^2=25$ の上に、$T_1=(5,0)$、$T_2=(4,3)$、$T_3=(3,4)$、$T_4=(0,5)$、$T_5=(-3,4)$、$T_6=(-3,-4)$ をとる。これは Pascalの定理 の記事の例「対称でない六角形」と同じ 6 点である。円の上の点 $(x_0,y_0)$ での接線は $x_0x+y_0y=25$ なので(円と直線の位置関係)、接線は
$$ t_1:x=5,\quad t_2:4x+3y=25,\quad t_3:3x+4y=25,\quad t_4:y=5,\quad t_5:-3x+4y=25,\quad t_6:-3x-4y=25 $$
である。
(1) となり合う接線の交点を求める。$t_1$ と $t_2$ は $x=5$ を代入して $y=\dfrac53$、$A=\left(5,\dfrac53\right)$。$t_2$ と $t_3$ は、引くと $x=y$ で $7x=25$、$B=\left(\dfrac{25}7,\dfrac{25}7\right)$。$t_3$ と $t_4$ は $y=5$ を代入して $x=\dfrac53$、$C=\left(\dfrac53,5\right)$。$t_4$ と $t_5$ は $x=-\dfrac53$、$D=\left(-\dfrac53,5\right)$。$t_5$ と $t_6$ は、足すと $-6x=50$ で $x=-\dfrac{25}3$、$y=0$、$E=\left(-\dfrac{25}3,0\right)$。$t_6$ と $t_1$ は $x=5$ を代入して $-15-4y=25$、$y=-10$、$F=(5,-10)$ である。
(2) 対角線を求める。直線 $AD$ は、$3\cdot5+6\cdot\dfrac53=25$、$3\cdot\left(-\dfrac53\right)+6\cdot5=25$ なので $3x+6y=25$ である。同じく、直線 $BE$ は $3x-10y=-25$($\dfrac{75}7-\dfrac{250}7=-25$、$-25-0=-25$)、直線 $CF$ は $9x+2y=25$($15+10=25$、$45-20=25$)である。
(3) 点 $K=\left(\dfrac{25}{12},\dfrac{25}8\right)$ を代入すると、$3x+6y=\dfrac{25}4+\dfrac{75}4=25$、$3x-10y=\dfrac{25}4-\dfrac{125}4=-25$、$9x+2y=\dfrac{75}4+\dfrac{25}4=25$ で、3 本の対角線はどれも $K$ を通る。
(4) (2) の 3 本の直線の式を、接線の公式 $x_0x+y_0y=25$ と比べる。$AD$ の $3x+6y=25$ は、公式に点 $(3,6)$ を入れたものである。$BE$ の $3x-10y=-25$ は、両辺に $-1$ を掛けると $-3x+10y=25$ で、点 $(-3,10)$ を入れたものである。$CF$ の $9x+2y=25$ は、点 $(9,2)$ を入れたものである。3 点はどれも直線 $2x+3y=24$ の上にある($6+18=24$、$-6+30=24$、$18+6=24$)。

円 x² + y² = 25 の 6 つの接点 T₁, …, T₆(青)での接線が作る六角形 ABCDEF(黒)。3 本の対角線 AD(赤)、BE(緑)、CF(紫)は 1 点 K(25/12, 25/8) を通る 円 x² + y² = 25 の 6 つの接点 T₁, …, T₆(青)での接線が作る六角形 ABCDEF(黒)。3 本の対角線 AD(赤)、BE(緑)、CF(紫)は 1 点 K(25/12, 25/8) を通る
ex-bri-start の (4) で、対角線の式は接線の公式に 3 つの点を入れた形をしていた。その 3 点 $(3,6)$、$(-3,10)$、$(9,2)$ は、Pascalの定理 の記事で同じ 6 点から求めた内接六角形 $T_1T_2\cdots T_6$ の対辺の交点 $P,Q,R$ そのもので、直線 $2x+3y=24$ はその記事の Pascal の直線である。この記事では、この一致が偶然でないことを示す。

  1. 3 本の対角線が 1 点で交わるのはなぜか。→ thm-bri-main、prf-bri-polar
  2. 対角線の式が、内接六角形の対辺の交点から作れるのはなぜか。→ lem-bri-vertex、lem-bri-diagonal
  3. 1 点で交わらない場合はあるか。→ ex-bri-parallel
  4. 楕円ではどうか。→ cor-bri-ellipse
    高校の計算・定理この記事の言葉大学の言葉
    接線の公式 $x_0x+y_0y=r^2$点の極線2 次形式の偏極
    2 本の接線の交点、接点を結ぶ直線外接六角形の頂点と、内接六角形の辺極と極線の対応
    3 点が一直線上(Pascal)3 本の直線が 1 点を通る(Brianchon)射影平面の双対
    2 直線の交点を連立方程式で求める対角線の交点 $K$ は Pascal の直線の極—

定理の主張

円に外接する六角形

円周上の相異なる 6 点 $T_1,\dots,T_6$ での接線を $t_1,\dots,t_6$ とする。となり合う接線 $t_1$ と $t_2$、$t_2$ と $t_3$、…、$t_6$ と $t_1$ がどれも交わるとき、その交点
$$ A=t_1\cap t_2,\quad B=t_2\cap t_3,\quad C=t_3\cap t_4,\quad D=t_4\cap t_5,\quad E=t_5\cap t_6,\quad F=t_6\cap t_1 $$
を順に結んだ図形を、円に外接する六角形 $ABCDEF$ という(接点が円周上をこの順に並ばなくてもよく、辺が交差してもよい)。向かい合う頂点を結ぶ 3 本の直線 $AD$、$BE$、$CF$ を 対角線 という。

$T_i$ での接線は $T_i$ でしか円と共有点をもたないので、接点が異なれば接線も異なる。$t_1$ と $t_2$ が交わるのは、$T_1$ と $T_2$ が直径の両端でないときである(直径の両端での接線は平行)。

Brianchon の定理(円)

円に外接する六角形 $ABCDEF$ で、内接六角形 $T_1T_2T_3T_4T_5T_6$ の 3 組の対辺の直線がそれぞれ交わるとする。このとき 3 本の対角線 $AD$、$BE$、$CF$ は 1 点で交わるか、または 3 本とも平行である。平行になるのは、内接六角形の Pascal の直線が円の中心を通るときである。

ex-bri-start の内接六角形は対辺が交わり、Pascal の直線 $2x+3y=24$ は原点を通らないので、対角線は 1 点 $K$ で交わった。凸な六角形が円に外接している図(接点が円周上を順に並ぶ場合)でも、辺が交差する六角形でも、定理は同じ形で成り立つ。

高校数学で解く:極線で Pascal の定理から導く

円を $x^2+y^2=r^2$(中心は原点 $O$)とする。点 $P=(x_0,y_0)\ne O$ の 極線 は直線 $x_0x+y_0y=r^2$ である。円の接線と極線 で示した次の 3 つの事実を使う。

  • 円の上の点の極線は、その点での接線である(定理「極線の位置」の 2)。
  • 極線は直線 $OP$ に垂直で、原点との距離は $\dfrac{r^2}{OP}$ である(定理「極線の位置」の 1)。特に、極線は原点を通らない。
  • 原点と異なる 2 点 $P,Q$ について、$Q$ が $P$ の極線の上にあることと、$P$ が $Q$ の極線の上にあることは同値である(La Hire の定理)。
    さらに、円の外の点から引ける接線はちょうど 2 本である(同じ記事の系「接点を結ぶ直線」)。
頂点の極線は接点を結ぶ直線

def-bri-hexagon の頂点 $A=t_1\cap t_2$ は原点と異なり、円の外にある。$A$ の極線は直線 $T_1T_2$ である。他の頂点も同じで、$B$ の極線は $T_2T_3$、…、$F$ の極線は $T_6T_1$ である。

La Hire の定理を 2 回使う

方針:$A$ が $T_1$ の極線(接線 $t_1$)の上にあることを、La Hire の定理で「$T_1$ が $A$ の極線の上にある」に読みかえる。
段 1($A$ の位置)。$A$ は接線 $t_1$ の上にあり、接線は原点を通らないので $A\ne O$ である。$A=T_1$ とすると、$T_1$ は円の上にあって接線 $t_2$ の上にもあるので、$t_2$ と円の共有点 $T_2$ に等しくなり、$T_1\ne T_2$ に反する。よって $A$ は接線 $t_1$ の上の接点以外の点で、円の外にある(接点から接線に沿って距離 $s\ne0$ だけ進んだ点の中心からの距離の 2 乗は、三平方の定理により $r^2+s^2>r^2$)。
段 2($T_1$ と $T_2$ は $A$ の極線の上)。$t_1$ は $T_1$ の極線なので、$A$ は $T_1$ の極線の上にある。La Hire の定理により、$T_1$ は $A$ の極線の上にある。同じく $T_2$ も $A$ の極線の上にある。
段 3(結論)。$A$ の極線は直線で、相異なる 2 点 $T_1,T_2$ を通るので、直線 $T_1T_2$ である。他の頂点も同じである。$\square$

頂点の極線を確かめる

ex-bri-start の $A=\left(5,\dfrac53\right)$ の極線は $5x+\dfrac53y=25$、つまり $3x+y=15$ である。$T_1=(5,0)$ で $15+0=15$、$T_2=(4,3)$ で $12+3=15$ となり、たしかに直線 $T_1T_2$ である。$E=\left(-\dfrac{25}3,0\right)$ の極線は $-\dfrac{25}3x=25$、つまり $x=-3$ で、$T_5=(-3,4)$ と $T_6=(-3,-4)$ を通る。

対角線は内接六角形の対辺の交点の極線

thm-bri-main の仮定のもとで、$P=T_1T_2\cap T_4T_5$、$Q=T_2T_3\cap T_5T_6$、$R=T_3T_4\cap T_6T_1$ とおく。$P,Q,R$ はどれも原点と異なり、対角線 $AD$ は $P$ の極線、$BE$ は $Q$ の極線、$CF$ は $R$ の極線である。また、3 本の対角線は相異なる。

両端の頂点が極線の上にあることを示す

方針:$P$ は $A$ の極線と $D$ の極線の交点である。La Hire の定理で、$A$ と $D$ が $P$ の極線の上にあることに読みかえる。
段 1($P\ne O$)。lem-bri-vertex により直線 $T_1T_2$ は $A$ の極線で、極線は原点を通らない。$P$ はこの直線の上にあるので $P\ne O$ である。
段 2($A$ と $D$ は $P$ の極線の上)。$P$ は $A$ の極線 $T_1T_2$ の上にあるので、La Hire の定理により $A$ は $P$ の極線の上にある。$P$ は $D$ の極線 $T_4T_5$ の上にもあるので、$D$ も $P$ の極線の上にある。
段 3($A\ne D$)。$A=D$ とすると、$A$ を 4 本の相異なる接線 $t_1,t_2,t_4,t_5$ が通る。しかし $A$ は円の外にあり(lem-bri-vertex)、円の外の点を通る接線はちょうど 2 本なので、矛盾する。よって $A\ne D$ で、$P$ の極線は直線 $AD$ である。$Q$、$R$ についても同じである。
段 4(相異なる)。$AD=BE$ とすると、$A,B,D$ が 1 本の直線の上にある。$A,B$ はどちらも接線 $t_2$ の上にあり、$A\ne B$($A=B$ なら $t_1,t_2,t_3$ の 3 本の接線が通る)なので、その直線は $t_2$ である。すると $D$ が $t_2,t_4,t_5$ の 3 本の接線の上にあり、段 3 と同じ理由で矛盾する。$AD=CF$、$BE=CF$ も同じである。$\square$

高校数学で解く:Pascal の直線の極

方針:lem-bri-diagonal により、3 本の対角線は $P,Q,R$ の極線である。$P,Q,R$ は Pascal の定理により 1 本の直線 $L$ の上にある。$L$ が原点を通らなければ $L$ の極 $K$ をとり、La Hire の定理で $K$ が 3 本の極線の上にあることを示す。
段 1(Pascal の直線)。$T_1,\dots,T_6$ は円周上の相異なる 6 点で、内接六角形 $T_1\cdots T_6$ の対辺は交わるので、Pascalの定理 により $P,Q,R$ は一直線上にある。$P,Q,R$ は相異なる(たとえば $P=Q$ なら、lem-bri-diagonal により $AD$ と $BE$ がどちらも $P$ の極線になり、対角線が相異なることに反する)ので、この直線 $L$ はただ 1 つに決まる。
段 2($L$ が原点を通らない場合)。$L$ を $\alpha x+\beta y=\gamma$ と書くと $\gamma\ne0$ である。$K:=\left(\dfrac{r^2\alpha}\gamma,\dfrac{r^2\beta}\gamma\right)$ とおくと、$K\ne O$ で、$K$ の極線は $\dfrac{r^2\alpha}\gamma x+\dfrac{r^2\beta}\gamma y=r^2$、つまり $\alpha x+\beta y=\gamma$ で、$L$ そのものである。$P$ は $L$、つまり $K$ の極線の上にあるので、La Hire の定理により $K$ は $P$ の極線 $AD$ の上にある。同じく $K$ は $BE$、$CF$ の上にある。3 本の対角線は $K$ で交わる。
段 3($L$ が原点を通る場合)。$P$ は原点と異なり $L$ の上にあるので、直線 $OP$ は $L$ である。$P$ の極線 $AD$ は $OP$、つまり $L$ に垂直である。同じく $BE$、$CF$ も $L$ に垂直である。相異なる 3 本の直線がどれも $L$ に垂直なので、3 本は平行である。$\square$

Pascal の直線の極を求める

ex-bri-start では、Pascal の直線 $L$ は $2x+3y=24$ で、$\alpha=2$、$\beta=3$、$\gamma=24$、$r^2=25$ である。prf-bri-polar の段 2 の $K$ は
$$ K=\left(\frac{25\cdot2}{24},\ \frac{25\cdot3}{24}\right)=\left(\frac{25}{12},\ \frac{25}8\right) $$
で、ex-bri-start の (3) で見た 3 本の対角線の交点に一致する。$K$ の極線は $\dfrac{25}{12}x+\dfrac{25}8y=25$ で、両辺に $\dfrac{24}{25}$ を掛けると $2x+3y=24$、つまり $L$ である。

最初の図に、内接六角形 T₁T₂…T₆(青)と、その対辺の交点 P(3, 6)、Q(−3, 10)、R(9, 2) を通る Pascal の直線 2x + 3y = 24(橙)を重ねた。対角線 AD、BE、CF はそれぞれ P、Q、R の極線で、交点 K は Pascal の直線の極であり、OK は Pascal の直線に垂直である 最初の図に、内接六角形 T₁T₂…T₆(青)と、その対辺の交点 P(3, 6)、Q(−3, 10)、R(9, 2) を通る Pascal の直線 2x + 3y = 24(橙)を重ねた。対角線 AD、BE、CF はそれぞれ P、Q、R の極線で、交点 K は Pascal の直線の極であり、OK は Pascal の直線に垂直である

対角線が平行になる六角形

円 $x^2+y^2=25$ の上に、$T_1=(5,0)$、$T_2=(4,3)$、$T_3=(3,4)$、$T_4=(-5,0)$、$T_5=(-4,3)$、$T_6=(-3,4)$ をとる($y$ 軸について対称で、辺が交差する六角形になる)。接線は $t_1:x=5$、$t_2:4x+3y=25$、$t_3:3x+4y=25$、$t_4:x=-5$、$t_5:-4x+3y=25$、$t_6:-3x+4y=25$ である。
(1) 頂点は $A=\left(5,\dfrac53\right)$、$B=\left(\dfrac{25}7,\dfrac{25}7\right)$、$C=(-5,10)$、$D=\left(-5,\dfrac53\right)$、$E=\left(-\dfrac{25}7,\dfrac{25}7\right)$、$F=(5,10)$ である(たとえば $C$ は $x=-5$ を $3x+4y=25$ に代入して $y=10$)。
(2) 対角線は $AD:y=\dfrac53$、$BE:y=\dfrac{25}7$、$CF:y=10$ で、3 本とも $x$ 軸に平行であり、1 点では交わらない。
(3) 内接六角形の対辺の交点は、直線 $T_1T_2$:$3x+y=15$ と $T_4T_5$:$-3x+y=15$ から $P=(0,15)$、同じく $Q=(0,7)$、$R=\left(0,\dfrac52\right)$ で、Pascal の直線は $y$ 軸 $x=0$、つまり原点を通る。prf-bri-polar の段 3 のとおり、対角線は Pascal の直線に垂直な 3 本の平行線になった。$P$ の極線は $15y=25$、つまり $y=\dfrac53$ で、たしかに $AD$ である。

平行な直線は無限遠点で交わると考えると、ex-bri-parallel も「3 本の対角線が 1 点(無限遠点)で交わる」場合になる(Desarguesの定理 の記事の射影平面の説明を参照)。

楕円でも成り立つ

楕円に外接する六角形

楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$($a,b>0$)に 6 本の接線を引いて def-bri-hexagon と同じように六角形 $ABCDEF$ を作る。接点を結ぶ内接六角形の 3 組の対辺の直線が交わるとき、対角線 $AD$、$BE$、$CF$ は 1 点で交わるか、または 3 本とも平行である。

縦方向に伸ばして円に戻す

方針:楕円を円に移す写像が、直線を直線に、接線を接線に移し、交わることと平行であることを保つことを使う。
段 1(写像)。$\varphi(x,y)=\left(x,\dfrac ab y\right)$ は、楕円を円 $X^2+Y^2=a^2$ に移す 1 対 1 の対応で、逆の対応は $(X,Y)\mapsto\left(X,\dfrac baY\right)$ である。直線 $ux+vy=w$ は直線 $uX+\dfrac bavY=w$ に移る(逆向きも同じ)。
段 2(接線は接線に)。直線と楕円がただ 1 点を共有することは、像の直線と円がただ 1 点を共有することと同じである($\varphi$ は 1 対 1 なので、共有点も 1 対 1 に対応する)。よって楕円の接線は円の接線に移り、接点は接点に移る。
段 3(交点と平行)。$\varphi$ は 2 直線の交点を像の 2 直線の交点に移し、交わらない(平行な)2 直線を交わらない 2 直線に移す。3 本の直線が 1 点を通ることも保たれる。
段 4(結論)。$\varphi$ で全体を移すと、円に外接する六角形と、対辺が交わる内接六角形が得られる。thm-bri-main により、像の 3 本の対角線は 1 点で交わるか 3 本とも平行であり、段 3 により元の対角線も同じである。$\square$

楕円で確かめる

ex-bri-start の図全体の $y$ 座標を $\dfrac35$ 倍すると、楕円 $\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}9=1$ に外接する六角形になる。頂点は $A=(5,1)$、$B=\left(\dfrac{25}7,\dfrac{15}7\right)$、$C=\left(\dfrac53,3\right)$、$D=\left(-\dfrac53,3\right)$、$E=\left(-\dfrac{25}3,0\right)$、$F=(5,-6)$ で、たとえば $A$ を通る接線 $t_2$ の像は、$T_2=(4,3)$ の像 $\left(4,\dfrac95\right)$ での楕円の接線 $\dfrac{4x}{25}+\dfrac{9/5\cdot y}9=1$、つまり $4x+5y=25$ である($A$ で $20+5=25$)。対角線は $AD:3x+10y=25$、$BE:3x-\dfrac{50}3y=-25$、$CF:9x+\dfrac{10}3y=25$ で、どれも $K'=\left(\dfrac{25}{12},\dfrac{15}8\right)$ を通る($\dfrac{25}4+\dfrac{75}4=25$、$\dfrac{25}4-\dfrac{125}4=-25$、$\dfrac{75}4+\dfrac{25}4=25$)。$K'$ は $K$ の $y$ 座標を $\dfrac35$ 倍した点である。

大学数学で見る:点と直線の双対

双対として見る Brianchon の定理

ここから先は大学で学ぶ内容の紹介である。

  • 円の接線と極線 の記事の注意「3 つの座標で見る極と極線」のように、点 $(x,y)$ を 3 つの数の組 $(x,y,1)$ で表し、比が等しい組を同じとみると、円 $x^2+y^2=r^2$ は 2 次形式 $q(x,y,z)=x^2+y^2-r^2z^2$ の零点になる。点 $\boldsymbol p$ に極線 $\beta(\boldsymbol p,\boldsymbol x)=0$ を対応させる対応($\beta$ は $q$ から作る対称な双線形形式)は、無限遠点も含めた射影平面の点と直線の間の 1 対 1 の対応になる。
  • この対応で、「点」と「直線」、「3 点が 1 直線上にある」と「3 直線が 1 点を通る」、「円の上の点」と「円の接線」が入れかわる(lem-bri-vertex は「2 点を結ぶ直線」と「2 直線の交点」の入れかえである)。Pascalの定理 をこの対応で移したものが Brianchon の定理で、prf-bri-polar はその具体的な計算である。Brianchon の定理が Pascal の定理の双対であることは、OR00 でも述べられている。
  • 射影平面では平行線も無限遠点で交わるので、thm-bri-main の「1 点で交わるか、3 本とも平行」は「1 点で交わる」にまとまり、内接六角形の対辺が平行な場合の仮定も要らなくなる。2 次曲線(楕円・放物線・双曲線)はどれも 2 次形式の零点として同じように扱え、どの 2 次曲線に外接する六角形でも定理が成り立つ(放物線・双曲線の場合は、ここでは証明しない)。

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
6 本の直線がどれも同じ円に接する3 本の対角線が 1 点で交わるex-bri-off
対角線は向かい合う頂点を結ぶ3 本の直線が 1 点で交わるex-bri-pairing
Pascal の直線が円の中心を通らない3 本の対角線が 1 点で交わる(平行にならない)ex-bri-parallel
反例:1 本の直線が円に接しない

ex-bri-start の接線 $t_6:-3x-4y=25$ を、円に接しない直線 $t_6':-3x-4y=30$ に替える(原点との距離は $\dfrac{30}5=6>5$)。頂点 $E$、$F$ は、$t_5$ との交点 $E'=\left(-\dfrac{55}6,-\dfrac58\right)$(足して $-6x=55$)と、$t_1$ との交点 $F'=\left(5,-\dfrac{45}4\right)$($-15-4y=30$)に替わる。対角線 $AD:3x+6y=25$ は変わらない。$AD$ と $CF'$ の交点は $\left(\dfrac{43}{21},\dfrac{22}7\right)$ である($AD$ で $\dfrac{43}7+\dfrac{132}7=25$。$CF'$ の傾きは $\dfrac{-45/4-5}{5-5/3}=-\dfrac{39}8$ で、$C=\left(\dfrac53,5\right)$ から $x$ が $\dfrac8{21}$ 増えると $y$ は $\dfrac{39}8\cdot\dfrac8{21}=\dfrac{13}7$ 減り、$5-\dfrac{13}7=\dfrac{22}7$)。この点を $G$ とすると、$\overrightarrow{BG}=\left(-\dfrac{32}{21},-\dfrac37\right)$、$\overrightarrow{BE'}=\left(-\dfrac{535}{42},-\dfrac{235}{56}\right)$ の符号付き面積は $\left(-\dfrac{32}{21}\right)\left(-\dfrac{235}{56}\right)-\left(-\dfrac37\right)\left(-\dfrac{535}{42}\right)=\dfrac{940}{147}-\dfrac{535}{98}=\dfrac{275}{294}\ne0$ で、$G$ は直線 $BE'$ の上にない。3 本の対角線は 1 点で交わらない。

反例:向かい合わない頂点を結ぶ

ex-bri-start で、対角線 $AD$、$BE$ の交点は $K=\left(\dfrac{25}{12},\dfrac{25}8\right)$ であった。向かい合わない頂点 $A=\left(5,\dfrac53\right)$ と $C=\left(\dfrac53,5\right)$ を結ぶ直線は $x+y=\dfrac{20}3$ で、$K$ では $\dfrac{25}{12}+\dfrac{25}8=\dfrac{125}{24}\ne\dfrac{160}{24}$ なので、$K$ を通らない。$AD$、$BE$、$AC$ は 1 点で交わらない。

さらに先へ

  • 円に内接する六角形の対辺の交点が一直線上に並ぶ Pascalの定理 と、この記事の定理は、点と直線を入れかえた対の定理である。2 本の直線の上に 3 点ずつとる Pappusの六角形定理 は Pascal の定理で円を 2 本の直線に替えたものである。
  • 極と極線は、楕円・放物線・双曲線を含む 2 次曲線一般について大学で扱う。2 次曲線を 2 次形式で表す見方は 2次曲線と2次形式 で扱う。この記事では円の場合の 円の接線と極線 の結果だけを使った。射影平面の点と直線の双対は 射影平面、射影空間 で扱われる。
  • 直線上の点の並びを射影変換で変わらない量で測る方法は 射影変換と複比 で扱う。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する