公理的集合論(axiomatic set theory)とは、どの集合の存在を認めるかを一階述語論理の公理として書き下し、ZFC などの集合論の理論について、何が証明できるか、どの公理を加えても矛盾しないか、どの文が独立かを研究する数学の分野である。素朴な内包は Russell の逆理で矛盾するため、公理は集合の作り方を制限する。理論 $T$ の中で、空でないことが $T$ で証明できる論理式のクラスについて、別の理論 $S$ の各公理の相対化が $T$ で証明できれば $S$ は $T$ に対して相対的に無矛盾であり、内部モデル $L$ による選択公理・一般連続体仮説の無矛盾性の証明はこの形をとる。それらの否定の無矛盾性には強制法が使われる。
集合は数学のほとんどすべての対象の材料になるが、「条件を満たすもの全体は集合である」と素朴に認めると矛盾が生じる。そこで、どの集合の存在を認めるかを一階述語論理の公理として書き下し、その公理系を数学的な対象として調べる分野が生まれた。これが 公理的集合論 である。公理的集合論が問うのは、個々の集合の性質だけでなく、「この公理系からこの文が証明できるか」「この公理を加えても矛盾しないか」という、公理系そのものについての問いである。
この記事では、分野の基本的な概念(無矛盾性・独立性・相対的無矛盾性)を定め、素朴な内包が矛盾することを示したあと、独立性の証明の土台となる 相対化 の方法を証明する。その応用として、「到達不能基数は存在しない」を ZFC に加えても矛盾しないことを示し、主な公理と命題の独立性を一覧にする。標準的な公理系そのもの(公理の一覧と互いの関係)はZFC公理系の記事が扱う。
以下、集合論の言語 は等号と二項関係記号 $\in$ だけをもつ一階の言語とし、この言語の文の集合を 理論 と呼ぶ。理論 $T$ から文 $\sigma$ が証明できること(一階述語論理の証明体系)を $T\vdash\sigma$ と書く。
$S,T$ を集合論の言語の理論、$\sigma$ を文とする。
公理的集合論(axiomatic set theory)とは、ZFC をはじめとする集合論の言語の理論について、その定理・モデル・無矛盾性・独立性と、公理を加えたときの強さの比較を研究する数学の分野である。
$T$ が無矛盾なら、$T+\sigma$ が無矛盾であることは $T\nvdash\lnot\sigma$ と同値である($T+\sigma$ から矛盾が出れば $T\vdash\lnot\sigma$、逆も成り立つ)。したがって「$\sigma$ が $T$ から独立」は「$T+\sigma$ と $T+\lnot\sigma$ がともに無矛盾」と言い換えられる。
Gödelの不完全性定理により、ZFC が無矛盾なら ZFC は自分の無矛盾性を証明しない(同記事の注意「証明したことと、この記事では証明しないこと」、Kun80 Ch. I, Theorem 14.3, p. 41)。そのため公理的集合論の結果の多くは「$\mathrm{Con}(\mathsf{ZF})$ ならば $\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC}+\mathsf{GCH})$」のような相対的な形をとる。
この記事では、理論についての議論を ZFC の中で行い、Gödelの完全性定理(無矛盾な理論はモデルをもち、モデルをもつ理論は無矛盾である)を使う。同じ結論は、証明の書き換えだけによる有限的な議論でも得られる(Kun80 Ch. IV, §8, Lemma 8.1–8.2, pp. 141–142)。
論理式 $\varphi(x)$ ごとに「$\varphi$ を満たす $x$ の全体は集合である」と主張する文
$$
\exists y\,\forall x\,\bigl(x\in y\leftrightarrow\varphi(x)\bigr)
$$
の全体を 素朴な内包の図式 という。
文 $\exists y\,\forall x\,(x\in y\leftrightarrow\lnot\,x\in x)$ は、どの構造でも偽である。したがって、その否定は公理を使わずに証明でき、素朴な内包の図式は矛盾する。
構造 $(A,E)$ と $b\in A$ が、すべての $a\in A$ について「$a\mathrel{E}b\iff a\mathrel{E}a$ でない」を満たすとする。$a=b$ とおくと「$b\mathrel{E}b\iff b\mathrel{E}b$ でない」となり、これは成り立ちえない。よってそのような $b$ はなく、文はどの構造でも偽である。その否定はすべての構造で真なので、Gödelの完全性定理により公理なしに証明できる。素朴な内包の図式は $\varphi(x):=\lnot\,x\in x$ の場合としてこの文を含むので矛盾する。$\square$
Zermelo の分出公理は、内包を「すでにある集合 $a$ の部分集合 $\{x\in a\mid\varphi(x)\}$ を作ること」に制限してこの矛盾を避ける。そのとき同じ議論は「$\{x\in a\mid x\notin x\}$ は $a$ に属さない」という定理に変わり、すべての集合からなる集合はないことが従う(ZFC公理系の定理「すべての集合からなる集合はない」)。順序数全体についても、同じ形の逆理が「順序数全体は集合でない」という定理になる(順序数の命題「Burali-Forti の逆理」)。公理的集合論の公理系は、矛盾を生む大きすぎる集まりを集合と認めずに、通常の数学に必要な構成を認めるように選ばれている。
| 体系 | 公理(ZFC公理系の一覧) | 加わる構成の例 |
|---|---|---|
| Z | 外延・基礎・分出・対・合併・冪集合・無限 | 自然数・実数・関数空間 |
| ZF | Z に置換を加える | 累積階層 $V_\alpha$、順序数 $\omega+\omega$、超限再帰 |
| ZFC | ZF に選択を加える | 整列可能定理、Zorn の補題 |
| ZFC+到達不能基数 | ZFC に「到達不能基数が存在する」を加える | ZFC の集合モデル $V_\kappa$、Grothendieck 宇宙 |
公理を加えても矛盾しないことを示す基本の方法は、もとの理論の中に、加えた公理も満たす「部分の世界」を論理式で切り出すことである。
$\mu(x)$ を、自由変数が $x$ だけの論理式とする。論理式 $\varphi$ の量化を $\forall x\,\psi\leadsto\forall x\,(\mu(x)\to\psi)$、$\exists x\,\psi\leadsto\exists x\,(\mu(x)\land\psi)$ と置き換えて得る論理式を $\varphi^\mu$ と書き、$\varphi$ の $\mu$ への 相対化 という($\varphi$ の束縛変数は、置き換えで衝突しないように付け替えておく)。原子論理式は変えず、結合子はそのまま保つ。
$\mu$ が定めるクラスを $M$ と書いて $\varphi^M$ とも書く(ZFC公理系の定義「相対化と公理の充足」)。構造 $\mathfrak{A}=(A,E)$($E$ が $\in$ の解釈)について、$M^{\mathfrak{A}}:=\{a\in A\mid\mathfrak{A}\models\mu[a]\}$ とおき、これが空でないとき、$E$ を $M^{\mathfrak{A}}$ に制限した構造を $\mathfrak{M}:=(M^{\mathfrak{A}},E\cap(M^{\mathfrak{A}}\times M^{\mathfrak{A}}))$ と書く。
$M^{\mathfrak{A}}\neq\emptyset$ とする。任意の論理式 $\varphi(x_1,\dots,x_n)$ と $a_1,\dots,a_n\in M^{\mathfrak{A}}$ について
$$
\mathfrak{A}\models\varphi^\mu[a_1,\dots,a_n]\iff\mathfrak{M}\models\varphi[a_1,\dots,a_n].
$$
結合子を $\lnot,\land$、量化を $\exists$ とし、ほかはこれらの略記とみる($\forall x\,\psi$ の相対化 $\forall x\,(\mu\to\psi^\mu)$ は $\lnot\exists x\,(\mu\land\lnot\psi^\mu)$ と論理的に同値である)。主張「すべての $a_1,\dots,a_n\in M^{\mathfrak{A}}$ について同値が成り立つ」を、論理式の組み立てについての構造的帰納法で示す。
$\varphi$ が $x_i\in x_j$ または $x_i=x_j$ のとき、$\varphi^\mu=\varphi$ であり、$a_i,a_j\in M^{\mathfrak{A}}$ について $a_i\mathrel{E}a_j$ の成否は $\mathfrak{A}$ と $\mathfrak{M}$ で同じである。$\lnot\psi$、$\psi\land\chi$ の場合は、成分についての同値からすぐ従う。
$\varphi=\exists y\,\psi$ のとき、$\varphi^\mu=\exists y\,(\mu(y)\land\psi^\mu)$ なので
$$
\mathfrak{A}\models\varphi^\mu[\vec a]\iff\text{ある }b\in A\text{ について }\mathfrak{A}\models\mu[b]\text{ かつ }\mathfrak{A}\models\psi^\mu[b,\vec a]\iff\text{ある }b\in M^{\mathfrak{A}}\text{ について }\mathfrak{M}\models\psi[b,\vec a]
$$
である。最後の同値には、$b,\vec a$ がすべて $M^{\mathfrak{A}}$ に入るので帰納法の仮定が使えることを用いた。右端は $\mathfrak{M}\models\exists y\,\psi[\vec a]$ にほかならない。$\square$
$S,T$ を集合論の言語の理論、$\mu(x)$ を自由変数が $x$ だけの論理式とし、
(i) $T\vdash\exists x\,\mu(x)$、
(ii) $S$ のすべての文 $\sigma$ について $T\vdash\sigma^\mu$
が成り立つとする。このとき $T$ の任意のモデル $\mathfrak{A}$ について $\mathfrak{M}$ は $S$ のモデルである。特に、$\mathrm{Con}(T)$ ならば $\mathrm{Con}(S)$ である。
$\mathfrak{A}\models T$ とする。(i) から $M^{\mathfrak{A}}\neq\emptyset$ である。$\sigma\in S$ について (ii) から $\mathfrak{A}\models\sigma^\mu$ であり、lem-ast-relativization を自由変数のない $\sigma$ に使うと $\mathfrak{M}\models\sigma$ である。よって $\mathfrak{M}\models S$ である。
$\mathrm{Con}(T)$ を仮定すると、Gödelの完全性定理(定理「Gödelの完全性定理」と命題「完全性とモデル存在」)により $T$ はモデル $\mathfrak{A}$ をもち、前半から $S$ はモデル $\mathfrak{M}$ をもつ。モデルをもつ理論は無矛盾なので(健全性)、$\mathrm{Con}(S)$ である。$\square$
(i) を外すと結論は成り立たない。$\mu(x):=x\neq x$ とし、$S$ を文 $\forall x\,(x\neq x)$ だけの理論とすると、$\sigma^\mu=\forall x\,(x\neq x\to x\neq x)$ は恒真なので (ii) は $T=\emptyset$ で成り立つ。しかし一階述語論理では構造の台は空でないので、$S$ はモデルをもたず矛盾する。
この原理を使うには、$T$ の中で $S$ の公理を一つずつ $M$ に相対化して証明すればよい。$S$ が無限個の公理からなっても、(ii) は公理ごとの主張なので扱える。次はその代表例である。
相対化の原理の使い方を、一つの命題で最後までたどる。基数 $\kappa$ が 到達不能基数 であるとは、非可算・正則・強極限であることをいう(到達不能基数の定義)。以下、文「到達不能基数が存在する」を $\mathsf{I}$ と書き、ZFC の中で議論する。
到達不能基数 $\kappa$ について、累積階層の段階 $V_\kappa$ は推移的で、$V_\kappa$ に属する順序数はちょうど $\kappa$ 未満の順序数である。さらに次が成り立つ。
(*) $x,y\in V_\kappa$ なら、$x$ の部分集合、$\mathcal{P}(x)$、$x$ から $y$ への写像はすべて $V_\kappa$ に属する。
$x,y\in V_{\alpha+1}$、すなわち $x,y\subseteq V_\alpha$ となる $\alpha<\kappa$ をとる。$x$ の部分集合は $V_\alpha$ の部分集合なので $V_{\alpha+1}$ に属し、$\mathcal{P}(x)\subseteq V_{\alpha+1}$ から $\mathcal{P}(x)\in V_{\alpha+2}$ である。$x$ の元と $y$ の元の順序対 $\{\{a\},\{a,b\}\}$ は $V_{\alpha+2}$ に属するので、写像 $f\subseteq x\times y$ は $V_{\alpha+3}$ に属する。$\kappa$ は極限順序数なので $\alpha+3<\kappa$ である。
$\kappa$ を到達不能基数、$\lambda<\kappa$ を順序数とする。$\lambda$ が到達不能基数であることと、$V_\kappa$ の中で「$\lambda$ は到達不能基数」が成り立つこと(その相対化が成り立つこと)は同値である。
選択公理のもとで、「$\lambda$ は到達不能基数」は次の三条件の連言と同値である。
(a) $\lambda$ は順序数で $\omega\in\lambda$。
(b) すべての $\mu\in\lambda$ と写像 $f\colon\mu\to\lambda$ について、$f$ の値がすべて $\gamma$ 未満になる $\gamma\in\lambda$ がある。
(c) すべての $\mu\in\lambda$ について、$\lambda$ から $\mathcal{P}(\mu)$ への単射はない。
(b) は $\lambda$ が極限順序数で、それより小さい順序数から $\lambda$ への非有界な写像がないこと、すなわち $\lambda$ が正則基数であることを言い、(a) と合わせて非可算性を与える。(c) は、濃度の比較可能性により $2^{\lvert\mu\rvert}<\lambda$ と同値であり、強極限性を言う。
(b) から:$\lambda=\beta+1$ なら $f\colon1\to\lambda$、$f(0)=\beta$ は有界でないので $\lambda$ は極限順序数である。$\lvert\lambda\rvert=\lvert\mu\rvert$ となる $\mu<\lambda$ があれば全単射 $\mu\to\lambda$ は有界でないので、$\lambda$ は基数であり、$\operatorname{cf}(\lambda)=\lambda$ である。逆に正則基数は (b) を満たす。(a) と合わせて $\lambda>\omega$ の基数なので非可算である。
論理式 $\mu(x)$ を「すべての到達不能基数 $\kappa$ について $x\in V_\kappa$」とする。ZFC の各公理 $\sigma$ について $\mathsf{ZFC}\vdash\sigma^\mu$ であり、$\mathsf{ZFC}\vdash(\lnot\mathsf{I})^\mu$、$\mathsf{ZFC}\vdash\exists x\,\mu(x)$ である。したがって
$$
\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC})\ \Longrightarrow\ \mathrm{Con}(\mathsf{ZFC}+\lnot\mathsf{I}).
$$
ZFC の中で場合を分ける。どちらの場合も $\emptyset$ は $\mu$ を満たすので $\exists x\,\mu(x)$ である。
到達不能基数がない場合。 すべての $x$ が $\mu$ を満たすので、量化を $\mu$ に制限しても何も変わらず、各 $\sigma$ について $\sigma^\mu$ は $\sigma$ と同値である。ZFC の公理と $\lnot\mathsf{I}$ はこの場合に成り立つ。
到達不能基数がある場合。 最小の到達不能基数を $\kappa_0$ とする。到達不能基数 $\kappa\geq\kappa_0$ について $V_{\kappa_0}\subseteq V_\kappa$ なので、$\mu(x)$ は $x\in V_{\kappa_0}$ と同値であり、$\sigma^\mu$ は $\sigma^{V_{\kappa_0}}$ と同値である。ZFC の各公理 $\sigma$ について $\sigma^{V_{\kappa_0}}$ が成り立つことは、到達不能基数の定理「到達不能基数からZFCの集合モデルが得られる」の証明が公理ごとに確かめている。$(\lnot\mathsf{I})^{V_{\kappa_0}}$ を示す。$\lambda\in V_{\kappa_0}$ が $V_{\kappa_0}$ の中で到達不能基数なら、$\lambda$ は $\kappa_0$ 未満の順序数で、lem-ast-inacc-absolute により本当に到達不能基数である。これは $\kappa_0$ の最小性に反する。
どちらの場合も結論が成り立つので、ZFC はそれぞれの $\sigma^\mu$ と $(\lnot\mathsf{I})^\mu$ を証明する。最後の主張は thm-ast-relative-consistency による。$\square$
この結果は Kun80 Ch. IV, Lemma 6.8, Corollary 6.9(p. 133)で、$V_\kappa$ の代わりに $H(\kappa)$(推移閉包の濃度が $\kappa$ 未満の集合の全体。到達不能基数では $V_\kappa$ と一致する、同 Lemma 6.3, p. 131)を使って述べられている。そこでは Lemma 6.8 の証明は省かれている。
ZFC が無矛盾なら $\mathsf{ZFC}+\lnot\mathsf{I}$ が無矛盾であることは、「ZFC は $\mathsf{I}$ を証明しない」と同値である。到達不能基数の定理「到達不能基数の存在はZFCから証明できない」は同じ結論を第2不完全性定理から導いており、上の証明は不完全性定理を使わずにモデルを直接与えるものである。反対向きの「ZFC は $\lnot\mathsf{I}$ を証明しない」は、$\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}$ の無矛盾性そのものであり、ZFC の無矛盾性からは得られない。
$\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}$ が無矛盾なら、ZFC は「$\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC})\to\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC}+\mathsf{I})$」を証明しない。ここで $\mathrm{Con}(\cdot)$ は無矛盾性を表す集合論の文である。
ZFC がこの文を証明したとする。$\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}$ は、到達不能基数 $\kappa$ をとって $V_\kappa$ が ZFC のモデルであることから $\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC})$ を証明する(到達不能基数の定理「到達不能基数の存在はZFCから証明できない」の証明の前半)。よって $\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}\vdash\mathrm{Con}(\mathsf{ZFC}+\mathsf{I})$ となる。$\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}$ は ZF を含み公理が決定可能な理論なので、第2不完全性定理(Kun80 Ch. I, Theorem 14.3, p. 41)により $\mathsf{ZFC}+\mathsf{I}$ は矛盾する。これは仮定に反する。$\square$
このように、ZFC に加えても無矛盾性が ZFC の無矛盾性から示せない公理があり、到達不能基数の存在はその代表的な例である。こうした公理(巨大基数の公理)は、どれだけ強い無矛盾性を仮定するかによって理論を並べる物差しになる。
主な公理と命題について、基礎の理論にそれを加えた体系と否定を加えた体系の無矛盾性が、どの方法で示されるかをまとめる。到達不能基数の行の「主張を加えても無矛盾」の欄を除き、どれも ZFC が無矛盾であるという仮定から従う(「ZFC 自身」の欄は、基礎の理論の無矛盾性からではなくこの仮定から従う)。
| 主張 | 基礎の理論 | 主張を加えても無矛盾 | 否定を加えても無矛盾 |
|---|---|---|---|
| 正則性公理 | $\mathsf{ZF}^-$ | 内部モデル $\mathrm{WF}$ | $\mathsf{ZF}^-$ から無限公理も除いた体系に限って、$V_\omega$ の元の並べ替え(正則性公理) |
| 無限公理 | ZFC から無限公理を除いた体系 | ZFC 自身 | $V_\omega$(ZFC公理系) |
| 置換図式 | ZC | ZFC 自身 | $V_{\omega+\omega}$(ZFC公理系) |
| 選択公理 | ZF | 内部モデル $L$(Gödel) | 強制法と対称モデル(Cohen。選択公理) |
| 連続体仮説・一般連続体仮説 | ZFC | 内部モデル $L$(Gödel) | 強制法(Cohen。連続体仮説) |
| 到達不能基数の存在 | ZFC | ZFC の無矛盾性からは導けない(prop-ast-inacc-strength) | thm-ast-no-inaccessible |
「ZFC 自身」の欄は、主張が ZFC の公理なので、ZFC の無矛盾性からそのまま従う。置換図式の行の否定側は、ZFC が無矛盾なら $V_{\omega+\omega}$ が ZC の公理を満たし置換図式のある例を満たさないこと(ZFC公理系の定理「$V_{\omega+\omega}$ は置換を満たさない」)による。選択公理と連続体仮説の行はこの記事では証明しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 内包を集合の中に制限する | 素朴な内包の図式 | 無矛盾性(thm-ast-russell) |
| 相対化するクラスが空でない(原理の (i)) | $\mu(x):=x\neq x$ と $S=\{\forall x\,(x\neq x)\}$ | 相対的無矛盾性の結論 |
| $\kappa$ が最小の到達不能基数 | 到達不能基数が 2 つ以上あるときの 2 番目の $\kappa$ | $V_\kappa$ で $\lnot\mathsf{I}$ が成り立つこと |
| 部分集合と写像で閉じていること((*)) | 可算な推移的集合 $M$ で ZFC を満たすもの | 「非可算」の判定が中と外で一致すること |
3 行目:$\kappa_1<\kappa_2$ が到達不能基数なら、$\kappa_1\in V_{\kappa_2}$ であり、lem-ast-inacc-absolute により $V_{\kappa_2}$ の中でも $\kappa_1$ は到達不能基数なので、$V_{\kappa_2}$ では $\mathsf{I}$ が成り立つ。4 行目:そのような $M$ があれば(存在は ZFC からは証明されず、ここでは仮定する)、$M$ の中で「最初の非可算順序数」である $\omega_1^M$ は $M$ の部分集合なので外から見ると可算であり、可算性の判定が中と外で食い違う(Skolem のパラドックス。Kun80 Ch. IV, §7, p. 141、集合論の命題「外部の枚挙写像がモデルに入らない場合」)。lem-ast-inacc-absolute で (*) を使ったのは、このような食い違いを除くためである。
モデルを広げる方法。 相対化はもとの宇宙の中で小さいモデルを切り出すが、強制法は可算な推移的モデル(あるいは Boole 値モデル)にジェネリックフィルターを加えて大きいモデルを作る。連続体仮説の否定と選択公理の否定の無矛盾性はこの方法による。
他の公理系との比較。 NBG・Morse–Kelley・Tarski–Grothendieck 集合論・New Foundations・構成的集合論など、ZFC 以外の基礎の体系とその強さの比較はZFC公理系の節「他の公理系との関係」にある。
Russell の逆理と分出による回避は Kun80 Ch. I, §5(pp. 10–11)、相対化による相対的無矛盾性の証明は同 Ch. IV, §8–9(pp. 141–143)にある。lem-ast-relativization は Ch. IV, §9 の見方(モデルを使う議論)をこの記事で証明したもので、lem-ast-inacc-absolute の証明もこの記事で書いた。
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