Nevanlinnaの第二主要定理

同義語:ネヴァンリンナの第二主要定理Nevanlinna's second main theorem

概要

Nevanlinnaの第二主要定理(Nevanlinna's second main theorem)とは、$\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数 $f$ と相異なる複素数 $a_1,\dots,a_q$ について、近接関数の和 $\sum_jm_f(a_j,r)+m_f(\infty,r)$ が、測度有限の例外集合を除いて $2T_f(r)$ から分岐の個数関数を引いたものを $O(\log^+T_f(r)+\log^+\log r)$ の誤差でしか超えないという定理である。第一主要定理と合わせると、とる回数が特性関数より大幅に少ない値は合わせて 2 個分しかないことを意味する。対数微分の補題から証明され、欠除の和が $2$ 以下という欠除関係、3 値を除外する有理型関数は定数という Picard の小定理、完全分岐値は 4 個以下という結果が系として従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Nevanlinnaの第一主要定理, Jensenの公式, 有理型関数, Lebesgue測度

Nevanlinnaの第二主要定理(Nevanlinna's second main theorem)とは、$\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数 $f$ と相異なる複素数 $a_1,\dots,a_q$ について、近接関数の和が、測度有限の例外集合を除いて
$$ \sum_{j=1}^qm_f(a_j,r)+m_f(\infty,r)\le2T_f(r)-N_{\mathrm{ram}}(r)+O\bigl(\log^+T_f(r)+\log^+\log r\bigr) $$
をみたすという定理である。$N_{\mathrm{ram}}(r)\ge0$ は $f$ の分岐の多さを数える量である。
Nevanlinnaの第一主要定理 により、どの値 $a$ についても $m_f(a,r)+N_f(a,r)=T_f(r)+O(1)$ なので、第二主要定理は「$N_f(a,r)$ が $T_f(r)$ より大幅に小さくなる値は、合わせても $2$ 個分しかない」ことを述べている。係数 $2$ は Riemann 球面の Euler 標数である。系として、値の除外は 2 個までという Picard の小定理、欠除の和が $2$ 以下であるという欠除関係、完全分岐値の個数の制限が得られる。
この記事では、Borel の補題と対数微分の補題を証明し、それを使って第二主要定理を完全に証明する。そのあと欠除関係・Picard の小定理・完全分岐値の定理を系として導く。

記号

$f$ は $\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数とする。近接関数 $m_f(a,r)$、個数関数 $N_f(a,r)$、特性関数 $T_f(r)=m_f(\infty,r)+N_f(\infty,r)$、点 $z$ での $a$ 点の重複度 $\nu_z(f,a)$、$0$ での Laurent 展開の最初の係数 $c_f$ は Nevanlinnaの第一主要定理 の定義「3 つの量」のとおりとする。有理型関数 $g$ について $m_g(\infty,r)=\frac1{2\pi}\int_0^{2\pi}\log^+\lvert g(re^{i\theta})\rvert\,d\theta$ である。さらに次の 2 つを使う。

  • 重複度を数えない個数関数:$\overline N_f(a,r):=\sum_{0<\lvert z\rvert< r,\ \nu_z(f,a)>0}\log\frac r{\lvert z\rvert}+\varepsilon_0\log r$($\varepsilon_0$ は $\nu_0(f,a)>0$ なら $1$、そうでなければ $0$)。
  • 分岐の個数関数:$N_{\mathrm{ram}}(r):=N_{f'}(0,r)+2N_f(\infty,r)-N_{f'}(\infty,r)$。
    $f$ の $k$ 位の極は $f'$ の $k+1$ 位の極なので $N_{f'}(\infty,r)=N_f(\infty,r)+\overline N_f(\infty,r)$ であり、$N_{\mathrm{ram}}(r)=N_{f'}(0,r)+N_f(\infty,r)-\overline N_f(\infty,r)$ は $r\ge1$ で $0$ 以上である。
    $r$ についての不等式が「例外集合を除いて成り立つ」とは、Lebesgue 測度が有限の集合 $E\subset[1,\infty)$ があって $r\in[1,\infty)\setminus E$ で成り立つことをいう。$E$ の測度は有限なので、$r\notin E$ はいくらでも大きくとれる。
    第一主要定理から次を使う(Nevanlinnaの第一主要定理 の定理「Nevanlinnaの第一主要定理」、命題「積・和・冪・逆数」、系「個数関数の上からの評価と特性関数の増大」)。$a\in\mathbb C$、$r\ge1$ について
    $$ m_f(a,r)\ge T_f(r)-N_f(a,r)-C_a,\qquad m_f(0,r)\le T_f(r)-\log\lvert c_f\rvert,\qquad T_{f-a}(r)\le T_f(r)+\log^+\lvert a\rvert+\log2 \qquad(1) $$
    ($C_a$ は $f,a$ だけによる定数)であり、定数 $C_0$ があって $T_f(r)\ge\log r-C_0$($r\ge1$)である。また Jensenの公式 は、恒等的に $0$ でない $g$ について
    $$ m_g(\infty,r)-m_g(0,r)=\log\lvert c_g\rvert+N_g(0,r)-N_g(\infty,r)\qquad(\mathrm J) $$
    と書ける。

Borel の補題と対数微分の補題

Borelの補題

$\phi\colon[1,\infty)\to[e,\infty)$ を単調非減少で、有界な区間ごとに絶対連続な関数とする。$\phi$ が微分可能でない点、または $\phi'(r)>\phi(r)\bigl(\log\phi(r)\bigr)^2$ となる点 $r$ の集合 $E_\phi$ の Lebesgue 測度は $1$ 以下である。

$G(x):=-1/\log x$($x\ge e$)とおくと $G'(x)=\frac1{x(\log x)^2}\in(0,\frac1e]$ なので $G$ は Lipschitz 連続で、$G\circ\phi$ は単調非減少かつ有界な区間ごとに絶対連続であり、ほとんどすべての $r$ で $(G\circ\phi)'(r)=\frac{\phi'(r)}{\phi(r)(\log\phi(r))^2}$ である。$E_\phi$ の点ではこれは $1$ より大きいので(微分不可能な点は測度 $0$)、任意の $R>1$ について
$$ \bigl\lvert E_\phi\cap[1,R]\bigr\rvert\le\int_1^R(G\circ\phi)'(r)\,dr=G(\phi(R))-G(\phi(1))\le\frac1{\log\phi(1)}\le1 $$
である(絶対連続関数 の微分と積分の関係による)。$R\to\infty$ とすればよい。$\square$

対数微分の補題

$f$ を $\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数とする。定数 $C$ と、測度有限の集合 $E\subset[1,\infty)$ があって、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で
$$ m_{f'/f}(\infty,r)\le5\log^+T_f(r)+\log^+\log r+C $$
が成り立つ。

面積の引き戻しで平均を抑える

段 1(各点の不等式).$w\in\mathbb C^\times$ について $\rho(w):=\dfrac1{\lvert w\rvert^2\bigl(1+(\log\lvert w\rvert)^2\bigr)^2}$ とおき、$f$ の零点でも極でもない $z$ について $a(z):=\lvert f'(z)\rvert^2\rho(f(z))$ とおく。$\ell:=\log\lvert f(z)\rvert$ とすると $\lvert f'/f\rvert^2=a\,(1+\ell^2)^2$ なので $1+\lvert f'/f\rvert^2\le(1+a)(1+\ell^2)^2$ であり、$\log^+x\le\frac12\log(1+x^2)$ と $1+\ell^2\le(1+\lvert\ell\rvert)^2$ から
$$ \log^+\Bigl\lvert\frac{f'}f\Bigr\rvert\le\frac12\log(1+a)+2\log(1+\lvert\ell\rvert) $$
である。円周 $\lvert z\rvert=r$ で平均し、$\log$ の凹性(Jensenの不等式)と $\lvert\ell\rvert=\log^+\lvert f\rvert+\log^+\frac1{\lvert f\rvert}$、(1) の第 2 式を使うと、$r\ge1$ で
$$ m_{f'/f}(\infty,r)\le\frac12\log\bigl(1+\overline a(r)\bigr)+2\log\bigl(1+2T_f(r)+\log^+\tfrac1{\lvert c_f\rvert}\bigr),\qquad\overline a(r):=\frac1{2\pi}\int_0^{2\pi}a(re^{i\theta})\,d\theta \qquad(2) $$
である。右辺の第 2 項は $2\log^+T_f(r)+C_1$ 以下である。
段 2(面積の引き戻し).$A(t):=\int_{\lvert z\rvert< t}a(z)\,dx\,dy$、$A_1(r):=\int_0^rA(t)\,\frac{dt}t$ とおく。$a\,dx\,dy$ は $\mathbb C^\times$ 上の測度 $\rho(w)\,du\,dv$($w=u+iv$)の $f$ による引き戻しなので、$n(t,w)$ を $\lvert z\rvert< t$ での $f=w$ の解の個数(重複度込み)とすると
$$ A(t)=\int_{\mathbb C^\times}n(t,w)\,\rho(w)\,du\,dv,\qquad A_1(r)=\int_{\mathbb C^\times}N_f(w,r)\,\rho(w)\,du\,dv $$
である。

この 2 式の確かめを開く

$f'$ の零点・$f$ の零点・極を除いた開集合 $U\subset\{\lvert z\rvert< t\}$ の上で $f$ は局所的に双正則なので、$U$ を $f$ が単射になる可算個の互いに交わらない Borel 集合に分け、それぞれで変数変換の公式(ヤコビアンは $\lvert f'\rvert^2$)を使って足すと、第 1 式の右辺の $n(t,w)$ を $U$ の中の解の個数に替えた式を得る。除いた点は可算個で測度 $0$、その像も可算個なので、ほとんどすべての $w$ で個数は $n(t,w)$ に一致する。第 2 式は、$w\ne f(0)$ なら $n(t,w)=0$($t$ が小さいとき)で $\int_0^rn(t,w)\frac{dt}t=N_f(w,r)$ となることと、Tonelliの定理 による。


$w\ne f(0)$ について Nevanlinnaの第一主要定理 から $N_f(w,r)\le T_f(r)+h(w)$、$h(w):=\log^+\lvert w\rvert+\log2+\log^+\frac1{\lvert c_{f-w}\rvert}$ である。ここで $c_{f-w}$ は、$f(0)\in\mathbb C$ なら $f(0)-w$、$f(0)=\infty$ なら $w$ によらない $c_f$ である。
$\int\rho=\pi^2$ と $\int h\rho<\infty$ の確かめを開く

極座標 $w=se^{i\psi}$、$s=e^\tau$ とすると $\int_{\mathbb C^\times}\rho\,du\,dv=2\pi\int_0^\infty\frac{ds}{s(1+(\log s)^2)^2}=2\pi\int_{-\infty}^{\infty}\frac{d\tau}{(1+\tau^2)^2}=\pi^2$、$\int\log^+\lvert w\rvert\,\rho\,du\,dv=2\pi\int_0^\infty\frac{\tau\,d\tau}{(1+\tau^2)^2}=\pi$ である。$w_0:=f(0)\in\mathbb C$ のとき、$\log^+\frac1{\lvert w-w_0\rvert}$ は $\lvert w-w_0\rvert<1$ の外で $0$ である。$w_0\ne0$ なら $\lvert w-w_0\rvert<\lvert w_0\rvert/2$ で $\rho\le4/\lvert w_0\rvert^2$、$\int_{\lvert w-w_0\rvert<1}\log\frac1{\lvert w-w_0\rvert}\,du\,dv=\frac\pi2$ で、残りの部分では被積分関数が $\log^+\frac2{\lvert w_0\rvert}$ 以下なので有限である。$w_0=0$ なら $\int\log^+\frac1{\lvert w\rvert}\rho=\pi$($\int\log^+\lvert w\rvert\rho$ と同じ計算)である。


したがって $C_h:=\int h\rho\,du\,dv<\infty$ で、
$$ A_1(r)\le\pi^2T_f(r)+C_h\qquad(r\ge1) \qquad(3) $$
である。特に $A_1$ は有限で、$t< r$ なら $A(t)\log\frac rt\le A_1(r)$ なので $A$ も有限である。$A(r)=\int_0^r\bigl(t\int_0^{2\pi}a(te^{i\theta})\,d\theta\bigr)dt$ は単調非減少で有界な区間ごとに絶対連続であり、ほとんどすべての $r$ で $A'(r)=2\pi r\,\overline a(r)$ である。また $A_1$ は $C^1$ 級で $A_1'(r)=A(r)/r$ である。
段 3(Borel の補題).lem-nsm-borel を $\phi_1:=A_1+e$、$\phi_2:=A+e$ に当て、$E:=E_{\phi_1}\cup E_{\phi_2}\cup E_0$ とする($E_0$ は $A'(r)=2\pi r\overline a(r)$ が成り立たない測度 $0$ の集合)。$A=rA_1'$ に注意して 2 つの評価 $\phi_1'\le\phi_1(\log\phi_1)^2$、$\phi_2'\le\phi_2(\log\phi_2)^2$ をつなぐと、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で
$$ \log\bigl(1+\overline a(r)\bigr)\le6\log^+T_f(r)+2\log^+\log r+C_3 $$
となる。
計算を開く

$X:=\phi_1(\log\phi_1)^2+e$ とおくと $A(r)+e=rA_1'(r)+e\le rX$ で、$2\pi r\,\overline a(r)=A'(r)\le\phi_2(\log\phi_2)^2\le rX(\log r+\log X)^2$ である($x(\log x)^2$ は $x\ge1$ で増加)。$(\log y)^2\le y$($y\ge1$)と $\phi_1\ge e$ から $X\le2\phi_1^2$ なので $\log X\le\log2+2\log\phi_1$ である。$\log X\ge1$ なので $1+\overline a(r)\le2X(\log r+\log X)^2$ で、$\log(\log r+\log X)\le\log2+\log^+\log r+\log\log X$、$\log\log X\le\log X$ から $\log(1+\overline a(r))\le3\log X+2\log^+\log r+3\log2$ である。(3) から $\phi_1\le(\pi^2+C_h+e)\max(T_f(r),1)$、すなわち $\log\phi_1\le\log^+T_f(r)+C_2$ なので、主張の形を得る。


段 4.これを (2) に代入すると、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で $m_{f'/f}(\infty,r)\le3\log^+T_f(r)+\log^+\log r+2\log^+T_f(r)+C$ である。$E$ の測度は $2$ 以下である。$\square$

対数微分の補題の主張は Voj11 Theorem 28.1(§28)にある(誤差を $O(\log^+T_f(r))+o(\log r)$ と書いている)。この記事の証明は、$\mathbb C^\times$ 上の全体の面積が有限な測度 $\rho$ を $f$ で引き戻し、その円板上の面積を第一主要定理で抑え、Borel の補題で微分に戻すものである。

第二主要定理

Nevanlinnaの第二主要定理

$f$ を $\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数、$a_1,\dots,a_q$($q\ge1$)を相異なる複素数とする。定数 $C$ と測度有限の集合 $E\subset[1,\infty)$ があって、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で
$$ \sum_{j=1}^qm_f(a_j,r)+m_f(\infty,r)\le2T_f(r)-N_{\mathrm{ram}}(r)+S(r),\qquad S(r):=5(q+1)\log^+T_f(r)+(q+1)\log^+\log r+C $$
が成り立つ。

1 つの関数 $\sum_j1/(f-a_j)$ にまとめる

段 1(近接関数の和を 1 つにまとめる).$\delta:=\min\bigl(1,\min_{i\ne j}\lvert a_i-a_j\rvert\bigr)$($q=1$ なら $\delta:=1$)、$\varepsilon:=\delta/(2q)$、$F:=\sum_{j=1}^q\frac1{f-a_j}$ とおく。$f(z)$ が $a_j$ のどれでも $\infty$ でもない点 $z$ で、
$$ \sum_{j=1}^q\log^+\frac1{\lvert f(z)-a_j\rvert}\le\log^+\lvert F(z)\rvert+q\log\frac{2q}\delta \qquad(4) $$
を示す。$\lvert f(z)-a_j\rvert<\varepsilon$ となる $j$ がなければ、左辺は $q\log\frac1\varepsilon$ 以下である。そのような $j$ があれば、$i\ne j$ について $\lvert f(z)-a_i\rvert\ge\lvert a_i-a_j\rvert-\varepsilon\ge\frac\delta2$ なので、$\frac1{\lvert f(z)-a_j\rvert}>\frac1\varepsilon=\frac{2q}\delta$ と合わせて
$$ \lvert F(z)\rvert\ge\frac1{\lvert f(z)-a_j\rvert}-(q-1)\frac2\delta\ge\frac1{\lvert f(z)-a_j\rvert}\Bigl(1-\frac{q-1}q\Bigr)=\frac1{q\lvert f(z)-a_j\rvert} $$
である。よって $j$ の項は $\log^+\lvert F(z)\rvert+\log q$ 以下、ほかの項はそれぞれ $\log\frac2\delta$ 以下で、和は (4) の右辺以下である。(4) を円周上で平均して
$$ \sum_{j=1}^qm_f(a_j,r)\le m_F(\infty,r)+q\log\frac{2q}\delta $$
を得る。
段 2(対数微分を取り出す).$F=(Ff')\cdot\frac1{f'}$ で $Ff'=\sum_j\frac{(f-a_j)'}{f-a_j}$ である。$\log^+(xy)\le\log^+x+\log^+y$ と $\log^+\lvert\sum_jx_j\rvert\le\sum_j\log^+\lvert x_j\rvert+\log q$ から
$$ m_F(\infty,r)\le\sum_{j=1}^qm_{(f-a_j)'/(f-a_j)}(\infty,r)+\log q+m_{f'}(0,r) $$
である($m_{1/f'}(\infty,r)=m_{f'}(0,r)$)。
段 3($f'$ に Jensen の公式を当てる).$f'$ は恒等的に $0$ でないので、(J) により $m_{f'}(0,r)=m_{f'}(\infty,r)+N_{f'}(\infty,r)-N_{f'}(0,r)-\log\lvert c_{f'}\rvert$ である。$f'=f\cdot\frac{f'}f$ から $m_{f'}(\infty,r)\le m_f(\infty,r)+m_{f'/f}(\infty,r)$ なので
$$ m_{f'}(0,r)\le m_f(\infty,r)+N_{f'}(\infty,r)-N_{f'}(0,r)+m_{f'/f}(\infty,r)-\log\lvert c_{f'}\rvert $$
である。
段 4(まとめる).段 1〜3 を合わせ、両辺に $m_f(\infty,r)=T_f(r)-N_f(\infty,r)$ を足すと、
$$ \sum_{j=1}^qm_f(a_j,r)+m_f(\infty,r)\le2T_f(r)-\bigl(N_{f'}(0,r)+2N_f(\infty,r)-N_{f'}(\infty,r)\bigr)+R(r) $$
である。ここで $R(r):=m_{f'/f}(\infty,r)+\sum_jm_{(f-a_j)'/(f-a_j)}(\infty,r)+q\log\frac{2q}\delta+\log q-\log\lvert c_{f'}\rvert$ で、括弧の中は $N_{\mathrm{ram}}(r)$ である。lem-nsm-logderiv を $f$ と $f-a_1,\dots,f-a_q$(どれも定数でない)に当て、(1) の第 3 式から $\log^+T_{f-a_j}(r)\le\log^+T_f(r)+\log\bigl(1+\log^+\lvert a_j\rvert+\log2\bigr)$ であることを使う。$q+1$ 個の例外集合の和集合を $E$ とすれば、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で $R(r)\le S(r)$ となる定数 $C$ がとれる。$\square$

この定理は Voj11 Theorem 4.7(p. 125)の主張(左辺に $m_f(\infty,r)$、右辺に $-N_{\mathrm{ram}}(r)$ のない形で、誤差を $O(\log^+T_f(r))+o(\log r)$ と書く)を含む。$m_f(\infty,r)\ge0$ と $N_{\mathrm{ram}}(r)\ge0$ を捨て、$(q+1)\log^+\log r=o(\log r)$ に注意すればよい。誤差の形は、Nevanlinnaの第一主要定理 の系「個数関数の上からの評価と特性関数の増大」により $T_f(r)\ge\log r-C_0$ なので、$r\to\infty$ で $S(r)/T_f(r)\to0$ となることだけが以下で使われる。

個数関数による形

第一主要定理 (1) で $m_f(a_j,r)\ge T_f(r)-N_f(a_j,r)-C_{a_j}$、$m_f(\infty,r)=T_f(r)-N_f(\infty,r)$ と書き換えると、thm-nsm-main は
$$ (q-1)\,T_f(r)\le\sum_{j=1}^qN_f(a_j,r)+N_f(\infty,r)-N_{\mathrm{ram}}(r)+S(r)+O(1)\qquad(r\in[1,\infty)\setminus E) \qquad(5) $$
となる。$q+1$ 個の値 $a_1,\dots,a_q,\infty$ についての係数 $q-1=(q+1)-2$ の $2$ は、Riemann 球面の Euler 標数である(Voj11 p. 126)。

重複度を数えない形

$A\subset\mathbb C\cup\{\infty\}$ を空でない有限集合とする。測度有限の集合 $E$ と、$S(r)$ と同じ形($q+1$ を $\lvert A\rvert+1$ に替え、定数を替えたもの)の $S_A(r)$ があって、$r\in[1,\infty)\setminus E$ で
$$ (\lvert A\rvert-2)\,T_f(r)\le\sum_{a\in A}\overline N_f(a,r)+S_A(r) $$
が成り立つ。

$A\cap\mathbb C=\{a_1,\dots,a_q\}$ とする。$q=0$ なら $A=\{\infty\}$ で、左辺 $-T_f(r)$ は $0$ 以下、右辺は($S_A$ の定数を $0$ 以上にとれば)$0$ 以上なので明らかである。$q\ge1$ とする。$a_j$ 点で $f$ の重複度が $k$ なら、そこは $f'$ の $k-1$ 位の零点である。異なる $j$ の $a_j$ 点は異なる点なので、$N_{f'}(0,r)\ge\sum_j\bigl(N_f(a_j,r)-\overline N_f(a_j,r)\bigr)$ である(どの個数関数も同じ重み $\log\frac r{\lvert z\rvert}$、$z=0$ では $\log r$ で、$r\ge1$ では $0$ 以上)。また $N_f(\infty,r)-\overline N_f(\infty,r)$ は極の位数から $1$ を引いたものの重み付きの和である。よって $N_{\mathrm{ram}}(r)\ge\sum_j\bigl(N_f(a_j,r)-\overline N_f(a_j,r)\bigr)+N_f(\infty,r)-\overline N_f(\infty,r)$ で、(5) に代入すると
$$ (q-1)\,T_f(r)\le\sum_{j=1}^q\overline N_f(a_j,r)+\overline N_f(\infty,r)+S(r)+O(1) $$
である。$\infty\in A$ なら $\lvert A\rvert=q+1$ でこれが主張である。$\infty\notin A$ なら $\lvert A\rvert=q$ で、$\overline N_f(\infty,r)\le N_f(\infty,r)\le T_f(r)$ を移項すればよい。$\square$

重複度を $1$ で打ち切った個数関数のこの形は、数論の側では abc予想 に対応する(Voj11 §22、pp. 188–190)。

系

$f$ を $\mathbb C$ 上の定数でない有理型関数とする。$a\in\mathbb C\cup\{\infty\}$ について
$$ \delta_f(a):=\liminf_{r\to\infty}\frac{m_f(a,r)}{T_f(r)} $$
を $a$ の 欠除(defect)という。$T_f(r)\to\infty$ なので $r$ が大きければ分母は正で、第一主要定理と $N_f(a,r)\ge0$($r\ge1$)から $m_f(a,r)\le T_f(r)+O(1)$ なので $0\le\delta_f(a)\le1$ である。$f$ が $a$ をとらなければ $N_f(a,r)=0$ なので $m_f(a,r)\ge T_f(r)-C_a$ で、$\delta_f(a)=1$ である。

欠除関係

$\delta_f(a)>0$ となる $a\in\mathbb C\cup\{\infty\}$ は高々可算個で、$\sum_{a\in\mathbb C\cup\{\infty\}}\delta_f(a)\le2$ である。

有限集合 $A\subset\mathbb C\cup\{\infty\}$ について $\sum_{a\in A}\delta_f(a)\le2$ を示せば十分である(そうなら $\delta_f(a)>1/n$ となる $a$ は $2n$ 個未満なので、正の欠除をもつ $a$ は可算個で、和は $2$ 以下)。$A\cap\mathbb C$ が空なら和は $\delta_f(\infty)\le1$ 以下である。空でないとき $A\cap\mathbb C$ に thm-nsm-main を当て、$\infty\notin A$ なら左辺の $m_f(\infty,r)\ge0$ を、また $N_{\mathrm{ram}}(r)\ge0$ を捨てると、$r\notin E$ で $\sum_{a\in A}m_f(a,r)\le2T_f(r)+S(r)$ である。$T_f(r)\to\infty$ と $T_f(r)\ge\log r-C_0$ から $S(r)/T_f(r)\to0$ である。$r\notin E$ はいくらでも大きくとれ、そこに制限した下極限は全体の下極限以上なので
$$ \sum_{a\in A}\delta_f(a)\le\sum_{a\in A}\liminf_{r\to\infty,\,r\notin E}\frac{m_f(a,r)}{T_f(r)}\le\liminf_{r\to\infty,\,r\notin E}\sum_{a\in A}\frac{m_f(a,r)}{T_f(r)}\le2 $$
である。$\square$

欠除関係は Voj11 Definition 5.6 の後(p. 129)で、和を $a\in\mathbb C$ にわたらせた形で第二主要定理の帰結として述べられている。

有理型関数の Picard の小定理

$\mathbb C$ 上の有理型関数 $f$ が、相異なる 3 つの値 $a_1,a_2,a_3\in\mathbb C\cup\{\infty\}$ をどれもとらなければ、$f$ は定数である。特に、定数でない整関数がとらない複素数は高々 1 つである。

$f$ が定数でなければ、とらない値の欠除はどれも $1$ なので $\delta_f(a_1)+\delta_f(a_2)+\delta_f(a_3)=3$ で、cor-nsm-defect に反する。整関数は $\infty$ をとらないので、2 つの複素数をとらなければ 3 つの値をとらないことになる。$\square$

ほかの証明(楕円モジュラー関数による Picard 自身の証明など)は Picardの小定理 の記事にある。

完全分岐値

有限集合 $A\subset\mathbb C\cup\{\infty\}$ の各 $a$ について、$f$ の $a$ 点の重複度がどれも $m_a$ 以上であるとする($f$ が $a$ をとらなければ $m_a=\infty$、$1/\infty=0$ とする)。このとき
$$ \sum_{a\in A}\Bigl(1-\frac1{m_a}\Bigr)\le2 $$
である。特に、すべての $a$ 点の重複度が $2$ 以上である値(完全分岐値)は高々 $4$ 個で、$f$ が整関数なら有限の完全分岐値は高々 $2$ 個である。

各 $a$ 点の重複度が $m_a$ 以上なので $\overline N_f(a,r)\le N_f(a,r)/m_a$ であり、Nevanlinnaの第一主要定理 の系「個数関数の上からの評価と特性関数の増大」の 1($a=\infty$ なら $N_f(\infty,r)\le T_f(r)$)から $\overline N_f(a,r)\le(T_f(r)+C'_a)/m_a$ である($m_a=\infty$ なら $\overline N_f(a,r)=0$)。cor-nsm-truncated に代入すると、$r\notin E$ で $(\lvert A\rvert-2)T_f(r)\le\sum_a\frac{T_f(r)+C'_a}{m_a}+S_A(r)$ である。$T_f(r)$ で割って $r\to\infty$($r\notin E$)とすると $\lvert A\rvert-2\le\sum_a\frac1{m_a}$ である。後半は、各項が $\frac12$ 以上であること、整関数では $\infty$ の項が $1$ であることによる。$\square$

例

等号が成り立つ例
  1. $f(z)=e^z$ は $0$ と $\infty$ をとらないので $\delta_f(0)=\delta_f(\infty)=1$ で、欠除関係は等号で成り立つ。右辺の $2$ は改良できない。
  2. $f(z)=\sin z$ とする。$\sin z=1$ となる点では $\cos z=0$、$(\sin z)''=-\sin z=-1\ne0$ なので、$\sin z-1$ の零点はどれもちょうど $2$ 位である。$\sin z=-1$ も同様で、$\infty$ はとらない。$A=\{1,-1,\infty\}$、$m_1=m_{-1}=2$、$m_\infty=\infty$ として $\frac12+\frac12+1=2$ となり、cor-nsm-ramified は等号で成り立つ。整関数の有限の完全分岐値が 2 個まであるという部分も、この例で最良である。

反例と注意

外す条件・替える主張反例成り立たなくなること
定義域が $\mathbb C$ 全体単位円板上の $f(z)=z$3 値をとらない関数は定数
とらない値が 3 個$e^z$($0$ と $\infty$)とらない値があれば定数
欠除関係の右辺を $2$ 未満に$e^z$$\sum_a\delta_f(a)\le2-\eta$($\eta>0$)
完全分岐値の和の上限を $2$ 未満に$\sin z$$\sum_a(1-1/m_a)<2$
個数関数の下からの評価を 1 つの値で$e^z$、$a=0$$N_f(a,r)\ge T_f(r)-o(T_f(r))$

各行の確認を示す。

各行の確認を開く

1 行目:単位円板 $\lvert z\rvert<1$ 上の $f(z)=z$ は定数でなく、$\lvert w\rvert\ge1$ の値をどれもとらない。定義域が $\mathbb C$ でないことだけが仮定に反する(証明は $r\to\infty$ を使う)。

2 行目:$e^z$ は定数でなく、除外する値は 2 個である。

3 行目:ex-nsm-sharp の 1 により和はすでに $2$ である。

4 行目:ex-nsm-sharp の 2 により和はちょうど $2$ である。

5 行目:$N_f(0,r)=0$ だが $T_f(r)=r/\pi\to\infty$ である。第二主要定理は値の集まりについての主張で、個々の値の個数関数を下から抑えるものではない。


注意を 2 つ挙げる。

  • 例外集合.例外集合は lem-nsm-borel から来る。欠除関係・Picard の小定理・完全分岐値の定理のように $r\to\infty$ での比だけを見る帰結では、$r\notin E$ がいくらでも大きくとれることだけを使うので、例外集合は結論に影響しない。
  • 証明の方法.第二主要定理には、この記事の対数微分の補題による証明のほか、曲率を使う証明、Ahlfors の被覆面の理論による証明がある。どれも $f$ の導関数を本質的に使い、数論の側(Rothの定理)には導関数の類似物がない(Voj11 §5、p. 128)。

関連項目

参考文献

[1]
Paul Vojta, Diophantine approximation and Nevanlinna theory, Arithmetic Geometry, Lecture Notes in Mathematics, 2011, 著者サイトの版(刊行版と同じ頁番号)。Theorem 4.7(第二主要定理)・(4.8) p. 125、p. 126(係数 $q-2$ と Euler 標数)、§5:導関数を使う証明についての段落 p. 128、Definition 5.6(欠除)と欠除関係 p. 129、§22 pp. 188–190、Theorem 28.1(対数微分の補題)p. 208

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