Pappusの円鎖(Pappus chain)とは、直線上に $A,C,B$ をこの順にとり、$AB=1$、$AC=r$($0< r< 1$)として $AB$、$AC$ を直径とする円の間に、$CB$ を直径とする円 $\omega_0$ から始めて、大きい円に内側から、小さい円に外側から、前の円に接するように並べた円の列 $\omega_0,\omega_1,\dots$ である。$D_n=n^2(1-r)^2+r$ とおくと、$\omega_n$ の半径は $\frac{r(1-r)}{2D_n}$、中心は $\left(\frac{r(1+r)}{2D_n},\frac{nr(1-r)}{D_n}\right)$ で、高さは直径の $n$ 倍である。中心はすべて、2 つの半円の中心を焦点とし距離の和が $\frac{1+r}2$ の楕円の上にある。
前提知識: 円に関する反転, 2円の位置関係と共通接線, 2次曲線の焦点と準線
直線の上に $A$、$C$、$B$ をこの順にとり、$AB$ を直径とする大きな半円と、$AC$ を直径とする小さな半円を描く。2 つの半円は $A$ で接している。その間の三日月形の部分(アルベロス)に、円を次々に詰めていく。
$A=(0,0)$、$C=(4,0)$、$B=(6,0)$ とする。$CB$ を直径とする円を $\omega_0$(中心 $(5,0)$、半径 $1$)とし、大きな半円に内側から、小さな半円に外側から接し、1 つ前の円にも接する円を $\omega_1,\omega_2,\dots$ と上へ並べていく。円に関する反転 の例「半円の間に並ぶ円の列」では、3 つの接する条件を連立方程式にして
$$
\omega_1:\ \text{中心}\left(\frac{30}7,\frac{12}7\right),\ \text{半径}\ \frac67,\qquad
\omega_2:\ \text{中心}\left(3,\frac{12}5\right),\ \text{半径}\ \frac35
$$
を求めている。同じように続けると、$\omega_3$ は中心 $\left(2,\dfrac{12}5\right)$、半径 $\dfrac25$ になる。
半径を並べると $1,\ \dfrac67,\ \dfrac35,\ \dfrac25$ である。分子を $6$ にそろえると
$$
\frac66,\quad\frac67,\quad\frac6{10},\quad\frac6{15}
$$
となり、分母は $6,7,10,15$ と増えていく。差は $1,3,5$ で、奇数が並んでいる。分母は $n^2+6$ の形をしているように見える。この記事の問いは次の 2 つである。
| 高校の計算 | この記事で使う道具 | 大学数学で見ると |
|---|---|---|
| 接する条件を連立方程式にする | 反転で円を直線に移す | 1 次分数変換による簡単化 |
| 2 点からの距離の和が一定 | 楕円の定義 | 円の族の中心の軌跡 |
| 分母が $n$ の 2 次式 | 平行線の間に同じ円を積む | 平行移動と共役な変換 |
計算を簡単にするため、大きな半円の直径を $1$ にそろえる。
$0< r< 1$ とし、$A=(0,0)$、$C=(r,0)$、$B=(1,0)$ とする。$AB$、$AC$、$CB$ を直径とする円を、それぞれ $\Gamma_B$、$\Gamma_C$、$\omega_0$ とする。$\Gamma_B$ の中心は $O_B=\left(\frac12,0\right)$、半径は $\frac12$、$\Gamma_C$ の中心は $O_C=\left(\frac r2,0\right)$、半径は $\frac r2$ である。
円 $\omega_1,\omega_2,\dots$ を次のように決める:$\omega_n$ は $\Gamma_B$ に内側から接し、$\Gamma_C$ に外側から接し、$\omega_{n-1}$ に外側から接する円で、$\omega_1$ は中心が $x$ 軸より上にあるもの、$n\ge2$ では $\omega_{n-2}$ と異なるものとする。この円の列 $\omega_0,\omega_1,\omega_2,\dots$ を Pappus の円鎖 という。
ex-ppc-start は、この定義の図を $6$ 倍に拡大したもので、$r=\frac46=\frac23$ にあたる。
$r=\frac12$ のとき、$\Gamma_C$ と $\omega_0$ はどちらも半径 $\frac14$ である。$\omega_1$ の中心を $(x,y)$、半径を $\rho$ とすると、接する条件は
$$
\left(x-\tfrac12\right)^2+y^2=\left(\tfrac12-\rho\right)^2,\quad
\left(x-\tfrac14\right)^2+y^2=\left(\tfrac14+\rho\right)^2,\quad
\left(x-\tfrac34\right)^2+y^2=\left(\tfrac14+\rho\right)^2
$$
である。2 つ目と 3 つ目の右辺は同じなので、左辺を比べて $x=\frac12$ である。これを 1 つ目に入れると $y^2=\left(\tfrac12-\rho\right)^2=\frac14-\rho+\rho^2$、2 つ目に入れると $\frac1{16}+y^2=\frac1{16}+\frac\rho2+\rho^2$ なので、$y^2=\frac\rho2+\rho^2$ である。2 つの $y^2$ を等しいとおくと $\frac14-\rho=\frac\rho2$、つまり $\rho=\frac16$ で、$y^2=\frac1{12}+\frac1{36}=\frac19$、$y=\frac13$ である。中心 $\left(\frac12,\frac13\right)$ の高さ $\frac13$ は、直径 $\frac13$ の $1$ 倍になっている。
反転で図を簡単にしてから、もとに戻す。反転の基本は 円に関する反転 で扱った。ここでは原点 $A$ を中心とする半径 $1$ の反転 $\iota$ を使う。座標で書くと、原点以外の点 $(x,y)$ は
$$
(X,Y)=\left(\frac{x}{x^2+y^2},\ \frac{y}{x^2+y^2}\right)
$$
に移り、$\iota$ を 2 回続けるともとに戻る(円に関する反転 の例「座標の式で反転する」)。
$w=\dfrac1r-1=\dfrac{1-r}r$ とおく。反転 $\iota$ で
方針:$\iota$ の座標の式を円の方程式に代入する。
段 1(2 つの半円)。$\Gamma_B$ の方程式は $\left(x-\frac12\right)^2+y^2=\frac14$、展開して $x^2+y^2=x$ である。$\iota$ は 2 回でもとに戻るので、点 $(X,Y)$ が $\Gamma_B$ の像の上にあることは、$(x,y)=\left(\dfrac X{X^2+Y^2},\dfrac Y{X^2+Y^2}\right)$ が $\Gamma_B$ の上にあることと同じである。このとき $x^2+y^2=\dfrac1{X^2+Y^2}$ なので、$x^2+y^2=x$ は
$$
\frac1{X^2+Y^2}=\frac{X}{X^2+Y^2},\qquad\text{つまり}\qquad X=1
$$
となる。同じく $\Gamma_C$ の方程式 $x^2+y^2=rx$ は $X=\frac1r$ になる。
段 2(内側と外側)。同じ代入で、$\Gamma_B$ の内部 $x^2+y^2< x$ は $X>1$ に、$\Gamma_C$ の外部 $x^2+y^2>rx$ は $X< \frac1r$ に移る。$\omega_n$ は $\Gamma_B$ の内部で $\Gamma_C$ の外部にある(接点を除く)ので、$\omega_n$ の像は帯 $1< X< \frac1r$ に入る。$\omega_n$ は $A$ を通らないので像は円であり(円に関する反転 の定理「直線と円の移り方」)、接することは反転で保たれる(同じ記事の補題「接することは保たれる」)。よって $\omega_n'$ は帯の中にあって 2 本の直線の両方に接する円である。そのような円の直径は帯の幅 $w$ に等しく、中心は帯の中央の直線 $X=\frac12\left(1+\frac1r\right)=\frac{1+r}{2r}$ の上にある。
段 3(高さ)。$\omega_n'$ の中心の高さを $h_n$ とする。$\omega_0$ は $x$ 軸について対称で、$\iota$ の式は $y$ を $-y$ に変えても $Y$ が $-Y$ に変わるだけなので、$\omega_0'$ も $x$ 軸について対称で $h_0=0$ である。$\omega_n'$ と $\omega_{n-1}'$ は接する(接することは保たれる)。どちらも直径 $w$ で中心が同じ縦の直線の上にあるので、中心の距離は $w$ で、$h_n=h_{n-1}\pm w$ である。$Y$ は $y$ と同じ符号なので、$\omega_1$ が $x$ 軸より上にあることから $h_1=w$ である。$n\ge2$ で $h_{n-1}=h_{n-2}+w$ と仮定すると、$\omega_n\ne\omega_{n-2}$ より $\omega_n'\ne\omega_{n-2}'$ なので $h_n\ne h_{n-1}-w=h_{n-2}$、したがって $h_n=h_{n-1}+w$ である。帰納法により $h_n=nw$ である。$\square$
図 1 の左は $r=\frac23$ の円鎖($6$ 倍に拡大)、右はその反転の像である。右では 2 つの半円が平行な 2 直線に、円の列が同じ大きさの円の縦の積み重ねに変わっている。
AB=6、AC=4 のときの円の列 ω₀ から ω₄。灰色の破線は円の中心が並ぶ楕円で、焦点は 2 つの半円の中心
A を中心とする反転のあとの図。2 つの半円は平行な直線 x=1 と x=3/2 に、円の列は直径 1/2 の円の積み重ねに移る
def-ppc-chain の円鎖で、$D_n=n^2(1-r)^2+r$ とおく。$\omega_n$ の半径 $r_n$ と中心 $(x_n,y_n)$ は
$$
r_n=\frac{r(1-r)}{2D_n},\qquad x_n=\frac{r(1+r)}{2D_n},\qquad y_n=\frac{nr(1-r)}{D_n}
$$
である($n=0,1,2,\dots$)。
方針:lem-ppc-strip の円 $\omega_n'$ を $\iota$ でもとに戻す。
段 1($N$ の計算)。$\iota$ を 2 回続けるともとに戻るので、$\omega_n=\iota(\omega_n')$ である。$\omega_n'$ の中心は $(a,b)=\left(\dfrac{1+r}{2r},\ \dfrac{n(1-r)}r\right)$、半径は $s=\dfrac{1-r}{2r}$ で、$\omega_n'$ は帯 $X\ge1$ の中にあるので原点を通らない。
$$
N=a^2+b^2-s^2=\frac{(1+r)^2-(1-r)^2}{4r^2}+\frac{n^2(1-r)^2}{r^2}
=\frac{4r}{4r^2}+\frac{n^2(1-r)^2}{r^2}=\frac{r+n^2(1-r)^2}{r^2}=\frac{D_n}{r^2}
$$
で、$N>0$ である。
段 2(中心と半径)。補題の式で、$\omega_n$ の中心は
$$
\left(\frac aN,\frac bN\right)=\left(\frac{1+r}{2r}\cdot\frac{r^2}{D_n},\ \frac{n(1-r)}{r}\cdot\frac{r^2}{D_n}\right)=\left(\frac{r(1+r)}{2D_n},\ \frac{nr(1-r)}{D_n}\right),
$$
半径は $\dfrac sN=\dfrac{1-r}{2r}\cdot\dfrac{r^2}{D_n}=\dfrac{r(1-r)}{2D_n}$ である。$\square$
$r=\frac23$ では $1-r=\frac13$、$D_n=\dfrac{n^2}9+\dfrac23=\dfrac{n^2+6}9$、$r(1-r)=\frac29$ なので
$$
r_n=\frac{2/9}{2(n^2+6)/9}=\frac1{n^2+6}
$$
である。図を $6$ 倍すると半径は $\dfrac6{n^2+6}$ になり、ex-ppc-start の分母 $6,7,10,15$ が $n^2+6$ だったことが分かる。中心も $6$ 倍して表にする。
| $n$ | 半径 $6r_n$ | 中心 $(6x_n,6y_n)$ | 高さ ÷ 直径 |
|---|---|---|---|
| $0$ | $1$ | $(5,0)$ | $0$ |
| $1$ | $\frac67$ | $\left(\frac{30}7,\frac{12}7\right)$ | $1$ |
| $2$ | $\frac35$ | $\left(3,\frac{12}5\right)$ | $2$ |
| $3$ | $\frac25$ | $\left(2,\frac{12}5\right)$ | $3$ |
| $4$ | $\frac3{11}$ | $\left(\frac{15}{11},\frac{24}{11}\right)$ | $4$ |
$n=1,2,3$ の行は、連立方程式で求めた値と一致する。
(i) は thm-ppc-formula の $y_n$ を $2r_n=\dfrac{r(1-r)}{D_n}$ で割ればよい。(ii) は $\dfrac1{r_n}=\dfrac{2D_n}{r(1-r)}=\dfrac{2n^2(1-r)^2+2r}{r(1-r)}$ を項ごとに約分した式である。(iii) は $D_1=(1-r)^2+r=1-r+r^2$ を入れた式である。$\square$
(i) は 円に関する反転 の定理「Pappus の円鎖定理」そのもので、式から読み直せる。(iii) の円は アルベロス の命題「アルベロスに内接する円」の円で、そこでの $a=\frac r2$、$b=\frac{1-r}2$ を入れた半径 $\dfrac{ab(a+b)}{a^2+ab+b^2}$ と一致する。
ex-ppc-table の中心を図 1 に打つと、1 つの曲線の上に並ぶように見える。
def-ppc-chain の円鎖の円 $\omega_n$ の中心は、すべて、$O_B=\left(\frac12,0\right)$ と $O_C=\left(\frac r2,0\right)$ を焦点とし、焦点からの距離の和が $\dfrac{1+r}2$ の楕円
$$
\frac{\left(x-\frac{1+r}4\right)^2}{\left(\frac{1+r}4\right)^2}+\frac{y^2}{\left(\frac{\sqrt r}2\right)^2}=1
$$
の上にある。
方針:接する条件を、中心どうしの距離の言葉にする。反転は使わない。
段 1(距離の和)。$\omega_n$ の中心を $P$、半径を $r_n$ とする。$\omega_n$ は $\Gamma_B$(半径 $\frac12$)に内側から接するので $PO_B=\frac12-r_n$、$\Gamma_C$(半径 $\frac r2$)に外側から接するので $PO_C=\frac r2+r_n$ である(2円の位置関係と共通接線 の定理「2 円の位置関係」)。足すと
$$
PO_B+PO_C=\frac12+\frac r2=\frac{1+r}2
$$
で、$n$ によらない。$\omega_0$ でも同じである。
段 2(楕円の方程式)。2 点からの距離の和が一定の点は、その 2 点を焦点とする楕円の上にある(2次曲線の焦点と準線 の定理「楕円の標準形と焦点半径」)。焦点の中点は $\left(\frac{1+r}4,0\right)$、焦点の間の距離の半分は $c=\frac12\left(\frac12-\frac r2\right)=\frac{1-r}4$、距離の和の半分は $a=\frac{1+r}4$ である。短い方の半軸は
$$
b^2=a^2-c^2=\frac{(1+r)^2-(1-r)^2}{16}=\frac{4r}{16}=\frac r4,\qquad b=\frac{\sqrt r}2
$$
で、中点を原点に平行移動した標準形 $\dfrac{X^2}{a^2}+\dfrac{Y^2}{b^2}=1$ を $X=x-\frac{1+r}4$、$Y=y$ で戻すと、主張の方程式になる。$\square$
$r=\frac23$ では楕円は $\dfrac{\left(x-\frac5{12}\right)^2}{\left(\frac5{12}\right)^2}+\dfrac{y^2}{1/6}=1$ である。$\omega_2$ の中心は($6$ で割って)$\left(\frac12,\frac25\right)$ で、
$$
\frac{\left(\frac12-\frac5{12}\right)^2}{\frac{25}{144}}+\frac{\frac4{25}}{\frac16}
=\frac{\frac1{144}}{\frac{25}{144}}+\frac{24}{25}=\frac1{25}+\frac{24}{25}=1
$$
となる。$\omega_1$ の中心 $\left(\frac57,\frac27\right)$ でも、$\dfrac{\left(\frac57-\frac5{12}\right)^2}{\frac{25}{144}}+6\cdot\dfrac4{49}=\dfrac{\left(\frac{25}{84}\right)^2\cdot144}{25}+\dfrac{24}{49}=\dfrac{25}{49}+\dfrac{24}{49}=1$ である。
$n$ を大きくすると $D_n$ は限りなく大きくなるので、$r_n$、$x_n$、$y_n$ はどれも $0$ に近づき、円は点 $A$ に向かって小さくなる。$A=(0,0)$ を楕円の方程式に入れると $1+0=1$ で、$A$ は楕円の上にある。円の中心は、楕円の上半分を $B$ 側から $A$ へ向かってたどっていく。
主定理 2 と cor-ppc-height の (i)(高さは直径の $n$ 倍)を合わせると、主定理 1 の式を、反転の像を戻す計算をせずに、接する条件の連立方程式だけから出すこともできる(高さの関係そのものは反転で示したものを使う)。
中心を $(x,y)$、半径を $\rho$ とすると、段 1 の 2 つの距離の式は $\left(x-\frac12\right)^2+y^2=\left(\frac12-\rho\right)^2$ と $\left(x-\frac r2\right)^2+y^2=\left(\frac r2+\rho\right)^2$ である。展開すると $x^2-x+y^2=\rho^2-\rho$ と $x^2-rx+y^2=\rho^2+r\rho$ で、引くと $(r-1)x=-(1+r)\rho$、つまり $x=\dfrac{1+r}{1-r}\rho$ である。これと $y=2n\rho$ を 1 つ目の式に入れると $\left(\dfrac{(1+r)^2}{(1-r)^2}+4n^2-1\right)\rho^2=\left(\dfrac{1+r}{1-r}-1\right)\rho=\dfrac{2r}{1-r}\rho$ となる。左辺の括弧は $\dfrac{4r+4n^2(1-r)^2}{(1-r)^2}=\dfrac{4D_n}{(1-r)^2}$ なので、$\rho\ne0$ で割って $\rho=\dfrac{2r}{1-r}\cdot\dfrac{(1-r)^2}{4D_n}=\dfrac{r(1-r)}{2D_n}$ を得る。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 2 つの円が $A$ で接する($\Gamma_C$ が $\Gamma_B$ に内接する) | 半径 $3$ の円の中に、接しない半径 $2$ の円を置く | 高さが直径の整数倍にならず、半径の式も崩れる |
| $\Gamma_C$ が $\Gamma_B$ の内側にある(一緒に $\omega_0$ の作り方も変わる) | 2 つの円が $A$ で外接する | 中心は楕円でなく双曲線の上に並ぶ |
| (定義の外の例)$\omega_0$ を $CB$ を直径とする円にとる | 2 直線の間の円から始める列 | 高さと直径の比が $n$ から $n+t$ にずれる |
中心 $(0,0)$、半径 $3$ の円の中に、中心 $\left(-\frac12,0\right)$、半径 $2$ の円を置く。中心の距離 $\frac12$ は半径の差 $1$ より小さいので、2 つの円は共有点をもたない(2円の位置関係と共通接線)。$x$ 軸の上の隙間 $\frac32\le x\le3$ を直径とする円(中心 $\left(\frac94,0\right)$、半径 $\frac34$)から始め、大きい円に内側から、小さい円に外側から、前の円に外側から接する円を数値で求めると、次の円は中心がおよそ $(1.8214,\ 1.3927)$、半径がおよそ $0.7071$ で、高さ ÷ 直径はおよそ $0.985$ になり、$1$ にならない。2 つの円は反転しても平行線にはならず、同心円に移る(Steinerの円鎖)。このとき円の列は同心円の間を回る列になり、平行線の間に積む図にはならない。
$\Gamma_B$(中心 $\left(\frac12,0\right)$、半径 $\frac12$)と、$A$ で外から接する円 $\Gamma'$(中心 $\left(-\frac14,0\right)$、半径 $\frac14$)を考える。両方に外側から接する半径 $\rho$ の円の中心を $P$ とすると、$PO_B=\frac12+\rho$、$P$ から $\Gamma'$ の中心までの距離は $\frac14+\rho$ で、差が $\frac14$ で一定になる。2 点からの距離の差が一定の点は双曲線の上にある(2次曲線の焦点と準線)。数値でも、$\rho=0.1,\ 0.3,\ 1$ の円で距離の差はどれも $0.25$、和は $0.95,\ 1.35,\ 2.75$ と変わる。主定理 2 は「内側から」と「外側から」の組み合わせで和が一定になることに支えられていた。
反転した図で、帯の中の直径 $w$ の円の中心の高さを $tw$($0< t< 1$)にとり、そこから上へ $\omega_0',\omega_1',\dots$ を積むと、$\omega_n'$ の高さは $(n+t)w$ になる。prf-ppc-formula の計算で $n$ を $n+t$ に置き換えると、もとの図の円の半径は $\dfrac{r(1-r)}{2\{(n+t)^2(1-r)^2+r\}}$、高さ ÷ 直径は $n+t$ になる。$\omega_0$ を $CB$ を直径とする円にとったから、比がちょうど整数 $n$ になった。
反転した図では、円鎖を 1 つ進める操作は上向きの平行移動 $Y\mapsto Y+w$ である。もとの図で円を 1 つ進める操作を $T$ とすると、$T=\iota\circ(\text{平行移動})\circ\iota$ と書ける。Steinerの円鎖 では 2 つの円を同心円に移し、円鎖を進める操作が回転と同じ形に書けた。Pappus の円鎖はその「平行移動版」で、2 つの円が接しているときに現れる。複素数平面で見ると、反転と平行移動はどちらも 1 次分数変換(とその共役)で書け、こうした変換の分類が Möbius変換 の主題になる。
MathWorld の頁「Pappus Chain」は、半径と中心の式、中心が楕円の上にあり焦点が 2 つの半円の中心であること、そして高さが直径の $n$ 倍であるという結果を Pappus が古い定理として述べたことを記している(Wei26。頁は大きな半円の直径に対する比で $r$ を定めており、この記事の $AB=1$、$AC=r$ の正規化と同じ式になる)。
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