Greenの公式(Green's formula)とは、$\mathbb{R}^N$ の有界な領域 $\Omega$ の上の部分積分の公式 $\int_\Omega(\Delta u)v=\int_{\partial\Omega}(\partial u/\partial n)v\,d\sigma-\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v$ である。境界が $C^1$ 級なら、境界をグラフで表して発散定理を示し、$\overline\Omega$ の近傍で $u$ が $C^2$ 級、$v$ が $C^1$ 級のときの公式が従う。境界の値をトレースとして定めると、公式は $u\in H^2(\Omega)$、$v\in H^1(\Omega)$ に広がる。平面の線積分の Greenの定理とは別の定理で、弱解や Neumann 境界条件の出発点になる。
前提知識: Gaussの発散定理, Sobolev空間の基本事項, 1の分割
Greenの公式(Green's formula)は、$\mathbb{R}^N$ の有界な領域 $\Omega$ の上での部分積分の公式
$$
\int_\Omega(\Delta u)\,v\,dx=\int_{\partial\Omega}\frac{\partial u}{\partial n}\,v\,d\sigma-\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v\,dx
$$
である。ここで $\Delta u=\sum_i\partial_i^2u$、$n$ は境界の外向きの単位法線、$\partial u/\partial n=\nabla u\cdot n$ は法線方向の微分、$\sigma$ は境界の面積測度である。1 次元では $\int_a^bu''v=[u'v]_a^b-\int_a^bu'v'$ という部分積分そのもので、境界の項が「端点の値」から「境界の上の積分」に置き換わる。偏微分方程式では、方程式に試験関数 $v$ を掛けてこの公式で書き直すことが弱解の考え方の出発点であり、境界の項に法線微分が現れることから Neumann問題 の境界条件が自然に出てくる。
平面の線積分と重積分を結ぶ Greenの定理 とは別の定理である(そちらの流束の形は 2 次元の発散定理で、Greenの定理 の命題「流束の形(2 次元の発散定理)」にある)。滑らかな境界をもつ領域での古典的な形は Gaussの発散定理 の系「部分積分と Green の恒等式」にある。この記事では、境界が $C^1$ 級にすぎない有界な領域で発散定理と Green の公式を証明し、次に関数を Sobolev 空間 $H^1(\Omega)$・$H^2(\Omega)$ の元まで広げる。境界の値はトレースとして定め、そのために必要な $L^2$ の評価もこの記事の中で証明する。
$N\ge2$ とし、$x\in\mathbb{R}^N$ を $x=(x',x_N)$($x'\in\mathbb{R}^{N-1}$)と書く。$B(p,r)$ は中心 $p$、半径 $r$ の開球である。関数はすべて実数値とする。
有界な開集合 $\Omega\subset\mathbb{R}^N$ が $C^1$ 級 であるとは、境界 $\Gamma:=\partial\Omega$ の各点 $p$ について、$r>0$ と、$p$ を原点に移す直交座標(平行移動と回転で得られるもの)と、$C^1$ 級の関数 $g\colon\mathbb{R}^{N-1}\to\mathbb{R}$ があって、その座標で
$$
\Omega\cap B(p,r)=\{x\in B(p,r)\mid x_N>g(x')\}
$$
となることをいう。このとき $\Gamma\cap B(p,r)=\{x\in B(p,r)\mid x_N=g(x')\}$ である。
最後の主張は、$\{x_N< g(x')\}\cap B(p,r)$ が $\Omega$ と交わらない開集合であることと、$x_N=g(x')$ の点は上から $\Omega$ の点で近づけることから分かる。境界の局所座標($C^1$ 級の全単射で境界を平面へ写すもの)を使う Bre11 §9.2(p. 272)の定義とこの定義は、陰関数定理 により同値である(この記事では証明しない)。
$\Gamma\cap B(p,r)$ の上では、外向きの単位法線 と 面積測度 $\sigma$ を
$$
n(x',g(x'))=\frac{(\nabla g(x'),-1)}{\sqrt{1+\lvert\nabla g(x')\rvert^2}},\qquad
\int_\Gamma\phi\,d\sigma=\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\phi(y,g(y))\sqrt{1+\lvert\nabla g(y)\rvert^2}\,dy
$$
で与える($\phi$ は台が $\Gamma\cap B(p,r)$ に含まれる連続関数)。一般の $\phi$ は、下の 1の分割 で局所的な部分に分けて足す。$n$ は接空間に直交し $\Omega$ の外を向く単位ベクトルとして座標によらずに決まり、$\sigma$ が座標や分割の取り方によらないことは面積要素の変数変換の公式から従う(この記事では証明しない)。$\Gamma$ はコンパクトなので $\sigma(\Gamma)<\infty$ である。
$\Gamma$ はコンパクトなので、定義の球 $B_j=B(p_j,r_j)$($j=1,\dots,m$)の有限個で覆える。このとき $C^\infty$ 級の関数 $\theta_0,\theta_1,\dots,\theta_m$ で、$0\le\theta_j\le1$、$\mathbb{R}^N$ の上で $\sum_{j=0}^m\theta_j=1$、$j\ge1$ について $\operatorname{supp}\theta_j$ はコンパクトで $B_j$ に含まれ、$\theta_0$ は $\Gamma$ の近傍で $0$ かつ $\theta_0|_\Omega$ の台は $\Omega$ のコンパクトな部分集合であるものがとれる(Bre11 Lemma 9.3、p. 276。1の分割 の定理「滑らかな 1 の分割の存在」)。以下この記号を固定する。
$C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ は、コンパクトな台をもつ $C^1$ 級のベクトル場の全体である。
$p\in\Gamma$、$B=B(p,r)$、$g$ を def-gf-c1 のものとし、$W\in C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ の台が $B$ に含まれるとする。このとき
$$
\int_{\Omega\cap B}\operatorname{div}W\,dx=\int_{\mathbb{R}^{N-1}}W(y,g(y))\cdot(\nabla g(y),-1)\,dy=\int_\Gamma W\cdot n\,d\sigma.
$$
直交座標の取り替えで体積と $\operatorname{div}$ は変わらないので、def-gf-c1 の座標で計算してよい。$W$ は $B$ の外で $0$ なので、左辺は $E:=\{x\in\mathbb{R}^N\mid x_N>g(x')\}$ の上の積分 $\int_E\operatorname{div}W\,dx$ に等しい。
$N$ 番目の成分:各 $y$ について $t\mapsto W_N(y,t)$ はコンパクトな台をもつので、微分積分学の基本定理から $\int_{g(y)}^\infty\partial_NW_N(y,t)\,dt=-W_N(y,g(y))$ である。Fubini の定理で $y$ について積分すると $\int_E\partial_NW_N\,dx=-\int W_N(y,g(y))\,dy$ を得る。
$i\le N-1$ の成分:$\widetilde W_i(y,s):=W_i(y,s+g(y))$ とおく。$\widetilde W_i$ は $C^1$ 級で、台はコンパクトである($(y,s+g(y))$ がコンパクトな台に入るなら $y$ は有界で、$g$ は有界集合の上で有界なので $s$ も有界)。連鎖律から
$$
\partial_{y_i}\widetilde W_i(y,s)=(\partial_iW_i)(y,s+g(y))+(\partial_NW_i)(y,s+g(y))\,\partial_ig(y)=(\partial_iW_i)(y,s+g(y))+\partial_s\widetilde W_i(y,s)\,\partial_ig(y)
$$
である。変数変換 $t=s+g(y)$(各 $y$ ごとの平行移動)と Fubini の定理により
$$
\int_E\partial_iW_i\,dx=\int_0^\infty\!\!\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial_{y_i}\widetilde W_i\,dy\,ds-\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial_ig(y)\int_0^\infty\partial_s\widetilde W_i(y,s)\,ds\,dy.
$$
右辺の第 1 項は、$y_i$ について先に積分するとコンパクトな台により $0$ である。第 2 項の内側の積分は $-\widetilde W_i(y,0)=-W_i(y,g(y))$ なので、$\int_E\partial_iW_i\,dx=\int W_i(y,g(y))\,\partial_ig(y)\,dy$ となる。
$i=1,\dots,N$ について足すと 1 つ目の等号を得る。2 つ目の等号は $n$ と $\sigma$ の定義そのものである($\sqrt{1+\lvert\nabla g\rvert^2}$ が打ち消し合う)。$\square$
$\Omega$ を $C^1$ 級の有界な開集合とする。任意の $V\in C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ について
$$
\int_\Omega\operatorname{div}V\,dx=\int_\Gamma V\cdot n\,d\sigma.
$$
rem-gf-pou の $\theta_j$ をとり、$V_j:=\theta_jV$ とおく。$\sum_j\theta_j=1$ なので $V=\sum_jV_j$ であり、両辺は $V$ について線形だから、各 $V_j$ について示せばよい。$j\ge1$ では $V_j$ の台は $B_j$ に含まれ、lem-gf-graph がそのまま使える。$j=0$ では、$V_0|_\Omega$ の台は $\Omega$ のコンパクトな部分集合なので、$V_0$ を $\Omega$ の外で $0$ に置き換えたものは $C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ に属し、各 $\partial_iV_{0,i}$ を $x_i$ について先に積分すれば $\int_\Omega\operatorname{div}V_0\,dx=0$ である。一方 $\theta_0$ は $\Gamma$ の上で $0$ なので右辺も $0$ である。$\square$
$\Omega$ を $C^1$ 級の有界な開集合、$U$ を $\overline\Omega$ を含む開集合とし、$u\in C^2(U)$、$v\in C^1(U)$ とする。このとき
$$
\int_\Omega(\Delta u)\,v\,dx=\int_\Gamma\frac{\partial u}{\partial n}\,v\,d\sigma-\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v\,dx
$$
が成り立つ。$u,v\in C^2(U)$ なら $\displaystyle\int_\Omega(u\,\Delta v-v\,\Delta u)\,dx=\int_\Gamma\Bigl(u\frac{\partial v}{\partial n}-v\frac{\partial u}{\partial n}\Bigr)d\sigma$ である。
$\overline\Omega$ はコンパクトなので、$\overline\Omega$ の近傍で $1$ となり台が $U$ に含まれる $\zeta\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N)$ がとれる。$V:=\zeta v\nabla u$($U$ の外では $0$)は $C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ に属し、$\overline\Omega$ の近くでは積の微分により $\operatorname{div}V=\nabla v\cdot\nabla u+v\,\Delta u$、$\Gamma$ の上で $V\cdot n=v\,\partial u/\partial n$ である。thm-gf-divergence を $V$ に使えば 1 つ目の式を得る。2 つ目の式は、1 つ目の式で $u$ と $v$ を入れ替えたものとの差をとれば $\nabla u\cdot\nabla v$ の項が消えて得られる。$\square$
Bre11 は Neumann 問題の変分的な扱いの中でこの公式を (46)(p. 296)として用いている。そこでは $u\in C^2(\overline\Omega)$、$v\in C^1(\overline\Omega)$($\Omega$ の中の導関数が $\overline\Omega$ まで連続に延びる関数)としている。
Sobolev 空間 $H^1(\Omega)=W^{1,2}(\Omega)$、$H^2(\Omega)$ とそのノルムは Sobolev空間の基本事項 の定義「Sobolev空間」に従う。$H^1(\Omega)$ の元はほとんど至る所で等しい関数の同値類なので、測度 $0$ の集合 $\Gamma$ の上の値はそのままでは決まらない。そこで $C^1$ 級の関数の制限から連続性で延ばす。
$\Omega$ が $C^1$ 級なら、$\{\varphi|_\Omega\mid\varphi\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N)\}$ は $H^1(\Omega)$ で稠密である。この記事では証明しない(Bre11 Corollary 9.8、p. 277。$1\le p<\infty$ の $W^{1,p}$ について述べられている)。
$\Omega$ を $C^1$ 級の有界な開集合とする。定数 $C$ があり、すべての $\varphi\in C^1_c(\mathbb{R}^N)$ について
$$
\int_\Gamma\varphi^2\,d\sigma\le C\,\|\varphi\|_{H^1(\Omega)}^2.
$$
$j=1,\dots,m$ について、$\varepsilon_j$ を球 $B_j$ に付随する座標の $x_N$ 軸の単位ベクトルとし、
$$
X:=-\sum_{j=1}^m\theta_j\,\varepsilon_j\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)
$$
とおく。$\Gamma\cap B_j$ の点では、$j$ 番目の座標で $n=(\nabla g_j,-1)/\sqrt{1+\lvert\nabla g_j\rvert^2}$ なので $-\varepsilon_j\cdot n=1/\sqrt{1+\lvert\nabla g_j\rvert^2}$ である。$\operatorname{supp}\theta_j\cap\Gamma$ はコンパクトなので、その上で $\lvert\nabla g_j\rvert\le M_j$ となる $M_j$ がある。$\Gamma$ の上では $\theta_0=0$、$\sum_{j\ge1}\theta_j=1$、$\theta_j\ge0$ なので
$$
X\cdot n\ge c:=\min_j\frac1{\sqrt{1+M_j^2}}>0\qquad(\Gamma\text{ の上}).
$$
$\varphi^2X\in C^1_c(\mathbb{R}^N;\mathbb{R}^N)$ に thm-gf-divergence を使うと、$\operatorname{div}(\varphi^2X)=\varphi^2\operatorname{div}X+2\varphi\nabla\varphi\cdot X$ なので、$K:=\sup\lvert\operatorname{div}X\rvert+\sup\lvert X\rvert$ とおけば
$$
c\int_\Gamma\varphi^2\,d\sigma\le\int_\Gamma\varphi^2X\cdot n\,d\sigma=\int_\Omega\bigl(\varphi^2\operatorname{div}X+2\varphi\nabla\varphi\cdot X\bigr)dx\le K\bigl(\|\varphi\|_{L^2}^2+2\|\varphi\|_{L^2}\|\nabla\varphi\|_{L^2}\bigr)\le2K\|\varphi\|_{H^1(\Omega)}^2
$$
である(Cauchy–Schwarz の不等式と $2ab\le a^2+b^2$)。$C=2K/c$ とすればよい。$\square$
$\Omega$ を $C^1$ 級の有界な開集合とする。有界線形作用素 $\gamma\colon H^1(\Omega)\to L^2(\Gamma,\sigma)$ で、すべての $\varphi\in C^1_c(\mathbb{R}^N)$ について $\gamma(\varphi|_\Omega)=\varphi|_\Gamma$ となるものがただ 1 つある。
$\mathcal{D}:=\{\varphi|_\Omega\mid\varphi\in C^1_c(\mathbb{R}^N)\}$ の上で $\varphi|_\Omega\mapsto\varphi|_\Gamma$ は矛盾なく定まる($\Gamma\subset\overline\Omega$ の上の値は連続性により $\Omega$ の上の値で決まる)。lem-gf-trace-estimate によりこれは有界で、$\mathcal{D}$ は $C^\infty_c$ の制限を含むので rem-gf-density により稠密である。$L^2(\Gamma,\sigma)$ は完備なので、有界作用素は $H^1(\Omega)$ 全体へただ 1 通りに連続に延びる。$\square$
$\gamma u$ を $u$ の トレース(境界値)という。半空間での同じ構成と、核が零境界値 Sobolev 空間 $H^1_0(\Omega)$ であること、像が $H^{1/2}$ になることは トレース作用素 にある。
$\Gamma$ の上の連続関数 $n_i$ は有界なので、$\phi,\psi\in L^2(\Gamma,\sigma)$ について $\phi\psi n_i$ は可積分である。
$\Omega$ を $C^1$ 級の有界な開集合とする。
1:まず $u=\varphi|_\Omega$、$v=\psi|_\Omega$($\varphi,\psi\in C^1_c(\mathbb{R}^N)$)とする。$V:=\varphi\psi\,e_i$ は $C^1_c$ のベクトル場で、$\operatorname{div}V=\partial_i\varphi\,\psi+\varphi\,\partial_i\psi$、$V\cdot n=\varphi\psi\,n_i$ なので、thm-gf-divergence から 1 の式を得る。
一般の $u,v$ には、rem-gf-density により $u_k\to u$、$v_k\to v$($H^1(\Omega)$ で)となる上の形の列をとる。内部の項は、Cauchy–Schwarz の不等式から
$$
\Bigl\lvert\int_\Omega(\partial_iu_k\,v_k-\partial_iu\,v)\,dx\Bigr\rvert\le\|\partial_iu_k-\partial_iu\|_{L^2}\|v_k\|_{L^2}+\|\partial_iu\|_{L^2}\|v_k-v\|_{L^2}\to0
$$
であり(収束列なので $\|v_k\|_{L^2}$ は有界)、もう一方の内部の項も同じである。境界の項は、thm-gf-trace により $\gamma u_k\to\gamma u$、$\gamma v_k\to\gamma v$($L^2(\Gamma)$ で)なので、$\lvert n_i\rvert\le1$ と同じ分け方で $\int_\Gamma\gamma u_k\,\gamma v_k\,n_i\,d\sigma\to\int_\Gamma\gamma u\,\gamma v\,n_i\,d\sigma$ である。極限をとって 1 を得る。
2:$u\in H^2(\Omega)$ なら $w_i:=\partial u/\partial x_i\in H^1(\Omega)$ で、$\partial w_i/\partial x_i=\partial^2u/\partial x_i^2$ である。1 を $(w_i,v)$ に使い、$i$ について足すと
$$
\int_\Omega(\Delta u)\,v\,dx=-\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla v\,dx+\int_\Gamma\sum_in_i\,\gamma w_i\,\gamma v\,d\sigma
$$
となり、最後の被積分関数は $\frac{\partial u}{\partial n}\gamma v$ である。$\lvert n\rvert=1$ と Cauchy–Schwarz の不等式から $\bigl\lvert\frac{\partial u}{\partial n}\bigr\rvert^2\le\sum_i(\gamma w_i)^2$ なので、$\frac{\partial u}{\partial n}\in L^2(\Gamma,\sigma)$ である。$\square$
$u\in C^2(U)$、$v\in C^1(U)$($U\supset\overline\Omega$ は開集合)なら、$\overline\Omega$ の近傍で $1$ となる切り落とし関数を掛ければ $\gamma v=v|_\Gamma$、$\gamma(\partial_iu)=\partial_iu|_\Gamma$ となり、2 の $\partial u/\partial n$ は $\nabla u\cdot n$ に一致する。したがって thm-gf-sobolev は thm-gf-classical を含む。1 の形は Bre11 の第 9 章の注釈 §7(pp. 315–316)に主張として述べられている。2 の形では、$H^2(\Omega)$ の滑らかな関数による近似を使わず、1 を 1 階の導関数に当てはめるだけで済んでいる。
$\Omega=B(0,1)$、$u=\lvert x\rvert^2/2$、$v=1$ とする。$\Delta u=N$、単位球面の上で $n=x$、$\partial u/\partial n=x\cdot x=1$、$\nabla v=0$ なので、thm-gf-classical は $N\,\lvert B(0,1)\rvert=\sigma(S^{N-1})$ となる。これは Gaussの発散定理 の系「体積と境界の面積」の $r=1$ の場合である。$v=1$ は $H^1_0(\Omega)$ に属さないので、境界の項は落とせない。
$f\in L^2(\Omega)$ とし、$u\in H^2(\Omega)$ がすべての $v\in H^1(\Omega)$ について $\int_\Omega(\nabla u\cdot\nabla v+uv)\,dx=\int_\Omega fv\,dx$ をみたすとする。$v\in C^\infty_c(\Omega)$ に限ると thm-gf-sobolev の 2 の境界の項は消え、$-\Delta u+u=f$(ほとんど至る所)を得る。これを使うと残るのは $\int_\Gamma\frac{\partial u}{\partial n}\gamma v\,d\sigma=0$($v\in H^1(\Omega)$)である。$v=\varphi|_\Omega$($\varphi\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N)$)にとると $\gamma v=\varphi|_\Gamma$ なので、ex-gf-boundary-zero により $\frac{\partial u}{\partial n}=0$($\sigma$ についてほとんど至る所)が従う。試験関数を $H^1(\Omega)$ 全体にとるだけで、法線微分が $0$ という境界条件が式に現れる。これが Neumann問題 の弱い定式化である。
$b\in L^2(\Gamma,\sigma)$ がすべての $\varphi\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N)$ について $\int_\Gamma b\,\varphi\,d\sigma=0$ をみたせば、$b=0$($\sigma$ についてほとんど至る所)である。
$j\ge1$ を固定し、$B_j$ の座標で $\eta\in C^\infty_c(\mathbb{R}^{N-1})$ をとって $\varphi(y,t):=\theta_j(y,t)\eta(y)$ とおく($\theta_j$ の台がコンパクトなので $\varphi\in C^\infty_c(\mathbb{R}^N)$)。$\int_\Gamma b\varphi\,d\sigma=\int b(y,g_j(y))\theta_j(y,g_j(y))\sqrt{1+\lvert\nabla g_j\rvert^2}\,\eta(y)\,dy=0$ がすべての $\eta$ について成り立つので、局所可積分関数 $y\mapsto b\,\theta_j\sqrt{1+\lvert\nabla g_j\rvert^2}$ はほとんど至る所 $0$ である($b\in L^2(\Gamma,\sigma)\subset L^1(\Gamma,\sigma)$ なのでこの関数は可積分で、$C^\infty_c$ の関数との積分がすべて $0$ の局所可積分関数は $0$)。すなわち $\Gamma$ の上で $\theta_jb=0$($\sigma$ についてほとんど至る所)である。$\Gamma$ の上では $\theta_0=0$ なので、$j\ge1$ について足せば $b=\sum_{j\ge1}\theta_jb=0$ を得る。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 境界が $C^1$ 級であること | $\Omega=\{0< x_1<1,\ 0< x_2< x_1^3\}\subset\mathbb{R}^2$(原点が尖点) | lem-gf-trace-estimate の評価が成り立たず、$H^1(\Omega)$ から $L^2(\Gamma)$ への有界なトレースがない |
| $u$ の弱微分が $L^2$ に入ること($u\in H^1$) | $\Omega=B(0,1)\subset\mathbb{R}^2$、$u$ は $x_1>0$ で $1$、$x_1<0$ で $0$、$v=1$、$i=1$ | ほとんど至る所の偏微分 $\partial_1u=0$ を左辺に使うと左辺は $0$、右辺は $2$ |
1 行目では、$x_1^{-3/4}$ を切り詰めた滑らかな関数の $H^1(\Omega)$ ノルムが有界なまま、境界の下の辺の上の $L^2$ ノルムが発散する。2 行目では、境界の項だけが残って $2$ になる。
1 行目:$u:=x_1^{-3/4}$ とおく。$\int_\Omega u^2\,dx=\int_0^1x_1^{-3/2}x_1^3\,dx_1<\infty$、$\lvert\nabla u\rvert^2=\frac9{16}x_1^{-7/2}$ で $\int_\Omega\lvert\nabla u\rvert^2\,dx=\frac9{16}\int_0^1x_1^{-1/2}\,dx_1<\infty$ なので、$u\in H^1(\Omega)$ である。$M>1$ について、$C^\infty$ 級の関数 $h_M$ で、$s\le M$ では $h_M(s)=s$、$s\ge M+2$ では定数、$0\le h_M'\le1$ となるものをとる。$w_M(x):=h_M(x_1^{-3/4})$ は $x_1\le(M+2)^{-4/3}$ で定数なので $\mathbb{R}^2$ の $C^\infty$ 級の関数に延び、$\overline\Omega$ の近傍で $1$ となる切り落とし関数を掛ければ $C^\infty_c(\mathbb{R}^2)$ の関数になる。$\Omega$ の上で $0\le w_M\le u$、$\lvert\nabla w_M\rvert\le\lvert\nabla u\rvert$ なので $\|w_M\|_{H^1(\Omega)}\le\|u\|_{H^1(\Omega)}$ だが、境界の下の辺 $\{x_2=0\}$ の上の積分は$$\int_\Gamma w_M^2\,d\sigma\ge\int_{M^{-4/3}}^1x_1^{-3/2}\,dx_1=2\bigl(M^{2/3}-1\bigr)\to\infty\qquad(M\to\infty)$$であり、lem-gf-trace-estimate の形の評価はどんな定数でも成り立たない。この $\Omega$ は有界な開集合だが、原点(と右端の 2 つの角)で def-gf-c1 の条件をみたさない。評価が壊れる原因は、$w_M$ の値が大きくなる原点の尖点である。
2 行目:$u$ は線分 $x_1=0$ を除いて局所的に定数なので、ほとんど至る所 $\partial_1u=0$ であり、左辺は $0$ である。右辺は $\partial_1v=0$ なので境界の項だけが残る。単位円周の上で $n=x$ なので $n_1=\cos\vartheta$($x=(\cos\vartheta,\sin\vartheta)$)であり、$u$ は $\lvert\vartheta\rvert<\pi/2$ で $1$、$\pi/2<\vartheta<3\pi/2$ で $0$ だから、境界の項は $\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos\vartheta\,d\vartheta=2$ である($u$ は 2 点 $(0,\pm1)$ を除いて円周の近くで連続なので、境界の値はそのまま使った)。$u$ の弱微分 $\partial_1u$ は存在せず(Sobolev空間の基本事項 の例「反例:跳躍関数」と同じ理由)、$u\notin H^1(\Omega)$ である。円板は $C^1$ 級の有界な開集合で、外れている条件は $u\in H^1$ だけである。
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