準楕円性

同義語:hypoellipticity準楕円型作用素hypoelliptic operator

概要

準楕円性(hypoellipticity)とは、$C^\infty$ 級の係数をもつ線形微分作用素 $P$ について、開集合の上の超関数 $u$ に対し $Pu$ が滑らかなら $u$ も滑らかになるという性質であり、解の特異台が右辺の特異台に含まれることと言い換えられ、楕円型の作用素は準楕円型である。定数係数の作用素が準楕円型であることは、原点の外で滑らかな基本解をもつことと同値であり、これから楕円型でない熱作用素 $\partial_t-\Delta_x$ も準楕円型だと分かり、波動作用素はそうでない。準楕円性は滑らかさが局所的に決まることを述べるが、解の値や境界までの振る舞いは決めない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 超関数, 超関数の畳み込み, 基本解, 楕円正則性

超関数の意味で $\Delta u=0$ を満たす $u$ は滑らかな調和関数である(Weylの補題)。より一般に、$\Delta u$ がある開集合の上で滑らかなら、$u$ もその上で滑らかになる。微分作用素 $P$ のこの性質、すなわち「$Pu$ が滑らかな所では $u$ も滑らか」を 準楕円性(hypoellipticity)という。名前のとおり、楕円型の作用素は準楕円型である(楕円正則性)。しかし逆は成り立たず、熱作用素 $\partial_t-\Delta_x$ は楕円型でないのに準楕円型である。一方、波動作用素は準楕円型でない。
この記事では準楕円性を定義し、定数係数の作用素については「原点の外で滑らかな基本解をもつこと」と同値であることを、超関数の畳み込みを使って証明する。これを熱作用素に当てはめ、熱方程式の超関数解が滑らかであることを導く。最後に、Dirichlet 問題の解について、値は領域全体の右辺に依存するのに、滑らかさは局所的に決まること、および準楕円性が与えるのは内部の滑らかさだけであることを例で確かめる。

定義

$\Omega\subset\mathbb R^n$ を開集合とし、$P=\sum_{|\alpha|\le m}a_\alpha(x)\partial^\alpha$ を $\Omega$ 上の $C^\infty$ 級の複素数値係数をもつ線形微分作用素とする。$P$ は、開集合 $U\subset\Omega$ 上の超関数 $u\in\mathcal D'(U)$ に、超関数の微分と滑らかな関数との積(超関数 の定義「超関数微分」「滑らかな関数と超関数の積」)によって作用する。$u\in\mathcal D'(U)$ が開集合 $V\subset U$ の上で $C^\infty$ 級 であるとは、ある $f\in C^\infty(V)$ について制限 $u|_V$ が $f$ の正則超関数に等しいことをいう。
$u$ が $C^\infty$ 級になる開集合をすべて合わせた和集合の上でも $u$ は $C^\infty$ 級である。実際、2 つの開集合の上の滑らかな関数は、重なりの上でほとんど至る所等しく連続なので、至る所等しい。よって 1 つの滑らかな関数 $f$ に貼り合わさり、1 の分割で $\langle u,\varphi\rangle=\int f\varphi$ を確かめられる。そこで、$u$ が $C^\infty$ 級になる最大の開集合の補集合を $u$ の 特異台(singular support)といい、$\operatorname{sing\,supp}u$ と書く。

準楕円性

$P$ が $\Omega$ 上で 準楕円型(hypoelliptic)であるとは、すべての開集合 $U\subset\Omega$ とすべての $u\in\mathcal D'(U)$ について、$Pu$ が $U$ 上で $C^\infty$ 級なら $u$ も $U$ 上で $C^\infty$ 級であることをいう。

$P(u|_V)=(Pu)|_V$ なので、$P$ が準楕円型であることは、すべての開集合 $U\subset\Omega$ と $u\in\mathcal D'(U)$ について
$$ \operatorname{sing\,supp}u\subset\operatorname{sing\,supp}Pu $$
が成り立つことと同値である。微分作用素は滑らかな関数を滑らかな関数に写すので、逆の包含 $\operatorname{sing\,supp}Pu\subset\operatorname{sing\,supp}u$ はいつも成り立つ。したがって準楕円型の作用素では両者が等しく、解の特異性は右辺の特異性の所にしか現れない。
Bre11 Remark 25(pp. 306–307)は、方程式 $-\Delta u+u=f$ の弱解について「$u|_\omega$ の滑らかさが $f|_\omega$ の滑らかさだけで決まる」というこの性質を hypoellipticity と呼んでいる。
楕円型の作用素. 定数係数の楕円型作用素は準楕円型である(楕円正則性 の系「定数係数の楕円型作用素の解の $C^\infty$ 正則性」)。$C^\infty$ 級の係数の楕円型作用素も準楕円型である(同記事の定理「滑らかな係数の楕円型作用素の内部正則性」。同記事では証明していない)。

定数係数の作用素と基本解

この節では $P(\partial)=\sum_{|\alpha|\le m}a_\alpha\partial^\alpha$($a_\alpha\in\mathbb C$ は定数、$P\ne0$)とし、$\mathbb R^n$ 上で考える。$P(\partial)E=\delta$ を満たす $E\in\mathcal D'(\mathbb R^n)$ を 基本解 という(基本解 の定義「基本解」)。

基本解による特徴づけ

定数係数の作用素 $P(\partial)\ne0$ について、次の 3 つは同値である。

  1. $P(\partial)$ は $\mathbb R^n$ 上で準楕円型である。
  2. $P(\partial)$ の基本解 $E$ で、$\mathbb R^n\setminus\{0\}$ の上で $C^\infty$ 級のものがある。
  3. $P(\partial)$ のすべての基本解は $\mathbb R^n\setminus\{0\}$ の上で $C^\infty$ 級である。

1 ⇒ 3. $E$ を基本解とし、$U:=\mathbb R^n\setminus\{0\}$ とする。$U$ の上で $P(\partial)E=\delta$ は $0$ であり、$0$ は $C^\infty$ 級なので、1 により $E$ は $U$ 上で $C^\infty$ 級である。
3 ⇒ 2. 基本解 の定理「Malgrange–Ehrenpreisの定理」により基本解が存在し、3 によりそれは $\mathbb R^n\setminus\{0\}$ の上で $C^\infty$ 級である。
2 ⇒ 1. $U\subset\mathbb R^n$ を開集合、$u\in\mathcal D'(U)$ とし、$f:=P(\partial)u$ が $U$ 上で $C^\infty$ 級であるとする。$x_0\in U$ を固定し、$r>0$ を閉球 $\overline B(x_0,4r)$ が $U$ に含まれるようにとる。以下、$u$ が $B(x_0,r)$ の上で $C^\infty$ 級であることを示す。$x_0$ は任意なので、これで $u\in C^\infty(U)$ が分かる。
段 1(切り落とし).$\chi\in C_c^\infty(B(x_0,3r))$ を $B(x_0,2r)$ の上で $1$ となるようにとる。$\varphi\in\mathcal D(\mathbb R^n)$ について $\chi\varphi\in\mathcal D(U)$ なので、$\langle v,\varphi\rangle:=\langle u,\chi\varphi\rangle$ により台がコンパクトな超関数 $v\in\mathcal D'(\mathbb R^n)$ が定まる($\chi u$ を $U$ の外へ $0$ で延ばしたもの)。$\chi f\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ であり、
$$ w:=P(\partial)v-\chi f $$
とおく。$B(x_0,2r)$ の上では $v=u$ なので $P(\partial)v=f=\chi f$ であり、$\overline B(x_0,3r)$ の外では $v=0$、$\chi f=0$ である。よって $w$ の台は円環 $A:=\{x\mid 2r\le|x-x_0|\le3r\}$ に含まれる。
段 2(基本解との畳み込み).$v$ の台はコンパクトなので、超関数の畳み込み の定理「畳み込みと微分」の 1・2 により
$$ v=\delta*v=\bigl(P(\partial)E\bigr)*v=E*\bigl(P(\partial)v\bigr)=E*(\chi f)+E*w $$
である。
段 3(基本解の分割).$\rho\in C_c^\infty(B(0,r))$ を原点の近傍で $1$ となるようにとり、$E=\rho E+g$、$g:=(1-\rho)E$ と分ける。$1-\rho$ は原点の近傍で $0$ なので、2 により $g$ は $\mathbb R^n$ 上の $C^\infty$ 級関数である。さらに $\zeta\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ を $B(0,5r)$ の上で $1$ となるようにとり、
$$ v=E*(\chi f)+(\rho E)*w+(\zeta g)*w+\bigl((1-\zeta)g\bigr)*w $$
と書く。右辺の各項を $B(x_0,r)$ の上で調べる。

  • $E*(\chi f)$ と $(\zeta g)*w$ は、超関数とテスト関数の畳み込みなので、$C^\infty$ 級関数である(同記事の定理「関数の畳み込みとの整合」と命題「テスト関数との畳み込みの滑らかさ」)。
  • $(\rho E)*w$ の台は $\operatorname{supp}\rho+A$ に含まれる(同記事の定理「畳み込みの基本性質」の 2)。$|b|< r$、$|a-x_0|\ge2r$ なら $|a+b-x_0|>r$ なので、この項は $B(x_0,r)$ の上で $0$ である。
  • $\bigl((1-\zeta)g\bigr)*w$ の台は $\{|b|\ge5r\}+A$ に含まれ、その点 $z$ は $|z-x_0|\ge5r-3r=2r$ を満たすので、この項も $B(x_0,r)$ の上で $0$ である。
    よって $v$ は $B(x_0,r)$ の上で $C^\infty$ 級であり、そこで $v=u$ なので $u$ も $C^\infty$ 級である。$\square$

証明の要点は、基本解の特異性が原点だけにあるので、$v=E*P(\partial)v$ のうち $P(\partial)v$ の滑らかでない部分 $w$ から来る項が、$w$ の台から離れた所では滑らかになることである。楕円型の作用素に対する同じ論法は Kna16a Corollary 7.17・7.18(pp. 303–305)にあり、そこでは基本解の代わりに台がコンパクトなパラメトリクス($P(\partial)k_0=\delta+h_1$、$h_1$ は滑らか)が使われている。
波動作用素. $\mathbb R^2$ 上の $\partial_t^2-\partial_x^2$ は準楕円型でない。$u(t,x)=H(x-t)$($H$ は Heaviside 関数)は超関数の意味で $(\partial_t^2-\partial_x^2)u=0$ を満たすが、直線 $x=t$ の上で跳ぶ(楕円正則性 の例「反例:波動作用素の不連続な解」)。したがって thm-hyp-fundamental により、波動作用素のどの基本解も、原点の外のどこかで滑らかでない。$\mathbb R^2$ 上の $\partial_x$ も、$u(x,y)=H(y)$ が $\partial_xu=0$ を満たすので準楕円型でない(同記事の例「反例:$\partial_x$ の解」)。

熱作用素

$\mathbb R^{1+n}$ の点を $(t,x)$($t\in\mathbb R$、$x\in\mathbb R^n$)と書き、熱作用素 $P=\partial_t-\Delta_x$ を考える。$P$ の 2 次の部分 $-\sum_{i=1}^n\xi_i^2$ は $(\tau,\xi)=(1,0)$ で $0$ になるので、$P$ は楕円型でない(Kna16a p. 288 も、熱作用素と波動作用素が楕円型でないことを述べている)。

熱作用素の基本解

$$ E(t,x):=\begin{cases}(4\pi t)^{-n/2}\,e^{-|x|^2/(4t)}&(t>0)\\0&(t\le0)\end{cases} $$
とおく。$E$ は $\mathbb R^{1+n}$ 上で局所可積分で、$\mathbb R^{1+n}\setminus\{0\}$ の上で $C^\infty$ 級であり、超関数の意味で $(\partial_t-\Delta_x)E=\delta$ を満たす。

段 1(可積分性と方程式).$t>0$ について Gauss 積分から $\int_{\mathbb R^n}E(t,x)\,dx=1$ なので、$\int_{-T}^T\int|E|\,dx\,dt=T$ であり、$E$ は局所可積分である。$t>0$ では直接の計算で
$$ \partial_tE=\Bigl(-\frac{n}{2t}+\frac{|x|^2}{4t^2}\Bigr)E,\qquad\partial_{x_i}^2E=\Bigl(-\frac{1}{2t}+\frac{x_i^2}{4t^2}\Bigr)E $$
なので、$\partial_tE=\Delta_xE$ である。
段 2(原点の外での滑らかさ).$t\ne0$ では明らかなので、$t=0$、$x_0\ne0$ の点の近傍 $W:=\{(t,x)\mid|x|>|x_0|/2\}$ を調べる。帰納法により、$t>0$ での $E$ の各偏導関数は $c\,t^{-\ell}x^\gamma e^{-|x|^2/(4t)}$($\ell\ge0$、$\gamma$ は多重指数)の形の項の有限和であり、$W$ の有界部分の上では $t\to+0$ で一様に $0$ に収束する($e^{-|x_0|^2/(16t)}$ が $t$ のどの負べきよりも速く $0$ に近づく)。よって各偏導関数は $W$ 上の連続関数($t\le0$ では $0$)に延びる。これから $E$ が $W$ 上で $C^\infty$ 級であることが従う。

この最後の段を開く

連続関数 $h$ が $W\cap\{t\le0\}$ で $0$、$W\cap\{t\ne0\}$ で $C^1$ 級で、その偏導関数がすべて $W$ 上の連続関数($t\le0$ では $0$)に延びるとする。$x$ 方向の偏導関数は、$t=0$ の上でも $h$ が $x$ について $C^1$ 級であることから($t=0$ の上で $h=0$)、延長した値 $0$ と一致する。$t$ 方向は、1 変数の関数 $s\mapsto h(s,x)$ に平均値の定理を当てると、$\frac{h(s,x)-h(0,x)}{s}=\partial_th(\theta s,x)$($0<\theta<1$)が $s\to0$ で延長した値 $0$ に収束するので、$t=0$ でも微分可能で偏導関数は連続である。よって $h\in C^1(W)$ である。これを $h=E$ とその各偏導関数に順に当てれば、$E\in C^\infty(W)$ となる。


段 3(基本解であること).$\varphi\in\mathcal D(\mathbb R^{1+n})$ とする。$P$ の転置作用素は $-\partial_t-\Delta_x$ なので、優収束定理により
$$ \langle PE,\varphi\rangle=\int_{t>0}E\,(-\partial_t\varphi-\Delta_x\varphi)\,dx\,dt=\lim_{\varepsilon\to+0}\int_{t>\varepsilon}E\,(-\partial_t\varphi-\Delta_x\varphi)\,dx\,dt $$
である。$t>\varepsilon$ では $E$ は滑らかで、$x$ について急減少なので、$x$ について 2 回、$t$ について 1 回部分積分すると、段 1 の $\partial_tE=\Delta_xE$ により
$$ \int_{t>\varepsilon}E\,(-\partial_t\varphi-\Delta_x\varphi)\,dx\,dt=\int_{\mathbb R^n}E(\varepsilon,x)\varphi(\varepsilon,x)\,dx $$
となる。$|\varphi(\varepsilon,x)-\varphi(0,x)|\le\varepsilon\sup|\partial_t\varphi|$ と $\int E(\varepsilon,x)\,dx=1$ から、右辺と $\int E(\varepsilon,x)\varphi(0,x)\,dx$ の差は $0$ に収束する。変数変換 $x=\sqrt\varepsilon\,y$ により
$$ \int_{\mathbb R^n}E(\varepsilon,x)\varphi(0,x)\,dx=(4\pi)^{-n/2}\int_{\mathbb R^n}e^{-|y|^2/4}\varphi(0,\sqrt\varepsilon\,y)\,dy\longrightarrow\varphi(0,0) $$
である(優収束定理)。よって $\langle PE,\varphi\rangle=\varphi(0,0)=\langle\delta,\varphi\rangle$ である。$\square$

熱作用素の準楕円性

熱作用素 $\partial_t-\Delta_x$ は $\mathbb R^{1+n}$ 上で準楕円型である。とくに、開集合 $U\subset\mathbb R^{1+n}$ 上の超関数 $u$ が超関数の意味で熱方程式 $\partial_tu=\Delta_xu$ を満たせば、$u$ は $U$ 上の $C^\infty$ 級関数である。

prop-hyp-heat-kernel の $E$ は thm-hyp-fundamental の 2 を満たすので、同定理の 1 が成り立つ。$\square$

熱作用素は楕円型でないので、楕円正則性 の定理「定数係数の楕円型作用素の内部正則性」はそのままでは当てはまらない。それでも thm-hyp-fundamental により、解の滑らかさは右辺の滑らかさから従う。こうして、準楕円性は楕円性より真に弱い性質である。

値の非局所性と滑らかさの局所性

準楕円性は「どれだけ滑らかか」が局所的に決まることを述べるもので、解の値が局所的に決まることは述べない。次の例は Bre11 Remark 25(p. 307)の指摘を具体的に確かめたものである。

右辺が $0$ の区間の上の解

$\Omega=(-2,2)$、$\omega=(-1/2,1/2)$ とし、$f\in C_c^\infty((1,3/2))$ を $f\ge0$、$f\ne0$ とする。Dirichlet 問題 $-u''+u=f$、$u(\pm2)=0$ の $H^1_0(\Omega)$ の弱解 $u$ は
$$ u(x)=c\,\sinh(x+2)\quad(x\le1),\qquad c:=\frac{1}{\sinh4}\int_{-2}^2\sinh(2-y)f(y)\,dy>0 $$
を満たす。とくに $\omega$ の上で $u$ は滑らかで正である。一方、右辺が $f=0$ なら解は $u=0$ である。2 つの右辺は $\omega$ の上でともに $0$ だが、$\omega$ の上の解の値は異なる。

要点:Green 関数による表示を微分して方程式を確かめ、$f$ の台の左側でその表示を読む。

詳しい証明を開く

$a(x):=\int_{-2}^x\sinh(y+2)f(y)\,dy$、$b(x):=\int_x^2\sinh(2-y)f(y)\,dy$ とし、$u(x):=\bigl(\sinh(2-x)a(x)+\sinh(x+2)b(x)\bigr)/\sinh4$ とおく。$a(-2)=b(2)=0$ なので $u(\pm2)=0$ である。微分すると $f$ を含む項が打ち消し合って $u'=\bigl(-\cosh(2-x)a+\cosh(x+2)b\bigr)/\sinh4$ となり、もう一度微分すると$$u''=u-\frac{f(x)}{\sinh4}\bigl(\cosh(2-x)\sinh(x+2)+\cosh(x+2)\sinh(2-x)\bigr)=u-f$$である(加法定理で括弧の中は $\sinh4$)。$u\in C^2([-2,2])$ で両端で $0$ なので $u\in H^1_0(\Omega)$ であり(零境界Sobolev空間 の定理「境界で $0$ になる連続関数」)、部分積分から弱い意味の方程式 $\int(u'\varphi'+u\varphi)=\int f\varphi$($\varphi\in H^1_0(\Omega)$)を満たす。弱解はただ 1 つである(2 つの弱解の差 $z$ は $\varphi=z$ として $\int(z'^2+z^2)=0$)。$x\le1$ では $f$ の台の左なので $a(x)=0$、$b(x)=\int_{-2}^2\sinh(2-y)f(y)\,dy$ であり、表示を得る。$\sinh(2-y)>0$($y< 2$)と $f\ge0$、$f\ne0$ から $c>0$ である。$f=0$ なら同じ一意性から $u=0$ である。$\square$

$\omega$ の上の滑らかさは、$-d^2/dx^2+1$ が楕円型で準楕円型であることから、$f|_\omega$ が滑らかであるだけで分かる。しかし値は $\omega$ の外の $f$ に依存する。

準楕円性が与えるのは内部の滑らかさ

準楕円性は開集合の中での性質であり、境界までの振る舞いについては何も言わない。境界条件を課さなければ、領域と右辺がどれほど滑らかでも、解は閉包の上で連続とは限らない(Bre11 Remark 25 の脚注 33、p. 306)。

境界で連続でない調和関数

$\mathbb R^2$ の単位円板 $D$ の上で、極座標 $(r,\theta)$ により
$$ u(r,\theta):=\sum_{k=2}^\infty\frac{r^k\cos k\theta}{k\log k} $$
とおく。$u\in H^1(D)$ で、$D$ の上で $C^\infty$ 級かつ $\Delta u=0$ であるが、$u(r,0)\to\infty$($r\to1-0$)であり、$u$ は $\overline D$ の上の連続関数に延びない。

要点:各項は調和多項式 $\operatorname{Re}z^k$ の定数倍で、勾配が互いに $L^2$ 直交することから $H^1$ での収束が分かる。

詳しい証明を開く

$z=re^{i\theta}$ とすると $r^k\cos k\theta=\operatorname{Re}z^k=:\psi_k$ は調和多項式である。$|z|\le r_0<1$ の上では級数の項別の各階導関数が幾何級数で押さえられて一様収束するので、$u$ は $D$ の上で $C^\infty$ 級で $\Delta u=0$ である。$\nabla\psi_k$ を複素数とみなすと $\overline{kz^{k-1}}$ なので、$\nabla\psi_k\cdot\nabla\psi_l=\operatorname{Re}\bigl(kl\,\overline z^{k-1}z^{l-1}\bigr)=kl\,r^{k+l-2}\cos((l-k)\theta)$ であり、$\theta$ で積分すると $k\ne l$ なら $0$、$k=l$ なら $\int_D|\nabla\psi_k|^2=\pi k$ である。同様に $\psi_k$ どうしも $L^2(D)$ で直交し、$\int_D\psi_k^2=\pi/(2k+2)$ である。よって部分和の $H^1$ ノルムの 2 乗は $\sum_k\frac{\pi k+\pi/(2k+2)}{k^2\log^2k}$ の部分和で押さえられ、$\sum_k\frac{1}{k\log^2k}<\infty$ から部分和は $H^1(D)$ の Cauchy 列である。その $L^2$ 極限は各点の極限 $u$ と一致するので $u\in H^1(D)$ である。$\theta=0$ では各項が正なので、単調収束定理により $r\to1-0$ で $u(r,0)\to\sum_k\frac{1}{k\log k}=\infty$ である。$\square$

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
原点の外で滑らかな基本解をもつこと(thm-hyp-fundamental の 2)波動作用素、$u=H(x-t)$$Pu=0$ の超関数解が滑らか
開集合の内部で考えること単位円板の $u$(ex-hyp-boundary)閉包の上で連続
係数の滑らかさ跳ぶ係数 $a$ の $(a\,u')'$(楕円正則性 の例「反例:跳ぶ係数の作用素」)$Pu=0$ の解が $C^1$ 級

関連項目

参考文献

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