Gelfand–Naimarkの定理(Gelfand–Naimark theorem)とは、任意の単位的 $C^*$-環が、ある Hilbert 空間 $H$ 上の有界作用素の環 $B(H)$ の、恒等作用素を含むノルム閉な $*$-部分環と等長 $*$-同型になるという定理であり、単位的な可換 $C^*$-環が連続関数の環 $C(X)$ と等長 $*$-同型になるという可換の場合の定理もこの名で呼ばれる。証明の要は、どの元 $a$ についても $a^*a$ のスペクトルが $[0,\infty)$ に入ることで、これから $\omega(a^*a)=\|a\|^2$ となる状態が作れる。状態ごとの GNS 表現の直和が等長な表現を与えるので、$C^*$-環の公理は作用素の環の性質をちょうど言い当てている。
前提知識: Banach環とC*-環のスペクトル理論, GNS構成, Hahn–Banachの定理
Gelfand–Naimark の定理と呼ばれる結果は 2 つある。1 つは、単位的な可換 $C^*$-環がコンパクト Hausdorff 空間上の連続関数の環 $C(X)$ と等長 $*$-同型になるという可換の場合の定理である。もう 1 つは、可換とは限らない任意の単位的 $C^*$-環が、ある Hilbert 空間上の有界作用素の環 $B(H)$ のノルム閉な $*$-部分環と等長 $*$-同型になるという定理で、非可換の Gelfand–Naimark の定理とも呼ばれる。前者は「可換な $C^*$-環は関数の環である」こと、後者は「$C^*$-環は作用素の環である」ことを述べ、$C^*$-環の公理(とくに $C^*$-恒等式 $\|a^*a\|=\|a\|^2$)が、作用素の環の性質をちょうど言い当てていることを示す。
可換の場合の証明は Banach環とC*-環のスペクトル理論 の定理「可換Gelfand--Naimark定理」にある。この記事では非可換の場合を主に扱い、その証明の要になる「どの元 $a$ についても $a^*a$ のスペクトルは $[0,\infty)$ に入る」という定理を証明したうえで、状態の存在と GNS構成 から等長な表現を組み立てる。
以下、$\mathcal{A}$ は単位元 $1$ をもつ複素 $C^*$-環とする。すなわち $\mathcal{A}$ は単位的複素 Banach 環で、共役線形で $(ab)^*=b^*a^*$、$a^{**}=a$ を満たす対合をもち、$C^*$-恒等式 $\|a^*a\|=\|a\|^2$ を満たす(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の定義「$C^*$-環と正規元」)。$\|a^*\|=\|a\|$ と $1^*=1$ はこの公理から従い(同じ記事の定義の直後の段落)、$\|1\|=\|1^*1\|=\|1\|^2$ と $1\neq0$ から $\|1\|=1$ も従う。元 $a$ のスペクトルを $\sigma(a)$、スペクトル半径を $r(a)$ と書く。Hilbert 空間の内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$ は、GNS構成 の記事にそろえて第 2 変数について線形とする。
$H$ を複素 Hilbert 空間、$B(H)$ を $H$ 上の有界線形作用素全体とする。線形写像 $\pi\colon\mathcal{A}\to B(H)$ が $\pi(ab)=\pi(a)\pi(b)$、$\pi(a^*)=\pi(a)^*$、$\pi(1)=1$ を満たすとき、$\pi$ を $\mathcal{A}$ の(単位的な)表現という。単射な表現を忠実な表現といい、すべての $a$ で $\|\pi(a)\|=\|a\|$ となる表現を等長な表現という。
等長な表現は忠実である。逆に、単位的 $C^*$-環の間の単射な単位的 $*$-準同型は自動的に等長になる(作用素環 の定理「単射な $*$-準同型は等長」)ので、表現については忠実と等長は同じ条件である。
$\mathcal{A}$ が可換なら、指標空間 $\Delta(\mathcal{A})$ はコンパクト Hausdorff 空間で、Gelfand 変換 $a\mapsto\widehat a$ は等長 $*$-同型 $\mathcal{A}\cong C(\Delta(\mathcal{A}))$ である。
この記事では証明を繰り返さない。証明は Banach環とC*-環のスペクトル理論 の定理「可換Gelfand--Naimark定理」にある。
任意の単位的 $C^*$-環 $\mathcal{A}$ に対し、ある Hilbert 空間 $H$ と等長な表現 $\pi\colon\mathcal{A}\to B(H)$ が存在する。とくに $\mathcal{A}$ は、$B(H)$ の $C^*$-部分環 $\pi(\mathcal{A})$ と等長 $*$-同型である。
証明は次の 3 段からなり、最後の段は節「主定理の証明」に置く。
ここで $B(H)$ の $C^*$-部分環とは、$B(H)$ の部分代数で随伴と作用素ノルムについて閉じたものである。等長写像の像は完備なので閉であり、$\pi(\mathcal{A})$ は実際に $C^*$-部分環になる。逆に $B(H)$ の $C^*$-部分環は $C^*$-恒等式を満たす(作用素環 の命題「有界作用素の環は $C^*$-環」)。したがって thm-gn-main により、「単位的 $C^*$-環」と「恒等作用素を含む $B(H)$ の $C^*$-部分環」は、等長 $*$-同型を除いて同じものである。
$\mathcal{A}$ の自己共役元 $a$ で $\sigma(a)\subset[0,\infty)$ を満たすものを正の元といい、$a\geq0$ と書く。
自己共役元のスペクトルは $[-\|a\|,\|a\|]$ に入り、自己共役元はノルムとスペクトル半径が一致する(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の定理「自己共役元とユニタリ元のスペクトル」と命題「正規元ではノルムとスペクトル半径が一致する」)。この 2 つを以下で何度も使う。
$a$ を自己共役元、$c\geq\|a\|$ を実数とする。$a\geq0$ であることと、$\|c1-a\|\leq c$ であることは同値である。
$c1-a$ は自己共役なので $\|c1-a\|=r(c1-a)$ であり、多項式のスペクトル写像定理(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の命題「多項式のスペクトル写像定理」)により $\sigma(c1-a)=\{c-\lambda\mid\lambda\in\sigma(a)\}$ である。
$a\geq0$ なら $\sigma(a)\subset[0,\|a\|]\subset[0,c]$ なので、$\lambda\in\sigma(a)$ について $0\leq c-\lambda\leq c$、よって $\|c1-a\|=\max_{\lambda\in\sigma(a)}|c-\lambda|\leq c$ である。逆に $\|c1-a\|\leq c$ なら、$\lambda\in\sigma(a)$ は実数で $|c-\lambda|\leq c$ を満たすので $\lambda\geq0$ である。$\square$
$a\geq0$、$b\geq0$ なら $a+b\geq0$ である。
$s:=\|a\|$、$t:=\|b\|$ とおく。lem-gn-positive-criterion により $\|s1-a\|\leq s$、$\|t1-b\|\leq t$ なので
$$
\|(s+t)1-(a+b)\|\leq\|s1-a\|+\|t1-b\|\leq s+t
$$
である。$a+b$ は自己共役で $\|a+b\|\leq s+t$ だから、再び lem-gn-positive-criterion($c=s+t$)により $a+b\geq0$ である。$\square$
次の補題は対合を使わない、単位的 Banach 環一般の事実である。
単位的 Banach 環の元 $x,y$ について、$\sigma(xy)\cup\{0\}=\sigma(yx)\cup\{0\}$ である。
$\lambda\neq0$ について、$\lambda1-xy$ が可逆なら $\lambda1-yx$ も可逆であることを示せばよい($x,y$ を入れ替えれば逆も従う)。$x$ を $x/\lambda$ に替えて $\lambda=1$ としてよい。$u:=(1-xy)^{-1}$ とおくと $u-uxy=u-xyu=1$ である。$v:=1+yux$ とおくと
$$
v(1-yx)=1-yx+yux-yuxyx=1-yx+y(u-uxy)x=1-yx+yx=1,
$$
$$
(1-yx)v=1-yx+yux-yxyux=1-yx+y(u-xyu)x=1
$$
である。よって $1-yx$ は可逆で、逆元は $v$ である。$\square$
任意の $a\in\mathcal{A}$ について $a^*a\geq0$ である。
段 1:$\sigma(x^*x)\subset(-\infty,0]$ なら $x=0$。 $x=h+ik$、$h:=(x+x^*)/2$、$k:=(x-x^*)/(2i)$ と自己共役元に分けると、展開して
$$
x^*x+xx^*=2h^2+2k^2
$$
である。自己共役元 $h$ について $\sigma(h^2)=\{\lambda^2\mid\lambda\in\sigma(h)\}\subset[0,\infty)$(スペクトル写像定理)なので $h^2\geq0$、同様に $k^2\geq0$ である。仮定から $-x^*x\geq0$ なので、cor-gn-positive-sum を 2 回使って
$$
xx^*=2h^2+2k^2+(-x^*x)\geq0
$$
を得る。一方 lem-gn-jacobson により $\sigma(xx^*)\setminus\{0\}=\sigma(x^*x)\setminus\{0\}\subset(-\infty,0)$ である。$\sigma(xx^*)\subset[0,\infty)$ と合わせると $\sigma(xx^*)\subset\{0\}$ で、自己共役元 $xx^*$ について $\|xx^*\|=r(xx^*)=0$ となる。$C^*$-恒等式を $x^*$ に使うと $\|x^*\|^2=\|xx^*\|=0$ なので $x=0$ である。
段 2:一般の場合。 $h:=a^*a$ は自己共役である。連続関数 $f_\pm(t):=\max\{\pm t,0\}$ を連続汎関数計算で代入して $h_\pm:=f_\pm(h)$ とおくと、$h_\pm$ は自己共役で $h_\pm\geq0$、$h=h_+-h_-$、$h_+h_-=h_-h_+=0$ である(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の例「自己共役元の平方根と正負の部分」。$f_+f_-=0$、$f_+-f_-=t$ と汎関数計算が準同型であることによる)。$x:=ah_-$ とおくと
$$
x^*x=h_-a^*ah_-=h_-(h_+-h_-)h_-=-h_-^3
$$
である。スペクトル写像定理により $\sigma(-h_-^3)=\{-\lambda^3\mid\lambda\in\sigma(h_-)\}\subset(-\infty,0]$ なので、段 1 から $x=0$、すなわち $h_-^3=0$ である。$h_-$ は自己共役なので $\|h_-\|^3=r(h_-)^3=r(h_-^3)=0$ となり、$h_-=0$ である。よって $a^*a=h_+\geq0$ である。$\square$
段 1 は $C^*$-恒等式を 2 か所で使っている。1 つは自己共役元でノルムとスペクトル半径が一致すること、もう 1 つは最後の $\|x^*\|^2=\|xx^*\|$ である。$C^*$-恒等式のない Banach $*$-環では、$a^*a$ のスペクトルが負の数を含むことがある(ex-gn-counterexamples の 2 行目)。
任意の $a\in\mathcal{A}$ について $1+a^*a$ は可逆である。
thm-gn-positive により $\sigma(a^*a)\subset[0,\infty)$ なので $-1\notin\sigma(a^*a)$、すなわち $-1-a^*a$ は可逆である。$\square$
$\mathcal{A}$ 上の状態とは、線形汎関数 $\omega\colon\mathcal{A}\to\mathbb{C}$ で、すべての $a$ について $\omega(a^*a)\geq0$ を満たし、$\omega(1)=1$ となるものである(GNS構成 の定義「状態」)。状態は連続で $\|\omega\|=\omega(1)=1$ を満たす(同じ記事の命題「状態は連続でノルム $1$ をもつ」)。次の補題はこの逆で、ノルムの条件だけから正値性が出ることを述べる。
連続線形汎関数 $\omega\colon\mathcal{A}\to\mathbb{C}$ が $\|\omega\|=\omega(1)=1$ を満たすなら、$\omega$ は状態である。
自己共役元での値は実数。 $h$ を自己共役元とし、$\omega(h)=\alpha+i\beta$($\alpha,\beta\in\mathbb{R}$)とおく。実数 $t$ について $(h+it1)^*(h+it1)=h^2+t^21$ なので、$C^*$-恒等式から
$$
\alpha^2+(\beta+t)^2=|\omega(h+it1)|^2\leq\|h+it1\|^2=\|h^2+t^21\|\leq\|h\|^2+t^2
$$
である。整理すると $\alpha^2+\beta^2+2\beta t\leq\|h\|^2$ がすべての実数 $t$ で成り立つので、$\beta=0$ である。
正の元での値は $0$ 以上。 $p\geq0$ とし、$p\neq0$ なら $p$ を $p/\|p\|$ に替えて $\|p\|\leq1$ としてよい。lem-gn-positive-criterion($c=1$)により $\|1-p\|\leq1$ なので
$$
|1-\omega(p)|=|\omega(1-p)|\leq\|1-p\|\leq1
$$
である。前段により $\omega(p)$ は実数なので $\omega(p)\geq0$ である。
thm-gn-positive により $a^*a\geq0$ だから $\omega(a^*a)\geq0$ であり、$\omega(1)=1$ と合わせて $\omega$ は状態である。$\square$
任意の $a\in\mathcal{A}$ に対し、$\omega(a^*a)=\|a\|^2$ を満たす状態 $\omega$ が存在する。
$h:=a^*a$ とおき、$\mathcal{B}$ を $1$ と $h$ の多項式全体の閉包とする。$h$ は自己共役なので、連続汎関数計算 $f\mapsto f(h)$ は $C(\sigma(h))$ から $\mathcal{A}$ への等長な単位的 $*$-準同型である(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の定理「連続汎関数計算」)。その像は完備で多項式 $p(h)$ をすべて含み、多項式は Weierstrassの近似定理 により $C(\sigma(h))$ で稠密なので($f\in C(\sigma(h))$ を区間 $[-\|h\|,\|h\|]$ 上の連続関数に、$\sigma(h)$ の外の各区間で 1 次式(両端の区間では定数)として延長してから近似する)、像は $\mathcal{B}$ に等しい。
自己共役元では $r(h)=\|h\|$ で $\sigma(h)$ はコンパクトなので、$|\lambda_0|=\|h\|$ となる $\lambda_0\in\sigma(h)$ がある。thm-gn-positive により $\lambda_0\geq0$、したがって $\lambda_0=\|h\|=\|a\|^2$ である。$\mathcal{B}$ 上の線形汎関数を
$$
\chi(f(h)):=f(\lambda_0)\qquad(f\in C(\sigma(h)))
$$
で定めると、汎関数計算の等長性から $|\chi(f(h))|\leq\|f\|_\infty=\|f(h)\|$ であり、$\chi(1)=1$ なので $\|\chi\|=1$ である。Hahn–Banachの定理 の系「ノルムを保つ延長」(スカラーが複素数の場合)を部分空間 $\mathcal{B}\subset\mathcal{A}$ に当てはめると、$\mathcal{B}$ 上で $\chi$ と一致し $\|\omega\|=\|\chi\|=1$ を満たす連続線形汎関数 $\omega\colon\mathcal{A}\to\mathbb{C}$ が得られる。$\omega(1)=\chi(1)=1$ なので、lem-gn-norm-one-positive により $\omega$ は状態であり、$\omega(a^*a)=\chi(h)=\lambda_0=\|a\|^2$ である。$\square$
$S$ を $\mathcal{A}$ 上の状態全体とする(prop-gn-norming-state により空でない)。各 $\omega\in S$ について、GNS構成 の定理「GNS構成」により、Hilbert 空間 $H_\omega$、表現 $\pi_\omega\colon\mathcal{A}\to B(H_\omega)$、単位ベクトル $\Omega_\omega$ で $\omega(a)=\langle\Omega_\omega,\pi_\omega(a)\Omega_\omega\rangle$ を満たすものがある。その証明のとおり $\|\pi_\omega(a)\|\leq\|a\|$ である。
直和をとる。 $H$ を、$\xi=(\xi_\omega)_{\omega\in S}$($\xi_\omega\in H_\omega$)で $\sum_\omega\|\xi_\omega\|^2<\infty$ を満たすもの全体とし、内積を $\langle\xi,\eta\rangle:=\sum_\omega\langle\xi_\omega,\eta_\omega\rangle$ で定める。これは Hilbert 空間である(各成分ごとの Cauchy 列の極限をとる、$\ell^2$ の完備性と同じ議論)。$a\in\mathcal{A}$ について
$$
(\pi(a)\xi)_\omega:=\pi_\omega(a)\xi_\omega
$$
とおくと、$\sum_\omega\|\pi_\omega(a)\xi_\omega\|^2\leq\|a\|^2\sum_\omega\|\xi_\omega\|^2$ なので $\pi(a)\in B(H)$、$\|\pi(a)\|\leq\|a\|$ である。積・対合・単位元の保存は成分ごとに成り立つので、$\pi$ は表現である。
等長であること。 $a\in\mathcal{A}$ を任意にとり、prop-gn-norming-state で $\omega(a^*a)=\|a\|^2$ となる状態 $\omega$ を選ぶ。$\omega$ 成分だけが $\Omega_\omega$ で他は $0$ のベクトルを $\xi$ とすると $\|\xi\|=1$ で
$$
\|\pi(a)\xi\|^2=\|\pi_\omega(a)\Omega_\omega\|^2=\langle\Omega_\omega,\pi_\omega(a^*a)\Omega_\omega\rangle=\omega(a^*a)=\|a\|^2
$$
である。よって $\|\pi(a)\|\geq\|a\|$ で、上の評価と合わせて $\|\pi(a)\|=\|a\|$ である。$\square$
この証明で作った $\pi$ を $\mathcal{A}$ の普遍表現という。等長性を示すのに状態を全部使う必要はなく、各 $a$ に 1 つずつノルムを実現する状態があれば足りる。$\mathcal{A}$ が可分なら、稠密な可算集合の元ごとに状態を選んで直和をとることで、$H$ も可分にとれる(Sun00 Theorem 3.4.15、p. 127)。
例の 2 で $\ell^2(X)$ は $X$ が非可算なら非可分である。$C([0,1])$ は可分なので、可算個の点(たとえば有理数の点)の直和をとっても、連続関数の最大値は有理数の点での値の上限に等しく、等長な表現が得られる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $C^*$-恒等式(thm-gn-main) | 二元群の群環 $\ell^1(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})$ | 等長な表現の存在 |
| $C^*$-恒等式(thm-gn-positive) | $\mathbb{C}^2$、一様ノルム、対合 $(z,w)^*=(\overline w,\overline z)$ | $\sigma(a^*a)\subset[0,\infty)$ |
| $\omega(1)=\|\omega\|$(lem-gn-norm-one-positive) | $\mathbb{C}^2$ 上の $\omega(z,w)=(z-w)/2$ | 正値性 |
| 状態を複数とること(prf-gn-main) | $\mathbb{C}^2$ 上の状態 $\omega(z,w)=z$ の GNS 表現だけ | 忠実性 |
1 行目:$\ell^1(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})$ に畳み込み積、$\ell^1$ ノルム、$f^*(g)=\overline{f(g^{-1})}$ を入れた単位的 Banach $*$-環では、$a(e)=1$、$a(s)=i$ について $\|a^*\ast a\|_1=2\neq4=\|a\|_1^2$ である(Banach環とC*-環のスペクトル理論 の例「反例:Banach $*$-環であるだけでは $C^*$-恒等式は出ない」)。等長な $*$-準同型 $\pi$ で $B(H)$ に写せたとすると $\|a^*\ast a\|_1=\|\pi(a)^*\pi(a)\|=\|\pi(a)\|^2=\|a\|_1^2$ となって矛盾する。
2 行目:成分ごとの積と一様ノルム $\|(z,w)\|=\max\{|z|,|w|\}$ について、$(z,w)\mapsto(\overline w,\overline z)$ は共役線形で、積の順序を入れ替え(可換)、$2$ 回で元に戻り、ノルムを保つので、単位的 Banach $*$-環である。$a=(1,-1)$ では $a^*=(-1,1)$、$a^*a=(-1,-1)=-1$ で $\sigma(a^*a)=\{-1\}$ である。$a=(1,0)$ では $a^*a=(0,0)$ だが $\|a\|^2=1$ なので、$C^*$-恒等式が成り立たない。
3 行目:$\mathbb{C}^2$(一様ノルム、成分ごとの複素共役)は $C^*$-環である。$|z-w|/2\leq1$($\|(z,w)\|\leq1$ のとき)で $(1,-1)$ で等号なので $\|\omega\|=1$ だが、$\omega(1)=\omega(1,1)=0$ であり、$b=(0,1)$ について $\omega(b^*b)=\omega(0,1)=-1/2<0$ である。
4 行目:$N_\omega=\{0\}\oplus\mathbb{C}$ で $H_\omega\cong\mathbb{C}$、$\pi_\omega(z,w)$ は $z$ 倍であり、$(0,1)\neq0$ が $0$ に写る(GNS構成 の例「GNS表現が忠実でない例」)。状態 $(z,w)\mapsto w$ の GNS 表現と直和をとれば等長になる。
Gelfand と Naimark は 1943 年の論文で、Banach 環に対合を入れ、$x^{**}=x$、$(xy)^*=y^*x^*$ に加えて $\|x^*x\|=\|x^*\|\|x\|$、$\|x^*\|=\|x\|$、「$x^*x+e$ がつねに可逆」の 3 つを公理とした環について、Hilbert 空間の作用素の閉部分環への等長 $*$-同型を構成した(GN43 §1、pp. 197–198、Theorem 1)。同じ頁の脚注で、$\|x^*\|=\|x\|$ と「$x^*x+e$ が可逆」がそれ以前の公理から従うと予想しつつ証明できなかったこと、$\|x^*x\|=\|x^*\|\|x\|$ と $\|x^*\|=\|x\|$ の 2 つが $\|x^*x\|=\|x\|^2$ ひとつに置き換えられることを述べている。現在の定義では $\|x^*\|=\|x\|$ は $C^*$-恒等式から従い、「$x^*x+e$ が可逆」は cor-gn-invertible である。したがって GN43 の Theorem 1 は thm-gn-main と同じ内容になる。
この記事の証明の流れ(lem-gn-jacobson、cor-gn-positive-sum、thm-gn-positive、状態の判定、prop-gn-norming-state、直和)は Sun00 の Lemma 3.3.12(p. 115)、Proposition 3.3.13(pp. 115–116)、Lemma 3.3.15 と Proposition 3.3.16(pp. 116–117)、Proposition 3.4.11(p. 124)、Lemma 3.4.14(pp. 126–127)、Theorem 3.4.15(p. 127)と同じである。lem-gn-norm-one-positive では、自己共役元での値が実数であることを先に示した。
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