Kummer完全列(Kummer sequence)とは、整数 $n \ge 1$ が可逆なスキーム $X$ のエタール位相における短完全列 $1 \to \mu_n \to G_m \to G_m \to 1$(右の射は $x \mapsto x^n$)のことである。右の射の全射性は一般には切断ごとには成り立たず、$X$ 上エタールな $U$ の各単元 $a$ に対して、$a$ の $n$ 乗根を添加する被覆($\mathcal{O}_U[T]/(T^n - a)$ のスペクトル)がエタールであることによって、エタール層として初めて成り立つ。$n$ の可逆性は、定義多項式 $T^n - a$ の微分 $n T^{n-1}$ が可逆であることに使われる。この列から出る長完全列は、$H^i(X, G_m)$ の $n$ 捩れ部分を $\mu_n$ 係数のコホモロジーで測る道具になる。
前提知識: スキーム, エタール射, エタール位相, 層, 短完全列
レベル: 大学院
可換環 $A$ の単元 $a$ に $n$ 乗根を添加したいとき、$A$ そのものの中に $n$ 乗根があるとは限らない。たとえば $2 \in \mathbb{Q}^\times$ は $\mathbb{Q}$ の中に平方根を持たない。しかし $T^2 - 2$ を添加した体 $\mathbb{Q}[T]/(T^2-2)$ の中では持つ。
この「もとの環では取れないが、適当な被覆の上では取れる」という状況は、Zariski 位相では扱えない。開集合をいくら小さくしても $2$ は平方根を持たないからである。エタール位相は、開集合を小さくする代わりに有限次分離拡大の向きへ広げることを許す枠であり、そこでは $n$ 乗根を添加する操作が被覆として認められる。
Kummer 完全列は、この事情を層の短完全列 1 本にまとめたものである。本記事は、$n$ が可逆であるという仮定の下でこの列が完全であることを証明し、仮定がどこで効くか、仮定を外すと証明のどの段が壊れるかを述べる。
以下 $X$ をスキーム、$n \ge 1$ を整数とする。
$n$ が $X$ 上可逆であるとは、$n \cdot 1$ が $\Gamma(X, \mathcal{O}_X)$ の単元であることをいう。このとき $X$ 上エタールな任意の $U$ についても $n$ は $\Gamma(U, \mathcal{O}_U)$ の単元である。
$X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ で $X$ の小エタール景を表す。その対象は $X$ 上エタールな射 $U \to X$ であり、被覆は像が $U$ を覆うエタール射の族 $\{U_i \to U\}$ である。
$X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ 上の層 $G_m$ と $\mu_n$ を、次の切断で定める。
$$
G_m(U) := \Gamma(U, \mathcal{O}_U)^\times, \qquad
\mu_n(U) := \{\, a \in \Gamma(U, \mathcal{O}_U)^\times \mid a^n = 1 \,\}.
$$
どちらも乗法についてアーベル群であり、制限写像と両立するのでアーベル群の層である。$G_m$ を 乗法群の層(multiplicative group sheaf)、$\mu_n$ を $n$ 次 1 の冪根の層(sheaf of $n$-th roots of unity)と呼ぶ。$\mu_n$ は $G_m$ の部分層である。
$n$ 乗写像 $x \mapsto x^n$ は $G_m$ の各切断のなす群の準同型であり、制限と両立するので、層の射 $G_m \to G_m$ を定める。$\mu_n$ はその核である(切断ごとに $a^n = 1$ という条件がそのまま核の条件だから)。
この記事でいう全射性は、切断ごとの全射性ではない。この点を外すと定理の意味が取れないので、定義を明示する。
$X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ 上の層の射 $\varphi \colon \mathcal{F} \to \mathcal{G}$ が 全射であるとは、$X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の任意の対象 $U$ と任意の切断 $s \in \mathcal{G}(U)$ に対して、あるエタール被覆 $\{U_i \to U\}$ が存在して、各 $i$ について $s|_{U_i}$ が $\varphi(\mathcal{F}(U_i))$ に属することをいう。
全射であっても、個々の $U$ について $\mathcal{F}(U) \to \mathcal{G}(U)$ が全射とは限らない。被覆を取り替えてよい、というのが定義の要点である。逆に、すべての $U$ で切断ごとに全射なら、$\{U \to U\}$ 自身を被覆に取れるので全射である。
したがって「全射である」と「大域切断に $n$ 乗根がある」は別の主張である。後述の例がその差を具体的に示す。
本記事は次を既知として使う。いずれも可換環論・ホモロジー代数・エタール位相の標準的な事実であり、本記事では証明しない。
$X$ をスキーム、$n \ge 1$ を $X$ 上可逆な整数とする。このとき $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ 上のアーベル群の層の列
$$
1 \longrightarrow \mu_n \longrightarrow G_m \xrightarrow{\ x \mapsto x^n\ } G_m \longrightarrow 1
$$
は完全である。すなわち $\mu_n \to G_m$ は単射、その像は $n$ 乗写像の核に一致し、$n$ 乗写像は(def-kummer-sequence-epi の意味で)全射である。
この定理はエタールコホモロジーの標準的な事実であり(StaKummer、Mil13 の Example 7.9 (a))、以下の証明も StaKummer の証明と同じ被覆を使う。証明の要は、$n$ 乗根を添加してできる被覆がエタールになることである。それを補題として先に示す。
$n \ge 1$ を $X$ 上可逆な整数、$U$ を $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の対象、$a \in \Gamma(U, \mathcal{O}_U)^\times$ とする。$\mathcal{O}_U$ 代数 $\mathcal{O}_U[T]/(T^n - a)$ のスペクトルとして $U$ 上のスキーム $U'$ を定める。このとき次が成り立つ。
1. $\mathcal{O}_{U'}$ の中で $T \cdot T^{n-1} = T^n = a$ であり、$a$ は可逆だから $T$ も可逆である。
2. $T^n - a$ は次数 $n$ のモニック多項式だから、$\mathcal{O}_{U'}$ は $1, T, \ldots, T^{n-1}$ を基底とする階数 $n$ の自由 $\mathcal{O}_U$ 加群である。自由加群は平坦である。また $\mathcal{O}_{U'}$ は $\mathcal{O}_U$ 代数として 1 個の生成元 $T$ と 1 個の関係 $T^n - a$ で表示されているので、$U' \to U$ は射として有限表示である。
3. 射がエタールであることは目標について局所的に判定できる StaEtaleLocal ので、$U$ をアフィン開集合で覆い、その 1 つ $V = \operatorname{Spec} A$ の上で示せばよい。$a$ の $V$ への制限を同じ $a \in A^\times$ で書くと、$U'$ の $V$ 上の部分は $B := A[T]/(T^n - a)$ のスペクトルである。2 と同じ理由で、$B$ は階数 $n$ の自由 $A$ 加群であり、生成元 $T$ と関係 $T^n - a$ の各 1 個で表示される有限表示な $A$ 代数である。したがってrem-kummer-sequence-standing-facts の 1〜3 を、射 $\operatorname{Spec} B \to \operatorname{Spec} A$ に適用できる。
$f := T^n - a \in A[T]$ の形式微分は $f' = n T^{n-1}$ である。$n$ は仮定より $A$ の単元、$T$ は 1 より $B$ の単元だから、$n T^{n-1}$ は $B$ の単元である。よって $(f'(T)) = B$ であり、同 3 より
$$
\Omega^1_{B/A} \cong B/(f'(T)) = 0 .
$$
$B$ は有限表示な $A$ 代数だから、同 2 より $\operatorname{Spec} B \to \operatorname{Spec} A$ は不分岐である。$B$ は自由 $A$ 加群だから平坦であり、有限表示だから局所有限表示でもある。同 1 より $\operatorname{Spec} B \to \operatorname{Spec} A$ はエタールである。これが $U$ を覆うすべてのアフィン開集合の上で成り立つので、$U' \to U$ はエタールである。
4. $u \in U$ を取り、剰余体を $k(u)$、$a$ の像を $\bar a \in k(u)^\times$ と書く。$u$ 上のファイバーは $k(u)[T]/(T^n - \bar a)$ のスペクトルである。この環は $k(u)$ 上の次元 $n \ge 1$ のベクトル空間だから零環ではなく、零環でない可換環は素イデアルを持つ。よってファイバーは空でなく、$U' \to U$ は全射である。
5. $U' \to U$ はエタール、$U \to X$ もエタールだから、合成 $U' \to X$ はエタールである。
単射性と核。各 $U$ について $\mu_n(U)$ は $G_m(U)$ の部分群であり、包含は単射である。また $a \in G_m(U)$ が $n$ 乗写像で $1$ に写ることは $a^n = 1$ と同じであり、これは $a \in \mu_n(U)$ と同じである。層の射の核は切断ごとの核で与えられるから、$\mu_n$ は $n$ 乗写像の核である。
全射性。$U$ を $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の対象、$a \in G_m(U) = \Gamma(U, \mathcal{O}_U)^\times$ を任意に取る。lem-kummer-sequence-covering の $U'$ を作ると、3 と 4 より $\{U' \to U\}$ はエタール被覆であり、5 よりこれは $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の中の被覆である。1 より $T \in G_m(U')$ であって
$$
T^n = a|_{U'}
$$
だから、$a|_{U'}$ は $n$ 乗写像の像に属する。よってdef-kummer-sequence-epi の条件が満たされ、$n$ 乗写像は全射である。
lem-kummer-sequence-covering の 1・2・4 は $n$ の可逆性を使っていない。$T$ が可逆であること、$\mathcal{O}_{U'}$ が階数 $n$ の自由加群であること、ファイバーが空でないことは、$n$ が可逆かどうかに関わらず成り立つ。
$n$ の可逆性を直接使うのは 3 だけである。そこで $f' = n T^{n-1}$ が単元であることを言うために使う。この一点が、$U' \to U$ を「有限で平坦なだけの被覆」から「エタール被覆」に変える。
5 は可逆性を直接には使わないが、証明の中で 3($U' \to U$ がエタールであること)を使うので、3 を通じて可逆性に依存する。3 が成り立たなければ合成 $U' \to X$ はエタールとは限らず、$U'$ は $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の対象になるとは限らない。そうなると $\{U' \to U\}$ を $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の被覆として使えず、全射性の議論は成り立たない。
$X := \operatorname{Spec} \mathbb{Q}$、$n := 2$ とする。$\mathbb{Q}$ の標数は $0$ だから $2$ は $X$ 上可逆であり、定理の仮定が満たされる。
$a := 2 \in G_m(X) = \mathbb{Q}^\times$ を取る。$2$ は $\mathbb{Q}$ の中に平方根を持たない(下の証明)。したがって大域切断の間の写像
$$
G_m(X) \longrightarrow G_m(X), \qquad x \longmapsto x^2
$$
は全射ではない。一方、定理の構成が与える $U' = \operatorname{Spec}\, \mathbb{Q}[T]/(T^2 - 2)$ は $X$ 上のエタール被覆であり、その上では $a|_{U'} = T^2$ が平方になっている。
層の射としての全射性と、切断ごとの全射性が違うことの実例である。
$2 = (p/q)^2$ となる互いに素な整数 $p, q$ があるとすると $p^2 = 2q^2$ である。右辺は偶数だから $p^2$ は偶数、よって $p$ は偶数であり $p = 2p'$ と書ける。代入して $4p'^2 = 2q^2$、すなわち $q^2 = 2p'^2$ となるので、同じ理由で $q$ も偶数である。これは $p, q$ が互いに素であることに反する。
$p$ を素数、$k := \mathbb{F}_p(t)$ を有理関数体、$X := \operatorname{Spec} k$、$U := X$(恒等射によって $X_{\mathrm{\acute{e}t}}$ の対象とみる)、$n := p$、$a := t \in k^\times$ とする。$k$ の標数は $p$ だから $p \cdot 1 = 0$ であり、$p$ は $U$ 上可逆でない。$B := k[T]/(T^p - t)$、$U' := \operatorname{Spec} B$ と置く。
上の反例が示したのは、本記事の証明が $n$ の可逆性なしには通らないことである。$p$ 乗写像が全射でないことを示したのではない。証明が通らないことと、命題が偽であることは別である。
実際、$n$ が可逆でなくても結論の側が成り立つ場合がある。$k$ を標数 $p$ の完全体、すなわち任意の元が $p$ 乗であるような体とし、$X := \operatorname{Spec} k$、$n := p$ とする。このとき
本記事は、$n$ が可逆でないときに $n$ 乗写像が層の射として全射であるかどうかを決めない。それを決めるには本記事の外の議論が要る。$X$ 上のすべての対象について結論を出すには、完全体上のエタールスキームの構造など、本記事が立ち入らない一般論が必要になる。
可逆でない素数のところで実際に起こること(引用)。完全体の例とは逆に、$n$ が可逆でない素数 $p$ のところでは、Kummer 完全列の外で $0$ でない現象が起こりうる。Grothendieck Gro68 は、代数閉体上の超越次数 $1$ の体などの Brauer 群が $0$ になるという定理について、基礎体(あるいは剰余体)が代数閉であるという仮定を分離閉に弱めると、少なくとも標数 $p > 0$ では結論が破れ、Brauer 群が $0$ でない $p$ 捩れ群になりうると注意し、その特別な場合として次を述べて、根拠を Auslander と Goldman の可換環の Brauer 群についての論文に委ねている:$k$ を標数 $p$ の分離閉体とするとき、多項式環 $k[t]$ の Brauer群 が $0$ になるのは $k$ が完全である(したがって代数閉である)ときに限る。とくに、$k$ が完全でなければ $\mathrm{Br}(k[t]) \ne 0$ である。本記事はこの事実を証明せず、引用として記録するにとどめる。
以下 $n$ は $X$ 上可逆とする。定理の短完全列にrem-kummer-sequence-standing-facts の 4 を適用すると、長完全列
$$
\cdots \to H^i(X, \mu_n) \to H^i(X, G_m) \xrightarrow{\ n\ } H^i(X, G_m) \to H^{i+1}(X, \mu_n) \to \cdots
$$
を得る。$G_m$ を乗法的に書いているので、真ん中の射は切断のうえでは $n$ 乗写像であり、アーベル群の準同型としては $n$ 倍写像である。
各 $i \ge 0$ について
$$
0 \to H^i(X, G_m)/n H^i(X, G_m) \to H^{i+1}(X, \mu_n) \to H^{i+1}(X, G_m)[n] \to 0
$$
は完全である。ここで $M[n] := \{\, x \in M \mid nx = 0 \,\}$ である。
長完全列の $H^{i+1}(X, \mu_n)$ を挟む三項
$$
H^i(X, G_m) \xrightarrow{\ n\ } H^i(X, G_m) \xrightarrow{\ \alpha\ } H^{i+1}(X, \mu_n) \xrightarrow{\ \beta\ } H^{i+1}(X, G_m) \xrightarrow{\ n\ } H^{i+1}(X, G_m)
$$
を見る。完全性より $\ker \alpha$ は $n$ 倍写像の像 $n H^i(X, G_m)$ に等しいから、$\alpha$ は単射 $H^i(X, G_m)/n H^i(X, G_m) \hookrightarrow H^{i+1}(X, \mu_n)$ を誘導し、その像は $\ker \beta$ である。また $\beta$ の像は、右の $n$ 倍写像の核 $H^{i+1}(X, G_m)[n]$ に等しい。この二つを継ぐと主張の完全列を得る。
$H^1(X, G_m)$ は $X$ の Picard群 $\mathrm{Pic}(X)$ と自然に同型である StaHilbert90。$H^2(X, G_m)$、あるいは流儀によってはその捩れ部分は、$X$ の コホモロジー的Brauer群 と呼ばれる(StaBrauerScheme は捩れ部分を指す流儀である。$n$ 捩れ部分はどちらの流儀でも $H^2(X, G_m)[n]$ である)。これらの同定は本記事では証明しないが、それを認めれば上の系の $i = 1, 2$ の場合が、Picard 群や Brauer 群の $n$ 捩れ部分を $\mu_n$ 係数のコホモロジーで測るという、この完全列のもっとも標準的な使い方になる。
$K$ を体、$n \ge 1$ を $K$ で可逆な整数($K$ の標数で割り切れない整数)とする。$X := \operatorname{Spec} K$ に系を $i = 1$ で適用すると、完全列
$$
0 \to H^1(K, G_m)/n H^1(K, G_m) \to H^2(K, \mu_n) \to H^2(K, G_m)[n] \to 0
$$
を得る(記号 $H^i(K, -)$ はrem-kummer-sequence-standing-facts の 5 による)。ここで次の 2 つの標準的な事実を、本記事では証明せずに使う。
$\ell$ を $X$ 上可逆な素数、$d \ge 0$ を整数とし、$\mathrm{cd}_\ell(X) \le d$ とする。ここで $\mathrm{cd}_\ell(X) \le d$ とは、$i > d$ なるすべての $i$ と、$\ell$ 準素捩れであるすべてのアーベル層 $\mathcal{F}$ について $H^i(X, \mathcal{F}) = 0$ となることをいう(コホモロジー次元)。
このとき $i > d$ なるすべての $i$ について、$H^i(X, G_m)$ の $\ell$ 準素成分は $0$ である。
$r \ge 1$ を任意に取る。$\ell$ が $X$ 上可逆だから $\ell^r$ も $X$ 上可逆であり、定理を $n = \ell^r$ に適用できる。得られる長完全列の一部
$$
H^i(X, \mu_{\ell^r}) \to H^i(X, G_m) \xrightarrow{\ \ell^r\ } H^i(X, G_m)
$$
を見る。$\mu_{\ell^r}$ の切断はすべて $\ell^r$ 乗して $1$ になるから、$\mu_{\ell^r}$ は $\ell$ 準素捩れ層である。よって $i > d$ では仮定より $H^i(X, \mu_{\ell^r}) = 0$ であり、完全性から $\ell^r$ 倍写像は $H^i(X, G_m)$ の上で単射である。
$x$ を $H^i(X, G_m)$ の $\ell$ 準素成分の元とすると、ある $r \ge 1$ について $\ell^r x = 0$ である。いま $\ell^r$ 倍は単射だから $x = 0$ である。よって $\ell$ 準素成分は $0$ である。
体 $K$ が $C_1$ 体であるとは、$K$ 係数の $n$ 変数 $d$ 次斉次多項式で $0 < d < n$ なるものが、つねに $K^n$ に自明でない零点をもつことをいう。次の 2 種類の体は $C_1$ 体である。この事実は本記事では証明しない。
定理は $n$ が $X$ 上可逆であることを仮定しているから、Kummer 完全列を作れるのは、$X$ の剰余標数で割り切れない $n$ に限られる。したがってこの完全列を使う議論から取り出せるのは、はじめから剰余標数と素な部分だけである。
たとえば上の命題も、$\ell$ が $X$ 上可逆な素数についてしか述べていない。剰余標数に等しい素数についての同じ型の主張がほしければ、Kummer 完全列とは別の道具が要る。これはこの完全列の欠点ではなく、適用範囲そのものである。
別の道具の一例(体の場合)。$K$ を標数 $p > 0$ の体とする。$K$ 上エタールな $U$ は $K$ の有限次分離拡大体のスペクトルの非交和だから StaEtaleFibres、$\Gamma(U, \mathcal{O}_U)$ は体の直積であり、被約である。したがって $x^p = 1$ なら $(x - 1)^p = x^p - 1 = 0$ から $x = 1$ となり、$p$ 乗写像 $G_m \to G_m$ は層の射として単射である。その余核の層を $\mathcal{C}$ と書くと、層の短完全列
$$
1 \to G_m \xrightarrow{\ x \mapsto x^p\ } G_m \to \mathcal{C} \to 0
$$
を得る。$\mathcal{C}$ の局所切断は $G_m$ の局所切断 $x$ の類であり、その $p$ 倍は $x^p$ の類すなわち $0$ だから、$\mathcal{C}$ は $p$ で消える層、とくに $p$ 準素捩れ層である。ここで、標数 $p$ の体では $\mathrm{cd}_p(K) \le 1$ であるという標準的な事実を、本記事では証明せずに使う(Grothendieck Gro68 は、この事実を Serre の Galois コホモロジーの講義録を引いて用いている)。すると $i \ge 3$ では $H^{i-1}(K, \mathcal{C}) = 0$ であり、長完全列の一部
$$
H^{i-1}(K, \mathcal{C}) \to H^i(K, G_m) \xrightarrow{\ p\ } H^i(K, G_m)
$$
から $p$ 倍写像は $H^i(K, G_m)$ の上で単射になる。命題の証明の最後の段落と同じ議論により、$i \ge 3$ では $H^i(K, G_m)$ の $p$ 準素成分は $0$ である。
この議論は $p$ 乗写像の余核 $\mathcal{C}$ をそのまま残しており、$p$ 乗写像が層の射として全射であるとは主張していない(rem-kummer-sequence-proof-vs-truth と矛盾しない)。また結論は $i \ge 3$ に限られ、$i = 2$ の段、すなわち Brauer 群の $p$ 準素成分については何も言わない。実際その段では、rem-kummer-sequence-proof-vs-truth の最後の段落で述べるように、$0$ でない $p$ 捩れが現れうる。
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