Sobolev–Slobodeckij空間

同義語:Sobolev–Slobodeckij spaceSlobodeckij空間分数階Sobolev空間fractional Sobolev space

概要

Sobolev–Slobodeckij空間(Sobolev–Slobodeckij space)とは、$0< s<1$、$1\le p<\infty$ について、$L^p$ の関数のうち $|u(x)-u(y)|^p/|x-y|^{d+sp}$ の二重積分(Gagliardo 半ノルム)が有限なもの全体 $W^{s,p}$ である。Banach 空間で、$s$ について単調に小さくなり、全空間や境界が $C^1$ 級で有界な領域では $W^{1,p}$ を含む。$p=2$ の全空間では Fourier 変換による Sobolev 空間 $H^s$ と一致する。半空間の $H^1$ の関数のトレースの像はちょうど $W^{1/2,2}$ であり、境界値問題の境界条件を記述する空間になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Sobolev空間の基本事項, Lp空間, Fourier変換, Plancherelの定理

Sobolev 空間 $W^{1,p}$ は「関数とその 1 階の弱微分が $L^p$ に入る」空間であり、$L^p$ は微分について何も要求しない空間である。その間に、微分の階数 $s$ を $0< s<1$ の実数にした空間を置きたい。微分を使わずに「$s$ 階分の滑らかさ」を測るには、差 $u(x)-u(y)$ を距離 $|x-y|$ の $s$ 乗で割って $L^p$ で積分すればよい。こうして得られるのが Sobolev–Slobodeckij空間(Sobolev–Slobodeckij space)$W^{s,p}$ であり、その半ノルムを Gagliardo 半ノルム という。
この空間がとくに必要になるのは境界値の問題である。境界が滑らかなら、$H^1(\Omega)=W^{1,2}(\Omega)$ の関数の境界値(トレース作用素)は $L^2(\partial\Omega)$ 全体を動くのではなく、$W^{1/2,2}(\partial\Omega)$ というちょうど「半分の階数」の空間を動く。この記事では、$W^{s,p}$ を定義して Banach 空間であることと指数についての包含を示し、$p=2$ では Fourier 変換による Sobolev 空間 $H^s$ と一致することを証明する。そのうえで、半空間の $H^1$ のトレースの像が $W^{1/2,2}$ であること、区間の指示関数が $W^{s,p}$ に属する条件が $sp<1$ であることを示す。

定義

$\Omega\subset\mathbb R^d$ を空でない開集合、$1\le p<\infty$ とする。関数は実数値または複素数値とし、$L^p$ の元はほとんど至る所で等しい関数を同一視したものとする。$|\cdot|$ は Euclid ノルム、$\omega_{d-1}$ は単位球面 $S^{d-1}$ の面積($d=1$ では $\omega_0=2$)である。

Sobolev–Slobodeckij空間

$0< s<1$ とする。可測関数 $u$ に対し
$$ [u]_{W^{s,p}(\Omega)}:=\Bigl(\int_\Omega\int_\Omega\frac{|u(x)-u(y)|^p}{|x-y|^{d+sp}}\,dx\,dy\Bigr)^{1/p}\in[0,\infty] $$
を Gagliardo 半ノルム といい、
$$ W^{s,p}(\Omega):=\bigl\{u\in L^p(\Omega)\bigm|[u]_{W^{s,p}(\Omega)}<\infty\bigr\},\qquad\|u\|_{W^{s,p}(\Omega)}:=\bigl(\|u\|_{L^p(\Omega)}^p+[u]_{W^{s,p}(\Omega)}^p\bigr)^{1/p} $$
を Sobolev–Slobodeckij空間 という。$s>1$ が整数でないときは、$s=m+\sigma$($m$ は整数、$0< \sigma<1$)と書いて
$$ W^{s,p}(\Omega):=\bigl\{u\in W^{m,p}(\Omega)\bigm|D^\alpha u\in W^{\sigma,p}(\Omega)\ (|\alpha|=m)\bigr\},\qquad\|u\|_{W^{s,p}}^p:=\|u\|_{W^{m,p}}^p+\sum_{|\alpha|=m}[D^\alpha u]_{W^{\sigma,p}}^p $$
と定める。ここで $W^{m,p}(\Omega)$ とそのノルムは Sobolev空間の基本事項 の定義「Sobolev空間」に従う。

$[u]_{W^{s,p}}$ は関数 $(x,y)\mapsto\bigl(u(x)-u(y)\bigr)/|x-y|^{d/p+s}$ の $L^p(\Omega\times\Omega)$ ノルムなので、半ノルムの三角不等式を満たす。同じ空間は、導入した人の名前から Aronszajn 空間・Gagliardo 空間とも呼ばれ、分数階 Sobolev 空間(fractional Sobolev space)とも呼ばれる(DPV12 p. 5)。Bre11 の第 9 章の注釈 6(p. 314)も同じ定義を述べている。
指数 $d+sp$ の意味は次のように読める。$|x-y|^{-d}$ は $y=x$ の近くでちょうど積分が発散する境目の重みであり、$|x-y|^{-d-sp}$ はそれより $sp$ だけ強い。おおまかには、$|x-y|$ が小さいとき差 $|u(x)-u(y)|^p$ が平均して $|x-y|^{sp}$ より小さくなることを求めている。点ごとの Hölder 連続性ではなく積分の条件なので、下の ex-ss-indicator が示すように、$sp<1$ なら跳びのある関数も $W^{s,p}$ に入る。

完備性

$0< s<1$ のとき $W^{s,p}(\Omega)$ は Banach 空間である。$p=2$ では
$$ \langle u,v\rangle:=\int_\Omega u\,\overline v\,dx+\int_\Omega\int_\Omega\frac{\bigl(u(x)-u(y)\bigr)\overline{\bigl(v(x)-v(y)\bigr)}}{|x-y|^{d+2s}}\,dx\,dy $$
を内積として Hilbert 空間である。

要点:$L^p$ の極限をとり、ほとんど至る所で収束する部分列に Fatou の補題を当てる。

詳しい証明を開く

$(u_k)$ を $W^{s,p}(\Omega)$ の Cauchy 列とする。$(u_k)$ は $L^p(\Omega)$ の Cauchy 列なので極限 $u\in L^p(\Omega)$ をもち、部分列 $(u_{k_j})$ はほとんど至る所 $u$ に収束する。その例外集合を $Z$ とすると、$(x,y)\notin(Z\times\Omega)\cup(\Omega\times Z)$ で $u_{k_j}(x)-u_{k_j}(y)\to u(x)-u(y)$ であり、除いた集合は $\Omega\times\Omega$ の零集合である。$\varepsilon>0$ に対し $k_0$ を、$k,l\ge k_0$ なら $[u_k-u_l]_{W^{s,p}}< \varepsilon$ となるようにとる。$k\ge k_0$ を固定して Fatou の補題を使うと$$[u_k-u]_{W^{s,p}}^p\le\liminf_{j\to\infty}[u_k-u_{k_j}]_{W^{s,p}}^p\le\varepsilon^p$$である。よって $u=u_k-(u_k-u)$ は三角不等式により $W^{s,p}(\Omega)$ に属し、$\|u_k-u\|_{W^{s,p}}\to0$ である。$p=2$ では上の $\langle\cdot,\cdot\rangle$ が $\langle u,u\rangle=\|u\|_{W^{s,2}}^2$ を満たす内積である。$\square$

指数についての包含

$s$ についての単調性

$0< s\le s'< 1$ なら、すべての可測関数 $u$ について
$$ \|u\|_{W^{s,p}(\Omega)}^p\le\Bigl(1+\frac{2^p\omega_{d-1}}{sp}\Bigr)\|u\|_{W^{s',p}(\Omega)}^p $$
である。とくに $W^{s',p}(\Omega)\subset W^{s,p}(\Omega)$ である。

二重積分を $|x-y|<1$ の部分と $|x-y|\ge1$ の部分に分ける。前者では $|x-y|^{-d-sp}\le|x-y|^{-d-s'p}$ なので、その部分の積分は $[u]_{W^{s',p}}^p$ 以下である。後者では $|u(x)-u(y)|^p\le2^{p-1}\bigl(|u(x)|^p+|u(y)|^p\bigr)$ と、極座標による
$$ \int_{|h|\ge1}\frac{dh}{|h|^{d+sp}}=\omega_{d-1}\int_1^\infty r^{-1-sp}\,dr=\frac{\omega_{d-1}}{sp} $$
から、その部分の積分は $2^{p-1}\cdot2\cdot\frac{\omega_{d-1}}{sp}\|u\|_{L^p}^p$ 以下である。足し合わせればよい。$\square$

$s'\to1$ の端、すなわち $W^{1,p}\subset W^{s,p}$ には、全空間では平行移動の評価を、一般の領域では延長を使う。

$W^{1,p}$ は $W^{s,p}$ に含まれる

$1\le p<\infty$、$0< s<1$ とする。

  1. $u\in W^{1,p}(\mathbb R^d)$ なら $u\in W^{s,p}(\mathbb R^d)$ であり、$\|\nabla u\|_{L^p}:=\bigl\||\nabla u|\bigr\|_{L^p}$ として
    $$ [u]_{W^{s,p}(\mathbb R^d)}^p\le\frac{\omega_{d-1}}{p(1-s)}\|\nabla u\|_{L^p}^p+\frac{2^p\omega_{d-1}}{sp}\|u\|_{L^p}^p $$
    が成り立つ。
  2. $\Omega$ が $C^1$ 級の開集合で境界が有界なもの、または半空間なら、$W^{1,p}(\Omega)\subset W^{s,p}(\Omega)$ であり、包含は連続である。

段 1(平行移動の評価).$h\in\mathbb R^d$ について
$$ \|u(\cdot+h)-u\|_{L^p(\mathbb R^d)}\le|h|\,\|\nabla u\|_{L^p}\qquad(u\in W^{1,p}(\mathbb R^d)) $$
を示す。$u\in C_c^\infty(\mathbb R^d)$ なら $u(x+h)-u(x)=\int_0^1\nabla u(x+th)\cdot h\,dt$ であり、積分の形の Minkowski の不等式と $L^p$ ノルムの平行移動不変性から右辺の評価を得る。一般の $u$ には、$C_c^\infty(\mathbb R^d)$ の関数で $W^{1,p}$ ノルムで近似する(零境界Sobolev空間 の例「全空間」)。両辺は $W^{1,p}$ ノルムについて連続なので、評価は極限でも成り立つ。
段 2(積分).Tonelli の定理と変数変換 $y=x+h$ により
$$ [u]_{W^{s,p}(\mathbb R^d)}^p=\int_{\mathbb R^d}\frac{\|u(\cdot+h)-u\|_{L^p}^p}{|h|^{d+sp}}\,dh $$
である。$|h|<1$ の部分には段 1 を、$|h|\ge1$ の部分には $\|u(\cdot+h)-u\|_{L^p}\le2\|u\|_{L^p}$ を使うと、極座標で
$$ [u]_{W^{s,p}}^p\le\|\nabla u\|_{L^p}^p\,\omega_{d-1}\int_0^1r^{p-1-sp}\,dr+2^p\|u\|_{L^p}^p\,\omega_{d-1}\int_1^\infty r^{-1-sp}\,dr $$
となり、1 の評価を得る($p-sp>0$ を使った)。
段 3(領域).2 の $\Omega$ には、Sobolev空間の延長作用素 の定理「$C^1$ 級の開集合の延長作用素」により、有界線形作用素 $P\colon W^{1,p}(\Omega)\to W^{1,p}(\mathbb R^d)$ で $Pu|_\Omega=u$ となるものがある。二重積分の範囲を $\Omega\times\Omega$ に縮めると値は増えないので、$[u]_{W^{s,p}(\Omega)}\le[Pu]_{W^{s,p}(\mathbb R^d)}$ であり、1 と $P$ の有界性から結論が従う。$\square$

2 で境界の正則性を完全に外すことはできない。単位円板から原点を先端とする細い尖った集合を除いた平面の有界領域で、$sp>1$ のとき $W^{1,p}(\Omega)\not\subset W^{s,p}(\Omega)$ となる例がある(DPV12 Example 9.1、pp. 59–63。この記事では証明しない)。同論文の Proposition 2.2(p. 8)は、境界が有界な Lipschitz 領域について 2 と同じ包含を述べている。

$p=2$ のときの Fourier 変換による特徴づけ

この節では $\Omega=\mathbb R^d$、$p=2$ とし、関数は複素数値とする。Fourier 変換を $\widehat u(\xi):=\int_{\mathbb R^d}e^{-ix\cdot\xi}u(x)\,dx$ とし、$L^2$ へは Plancherelの定理 で延ばす。この正規化では $\int|\widehat u|^2\,d\xi=(2\pi)^d\int|u|^2\,dx$ である。$\langle\xi\rangle:=(1+|\xi|^2)^{1/2}$ と書き、実数 $s\ge0$ について
$$ H^s(\mathbb R^d):=\Bigl\{u\in L^2(\mathbb R^d)\Bigm|\|u\|_{H^s}^2:=(2\pi)^{-d}\int_{\mathbb R^d}\langle\xi\rangle^{2s}|\widehat u(\xi)|^2\,d\xi<\infty\Bigr\} $$
とおく。これは 楕円正則性 の定義「Sobolev 空間 $H^s(\mathbb R^n)$」と同じ空間・同じノルムである(同記事は $(2\pi)^{-d/2}$ を Fourier 変換の側に付けている)。

Fourier 変換による特徴づけ

$0< s<1$ とし、
$$ c_{d,s}:=\int_{\mathbb R^d}\frac{|e^{i\eta_1}-1|^2}{|\eta|^{d+2s}}\,d\eta=2\int_{\mathbb R^d}\frac{1-\cos\eta_1}{|\eta|^{d+2s}}\,d\eta $$
とおく($\eta_1$ は $\eta$ の第 1 成分)。このとき $0< c_{d,s}<\infty$ であり、すべての $u\in L^2(\mathbb R^d)$ について
$$ [u]_{W^{s,2}(\mathbb R^d)}^2=c_{d,s}\,(2\pi)^{-d}\int_{\mathbb R^d}|\xi|^{2s}|\widehat u(\xi)|^2\,d\xi $$
が成り立つ(両辺が $\infty$ の場合も含む)。

段 1(定数).$|e^{i\eta_1}-1|\le\min\{|\eta_1|,2\}\le\min\{|\eta|,2\}$ なので、
$$ c_{d,s}\le\int_{|\eta|<1}|\eta|^{2-d-2s}\,d\eta+4\int_{|\eta|\ge1}|\eta|^{-d-2s}\,d\eta=\frac{\omega_{d-1}}{2-2s}+\frac{4\,\omega_{d-1}}{2s}<\infty $$
である。被積分関数は非負で、$\eta_1\notin2\pi\mathbb Z$ となる $\eta$(ほとんどすべての $\eta$)で正なので、$c_{d,s}>0$ である。
段 2(1 つの $h$ ごとの Plancherel).$h\in\mathbb R^d$ を固定し、$g_h:=u(\cdot+h)-u$ とおく。$\widehat{u(\cdot+h)}(\xi)=e^{ih\cdot\xi}\widehat u(\xi)$ なので $\widehat{g_h}(\xi)=(e^{ih\cdot\xi}-1)\widehat u(\xi)$ であり、
$$ \int_{\mathbb R^d}|u(x+h)-u(x)|^2\,dx=(2\pi)^{-d}\int_{\mathbb R^d}|e^{ih\cdot\xi}-1|^2\,|\widehat u(\xi)|^2\,d\xi $$
である。
段 3($h$ で積分).変数変換 $y=x+h$ と Tonelli の定理(被積分関数はすべて非負)により
$$ [u]_{W^{s,2}}^2=\int_{\mathbb R^d}\frac{\|g_h\|_{L^2}^2}{|h|^{d+2s}}\,dh=(2\pi)^{-d}\int_{\mathbb R^d}|\widehat u(\xi)|^2\,I(\xi)\,d\xi,\qquad I(\xi):=\int_{\mathbb R^d}\frac{|e^{ih\cdot\xi}-1|^2}{|h|^{d+2s}}\,dh $$
である。
段 4($I(\xi)$ の計算).$I(0)=0$ である。$\xi\ne0$ なら、直交行列 $R$ を $R\xi=|\xi|e_1$ となるようにとり、$h=R^{\mathsf T}\eta/|\xi|$ と変数変換する。$h\cdot\xi=\eta\cdot R\xi/|\xi|=\eta_1$、$|h|=|\eta|/|\xi|$、$dh=|\xi|^{-d}d\eta$ なので
$$ I(\xi)=\int_{\mathbb R^d}\frac{|e^{i\eta_1}-1|^2}{(|\eta|/|\xi|)^{d+2s}}\,|\xi|^{-d}\,d\eta=c_{d,s}|\xi|^{2s} $$
である。段 3 に代入すれば主張を得る。$\square$

$W^{s,2}(\mathbb R^d)=H^s(\mathbb R^d)$

$0< s<1$ なら $W^{s,2}(\mathbb R^d)=H^s(\mathbb R^d)$ であり、$m:=\min\{1,c_{d,s}\}$、$M:=\max\{1,c_{d,s}\}$ として
$$ m\,\|u\|_{H^s}^2\le\|u\|_{W^{s,2}}^2\le2M\,\|u\|_{H^s}^2 $$
が成り立つ。$s>1$ が整数でないときも $W^{s,2}(\mathbb R^d)=H^s(\mathbb R^d)$ であり、ノルムは同値である。

thm-ss-fourier と Plancherel の定理から $\|u\|_{W^{s,2}}^2=(2\pi)^{-d}\int(1+c_{d,s}|\xi|^{2s})|\widehat u|^2\,d\xi$ である。$0< s\le1$ なので $\max\{1,|\xi|^{2s}\}\le\langle\xi\rangle^{2s}\le1+|\xi|^{2s}\le2\max\{1,|\xi|^{2s}\}$ であり、$m(1+|\xi|^{2s})\le1+c_{d,s}|\xi|^{2s}\le M(1+|\xi|^{2s})$ と合わせて評価を得る。
$s=k+\sigma$($k\ge1$ は整数、$0< \sigma<1$)のときは、$H^k(\mathbb R^d)=W^{k,2}(\mathbb R^d)$(楕円正則性 の定義「Sobolev 空間 $H^s(\mathbb R^n)$」の後の注意 4)と $\widehat{D^\alpha u}=(i\xi)^\alpha\widehat u$ により、$\|u\|_{W^{s,2}}^2$ は $(2\pi)^{-d}\int\bigl(w_k(\xi)+c_{d,\sigma}|\xi|^{2\sigma}\sum_{|\alpha|=k}\xi^{2\alpha}\bigr)|\widehat u|^2\,d\xi$ に等しい。ここで $w_k(\xi):=\sum_{|\alpha|\le k}\xi^{2\alpha}$ は $\langle\xi\rangle^{2k}$ と同値な重みである。正の定数 $a,b$ で $a|\xi|^{2k}\le\sum_{|\alpha|=k}\xi^{2\alpha}\le b|\xi|^{2k}$ となるので(中辺の和は $2k$ 次の同次式で、単位球面上で正の連続関数である)、重みは $\langle\xi\rangle^{2k}+|\xi|^{2s}$ と同値であり、これは $\langle\xi\rangle^{2s}$ と同値である。$\square$

$p\ne2$ では Plancherel の定理が使えないので、この節の方法は使えない。$W^{s,p}(\mathbb R^d)$ と Fourier 変換で定める空間 $\{u\mid(\langle\xi\rangle^s\widehat u)^\vee\in L^p\}$ の関係は、この記事では扱わない。

トレースの像

$N\ge2$ とし、半空間 $\mathbb R^N_+=\{x_N>0\}$ の境界を $\mathbb R^{N-1}$ と同一視する。トレース作用素 $\gamma\colon H^1(\mathbb R^N_+)\to L^2(\mathbb R^{N-1})$ は トレース作用素 の定理「トレース定理(半空間)」のものである。

半空間の $H^1$ のトレースの像

$\gamma(H^1(\mathbb R^N_+))=W^{1/2,2}(\mathbb R^{N-1})$ である。さらに、$c:=c_{N-1,1/2}$ として
$$ \|\gamma u\|_{W^{1/2,2}(\mathbb R^{N-1})}^2\le2\max\{1,c\}\,\|u\|_{H^1(\mathbb R^N_+)}^2 $$
が成り立ち、線形作用素 $E\colon W^{1/2,2}(\mathbb R^{N-1})\to H^1(\mathbb R^N_+)$ で $\gamma\circ E$ が恒等写像、$\|Eg\|_{H^1}^2\le\min\{1,c\}^{-1}\|g\|_{W^{1/2,2}}^2$ となるものがある。

トレース作用素 の定理「$H^1$ のトレースの像」は、同記事の Fourier 変換によるノルム(この記事の $\|\cdot\|_{H^{1/2}}$ と同じもの)で、$\gamma(H^1(\mathbb R^N_+))=H^{1/2}(\mathbb R^{N-1})$、$\|\gamma u\|_{H^{1/2}}\le\|u\|_{H^1}$ と、等長な右逆 $E$($\|Eg\|_{H^1}=\|g\|_{H^{1/2}}$)を与える。cor-ss-hs を $d=N-1$、$s=1/2$ で当てると、$H^{1/2}(\mathbb R^{N-1})=W^{1/2,2}(\mathbb R^{N-1})$ であり、ノルムの比較から 2 つの評価を得る。$\square$

$\Omega\subset\mathbb R^N$ が有界で境界 $\Gamma$ が $C^1$ 級なら、$\Gamma$ 上の $W^{s,p}(\Gamma)$ は局所座標と 1 の分割で定義され、トレース作用素 $\gamma\colon W^{1,p}(\Omega)\to L^p(\Gamma)$($1< p<\infty$)について、像がちょうど $W^{1-1/p,p}(\Gamma)$ であり $\|\gamma u\|_{W^{1-1/p,p}(\Gamma)}\le C\|u\|_{W^{1,p}(\Omega)}$ である(Bre11 第 9 章の注釈 6・7、pp. 314–315。証明は Gag57 の定理 [1.I](pp. 289–299)にある。この記事では証明しない)。Gag57 は境界が局所的に Lipschitz 関数のグラフである有界開集合を扱い、境界上のノルムとして、面積測度 $d\Gamma$ についての $\int_\Gamma|\varphi|^p\,d\Gamma+\int_{\Gamma\times\Gamma}\frac{|\varphi(P_1)-\varphi(P_2)|^p}{|P_1-P_2|^{p+N-2}}\,d\Gamma_{P_1}d\Gamma_{P_2}$ の $1/p$ 乗と同値なものを使っている(p. 289)。指数は $p+N-2=(N-1)+(1-1/p)p$ で、$\Gamma$ の次元 $N-1$ と $s=1-1/p$ の Gagliardo 半ノルムの指数に当たる。$p=2$ では像が $W^{1/2,2}(\Gamma)$ であり、境界値問題 $-\Delta u+u=f$、$u=g$($\Gamma$ 上)を $H^1(\Omega)$ で変分法により解くには、$g\in W^{1/2,2}(\Gamma)$ であれば $g$ を境界値にもつ $H^1(\Omega)$ の関数がとれるので十分である(Bre11 §9.5 の脚注 22、p. 293)。$p=2$ では、半空間の thm-ss-trace を局所座標で貼り合わせるのが証明の方針である。

例

区間の指示関数

$d=1$、$0< s<1$ とし、$u:=\mathbf 1_{(0,1)}$ を区間 $(0,1)$ の指示関数とする。$u\in W^{s,p}(\mathbb R)$ となるのは $sp<1$ のときに限り、そのとき
$$ [u]_{W^{s,p}(\mathbb R)}^p=\frac{4}{sp(1-sp)} $$
である。

$|u(x)-u(y)|$ は、$x,y$ の一方だけが $(0,1)$ に入るとき $1$、それ以外は $0$ である(端点は測度 $0$)。対称性から
$$ [u]_{W^{s,p}}^p=2\int_0^1\Bigl(\int_{-\infty}^0\frac{dy}{(x-y)^{1+sp}}+\int_1^\infty\frac{dy}{(y-x)^{1+sp}}\Bigr)dx=\frac{2}{sp}\int_0^1\bigl(x^{-sp}+(1-x)^{-sp}\bigr)\,dx $$
である。右辺は $sp<1$ のとき $\frac{2}{sp}\cdot\frac{2}{1-sp}$ に等しく、$sp\ge1$ のとき発散する。$u\in L^p(\mathbb R)$ は明らかである。$\square$

$W^{1,p}(\mathbb R)$ の元は連続な代表をもつので跳びをもてないが、$sp<1$ なら $W^{s,p}(\mathbb R)$ の元は跳びをもてる。$p=2$、$s=1/2$ はちょうど境目で、$\mathbf 1_{(0,1)}\notin W^{1/2,2}(\mathbb R)$ である。thm-ss-trace($N=2$)と合わせると、境界の直線上で跳ぶ値 $\mathbf 1_{(0,1)}$ は、$L^2(\mathbb R)$ の元であるにもかかわらず、$H^1(\mathbb R^2_+)$ のどの関数のトレースでもない。

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$s<1$(def-ss-main の式に $s=1$ を入れる)$0$ でない $u\in C_c^\infty(\mathbb R)$Gagliardo 半ノルムが有限であること
$sp<1$(ex-ss-indicator)$\mathbf 1_{(0,1)}$、$sp\ge1$$W^{s,p}(\mathbb R)$ に属すること
境界の正則性(thm-ss-w1p の 2)尖った集合を除いた円板(DPV12 Example 9.1、$sp>1$)$W^{1,p}(\Omega)\subset W^{s,p}(\Omega)$
$g\in W^{1/2,2}$(thm-ss-trace の像)$N=2$、$g=\mathbf 1_{(0,1)}\in L^2(\mathbb R)$$g$ をトレースにもつ $H^1(\mathbb R^2_+)$ の関数があること

1 行目は、Gagliardo 半ノルムをそのまま $s=1$ にしても $W^{1,p}$ は得られないことを示す。

表の 1 行目の確かめ

$u\in C_c^\infty(\mathbb R)$ が $0$ でなければ、$1\le p<\infty$ について $\displaystyle\int_{\mathbb R}\int_{\mathbb R}\frac{|u(x)-u(y)|^p}{|x-y|^{1+p}}\,dx\,dy=\infty$ である。

$u$ は定数でないので $u'(x_0)\ne0$ となる $x_0$ があり、$\delta>0$ と $c>0$ を $|x-x_0|< 2\delta$ で $|u'(x)|\ge c$ となるようにとる。$|x-x_0|< \delta$、$|x-y|< \delta$ なら $x,y$ はこの区間に入るので、平均値の定理から $|u(x)-u(y)|\ge c|x-y|$ である。よって積分は $c^p\int_{x_0-\delta}^{x_0+\delta}\int_{|t|< \delta}|t|^{-1}\,dt\,dx=\infty$ 以上である。$\square$

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, §9.5 の脚注 22(p. 293)、Comments on Chapter 9 の 6(分数階 Sobolev 空間、p. 314)・7(トレースの理論、p. 315)
[3]
Emilio Gagliardo, Caratterizzazioni delle tracce sulla frontiera relative ad alcune classi di funzioni in n variabili, Rendiconti del Seminario Matematico della Università di Padova, 1957, pp. 284–305(境界上のノルム (1.3) と同値なノルム p. 289、定理 [1.I] pp. 289–290、その証明 §2 pp. 290–299)

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