正則埋め込み(regular immersion)とは、局所 Noether スキーム $Y$ への埋め込み $X\to Y$ であって、各点 $x$ で $\mathcal{O}_{X,x}$ への全射の核が $\mathcal{O}_{Y,y}$ の正則列で生成されるものをいう。部分スキームが局所的に独立な方程式で切り出される状況を表し、余次元 $n$ なら余法層 $\mathcal{J}/\mathcal{J}^2$ は階数 $n$ の局所自由層で、局所環の次元はちょうど $n$ 下がる。正則埋め込みは合成で閉じて余法層の短完全列を与え、平坦な底変換で保たれ、平坦な族ではファイバーで判定できる。法束の代数的な定義、交叉理論の Gysin 引き戻し、局所完全交叉射の定義の土台になる。
前提知識: 閉部分スキーム, 正則列, 局所Noetherスキーム, 平坦射, 局所自由層
スキームの部分スキームが「互いに独立な $n$ 本の方程式で局所的に切り出される」という状況を表すのが正則埋め込みである。平面曲線 $\{f=0\}\subset\mathbb{A}^2$ や、方程式を一つずつ課すたびに次元がちょうど一つ下がる射影空間の部分スキームがその典型であり、余次元 $n$ の正則埋め込みでは余法層が階数 $n$ の局所自由層になる。これにより、法束を代数的に定義し、交叉理論の Gysin 引き戻しや標準層の計算を行うことができる。
この記事では、正則埋め込みを局所環の正則列で定義し、余法層が局所自由であること、正則になる点が開集合をなすこと、局所環の次元が $n$ だけ下がることを示す。主定理として、正則埋め込みが合成で閉じて余法層の完全列が得られること、平坦な底変換で保たれることを証明し、平坦なファイバーで判定できることを述べる。
以下、スキームの射 $i\colon X\to Y$ が埋め込み(immersion)であるとは、$Y$ のある開部分スキーム $V$ が存在して、$i$ が $X$ から $V$ への閉埋め込みを経由することをいう。このとき $V$ における $X$ のイデアル層を $\mathcal{J}\subset\mathcal{O}_V$ と書く。$x\in X$、$y=i(x)$ に対し、全射 $\mathcal{O}_{Y,y}\to\mathcal{O}_{X,x}$ の核を $J_x$ と書くと、$J_x=\mathcal{J}_y$ である。$\mathcal{O}_{X,x}\ne0$ なので $J_x$ は $\mathcal{O}_{Y,y}$ の極大イデアルに含まれる。
$Y$ を局所Noetherスキーム、$i\colon X\to Y$ を埋め込み、$x\in X$、$y=i(x)$ とする。$J_x\subset\mathcal{O}_{Y,y}$ が $\mathcal{O}_{Y,y}$ の正則列 $a_1,\dots,a_n$ で生成されるとき、$i$ は $x$ で正則(余次元 $n$)であるという。すべての点で正則なとき、$i$ を正則埋め込み(regular immersion)という。閉埋め込みでもあるときは正則閉埋め込みという。
正則列の規約により、最後の商 $\mathcal{O}_{Y,y}/(a_1,\dots,a_n)=\mathcal{O}_{X,x}$ は零でない。$n$ は $x$ だけで決まる(cor-ri-conormal)。$n=0$ は $J_x=0$ の場合である。
埋め込み $i\colon X\to Y$ について、$\mathcal{J}/\mathcal{J}^2$ は $\mathcal{J}$ で消されるので $\mathcal{O}_X$ 加群とみなせる。これを $X$ の $Y$ における余法層(conormal sheaf)といい $\mathcal{C}_{X/Y}$ と書く。茎は $\mathcal{C}_{X/Y,x}=J_x/J_x^2$ である。その双対 $\mathcal{N}_{X/Y}:=\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_X}(\mathcal{C}_{X/Y},\mathcal{O}_X)$ を法層という。
$\mathcal{C}_{X/Y}$ は $V$ の選び方によらない($V'\subset V$ に取り替えても、$\mathcal{J}$ の $V'$ への制限が $V'$ でのイデアル層である)。法束 の定義「余法層と法層」と同じものである。
$A$ を環、$I\subset A$ を正則列 $a_1,\dots,a_n$ で生成されるイデアルとする。このとき $a_1,\dots,a_n$ の $I/I^2$ における像は、$I/I^2$ の $A/I$ 加群としての基底である。とくに $I/I^2$ は階数 $n$ の自由 $A/I$ 加群である。
まず「$\sum_{i=1}^na_ix_i=0$($x_i\in A$)ならすべての $x_i\in I$」を $n$ についての帰納法で示す。$n=1$ では $a_1$ が非零因子なので $x_1=0$ である。$n\ge2$ とする。$a_nx_n\in(a_1,\dots,a_{n-1})$ で、$a_n$ は $A/(a_1,\dots,a_{n-1})$ の非零因子なので $x_n=\sum_{i< n}a_iy_i$ と書ける。すると $\sum_{i< n}a_i(x_i+a_ny_i)=0$ であり、$a_1,\dots,a_{n-1}$ も正則列なので帰納法の仮定から $x_i+a_ny_i\in(a_1,\dots,a_{n-1})$、よって $x_i\in I$ である。
次に $\sum_ia_ix_i\in I^2=\sum_ia_iI$ とすると、ある $z_i\in I$ で $\sum_ia_i(x_i-z_i)=0$ となり、前段から $x_i-z_i\in I$、すなわち $x_i\in I$ である。よって像は $A/I$ 上一次独立であり、$I$ を生成するので基底である。$\square$
$i\colon X\to Y$ が $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みなら、$\mathcal{C}_{X/Y,x}$ は階数 $n$ の自由 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群であり、$n=\dim_{\kappa(x)}J_x/\mathfrak{m}_yJ_x$ は $J_x$ の極小生成系の個数に等しい。$i$ が正則埋め込みなら $\mathcal{C}_{X/Y}$ と $\mathcal{N}_{X/Y}$ は局所自由層であり、$X$ が連結なら階数は一定である。
lem-ri-conormal-free を $A=\mathcal{O}_{Y,y}$、$I=J_x$ に使う。$J_x^2\subset\mathfrak{m}_yJ_x$ なので $J_x/\mathfrak{m}_yJ_x=(J_x/J_x^2)\otimes\kappa(x)$ は $n$ 次元であり、中山の補題によりこれは極小生成系の個数である。$\mathcal{C}_{X/Y}$ は局所 Noether スキーム上の連接層で茎がすべて自由なので、局所自由層 の定理「局所自由層の特徴づけ」により局所自由である。階数の一定性は同じ記事の命題「階数の局所定数性と連接性」による。$\square$
$i\colon X\to Y$ を埋め込み、$Y$ を局所 Noether とする。$i$ が $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みなら、$y=i(x)$ のアフィン開近傍 $W=\operatorname{Spec}A\subset V$ と $A$ の正則列 $a_1,\dots,a_n$ で $\mathcal{J}(W)=(a_1,\dots,a_n)$ となるものがあり、$i$ は $X\cap W$ の各点で余次元 $n$ の正則埋め込みである。とくに $i$ が正則になる点の集合は $X$ の開集合である。
要点:正則性が破れる部分は有限生成加群の台なので閉であり、$x$ を含まない。
$y$ のアフィン開近傍 $\operatorname{Spec}A\subset V$ をとり、$\mathfrak p$ を $y$ に対応する素イデアル、$\mathcal{J}(\operatorname{Spec}A)=J$ とする。$J_{\mathfrak p}$ を生成する正則列は、分母を払うと $J$ の元 $a_1,\dots,a_n$ とみなせる。$J/(a_1,\dots,a_n)$ は有限生成 $A$ 加群で $\mathfrak p$ での局所化が零なので、ある $s\notin\mathfrak p$ について $s$ で局所化すると零である。$A$ を $A_s$ に取り替えて $J=(a_1,\dots,a_n)$ としてよい。
次に $K_j:=\{u\in A/(a_1,\dots,a_{j-1})\mid a_ju=0\}$ は有限生成 $A$ 加群で、局所化は完全なので $(K_j)_{\mathfrak p}$ は $a_j$ の $A_{\mathfrak p}/(a_1,\dots,a_{j-1})$ 上の作用の核、すなわち零である。再びある $s\notin\mathfrak p$ で $A_s$ に取り替えると、すべての $K_j$ が零になり、$a_1,\dots,a_n$ の各段の掛け算は単射である。$X\cap W\ne\emptyset$ なので $A/J\ne0$ であり、$a_1,\dots,a_n$ は $A$ の正則列である。
$X\cap W$ の点 $x'$ に対応する素イデアル $\mathfrak q\supset J$ では $(A/J)_{\mathfrak q}\ne0$ なので、正則列 の命題「正則列の局所化」により局所化した列は $A_{\mathfrak q}$ の正則列で $J_{x'}$ を生成する。$\square$
$i$ が $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みなら
$$
\dim\mathcal{O}_{X,x}=\dim\mathcal{O}_{Y,y}-n
$$
である。とくに $n\le\dim\mathcal{O}_{Y,y}$ である。
$\mathcal{O}_{Y,y}$ は零でない Noether 局所環で、$J_x$ を生成する正則列は極大イデアルに含まれる。完全交叉局所環 の系「有限正則列による次元低下」を当てればよい。$\square$
たとえば $Y$ の閉点 $y$ を被約な一点 $\operatorname{Spec}\kappa(y)\to Y$ として埋め込むと、$J=\mathfrak m_y$ であり、この埋め込みが正則であることと $\mathcal{O}_{Y,y}$ が正則局所環であることは同値である。実際、正則なら prop-ri-dimension により $n=\dim\mathcal{O}_{Y,y}$ で、cor-ri-conormal により $\mathfrak m_y$ は $n$ 個の元で生成される。逆に正則局所環の正則パラメータ系は正則列である(正則局所環 の命題「正則パラメータ系は正則列で、正則局所環は Cohen–Macaulay」)。
埋め込み $f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to Z$ について、$x\in X$、$y=f(x)$、$z=g(y)$ とし、$\mathcal{O}_{Z,z}$ の中のイデアル
$$
K:=\ker(\mathcal{O}_{Z,z}\to\mathcal{O}_{Y,y}),\qquad L:=\ker(\mathcal{O}_{Z,z}\to\mathcal{O}_{X,x})
$$
を考えると $K\subset L$ であり、$L/K=J_x:=\ker(\mathcal{O}_{Y,y}\to\mathcal{O}_{X,x})$ である。包含 $K\subset L$ と商 $L\to L/K$ から、$\mathcal{O}_{X,x}$ 加群の列
$$
(K/K^2)\otimes_{\mathcal{O}_{Y,y}}\mathcal{O}_{X,x}\xrightarrow{\ \alpha\ }L/L^2\xrightarrow{\ \beta\ }J_x/J_x^2\to0
$$
が得られ、$\beta$ は全射、$\beta\circ\alpha=0$、$\ker\beta=(K+L^2)/L^2=\operatorname{im}\alpha$ である。これらは層の射 $f^*\mathcal{C}_{Y/Z}\to\mathcal{C}_{X/Z}\to\mathcal{C}_{X/Y}\to0$ の茎であり、この列は一般の埋め込みで完全である。
$Z$ を局所 Noether スキーム、$f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to Z$ を埋め込みとし、$f$ が $x$ で余次元 $n$、$g$ が $f(x)$ で余次元 $m$ の正則埋め込みであるとする。このとき $g\circ f$ は $x$ で余次元 $n+m$ の正則埋め込みであり、$x$ の近傍で
$$
0\to f^*\mathcal{C}_{Y/Z}\xrightarrow{\ \alpha\ }\mathcal{C}_{X/Z}\xrightarrow{\ \beta\ }\mathcal{C}_{X/Y}\to0
$$
は局所自由層の完全列である。とくに $f,g$ が正則埋め込みなら $g\circ f$ も正則埋め込みであり、この列は $X$ 全体で完全である。
$R:=\mathcal{O}_{Z,z}$ とし、上の記号を使う。仮定から $K=(g_1,\dots,g_m)$ は $R$ の正則列で生成され、$B:=R/K=\mathcal{O}_{Y,y}$ の中で $J_x=(\bar f_1,\dots,\bar f_n)$ は $B$ の正則列で生成される。$\bar f_j$ を $f_j\in R$ に持ち上げると
$$
L=(g_1,\dots,g_m,f_1,\dots,f_n)
$$
である。$g_1,\dots,g_m$ は $R$ の正則列で、残りの列 $f_1,\dots,f_n$ の像は $R/(g)=B$ の正則列だから、正則列 の命題「初期部分と連結」により $(g,f)$ は $R$ の正則列である。よって $g\circ f$ は $x$ で余次元 $n+m$ の正則埋め込みである。
lem-ri-conormal-free により、$K/K^2$ は $g_1,\dots,g_m$ の像を基底とする自由 $B$ 加群、$L/L^2$ は $g_1,\dots,g_m,f_1,\dots,f_n$ の像を基底とする自由 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群、$J_x/J_x^2$ は $\bar f_1,\dots,\bar f_n$ の像を基底とする自由 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群である。$\alpha$ は $g_i\otimes1$ を $L/L^2$ の基底の一部 $g_i$ に写すので単射であり、$\beta$ は $g_i$ を $0$ に、$f_j$ を $\bar f_j$ に写す。よって茎の列は完全である。prop-ri-open により $x$ の近傍のすべての点で同じ議論ができ、層の列が完全であることは茎で確かめればよい。$\square$
逆向きは成り立たない。$g\circ f$ と $g$ が正則でも $f$ は正則とは限らない(下の反例の表の 2 行目)。一方、$f$ と $g\circ f$ が $x$ で正則なら $g$ は $f(x)$ で正則になる(Liu06 演習 6.3.3。この記事では証明しない)。
埋め込み $i\colon X\to Y$ と射 $u\colon Y'\to Y$ に対し、$X':=X\times_YY'\to Y'$ は埋め込みであり、$p\colon X'\to X$ を射影とする。$Y$ のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ の上で $X=\operatorname{Spec}A/I$ とし、$\operatorname{Spec}A'\subset u^{-1}(\operatorname{Spec}A)$ をとると、$X'$ は $\operatorname{Spec}A'/IA'$ である。
上の記号で、$Y$ と $Y'$ を局所 Noether とする。
平坦でない底変換では、正則性が保たれない例(下の反例の表の 1 行目)がある。正則性が保たれても余次元は変わりうる。たとえば原点 $\{0\}\to\mathbb{A}^1_k$ を $\{0\}$ 自身へ底変換すると $\{0\}\to\{0\}$ は恒等射になり、余法層は階数 $1$ から $0$ になって 1 の全射は同型でない。
$S$ を局所 Noether スキーム、$X,Y$ を局所 Noether な $S$ スキーム、$i\colon X\to Y$ を $S$ 上の埋め込みとする。$s\in S$、$x\in X_s$ について、$X$ と $Y$ が $x$ で $S$ 上平坦で、ファイバーの埋め込み $i_s\colon X_s\to Y_s$ が $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みなら、$i$ は $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みである。
要点:ファイバーの正則列を持ち上げると、中山の補題で $J_x$ を生成し、平坦性により正則列のまま持ち上がる。
$A:=\mathcal{O}_{S,s}$、$\mathfrak m:=\mathfrak m_A$、$B:=\mathcal{O}_{Y,i(x)}$、$J:=J_x$ とおく。$0\to J\to B\to\mathcal{O}_{X,x}\to0$ に $\kappa(s)=A/\mathfrak m$ をテンソルすると、$\mathcal{O}_{X,x}$ は $A$ 平坦で $\operatorname{Tor}^A_1(\kappa(s),\mathcal{O}_{X,x})=0$ なので $0\to J/\mathfrak mJ\to B/\mathfrak mB\to\mathcal{O}_{X_s,x}\to0$ は完全である。よってファイバーの局所環 $\mathcal{O}_{Y_s,i(x)}=B/\mathfrak mB$ での核は $J/\mathfrak mJ$ の像である。仮定からその核は $B/\mathfrak mB$ の正則列 $\bar a_1,\dots,\bar a_n$ で生成されるので、これを $a_j\in J$ に持ち上げると $J=(a_1,\dots,a_n)+\mathfrak mJ$ となる。$\mathfrak mB\subset\mathfrak m_B$ なので中山の補題により $J=(a_1,\dots,a_n)$ である。
$B$ は $A$ 平坦で $\bar a_1,\dots,\bar a_n$ は閉ファイバー $B/\mathfrak mB$ の正則列だから、完全交叉局所環 の補題「本節で使う局所平坦判定と正則元の持上げ」($M=B$)により $a_1,\dots,a_n$ はこの順で $B$ の正則列である。$\square$
逆に、$i$ が $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みで $X,Y$ が $x$ で $S$ 上平坦なら、ファイバーの埋め込み $i_s$ も $x$ で余次元 $n$ の正則埋め込みである。実際、prf-ri-fibre の記号で $J$ を生成する $B$ の正則列を $a_1,\dots,a_n$ とすると、Koszul複体 の定理「正則列のKoszulホモロジー」により $K_\bullet(a;B)$ は $B/J=\mathcal{O}_{X,x}$ の分解であり、各項は $B$ 上自由なので $A$ 平坦である。よって $\kappa(s)$ とテンソルした複体 $K_\bullet(\bar a;B/\mathfrak mB)$ の $1$ 次ホモロジーは $\operatorname{Tor}^A_1(\kappa(s),\mathcal{O}_{X,x})=0$ である。$B/\mathfrak mB$ は零でない Noether 局所環で $\bar a_j$ はその極大イデアルに入るので、Koszul複体 の定理「局所環での一次ホモロジー判定」により $\bar a_1,\dots,\bar a_n$ は $B/\mathfrak mB$ の正則列である。prf-ri-fibre の最初の段落のとおりファイバーでの核は $J$ の像なので、この正則列で生成される。この判定は、平坦な族のファイバーごとの性質から全体の性質を引き出すときに使い、局所完全交叉射 の命題「平坦な射のファイバーによる判定」の基礎になる。
余次元 $1$ の正則閉埋め込みは、イデアル層が局所的に一つの非零因子で生成される閉部分スキーム、すなわち有効な Cartier因子 $D\subset Y$ にほかならない。このとき $\mathcal{C}_{D/Y}=\mathcal{O}_Y(-D)|_D$ は可逆層であり、法層は $\mathcal{O}_Y(D)|_D$ である(法束 の命題「因子の法束」)。たとえば $k$ を体として、零でない多項式 $F\in k[x_1,\dots,x_n]\setminus k$ の零点 $V(F)\subset\mathbb{A}^n_k$ はどれもこの形である。$V(F)$ が特異点をもっていてもよい。
$A$ を Noether 環、$b_1,\dots,b_n\in A$ とし、$\sigma\colon\operatorname{Spec}A\to\mathbb{A}^n_A=\operatorname{Spec}A[T_1,\dots,T_n]$ を $T_j\mapsto b_j$ で定まる切断とする。$\sigma$ は閉埋め込みで、イデアルは $(T_1-b_1,\dots,T_n-b_n)$ である。$A[T]/(T_1-b_1,\dots,T_{j-1}-b_{j-1})\cong A[T_j,\dots,T_n]$ において $T_j-b_j$ は $T_j$ について最高次係数 $1$ の 1 次式なので非零因子であり、最後の商は $A\ne0$ だから、これは正則列である。よって $\sigma$ は余次元 $n$ の正則閉埋め込みで、lem-ri-conormal-free により $\mathcal{C}$ は $T_j-b_j$ の像を基底とする自由加群、すなわち $\sigma^*\Omega_{\mathbb{A}^n_A/A}$ と同型である。
より一般に、分離的な滑らかな射 $X\to Y$ の切断 $\sigma\colon Y\to X$ は正則閉埋め込みで $\mathcal{C}_{Y/X}\cong\sigma^*\Omega_{X/Y}$ であり、$S$ 上滑らかな 2 つのスキームの間の $S$ 上の埋め込み $f\colon X\to Y$ は正則埋め込みで、完全列 $0\to\mathcal{C}_{X/Y}\to f^*\Omega_{Y/S}\to\Omega_{X/S}\to0$ がある(Liu06 命題 6.3.13・系 6.3.14。この記事では証明しない)。
$k$ を体、$F_1,\dots,F_c\in k[x_0,\dots,x_n]$ を正の次数 $d_1,\dots,d_c$ の斉次多項式で正則列をなすものとする。$Y=V_+(F_1,\dots,F_c)\subset\mathbb{P}^n_k$ は余次元 $c$ の正則閉埋め込みであり、$\mathcal{C}_{Y/\mathbb{P}^n}\cong\bigoplus_j\mathcal{O}_Y(-d_j)$ である。証明は 完全交叉 の定理「完全交叉は正則埋め込み」にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 底変換 $u$ の平坦性(thm-ri-base-change の 2) | 原点 $\{0\}\to\mathbb{A}^1_k=\operatorname{Spec}k[t]$ を $\operatorname{Spec}k[t]/(t^2)\to\mathbb{A}^1_k$ で底変換 | 底変換 $\operatorname{Spec}k\to\operatorname{Spec}k[t]/(t^2)$ は正則でない |
| 合成の定理の仮定のうち「$f$ が正則」(結論から $f$ へ戻す向き) | $X=\{0\}$、$Y=V(xy)\subset Z=\mathbb{A}^2_k$ | $g$ と $g\circ f$ は正則だが $f\colon X\to Y$ は正則でない |
| $X$ の既約成分の余次元がそろうこと | $V(xz,yz)\subset\mathbb{A}^3_k$(平面と直線の和) | 原点で正則でない |
| 外の空間 $Y$ の局所環が正則(閉点の埋め込み) | 尖点曲線 $C=V(y^2-x^3)\subset\mathbb{A}^2_k$ の原点 $\operatorname{Spec}k\to C$ | 閉点の埋め込みが正則でない |
1 行目:底変換のイデアルは $k[t]/(t^2)$ の $(t)$ である。その生成元はどれも $t$ の単元倍で、$t\cdot t=0$ なので零因子である。よって $(t)$ は正則列で生成されない。$k[t]\to k[t]/(t^2)$ は平坦でない($t$ 倍の単射がテンソルで保たれない)。
2 行目:$g\circ f$ のイデアル $(x,y)$ は $k[x,y]$ の正則列で、$g$ のイデアル $(xy)$ も非零因子で生成される。一方 $\mathcal{O}_{Y,0}$ は 1 次元で、$f$ のイデアル $(x,y)\mathcal{O}_{Y,0}$ は 2 個未満の元では生成されない(その極小生成系の個数は $(x,y)/(x,y)^2$ の次元 $2$)。cor-ri-conormal と prop-ri-dimension により、正則なら生成元の個数は $\dim\mathcal{O}_{Y,0}-\dim\mathcal{O}_{X,0}=1$ でなければならない。
3 行目:$\dim\mathcal{O}_{\mathbb{A}^3,0}=3$、原点を通る平面の成分により $\dim\mathcal{O}_{X,0}=2$ なので、正則なら余次元は $1$ で、イデアル $(xz,yz)$ は原点で 1 個の元で生成されるはずである。しかし $(xz,yz)$ の元はすべて 2 次以上の項だけをもち、$\mathfrak m(xz,yz)$ の元は 3 次以上の項だけをもつので、$xz,yz$ の 2 次の部分が一次独立であることから極小生成系は 2 個の元からなる。
4 行目:$\mathcal{O}_{C,0}$ は 1 次元だが、極大イデアル $(x,y)$ は 1 個の元で生成されない($y^2-x^3\in(x,y)^2$ なので余接空間は 2 次元)。つまり $\mathcal{O}_{C,0}$ は正則局所環でなく、prop-ri-dimension の後の注意により原点の埋め込みは正則でない。
$i$ が余次元 $n$ の正則閉埋め込みで、アフィン開集合の上で $\mathcal{J}$ が正則列 $a_1,\dots,a_n$ で生成されるとき、Koszul複体 $K_\bullet(a_1,\dots,a_n)$ は $\mathcal{O}_X$ の長さ $n$ の自由分解を与える(Koszul複体 の定理「正則列のKoszulホモロジー」)。この分解を $\mathcal{O}_X$ とテンソルすると微分はすべて零になるので、$\mathcal{T}or_q^{\mathcal{O}_Y}(\mathcal{O}_X,\mathcal{O}_X)$ は局所的に $\wedge^q(\mathcal{O}_X^{\oplus n})\cong\wedge^q\mathcal{C}_{X/Y}$ と同型である。交叉理論 では正則埋め込みの法束を使って Gysin 引き戻しを定義する(Gysin写像)。正則埋め込みと滑らかな射の合成に局所的に分解する射が局所完全交叉射であり、そこでは余法層の行列式から相対標準層が作られる(双対化層)。
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