集合と論理:必要条件・十分条件

同義語:必要条件十分条件必要十分条件necessary and sufficient conditions

概要

集合と論理:必要条件・十分条件(necessary and sufficient conditions)とは、命題を否定・かつ・または・ならばで結び真偽を真理表で定める論理である。$P\Rightarrow Q$ は $P$ が真で $Q$ が偽のときだけ偽である。条件 $p,q$ について、全体集合のすべての $x$ で $p(x)\Rightarrow q(x)$ が成り立つことは $p,q$ の真理集合の包含 $T_p\subset T_q$ と同値で、このとき $p$ は $q$ の十分条件、$q$ は $p$ の必要条件である。$p\Rightarrow q$ は対偶 $\lnot q\Rightarrow\lnot p$ と同値だが、逆 $q\Rightarrow p$ とは一般に同値でない。量化子の否定は $\forall,\exists$ を入れ替え、条件を否定して作る。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 集合, 部分集合, 補集合, 実数

高校での出発点

高校では「命題」と「条件」を次のように習う。

  • $\sqrt2$ は無理数である、$1+1=3$ のように、正しい(真)か正しくない(偽)かが定まる文を命題という。
  • 「$x^2=1$」のように変数を含み、変数に値を入れると命題になるものを条件といい、条件 $p$ を満たす $x$ 全体の集合を $p$ の真理集合という。
十分条件と必要条件の最初の例

条件 $p$:「$x=1$」、$q$:「$x^2=1$」($x$ は実数)について、「$p\Rightarrow q$」は真、「$q\Rightarrow p$」は偽である($x=-1$ が反例)。このとき「$p$ は $q$ であるための十分条件」「$q$ は $p$ であるための必要条件」という。真理集合は $T_p=\{1\}$、$T_q=\{-1,1\}$ で、$T_p\subset T_q$ となっている(高校の教科書では真理集合を $P,Q$ と書くことが多いが、本記事では $P,Q$ を命題に使うので、条件 $p$ の真理集合を $T_p$ と書く)。

証明の方法としては、対偶と背理法を習う。

対偶と背理法の最初の例
  • 対偶:「整数 $n$ について、$n^2$ が偶数ならば $n$ は偶数」を示すには、対偶「$n$ が奇数ならば $n^2$ は奇数」を示せばよい。$n=2k+1$ なら $n^2=2(2k^2+2k)+1$ だからである。
  • 背理法:「$\sqrt2$ は無理数」を示すには、有理数だと仮定して矛盾を導く。

ここには、いくつかの「なぜ」が残っている。

  1. 前件が偽のとき「ならば」はなぜ真なのか。(→ rem-slns-vacuous)
  2. 必要条件・十分条件はなぜ集合の包含で判定できるのか。(→ thm-slns-inclusion)
  3. 対偶と背理法はどう違うのか。(→ thm-slns-contrapositive、prop-slns-contradiction)
  4. 「すべての」「ある」を含む文の否定はどう作るのか。(→ thm-slns-negation)
    本記事では、命題の結合、量化子、集合の演算を一つの枠組みで定義し、これらに答える。
    高校の計算大学の概念ボックス
    「ならば」の真偽論理結合子と真理表def-slns-connectives
    必要条件・十分条件の判定真理集合の包含 $T_p\subset T_q$thm-slns-inclusion
    対偶で証明する含意と対偶の論理的同値thm-slns-contrapositive
    背理法$\lnot R\Rightarrow(C\land\lnot C)$ と $R$ の論理的同値prop-slns-contradiction
    「すべて」「ある」の否定量化子の否定thm-slns-negation
    「かつ」「または」の否定de Morgan の法則thm-slns-de-morgan

命題と論理結合子

論理結合子

命題 $P,Q$ から、次の命題を作る。真偽は下の表で定める(T は真、F は偽)。

  • 否定 $\lnot P$($P$ でない)
  • 連言 $P\land Q$($P$ かつ $Q$)
  • 選言 $P\lor Q$($P$ または $Q$。両方真でもよい)
  • 含意 $P\Rightarrow Q$($P$ ならば $Q$)。$P$ を前件、$Q$ を後件という。
  • 同値 $P\Leftrightarrow Q$($(P\Rightarrow Q)\land(Q\Rightarrow P)$)
    $P$$Q$$\lnot P$$P\land Q$$P\lor Q$$P\Rightarrow Q$$P\Leftrightarrow Q$
    TTFTTTT
    TFFFTFF
    FTTFTTF
    FFTFFTT
    2 つの式が、成分の命題の真偽のどの組合せでも同じ真偽をとるとき、論理的に同値といい $\equiv$ で表す。
真理表を読む

$P$:「$2$ は偶数」(真)、$Q$:「$3$ は偶数」(偽)とすると、表の 2 行目により $P\land Q$ は偽、$P\lor Q$ は真、$P\Rightarrow Q$ は偽である。一方 $Q\Rightarrow P$ は、前件 $Q$ が偽で後件 $P$ が真なので(表の 3 行目の $P\Rightarrow Q$ と同じ型)真である。

$P\Rightarrow Q$ が偽になるのは「$P$ が真で $Q$ が偽」の 1 行だけである。したがって
$$ P\Rightarrow Q\ \equiv\ \lnot(P\land\lnot Q)\ \equiv\ \lnot P\lor Q $$
である(表の 4 行を比べればよい)。

前件が偽なら「ならば」が真である理由

数学で「ならば」を使うのは、ほとんどの場合「すべての $x$ について、$p(x)$ ならば $q(x)$」という形である。たとえば「実数 $x$ について、$x>2$ ならば $x^2>4$」は正しい主張として扱いたい。この主張が真であるためには、$x=3$(前件も後件も真)だけでなく、$x=0$(前件偽・後件偽)や $x=-3$(前件偽・後件真)でも「$x>2\Rightarrow x^2>4$」が真でなければならない。前件が偽の行を偽と定めると、この主張は $x=0$ のせいで偽になってしまう。前件が偽の行を真と定めるのは、「$p$ を満たすものは必ず $q$ を満たす」という主張を、$p$ を満たさないものが邪魔をしないように表すためである。「ならば」は約束であり、約束を破ったのは「$p$ なのに $q$ でない」場合だけだ、と考えてもよい(Ham25 §2.3)。

必要条件・十分条件と集合の包含

以下、変数の動く範囲 $U$(全体集合)を固定する。条件 $p(x)$ の真理集合を $T_p:=\{x\in U\mid p(x)\}$ と書く(命題を表す $P,Q$ と区別するため、真理集合には $T$ を使う)。$U$ の部分集合 $A$ について $A^c:=\{x\in U\mid x\notin A\}$ とする。

必要条件・十分条件

条件 $p,q$ について、すべての $x\in U$ で $p(x)\Rightarrow q(x)$ が真であるとき「$p\Rightarrow q$ が成り立つ」といい、$p$ は $q$ であるための十分条件、$q$ は $p$ であるための必要条件であるという。$p\Rightarrow q$ と $q\Rightarrow p$ がともに成り立つとき、$p$ は $q$ であるための必要十分条件である($p$ と $q$ は同値である)といい、$p\Leftrightarrow q$ と書く。

含意と包含

条件 $p,q$ と真理集合 $T_p,T_q$ について

  1. $p\Rightarrow q$ が成り立つことと $T_p\subset T_q$ は同値である。
  2. $p\Leftrightarrow q$ が成り立つことと $T_p=T_q$ は同値である。
  3. 条件 $\lnot p$、$p\land q$、$p\lor q$ の真理集合は、それぞれ $T_p^c$、$T_p\cap T_q$、$T_p\cup T_q$ である。
定義を書き下す
  1. $p\Rightarrow q$ が成り立たないのは、ある $x\in U$ で $p(x)\Rightarrow q(x)$ が偽、すなわち $p(x)$ が真で $q(x)$ が偽のときである。これは $x\in T_p$ かつ $x\notin T_q$ となる $x$ があること、すなわち $T_p\not\subset T_q$ と同じである。両方を否定して 1 を得る。
  2. 1 を 2 方向に使うと、$p\Leftrightarrow q$ は $T_p\subset T_q$ かつ $T_q\subset T_p$、すなわち $T_p=T_q$ と同値である。
  3. $x$ が $\lnot p$ の真理集合に属するのは $p(x)$ が偽のとき、すなわち $x\notin T_p$ のときである。$\land,\lor$ も表の定義からそのまま従う。$\square$

十分条件は小さいほうの集合、必要条件は大きいほうの集合である。ex-slns-start-condition の $T_p=\{1\}\subset T_q=\{-1,1\}$ は thm-slns-inclusion の 1 の例である。「$q$ でなければ $p$ でありえない」=「$p$ であるためには $q$ が必要」と読むとよい。

必要条件・十分条件の判定

$U=\mathbb{R}$ とする。

  1. $p$:$x^2<1$、$q$:$x<1$。$T_p=(-1,1)\subset T_q=(-\infty,1)$ なので $p$ は $q$ の十分条件である。$x=-2$ は $T_q$ に属するが $T_p$ に属さないので、必要条件ではない。
  2. $p$:$ab=0$、$q$:$a=0$ または $b=0$($U=\mathbb{R}^2$、$x=(a,b)$)。実数の積が $0$ なら一方が $0$、逆も成り立つので $T_p=T_q$、$p\Leftrightarrow q$ である。
  3. 整数全体を $U$ として、$p$:$6$ の倍数、$q$:$2$ の倍数。$T_p\subset T_q$ で $2\in T_q\setminus T_p$ なので、十分であるが必要でない。
反例:全体集合を変えると結論が変わる

$p$:$x^2=1$、$q$:$x=1$ とする(ex-slns-start-condition の $p,q$ を入れ替え、逆向きの含意を調べる)。$U=\mathbb{R}$ では $T_p=\{-1,1\}\not\subset T_q=\{1\}$ なので $p\Rightarrow q$ は成り立たない($x=-1$ が反例)。$U=(0,\infty)$ では $T_p=\{1\}=T_q$ なので $p\Leftrightarrow q$ である。「$p\Rightarrow q$ が成り立つか」は $p,q$ だけでなく $U$ にもよる。変数の範囲を書かない主張は、真偽が定まらないことがある。

2 次方程式の解の配置で「3 つの条件と同値」を示すときの必要・十分の使い分けは 解の配置 で扱う。

逆・裏・対偶

逆・裏・対偶

含意 $P\Rightarrow Q$ に対して、$Q\Rightarrow P$ を逆、$\lnot P\Rightarrow\lnot Q$ を裏、$\lnot Q\Rightarrow\lnot P$ を対偶という。条件 $p,q$ についても同様に定める。

対偶の原理

$P\Rightarrow Q\equiv\lnot Q\Rightarrow\lnot P$ であり、逆と裏も互いに論理的に同値である。一方、$P\Rightarrow Q$ と逆 $Q\Rightarrow P$ は論理的に同値でない。条件については、$p\Rightarrow q$ が成り立つことと $\lnot q\Rightarrow\lnot p$ が成り立つことは同値である。

真理表と補集合

$\lnot Q\Rightarrow\lnot P$ が偽になるのは $\lnot Q$ が真で $\lnot P$ が偽、すなわち $P$ が真で $Q$ が偽の行だけであり、$P\Rightarrow Q$ が偽になる行と一致する。逆 $Q\Rightarrow P$ と裏 $\lnot P\Rightarrow\lnot Q$ はどちらも「$Q$ が真で $P$ が偽」の行だけで偽なので同値である。$P$ が偽、$Q$ が真の行では $P\Rightarrow Q$ は真、$Q\Rightarrow P$ は偽なので、この二つは同値でない。条件 $p,q$ については、真理集合 $T_p,T_q$ について、thm-slns-inclusion により $T_p\subset T_q$ と $T_q^c\subset T_p^c$ の同値性を示せばよい。$T_p\subset T_q$ で $x\in T_q^c$ なら、$x\in T_p$ とすると $x\in T_q$ となり矛盾するので $x\in T_p^c$。逆は同じ議論を $T_q^c\subset T_p^c$ に使い、$(A^c)^c=A$ を用いる。$\square$

反例:逆と裏は成り立たない

$p$:$6$ の倍数、$q$:$2$ の倍数(整数全体)では、$p\Rightarrow q$ とその対偶「$2$ の倍数でなければ $6$ の倍数でない」は真、逆「$2$ の倍数なら $6$ の倍数」と裏「$6$ の倍数でなければ $2$ の倍数でない」は偽である($n=2$ が反例)。この例は「$p\Rightarrow q$ が成り立てば逆 $q\Rightarrow p$ も成り立つ」という主張を破る。

背理法と対偶による証明

命題 $p\Rightarrow q$(すべての $x\in U$ についての主張)を示す方法は三つある。

  • 直接証明:$p(x)$ を仮定して $q(x)$ を導く。
  • 対偶による証明:$\lnot q(x)$ を仮定して $\lnot p(x)$ を導く(thm-slns-contrapositive)。
  • 背理法:示したい命題 $R$ の否定 $\lnot R$ を仮定して、ある命題 $C$ について $C$ と $\lnot C$ の両方を導く。
背理法の正しさと含意の否定

命題 $R,C,P,Q$ について
$$ \bigl(\lnot R\Rightarrow(C\land\lnot C)\bigr)\equiv R,\qquad \lnot(P\Rightarrow Q)\equiv P\land\lnot Q . $$

真理表

$C\land\lnot C$ はつねに偽なので、$\lnot R\Rightarrow(C\land\lnot C)$ は前件 $\lnot R$ が偽のとき、すなわち $R$ が真のときだけ真である。後半は、$P\Rightarrow Q$ が偽になるのが「$P$ が真で $Q$ が偽」の行だけであることの言い換えである。$\square$

したがって $p\Rightarrow q$ を背理法で示すときは、「$p(x)$ かつ $\lnot q(x)$ となる $x$ がある」と仮定して矛盾を導く。対偶による証明は、この仮定から $\lnot p(x)$ を導き、仮定の $p(x)$ と矛盾させる特別な場合とみなせる。違いは次の点にある。

  • 対偶による証明は、ゴール $\lnot p$ が決まっている。仮定は $\lnot q$ だけで、途中の各段が正しい含意として独立に読める。
  • 背理法は、どんな矛盾を導いてもよいが、仮定が $p$ と $\lnot q$ の 2 つに増える。また含意の形をしていない命題(「$\sqrt2$ は無理数」「素数は無限にある」)にも使える。
対偶と背理法
  1. 対偶:整数 $n$ について「$n^2$ が偶数 $\Rightarrow$ $n$ が偶数」は、ex-slns-start-proofs で対偶を使って示した。次の 2 でこれを使う。
  2. 背理法:「$\sqrt2$ は無理数」。有理数と仮定し、$\sqrt2=\frac ab$($a,b$ は互いに素な正の整数)と書くと $a^2=2b^2$。$a^2$ が偶数なので 1 により $a$ は偶数、$a=2c$ とおくと $b^2=2c^2$ で $b$ も偶数となり、互いに素であることと矛盾する。含意の形をしていない命題なので、対偶による証明は直接には使えない。
反例:含意の否定を取り違える

「すべての実数 $x$ について、$x^2>1\Rightarrow x>1$」($R$ とする)は偽である($x=-2$)。正しい否定は、prop-slns-contradiction と次節の規則により「ある実数 $x$ で $x^2>1$ かつ $x\le1$」で、$x=-2$ により真である。一方「すべての実数 $x$ について $x^2>1\Rightarrow x\le1$」は $x=2$ で破れて偽であり、$R$ と同じく偽なので $R$ の否定ではない。「ならば」の否定は「ならば〜でない」ではなく「かつ〜でない」である。

背理法の典型例である $\sqrt2$ の無理数性の証明は 実数とは何か:無理数の証明 で扱う。

量化子と否定のつくり方

全称記号・存在記号

この節では、論理の本の習慣に合わせて、$x$ についての条件を $P(x)$ と大文字で書く($x$ に値を入れると命題になる)。集合 $X$ と、$x\in X$ についての条件 $P(x)$ について、「すべての $x\in X$ で $P(x)$ が真」を $\forall x\in X,\ P(x)$、「$P(x)$ が真となる $x\in X$ が少なくとも 1 つある」を $\exists x\in X,\ P(x)$ と書く。$\forall$ を全称記号、$\exists$ を存在記号といい、まとめて量化子という。

有限集合での量化子

$X=\{1,2,3\}$、$P(x)$:「$x^2>x$」とする。$P(1)$ は偽($1>1$ でない)、$P(2)$、$P(3)$ は真なので、$\forall x\in X,\ P(x)$ は偽、$\exists x\in X,\ P(x)$ は真である。真理集合は $T=\{2,3\}$ で、$T\ne X$、$T\ne\emptyset$ である。

$P(x)$ の真理集合を $T$ とすると、$\forall x\in X,\ P(x)$ は $T=X$、$\exists x\in X,\ P(x)$ は $T\ne\emptyset$ と同じである。def-slns-necessary-sufficient の「$p\Rightarrow q$ が成り立つ」は $\forall x\in U,\ (p(x)\Rightarrow q(x))$ にほかならない。

量化子の否定

$$ \lnot\bigl(\forall x\in X,\ P(x)\bigr)\equiv\exists x\in X,\ \lnot P(x),\qquad \lnot\bigl(\exists x\in X,\ P(x)\bigr)\equiv\forall x\in X,\ \lnot P(x). $$

真理集合で言い換える

条件 $P(x)$ の真理集合を $T$ とすると、$\lnot P(x)$ の真理集合は $X\setminus T$ である。左の式の左辺は $T\ne X$、右辺は $X\setminus T\ne\emptyset$ で、両者は同じことである。右の式の左辺は $T=\emptyset$、右辺は $X\setminus T=X$ で、これも同じことである。$\square$

量化子がいくつも並ぶときは、これを外側から繰り返し使う。すると量化子を左から順に $\forall\leftrightarrow\exists$ と入れ替え、最後の条件を否定するという規則になる。範囲の条件($\varepsilon>0$ など)はそのまま残し、含意 $A\Rightarrow B$ の否定は $A\land\lnot B$ にする(Ham25 §2.10)。

$\varepsilon$-$\delta$ の否定:不連続の証明

関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が $a$ で連続であるとは
$$ \forall\varepsilon>0,\ \exists\delta>0,\ \forall x\in\mathbb{R},\ \bigl(|x-a|<\delta\Rightarrow|f(x)-f(a)|<\varepsilon\bigr) $$
が成り立つことである。規則により、その否定($a$ で不連続)は
$$ \exists\varepsilon>0,\ \forall\delta>0,\ \exists x\in\mathbb{R},\ \bigl(|x-a|<\delta\land|f(x)-f(a)|\ge\varepsilon\bigr) $$
である。$f(x)=0$($x\le0$)、$f(x)=1$($x>0$)、$a=0$ とする。$\varepsilon=\frac12$ をとり、任意の $\delta>0$ に対して $x=\frac\delta2$ とすると、$|x|<\delta$ かつ $|f(x)-f(0)|=1\ge\frac12$。よって $f$ は $0$ で不連続である。

量化子の順序

同じ種類の量化子どうし($\forall x\,\forall y$ と $\forall y\,\forall x$)は入れ替えても意味が変わらない。しかし $\forall$ と $\exists$ を入れ替えると意味が変わる。

量化子の入れ替え

$\exists y\in Y,\ \forall x\in X,\ P(x,y)$ ならば $\forall x\in X,\ \exists y\in Y,\ P(x,y)$ である。逆は一般には成り立たない。

同じ $y$ を使う

前者を満たす $y_0$ をとると、どの $x$ に対しても $y=y_0$ が $P(x,y)$ を満たす。逆が成り立たない例は、$X=Y=\mathbb{R}$、$P(x,y)$:$y>x$ である。$\forall x,\ \exists y,\ y>x$ は $y=x+1$ で真。$\exists y,\ \forall x,\ y>x$ は偽で、どの $y$ に対しても $x=y$ が $y>x$ を満たさない。$\square$

$\forall x\,\exists y$ では $y$ を $x$ ごとに選んでよく、$\exists y\,\forall x$ では 1 つの $y$ がすべての $x$ に通用しなければならない。大学の解析では、この違いが別々の概念になる。

各点での連続と一様連続

$f(x)=x^2$($x\in\mathbb{R}$)について、次の 2 つを比べる($\varepsilon,\delta$ は正の実数、$a,x$ は実数を動く)。
$$ \text{(A)}\ \forall\varepsilon\ \forall a\ \exists\delta\ \forall x\ \bigl(|x-a|<\delta\Rightarrow|x^2-a^2|<\varepsilon\bigr),\qquad \text{(B)}\ \forall\varepsilon\ \exists\delta\ \forall a\ \forall x\ \bigl(|x-a|<\delta\Rightarrow|x^2-a^2|<\varepsilon\bigr). $$
(A) はすべての点で連続であること、(B) は一様連続であることである。違いは $\exists\delta$ と $\forall a$ の順序だけである。

  • (A) は真:$\delta:=\min\{1,\varepsilon/(2|a|+1)\}$ とすると、$|x-a|<\delta$ なら $|x+a|\le|x-a|+2|a|<2|a|+1$ なので $|x^2-a^2|=|x-a||x+a|<\delta(2|a|+1)\le\varepsilon$。$\delta$ は $a$ によってよい。
  • (B) は偽:否定 $\exists\varepsilon\ \forall\delta\ \exists a\ \exists x\ (|x-a|<\delta\land|x^2-a^2|\ge\varepsilon)$ を示す。$\varepsilon=1$、任意の $\delta$ に $a=\frac1\delta$、$x=a+\frac\delta2$ をとると、$|x-a|<\delta$ かつ $x^2-a^2=\frac\delta2\bigl(2a+\frac\delta2\bigr)=1+\frac{\delta^2}4\ge1$。

「任意の $\varepsilon$ に対してある $N$ がある」という順序が極限の定義で効くことは 極限とε-δ で扱う。

de Morgan の法則

de Morgan の法則

命題 $P,Q$ について $\lnot(P\land Q)\equiv\lnot P\lor\lnot Q$、$\lnot(P\lor Q)\equiv\lnot P\land\lnot Q$。全体集合 $U$ の部分集合 $A,B$ について $(A\cap B)^c=A^c\cup B^c$、$(A\cup B)^c=A^c\cap B^c$。

真理表と元の所属

$\lnot(P\land Q)$ が偽になるのは $P,Q$ がともに真のときだけで、$\lnot P\lor\lnot Q$ も同じ行だけで偽になる。$\lnot(P\lor Q)$ と $\lnot P\land\lnot Q$ はどちらも $P,Q$ がともに偽の行だけで真になる。集合の等式は、$x\in U$ について $P$:$x\in A$、$Q$:$x\in B$ とおいて命題の式を使えばよい。たとえば $x\in(A\cap B)^c\iff\lnot(P\land Q)\iff\lnot P\lor\lnot Q\iff x\in A^c\cup B^c$。$\square$

不等式の否定

「$x\le-1$ または $x\ge1$」の否定は、thm-slns-de-morgan により「$x>-1$ かつ $x<1$」、すなわち $-1< x<1$ である。例えば $x=0$ では元の条件が偽で否定が真、$x=2$ では元の条件が真で否定が偽である。

thm-slns-negation は de Morgan の法則の無限個版とみなせる。$X=\{x_1,x_2\}$ なら $\forall x,\ P(x)$ は $P(x_1)\land P(x_2)$、$\exists x,\ P(x)$ は $P(x_1)\lor P(x_2)$ だからである。集合の言葉では、$U$ の部分集合の族 $(A_i)_{i\in I}$ について $\bigl(\bigcap_iA_i\bigr)^c=\bigcup_iA_i^c$、$\bigl(\bigcup_iA_i\bigr)^c=\bigcap_iA_i^c$ となる($x\in\bigcap_iA_i$ は $\forall i\in I,\ x\in A_i$ のことなので、thm-slns-negation から従う)。

反例:否定で「かつ」「または」を入れ替え忘れる

「$x>-1$ かつ $x<1$」の否定を「$x\le-1$ かつ $x\ge1$」とするのは誤りである。後者を満たす実数はないので、この「否定」はつねに偽であるが、たとえば $x=2$ では元の条件も偽である。否定なら真偽が逆になるはずなので、これは否定ではない。正しい否定は「$x\le-1$ または $x\ge1$」で、$x=2$ で真になる。

反例の一覧

本記事の反例を、見落とした条件ごとにまとめる。

外した仮定・見落とした条件崩れる主張ボックス
全体集合 $U$「$p\Rightarrow q$」の真偽は $p,q$ だけで決まるex-slns-universe
含意の向き$p\Rightarrow q$ なら逆 $q\Rightarrow p$ も成り立つex-slns-converse-multiples
含意の否定は $P\land\lnot Q$「ならば」の否定は「ならば〜でない」ex-slns-wrong-negation
$\forall$ と $\exists$ の順序量化子は入れ替えてよいprop-slns-order、ex-slns-uniform
否定では「かつ」と「または」が入れ替わる否定は不等号を逆にするだけでよいex-slns-de-morgan-counter

さらに先へ

命題を記号の式として扱い、真理表による真偽の計算そのものを研究するのが 命題論理 であり、量化子を含む文を扱うのが述語論理(一階論理)である。大学の数学では、ex-slns-uniform のような量化子の順序の違いが、連続と一様連続、各点収束と一様収束など多くの概念の区別になる。写像 $f\colon X\to Y$ と $Y$ の部分集合 $B,C$ について、逆像 $f^{-1}(B):=\{x\in X\mid f(x)\in B\}$ は条件「$f(x)\in B$」の真理集合なので、thm-slns-inclusion の 3 と同じ理由で $f^{-1}(Y\setminus B)=X\setminus f^{-1}(B)$、$f^{-1}(B\cap C)=f^{-1}(B)\cap f^{-1}(C)$、$f^{-1}(B\cup C)=f^{-1}(B)\cup f^{-1}(C)$ が成り立つ。論理と集合の対応と証明の書き方は、Ham25 第 2・5・6 章に詳しい。

関連項目

参考文献

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