自己補グラフ

同義語:self-complementary graph反同型(グラフ)antimorphism

概要

自己補グラフ(self-complementary graph)とは、補グラフと同型な単純グラフのことである。補グラフへの同型を与える頂点の置換を反同型といい、その巡回の長さは、高々 1 個の長さ 1 の巡回を除いてすべて $4$ の倍数である。このため $n$ 頂点の自己補グラフの辺は $n(n-1)/4$ 本で、$n$ は $4$ で割って $0$ か $1$ 余り、そのような $n$ ごとに自己補グラフがある。2 頂点以上の自己補グラフは連結で、直径は $2$ か $3$ であり、例は道 $P_4$ と 5 角形 $C_5$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: グラフ, グラフ同型, 置換

グラフ $G$ の補グラフ $\overline G$ は、相異なる 2 頂点が隣接するかしないかを入れ替えたグラフである。$G$ と $\overline G$ が同型になるとき、$G$ を自己補グラフという。道 $P_4$ や 5 角形 $C_5$ がその例である。主定理は、自己補グラフの頂点数は $4$ で割って $0$ か $1$ 余る数に限り、しかもそのような頂点数ごとに自己補グラフが存在する、というものである。証明の鍵は、グラフを補グラフに写す置換の巡回の長さが、長さ $1$ の巡回 1 つを除いて $4$ の倍数になることである。逆に、巡回の長さがこの条件を満たす置換は、どれもある自己補グラフを補グラフに写す置換になる。このほか、自己補グラフは連結で、2 頂点の距離の最大値は $2$ か $3$ であることも示す。

定義

この記事のグラフは、グラフ の記事の定義「グラフの定義」の意味の有限な単純グラフ $G=(V,E)$($E\subset[V]^2$)であり、辺 $\{u,v\}$ を $uv$ と書く。補グラフ $\overline G:=(V,[V]^2\setminus E)$ は同記事の定義「補グラフとグラフの和」で定めた。平行辺やループを許す多重グラフには、この形の補グラフはない。

自己補グラフと反同型

グラフ $G=(V,E)$ について、全単射 $\sigma\colon V\to V$ が $G$ の反同型(antimorphism)であるとは、相異なる任意の $u,v\in V$ について
$$uv\in E\iff \sigma(u)\sigma(v)\notin E$$
となること、すなわち $\sigma$ が $G$ から $\overline G$ へのグラフ同型であることをいう。$G$ が $\overline G$ と同型であるとき、すなわち反同型を持つとき、$G$ を自己補グラフ(self-complementary graph)という(BM76 Exercise 1.2.11、p. 6)。

反同型 $\sigma$ は、辺を辺でない組に、辺でない組を辺に写す。$\sigma$ は $V$ の置換なので、$[V]^2$ の置換 $\{u,v\}\mapsto\{\sigma(u),\sigma(v)\}$ を引き起こし、反同型の条件はこの置換が $E$ と $[V]^2\setminus E$ を入れ替えることにほかならない。

直感

補グラフをとる操作は「知り合い」と「知り合いでない」を入れ替える操作である。自己補グラフとは、この入れ替えをしても頂点の名前を付け替えれば元に戻る、つまり「隣接する」と「隣接しない」が同じ形で現れるグラフである。したがって辺の本数は可能な組 $\binom n2$ のちょうど半分であり、密でも疎でもない。反同型を 2 回続けると隣接関係が元に戻るので、反同型の 2 乗は自己同型になる。反同型を何回も続けると、2 頂点の組は「辺・辺でない・辺・…」と交互に移り変わる。この交互の規則が、反同型の巡回の長さを強く制限する。同じ規則を逆に使うと、置換を先に決め、組の軌道に沿って辺と辺でないものを交互に置くことで、自己補グラフを組み立てられる。

例と反例

道 $P_4$ は自己補グラフ

頂点 $a,b,c,d$ と辺 $ab,bc,cd$ からなる道 $P_4$ の補グラフの辺は $ac,ad,bd$ であり、これは道 $c,a,d,b$ である。反同型は $\sigma\colon a\mapsto b\mapsto d\mapsto c\mapsto a$ で与えられる。実際、辺 $ab,bc,cd$ は $\sigma$ でそれぞれ $bd,da,ca$ に写り、どれも辺でない。辺でない $ac,bd,ad$ は $ba,dc,bc$ に写り、どれも辺である。$\sigma$ は長さ $4$ の巡回置換 $(a\ b\ d\ c)$ である。

5 角形 $C_5$ は自己補グラフ

頂点を $\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}$ の元 $0,1,2,3,4$ とし、$i$ と $i\pm1$ を結んだ閉路グラフ $C_5$ を考える。辺でない相異なる 2 頂点は $i$ と $i\pm2$ である。$\sigma(i):=2i$ とおくと、$\sigma$ は $\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}$ の全単射であり($2\cdot3=6\equiv1$ なので逆写像は $i\mapsto3i$)、差が $\pm1$ の 2 頂点を差が $\pm2$ の 2 頂点に、差が $\pm2$ の 2 頂点を差が $\pm4\equiv\mp1$ の 2 頂点に写す。よって $\sigma$ は反同型であり、$C_5$ は自己補グラフである。$\sigma$ は $0$ を固定し、残りを巡回 $(1\ 2\ 4\ 3)$ で動かす。

牛の形のグラフ

三角形 $x,y,w$ に、$x$ に隣接する頂点 $p$ と $y$ に隣接する頂点 $q$ を付けたグラフ(辺 $xy,yw,wx,xp,yq$。「牛」の形)を考える。補グラフの辺は $xq,yp,wp,wq,pq$ であり、これは三角形 $p,q,w$ の $q$ に $x$、$p$ に $y$ を付けたグラフなので、元のグラフと同型である。反同型の 1 つは $x\mapsto q\mapsto y\mapsto p\mapsto x$、$w\mapsto w$ であり、固定点 $w$ の次数は $2=(5-1)/2$ である(prop-scg-fixed-point)。計算機で数えると、同型を除いた自己補グラフは $n=4$ で $P_4$ の 1 種類、$n=5$ で $C_5$ とこのグラフの 2 種類である。

反例:辺の本数だけが合う星

星 $K_{1,3}$(中心 $c$ と、$c$ に隣接する 3 頂点)は 4 頂点で辺が $3=4\cdot3/4$ 本あり、辺の本数の条件(cor-scg-order の後の段落)は満たす。しかし補グラフは、中心 $c$ が孤立し、残りの 3 頂点が三角形をなす $K_3\cup K_1$ で、連結でない。$K_{1,3}$ は連結なので、両者は同型でなく、$K_{1,3}$ は自己補グラフではない。辺の本数が $n(n-1)/4$ であることは自己補グラフであるための必要条件だが、十分条件ではない。

次の表は、この記事の定理の仮定を 1 つ外した反例である。

外す条件反例成り立たなくなること
自己補である(辺の本数 $n(n-1)/4$ は残す)三角形と孤立点の非交和 $K_3\cup K_1$(4 頂点・3 辺。補グラフは $K_{1,3}$)連結である(thm-scg-diameter)。孤立点があるので連結でない
巡回の長さが $4$ の倍数(thm-scg-converse)互換 $(u\ w)$ と固定点からなる置換ある自己補グラフの反同型である。組 $\{u,w\}$ が $\sigma$ で固定されるので、辺でも辺でなくても条件に反する
固定点は高々 1 個(thm-scg-converse)4 頂点 $u_1,\dots,u_4$ の巡回と固定点 $w_1,w_2$ からなる置換ある自己補グラフの反同型である。組 $\{w_1,w_2\}$ が固定される
反同型が固定点を持つ(prop-scg-fixed-point)$P_4$ の反同型 $(a\ b\ d\ c)$次数 $(n-1)/2$ の頂点がある。$n=4$ で $(n-1)/2$ は整数でない

2 行目と 3 行目は、thm-scg-cycles の結論を破る置換が反同型になりえないことを、組の固定という同じ理由で示している。

性質

反同型と自己同型群

自己同型群と補グラフ

グラフ $G=(V,E)$ の自己同型(automorphism)とは、$G$ から $G$ 自身への同型、すなわち全単射 $\pi\colon V\to V$ で、相異なる $u,v$ について $uv\in E\iff\pi(u)\pi(v)\in E$ となるものをいう。自己同型全体は写像の合成について群をなし、これを $\operatorname{Aut}G$ と書く。このとき次が成り立つ。

  1. $\operatorname{Aut}G=\operatorname{Aut}\overline G$ である(BM76 Exercise 1.2.12 (d)、p. 7)。
  2. $\sigma,\tau$ が $G$ の反同型なら、合成 $\sigma\circ\tau$ は $G$ の自己同型である。特に反同型の 2 乗は自己同型である。
  3. $G$ が反同型 $\sigma$ を持つとき、$G$ の反同型全体は $\{\sigma\circ\pi\mid\pi\in\operatorname{Aut}G\}$ に等しい。

1:相異なる $u,v$ について、$uv\in E\iff\pi(u)\pi(v)\in E$ は、両辺を否定した $uv\in[V]^2\setminus E\iff\pi(u)\pi(v)\in[V]^2\setminus E$ と同値である($\pi$ は単射なので $\pi(u)\neq\pi(v)$)。後者は $\pi$ が $\overline G$ の自己同型であることにほかならない。
2:相異なる $u,v$ について、$uv\in E\iff\tau(u)\tau(v)\notin E\iff\sigma(\tau(u))\sigma(\tau(v))\in E$ である。2 番目の同値は、$\sigma$ の条件を $\tau(u),\tau(v)$ に使ったものの否定である。
3:$\pi\in\operatorname{Aut}G$ なら、$uv\in E\iff\pi(u)\pi(v)\in E\iff\sigma(\pi(u))\sigma(\pi(v))\notin E$ なので $\sigma\circ\pi$ は反同型である。逆に $\tau$ を反同型とすると、$\sigma^{-1}$ は $\overline G$ から $G$ への同型なので $G$ の反同型でもあり($uv\in E\iff\sigma^{-1}(u)\sigma^{-1}(v)\notin E$ は $\sigma$ の条件を $\sigma^{-1}(u),\sigma^{-1}(v)$ に使ったものである)、2 により $\pi:=\sigma^{-1}\circ\tau\in\operatorname{Aut}G$、$\tau=\sigma\circ\pi$ となる。$\square$

反同型を繰り返し使うと、辺と辺でないものが交互に入れ替わる。

反同型の冪

$\sigma$ をグラフ $G=(V,E)$ の反同型とし、$j\ge0$ を整数とする。相異なる $u,v\in V$ について、$j$ が偶数なら $uv\in E\iff\sigma^j(u)\sigma^j(v)\in E$、$j$ が奇数なら $uv\in E\iff\sigma^j(u)\sigma^j(v)\notin E$ である。特に $j$ が奇数なら、$\sigma^j$ は相異なる 2 頂点の組 $\{u,v\}$ を集合として固定しない。

$j$ についての帰納法による。$j=0$ では明らかである。$j$ で成り立つとすると、$\sigma^{j+1}(u)\sigma^{j+1}(v)$ が辺であるかどうかは、反同型の条件を $\sigma^j(u),\sigma^j(v)$(相異なる)に使うと $\sigma^j(u)\sigma^j(v)$ の逆になり、帰納法の仮定と合わせて $j+1$ の場合を得る。$j$ が奇数で $\{\sigma^j(u),\sigma^j(v)\}=\{u,v\}$ なら、$uv\in E\iff uv\notin E$ となり矛盾する。$\square$

反同型の巡回と頂点数

置換 $\sigma$ は、$V$ を軌道($\{v,\sigma(v),\sigma^2(v),\dots\}$ の形の集合)に分け、各軌道の上で巡回置換として働く(置換)。軌道の元の個数をその巡回の長さという。

反同型の巡回の長さ

$\sigma$ を有限なグラフ $G=(V,E)$ の反同型とする。$\sigma$ の巡回の長さは、どれも $4$ の倍数であるか $1$ であり、長さ $1$ の巡回($\sigma$ の固定点)は高々 1 個である。

$O$ を長さ $\ell$ の軌道とし、$v\in O$ とする。$O=\{v,\sigma(v),\dots,\sigma^{\ell-1}(v)\}$ の元は相異なり、$\sigma^\ell$ は $O$ の各元を固定する。
(a) $\ell$ が $3$ 以上の奇数とする。$v\neq\sigma(v)$ であり、$\sigma^\ell$ は $\{v,\sigma(v)\}$ を固定する。$\ell$ は奇数なので lem-scg-powers に反する。
(b) $\ell\equiv2\pmod4$ とし、$h:=\ell/2$ とおくと $h$ は奇数である。$0< h<\ell$ なので $w:=\sigma^h(v)\neq v$ であり、$\sigma^h(w)=\sigma^{\ell}(v)=v$ だから $\sigma^h$ は $\{v,w\}$ を固定する。これも lem-scg-powers に反する。
(c) 相異なる 2 個の固定点 $u,w$ があれば、$\sigma=\sigma^1$ が $\{u,w\}$ を固定し、lem-scg-powers に反する。
(a)(b) により、長さ $\ell\ge2$ の巡回では $\ell$ は偶数で $\ell\not\equiv2\pmod4$、すなわち $4$ の倍数である。(c) により長さ $1$ の巡回は高々 1 個である。$\square$

自己補グラフの頂点数

$n$ 頂点の自己補グラフがあれば、$n\equiv0$ または $n\equiv1\pmod4$ である。

自己補グラフの反同型 $\sigma$ をとる。$n$ は $\sigma$ の巡回の長さの総和であり、thm-scg-cycles によりそれは $4$ の倍数の和に高々 1 個の $1$ を加えたものである。$\square$

この系は辺の本数からも分かる。$G\cong\overline G$ なら $G$ と $\overline G$ の辺の本数は等しく、両者の和は $\binom n2$ なので $\lvert E\rvert=n(n-1)/4$ は整数である。$n$ と $n-1$ の一方は奇数なので、$4$ は偶数のほうを割り切り、$n\equiv0,1\pmod4$ となる。thm-scg-cycles はこれより詳しく、反同型の形そのものを制限している。例えば $C_5$ の反同型 $i\mapsto2i$(ex-scg-c5)は、固定点 $0$ と長さ $4$ の巡回 $(1\ 2\ 4\ 3)$ からなり、定理のとおりである。$n=2,3$ の自己補グラフはない。

固定点の次数

$\sigma$ を $n$ 頂点のグラフ $G=(V,E)$ の反同型とし、$v$ を $\sigma$ の固定点とする。このとき $n$ は奇数で、$\deg_G(v)=(n-1)/2$ である。さらに $\sigma$ は、$v$ に隣接する頂点の集合 $N(v)$ を、$v$ 以外で $v$ に隣接しない頂点の集合 $V\setminus(N(v)\cup\{v\})$ の上へ全単射に写す。

$u\neq v$ とする。$\sigma(v)=v$ なので、反同型の条件は $uv\in E\iff\sigma(u)v\notin E$ となる。すなわち $u\in N(v)$ と $\sigma(u)\notin N(v)$ は同値である。$\sigma$ は $V\setminus\{v\}$ の全単射なので、$\sigma$ は $N(v)$ を $V\setminus(N(v)\cup\{v\})$ の中へ、$V\setminus(N(v)\cup\{v\})$ を $N(v)$ の中へ写し、どちらも単射である。有限集合の間に互いの中への単射があるので両者の元の個数は等しく、$\sigma|_{N(v)}$ は全単射である。よって $\deg_G(v)=\lvert N(v)\rvert=n-1-\deg_G(v)$、すなわち $\deg_G(v)=(n-1)/2$ であり、$n$ は奇数である。$\square$

thm-scg-cycles と合わせると、$n\equiv1\pmod4$ の自己補グラフの反同型はちょうど 1 個の固定点を持ち(巡回の長さの和が $n$ なので固定点がないと $n\equiv0$ になる)、その次数は $(n-1)/2$ である。$n\equiv0\pmod4$ なら反同型は固定点を持たない。$C_5$ では固定点 $0$ の次数が $2$、牛の形のグラフ(ex-scg-bull)では固定点 $w$ の次数が $2$ である。

存在と構成

次の定理は、cor-scg-order の条件が十分でもあることを示す。

自己補グラフの存在

$n\ge1$ が $n\equiv0$ または $n\equiv1\pmod4$ を満たせば、$n$ 頂点の自己補グラフが存在する。

$n=4k$ または $n=4k+1$($k\ge0$)と書く。4 つの記号 $a,b,c,d$ を用意し、頂点集合を
$$V:=\{x_i\mid x\in\{a,b,c,d\},\ 1\le i\le k\}\quad(n=4k),\qquad V:=\{x_i\}\cup\{z\}\quad(n=4k+1)$$
とする。$P:=\{\{a,b\},\{b,c\},\{c,d\}\}$(道 $P_4$ の辺)とおき、辺集合 $E$ を次の 3 種類の辺の全体とする。

  • 相異なる記号 $x,y$ で $\{x,y\}\in P$ となるものと、任意の $i,j$ について $x_iy_j$。
  • 記号 $x\in\{b,c\}$ と、$i\neq j$ について $x_ix_j$。
  • ($n=4k+1$ のとき)$x\in\{a,d\}$ と任意の $i$ について $zx_i$。
    記号の置換 $s\colon a\mapsto b\mapsto d\mapsto c\mapsto a$ は ex-scg-p4 の反同型である。$\sigma(x_i):=s(x)_i$、$\sigma(z):=z$ と定めると $\sigma$ は $V$ の全単射である。$\sigma$ が反同型であることを、相異なる 2 頂点の組の種類ごとに確かめる。
  • $\{x_i,y_j\}$、$x\neq y$:$\sigma$ で $\{s(x)_i,s(y)_j\}$ に写り、$s(x)\neq s(y)$ である。前者が辺であることは $\{x,y\}\in P$、後者が辺であることは $\{s(x),s(y)\}\in P$ と同値であり、$s$ は $P_4$ の反同型なので一方だけが成り立つ。
  • $\{x_i,x_j\}$、$i\neq j$:$\{s(x)_i,s(x)_j\}$ に写る。$s$ は集合 $\{b,c\}$ を $\{d,a\}$ に、$\{a,d\}$ を $\{b,c\}$ に写すので、$x\in\{b,c\}$ と $s(x)\in\{b,c\}$ の一方だけが成り立つ。
  • $\{z,x_i\}$:$\{z,s(x)_i\}$ に写る。同じ理由で $x\in\{a,d\}$ と $s(x)\in\{a,d\}$ の一方だけが成り立つ。
    よって $\sigma$ は反同型であり、$(V,E)$ は $n$ 頂点の自己補グラフである。$\square$

$k=1$ の場合、$n=4$ では $P_4$ そのもの、$n=5$ では $P_4$ の両端点 $a,d$ に新しい頂点 $z$ を結んだグラフ、すなわち 5 角形 $C_5$ になる。$z$ の次数は $2k=(n-1)/2$ で、prop-scg-fixed-point のとおりである。
thm-scg-cycles の逆も成り立つ。すなわち、巡回の長さについての条件を満たす置換は、どれもある自己補グラフの反同型になる。

反同型になる置換

$V$ を有限集合とし、$\sigma$ を $V$ の置換で、巡回の長さがどれも $4$ の倍数か $1$ であり、長さ $1$ の巡回が高々 1 個であるものとする。このとき、$\sigma$ を反同型に持つグラフ $(V,E)$ が存在する。

$\sigma$ は $[V]^2$ の置換 $\hat\sigma(\{u,w\}):=\{\sigma(u),\sigma(w)\}$ を引き起こす。$p\in[V]^2$ の $\hat\sigma$ による軌道の長さ、すなわち $\hat\sigma^L(p)=p$ となる最小の $L\ge1$ が偶数であることを示す。
$p=\{u,w\}$ とし、$L$ が奇数だと仮定する。$\hat\sigma^L(p)=p$ なので、$\sigma^L$ は $u,w$ をともに固定するか、$u$ と $w$ を入れ替える。

  • ともに固定する場合:$u$ の巡回の長さは $L$ を割り切るので奇数であり、仮定から $1$ である。$w$ についても同様で、$u,w$ は相異なる 2 個の固定点になり、仮定に反する。
  • 入れ替える場合:$\sigma^{2L}(u)=u$ なので $u$ と $w=\sigma^L(u)$ は同じ巡回に属し、その長さ $\ell$ は $2L$ を割り切るが、$\sigma^L(u)=w\neq u$ なので $L$ は割り切らない。$\ell\ge2$ なので仮定から $4\mid\ell$、したがって $4\mid2L$ となり、$L$ が奇数であることに反する。
    よって各軌道の長さは偶数である。各軌道 $\{p,\hat\sigma(p),\dots,\hat\sigma^{L-1}(p)\}$ から代表 $p$ を 1 つ選び、$j$ が偶数の $\hat\sigma^j(p)$($0\le j< L$)を辺とし、奇数のものを辺としない。$E$ をこうして選んだ辺の全体とする。$0\le j< L$ について、$\hat\sigma$ は $\hat\sigma^j(p)$ を $\hat\sigma^{j+1}(p)$ に写し、$j=L-1$ のときは $\hat\sigma^{L}(p)=p$($j=0$)に写す。$L$ は偶数なので、どの場合も $j$ と行き先の指数の偶奇は異なる。したがって $\hat\sigma$ は辺を辺でない組に、辺でない組を辺に写し、$\sigma$ は $(V,E)$ の反同型である。$\square$

例えば $\sigma$ を長さ $4$ の巡回 $(a\ b\ d\ c)$ とすると、$[V]^2$ の 6 個の組は、$\{a,b\}\to\{b,d\}\to\{d,c\}\to\{c,a\}\to\{a,b\}$ の長さ $4$ の軌道と、$\{a,d\}\to\{b,c\}\to\{a,d\}$ の長さ $2$ の軌道に分かれる。代表を $\{a,b\}$ と $\{b,c\}$ にとると、辺は $ab,dc,bc$ になり、$P_4$ が得られる。代表の選び方を変えれば、同じ $\sigma$ から別の自己補グラフが得られることもある。

連結性と直径

補グラフの直径

グラフ $G=(V,E)$ に、隣接せず共通の隣接頂点も持たない 2 頂点 $u,v$(すなわち $G$ で長さ $2$ 以下の道で結ばれない 2 頂点)があれば、$\overline G$ は連結であり、$\overline G$ の任意の 2 頂点の距離は $3$ 以下である。

仮定から $uv$ は $\overline G$ の辺である。$u,v$ 以外の頂点 $w$ は、$G$ で $u$ と $v$ の両方に隣接することはない($w$ が共通の隣接頂点になる)ので、$\overline G$ で $u$ か $v$ に隣接する。
$\overline G$ の相異なる 2 頂点 $x,y$ をとる。$xy\notin E$ なら $\overline G$ で隣接する。$xy\in E$ とする。$x=u$ なら、$y$ は $G$ で $u$ に隣接するので $G$ で $v$ に隣接せず、$\overline G$ の道 $u,v,y$ がある。$x,y$ のどちらかが $v$ の場合も同様である。$x,y\notin\{u,v\}$ なら、$x$ と $y$ はそれぞれ $\overline G$ で $u$ か $v$ に隣接する。同じ頂点に隣接すれば長さ $2$ の道があり、そうでなければ例えば $x,u,v,y$ が $\overline G$ の長さ $3$ の道である。よって $\overline G$ の任意の 2 頂点は長さ $3$ 以下の道で結ばれる。$\square$

自己補グラフの連結性と直径

$G$ を 2 頂点以上の自己補グラフとする。このとき $G$ は連結であり、2 頂点の距離(グラフ)の最大値(直径)は $2$ または $3$ である。

$G\cong\overline G$ なので、$G$ と $\overline G$ は連結性も直径も等しい。$G$ が連結でないか直径が $3$ 以上なら、長さ $2$ 以下の道で結ばれない 2 頂点があるので、lem-scg-complement-diameter により $\overline G$ は連結で直径は $3$ 以下である。したがって $G$ も連結で直径は $3$ 以下である。すなわち、いずれにせよ $G$ は連結で、直径は $3$ 以下である。直径が $1$ なら $G$ は完全グラフで、$\overline G$ は辺を持たないが、2 頂点以上なので $G$ は辺を持ち、$G\cong\overline G$ に反する。よって直径は $2$ または $3$ である。$\square$

$P_4$ の直径は $3$(両端点の距離)、$C_5$ と牛の形のグラフの直径は $2$ である。連結性だけなら、「$G$ と $\overline G$ の少なくとも一方は連結である」という事実(連結グラフ の記事の定理「辺の本数・最小次数・補グラフによる十分条件」の 3)からも従う。thm-scg-converse の構成で作った自己補グラフの直径を、4 頂点から 13 頂点までの 300 通りの置換について計算機で求めると、すべて $2$ か $3$ であった。

補足

自己補グラフの頂点数と辺の本数は $n\equiv0,1\pmod4$、$\lvert E\rvert=n(n-1)/4$ に限られ、辺は可能な組のちょうど半分である。このため、補グラフを同時に考える議論の例としてよく現れる。例えば 6 頂点のグラフでは、グラフかその補グラフのどちらかが三角形を含む(KT17 Lemma 11.1、p. 229。証明は Ramsey数 R(3,3)=6 の記事にある)。5 角形 $C_5$ は自己補グラフで三角形を含まないので、その補グラフ($C_5$ と同型)も三角形を含まず、この事実が 5 頂点では成り立たないことを示す。
prop-scg-aut-complement により、自己補グラフの反同型全体は、1 つの反同型 $\sigma$ と自己同型群の元の合成で尽くされ、反同型の 2 乗は自己同型である。thm-scg-cycles と thm-scg-converse を合わせると、$V$ の置換が何らかの自己補グラフの反同型になることと、巡回の長さが $4$ の倍数と高々 1 個の $1$ だけであることは同値である。

関連項目

参考文献

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